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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/08/11


みんなの思い出



オープニング


 “開園迫る! タイラント水遊園!”
 今、久遠ヶ原島内のあちこちに、このポスターが貼られている。
 その名の通り、プールで構成された水の遊園地だ。
 久遠ヶ原島付近の小島に学園関係企業が建設した、夏のレジャーランド。
 撃退士専用、水の遊園地!
 これはいける! 絶対、楽しい!
 誰もが思った。
 だが、プレオープン時の評判が捗々しくない。
 予約チケットも全然、売れなかった。
 園長は今日のプレオープンに参加した撃退士たちに、意見を聞いてみた。


「恐さが足りないんじゃないですかね?」
 高等部の男子生徒、小田は不敵な面構えで、ウォータースライダー“シュミセン”を見上げた。
「しかしキミ、この“シュミセン”は、長さ300m、高さ30m、最大傾斜60度はある。 どれをとっても日本最高クラスだ。 速度だって70キロは出るんだよ」
「70キロwww ワロスwww 新幹線の四分の一www ハエが停まるわwwww」
 小田は大きな掲示板に、かぶれている痛い子のようだった。
「僕ら、撃退士ですよ! 恐い目にいくらでもあってるんです! 普通の人間には最高クラスの恐怖でも、僕らにとってはワロスクラスですYO!」
 聞くべき部分はあると園長は思った。 だが、言い方がムカつく、
「ふむ〜、ならもっと怖くするか、長さを三倍にして、速度を――」
「そういうのも必要ですが、“だけ”じゃダメですね、もう一ひねり何か欲しいところです。 ウォータースライダーにこれがあったら怖い、これをされたら怖い、みたいな何かが」
「例えば、どんなものかね?」
「何でオレに考えさせるwww 自分で考えろやwwww」
 園長は、俺がアカシックレコーダー:タイプAだったら、小田をサンダーブレードで滅多切りにしてやりたいと思った


「エロスよ! この遊園地にはエロスが足りないの!」
 大学部一年のツグミは、V字ハイレグ紐水着の下で、バケツプリンサイズの胸を寄せてあげて魅せた。
「しかしその――ゴクリ――そういう水着だけで、プールというのは充分、セクシーな場所だと思うんだが」
「ダメ! そんなんじゃダぁメ!」
 ツグミが園長に顔を寄せてくる。
「わたくし、ロリロリできゃわわな幼女たんたちを、ペロペロくんかくんかする機会を求めて、このプレオープンに参加しましたの! なのに何? 幼女たんはたくさんいるのに、全然、触れないじゃない! 舐められないじゃない!」
「いや、それは犯罪ですから」
「そこを犯罪にならないように、イベントやらアトラクションやら考えるのがアナタの仕事でしょう! おっさんという、幼女から最も遠い位置にいる汚らわしい生き物なのだから、それくらいの仕事はしていただかないと、アナタに存在価値すら感じませんわ!」
 そう言いツグミは、熟れた白桃のようなお尻を揺すって帰ってしまった。
 エロイがムカつく。


「そら、競争性やろ、競争性」
 中等部二年の三笠は気の強そうな顔で、流れるプールを指差した。
「ウチら現代の戦士やからね、負けん気や闘争心が人一倍高いんや! この流れるプール。   
 あと、あっちにある波のプール! ああゆうのを見とったって、流れに逆らって競泳したくなる! 波の中でバトルしたくなる! それが撃退士や!――でもこの程度の流れや波じゃ、ウチらには生ぬるいね! もっと激しくした上で競泳でも闘いでも、闘争心かきたてるようなイベントを、日に何回か起こさんと遊びに来る気にはなれへんよ」
 関西弁で捲し立てると、少年はせっかちに去ってしまった。
 波や流れでなくとも、とにかく競争がしたいらしい。


「そこはポコ、やはり拡張性ポコよ」
 タヌキ教諭は、哲学的な顔で頷いた。
 久遠ヶ原に時々いる、着ぐるみ人間。 あるいは動物顔のはぐれ天魔だろう。
 パンダとか、猫とか、鳩はいると聞いていたが、こうしてタヌキオヤジも存在したのだ。
「売店で売っているのが、ビニールボートやビーチボールじゃありきたりポコ。 これをプールに入れたら楽しい、ってオモチャを売って欲しいポコ」
「オモチャですか、それは盲点でした」
 確かにオモチャが売れれば売上にも繋がるし、プール遊びのオリジナリティも高まるのだ。
「既存のものをあっと驚く使い方をしても、オリジナル商品を開発しても構わないポコ、
専用プールを作ってもいいポコ! “これは化かされた!”と驚くような凄いアイディアを出して欲しいポコ」


 いろいろ意見が出たが、今日来た撃退士たちは不満を言うばかりで具体的な解決案を何一つ出してくれなかった。
 もう夏が来ている、急ぎ改造工事せねばならない。
 園長は急ぎ、新たな撃退士たちを呼び、改良案を募った。
 ――そして、正真正銘のオープン日がやってきた。


リプレイ本文


目の前に広がる青いプールの上空を、袋井 雅人(jb1469)が全裸姿で飛んでゆく。
「アーーッ!」
「……ああ……袋井先輩がぁ……」
 モーモー柄の水着の月乃宮 恋音(jb1221)が、飛んでゆく恋人を心配そうに眺めている。

 タイラント水遊園開園初日。
 改造案を担当した撃退士たちは、完成後の出来栄えを確認すべく視察をしていた。
 最初に視察したのが、

“水圧射出式ウォーターロケット、クラッシュダイブ君一号”

 北条 秀一(ja4438)が企画したアトラクションだった。

【空を飛びたい? そんなあの日の夢をかなえます】

 などという、ドリーミーなキャッチコピーに惹かれて袋井が試乗したのだが、
「これ! 怖すぎ! 危険すぎです!」
 プールからあがってくるなり叫んだのは、感想というより苦情だった。
 なにせ、床を水圧で一気に押し上げ、中にいる人を人間大砲の様に射出。
 先にあるプールに叩き込むという、暴力的なアトラクションなのだ。
 屋台で、焼きそばを食べている北条に訴える。
「アトラクションというよりも罰ゲームですよ! 撃退士でも最悪、ショック死します!」
 北条が立ちあがった。
「食事とは、誰にも邪魔されず静かにとるものだ」
 袋井の右腕を取り、関節を極める北条。
「痛てて! アームロックやめてください! それ以上いけない!」
 騒いでいる二人の前で、恋音が頬を赤らめた。
「……いけないのは、袋井先輩ですぅ……」
 前髪の間から袋井の下半身をチラチラ見ている。
「え?」
 袋井は、完全にすっぽんぽんだった。
「か、海パンは!?」
 本人は履いていたつもりだ。
「どうやら“地獄のシャワー〜ポロリもあるよ〜Mk1“が、誤作動したな、水着を着られたい女性の水着のみ切るようMr.Lが発注しておいたはずだが――」
「何ですかそれ!?」
 要は、北条のせいで、袋井の海パンが犠牲になったという事だ。

 どうせトンデモになるだろうと予想されたが、やはりトンデモだった改造後タイラント水遊園。
 プレオープンの数倍の混み具合ということもあり、撃退士たちは最低限の人数でアトラクションに挑戦しながら、園内を見て回っていた。


「いろんなプールが出来て楽しそうなのだー♪ 他の人がどんなプール提案したのか楽しみ♪」
 おてんば全開ではしゃぎながら、白いツーピース水着の十歳児、焔・楓(ja7214)は皆の先頭をスキップしている。
「楓ちゃんったら、エッチな体ねえ♪」
 特定の人以外からはエッチに見えない楓を、誰から見てもエッチな体を上気させて眺めている美痴女は雁久良 霧依(jb0827)である。
「あれがジェットコースタースライダーなのだー!」
 完成したばかりのそれを、嬉しげに眺める楓。
「ジェットコースターは楽しいし、ウォータースライダーに取り入れれば面白くなるんじゃないかな? かな?」
 無邪気なその姿にメロメロになる霧依。
「天使だわ、天使がいるわ♪ あとでペロペロね♪」
「あらぁ、人を天国に送ってくれそうな素敵な滑り台ねェ」
 黒百合(ja0422)が、ジェットコースタースライダーの構造を分析して、そう言った

「小さな子の考えたアトラクションだ、大した事はなかろう」
 ジェットコースタースライダーの上に登り、滑り始める北条。
 志願理由は、完全なる舐めプである。
「なに! 思ったより流れが速い!」
 ウォータースライダーには水が流れているものだが、それが異常に速かった。
 滑り台自体の急勾配もあり、新幹線のそれを超えた速度で、北条の体は三百六十度ループ地帯に突入しようとしていた。
 「いかん、ここは減速だ!」
 生命の危機を感じ、“不動”の術を発動させる。
 とたん――
「……」
 声なき声をあげて、北条は空に飛ばされていた。
「やったー! あそこで減速すると、ジャンプ台になるように仕掛けて置いたのだー!」
 上空を数十メートル舞い、隣りのプールに落ちた北条の姿に、万歳する楓。
「小悪魔だわ! 小悪魔がいるわ♪ あとでペロペロね♪」
 霧依は、美幼女なら何でもいいらしい。


「スライムプールなんて、えっちねぇ、恋音ちゃんは」
「……そういうわけではなくぅ……撃退士の鍛錬になると思いましてぇ……」
 恋音が用意したアトラクションに、霧依は迷わず飛びこんだ。
 澱粉やら謎薬品やら混ぜて作った高粘性プールである。
「さあ、楓ちゃん入りましょう、お姉さんが粘液プレイを教えてあげる♪」
「なんだかわからないけど、楽しそうなのだー!」
 無防備に飛び込んでしまう楓。
「楓ちゃん、待ってぇ! お姉さんペロペロしたいのぉ」
 楓を捕まえようと追いかける霧依だが、粘液が絡み付いて思うように動けない。
 一方、楓は凹凸のない体のお蔭であまり、水の抵抗を受けなかった。
 「うへー、このプールベタベタして気持ち悪いのだー、早くあがるのだー」
 洗浄用に用意された、隣のプールに移動する楓。
「さっぱりしたのだー!」
 洗浄プールからあがり、無邪気に仲間の元へ走ってゆく楓。
 だが、
「……楓ちゃん、タオルを巻いたほうがぁ……」
「え? あ! 水着がーー!」
 落ちたのは粘液だけではなかった。
 水着のブラが、粘液に捕らわれて脱げていたのだ。
 露わになったそれを、恋音のそれと見比べる袋井。
「う〜ん、恋音と比べると小さいというか無に等しいですね」
「……先輩ぃ……人としてどうかとぉ……」
「見えるのね! そっちからは楓ちゃんのちっぱいが見えるのね!」
 興奮に目を輝かせ、粘液プールからあがろうとする霧依だが、起伏の激しすぎる肉体に粘液が絡みついてなかなか動けない。
「待って、何も着けずに待つのよ、楓ちゃん! お姉さんが今――ああ、動けない、動けないけどぬるぬるが気持ちいいわぁ♪」
 忘我の境地に陥った霧依を放置して、撃退士たちは次のアトラクションへと向かった。


 袋井の立案のアトラクションは“お化け屋敷+プール”という企画だった。
 水深五センチ程のお化け屋敷を、裸足に水着という無防備な姿で回る事で恐怖感を倍増させようという意図である。
「時々、雷雨でびしょ濡れになるんです、そこに生暖かい風が吹いて濡れた布がビシャっと肌に触れたりする、新感覚の不気味さ表現したお化け屋敷ですよー」
 パンフには“素肌で感じる冷たいお化け屋敷、はじめましたー!”とある。
「面白そうねぇ、あたしが入るわぁ」
 名乗り出たのは、黒百合だった。
「く、黒百合さんですか」
「……もうオチが、見えた気がしましたぁ……」

 黒百合が入口に入ると、おどろおどろしい語り口で物語が説明された。

 ダムの下に沈んでしまった呪われた場所の“天人村”
 真夜中に“龍神川”を上流に探検して行くとなんと失われたはずの“天人村”に辿り着くという都市伝説がある。 
 貴方は、今や悪鬼悪霊や妖怪どもの住処になっている“天人村”に、足を踏み入れてしまった。

 要約するとそんな感じの物語に沿って、笑う骸骨やら、水の中から覗く光る目玉やら、恐ろしい物の怪が次々、登場するのだが、黒百合は――、
「何が可笑しいのかしらぁ、私にも教えてくれなぁい?」
 骸骨を脅迫したり、
「覗きなんてするお目目は、潰しておいてあげるわぁ」
 目玉を踏みつぶしたりと、黒百合流に突き進んでしまう。
 川の水が真っ赤になる仕掛けも、
「素敵な色ねぇ、ここで泳がせてもらうわぁ」
 と、外のプールよりも気に入って、居座ってしまう始末だ。
 お化け屋敷の天敵、それが黒百合だった。

 アトラクションから出てきた黒百合は、水着を血の川で紅に染めていた。
 まるで、何人か殺してきたかのような姿だ。
 企画者の袋井に向かって、
「恐かったわぁ、こんなに恐い想いをしたの初めてよぉ」
 と、感想を述べたが、言われた袋井の方が怖かった。


「小生意気できゃわわなレジスたんすめ、覚悟なさい!」 
「お姉さんがペロペロしてあげるわ、素直に捕まるのよ♪」
 特撮物の女幹部そのままの格好をした女性二人が、小学生の軍団と対峙している。

“タイラント王国の動乱” 

 霧依のアトラクションに挑戦させられた恋音は、その様子をガクブルしながら物陰に隠れて見つめていた。
「……なんでしょうかぁ、この世界はぁ……」
 パンフによると、そもそもこの水遊園は、暴君タイラントの支配する王国という設定だという事になっていた。
 他の各種アトラクションが無茶なのも、暴君の圧制の表現だそうである。
  小学生以下のお客さんは、タイラント王国に抵抗するレジスたんす。
 それ以上のお客さんは、王国の幹部。
 今いる二人の女幹部は、一人はむろん霧依、もう一人はこのプールのエロス不足を指摘したツグミという女性だそうだ。
 両勢力が、水着基調のコスプレをしてバトルする、という内容である。
 問題は、そのバトルの内容なのだが――、
「怪我をしないよう接近戦では、くすぐりとペロペロだけよ! 我慢するのよ、霧依さん!」
「わかっているわ♪ ツグミさんも間違いを起こさないよう、同性しか狙っちゃだめよ!」
 水着姿の小学生を捕まえて、くすぐったり舐めまわしたりするというものだった。
「……見てはいけない世界を見てしまいましたぁ……早く袋井先輩たちのところにぃ……」
 この建物から脱出しようと、辺りを見回す恋音だが、
「あーん、ロリっ娘たちの魅力で、腰が溶けてしまったわ♪」
「魔王さまー、おたすけをー!」
 女幹部二人が、捕えたレジスたんを胸に抱えつつ、嬌声混じりの悲鳴をあげる。
 禍々しい音楽とともに、プロの声優さんの声がスピーカから流れ出した。

『我はタイラント王国の魔王なり、レジスたんどもよ、我が強大なる魔力袋の前にひれ伏せ』

 同時に、物影にいた恋音にスポットライトが当たった。
「……え?……」
 レジスたんすが、恋音のところに殺到する。
「見ろ! こいつ凄い魔力袋だ!」
「さては、うしちち魔王じゃな!」
「邪悪な魔力袋を、もぎとれー!」
 小学生たちの小さな手が、恋音の牛柄ブラ目がけ伸びてくる。
「……いやぁ……だめですぅ!……」
 この王国では乳の大きさ=地位なのだ! 仕方がないのだ!


 アトラクションの出口前。
「……散々な目に遭いましたぁ……」
 ボロボロにされて出てきた恋音は、袋井に肩を借りながら、ヨロヨロと歩いている。
「堪能させてもらったわ♪」
 霧依は、お肌ツヤテカだった。
「残るは、黒百合の企画か」
 不安げな顔の北条。
「最後だから、皆で遊ぶのだ♪」
 楓は元気だ。
「面白いわよぉ、どうせなら六人で競争をしなぁい?」

“アスレチック型プール・Leviathan(リヴァイアサン)”

 それが黒百合企画のアトラクション名だった。 
 四つのプールステージを攻略する施設である。
 見れば、すでに挑戦した客たちが、施設脇に設置された救急テントの下でうめき声をあげている。
 看板には『難攻不落の要塞』と謳い文句があった。
「攻略者は出た?」
 黒百合が係員に尋ねる。
 係員の老女は、黒百合を睨み付けてきた。
「いるわけないでしょ! あんたねぇ自重しなさいよ!」
 老女は、黒百合が企画者だと知っているらしい。
「おばちゃんがマジ切れするレベルとは」
「本格的にヤバそうだな」


 スタートのベルが鳴った。
 第一ステージ。 
 撃退士たちは、空中に作られた細い二十五mの板を歩き出す。
「うあー、横から鉄砲水が狙ってくるのだー!」
 左右に設置された高所放水車二台が、不安定な足場を歩く撃退士を狙う!
 黒百合は縮地、北条は防壁陣、袋井は高速機動、恋音は防壁陣、楓は全力跳躍、それぞれスキルを駆使して凌いだのだが、
「やーん、エッチなお水ねぇ♪」
 霧依は放水にやられて、全裸になり下のプールに落ちていった。
 水でマイクロビキニが脱げたような芝居をしているが、絶対にわざとだ。
「大丈夫なんでしょうか、霧依さんは?」
「心配ないわァ、遊泳のパートナーとしてプールにホオジロザメを放ってあるから、第一ステージで落ちても損した気分にはならないはずよォ」
「……気分の問題では、ない気がぁ……」


 第二ステージは高さ十五m、登攀用岩石が露出した岩滝を登るステージだ。
「この勢い! ナイアガラですか?」
「上から丸太が落ちてくるぞ! 気を付けろ」
 戦々恐々の撃退士たちだが、黒百合だけはマイペースだ。
「このプールには新鮮なピラニアが放ってあるの、落ちればアマゾン料理を堪能できるわよぉ」
「食われるのは、僕たちでしょ!」
 ここでまず脱落したのは、恋音。
 岩の突起と、彼女の体の突起物がぶつかり合い、ボヨヨン、ストーン、バジャアな感じだったのだ!
「恋音ー!」
 激流に流されてゆく恋音を追って、袋井も滝から飛び降りる。
「あらァ、仲がいいのねェ。 滝で心中したカップルの伝説がある観光名所はどこだったかしらァ?」
 発想が物騒すぎて、誰もついてゆけない。


 第三ステージは滝の上。
 一直線の二十五mプールだが、水流は激流の一言である。
 しかも、先刻の滝の水源でもあるため、
「丸太! こういうのもあるのかぁ」
 激流に混じって丸太が流れてくる。
 それに圧され、北条が脱落した。
 今ごろ滝の下へ落ち、リア充カップルを完食したピラニアたちのデザートになっているかもしれない。
 残ったのは、コースを知り尽くしている黒百合と、泳ぎが得意な元気っ娘、楓。
「優勝するのだー!」
「ついて来られる子がいるとは思わなかったわぁ、プールって楽しいわねェ」


 最終ステージは、勾配ステージ。
 勾配三十度ほどの坂道の上にあるボタンを押せば攻略完了となる。
 ただし、油田消火専用ジェットタービンポンプの放水を、正面から受けつつ進まなければならない。
 「設計者が最初に攻略してしまっては興ざめよねェ、私は見物させてもらうわァ」
 黒百合が高みの見物を決め込んだので、楓のみの挑戦となった。
「うわー! こんなん無理なのだー!」
 凄まじい放水に、小さな体はまるで前に進まない。
「きゃハァ、頑張りなさぁい、難攻不落の要塞攻略は目の前よォ」
「諦めないのだ! 目には目を! 大砲には大砲をなのだ!」
 楓は、幼い顔に決意を固めた。
 両掌に渾身のエネルギーを溜め始める。
「え、あんたまさか……」
「そこ、やめなさい!」
 異常に気付いた黒百合と係員がとめようとしたが、もう遅かった。
「封砲なのだー!」


 破壊されたLeviathanの跡地で、黒百合は係員からこってり絞られていた。
「アトラクションはあくまで“楽しませる”のが目的でしょ! あんたのは“殺しにきている”って言うんだよ!」
 気骨ある係員で、黒百合に怯えもせず正面から叱っている。
 だが、黒百合は堪えている様子もない。
「私は楽しかったわよぉ、次は頑丈に作ればいいじゃなぁい」
 こうして、撃退士の暴走に耐えられるよう改修に改修を重ねたタイラント水遊園は、いつしか軍事要塞レベル防御力を持つ、『難攻不落の要塞』と化してゆくのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 赫華Noir・黒百合(ja0422)
 ラブコメ仮面・袋井 雅人(jb1469)
重体: −
面白かった!:6人

赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
かわいい絵を描くと噂の・
北条 秀一(ja4438)

大学部5年320組 男 ディバインナイト
パンツ売りの少女・
焔・楓(ja7214)

中等部1年2組 女 ルインズブレイド
群馬の旗を蒼天に掲げ・
雁久良 霧依(jb0827)

卒業 女 アストラルヴァンガード
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー