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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2017/03/01


みんなの思い出



オープニング


 大人買い。 子供向けの商品を財力のある大人が一気に買う行為。
 子供たちの前でそれを行った大人は、あるものは羨望の目で見られ、あるものは「おとなげなーい!」と軽蔑される。
 果たして、大人買いとはどうあるべきなのか?
 究極の大人買いとはなにか?
 久遠ヶ原ケーブルTVでは大人買いを検証する番組を作成することになった。
 
 番組内容としては参加者が大人買いをしているシーンを隠しカメラで撮影(撮影役は同行するスタッフが担当するが、それが誰なのかは出演者にもわからない)
 それをスタジオにいる100名の観客審査員が評価してもらい、各賞を決めるというものである。
 なお撮影は生放送ではなくVTRであり、局判断で編集も入る。
 意表を突いた編集もありうるので、参加の際は承知されたし。

 観客審査員の年齢は6才から80才までの人間。 男女各年代を均等に集めてある。
 子供では年代の人間に対しては、子供だった当時の願望やノスタルジーを刺激することが肝要である。
 なお全員島外に住む人間であるため、学園の購買くじを大量引きしたところでなにが羨ましいのか理解してもらえない。
 評価は“うらやまし〜”と“みっともねえ”の二種類。 “うらやましい”をもっとも沢山集めたものに「ベスト大人賞」を、“みっともねえ”をもっとも沢山集めたものに「ワースト大人賞」を授与する。
 “みっともねえ“狙いとはいえ、緊急性の高い医療品を大量購入するなど人道に反する行為はやめること。 番組判断で失格となる場合もある。

 以上と本依頼書解説欄のルールをふまえ番組に参加してほしい。
 諸君の大人力に期待する!



リプレイ本文


 SP番組“大人買い王”、一人目の挑戦者はこの人!
「あたいもいよいよ大人買いできる年令になったのね!」
 さいきょー撃退士・雪室 チルル(ja0220)!
 町の玩具店の自動ドアをくぐるなり、ある棚に向かう。
 定期的にブームを起こすレーシングミニ4WD。 その中で最も高価なキットの一つを手に取る。
「さいきょーぽいのは……あんたね!」
 高価なマシンといっても1000久遠くらいしかしない。 子供に優しい夢のマシンである。
「ありったけの最高級パーツをとりつけてやるわ! 一点豪華主義どころか全点豪華主義! それがあたいのチルルマグナムよ!」
 高いパーツを吟味もせずに買いこむと、店のテーブルに座りこみ、一心不乱にチルルマグナムを組み立て始めた。

 そして数時間後。
「完成したわ! さいきょーのマシン、チルルマグ……チルルマグネシウムよ!」
 組み立てているうちに自分でつけた名前を忘れてしまったらしい。 チルルだから仕方がない。

 90年代の児童漫画から抜け出してきたような少年登場。
「姉ちゃん、金の力で勝てると思うな! マシンは魂だぜ!」
 お約束かつてっとりばやい展開。 店に設置してあるコースでレースが始まった。
「とべ! ソニックザヘッジファンド!」
「いけ! チルルマグロ漁船!」
 レースは互角に見えた。 だが、ヘアピンカーブでそれは起きた!
「あたいのマシンがぁ!?」
 チルルマグロ漁船コースアウト!
「そのマシンは高いパーツを盛っただけ! 全体のバランスを失っていたんだ!」
 勝ち誇る少年。
 だが少年のマシンを背後から、謎のマシンが追撃してくる!
「なに!?」
 正面からも同じマシンが! 右からも! 左からも!
 六方向から、チルルマグロ漁船と同じ姿のマシンが同時衝突! 少年のマシンを圧潰させた!
「うわぁ、なんだあ!?」
「ふふん! あたいのさいきょーマシンの量産化はすでに始まっていたのよ!」
 実のところミニ4WDは安すぎて、どう組んでも一台で10万には達しない。
 そこでスタッフが協力し、チルルと同じマシンを組み上げていたのだ。
 最高級パーツを詰め込んだマシン7台! これでようやく10万久遠!
「やっぱり数こそがさいきょーね!」
 チルルはどこからか出した黒マントを身に着け、それを靡かせながら高笑いをした。
「ミニ4WDによるせかいせーふくの第一歩なのよ!」
 最強マシンの量産化という禁じ手! さらに己こそが最強と信じる風格はまさに悪の帝王!

 こんなチルルの大人買い。
 果たして、スタジオの判定は?

 うらやまし〜 30票
 みっともねえ 2票

 いきなりの好獲得票!
 主に、ブーム第一世代の30代後半男性。 そして以降のブームの波にあたった元少年たちが主となって投票した。
 幅広い世代に訴えかける作戦が成功したチルル。
 果たして、この悪の帝王を討つ英雄は現れるのか?


 都内にある高級スイーツカフェ。
 その窓際を甘さとは無縁な容姿の男が陣取っていた。
「ウェイター、この店にある全てのプリンと全てのソースの組み合わせで持ってきてくれ」
 ミハイル・エッカート(jb0544)。 32才、ロシア系米国人。
 ウェイターがたじろぐ。
「すべてと申されましても当店のプリンはバニラ、チョコ、珈琲、 紅茶 、抹茶、ミルク、キャラメル、イチゴ、マロン、マンゴーと十種類あり、ソースも十種類ありますから組み合わせで計百個ということに……」
「そうだ、持ってきてくれ」
 ウェイターが厨房に引っ込むと周囲の客がざわめき始める。
「なにあれヤクザ?」
「店にクレームをつけてゆする手かしら、いやねえ」
 元々、女性客中心の店。 コワモテ男は浮きまくっている。
「帰りてぇ」
 周囲からの圧力に耐えながら待っていると、ウェイターが第一弾を運んできた。
「お待たせしました、当店特定のプリン十種類でございます」
 ひとつ1000久遠という超高級プリン。
 材料からパティシエまで全て本場仕込みの一流品なのだ!
スプーンですくい、まずは一口目!
「圧巻、そして至福!愉悦!!マーベラス!!! 」
 歓声をあげるミハイル。
 周りの客もただの変なおっさんなのだと悟り安堵した。

「おかしい、こんなはずはない」
 百のプリンすべてを食べきる自信を持っていたミハイルだが、40をすぎたあたりでスプーンを持つ手がとまった。
「旨いし、胃袋はちゃんと動いているのに」
 理由は簡単、過剰な糖分摂取を肉体が拒み始めたのだ。
「……ウェイター、すまんが残りは包んでくれ」
 プリンチャレンジ、断念。
 家の冷蔵庫に入れておいてもそう日持ちはしない。 知り合いに配るなりするしかない。
「腹いっぱいプリンを喰うのが夢だったが……夢は独り占めすべきじゃなかったな」
 痛いおっさんへの視線を背中に受けながら、ミハイルは店を去っていくのだった。

 そんなミハイルの大人買い。 スタジオでの判定は?

 うらやまし〜 4票
 みっともねえ 35票

 モニターを見あげるミハイルは、苦虫をかみつぶしたような顔。
「食べきれなかったのは痛いか」
 司会のクレヨーがフォローを入れる。
「この票ならみっともねえ賞が狙えるんだな、久遠ヶ原一みっともない大人を目指すんだな
「目指さねえよ!」
 果たしてミハイルよりもみっともない大人は現れるのか!?


 女子レスラー撃退士、桜庭愛(jc1977)が、お菓子売り場に颯爽と登場。
「レスラー大戦チョコ、あるだけください」
 レスラー大戦チョコとは、プロレスラーをキャラクター化したシールの入ったチョコである。
 いわゆる食玩に類するが、子供向きのお手頃価格!
 箱買いしたそれを店の外のベンチに座って開け始める。
 一枚目、女子レスラー・月光蜂のシール。
 持参したアルバムを取り出し、丁寧にしまう。
 お菓子もちゃんと食べる。
 シール目当てで、捨てたりはしないようだ。
「チョコとモナカでもちもち食感のおいしいスィーツですね♪」
 剥く、しまう、食べる。
 このサイクルを繰り返す。
 そしてそれは現れた。
 他のシールとは異なる光輝。 プリズム加工されたいわゆるキラシール!
 伝説レスラー・ガトリング島本!
 おそらく数年も経てば四ケタの値段で取引される!
 みんなこれが欲しくて買っている!
「女の子キャラしかいらないのです♪」
 捨てた! 伝説シールを捨てた!
 トレードに使えよ、スタジオの小学生から的確なツッコミが飛んだ。

 愛にも限界が訪れた。
「ギブアップ……」
 お腹を空かせてきたのだが、ひとつ百久遠のものを十万久遠分。 全部で千個ある。
 これはいかにレスラーでも一度には食べきれない。
「トレーニングしながら開けて食べます……」
 先に開けてシールを見たいのが本音だったが、開封したモナカはすぐにしけってしまう。
 シールを確認するためには、一生懸命トレーニングして、お腹をすかせるしかないのだ。

そんな愛の大人買い。 スタジオでの判定は?

 うらやまし〜 15票
 みっともねえ 33票

 ミハイルに肉薄するみっともねえ型得票!
「ええ? みっともなかった!?」
 小売店の前で、即開封して食べていたのが原因である。
 しかし、保存がきく商品のため、もったいないという意味でのみっともねえ票はプリンおやじミハイルよりも少なかったようだ。
 一方、シール集めは30代後半の世代に郷愁を誘ったらしく、うらやまし〜も得票できた。


 男の子向け商品狙いが多い中、水無瀬 文歌(jb7507)は?
「私は女の子の憧れ、魔法少女ものでいきますよ♪」
 アイドルの足が向かったのは秋葉原の“せんだらけ”。 いわゆるオタク向け中古ショップ!
「私の世代の魔法少女グッズを求めるとなると、こういうお店になるんですよ」
 文歌の知っているキャラクターは、普通の玩具店にはもう置いていない。
 アニメは世代交代が激しいのだ。
「これですね! 魔法少女ルルイエの変身コンパクト!」
 こういうお店はプレミアもののイメージが強いが、それ以外は中古なりのお値段である。
「ステッキとかコンパクトとか小学校の頃こっそり学校へ待っていったりしましたね〜。小さい頃は本気で変身できるって信じていました」
 十万久遠あれば、ごっそり大人買いできる。
 ルルイエの他にも各世代の魔法少女グッズを大人買い。
 様々な世代の女の子にとって、遠き日の夢の品々だ。

 文歌は店外に出ると変身コンパクトを店の外の路上で開けた。
 魔法の呪文をとなえだす。
「イア イア ハスタア!ブルグトム! アイ アイ ハスタア!」
 道行く人々が文歌を怪訝そうに見ている。
 美貌の少女が、呪文を唱え始めたのだから注目もされる。
 写真も撮られ、通報待ったなし……と思われたのだが。
「今は本当に変身出来ちゃうんです! すごいですねー!」
 なんと魔法少女ルルイエ最強の姿である深淵フォームに変身してしまった!
「こ、これはまさに女の子の夢! 実現っっ!」
 実は“雫衣”で変身したのだ。
 そうとは知らない島外の人間たち、変身コンパクトを買いあさった。
 この後、無駄な変身呪文を唱えてさぞかし恥ずかしい思いをすることだろう。

 果たして、スタジオの判定は?

 うらやまし〜 27票
 みっともねえ 0票

 完全なるうらやまし〜型!
 だが、票数で4WDチルルに及ばず!
 訴求力のある世代は魔法少女の方が広い、本来なら文歌の方が得票できるはずだ。
 理由は勝負要素。
 強いマシンを構築し勝負に勝つ。 大人は強いという子供目線の夢を具体化したチルルが、強すぎるのである。
「最後まであたい無双ね!」
 いい気分になっているチルル。
 当然ながらフラグである。


 銀髪長身の少女、Rehni Nam(ja5283)はTCGショップにいた。
 レフニーは今、店内にあるデュエルスペースでブースターパックを開封している。
 子供がお小遣いで一袋ずつ買っては楽しみに開けているブースターパックが、彼女の前に十万久遠分積まれている!
 まさに子供にとっては夢の光景!
 だが、開封を続けるレフニーの目は死んだ魚の目になってきていた
「スクールソード……コモンカードとはいえもう48枚目。 いかなデッキにも入らないクソカードなのです」
 “ブレイカーズ!”。 撃退士と天魔をモチーフとしたTCGである。 長く続いているゲームだけにインフレが進んでいる。 強いカードと弱いカードの差が激しくなっているのだ。
 開けるパックが多いだけに使えないカードも多くでる。
 時折出る強いカードだけが、レフニーの目に生気を取り戻した。
 黙々と続く開封作業、やがて手元に二つのデッキが完成した。

 “ブレイカーズ”のカードを見ていた小学生に声をかける。
「おい、デュエルしろよ」
「え?」
「このデッキを使って私に買ったら、デッキごとくれてやるのです!」
「マジ? やるやる!」
 ブレイカーズは、まともなデッキならひとつ組むのに安くても1万前後かかる。
 小学生が使っているデッキは、デッキ未満の紙束である場合が多い。

 デュエルが開始された。
「私のターン! ドロー!」
 レフニーはきらきらと輝くカードを場に出した。
「“赤銀の城砦少女”を召喚です!」
 SR(スーパーレア)カードである。
「このカード、お姉ちゃんに似ているね?」
「ふっ、私はカードのモデルになるくらいには有名撃退士なのです」
「すごーい!」
 尊敬の眼差しを浴び、いい気分のレフニー。
 続いて、小学生にターンがまわってくる。
「僕はこのカード! 巨乳な婚活阿修羅!」
「ちっ、でやがったですね!」
 こちらは四ノ宮 椿をモデルにしたカードである
「しょせんはただのレア! カードパワーの差を思い知らせてやるです!」
 レフニーの使う“ひんぬーデッキ”はSRを、小学生に渡した“きょぬーデッキ”はレアを中心に組んである。
 レアリティが高いカードほど強い、という設計になっている……はずであるが。

30分後、デュエルルームには泣き声が響いていた。
「うわ〜ん、違うのです違うのです! 私は本来“きょぬーデッキ”に入るべきカードなのです!」
「でも、お姉ちゃんのおっぱい小さいし」
「最大瞬間風速でGカップになったことがあったのです!」
 デッキパワーで上回っていても引き次第では負ける。
 今日はたまたま、乳の引きが悪かっただけなのだ。

 そんなレフニーの判定は?

 うらやまし〜 32票
 みっともねえ 14票

 なんと! うらやまし〜でチルルを上回る高得票。
 ブームになった回数はTCGよりも4WDの方が多いはず。
 なぜチルル以上の得票に繋がったのか?
 ずばりスマホゲーの影響である!
 多くのスマホゲーは、ガチャで強力なレアカードを当てることを一つの目標としている。 TCGをビジネスモデルとして発展したものなのだ。
 若い世代の多くがスマホゲーを現役で楽しんでいるため、レアカードを求める心に共感する! しかもスマホゲーは若い世代なら男女隔てなく遊ばれている!
 TCG大人買いというレフニーの選択は、お金で強くなれるゲームであること、共感を得られる層の幅広さ、その両方を突いていたのだ!


 浪風 悠人(ja3452)は、デパートの玩具売り場にいた。
「いつもだったら絶対許されないよなぁ……」
 妻帯者・浪風。 十万久遠を玩具に使うなど、普段なら夢のまた夢
「TCGは……俺の運じゃ悲惨なことになりそうだ。 ここは……」
 浪風が向かったのは特撮ヒーローコーナー。
 現在放映中の最新ヒーローの変身アイテムや武器が置かれている。
 ひとつ買ってもらうのにだだをこねなければならない子供たち。 がっつり買い込む浪風に羨望の視線は集まる。
「一丁やってやるか」
 思い立った浪風、デパートの店員さんに話しかける。
「すみません、BGMを賭博刑事ギャンブリアンの主題歌に変えてもらえますか?」
「はい?」
「販促用に変身ショーをやりたいんです」
「そのようなお話は伺っておりませんが……」
 デパートの店員は社員やパートという立場である。 個人経営のお店ならともかく、客が申し出てきた販促ショーを認めるような権限はない。
「え、え〜と、TVなんですよ……カメラさんは……誰かわからないな」
「お客様?」
 常識人・浪風は店員の視線から空気を察した。
 この場で変身ショーを強行したら、警備員がきて警察に引き渡される。
 身元引受人として妻も呼ばれてしまう!
「なんでもありません!」

 数分後。
「不運戦隊……フビンジャー……変身」
 浪風は変身アイテムを手に、囁くような声でポーズをとっていた。
 ここはトイレに通じる薄暗い通路。 誰もいない、誰も見ていない。
「……虚しい」
 浪風はその場に座りこみ、数時間立ち上がれなかった。

 ひたすらに不憫な浪風の得票は!?

 うらやまし〜 2票
 みっともねえ 98票

「やっていることは同じなのに文歌さんとのこの差はなんですか!? 既婚者なのはお互い様だし!」
 魔法少女とヒーロー、男女の差だけに見えるが扱いは浪風が圧倒的に酷い。
「あわわ、魔法少女は17才だとギリギリ定年前ですから! 人妻だけどセーフなんです!」
「思い切りの問題なんだな、店員に同意をとろうとせずにやってしまうべきだったんだな」「ふっ、その後は逮捕間違いなしだがな」
「やらなくてよかったね、浪風さん♪」
 ミハイルと愛に励まされつつ、浪風が圧倒的得票数でみっともねえ賞決定!

 一方、うらやまし〜賞はレフニー!
「受賞記念に“赤銀のかくれ巨乳少女”のカードを作ってもらうのです!」
「あたいがモデルのカードはないの!? わかった! きっとさいきょーすぎて禁止カードなのよ!」
 そんなわけで大人買い王は好評のうちに終了!
 みんなも人生が壊れない程度に、楽しく大人買いをしよう!


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: おかん・浪風 悠人(ja3452)
 前を向いて、未来へ・Rehni Nam(ja5283)
重体: −
面白かった!:4人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
天真爛漫!美少女レスラー・
桜庭愛(jc1977)

卒業 女 阿修羅