.


マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/02/16


みんなの思い出



オープニング


 久遠ヶ原ケーブルTVは民営の放送局である。
 国営ではないので当然、CMが入る。
 CMは、宣伝したい商品やサービスがある広告主からお金を受け取って流す。
 これがTV局の主な収入源となるわけだ。
 そして2月前半に、広告を流したい広告主というと……。

「当然、製菓会社なのである! バレンタインがあるからな!」
 局の会議室でそう豪語するTV局長・ワルベルト。
「諸君らのお蔭で、我がTVの視聴率は好調である! チョコレートCMの依頼もたくさん来ている!」
 チョコレートCMの依頼が多いのは、久遠ヶ原島が若者の島だからという理由もある。
 バレンタインデーに敏感な年代が集まっている。
 これはCMを出す側としても効率が良い。
「というわけで、諸君らにはチョコレート用のCM動画を作成して欲しい! 宣伝したい商品はそこの箱に入っておる!」
 ワルベルトの前に置かれた箱の中には、大小さまざまなチョコレート商品やそのカタログが入っていた。
 バレンタインに相応しい板チョコやハートチョコもあるが、中には10円玉チョコや、きのこ型、たけのこ型のチョコなど、バレンタイン向きじゃないのもある。
 ワルベルトは良く言えば大胆、悪く言えば大雑把で行き当たりばったりなのである。
 おそらくは「売りたい商品と、CM放送料だけもらえれば、CM自体はこちらで作るぞ、ガハハハハッ」的なセールストークでCM依頼をとってきたのだろう。
 毎年これで何とかなっているのだから、大したものである。
 CMの内容すら、島の住人であり、メインターゲットである学園生の感性に任せて作らせるのである
「”自分ならこのCMを見たら欲しくなる”という内容のCMを作れば、自然に効果があがるものだからな、ガハハハハッ!」
 この説明会に来た学園生たちは、困惑した顔を見合わせる。
 チョコレートのCMといってもどんなものを作ればよいのか、わからないのである。
「まあ、当然であるな。 では参考として、去年、我が局が作ったCMを紹介しよう」 
 モニターにVTRが流れ始めた。
 この説明会を紹介した斡旋所の所員、四ノ宮椿(jz0294)と、その後輩である堺臣人が監督、主演して合作したものである。

 ●バレンタインチョコレートCM 世界破滅編

 荘厳なクラシックのBGMが流れる中、地球に向かって、巨大隕石が近づきつつあった。
 地球も隕石も、なぜかドット絵である。
 これは、リアルなCG,を作る予算がなかったのと、監督の一人である堺がドット絵を描くのが得意だから採用した手法である。

 画面が切り替わる。
 今度は、国際会議の大会議室。
 各国の首脳や学者たちが危機感に満ちた顔でここに集まっていた。
 なおこの要人たち、金髪のカツラや、付けっ鼻を付けた堺にワルベルト、クレヨー先生である。
 三人とも日本人丸出しな容姿の上、コスプレが適当なのでコントに出てくるインチキ外人にしか見えない。
「巨大隕石は、計算によると158時間後に東京に落下が予想されます」
「落下の衝撃により、日本は壊滅、世界中が大津波に襲われ、その後も地球全土が核の冬を迎えると断言出来ます」
 どよめきが走る大会議室。
 議長であるインチキ外人堺が立ちあがる。
「ゼウス・エクス・マキナに賭けましょう、主砲であるキュクロープスライフルに全世界のエネルギーを集め、隕石を破壊するのです」

 隕石落下時刻の夜。
 東京タワーの麓に人型兵器ゼウス・エクス・マキナが立っている。
 ちなみにロボは、アニメロボプラモを改造したものだ。
 そのコックピット内には、体にぴったりとした割とエロいパイロットスーツを着た椿がいた。
 真剣な顔をした椿に、世界からのメッセージが送られる。
『全世界から集めたエネルギーを君に託す』
 操縦桿を握りしめる椿。
「キュクロープスライフル充填開始!」
『チャージ終了まであと15時間、間に合うのか!?』 

 地球のドット絵に隕石が迫りつつある。
 夜の世界に灯っていた数十億の電灯が、地球全土から少しずつ消えてゆく。
 キュクロープスライフルに全エネルギーを充填するために、強制的に停電処置を施したのだ。
 アナログ時計の針が音を刻んで回る中、地球に長い闇が訪れる。

 再び、ゼウス・エクス・マキナのコックピット内。
「充填完了! 100%」
 キュクロープスライフルのエネルギーメーターがMAXを示す
『発射せよ』
 重々しい堺議長の命令。
 椿は、それとともに操縦桿のボタンを押した。
 ところがその瞬間、
「ヒクション!」
 このタイミングでクシャミ!
 反動で操縦桿がぶれてしまった!
 全世界のエネルギーを集めた弾丸は、あらぬ方向に飛んで行ってしまう
 
 呆気にとられる堺議長。
 焦りとともに叫ぶ。
「もう一度充填を!」
「とても間に合いません!」
 東京タワーの上空に、もうはっきりと隕石が見えている。

 コックピットの中、絶望しかける椿だが、その時、思い出した。
 パイロットスーツに入っているチョコレートの存在だ。
 椿は、板チョコを取り出すと、何のためにつけたのかわからない操縦席の謎スロットに投入した。
 すると、ゼロになっていたエネルギーメーターが、瞬く間にMAXに戻った!
 発射されるキュクロープスライフル。
 今度は見事に隕石を破壊!
 爆発音と共に、ナレーションが流れる
『チョコレートは即効性のエネルギー食、バレンタインでなくてもポケットに』
テロップに”チョコレートはMERIWA” と出てCM終了。


 VTRを見終えた学園生たちは「ああ、これかあ」という顔をした。
 去年、この局の放送を見ていた島の住人なら思い出せるCMである。
「このCMのポイントは最後まで見ないと何のCMだかわからないところである。 なんだろう? という惹きつけで見させ、最後に納得させるタイプだ」
 むろん、これはパターンの一つにすぎない。
 作るCMの手法は自由である。
「こんなテキトーでOKなのである、工夫をこらして自分らしいCMを作ってくれたまえ!」
 チョコレートCMをこなすことは、人気タレントへの登竜門とも呼ばれたこともある。
 タレントになりたい人や、創作活動に興味のある人にぜひ、挙手してもらいたい!


リプレイ本文

●イリス・レイバルド(jb0442)編
 久遠ヶ原島内にある某児童公園。
「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ!ボクを呼ぶ声がする! そう、ボク参上!」
 いつもの出囃子と共に、金髪ツインテ幼女女子高生・イリスちゃん登場!
 今日は監督兼、主演である。
「はっはー! うん、結構番組とか出てるからタレントの登竜門! とか言われても今更感がするっよねー、ボクの魅力を宣伝できるのならば何も問題はありませんがー」
 ディレクターズチェアに足を組んで腰かけ、メガホンを振り回しながら偉そうに語るイリス。
「この子は調子に乗せてはいけない子なのだわ」
 アシスタントの椿がぼやく
「んゆ? なんか言った椿ちゃん? それより、キャストは揃っているのかね? ボクが注文したキャストは」
 青春18切符でも持っているのか、調子に乗り放題である。
「まー、それっぽい人なら誰でもいいんだけどね、カレンダー事件をボクは忘れていないんだ」
 イリスがジト目になって語っているのは、”カレンダーを作ろう!”という依頼の件である。
 自分のカレンダーの被写体として裸の天使役をイリスが発注したところ、名前だけは天使っぽい三十男ミハイル・エッカートが連れてこられた。
 裸を隠すために与えられた衣装は猫一匹。 それに股間を引っかかれて悶絶したという悲劇があったのだ。
「こんにちは、宜しくお願い致します」
 待っていたキャストが到着した。
 パッツンな前髪が長すぎて目が隠れている女子小学生・玉笹 優祢である。
「おぉ〜! 年下美少女だぁ! 椿ちゃん気がきっくねー!」
 イリス、舌舐めずり。 年下美少女は大好物。
「任せて、このCMのテーマに沿ったキャスティングなのだわ!」
 椿の言った意味をしばし考え、それに気づくイリス。
「……そういう意味のキャスティングかよ!」
 イリスが思わず叫んだCMの内容はこちら!

 イリスはバスケットボールを小脇に抱え、公園の入り口で佇んでいた。
 公園でバスケをしている子供たちを眺めているのだが、足は動かず、表情は自信なさげ、頭に響くのはかつての蔑みの声。

『足引っ張りやがって』『くるなよ』『へたくそー』

 あれから毎日、人気のない時間にシュートを練習したものの、相変わらずゴールには届かない。
 ため息をついて帰ろうとしたその時、目の前にすっと板チョコが差し出された。
 差し出してきたのは、前髪パッツン乳デカ幼女・優弥である。
「頑張って練習していましたよね」
 秘密の特訓を陰ながら見ていてくれたらしい。
 イリスは、差し出されたチョコをパキッとかじると、マイボールをドリブルしながら駈け出し、ジャンプ&シュート。
 見事に決める。
 それに気づき、振り向いてきバスケ少年たちに言いたかった一言を告げる。
「ボクも混ぜて!」

『あなたに一カケラの勇気 チョコレートはMORIWA』
テロップが出て、CM終了。

 撮影終了後。
「お疲れ様ー! テーマ通りに板チョコとバスケットボールが激ハマリなのだわ!」
 何が激ハマリかというと胸である、小学生・優弥の方はおっぱいがバスケボーなのに対し、高校生・イリスは……。
「なんだー!? 胸が板チョコってー!? 納得いかねー!?」
 納得いかなくても可愛ければ問題なし。 イリスちゃんの魅力は伝わったのである。

●ローニア レグルス(jc1480)編
「別にチョコレートが特別好きという訳でもない、燃料代を稼ぎに来ただけだ」
 無表情に断言するのは、金髪朴念仁青年のローニア。
 彼の言う”燃料”とはオリーブオイルの事である。
 普通は料理に使うアレだが、ローニアは水代わりに、飲む。 
 今もガラス瓶入りのをゴクゴクやっている。
「ローニア君、血液がドロドロになるのだわ」
「構わん」
「こんな不健康な男を、食品CMに起用していいのかよ」
 共演するミハイルも不安げな顔をしている。
「血液がドロドロになったら、なんだというのだ?」
 ローニアは全く健康を意識していない。
「血管に負担がかかるのだわ、最悪心臓が止まるかも」
「なら、これを食えば心臓は大丈夫だという事だな」
 ローニアが取り出したのは、今日、宣伝する予定のチョコだった。
 “貴女のハートを守る”というキャッチコピーの書かれたハートチョコ。 商品名”ハートハードチョコレート”。
「なにをどう勘違いしているのか、聞かなくてもわかるのだわ」
 ローニアはもうCM絵コンテを書いてしまっている。 今さら変更は出来なかった。
 その絵コンテを元に作られたCMがこちら!

 人気のない夜中の湾岸倉庫地帯。
 そこに呼び出されたローニアは、何者かに掌大の箱を渡された。
 黒革ジャケットの内ポケットにそれをしまいこむ。
 突然、銃声!
 ジャケットの腕を銃弾が掠める。
 逃げようと走り出した瞬間、再び、銃声。
 心臓を穿つ凶弾!
 目を見開き、その場に倒れるローニア。
 金髪グラサンの狙撃者、ミハイルが口元に笑みを浮かべ、ローニアの亡骸に背を向けた時だった。
 亡骸が動いた。
 ミハイルは気配に気づき、拳銃を構えて振り向く。
 その引き金より早く、ローニアが内ポケットから何かを取り出し投げつけた。
 額から血を流して倒れるミハイル。
 額に突き刺さったのはハート形のチョコ。
 その中心には、ローニアを襲った凶弾が浅く突き刺さっていた。
 
 画面が暗転し、テロップが出て終了。
『―ハートを守るチョコレート―  ハートハードチョコ』

 撮影終了後、ローニアはメーカーにハートハードチョコをたっぷり貰って帰った。
「なかなかの優れものだな、防弾能力がある上に、心臓病まで防げるとは。 これでオリーブオイルが安心して飲める」
 勘違いを深めたローニア。
 ますます不健康な生活を送りそうである。

●天願寺 蒔絵(jc1646)編
 局内録音スタジオ。
 ヘッドホンを付けた蒔絵が、自作の歌をマイクに向かって歌っていた。
 レッスンは受けていないが、“歌唄い”のスキルを使ったのでそれなりに上手い。
「蒔絵ちゃん、CMソングは録れたのだわ?」
 録音を終えた蒔絵を椿が出迎えた。
「うん! 商品ももちろんだけど、歌も売れるといいな。 それでもって、音楽事務所からスカウトが来ちゃったりして!きゃーどうしよー、あ、でもおししょーさまが許してくれないかも?」
「……この娘もイリスちゃん並に青春18切符なのだわ」
「どういう意味?」
 蒔絵も割と調子に乗りまくるタイプだった。
「ところで、私のお相手役は?」
「連れて来たのだわよ。 ちょうど前の収録が終えたところだから」
 椿が示したのは、スタジオの自販機の前でぶつくさ言っている少年。
「この自販機にもオリーブオイルがないのか」
 CMにおける蒔絵の共演者はローニアである。
 台詞なしの予定なのもあり、ボロも出すまいという事で連れて来たのだ。
「ところで、どの商品を宣伝するのだわ?」
「マンディアンタイプのチョコだよ」
 蒔絵が出したのは、上に色とりどりのフルーツやナッツが載ったビターチョコだった。
「あら、美味しそう」
 収録開始と共に蒔絵の歌う、小悪魔チックなメロディの歌が流れ始める。

♪ジュエルで着飾ってセクシーな香り纏う
甘いだけの女の子はもう卒業するの
いつもと違う私をあなたは何て言うかなあ?
もしかして今度こそは、なんて期待したりして
初めてのキスを賭けて二人で恋の駆け引き
ありきたりなんて嫌よ、ロマンティックじゃなくちゃ
二人で手を繋いで輝く夜を歩く
あんまり熱いキスにとろけてしまいそうよ

白いワンピースに身を包んだ蒔絵が待ち合わせ場所に急ぎ、待ってたローニアと手を繋いで歩く。
 水族館や映画館などのデートスポットを巡った末、夜の公園に着く。
 ベンチに二人で腰かけ、目を閉じて唇を寄せあう蒔絵とローニア。
 ローニアの唇に甘い感触。
 触れたのは、マンディアンチョコだった。
 蒔絵が悪戯っぽい顔で、それを差しだし、
「あたしの、キスの味。 マンディアンチョコ」
 コケティシュな笑顔でCM終了。

 収録終了後、蒔絵のキスの味がするというこのチョコを、眼鏡の少年が買い占めたという噂があるが事実かは定かでない。

●玉笹 優祢(jc1751)編
「あら、椿さんではないのですか?」
 今回はイリス編にも登場した優祢が主役
 まずは出迎えてくれたアシスタントが、椿ではない事に戸惑っている
「なんかね”急用が出来たのだわ、蒔絵ちゃんあとお願い”とか言って、どっかへ行っちゃった」
 自分の回終了後、蒔絵はアシスタント代理を押し付けられていた。
「蒔絵さんも綺麗だしイメージに合うからいいよね、優祢ちゃん」
 優弥に呼びかけたのは和服姿の幼女、露園 繭佳(jc0602)。
 今回の共演者で、優弥に負けず劣らずロリ巨乳。
「そうですね、蒔絵さんに出演してもらいましょう」
 優弥が蒔絵に同意する。
「え? あたし、出番ありなの?」
 割と嬉しそうな蒔絵。
 役得である。
 さっそく現場である学園の調理室に移動。 収録開始。
 今回宣伝するのは、オーソドックスなミルク味の板チョコだった。

 調理室で、薄桃フリルの可愛いエプロンを着けた優祢と繭佳がチョコレートづくりをしている。
「美味しく作ろうね!」
「はい……あの人に喜んでもらいたいですから」
 小学生としては手慣れた手つきで和気あいあいと調理。
 だが、材料として用意してあった稲妻チョコに突如手足が生え、脱走した。
「あ! チョコが!」
「捕まえます、繭佳ちゃんは他の材料を守って下さい!」
 優祢がそれを追う。
 チョコは機材やら机やらを吹っ飛ばしつつ調理室を疾走。
 大追走劇の末、繭佳がついにそれを捕える。 
「え? これで作るの」 
「ごめんなさい、ごめんなさい」
 手足の生えたチョコを鍋で溶かして、ハート型のチョコにするという恐ろしい場面が展開。
 泣きながら、それを憧れの人の元へ持って行く。
 憧れの人は高等部の制服を着たお姉さん、蒔絵。
「ありがとう」
 何も知らずにそれを食べてしまう蒔絵を優祢と繭佳が、死んだ魚の目で見守るところでテロップ。
『憧れのあの人へ、想いを込めてみませんか?』
 その下に小さく注意書き『※偶に、とても生きが良いのもいますので、ご注意ください』
 
 収録終了。
「美味しかった〜、二人ともお菓子作り上手だね〜」
 自分の出番の時以外は、アシスタント業をしていて見ていなかった蒔絵。
 食べたチョコの正体が何だか知らずにご満悦。
 繭佳が優祢にこっそり耳打ちする。
「なんか、イメージと違う出来になったような」
 某イベントで手に入れた稲妻チョコを持ちこんだところ、えらいことになってしまった。
「もしかして椿さん、これを知っていて逃げたんじゃ?」

●ミハイル・エッカート(jb0544)編
 その椿は、別のスタジオにいた。
 特撮系の収録を行うスタジオである。
「こっちの方がまだ気が楽なのだわ。 あんなもの食べたらポンポンおかしくなるのだわ」
 どうやら知っていたらしい。
 しばらくすると、ミハイルがスタジオに入ってきた。
「おい椿、俺の衣装、こんなのしかないのか?」
 不満そうな顔をしている。
 手にしているのは、銀色で体にぴっちりした頭にアンテナが生えた全身タイツだ。
「昭和過ぎるだろ」
「ならボディペイントで宇宙服を描く? 最近、そういうスキル持っている子が増えたらしいから、今風のデザインに出来るかもしれないのだわ」
「また全裸か!? 俺の衣装は猫一匹か!?」
 冒頭のイリス同様、カレンダー全裸猫事件はトラウマになっているらしい。
 結局、ライダースーツとメットを改造する事でどうにか宇宙服を作成。
 収録に使う宇宙船も”創造”スキルで作り出し、撮影を開始しようとしたその時、
「ちょっと待ったー!」
 トラウマの原因、イリスがスタジオに飛び込んできた。
「他のメンバー全員、メイン以外にもゲストで出番あるのにボクだけゲストなしとはどういう事だー! やり直しを要求するー!」
「え? イリスちゃんTVは出まくりだからもういいって……」
「それとこれとは別腹なんだよ! ボクの魅力をもっともっと伝えるべきなのだー!」
 なんだかよくわからない理由で暴れている。
「じゃあ、私と宇宙管制官役を替わる? これ着る?」
 椿は去年のCMで使用したパイロットスーツを着ている。
 この管制官と、ミハイル演じる宇宙飛行士だけが今回の登場人物だ。
「う……ちょっとサイズが合わないかっな〜?」
 着こなそうとして失敗するイリス。
 胸と身長がまるで足りなかった。
 協議の末、与えられたイリスの役は!?

 無限に広がる大宇宙。
 その片隅で一隻の貨物宇宙船が遭難していた。
 この貨物船がイリス!
 服をメカ色に塗って、陰陽の翼を広げただけというむちゃくちゃ強引な出番である。
 そのイリス船の中。
「おい、助けはまだなのか? 食料が底を付いて十日経つぞ」
 げっそりと痩せこけたメイクをしたミハイルが、通信モニターの向こうの管制官・椿に話しかける。
「A1からA8の積荷を食べてもいいという許可が下りたのだわ、それを食べて救助を待てとの命令なのだわ」
 ミハイルが、貨物庫を開ける。
 積まれていたA1番の貨物ケースを開けると、そこに入っていたのはピーマンの山! 
「食えるかあ!」
 衰弱した体も忘れて、ケースを蹴り飛ばす。
「まさか全部ピーマンじゃないだろうな」
 A2からA8までも開けたが、全部ピーマンだった。
 悪態をつきながらふと目に映ったのはA9の貨物ケース。
 だがこれは他の貨物ケースと違い、”開封厳禁”の文字がある。
『それはダメ! 国家機密なのだわ! ピーマンをちゃんと食べなさい!』
 モニターから椿が制止してきたが、
「ピーマンを食うぐらいなら死刑の方がマシだ!」
 強引にケースを開けてしまう。
 出てきたのは、”リアルキットチョコ・幻想シリーズ”という食玩5ダース。
「食い方は?」
 箱裏にプリントされた取説を読む。

 1:チューブからチョコを出して型に流す。
 2:船内の冷蔵庫に入れ、4℃以下に冷やす。
 3:出来たパーツを組み立てると格好いいミニフィギュアの完成。

 出来上がったのは竜やグリフォンなどの幻獣。
 子供のような顔で、楽しげに全箱組み立てるミハイル。
「もったいなくて食えねえ……」
『作った後はちゃんと食べてね、美味しいのだわ』
 椿のナレーションと共に、ミハイル餓死。

 収録後。
「助からないのかぁー! ボクも宇宙空間に放置かぁー! ってか、あれが出番と言えるのかぁー!」
「最初から最後まで、映りっぱなしだったじゃねえか」
「内面の魅力が伝わったのだわ」
 たしなめるミハイルと椿。
「ボクじゃねえかっら! セットだっから! あんなものがボクの内面だと思われてたまるっかー!」
「贅沢言うなよ、俺なんかCM二本出て二本とも死んでいるんだぞ」
 イリスによるこの猛抗議の様子を、正規のCMの後にNGバージョンとして流すと評判になり、学園生たちが作った一連のCMと共に売上UPに貢献したのだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ハイテンション小動物・イリス・レイバルド(jb0442)
 Eternal Wing・ミハイル・エッカート(jb0544)
重体: −
面白かった!:5人

奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
ハイテンション小動物・
イリス・レイバルド(jb0442)

大学部2年104組 女 ディバインナイト
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
オリーブオイル寄こせ・
ローニア レグルス(jc1480)

高等部3年1組 男 ナイトウォーカー
食べ物は大切に!・
天願寺 蒔絵(jc1646)

大学部2年142組 女 アーティスト
ホテル王女・
玉笹 優祢(jc1751)

中等部2年1組 女 バハムートテイマー