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ある秋の夕方。
「なんであたいが、霧依の家に行かなきゃいけないのよ」
ブツブツ言いつつ、雪室 チルル(
ja0220)は、咲魔 聡一(
jb9491)と共に雁久良 霧依(
jb0827)の家に向かっていた。
容姿が幼いチルルは、以前から幼女大好き霧依さんに狙われているのである。
「まあ、夕食のネギま鍋に招待してくれたんだし、お呼ばれしよう」
言いつつ、インターホンを押す咲魔。
だが、反応がない。
しかも、夕方なのに灯りが点いていないのだ。
「何かあったのかも! ここはがさ入れよ!」
家にあがりこむ二人。
最初に入った、寝室――そこで二人が見たものは!
「なんなのよ、これ!」
二人が踏み込むと同時に、寝室はクラーリンの光に満たされた。
壁には大量の写真が張られている。
床には、赤ん坊用の玩具。
それ混じって、ヴィイイインと妖しい玩具振動音が発されている。
だが、全てクラーリン光に隠され、何かがわからない。
つまり、部屋にあるもの全てがヤバイのだ!
そして、部屋の中央には、
「ままぁ……1人でできたよぉ♪」
声はすれども、姿は見えず。
クラーリン光に包まれた人型の存在が、おまるに跨っていた。
「チルルままぁ、おっぱい〜♪」
チルルの胸を求めて寄ってくる、光まみれの人。
声からして、霧依だ。
どんな格好をしているのかも台詞から、察しはついた。
「させないわよ! 一網打尽なのよ!」
チルルは背負っていた漁網を、光まみれの人に投げつけた。
これは、クラーリンの大量捕獲を狙った上、水に濡らして白熱化にも対応した優れものである。
クラーリンごと漁網に捕らわれ、身悶えする光まみれの人。
「ネットプレ〜……ままぁっ……もっと……♪」
光まみれの人は、網でグルグル巻にされたまま、チルルに踏んづけられて身悶えている。
「ちょっとやり過ぎじゃないかな? 雪室さんのターンだってあるんだし、手加減しないと」
「あたいのターンは来ないわ! だって、あたいにはやましいものなんてないから」
自信満々なチルルの姿に“もうフラグ立ってるな、これ”と、確信する咲魔だった。
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翌日、咲魔は一人、校庭を歩いていた。
「夕べは、雪室さんに手柄を譲ってしまったな、僕も頑張らないと」
何か、クラーリンに関する手がかりは載っていないか?
携帯している百科事典を開く咲魔。
すると、事典の中から写真がバサバサッとこぼれ落ちた。
(あれ、写真なんて挟んだ覚え無いんだけどっていうか、何これ)
霧依の写真だ。
おそらくは寝室の壁に貼ってあった、例のアレである。
夕べ、ネギま鍋を御馳走になった時、「明日の晩のオカズを、後でお土産にあげるわ♪」などと言っていたが、つまりは、そういう事だったのだ!
(こんなマニアックなプレイ初めて見た)
ドン引きしていると、遠くから声が近づいてきた。
「クラーリン察知 クラーリン察知」
グレ子こと、グレームリンの声だ。
それに連れられてやってきたのは
「クラーリン、ゲットだにゃ♪ 一杯集まってるにゃー」
「あ、聡一くんじゃないの。 こんにちは♪」
猫野・宮子(
ja0024) と、一川 七海(
jb9532)だった。
気付けば、写真にはクラーリンがまとわりつき、光でその内容を隠してくれている。
とはいえ、タイムリミットは十秒。
それを過ぎれば光は消え、クラーリンが白熱化、爆発をする。
(今のこの状況、どう見ても僕が自前の写真をバラ撒いたとしか見えないよな。 でもそんな誤解をされた日にはもう色々終わるし早くもうマジでなんとかしないと!)
思考を高速回転させた咲魔は、とりあえず叫んだ。
「それ以上近づくと(僕の社会的生存及び君の視界が)危ないから来るんじゃないッ!」
「え!?でもクラーリンが現れてるんだし、手伝った方が」
近づいてくる七海。
このままでは、爆発後、写真が燃え尽きるまでの間に内容を見られてしまう。
「仕方がない!」
砂嵐を使用する咲魔。
クラーリンは、風圧に飛ばされ逃げ出した。
宮子と七海が、逃げたクラーリンを捕まえた。
だが、七海はチラッと見てしまった。
砂嵐で積もった砂の中から咲魔が取り出し、炎の中に隠したそれを。
(写真みたいだったけど、そんなにマズイものだったのかな……真面目な聡一くんが、まさかね?)
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七海は、咲魔の写真の件で悶々としながら駅の改札前に立っている。
(この任務、生半可な事じゃダメって事かも)
実は七海、現在、コートの下は裸という大胆な格好をしている。
人の多い駅でコートを脱いで全裸になり、クラーリンを集めようと考えていたのだ。
しかし、そんな事をして失敗すれば人間として、終わる。
(人間としてのアタシ、撃退士としてのアタシ……どうすりゃいいのよ)
悩み、体を動かすたび裸の各所が、コートの固い生地にこすれる。
さらにいくつかボタンを外すと、羞恥心が膨らんでくる。
「や、やっぱり、別に全部見せなくても良いかも」
うなじの一つもチラッと見せれば、集まってくれるんじゃないか?
ヘタレ判断をした時、グレ子がコートのポケットから抜け出した。
脱げかけていたコートを引っ張り落とす。
「キャアアアッ !ちょっと待ってよ!」
駅の改札で全裸になる七海。
「クラーリン察知! クラーリン察知!」
七海とて無策ではない。
万が一、クラーリンが現れなかった場合のため、隠蔽要員を二人控えさせていたのである。
ただ、その人選が間違っている。
「良い体してますね〜、グヘヘヘ」
「隠すのは任せて♪ 私の掌はシルク下着の触感よ♪」
おっぱい隠蔽工作兵の東風谷映姫(
jb4067)と、最重要地点守備兵の霧依である。
「二人とも、何だか手つきがヤラしいような……って、今、クラーリンが隠してくれているんだから触る意味ないじゃない!」
「ですねークラーリンを捕まえないと、一応こっちがメインですからね〜」
映姫は手を離し、虫取り網で捕獲してくれ始めたのだが、
「霧依も離して!」
霧依は離さない、さらに妖しく掌を蠢かす。
「ふふっ♪ 駅には幼女もたくさんいるわ♪ お姉さんのHなとこを、沢山見せてあげましょ♪」
「いやぁ……そんな触りかたされてたら、立ってられ……あ……ぅん」
七海は結局、裸コート姿でKOされてしまった。
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翌日、駅には七海と霧依の似顔絵が、標語付ポスターにされて張り出された。
『この顔見たらすぐ逃げて! よい子は見ちゃダメ、このふたり』
幸いにも途中からクラーリン捕獲に励んだため、載せられずに済んだ映姫がポスターの前に立っている。
「見られちゃいけないものか〜……取り敢えず裸かな〜」
結局、同じ思考である。
七海が人生犠牲にしたのに、何も学んでいない。
恥ずかしそうに、着物を一枚ずつ脱いでいく映姫。
駅前を行き交う人たちが、何だ何だと足を止め、人だかりが出来る。
「どどど……どうしよう。は、恥ずかしいなぁ〜……」
自分の胸を隠蔽しているサラシを、少しずつ解いてゆく。
「お、男は根性、女は度胸って言ってたから……どうにでもなーーれ!!」
「クラーリン察知! クラーリン察知!」
アイリス・レイバルド(
jb1510)と、咲魔が駆けつけた。
「さて、淑女的に依頼達成に勤しむとするか」
「この依頼だと、淑女的って別の意味に聞こえますよ」
だが、当の映姫を見れば、クラーリン光に覆われた胸を隠そうともせず、今度は褌を脱ぎ始めている。
「東風谷さん、隠して!」
二人が駆けつける前に、見られちゃ困っちんぐ状態になったので、とうにクラーリンは白熱化を始めている。
だが、映姫は興奮して、周りなんか見えていない。
「熱い! でもそれが良い!」
「仕方がない、勝手に隠させてもらう」
アイリスは黒い粒子を放ち、映姫の胸と腰回りに纏わせた。
「咲魔、掃除機のスイッチを入れてくれ」
アイリスが粒子を放っている間に、咲魔が掃除機を動かした。
流石は吸引力の変わらない、ただ一つのそれ。
威力は凄まじく、クラーリンを余さず吸い取ってゆく。
だが、同時に、黒い粒子をも吸い取ってしまった。
つまり――映姫ちゃん、裸んぼである。
「のぉおわあああ!?ちょ、なんて格好を! ハレンチ、じゃないフレンチすぎます!」
身を挺してそれを隠す咲魔。
「ハレンチであっているぞ、聡一」
「み、見られるのもいいかも……」
慌てているのは、咲魔だけだった。
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一仕事済ませたアイリスは、自宅に戻った。
汗を落すため、服を脱いでシャワールームへ。
鏡の前に立ち、ポーズをとって美しい肢体を、しばし眺める。
ナルシストなわけではなく、ストレッチで体調を見ているのだ。
だが、鏡に映っているのはアイリスだけではなかった。
いつの間にかサングラスにマスク姿の、怪しい人影が鏡に映りこんでいる。
普通ならパニックになる状況だが、アイリスさんは慌てない!
「最初に聞くが……私の裸など見て楽しいのか?」
右足を大胆にあげたまま、振り向きもせずそう尋ねる。
アイリスには恥じらいの観念がない。
つまり、見られてもへーきなのだ。
「楽しいわよー、大事なとこを隠しているクラーリンがいなきゃ、もっと楽しいわね」
「そのポーズイカしてるにゃ、マジカル♪みゃーこの決めポーズにしたいにゃ」
七海と、宮子だった。
二人に見られそうなため、アイリスの意志とは関係なく、その恥部をクラーリン光が覆っている。
七海は、捕獲用水槽を持ってシャワールームに突撃してくる。
「あたしの人生犠牲にしたクラーリンを、一網打尽にしてあげるわ!」
「アイリスちゃん隠すにゃ! あと数秒で白熱化するにゃ!」
だがアイリスは隠さない。
見られてはいけないものが何だかわからないから、隠しようがないのだ。
「ふむ、なら隠してくれ」
七海に言う。
「マジ? 素手で隠していい?」
「任せる」
アイリスの胸と、局部を手で覆う七海。
隠すべきものが七美の手に隠されたので、クラーリンが逃げ出した。
宮子が虫取り網を振り廻す。
捕獲に成功した。
「頑張ったみゃあ!」
「済んだか、ご苦労」
全く動じていないアイリスの体に、七海は涎を垂らして頬ずりしている。
「柔かーい……肌が若いわぁ……あたしの人生、まだ捨てたもんじゃないわ」
半ば指名手配扱いされ、人生\(^o^)/オワタ状態だった七海だが、生きる希望を取り戻したようだ。
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「そういうわけで魔法少女マジカル♪みゃーこが捕獲に出陣にゃー♪」
新キメポーズをとる宮子。
今回は魔法少女コスをバッチリ着ている。
小等部の校庭裏を歩いていると、
「ちょっと男子! スカートめくるのやめなさいよ!」
「へへ、スカートめくるだけならクラーリンは来ねえんだな」
クラーリンの開発者の娘で、蜜とかいう女の子だ。
また悪ガキに、スカートをめくられている。
「む、悪戯はダメにゃ! 悪い子は魔法少女マジカル♪みゃーこがお仕置きするにゃー!」
「わー! なんか変なのが来たぞ、逃げろー!」
逃げる悪ガキを追う宮子。
向うも撃退士の卵なので、塀の上を伝ったり、屋根に跳び上がったりと、逃走活劇を繰り広げる。
「追いついたにゃ!……うみ? みゃー!?」
宮子が屋根から飛び降りた時、下にあった木の枝に服の後襟が引っかかってしまった。
いわゆる、宙ぶらりんの状態である。
数分後、救助に現れたのは、
「グヘヘー、いい眺めですー」
変態百合っ娘の映姫だった。
パンツ程度ではクラーリンは発生しないので、下から見られ放題である。
「救助要請する相手を間違えたにゃ――とにかく、降ろして欲しいにゃ」
「はい、お待ちをー」
木に登ってくる映姫。
「私の手に捕まって――え、きゃあ!」
案の定、バランスを崩して救出失敗!
服は、枝でビリビリに破れて裸同然になった。
「ちょ、見るんじゃないにゃ! クラーリンのお陰で見えないのは安心だけど恥ずかしいにゃ」
「か、隠そうにも、グレ子さんに急に引っ張られてきたのでー」
隠すものを持ってきていないらしいが、実際、ガン見したいのである。
「クラーリンが、白熱化してきたにゃ! 熱いにゃ!」
「我慢ですー! だんだん、それが良くなりますー!」
「無理にゃ!」
宮子が身悶えしたその時、冷たい網が降ってきてきた。
「こういう時、あたいがいないとダメね!」
チルルだ。
チルルが駆けつけて、水に濡らした魚網を投げつけてくれたのだ。
宮子ごと大量のクラーリンを漁網に封じ込め、チルルは得意げだった。
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「結局、最後まで醜態晒さなかったのはあたいだけね!――っと、これで送信」
チルルは個人ブログを持っている。
今回のような依頼や、日々の出来事を元に、それを更新しているのである。
続いて、メールチェックをする。
「げ、また業者からの相互リンク願いが来てる。 いくらあたいが、ゆーめー人だからって、エロサイトはもうお断りなのよ」
実は少し前、ある依頼で指摘されるまでは、アダルト業者の自動相互リンク願いメールにも、応じてしまっていたのである。
指摘された時は、霧依に「チルルちゃんは、えっちな子ねぇ♪」とからかわれた。
トラウマに身悶えしながら、後回しにしていたリンクアドレス削除作業を進めていると、間違ってエロサイトへのリンクを踏んでしまった。
「あ、ちょ、え。まずった、早く消さないと」
リンク先では動画が再生されていた。
「この子、何やってるんだろう……?」
動画の中でチルルと同年代の娘が、何かをしていた。
「結局最後まで見ちゃった………あー……うー」
元気っ娘なチルルだが、こういう事に全く免疫がない。
顔を熱くさせ、目を泳がせるしか出来なかった。
好奇心から自然、手が動く。
「これは決してやましい事じゃないんだからね。調査……そう、調査なんだから」
胸と下腹部に、ドキドキしながら手を伸ばしたその時だった。
「何をしている?」
背後からの声にギョッと振り向く。
そこには掃除機をかついだアイリスとがいた。
「あ、あんたこそ、何してんのよ!?」
「グレ子が、ここにクラーリンを察知したのだ」
「そ、そう? あたいの部屋には何もないわよ」
「ふむ、なら誤作動か」
素直に帰ろうとするアイリス。
(あの子で助かったわ。 霧依だったら、アウトだった)
ホッとしたチルルの耳に、今、最も聞きたくない声と台詞が入った。
「チルルちゃんは、えっちな子ねぇ♪」
振り向く事も出来ず、返事をする。
「い、いつから見てたのよ」
「聞きたいかしら♪」
「聞きたくないわよー!」
必殺の氷砲を放ち、証拠であるPCと、証人である霧依をぶっとばすチルル。
撃退士たちの活躍でほぼ全てのクラーリンを回収に成功した。
最も多く捕獲したのはチルルだ。
だが、そのチルルがこんな内容の文章を書いた。
“変態が多いから久遠ヶ原にはクラーリンが必要、早急に改良新型を開発すべし”
この日のブログは、変態に悩まされる島民たちから沢山の“いいね!”を貰うのだった。