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マスター:スタジオI
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/09/27


みんなの思い出



オープニング


 ここは久遠ヶ原の某斡旋所。
「ただいまー、なのだわ」
 独身アラサー女子所員・四ノ宮椿は、久々に職場に帰ってきた。
「お帰りなさい、椿さん。 どうでした成果は?」
 後輩の新人職員・堺臣人が、それを出迎える。
 椿はこの夏、ある依頼に同行して無人島に行っていた。
「フフフ、それなんだけど、実は堺くんにお土産があるのだわ」
 いたずらっぽい笑いを浮かべる椿。
「お土産?」
 椿は、玄関の外へ向かって呼びかけた。
「メルちゃん、レイちゃん入っていらっしゃいなのだわ」
 斡旋所に二人の女の子が入ってくる。
「は、初めまして――メルと申します」
 一人目は、金髪ポニーテールの美少女。
 年齢は十五歳くらいだろうか?
 青い目をおどおどとさせ、堺の顔をチラチラと見ている。
「す、すみません、私、男の人慣れてないんです」
 やや、人見知りのようだ。
 そして、もう一人は――。
「うわー! ここが椿お姉ちゃんのショクバ? 何かボロっちいねぇ!」
 メルとよく似た面差しの、十歳くらいの女の子。
 こちらは、おてんばだ。
「なにこれ? うわっ! なんかバァーって開いたー? すっげー! これお花かな?」
 斡旋所の玄関に置いてあったワンタッチ傘を勝手に開いてみては、勝手にビックリしたり、
「おーい? 出てこーい」
 背伸びしながら自販機のボタンを、連押したりしている。
「こら、レイ! 落ち着くザマス!」
 小さなレイの頭をポカリと叩くものがいた。
 レイが見上げたそこには、やはりレイと似た金髪の女性の顔がある。
「痛いよー、リズ姉ちゃん本気で叩かないでよ、僕たちはぐれたばっかなんだよ、ぼーぎょりょくとかも弱くなっちゃったんだもん!」
「レイが大人しくしていれば、叩かないザマス!」
 二十代半ばに見える女性だ。
 ハリウッド女優で通用しそうな美女だが、口調が変だ
 堺は、この女性とだけは面識があった。
「リズさん――ということは、この二人はリズさんの妹さんですか?」
「そうザマス、メルとレイ、冥界で離れて暮らしていた妹たちを、久遠ヶ原に連れてきたのザマス」
 リズは、椿の親友だ。
 はぐれ悪魔で、斡旋所にも何度か遊びに来た事がある。
 椿が言った無人島での依頼でいろいろあり、メルとレイを久遠ヶ原の仲間とて連れて帰ってきたらしい。
「というわけで、メルちゃんとレイちゃん、好きな方を堺くんのカノジョにしていいのだわよ」
 からかうように言う椿。
「は? 何言ってんですか?」
 堺は照れながらも、メルとレイを見比べた。
 メルは顔を赤らめながらも、堺を覗くようにチラッと見ている、
 レイは玄関のチャイムをピンポン連打して遊んでいる。
 どちらも、文句のつけようのない美少女だ。
 椿の冗談だとわかっていても、魅惑を感じる提案だったが――。
「やめておきましょう、容姿は良くても、中身が変な女性には懲りてますから」
「あら、可愛い娘が苦手だなんて、何かあったのだわ?」
「さあ? 誰かのせいなんですかね」
 アホで変人なお姉さん、椿とリズのせいで、堺は美人にはすっかり懲りてしまっていた。


「まあいいザマス、依頼の話しをするザマス」
 リズの顔がきりっと引き締まる。
「他でもない、メルとレイ、私の妹二人を教育して欲しいザマス」
「教育ですか? それは、学園に入学させればしてくれるのでは?」
「しばらく学園入学は見合わせるザマス――妹二人は幼い頃は貧乏暮し、少し大きくなったと思ったら冥界の傭兵商に飼われ、戦場の日々――楽しい事を経験したことがほとんどないザマス」
 心苦しそうな顔をするリズ。
「お姉さまにはご苦労かけました」
 メルが、礼儀正しくぺこりと姉に頭を下げる。
「幸いにも、姉妹三人、数年は楽に暮らせるくらいの財産は手に入ったザマス。 妹たちにはいろいろな事をやらせてみて、興味を持てる事、好きな事、そして、人間界で何をしたいのか見付けさせようとおもっているザマス」
「なるほど、撃退士――いや、学生たちに、自分が打ち込んでいる楽しい事を教える先生になって欲しいということですね?」
「そうなんザマス。 あと、出来れば、メルとレイは別々の先生に教育して欲しいザマス」
「なぜですか?」
 三姉妹は極めて仲が良さそうに見える。
「いつも互いに姉妹だけを信じて生きて来たので、互いへの依存心が強すぎなんザマス。 ここらで独り立ちのきっかけを与えたいザマス」
「なるほど、学生たちが好きな事、楽しんでいる趣味なんかを、メルさんかレイさんにマンツーマンで教えてやってくれって事ですね」
 かくして、金髪美少女姉妹に生きる楽しさを教えるという依頼が発布された。
 ともすれば、純粋な少女たちを好きな色に染める事の出来るこの依頼。
 果たして、貴方は彼女たちに何を教えるのだろうか?


リプレイ本文


 エイルズレトラ マステリオ(ja2224)は、学生寮の自分の部屋に、金髪のツインテ美幼女・レイを迎えた。
「エイルズー! 久しぶりー! ちょー会いたかったよー!」
 玄関に飛び込むなり、エイルズレトラに抱きつくレイ。
「ハッハハハ、レイさんお元気そうですねー」
 レイの頭を撫でようとすると、
「これこれ! これが読みたかったんだよ!」
 レイはエイルズレトラの脇をすりぬけ、テーブルの上に置いてあった漫画に飛びついた。
「あー、僕に会いたかったのはやっぱり、それが原因なんですね」
 苦笑いするエイルズレトラ。
 レイとは、無人島での冒険で一度会っている。
 その時、レイに読ませたのが三十年ほど前に一世を風靡した拳法漫画だった。
 島にあったのは、ほんの序盤だけだったので、レイは続きが気になってしょうがない。
 そこで、エイルズレトラは、久遠ヶ原に来たら続きを読ませてやると約束したのである。
「約束を果たせて、安心しましたよ」
 エイルズレトラが言っても、レイは漫画に夢中になっている。
「おお! 僕と同じ名前のキャラ出てきた、超かっけー!」
「ケーキ、食べますか?」
 エイルズレトラが皿に乗せたショートケーキを出してやると、
「シャオッ!」
 レイは、それを手刀で切り裂こうとした。
 エイルズレトラは、手刀がケーキを潰す前に素早くそれを取り下げる。
「やると思ってました。 その漫画の拳法、真似したくなるんですよね」

「劇画調のハードなバトル漫画が好きみたいですね」
 エイルズレトラが紙袋に入れて持ってきたのは、巨大な剣を操る黒き狂戦士の漫画だった。
「これ、お貸しします。 帰ったらお家で読んでください」
 この時、紙袋にちょっとしたイタズラを仕込んでおいたのだが――。

「次の趣味はTVゲームです!」
 エイルズレトラはテレビに、レトロで家族的なコンピュータゲームをセットした。
 TV画面に赤い服を着た髭オヤジが現れる。
「このオヤジを、どんどん右へ進めてゴールにある旗を掴ませる、ただそれだけのゲームです。 シンプルでしょ? 最初はこのあたりからゲームに入るのが良いと思うんです」
 最初こそ、ファースト雑魚な悪キノコにやられていたレイだったが、筋が良いらしく一時間もしないうちに、エンディング画面を出してしまった。
「へへん、どーだぁ!」
 ドヤ顔で、ない胸を張るレイ。
「やりますねぇ、では禁断の遊びを教えましょう」
「禁断の遊び?」
「バグ面を出せるんですよ、まずはテニスをですねー――」
 そんな感じで散々、遊んでから夕方にはレイを家に帰した。

 その夜――。
 コンコンと寮のドアをノックする音がした。
「やっぱり来ましたか」
 ドアを開けると、レイが半泣き顔で立っていた。
「ふぇぇ、エイルズぅ……十三巻がなかったよぉ」
 実は先程貸した漫画から、物語の核とも言える第十三巻をわざと抜いておいたのである。
 一冊ないと前後の繋がりがわからなくなるという、超展開巻だ。
 レイが戸惑うのを見てやろうという、軽いイタズラだった。
「ハッハハ、すみません奇術士なもんで、つい種を仕込んでしまうんです」
 エイルズレトラが、パチっと指を鳴らすと、レイが持ってきた紙袋の中に十三巻が出現した
「あれ、あった! なんで!?」
「手品っていうんです」
「すげー! 僕にも使える?」
「簡単なのをお教えします、お姉さんに見せてあげてください。 びっくりしますよ」
 その時だった。
 部屋のドアが、勢い良く開いた。
 はぐれ天魔三姉妹の長女、リズが目を三角形にして飛び込んでくる。
「やっぱりここだったザマス! 逮捕するザマス!」
 その後ろからは、警官が突入してきた。
「なにか?」
「とぼけんじゃないザマス! 今日、何を教わったのかレイに聞いたら“禁断の遊び”と答えたんザマス! しかも、夜中に自分の部屋に来させるよう仕向けるなんて! 可愛い妹にどれだけいけない遊びを教えたんザマス!」
 その後、エイルズレトラは一時間に渡って、警察から事情聴取を受けた。
 誤解が解けて、リズにも謝罪されたものの、幼女にイタズラを仕掛ける危険性を痛感するのだった。


「よ、よろしくお願いします」
 空色のワンピースを着たメルが、アリス セカンドカラー(jc0210)の部屋を訪れた。
 まだ人に慣れていないのか、アリスの顔を遠慮がちにチラチラとしか見ない。
(引っ込み思案で人見知りな子に色々教えてあげられるとかもう、テンションを上げざるを得ないわね♪)
 女性同士、しかも見た目年下なので、そこまで警戒はしていないメルだったが、実はアリス、男性などより遥かに危険な性癖の幼女なのだ。

「私がレッスンするのは、ヒプノアロマトリートメントよ☆」
「どんなレッスンなのでしょうか?」
「名目上は、自己催眠を用いたリラックス法や、自分でできる美容マッサージのレッスンよ」
「名目上?」
「ゲフンゲフン――服を脱いで、そこの施術台にうつ伏せになってくれる?」
「え、脱ぐんですか? 教科書とかを見て覚えるのではなく?」
「まずは体験した方が覚えやすいのよ」
「なるほど、そうですね」
 メルは、素直に服を脱いだ。
 瑞々しく白い胸が、白い下着の中で肉感を讃えて揺れている。
(うひー! なにこの娘、心は純粋、体はエロエロって反則すぎでしょ!)
 施術台の周りで香を焚き、リラクゼーション音楽を流す。
 下着姿でうつ伏せになっているメルの背中に、オイルを纏わせた掌を這わせる。
「どう? 気持ちいい?」
「はい――頭がポワァってなってきました」
 しばらくマッサージを続けていると、メルの蒼い目がトロトロに蕩けだしてきた。
 頃合いとばかりにアリスは、一冊の本を渡す。
「退屈かしら、これでも読んでおいて」

 週刊誌やファッション誌ではない――それらよりも、薄い本だ。
 中身を見ると、全頁に渡って美少女同士がくんずほぐれつしている。
 しかも、本来美少女には生えていないはずのものが、生えている。
「あ、あのアリス先生、この方たちは一体!?」
 顔を真っ赤にするメル。
「男の娘よ」
「男の娘? それは男の方なのでしょうか? 娘さんなのでしょうか?」
「どちらでもあり、どちらでもないと言えるわね――今、人間界では男の娘は男の娘同士、女の子は女の子同士で愛し合うのがスタンダードになってきているの☆ お互いの気持ちを理解し合える同性同士の方が愛し合えば幸せになれるのは当然じゃない☆」
 マッサージの快楽に、蕩けた顔で頷くメル。
「そうなんですか……よかったあ、私、ずっと前から、お姉さまと椿さんは、結ばれるべきだと思っていたんですよ」
「お姉さまって、ザマス女の事かしら? 椿さんは斡旋所の、なのだわ女よね?」
「はい、椿さんってお金持ちと結婚したいみたいなんですよ、今ならお姉さまもお金持ちですし、お姉さまもいつも椿さんの事ばかり話すんです――お二人が結ばれたら、幸せになれると思うんですよねぇ」
 夢うつつに語るメル。
(ちょっと、この娘、最初から素質満点じゃないの!? しかもアラサー女同士のカップリング妄想とかレベル高すぎでしょ! ふふっ、このまま姫女子として伸ばす? 男の娘から入ってBLもこなせるよう伸ばすのもいいわね、逸材だわ☆)
 この後もアリスは悪魔の舌で様、メルをダメな方向に教育をしていくアリスだった。


「私はファッションについて、個人レッスンさせてもらうわ♪ レイちゃんよろしくね♪」
 レイは、バンザーイをしている。
 会うなり雁久良 霧依(jb0827)に、タンクトップを脱がされているのだ。 
「どうして服を脱ぐの、霧依お姉さま?」
「おしゃれをするためよ♪ 脱がなきゃ別の服を着られないでしょ♪」
「そうだね! 僕もいろんなお洋服着てみたいよ!」
「よかった♪ あら、レイちゃんブラつけてないのね♪ ハァハァ」
「うん、メルお姉ちゃんがまだ早いって――どうしたの? 息が苦しいの?」
「大丈夫よ♪ 少し外の空気を吸ってくるわ♪ ハァハァ」
 霧依にとって、幼女の香りは酸素なのだ。
 レイのそれが濃厚すぎて、過呼吸を起したのである。

「まずは初ブラをつけてみましょう、いろんな下着を着けて二人でファッションショーよ♪」
 こども用下着専門店じゃないかというくらい、雁久良にはジュニアブラやおぱんちゅがたくさんあった。
 それを脱いだり、着たりしながらレイが尋ねる。
「こんなに着ていいの? 後でお洗濯大変じゃないかな?」
「どうしてお洗濯する必要があるのかしら♪ 理解出来ないわ♪」
 本当に理解出来ない事を言う霧依。
 一通り匂い付け――もとい、試着をさせると今度はその上から、いろいろな服を着させてみる。
「水玉ワンピース♪ 可愛いわ♪」
 スカートを翻し、くるっと廻ってみせるレイ。
「わあ、なんかお嬢様になったみたいだよ!」
 次の服をレイに着せる。
 黒のゴスロリワンピースに、霧依お手製の黒カチューシャ、魔女猫のぬいぐるみ。
「とっても似合うわ♪ 金髪ゴスロリは正義ね!」
「僕、お人形さんみたいだね♪」
「こんな人形あったら、私が買い占めるわ♪」
 続いて霧依は、着物を綺麗に着付けた。
 髪もよく梳かし、アップにしてメイクをナチュラルにする。
「わあ、綺麗な服だね」
「日本の伝統衣装よ♪ 金髪幼女に和服のミスマッチがたまらないわ♪ どうかしら、オシャレは楽しい?」
「うん! 今まで戦闘服かお姉ちゃんのお下がりしか着て来なかったから、オシャレするの初めてなんだよ」
 レイの無邪気な言葉に、目を潤ませる霧依。
「そう、じゃあ今度はお出かけをしましょう」
「お出かけ? これ着ていっていい?」
 着物の振袖を、金魚の尾のようにフリフリと振るレイ。
 霧依は、それをニコニコとして眺め。
「せっかくだから、とってもレイちゃんに似合うのが、もう一着あるのよ♪」

「なにこれ? キモノの方が可愛い気が……」
「そんな事ないわ♪ 体操着を盛り上げないお胸と、ブルマに包まれたお尻は正義なの♪」
 体操着にブルマ姿で外を歩かせ、連れて来たのは、ネギ農園だった。
「この長いのなに?」
「長ネギよ、人間界ではこうして野菜を育てるの」
「野菜は食べた事あるよ、リズお姉ちゃんに食べさせてもらった」
「そう、じゃあ今夜は、ネギま鍋を食べさせてあげるわ。 薬味としても活躍するけど、主役にもなる食べ物なのよ♪」
 しゃがみ込み綺麗な手が汚れるのを厭わずに、土いじりを始める。
「長葱はね、成長に合わせてこうやって盛り土するの、すると土を持った部分が白くなるの♪ 野菜はただ植えて収穫するだけじゃなく、手間をかければそれだけ美味しくなるのよ♪」
 大地と命の営みの関係を、真剣な顔で語る霧依。
 自身の命の営みに関する観念は歪んでいるのだが、それはまた別問題である。


「ごにゃ〜ぽ☆」
 待ち合わせ場所の図書館前、黄昏ひりょ(jb3452)は、初対面の少女にいきなりそんな挨拶を受けた。
「ご、ごにゃ〜ぽ?」
 メルは内気で大人しい少女と依頼書に書いてあったが、誤情報だったのだろうか?
「あ、あの……アリス先生に、人間界での挨拶を習ったのですが、やはり発音がどこかおかしかったでしょうか?」
「ごにゃ〜ぽの正しい発音は、俺にもわかりません」
 前任者に、イタズラで変な言葉を仕込まれたのかなと軽く思うひりょ。
 この後、仕込まれたのがイタズラどころでない事に、気付くことになる。

「メルさんは、どんな本が好きなのかな?」
「教練用の本とか戦術書しか読んだ事がないんです、前の雇い主が厳しくて」
 おどおどしながらも答えてくれるメル。
 別にひりょが怖いわけではなく、単に慣れていないだけらしい。
「ふむ、完全な読書初心者と考えてよさそうかな、なら、これから入ろう」
 ひりょが本棚から持ってきたのは『名作・傑作あらすじ大全』という本だった。
 “キミもこれで読んだフリが出来る!”というキャッチコピーの本である。
「ここから、まずは面白そうだと思うものを探してみて、そしたらその本を持ってきて、ちゃんと読書をしよう」
 素直にあらすじ大全を読み出すメル。
 いつしか、メルの美しい顔が真っ赤になり始めている。
「あ、あの……ひりょ先生……」
「どうしたの?」
「ここに載っている本は、もしかすると、変態さんが読むためのものばかりなのでしょうか?」
「はい?」
「い、いえ何でもありません、読んでみたいのはこれと、これと……」
 指定してもらった本の題名を、記憶するひりょ。
「わかりました、どれも俺が読んだ事のない奴だね、まずは外へ出よう」
「ここで本を借りられるんじゃないですか?」
「そうだね、ただ返却期限があるんだよ、慣れないうちは本を読むのって時間がかかるからね」
 メルを連れて、書店へ向かう。
 道中、自分たちに視線が集まるのを感じる。
「男の方たちが、ずいぶんこちらを見てくるんですが――」
「まあ仕方ないよ、可愛い子には興味を持つし、つい視線が行っちゃうものだからね」
 メルも目立つ格好をしているわけではないのだが、女優やアイドルが持つような美少女オーラを放っているのだ。
 これは隠そうとして、隠せるものではない。
「ひりょさんは、おモテになられるんですね」
 真剣な目で言うメル。
 最初は、冗談かと思っていた。
「またまたあ、みんな、メルさんを見ているに決まっているでしょう」
「私を見ているんですか!? では、あの男の方たち全員変態さんですか!?」
 顔を真っ青にして言うメル。
「今日び、異性を好きになるだなんて、変態のやる事だってアリス先生に教えて頂きました――久遠ヶ原は変態だらけって本当だったんでですね」
 ガクブルし、目尻から涙を流しているメル。
「まさか……」
 嫌な予感がした。
 書店に入り、さきほどメルが指定した題名の本を探すと……。
「全部、同性愛テーマだ」
 ひりょは、すりこみの力と言うものを思い知らされた。
 人間界に来たばかりの純粋な少女。
 その最初の先生となったアリスが、腐敗の魔少女だったのである。
 そのせいで、真っ白なメルは何の抵抗もなく、染められてしまったのだ。
(俺が最初に、と立候補しておくべきだったか、今さらだけど……)
 このまま、腐らせるわけにはいかない。
 何か、メルの心が洗われるような本をプレゼントしたかった。
 だが、大抵の物語の主人公は異性に何らかの形で興味を持っているものだ。
 つまりメルにとっては“変態さんの読む本”なのである。
 この課題は、斡旋所経由ででも今後、コンタクトをとり続けて解決しよう。
 難しい宿題を、持ち帰る事になったひりょだった。


 レイはエイルズレトラの人生を軽く終了させかけたりもしたが、漫画、ゲーム、手品、オシャレ、農業に触れ、様々な事に興味を持ち始めている
 一方、メルはこのまま腐敗していくのか、誰かに浄化されるのか?
 純粋美少女たちへの教育は、ここからが正念場となる。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 奇術士・エイルズレトラ マステリオ(ja2224)
 腐敗の魔少女・アリス セカンドカラー(jc0210)
重体: −
面白かった!:8人

奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
群馬の旗を蒼天に掲げ・
雁久良 霧依(jb0827)

卒業 女 アストラルヴァンガード
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
撃退士・
僅(jb8838)

大学部5年303組 男 アストラルヴァンガード
恐ろしい子ッ!・
ハル(jb9524)

大学部3年88組 男 アストラルヴァンガード
腐敗の魔少女・
アリス セカンドカラー(jc0210)

高等部2年8組 女 陰陽師