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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/06/06


みんなの思い出



オープニング


 ここは久遠ヶ原にある某斡旋所。
 業務中、二十九歳の独身女子職員・椿は、宝狩のパンフを羨ましげに見ていた。
「あー、宝狩の宝って何なのだわー? 医者か弁護士のハンコが押された婚姻届に違いないのだわー、参加出来る学生が羨ましいのだわー」
 アホな事を呟きながら、机の上に置いたチョコスナックの袋に手を入れ、ボリボリ食べている。
「椿さん、最近太ったんじゃないですか?」
 後輩の新人職員・堺 臣人に指摘され、椿は全身をビクッと痙攣させた。
「そ、そんな事ないのだわ! 私の体型は不動の百六十センチ 五十キロなのだわ!」
「最近は、太ってきてますよ。 制服の腰回りとかパツパツじゃないですか」
「うう、言われてみれば、今朝、スカート履くときに苦戦したかも」
「丸一日、チョコ菓子をボリボリ食べながら携帯ゲームしていればそうなりますよ。 運動するか、食生活を見直すかして、ダイエットしないと」
「嫌なのだわ! 我慢とか努力とか、したくないのだわ!」
「その性格で高望みした婚活しているんですから、本当にダメ人間ですね」
「太っていたらダメ人間だなんて、差別なのだわ!」
「太っているのがダメなんじゃなく、目的に反したそのだらしなさがいけないって言っているんです! もし椿さんがお相撲さんなら、太った事を僕は褒めますよ、体格を活かして、目的を達成出来るわけですからね。 でも椿さんは違う、だらしないだけです」
 椿は、一瞬ムッとした顔をしたが、やがてその口元がニンマリと微笑み始めた。
 確実に、ロクでもない事を考えている顔だった


 翌朝、椿は、バッグから企画書と書かれた紙の束を取り出して堺に見せた。
「なんですかこれ『体格活用! 障害物競争』って?」
「その名の通り、障害物競争なのだわ、体格によって有利不利が出る障害を四つ、考案したのだわ」
「なんでまた急に?」
「体重が重い、軽い! 身長が高い、低い! それぞれみんないいとこがあるという事を久遠ヶ原全体に再確認させるためなのだわ! そういう認識が広まれば、太ったところで、あれやこれや言われなくなるのだわ!」
「太っても批判されたくないからって、こんな企画書を……」
 この女、何かが間違っている。
 知ってはいたが、改めて実感せざるをえなかった
「まあ、とりあえず、中身を見ていきますか」

【競技一:薄氷の湖】
 体重軽量者に、有利な競技です。
 表面を凍らせたプールの上を、走って渡ってもらいます。
 プールは氷が割れなければ、五ターンで通過出来る距離です。
 ある体重までなら氷は割れませんが、それを一キロ超えるごとに、氷が割れる確率が一パーセント上昇します。
 氷が割れると冷水に落ち、体を温めるため、二ターン消費した上で最初から渡りなおしです。
 三回失敗すると、さらに一ターンのペナルティを受けた上で、次の競技に進んでもらいます。

【競技二:はよこい! パン喰い競争】
 高身長者に、有利な競技です。
 吊るしてあるパンを、口でキャッチして下さい。
 パンは、基本高いところに存在し、ランダムで低い場所へ下がってきます。
 ある程度、背の高い人なら、五ターンでパンを食べ次の競技に進めます。
ジャンプが出来ない粘着床なので、背の低い人がキャッチできるところに下がってくるまでには、運が悪いとかなりの時間がかかります。
 十ターンかけても取れなければ、次の競技に進みます。

【競技三:寄り切れ! ヨコヅナくん】
 体重重量者に、有利な競技です。
 土俵に立ちふさがる相撲ロボ・ヨコヅナくんを、直径五メートルの土俵から寄り切ると次に進めます。
 順調にいけば五ターンで押し出せます。 
 しかし、ヨコヅナくんはとても重いので、体重が軽いとなかなか押されてくれません。
 しかもランダムで押し返してきます。
 土俵から出されてしまうと、罰として五ターンの間、四股を踏まされ次の競技に進みます。

【競技四:闇の中を走れ!】
 低身長者に、有利な競技です。
 五ターンごとに天井の高さが変動するトンネルを目隠しして通過してもらいます。
 走って順調に通過すれば、五ターンで通過出来ます。
 運悪く天井が自分の身長より低いと、頭をぶつけてうずくまることになり、一ターンタイムロスします。
 腰をかがめれば、安全に通過出来ますが十ターンかかります。
 最初から腰をかがめるか、何度までなら頭をぶつけても走り抜けに挑戦するか等、体格に合わせて、戦略を選択してもらうことになります。 

以上、一から四の競技を順番に行い、競技四をクリアした時点でゴールです。


「僕にあれこれ言われるのが嫌で、こんだけの企画書を書いたんですか?」
「徹夜で書いたのだわ! だらしない生き方を貫くためなら、努力は惜しまないのだわ!」
「やはり、何かが間違っている気がします」
 そもそも、久遠ヶ原全体に広めるとか言っていたが、それなら学園の協力が必要なはずだ。
「こんな企画果たして通るんですか!?」
「もう通ったのだわ」
「ええ!?」
「今朝学校に行って、学園側に、『任務における、自らの体格を活かした行動術を学ぶための授業』と説明したら納得したのだわ! ついでに宝狩りの地図破片も参加意欲推奨用の賞品としていただいたのだわ! どう、これでも私をダメ人間と言えるかしら?」
 ドヤ顔をしている椿。
 その秘められた行動力と、その使い方の間違えっぷりに絶句するしかない堺だった。


リプレイ本文


 昼十二時、島内放送にチャンネルを合せると、TV画面に学園のプールが映った。
 運動会でよく聞く、せかされるようなBGMをバックに、男女二人の声が入る。
「皆さん、こんにちなのだわ『体格活用! 障害物競走』の企画立案・四ノ宮 椿なのだわ!」
「解説はクレヨー先生こと、小暮陽一です」

 最初にアップになったのは、黒髪をショートにしたクールぽい女性・田村 ケイ(ja0582)だった。
「まずは第一コース、ケイさんなのだわ 156センチ 45キロ インタビューでは『とりあえず完走を目標にするわ。お手柔らかに』とコメントしてくれたのだんだな」
「ケイさんらしいコメントなんだな。 お酒さえ飲まなければ、かっこいい女性なんだな」
「そうなのだわね、お酒さえ飲まなければ」
 二人の声が笑っているのは、酔った時のケイを知っているからだ。

 続いてTVカメラは、長身細身の、どこか闇めいた雰囲気を纏う男・鷺谷 明(ja0776)を映し出した。
「第二コースは明くん、183センチ、59キロは出場者中最長身、再重量。 インタビューでは『さてさて、勝負するからには全力で、とねえ』とコメントしてくれたんだな」
「魔物めいた雰囲気があるけど、何でも全力で愉しむのがモットーの享楽主義者なそうなのだわ」
「再重量選手で60キロいかなかったのは、予想外だったんだな」
 
 続いて、シャープで乾いた雰囲気の少年・アルファ(ja8010)が映し出される。
「第三コースはアルファくん、174センチ、50キロ。 『勝利という気分を記憶に刻んでみようか』とコメントしてくれたのだわ、あとこの競技のためにダイエットしてくれたそうなのだわ、やる気がうれしいのだわ」
「もしかすると、元々は僕と同じ200キロオーバーだったのかもしれないね!」
「それはないと思うのだわ」
 
 今度は、緑色の髪をポニーテールにした健康そうな美少女・桐生 水面(jb1590)が映った。
「桐生 水面ちゃん、149センチ40キロ」
「可愛い子なのだわ、クラスで三番目くらいにモテそうな顔しているのだわ」
「何なんだな、そのランク付けは?」
「クラスの男子と、きさくに喋って、からかいあったりもするけど、内心、誰もが気になっている女の子って感じなのだわ、一位や二位は眺めるのが精一杯の高嶺の花だから、実質一位なのだわ」
「わかる気がするんだな」
 
 ウェブがかった長い金髪を持つ少女・ヴェス・ペーラ(jb2743)が映し出された。
「ヴェスちゃんは、161センチ45キロ、『どちらかと言いますと知恵競走ですね』とコメントしてくれたんだな」
「本質を見抜かれてしまった気がするのだわ、その通り、これは自分の体格が苦手な状況をいかにカバーするかという知恵の競技でもあるのだわ」
「鋭いよね、それを競技の中で活かせたら優勝候補なんだな」
 椿、眉間に皺を寄せる。
「この手の漫画やアニメで、優勝候補と最初に言われたキャラが優勝出来た試しがない気がするのだわ、恐ろしいフラグなのだわ」

 続いて、悪魔っ娘・パルプンティ(jb2761)が映し出された。
「パルプンティちゃんは、161センチ45キロなのだわ、インタビューでは『おぉ、これはショーガイブツ競争ですよーっ。 漢字にすると生姜異物……アレ?  少し違う気がしますねぇー』とか言っていたのだわ」
「早くも脳内迷走しているね」

 最後の第七コース、江沢 怕遊(jb6968)は茶髪癖っ毛で背が低く全体的になんだか丸っこかった。
「怕遊くんは、118センチ 18キロ、出場者中最短身最軽量なんだな 『ぼくが一番ちっちゃいのですよ……だ、大丈夫きっと有利なのですよ……』と健気にコメントしてくれたんだな」
「怕遊『くん』でいいの? 女の子に見えるけど?」
「男性なんだな、最近の久遠ヶ原には『女の子を見たら男の娘と疑え』という言葉があるんだな」
「いやな学校になったものだわ……」

 号砲と共に七人の参加者は第一の競技である『薄氷の湖』のプールへ走った。
「まず最初に飛び出したのは、明選手、水面選手、ヴェス選手、怕遊選手の四人なのだわ」
 この四人は、恐れる事を知らず、凍ったプールの上を駆けてゆく。
「薄氷を踏むような、という表現を実践するとは思いませんでした」
 皆、慎重になって無言だが、ヴェスがそんな凝った事を言っているのが聞こえた。
「しかし、明選手は大胆なんだな、選手中再重量なのに」
「箇所によっては、体重二十キロオーバーで割れるのかもしれないのに度胸あるのだわー」
 当然、二十キロがボーダーだという事は、出場者に知らされていない。
 この競技で安全なのは、十八キロの怕遊だけなのである。
「それを見越して工夫している人もいるね」
 アルファは、袋の中から前方に向かって白い粉を撒きつつ、氷上を走っている。
「あれは何かな?」
「食塩なのだわ、氷の強度をあげるそうなのだわ」 
 やや塩を撒くのにやや手間がかかるものの、極めてクレバーな工夫と言えた。
「授業で習ったことを最大限生かす俺、パーフェクトだね」
 知的な一面を見せるアルファの後方で、やや慎重すぎるほどのそのそと氷上を這っている二人がいた。
 ケイとパルプンティである。
 表面積を広くして、氷にかかる体重を分散させようとしているのだろう。
 ケイは途中までヘッドスライディングで進んだ。
 その後、勢いが止まりかけると、以降は手に填めた軍手でこぐようにして、慣性を維持し続けている。
 一方、パルプンティは特に何の工夫もなく四つん這いになっていた。
 それを後方から、煽るようにしてカメラが撮影している。
「カメラさん微妙なアングルなのだわ、パルプンティちゃんのパンチラ狙いかしら?」
「彼女、撮るパンツをもう履いていない可能性があるんだな、放送中止になっちゃうから気を付けたほうがいいんだな」
 パルプンティは、何もしていなくても勝手にパンツが脱げて、落としてしまう特異体質なのである。
 その時、プールの前方で大きな着水音がした。
「誰か落ちたのだわ!」
 大きく割れた氷の下、冷水の中に緑色のポニーテールが見える。
「水面ちゃん! やっちゃったのだわ、ついてない」
 ロープを投げられ係員に救助される水面。
 プールサイドのストーブ前で、寒さにうずくまっている。
「ば、バカな……うちの計算は完璧やったはず…… そうか、これが……慢心という奴なんやな」
 ガクッと、その場に崩れる水面。
「可哀そうなのだわー、でもこれ、水面ちゃんのクラスの男の子は大喜びなのだわね」
「どうして?」
「明日からこれをネタに、からかえるのだわー、水面ちゃんが『んもー、だから体重をごまかしてなんかないってばー』とか顔を真っ赤にして怒るのだわ、それが可愛くて、またからかってしまうのだわー」
「勝手な脳内水面ちゃん像なんだな、でも大いにアリだと思うんだな」
 結局、その後は誰も氷を踏み抜く事なく、ゴールに成功した。
 現時点での消化ターン【ケ8 明5 ア6 水10 ヴ5 パ9 怕5】
 

 第二の競技はパン喰い競争。
 ランダムに伸縮する紐の先に付けられたパンを、口でキャッチする競技である。
 最初にパンにかじりついたのは、百八十三センチの長身を持つ明だった。
「これは妥当なとこだわね、百八十センチ以上あれば届くように設定したから」
 ところが明は、先へ進もうとはしなかった。
 リュックから水鉄砲を取り出すと、そこから放つ黒い水流で両隣のコース――ケイとアルファのパンを濡らしたのだ。
「なんという嫌がらせ、食べ物を粗末にするのはいけないんだな!」
 クレヨー先生が、顔を赤くする。
「あの黒い水、イカ墨だし、少し躊躇するだろうけど食べられるのだわ」
「イカ墨?」
「みんなからメモを預かってコンビニに買い物にいったのは私なのだわ。 明さんのメモには水鉄砲と黒ペンキってあったのだけれど、ペンキが売っていなかったの。 代わりにイカ墨スパゲティの素にしておいたのだわ」
 一方、ヴェスはベタベタした床に缶詰を並べ、それを踏み台にしてジャンプ、パンをゲットした。
 余計な邪魔に時間を喰っていた明と肩を並べ、次の競技へ走ってゆく。
「他にも、売ってないものを書いてきた子がいるのだわ、ほらほら」
 椿は、空に向かって一生懸命にハサミをチョキチョキしている怕遊を指差した。
「怕遊くん、メモに『高枝切りバサミ』って書いてあったのだわ、そんなもの売っているないから、児童用のハサミを買ってあげたのだわ」
 小さなハサミを空に向かってチョキチョキやりつつ、とうてい届かないパンを見上げながら、118センチの怕遊は目に涙を浮かべている。
「可愛いのだわー、いい買い物をしたのだわー」
「椿ちゃん、結構、Sだよね」
 しかし運が良かったのか、意外に早く届く範囲にパンが背丈の位置まで降りて来てくれ、突破に成功した。
 遅れて入ってきたケイは、リュックの中身を見て、目をしばたかせている。
 『バナナを結んだ縄跳び』という、謎の物体が入っていたのだ。
「何なんだな、あれは?」
「ケイさん、メモに『フック系鉤針とタコ糸』って書いてきたのだわ、コンビニにはないから、売ってたもので自作したのだわ」
「縄跳びはいいとして、なんでバナナなんだな?」
「コンビニにあった商品で、一番のフック具合だったのだわ」
「ごめん、椿ちゃんはSなわけじゃなく、単純にバカなんだな」
 ケイは道具を諦め、普通にパンが降りてくるのを待ってキャッチした。
 アルファ、パルプンティ、水面は、同じくビニル製のゴミ袋を敷いて、床の粘着性を封じる事でジャンプをして、パンをキャッチした。
 イカ墨付きの二人は食べるのに躊躇したようだが。
「この程度のトラップ、主催者もまだまだだね」
 余裕げに言いながら走り去ってゆくアルファ。
「言われてしまったのだわ」
 現時点での消化ターン【ケ15 明11 ア13 水16 ヴ11 パ14 怕12】


 第三の競技は『寄り切れ! ヨコヅナくん』。校庭に七つの土俵が並び、それぞれに相撲ロボ・ヨコヅナくんが待ち構えている。
 これを土俵から出せば突破出来ると言うゲームだ。
 先頭を走るのは明とヴェス。
 二人の行動は対照的だった。
 明は、土俵にあがると組みあいもせずに、あっさり逃げ出し、罰ゲームの四股を踏み始めたのである。
「明くんは、勝つためなら手段を選ばないタイプだね」
「ヴェスちゃんは、ちゃんと組んでいるのだわ」
 ヴェスは立ち合い相撲ロボの廻しをとった。
 45キロのヴェスを、ロボは押し返してきたが、押され始める瞬間、ロボの直線状から横へ回避し、ロボに突進させては前に戻り、再度突進させたり、背後から押して、ロボ自身が土俵から出るよう仕向けたのである。
「正面から押し続けて寄り切れ、とは言われてませんよ」
 気高い美貌を保ったまま、土俵を降りるヴェス。
「相撲上手だねえ、意外過ぎだよ」
「決まり手は、出し投げなのだわ」
 続いて土俵にあがったのは、怕遊、そしてアルファ、パルプンティ。
 アルファ、パルプンティは、明と同じく自らあっさりと土俵を出た。
「勝利のための手段は選ばないよ、喜んで四股を踏むよ。 批判はしないでくれよ、飴をあげるからさ」
 なぜか、辺りの係員に飴を渡してから四股を踏む、律儀っぷりである。
「大人しく四股四股しますよーぅ」
「パルプンティちゃんは、意味わかってて言っているのだわ?」
 一方、怕遊は、土俵にペットボトルの水を撒いている。
「あれで、滑りをよくする作戦かな?」
 同じように土俵に何かの液体を撒いたのが、ケイと水面である。
 ただ、結果は対照的だった。
 怕遊は、押し出され、ケイと水面は寄り切ったのである。
「怕遊君のは水、ケイさんと水面ちゃんのは油だったのだわね、土俵は広いから持ち歩ける量の水では意味がないのだわ。 その点、油はナイスチョイスだったのだわね」
 現時点での消化ターン【ケ21 明17 ア19 水22 ヴ17 パ20 怕19】


 トップの二人が最終競技『闇の中を走れ!』に突入した。
 ランダムで天井の高さを変えるトンネルを、目隠し状態で突破するという競技である。
 係員に目隠しをされた二人は、トンネルに接近する。
 明は最初から不向きな競技だと諦めているのか、腰をかがめ、ゆっくりと前進した。
 一方、ヴェスは軍手をはめた手を片方を上に、片方を右に差し出している。
「トンネルの高さを確認して高くなったら一気に行く作戦なんだね」
「これは、ヴェスちゃん優勝かなあ?」
 第一競技から完璧な作戦を見せていたヴェス。
 だが、なんという不運! 天井さえ高くなればそのままゴールなのに、それが低いままなのである。
「優勝候補と言われてしまったフラグには、やはり勝てないのだわ?」
 明とヴェスが、屈みながらゆっくり前進しているうちに、他の競技者たちも後方から迫ってきた。
犬が走るように、馬が翔るように、両手両足揃えたハイハイを見せるケイ。
 体にサンオイルを塗るアルファ。
「走らなきゃいけないなんて誰も決めてないよね。勝利を刻むためにはオイルだって気にしないさ。さあ、これから究極のヘッドスライディングを見せてあげるよ」
 摩擦係数を減らしてスライディングする。
 しかし、元々の距離が長いので、勢いは途中で止まった。
 目隠し状態で自信満々に何かを取り出すパルプンティ」
「秘密は懐中電灯です。 これで頭をぶつけないではしれるです!」
「パルプンティちゃん、目隠しされていたら懐中電灯は意味ないのだわ……」
「これは背の低いうちには有利な種目やな」
 傘を使って、天井の高さを確認しながらダッシュしようとする水面。
 創意工夫をこらし、最終関門を突破しようとする選手たち。
 だが、そんな苦労などせずとも、無人の野を駆け抜けるが如く走破してしまった選手がいるのである。
 そう、身長118センチの怕遊。
 トップだった明とヴェスをも抜き、あっさりとゴールしてしまっていた。


「背がちっちゃくたって……大丈夫なのです!」
 優勝カップと、宝狩地図破片を受け取りながら、怕遊はVサインをした。
 一歩遅れてゴールしたのが、明とヴェス。
 名コメント賞はヴェスの「薄氷を踏むような、という表現を実践するとは思いませんでした」に決定した。
「勝者の視点を見せてくれよ」
 アルファは、表彰台に立つ怕遊の高さに目線を合せようとしたが、台込みでもアルファ方が高かった。
「面白かったですよーぅ♪ ぶっちゃけ、下着を落とさずに完走できたので、順位とか関係無く私的には大成功ですー♪」
 パルプンティはご機嫌だが、スタートラインにパンツを落としている事には気付かなかったようだ。
 選手全員で、小さな勝者・怕遊を祝福し、障害物競争は終了した。
 最終結果【ケ31 明27 ア28 水32 ヴ27 パ30 怕26】

「痩せている子が優勝したけど、椿ちゃんはダイエットどうするんだな?」
「先生に言われたくないのだわ……」


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 紫水晶に魅入り魅入られし・鷺谷 明(ja0776)
 スペシャリスト()・ヴェス・ペーラ(jb2743)
 女の子じゃないよ!・ 江沢 怕遊(jb6968)
重体: −
面白かった!:4人

cordierite・
田村 ケイ(ja0582)

大学部6年320組 女 インフィルトレイター
紫水晶に魅入り魅入られし・
鷺谷 明(ja0776)

大学部5年116組 男 鬼道忍軍
飴で世界と渡り合う・
アルファ(ja8010)

大学部6年162組 男 ルインズブレイド
夢幻の闇に踊る・
桐生 水面(jb1590)

大学部1年255組 女 ナイトウォーカー
スペシャリスト()・
ヴェス・ペーラ(jb2743)

卒業 女 インフィルトレイター
不思議な撃退士・
パルプンティ(jb2761)

大学部3年275組 女 ナイトウォーカー
女の子じゃないよ!・
江沢 怕遊(jb6968)

大学部4年282組 男 アカシックレコーダー:タイプB