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マスター:スタジオI
シナリオ形態:シリーズ
難易度:普通
形態:
参加人数:6人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2014/07/01


みんなの思い出



オープニング

● 
 その日、久遠ヶ原学園の一部の生徒は、中堅プロレス団体、関東プロレスの試合を観戦に来ていた。
「みんな、よく観ておいてくれよー、アウルを使わなくても人間はやり方次第で、ここまで強くなれるもんなんだよー」
 引率のクレヨー先生こと、小暮 陽一先生も、若い頃は二百キロを超える大柄な体型を買われ、プロレス団体やら相撲部屋やら各所からお誘いを受けたことがある。
 今回はその縁からか、チケットが大量に送られてきたのだ。
 

 前座試合が終わり、いよいよメインマッチ。
 挑戦者TARAOと現王者のベルセルク野口がリングにあがった時だった。
 会場の照明が一斉に消えた。
「な、なんだ?」
 非常用電源だけが灯り、薄暗くなったリング上。
 そこに、一人の男があがった。
 白いゴリラを思わせるマスクと、毛皮の衣装に身を包み、純白のマントを靡かせている。
「ナンデスカ! 試合中デスヨ!」
 TARAOが、独特の甲高い声で誰何した。
「乱入か? よくあるシナリオだな」
 プロレスではよくある事と、たかを括った観客たちだったが、今日に限っては、今までのそれと様子が異なっていた。
「俺は、サスカッチマン! 史上最強と言われた格闘技・プロレス! そこに終焉をもたらす、アウルレスラー六闘神の一人だ!」


「アウルレスラー六闘神だって!?」
 クレヨー先生が騒然とする中、リング上でそれは起こった
 サスカッチマンの全身が銀色に輝いたのだ。
「光纏したんだな!」
 サスカッチマンが、TARAO選手の肩に触れる。
 とたんTARAOの全身は、凍てつき動かなくなった。
 凍てついた肉体を、逆さまにして肩にかつぎあげるサスカッチマン。
「くらえ! 氷結クリスタルバスター!」
 動けないTARAOの両脚と首の関節を極め、そのままマットに叩き付ける。
 TARAOの肉体が、かつてないほど大きなダメージを受けたのは目に見えていた。
「グガハハハハッ! 他愛もない、これでもこの団体のスター選手か!」
「てめぇ、なにしやがる!」
 ベルセルク野口が、いきりたった。
 サスカッチマンの巨体を後ろから抱き上げようとする。
 名手と言われる野口のベルセルクスープレックスがまともに入れば、いかな怪人といえども無傷ではいられまいと、会場の誰もが期待した。
 だが、ベルセルク野口は突然、動かなくなった。
 自らの影に縛られ、操り人形になったかのようにぎこちなく手足を震わせ出したのである。
「な、なんだ、こいつぁ! 自由がきかねえ!」
 ベルセルク野口選手の影から這い出てきたかのように、リング上に一人の女が現れた。
 しなやかな長い黒髪に、鎖帷子のような衣装。
 くのいちを思わせるスタイルだった。
「月影飯綱落とし!」
 女はベルセルク野口選手の巨体を後ろから組み付き、ロケットのように宙へ跳び上がる
 空中高くで上下反転し、ベルセルク野口を頭からリング上に叩き付けた。
 動かなくなったベルセルク野口の頭を足で踏みつけ、女は名乗る。
「チャンピオンといえど、しょせんはただの人間、アウル六闘神たるこの月光蜂の敵ではないな」


「間違いない! あいつら撃退士なんだな!」
 サスカッチマンの技は『氷結晶』の変化技。
 月光蜂の技は『影縛の術』に『飯綱落とし』を組みあわせたものだと判断出来た。
「普通の人間の競技であるプロレスに、アウルの技を持ち込むなんて反則なんだな!」
 クレヨー先生は、リングに向かって怒鳴った。
 すると、サスカッチマンがマイクを持って答えた。
「反則、そう反則だろう。 ならば、ルールの方を変えてしまえばいい、俺たちの行為が反則でなくなるようにな」
「な!?」
「プロレスとは何だ? 強きものを魅せるためのショーだ! アウルを使おうと何をしようと、より強き者、より派手な技を観たいはずだ! そうだろ、みんな!」
 サスカッチマンの問いかけに静まり返っていた観客が沸き立った。
「そうだ! お前の言う通りだ!」
「あんなプロレス始めて見たぜ!」
「アウルレスラー最強よ!」
「アウルを使ってもいいよう、認めれてやれよ社長!」
 国際的スポーツ団体とは異なり、関東プロレスはさほど規模が大きくないプロレス運営会社だ。
 今、会場におり、元レスリング王者でもあるガトリング島本社長がルール変更を承諾してしまえばアウルレスラー六闘神の主張は認められる。
 だが、それは同時に己の肉体を鍛え上げ、その力で観客を認めさせてきた歴代のレスラーたちの存在をないがしろにすることにも繋がりかねなかった。
 老年のガトリング島本社長は、腕を組んだまま黙りこくっている。
 会場は、その返答を固唾を呑んで見守った。
 やがて、ガトリング島本社長がマイクを持って立ち上がった。
「久遠ヶ原の教師よ、あんたはどう思う?」
 問いかけられ、クレヨー先生は答える。
「アウルをスポーツに使うのは、ドーピングを認めるのと同じ事、許されないんだな」
 うなずくガトリング島本社長。
「アウル使い同士で意見が分かれたか、ならば力でしか決着出来ぬな」
「力で?」
「久遠ヶ原の教師よ、貴方の手でアウルレスリングを行う代表者六名を選出しなさい。 一か月後、その六名と彼らアウルレスラー六闘神が戦い、勝った方の主張を認めよう。 力あるものが正義、それが関東プロレスの社訓よ」
「待て、社長! 六闘神の主張を認めるとなると、俺たちはどうなる!?」
リングに倒れていたベルセルク野口が、立ち上がれないまま尋ねた。
 社長は、重々しくうなずいた。
「我が関東プロレスは、関東アウレスに生まれ変わる。 キミ達は独立でも移籍でも好きな道を歩むと良い」
「そんな勝手な!」
「そんな勝手な事はさせないんだな!」
 言葉をかぶせるかのように、クレヨー先生が鋭く叫んだ。
「力にしか従わないというのなら、僕がアウルレスラー六闘神を上回るレスラーを連れてくるんだな! 一か月後、僕たちが必ず勝ち、六闘神を引退に追い込んでやるんだな!」
 熱闘への期待の声で、沸き立つ会場。
 クレヨー先生は啖呵を切ったものの、実際、六闘神を上回るアウルレスリング技術の持ち主など滅多にいるものではない。
 まずその育成の土台となる撃退士の募集から始めねばならなかった。


リプレイ本文


 久遠ヶ原島西部に建つ体育館。
 薄暗い館内は満場の観客と、激闘を期待する熱気に溢れかえっていた。
『これよりシングルマッチを開始します。 選手入場! 赤コーナー――』
 勇壮なテーマ曲と共に、南の入場口がスポットライトで照らされた。
『ヨナシロ マヤー!』
 青を基調としたリングコスチュームに身を包んだ長い黒髪の少女・與那城 麻耶(ja0250)
が、光の中をリングに向かって一歩を踏み出した。
「例え、実戦であれど掌に武器は握らない。 その矜持を胸に、少女は沖縄から戦士の神殿・久遠ヶ原島へと渡って参りました! プロレスを愛する少女は天魔すら投げ技で制し、敵の攻撃をレスラー魂で受け止め、今日まで生き残り、成長してきたのです! 新久遠ヶ原プロレスを起ち上げて早数年! 見よ! 鍛練の成果を! 磨き続けたレスラー魂を!」
 エプロンを経ずして、リングロープを軽く飛び越える麻耶。
「陽照蜂(シャイニングビー)・與那城 麻耶! 今、リングイン!」
 


 『メデューサー・クロガミー!』
 場内のテーマ曲が、サッカー世界大会を思わせる男声合唱曲に変わった。
 北の入場口がスポットライトで照らされ、黒いスポーツブラにロングタイツ、レガースというスタイルの少女、黒神 未来(jb9907)がリングに向かって走り始める。
「幼少の頃より運動神経抜群。 学業成績なんのその! スポーツ推薦で未来を切り開いてきた女! しかしその未来は、天魔襲撃をきっかけとするアウル覚醒で、大きくその位置を変えました! 黒神未来、いやメデューサ黒神は、このリングを新たな出発点とし、いかな未来へ向かおうというのか!?」
 トップロープを乗り越え、リングインするメデューサ黒神。
 同時に、オープンフィンガーグローブに包まれた掌を、ピストルの形で天に掲げる。
 


「先生、これは?」
 実況アナが、解説のクレヨー先生に尋ねる。
「シュートサインなんだな! ガチでやるという意思表示なんだな!」
 リング上を見れば、麻耶も同じポーズでそれに応えていた。
「しかし二人は同じ真久遠ヶ原プロレスの部長と新人部員、いわば師弟関係にもあたるはずですが?」
「リングに上がったら、そんな事は関係ないという事なんだな!」


 戦闘開始のゴングが鳴った。
「はぁっ!」
 麻耶が身を光纏の輝きに包み、跳躍した。
 通常のレスラーでは、到達出来ないであろう高空から蹴撃! 
 圧倒的位置エネルギーのドロップキックが、黒神の胸に光の矢となって突き刺さる!
「くっ!」 
だが、黒神も光纏している。
 リングに尻もちはついたものの、その威力に耐えた!
「さすがは部長や! けど!」
  黒神も、蹴りを放つ。
  極めて低い位置からのローキック。
「うちはプロレスだけやない! シュートボクシングもやっとんのや!」
 麻耶がよろめいた瞬間を狙い、黒神は背後に回り込んだ。
 麻耶の胴を両腕でクラッチする!
「これが、女の武器や!」
 虹を描くようなバックドロップが、マットを揺らした。
 脳震盪を落とし、動けない麻耶の髪を掴んで引きずり起こす。
 今度はフロントスリーパーに極めようとする。
 だが――。
「その武器、まだまだね!」
 麻耶の脳震盪は極めて浅いものだった。
 懐に引き込まれたのを逆用し、黒神の体を肩に担ぎあげる。
 自ら横に倒れこみながら、黒神を頭部から落とす!
『炸裂ぅぅ!』
 地獄落としに沈む黒神。
 倒れたその耳に、聞き覚えのある罵声が響く。
「なにやってんだ、だらしねーぞー!」
 控室にいたはずの秋桜(jb4208)が、リングサイドで野次を飛ばしている。
「秋桜、うっさい! こんなん、効いてへんのや!」
 立ち上がると共に、黒神の左眼が赤く輝いた。
 メデューサアップ!
 これにより、相手の攻撃は一切、効かなくなる――
「フリだろ?」
 からかいを飛ばしてくる秋桜。
「邪魔すんな!」
 しっしっと追っ払う黒神。
「シュートボクシングで鍛えた拳、見せたるわ!」
 黒神は、闇の力を左腕に纏い始めた。
「なら!」
 麻耶は、光の力を右膝に纏う!
 黒神は麻耶に向かって、全力で駆けた!
 麻耶は、その黒神の膝を踏み台に、跳ねる!
『これは!』
『ダークブロウと、シャイニングウィザードの空中激突なんだな!』
 リング中空で闇の拳と、光の飛び膝蹴りが正面衝突する!
「くっ!」
 苦悶の表情を浮かべたのは麻耶だった。
 闇の拳に膝を砕かれている!
「なんの!」 
 痛みを堪え、自らの奥義、S・O・QBボムを仕掛けようと黒神に組み付く。
「焦りすぎやで部長!」
 逆に、麻耶をうつ伏せに組み敷く黒神。
 麻耶の右足首と右膝を両脚で極め、両腕で麻耶の顔面を抱え込んで顔面を締め上げる。
『ペトリファイロックなんだな!』
『つまり、石化固めですか!?』
『首を極めたところで、相手に氷の眠りを与える、メデューサ黒神のフィニッシュホールドなんだな!』
 技をかけられた麻耶の瞼が、緩やかな開閉を繰り返し始める。
『落ちるか? これが決まれば、勝負は確定だ!』
(頼む! 落ちてや! これが決まらんと――)
 蓄積されたダメージで、体力が限界に近い。
 勝利への執念から、祈りを捧げる黒神。
 だが願い虚しく、麻耶の目は開いた。
「未来ちゃんは、もう終わりでいいの? 私はまだ、プロレスの楽しさを伝え足りないよ!」
 未来の技を振りほどき、体勢を入れ替え、ドラゴンスリーパーに極める麻耶。
 これも眠りに誘う技だが、スキルではなく動脈を圧迫し、脳を酸素不足にする事でそれを為す正統なプロレス技である。
 時間と共に、力の抜けてゆく黒神の体。
 その首、腕、脚を麻耶が極める!
 黒神を抱え上げ、宙へと飛び上がる!
『今度こそ決まるか!? S・O・QBボム!』
 轟音! 
 黒神の頭がマットに叩き付けられた。
 動かない黒神の意識を確認するレフリー。
 そして――
『與那城 麻耶! KO勝利―!』
 ゴングと共に、笑顔で右腕を掲げる麻耶。
「んー、楽しかったー!  やっぱプロレスが大好きだー!」


『チャンコマン&新崎 ふゆみーぃ!』
 南入口にスポットが当てられ、二人のレスラーがリングへと向かう。
「ぬぬぬ、すごいんだよっ……ふゆみもあんなふーにカッコヨク戦えたら、レスラーになってオカネモチになれるかなっ?!」
 シングルマッチの激戦に感化されているツインテール少女は、新崎 ふゆみ(ja8965)。
 イエローのビキニ水着がエロカワな美少女である。
 言動といい容姿といい、きゃぴるんな感じだが、実は家計のため昼夜働く母と、幼い弟妹を助けるために撃退士となった苦労人だったりする。
「そのためにも、この私……チャンコマンが直々に稽古をつけてやる!」
 ふゆみの隣に立つ大男は、阿岳 恭司(ja6451)。
 ずんどう鍋型マスクを着けた今は、チャンコマンと名乗っている。


 『秋桜&フェンリルー!』
 北入口を照らすスポットライトの中を歩くのは、犬耳のマスクと赤と白のハイレグ水着の少女レスラー、フェンリル。
 そして、顔は青いサキュバスなのに、体は普通の人間と同じ肌色という不思議な女子レスラー、秋桜だった。
 フェンリルの正体は長身美少女の遠石 一千風(jb3845)。
 だが、秋桜の正体は、まんま秋桜である。
「あの、秋桜さんの肌色スーツは意味があるんですか?」
 歩きながらフェンリルに尋ねられ、秋桜は真顔で答える。
「アイドルとしては顔バレヤバイじゃん、これ覆面って事にしといて」
 要するに『秋桜の仮面をかぶった、普通の人間』という設定にしておきたいらしい。
 (誰がアイドルなんだろう?)
 フェンリルの中に疑問は残ったが、ともかくリングインした。


 ゴングと同時に、フェンリルが光纏した。
 全身に不思議な文様が浮かび、鎖に繋がれた狼を想起させる姿となる。
「ウォォォォン!」
 狼そのものの雄叫びをあげるフェンリル
『ふゆみの腕を掴み! ロープに振ったぁ!』
 ロープの反動で、戻ってきたふゆみにラリアットを仕掛ける。
 青コーナーに控えるチャンコマンが、ふゆみに声を飛ばした。
「相手の腕を捕えるんだ!」
 ふゆみは、伸ばされたフェンリルの右腕を両腕で掴み、それを軸にして背後に回り込む。
 相手の背後から両足を内側から引っ掛け、両手を絞り上げた!
『いわゆるリバースパロスペシャルなんだな!』
「こーほー」
 ふゆみが謎の呼吸音をあげているが、三十分後に全身から煙を上げたりしないだろうか?
 苦手な関節技にフェンリルはもがき、悲鳴をあげている。
『早くも完全に極まっているように見えます、しかしこれはタッグマッチ』
 実況の言葉を継ぐかのように、チャンコマンが大声で叫んだ。
「カットが入るから気を付けろ! タッチしていなかろうが、レフリーが見ていようが、五秒以内ならパートナーが攻撃に割り込んで、何の問題もない!」
「え、見られててもいいのかよ?」
 チャンコマンの言葉に真っ先に反応したのは、秋桜だった。
 リングのエプロンにいる彼女は、今まさに、レフリーに背後から金的を喰らわせようとしていたのだ。
 悶絶しているうちに、フェンリルを助けてしまおうという作戦だったのだが、一手間省ける事を理解した。
 背に闇の翼を広げ、超高空からのドロップキックを、ふゆみに見舞う。
『ここで秋桜、ダークウイングドロップ!』
 ふゆみが蹴り飛ばされ、フェンリルは関節技から逃れた。
 だが、十数秒間の責め苦で息が乱れている。
「フェンリル氏、タッチだ」
 試合権を、フェンリルから秋桜へと移す。
 秋桜はリングに倒れているふゆみに、アンクルホールドをかけた。
「ウギャア チャンコマーン!!」
 足関節を激痛に攻められ、奇声で助けを求めるふゆみ。
「さすが超人プロレス漫画を全巻、Web連載分まで読破しただけの事はある!」
 わかる人にしかわからない部分で、感心するチャンコマン。
 ロープを飛びこし、カットに入る。
「カットを求めても、そのカットが相手のパートナーに止められる場合もある! 自分の力で苦難を切り抜けてみせろ!」
 チャンコマンの大声を聞き、フェンリルもカットに入る。
 ふゆみを救出しようとしていたチャンコマンの後頭部に、ハイキックを浴びせた。
 よろめくチャンコマン。
 この男、かつてはプロレスラーとして生きていた。
 プロレスの未来を守る為、今回は敢えて未経験者三人を徹底的に鍛え上げる鬼教官に徹する事を決意しているのだ。
 選抜戦での敵味方、自分の勝利よりも、大切なものがチャンコマンにはあった。
 だが、そのパートナーの救援が受けられないふゆみは――。
「わ、笑った!?」
 秋桜の技で、足関節が切られそうな痛みを受けているのに笑ったのである。
「くそぉ、ギブアップじゃねーのかよ!」
「こーほー」
『あーっと、ウォ……ふゆみ選手、ここで!』
 濃縮されたアウルの輝きがふゆみの全身を包み、秋桜の関節技をパワーで強引に外した!
「身体のリミットを外して、百万パワーが倍の二百万パワーだあー☆」
  荒死により一時的に向上したパワーで、秋桜に打撃の嵐を浴びせるふゆみ。
「うう、調子に乗ってんじゃねえー!」
 秋桜はキックを捕えて、ドラゴンスクリューに持ってゆこうと狙った。
 だが、横殴りの吹雪の如く打撃に耐えきれず、ついに倒れる。
「ツープラントンフィニッシュだ!」
 青コーナーに戻っていたチャンコマンがリング中央に向かった。
 フェンリルもカットに出てこようとしたが、ロープを跨ごうとした瞬間、ふゆみに、ローリング・ソバットで場外に落とされる。
 ふゆみとチャンコマン、二人で秋桜の腰を後ろからクラッチして抱え上げ、そのまま後方に反り投げる!
『ダブル・ジャーマンスープレックスホールド!』
『決まっ――いや!』
 ツープラントンは、成らなかった。
 荒死でいわばパワーの前借をしていたふゆみが、反動で動けなくなってしまったのだ。
 そのため、シングルジャーマンのかけそこないとなり、チャンコマンは、逆撃の肘打ちを浴びてしまう。
「うぐぉ!」
 立ち上がる秋桜。
「フェンリル氏!」
「今度は、こっちが!」
 場外から駆け戻ってきたフェンリルはトップロープに飛び乗り、反動でジャンプした。
 上昇中、秋桜がさらに下から突き上げ、体育館の高い天井にまで打ち上げる!
 その天井を蹴り、凄まじい加速でとび蹴りを打ち下ろす。
『必殺ツープラントン! 雷打ミサイルキックだぁ!』
 標的は膝立ちのまま動けないふゆみ!
 ICBM級超威力が胸に炸裂し、場外にふっとばされる!
『これはぁ!?』
『レフリーがKOを宣言したんだな!』
 ふゆみは、リング下からそのまま担架で運ばれていった。
『チャンコマンは二対一での不利な戦いを強いられる事になったぁ!』
 しかも、肘打ちでチャンコマンはふらついている。
 秋桜はチャンコマンを引きずり、コーナーポストに座らせた。
「お前も一緒に、病院送りじゃん!」
 両腕を広げ、冥府の風を纏う!
 パワーを増し、より強力なフランケンシュタイナーを見舞わんとしているのだ!
 だが、チャンコマンは!
「隙を見せては、六闘神には勝てない!」
 突如、コーナーポスト上に立ちあがると、アクロバティックに回転しながら飛び降り、秋桜の頭を太い両足で挟み込んだ!
『これは、ルチャリブレの技、ティヘラかぁ!?』
 足投げで、コーナーポストに投げ飛ばす!
 秋桜は、鉄柱を透過能力ですり抜けようとした。
 だが、なぜか額から正面衝突してしまう。
「甘いぞ! レフリーも撃退士、常に阻霊符を使用している!」
「ならやっぱ、金的しとくべきだったじゃん……」
 そのまま気を失い、KOされる秋桜。
 なお、レフリーが倒れても、相手の撃退士が同じ事をするので無駄である。
「アウル技を使わない私に勝てないようでは、来るべき対抗戦には絶対に勝てんぞ!」
 リング上に二人きりになったフェンリルを、威圧するチャンコマン。
 だが、フェンリルの目は燃え上がっていた。
「あなたの闘いを見て確信しました。 アウルを持つ者が、持たざる者が積み上げたものを、その力で愚弄してはならない――だから、全力を以て六闘神を潰す!」
 フェンリルは己の拳を武器とし、鬼神一閃を放った!
 破壊の剛撃がチャンコマンの鳩尾を打ち付ける。
「ごぉ……」
 うずくまった相手の脚で相手の頭を挟み込み、大きく跳躍するフェンリル。
『フランケンシュタイナーだぁ!』
 そのまま、マットへ叩き付ける!
『チャンコマン立ち上がれないぃ! これは決まったぁ!』
 終了のゴングが館内に響き渡った。


「見えた……グツグツと煮えたぎる君達のプロレス魂が」
 ゴング直後のリング上で、チャンコマンが起き上がりマスクを脱いだ。
「ぷっはー! 一か月後が楽しみになってきたっちゃねー!」
「やっぱり、全力ではなかったんだな」
 頼もしげに溜息をつく、フェンリルこと一千風。
 六闘神との死闘は、もう眼前まで迫って来ていた!


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: バカとゲームと・與那城 麻耶(ja0250)
 とくと御覧よDカップ・黒神 未来(jb9907)
重体: −
面白かった!:4人

バカとゲームと・
與那城 麻耶(ja0250)

大学部3年2組 女 鬼道忍軍
チャンコマン・
阿岳 恭司(ja6451)

卒業 男 阿修羅
ひょっとこ仮面参上☆ミ・
新崎 ふゆみ(ja8965)

大学部2年141組 女 阿修羅
絶望を踏み越えしもの・
遠石 一千風(jb3845)

大学部2年2組 女 阿修羅
エロ動画(未遂)・
秋桜(jb4208)

大学部7年105組 女 ナイトウォーカー
とくと御覧よDカップ・
黒神 未来(jb9907)

大学部4年234組 女 ナイトウォーカー