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マスター:スタジオI
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:21人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/09/29


みんなの思い出



オープニング


 久遠ヶ原島でガチャが流行っている。
 購買に行っても、学園生たちが買うのは普通の商品よりもガチャが多い。
 久遠ヶ原ケーブルTVはここに目を付けた。
 取引のあるスポンサー企業を集め、盛大にガチャイベントを行う。
 その名も、夢のガチャ祭!
 一見、夜の広場に屋台の並ぶ普通の秋祭りに見えるが、出店される屋台の賞品、全てがガチャ店! 
 各店に設置されたガチャマシンを引かないと、屋台に並ぶ商品が何も手に入らないというとんでもない祭である。

「というわけで、僕も“俺ガチャコース”で出店させてもらうことにしたよ」
 久遠ヶ原ケーブルTVで行われる「ガチャ企画会議」に、背中に花をしょって現れた男はヘーミテオスの神尾。
 顔面偏差値100を謳い文句にしている、美形モデルグループのリーダーである。
「神尾くんに俺ガチャ屋台の一つを担当してもらうと、女子客を呼べると思ってな、我輩が呼んだのであーる」
 豪快に笑うTV局長ワルベルト。
「神尾くんの“俺ガチャ”? どんなのだわ?」
 局長の姪で、独身アラサー女子所員の四ノ宮 椿(jz0294)が尋ねる。
 “俺ガチャ”とは屋台主自らをイメージキャラに当たり商品を配したガチャの事である。
「いわゆるタイアップさ。 今度、ボクの最新写真集が発売されるんで、宣伝になると思ってね」
 話し方がナルシズムできざったらしいが、実際に美しいだけあって話すたびに体の周囲に星屑が煌めいて見える。
 会議室にいる女子局員など、すっかりメロメロである。
「もしかしてガチャで大当たりが出ると、その写真集がもらえるのだわ? 神尾ファンなら本屋で買ってしまうと思うのだけれど」
 ちなみに椿は叔父であるワルベルトラブなので、神尾は眼中にない
「いや、それはA賞の賞品にさせてもらった、S賞はもっとビッグさ」
「どんなのだわ?」
「オンリーワン生写真だよ、S賞当選者には、ボクに好きなシチュ、好きなポーズで写真を撮らせてあげるのさ、キミだけのオンリーワン生写真さ!」
「ふむ、それはファンが食い付くかもしれんな」
 局長は、うなずいたものの椿は眉を潜めている。
「それって危ない気がするのだわ」
「何が?」
「だって、世の中いろんな趣味の人がいるでしょ? ガチムチの大男が神尾さんとの濃厚な絡み写真を希望したらどうするのだわ?」
「それは……」
 青ざめる神尾。
 そういう人にS賞が当たらない事を祈ろう。
「ちなみにB賞はどんなんなのだわ?」
 ガチャの賞は四段階、ないし最低三段階用意せねばならない。
 S賞が大当たり、A賞が普通の当たり、B賞は参加賞、そしてC賞が当たると涙目の大外れである。
「B賞は、市販品のブロマイド一枚かな? まあ、美しい事には変わりないから満足してもらえると思うけどね」
 さすが顔面偏差値100、自分の美貌には絶対の自信がある。
「ちなみに大外れのC賞は?」
「C賞もオリジナルの生写真さ」
「おや、S賞と同じであるか?」
 局長に問われ、美しい金髪を横に振る神尾。
「ノンノン、僕がデジカメでC賞を引いた瞬間に当選者の顔をパシャリしてあげるのさ、美しい僕に屈辱の表情を撮られるんだ、大外れに相応しい賞品だろ?」

 この祭の参加者は、神尾のような“俺ガチャ”以外にも“業者ガチャ”の店を代行することも出来る。
 寿司業者ガチャの代行をする“寿司ガチャ”なら、S賞で特上寿司屋台で食べ放題、A賞で豪華おみやげ寿司お持ち帰り、B賞は干瓢巻&かっぱ巻きセット、C賞はガリを寿司桶一杯のガリを食って貰う。

 某電機メーカーの代行ガチャの代行をする“電機ガチャ”ならS賞が大画面4Kテレビ、A賞が電気炊飯器、B賞が懐中電灯、C賞が使い終わった廃棄品の乾電池百本。

 レストランチェーン会社の代行をする“レストランガチャ”ならはS賞が系列最高級店でのフルコースお食事券、A賞が御食事券一万久遠分、B賞がパスタ1パック、C賞が携帯メールに毎日、チェーン系列店での割引クーポンが何通も送られてくるサービス。
 などなど様々な業者が、祭参加者の提案と屋台店主代行を期待している。

「さて椿ガチャはどうするのだ?」
 局長に尋ねられた椿、ドヤ顔で宣言する。
「私は“俺ガチャ”でも“業者ガチャ”でもないのだわ、一人の客としてガチャを引き続けるのだわ 」
「なに!?」
「TV局に私が本気で欲しいと思う物をS賞にした“夢ガチャ”店を作ってもらうのだわ! 私は屋台には立たない! 客として、ガチャ廃人になるまで引き続けてやるのだわ!」
 恐ろしい事を言い出す椿。
「も、もしかして結婚ガチャかな? S賞が出たらボクのような美しい男と結婚出来るみたいな」
 椿の気迫にドン引きしながら神尾が尋ねる。
「それは人身売買だから諦めたのだわ、私が本気で引きたいと思うガチャ! それは“若返りガチャ”なのだわ!」
「ほう? S賞で豪華エステメニューでも当たるのか?」
「豪華エステメニューはA賞として用意したのだわ!」
「若返りか、なら、賞品はコラーゲンやアーモンドかな? 僕もプロのモデルとして毎日摂取しているよ」
「そういうのは老化を遅らせるだけなのだわ、私提案のガチャではB賞が高級コラーゲンパウダー贈呈なのだわ」
「ならS賞はなんだ?」
 椿は、瞳に炎を宿して答えた。
「以前、私の斡旋所で依頼を扱った“五歳児になれる薬”を開発した博士をとっつかまえて“十五歳になれる薬”を造らせるのだわ!」
 ワルベルト局長が難しい顔をする。
「椿よ、その話は別の企画でも出たが、博士の要求費用が莫大なのだ。 若返りガチャを作ってやっても良いが、S賞は当たる確率が一兆分の一程度になる、それでもよいか?」
「う……それは流石に当てられる気がしないのだわ」
 ネタ体質を自覚している椿、そんなもの当たるわけないとわかる。
「なら代わりに、S賞としてセーラー服や幼稚園児のスモッグを用意しよう、それを着て気分だけでも若返るがよい、ガハハハハッ」
「そのコスプレは痛すぎるのだわ……むしろそれはC賞なのだわ」

  こうしてガチャ祭の企画は着々と進行していった。
 学園生の参加方法は四通り。
 A・自分のキャラを活かしたガチャを作ってガチャ屋台に立つ。
 B・どこかの業者の出す屋台の代理人としてガチャを仕切る。 
 C・自分の理想のガチャを提案して、客としてとことんそれにのめり込む。
 D・他の参加者のガチャ店を周り、ひたすら引く。 
 いずれでも良いので、楽しいガチャ祭を開いて欲しい。


リプレイ本文


(ふふっ、やはり搾取はされるより、する側ですよね)
 ガチャ祭の会場。
 黒い真理を悟り、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)は屋台でほくそ笑んでいた。
 彼の用意した商品は“JOT(ジャック・オー・ランタン)ガチャ”
 エイルズが愛用しているかぼちゃマスクをテーマにしたガチャである。
 この黒い罠に巨乳幼女二人が引っかかった。
「もうやめましょうよ、繭佳さん」
「あと一回! あと一回だけやらして優祢ちゃん!」
 和服姿の巨乳幼女、露園 繭佳(jc0602)を、前髪パッツン系爆乳幼女、玉笹 優祢(jc1751)が止めようとしている。
「あのカボチャお化けのお洋服が欲しいんだよ! ハロウィンで着たいんだよ!」
 JOTガチャのS賞はJOT変身セット。
 マスクとマントがセットで、非着用時はマスクの目がほんのり光るという優れものだ。
 エイルズは、物欲を焚きつける。
「ハロウィンはもうすぐですからねぇ、これを着てパーティに行けばスターになれますよ!」
「そうなんだよ! いつも恋音お姉ちゃんばかり目立っているから、今後こそあたしが!」
「恋音さんが目立っているのはコスプレのせいではないと思いますが……(ふるふる)……」
「ハロウィンで和服はさすがに場違いですから、このコスプレはおススメですよ」
「うん、やる! お洋服欲しい!」
 焚き付けに燃え上がった繭佳がレバーを廻す。
 出たのは、黒玉。 
「わ〜、またC賞だ」
「はい、どうぞかぼちゃの煮つけです」
 爪楊枝に刺したかぼちゃの煮つけを渡すエイルズ
「もう食べ飽きた〜」
 繭佳の紙袋にはA賞のかぼちゃライトや、B賞のキャンドルスタンドが詰まっている。
「かぼちゃコスの当たり確率は鬼設定な屋台さんに比べれば低くないんですが――当たらない時は当たりませんよね〜」
 エイルズは必死な繭佳の形相と、戸惑い深めていく優祢の様子を生暖かく見守り続けた。


 エイルズの言う鬼設定な屋台。
 その一つが琴ヶ瀬 調(jc0944)の“宝くじガチャ”の屋台だった。
「S賞! 絶対にS賞ゲットざます!」
 さっきから金髪碧眼の美女・リズがそれにハマりこんでいる。
 このリズは椿の親友で、ハリウッド女優を思わせる美貌の持ち主なのだが、いかんせん金の亡者だ。
「1000枚! 宝くじ1000枚ざます!」
「程々にされた方が――正直、針の穴を二つばかり潜らねばならないほどの確率なのですわ」
 調は宝くじ業者に依頼されてこの屋台を開いた。
 S賞は“宝くじ1000枚” 宝くじは1枚300久遠なので単純計算で30万久遠。
 エイルズのコスプレに比べると十倍近い値段である。
 自然、当選確率は鬼になる。
 さらには仮に宝くじ券を当てても、宝くじ自体に当選が出なければ意味がないのである。
 針の穴二つとはそういう意味だった。
「ちっ、コインがなくなったざます。 また働いてくるざます!」
「あのリズさん……ご自愛された方が」
 心配そうな調。
 リズはもう足元がふらついている。
 コインを稼ぐのに必要な“ADの仕事”というのは、余程きついものらしい。
 さきほど、繭佳と優祢が屋台前を通りかかって挨拶していったが、特に繭佳はほとんどゾンビにようになっていた。
「自愛? そんなものしらんザマス! 1000枚宝くじを当てて、それが全部特賞の3億円なら3000億円ざますよ !3000億円! 一生左団扇ざます!」
「そんな事はありえない気が……」
 欲に目が眩んでありえない皮算用。
 ガチャ廃になるタイプの人間の一例を見た気のする調だった。


 人の持つ運というのは様々である。
 大当たりがどうしても出ない者もいれば、その逆の者もいる。
「あらァ……♪ また当たっちゃったわァ……♪」
 黒百合(ja0422)がカパッと開けたカプセルからは“文歌の週末ライブ鑑賞券”と書かれた金色のチケットが出てきた。
「S賞大当たりおめでとうございます〜! こ、これは3週連続ライブをしないと……」
 高らかにハンドベルを鳴らす川澄文歌(jb7507)
 彼女は撃退士兼アイドルである。
 A賞は文歌の新曲が聴けるHPへのQRコード
 B賞は文歌の笑顔の缶バッチ
 どれも、ちゃんとガチャカプセルに入っていた。
 “ガチャの賞品はカプセルの入るサイズであるべし“ そんな信念を持っている本格思考の文歌だった。
「それにしてもC賞が当たらないわねぇ……♪」
「C賞は私の写真集ですね。 ただ正直言うと、顕微鏡がないとみられない残念サイズなんですよ」
「それだけ見づらくしているって事は、きっとHな格好をしているのねぇ……期待しているわぁ……♪」
「あわわ、決してそんな事は」
 可愛い女の子好きな黒百合、文歌にもちょっと色目を向けていた。
 またガチャを廻す。
「あらァ……♪ またS賞……♪」
「4週連続週末ライブですね、スケジュールをちゃんと入れておかないと」
 文歌も文歌でS賞はちゃっかり多目に入れていた。
 ライブがしたいのだ。
 黒百合の財布には、まだまだコインがたっぷり入っている。
「たまには搾取される側もいいと思ってねぇ……♪ 頑張っちゃったのよぉ……♪」 
 頑張ったら頑張ったでいい事がある。
 黒百合はラストワン賞の“文歌抱き枕”まで根こそぎ持って行った


 斡旋所員・堺臣人はやや顔を俯かせながらガチャに挑んでいた。
 ここは、アイリス・レイバルド(jb1510)開いた“自作フィギュアガチャ”屋台
 ガチャ機にコインを入れると出たのは――銀の玉だった。
「A賞だな、賞品はリアルスタイルのワルベルト局長人形だ」
 黒髭の五十路男人形を渡される。
「こんなもの誰が欲しがるんですか!?」
 ツッコミキャラの本能を発動させる堺。
「需要ないでしょ!?」
「私が作りたいから作ったのだよ、前にキミの斡旋所の依頼で美少女フィギュア型のチョコを製作した事があっただろう? つまり他人の企画なら金のかかる作品もタダで製作できる」

 S:三分の一サイズの着せ替えフィギュア
 A:リアル頭身フィギュア
 B:ディフォルメ頭身フィギュア
 C:木彫り動物フィギュア
 
 全てこの島の住人をモデルにした、手作りフィギュアだ。
 堺の狙いはS賞だ。
 ワルベルト局長、堺、椿、と三タイプある。
 どれも誰得に見えるが、堺は内心、椿のものが欲しかった。
 身近な年上の女性に素直になれない堺。
 椿のスタイルはグラドル級。
 せめて人形――出来れば、着せ替えタイプを、というのは男の子なら仕方ないところである。
 しかし、ガチャとはままならぬもの。
 目当ての物は手に入らぬまま、用意したコインは空になった。

 数時間後。
「ぜぇぜぇ……まだ残っていますか?」
 堺は残り少ない体力を振り絞って、コインを稼いできた。
 しかし、迎えたのはアイリスの非情な言葉。
「残念だな、キミのお目当ては彼女が当ててしまったぞ」 
 見れば、屋台に椿本人がいた。
「叔父様の人形が欲しかったのに、先に誰かが当ててしまったのね、残念なのだわ」
「げえ、椿さん!」
「あら堺くん――それ叔父様の人形じゃない! 交換しない? 私の着せ替え人形が当たったんだけど、さすがに自分で飾るのは気が引けるのだわ」
 椿は椿本人のフィギュアを持っていた。
 堺はごくりと喉を鳴らし、そして。
「――お断りします、ふっ、誰が欲しがるんですか、独身アラサーの人形なんか」
「キーッ! 可愛くないのだわ!」
 本心を隠して冷笑を浮かべ続ける堺。
「ふむ、難儀なものだな」
 アイリスは、後悔と己への怒りを含んだ少年の表情を創作に活かそうと、スケッチを始めるのだった。


 一際、人だかりの多い屋台がある。
 行列が出来ているのではなく、野次馬が遠巻きに眺めているのだ。
 皆、牛柄ビキニを付けた少女、月乃宮 恋音(jb1221)の超爆乳を眺めている。
 彼女が運営しているのは“豊胸ガチャ”だった。
 そのレバーを、さっきからずっと銀髪の小柄な少女、雫(ja1894)が廻している。
「はい、B賞は豆乳ですよぉ……お好きな味をどうぞぉ……」
「またですか! どうでもいいのです! とっととその特製豊胸薬とやらを寄こすのです!」
 プンスカしている雫に、怯えて恋音が乳を震わせる。
「おぉ……それはS賞を当てていただかないと……(ふるふる)……」
 恋音ガチャの賞品は豊胸関係の賞品で構成されていた。
 
S:特製豊胸薬
A:高級エステの豊乳コースチケット
B:豆乳。
C:キャベツの千切り

 どれも乳の成長に良いと言われているものである。
 特にS賞の特製豊胸薬は、“入学以来60cm以上増大した”という恋音の乳質を研究して作り上げたもの。
 ひんぬーが悩みの雫は、どうしてもそれを手に入れたい。
「むう、コインが尽きたです、また働いてくるのです」
 よろめきながら、屋台の前を去ろうとする。
「……もうご無理をなさらない方がぁ……顔色がお悪いのですよぉ……」
「問題ありません、体力なんかその辺りにいる敵から奪うのです」
「おぉ……? この島にそうそう天魔はいない気がぁ……」
「います、そこに」
 雫が振り向いた先にいたのは、恋音に挨拶しようと屋台に来た繭佳と優祢だった。

 繭佳が顔色を変えて、優祢の手を引く。
「わわ、優祢ちゃん、逃げよう!」
「え、なんですか?」
 優弥は初依頼でこの島の恐ろしさが分かっていない。
「きょぬーは敵なのです! つべこべ言わずに力を寄越しなさい!」
「きゃーー!」
 貧狼で体力を奪うつもりらしい。
 たゆんたゆん乳を弾ませて逃げる繭佳と優祢。
「うー、同じ初等部生なのに」
 雫の怒りはますます高まった。

 数時間後、何枚かのコインを握りしめた雫が戻ってきた。
「はぁはぁ……今度こそ、当ててやるのです」
 その後も、ガチャを廻し続けるが豆乳、キャベツ、豆乳、キャベツのループ。
 だが、ついに雫の執念は実る。
「やったのです! 金色です! S賞です!」
「おぉ……おめでとうございますぅ……ではこちらをぉ……」
 ついに本命、特製豊胸薬を手に入れたのだ。
「ではさっそく」
 小さな胸を高鳴らせながら、薬瓶の蓋を開ける雫。
 恋音が、雫に自分が羽織っていたカーディガンを差し出す。
「……その薬は即効性ですのでぇ……お召し物によってはこの場で破けてしまう事もぉ……」
「そんなに大きくなるのですか!?」
 期待に満ちた目を輝かせる。
 だぶだぶのカーディガンを羽織ると一気に薬を飲んだ。
 数分経過――だが、何の変化もない。
「いつ大きくなるんですか!?」
「本来ならもう、とうに効果が出ているはずですがぁ……もしやぁ……」
「何ですか?」
「……大きくなる素質がない人には、まるで効果がないようですねぇ……実は、試薬実験も兼ねての屋台だったのですよぉ……データがとれて、よかったのですよぉ……」
 恋音はそう言いながら、実験レポートに何やら書きこんでいる。
 雫の肩がぶるぶる増えた。
「やっとの思い出S賞を当てたあげく、“私の胸には大きくなる素質がない”とわかっただけ、というだけですか!?」
「……おぉ……御愁傷様なのですよぉ……(ふるふる)……」
 雫は、恋音の震動をする爆乳にバクリと食いついた。
「同情するなら乳よこせです!」
 もぎ取らんばかりの勢いで噛みつく。
「い、痛いのですよぉ!?」
「直接食べて採りこんでやるのですー!」
「お……おぉ……!?」
 乳なき子、雫。 
 巨乳を目指す渇望の旅は続く。


「……待たせたな」
 向坂 玲治(ja6214)は異常な疲労感を滲ませながら、鞄を置いた。
 鞄にはガチャコインが詰まっている。
 撃退士屈指のタフガイ向坂がさらにリジェネレーションを駆使し、限界まで稼いだ成果であった。
「いらっしゃいませ。 イカレていますね」
 それを苦笑で迎える屋台の主は、葛城 巴(jc1251)。
 二人は恋人同士である。
「品物は全て私の手製です」
「何でもいいから引くぞ、俺の意識があるうちに」
 照れと、迫る体力の限界から賞品を見もせずに連続でガチャを引く。
 すると巴が、ヒールを続けざまに向坂にかけた。
「なんだ?」
「おめでとうございます、これが賞品です」
 出た玉のいくつかには“癒”の文字が書かれていた
 疲労している客が引いたガチャには、回復スキルを入れておくのが巴ガチャの流儀らしい。
 霞のかかっていた向坂の意識が、輪郭を帯び始める。
「なるほど気が利くじゃねえか」
「こちらも賞品です」
 巴は向坂の体のあちこちに、可愛らしいシュシュやらミニマフラーを着けた。
 武骨な容姿に、全く似合わない。
「何だこれは?」
「可愛いですよ♪」
「勝手にしやがれ」
 忌々しげに吐き捨てつつも外そうとしない。
 チラッと賞品一覧を眺める。
 一番上の欄には“私を1日使用人に出来る”と書かれていた。
 それを目指して、ひたすらにガチャる向坂。
 向坂に回復スキルをかける巴。
 要するに巴も、当てて欲しいのだろう。
 そして、出てくる金色の玉。
「おめでとうございます♪ では後日、お伺いいたしますね」
「なんだよ、こんなに稼ぐ必要なかったじゃねえか」
 鞄の中には、まだコインがふんだんに入っていた。
「ともかく、これから一日の間は俺だけの使用人だな。」
「きゃ」
 巴を、お姫様抱っこで抱え上げる。
 見つめ合う二人。
「……お客様、まだ機械の中には“一日使用人権”が残っていますよ?」
 巴に言われ、向坂は恋人が他の男の家でメイドになっている光景を思い浮かべた。
「ちっ、仕方ねえ、残りも全部、俺が引くか」
「はい♪」
 その後も、ガチャを引きまくり、向坂は一週間ほど巴との癒しの日々を過ごせたのだった。


「これは何なんだ?」
 “チケットガチャ“そう看板に書かれた屋台の下に二人の美青年がいた。
 屋台主の鳳 静矢(ja3856)と、客の金髪碧眼のミハイル・エッカート(jb0544)だ。
「うむ、C賞の確定券だ。 他の屋台にこれを持っていけばC賞の賞品と交換できる」
「C賞って外れだろ? 沢山もらうだけ迷惑だぞ」
 鳳の用意した賞品は、かなり変わっている。
 他のガチャ屋台で使えるチケットなのだ。

S:A以上確定チケット5枚
A:A以上確定チケット1枚
B:ガチャチケット1枚
C:C確定チケット10枚

 Sが当たればお得な気がするが、S賞に高額、低確率な賞品を置いている屋台では確定チケットを複数枚払わねばならない決まりになっている。
 Cの賞品を10個貰えるのは一瞬、お得な気に見える、
 だが、基本C賞は罰ゲーム的賞品。
 苦しみが10倍になるだけなのだ。 
 ミハイルにはメリットが見いだせなかった。
「ミハイルさんのお目当てはどのガチャかな?」
 鳳に尋ねられ、ミハイルは忌々しげな顔で答えた。
「ピーマン嫌い克服ガチャだ」

S:ピーマン嫌いを治す2泊3日のツアーご招待
A:ピーマン抜きの中華ランチのチケット
B:ピーマン禁止のステッカー
C:ピーマン型の臭い消しゴム

 前世でピーマンに殺されたという噂さえある三十男、ミハイル。
 TV局に用意させたそれを、すでに散々引いていた。
「ピーマンさえ食べられれば俺は完璧なんだ」
 ニヒルに微笑むミハイル。
「そんな発想をする時点で完璧ではない気がするが……まあ、意欲は買おう」
 鳳はやや困惑しながらも、説明を続けた。
「さてミハイルさんは、C賞の賞品が沢山欲しいかな」
 問いかけに対し、無言でスーツのポケットをガサゴソ探るミハイル。
 中から一掴み何かを取り出すと、鳳の掌に乗せた。
「やるぜ、大事に使えよ」
 ピーマン型の臭い消しゴムが、10個ばかり鳳の掌に乗った。
「不要だ、お返しする」
「俺だっていらん! 捨てるに捨てられず困っていたんだ!」
 この会場にはゴミ箱がない。
 設置したら、そこに皆がC賞の賞品を大量に捨てていくのが目に見えているからだ。
 各業者が産業廃棄物処理を目的にC賞を設置したのに、それがまた産廃になっては意味がなかった。
「つまりこういう事だ、当たってしまったものは持ち帰るか、無理に食べるかしかない。 だが、あらかじめこの屋台で、ガチャを引いておき、チケットの形にしておけばどうかな? このチケットには“必ず引き換えねばならない”などという規定はない」
「……なるほど同じハズレでもこっちはただの紙! 引き換えずに、メモ用紙にしてもいいわけか! エコだな、こいつは」
「うむ、私は地球に優しいのだよ」
「ありがとよ、教えてくれて、こいつはお礼だ」
 また一掴み、ピーマン消しゴムを鳳の掌に乗せる。
「だから、いらんぞ!」
「これで忌まわしいピーマンの匂いに悩まされずにガチャれるぜ」
 185cmの三十路男はしゃがみ込んで、ガチャ機の前にしゃがみこみ無邪気にガチャガチャし始めた
 その無邪気さが幸運を呼んだのか、あっさりと出るS賞。
 大して体力も費やさず、ミハイルはピーマン嫌いを治す2泊3日のツアーに旅立った。

「喰わん! 絶対に喰わんぞ! お前、このハンバーグにピーマン入れただろ!」
 料理を作ってくれた一流シェフに、子供のようにごねるミハイル。
 ピーマン嫌いを治すため、いろいろな料理に工夫してピーマンを仕込んでいるのだが、ピーマンセンサーでも付いているのかミハイルは断固として食べようとしない。
 ちなみに残したら何も食べさせないというルール。
「困ったものだな、キミがこうしろと言ったのだぞ」
 困惑するワルベルト局長。
「だって、わかるんだよ! ピーマンが入っているって!」
「仕方がない、あまり使いたくない手だが」
 ミハイルは強引にピーマンを食わせようとするスタッフに呑まず食わずで抵抗し続け、三日目に力尽きて病院に運ばれた。


 花祀 美詩(jb6160)は、知り合いの賦 艶華(jc1317)の屋台に遊びに来ていた。
「店の準備って意外と忙しかったですね」
「なんとかADの仕事もしたけど、1枚稼ぐのが精一杯だったわ」
 二人とも業者ガチャを請け負っている。
 ここは艶華のガチャ屋台。
 PC業者から請け負ったガチャだ。

S:最新型ノートPC
A:外付けHDD
B:USBメモリ
C:ジャンク品幾つか

 「ワンチャンでノーパソが当たるといいんだけど」
 美詩は1枚だけコインを持っていた。
 自分の屋台が忙しい中で、どうにか時間をやりくりしてADの仕事をし、手に入れたものだ。
 半ば冗談交じりにコインをガチャ機に入れる。
 1枚でS賞が当たるとか、創作物でもない限りありえない話なのだが――。
「あら、出ました! ノーパソ!」
「の、電源アダプターだけね」
 苦笑する美詩。
 C賞はPCのジャンクパーツ
 これが出るわ出るわ!
「あのぉ、これは何に使うものなのでしょうか?」
 このガチャに挑んでいた巨乳小学生コンビの繭佳と優祢など、紙袋一杯にジャンクが溜まっている。
「PCケースって何かな?」
「パソコンに見えますが、それにしては軽いような」
「よくわかんないね……」
 業者が、処理に困って大量に押し付けてきたのである。
 PCに詳しくないjsにとっては完全にゴミだった。
 さすがに艶華も良心が痛んでくる。
「繭佳さん、優祢さん、あたしの屋台に来ない?」
 美詩は艶華とjsコンビを自分の屋台に誘った。

 美詩の屋台は服飾関係の業者ガチャだ。
「国内大手衣料品店から請け負った仕事よ、大企業とはコネを付けておきたいからね」
 美詩は政治家秘書の娘であり、将来のためのコネ作りに余念がなかった。

S:提携先高級店のブランドバッグ
A:系列店のお買い物券一万久遠分
B:靴下or手袋
C:デザインが微妙過ぎるデッドストックの品

「う〜ん、可愛い服は欲しいけど」
「サイズに不安があるんですよね」
 ロリ巨乳な二人、子供服はサイズが合わない場合があるらしい。
「大丈夫、選べるようになっているから。 B賞やC賞なら引いた賞品で私がコーディネートさせてもらうわよ」
 客の購買意欲を煽る美詩。
 それに反応したのは、髪の毛が蛇の女の子・ニョロ子(jz0302)だった。
「本当にょろか?」
 美詩が屋台を留守にしている間にガチャを引いていたらしい。
「うっ、これは難題ね」
 美詩は割と無難な容姿をしており、標準的なコーディネート以外は自信がなかった。
 しかもニョロ子、C賞ばかり引いている。
 ワゴンセールでも売れなかった微妙デザインの服ばかりである。
「こ、これで可愛くするのは至難の業では――」
 艶華、手伝おうとは思っていたがドン引きして匙を投げる。
「もう適当に組み合わせるしかないわね」
 美詩は美的感性と良心のスイッチをオフにして、適当なコーディネートをした。
「あらかわ」
「よく御似合いです〜」
 髪の毛が蛇というイレギュラーな容姿のせいか、ニョロ子にはイレギュラーなファッションが良く似合っていた。
「ありがとにょろ〜、これも本当に貰っていいにょろか?」
「ぜひ、持って行って下さるとありがたいです」 
「使い道ないもんね」
 ニョロ子は、優祢と繭佳が持て余していたPCジャンクパーツの数々も持って行ってくれた。
 堺というニョロ子の片思いの相手が、PC自作が趣味なので喜ぶのだそうだ。
「何にでも使い道はあるものですね」
 ガチャ店主たちの良心の疼きも、これで止まったのだった。


 色黒な少女、天願寺 蒔絵(jc1646)が挑むは “久遠ヶ原ケーブルTV特製グッズガチャ”
「カッコいいの引き当てて、お部屋に飾るのー」
 蒔絵のお目当ては、最近出来た彼氏のグッズだった。
 彼氏は役者志望でちょくちょく、ドラマなどに悪役で出ている人だった。

S:非公開シーン集付きDVDBOX
A:番組キャラクターフィギュア
B:番組宣伝ポスター
C:撮影中に破壊された小道具

 さっそくガチャる。
「C賞だわ! ドラマの中で彼氏が火炎放射器を浴びせて黒焦げにしていた“罪もない人人形の残骸”が当たったの〜」
 明らかにガラクタなのに大喜びな蒔絵。
「A賞! ――あ、ジャスティスヒーローフィギュアか……いらないわね」
 目玉賞品が当たったのに、そっけなく鞄に放り込む。
「彼氏のフィギュアが出るまで頑張るの」
 彼氏が演じた悪役キャラのフィギュアが出るまで“TV 局で重労働してはガチャ”を繰り返す蒔絵。
 実は、目当ての品は存在しない。
 当たり賞品が映ったポスターには彼氏が演じた悪役フィギュアも確かに描かれている。
 だが“悪役グッズが当たっても嬉しい人は少ないだろう”との“善意”で、ポスター印刷後に没になり、TV局が製造しなかったのだ。
「うぅ……今度こそ、今度こそ……」
 蒔絵は幻の希望見せられたまま、ガチャり続け、ついには力尽き倒れた。

「なんだこれが欲しいのか」
 痙攣して倒れたまま、ポスターの中の当該キャラに手を伸ばしている蒔絵を別のフィギュアガチャ店主アイリスが見付けた。
 その場でさくっとフィギュアを作り、気絶している蒔絵に握らせてその場を去る。
 意識を取り戻した蒔絵は歓喜した。
「当たった! いつのまにか当たってた! 諦めなければ願いは必ず叶うものだわ! ガチャ最高!」
 皆が善意持ってしかなかったのに、ガチャ廃にされてしまった蒔絵。
 果たして彼氏との将来に幸福はあるのか?


「とても素晴らしい」
 自らがTV局に注文した林檎ガチャを見て、パウリーネ(jb8709)は目を輝かせる。
  
S:特大アップルパイ
A:林檎丸ごと5つ
B:250mlの林檎ジュース
C:林檎の缶詰(中身無し)

 林檎大好き魔女パウリーネにとってはまさに夢ガチャである。
 さっそくガチャり始める。
「いきなり、特大アップルパイ!」
 幸先よし! 顔面大のアップルパイにかぶりつくパウリーネ。
「昨日と今朝は林檎を食べてないからね、出た品はこの場で全部食べるよ」
 その後もS賞、A賞が出続ける。
「ツイてる! 林檎への愛が呼んだ奇跡!」
 ツイてはいるが、実は奇跡とは言い難い。
 高額な賞品ほど当たる確率が低くなる仕組み。
 逆に言えば、それほど高くない特大アップルパイは割と当たるのだ。
 大食い属性ではないパウリーネはすぐ満腹になってしまった。
 時間とコインを持てあましたパウリーネ。
 鼻歌を歌いつつ、C賞の空き缶を積み上げる。
 自身にも意味は解らない行動だったが、とにかく楽しかった。


「へい、干瓢巻とかっぱ巻お待ち!」
「ま、またC賞か」
 寿司ガチャ屋台の大将が寿司下駄に海苔巻を乗せてくれる。
 大将は腕が良く、巻物も旨いのだがいかんせん腹一杯である。
 米を愛する心がそうさせるのか、B賞当たりまくりだ。
 しかし、鐘田将太郎(ja0114)の座右の銘は“日本人なら米を食え”である、残すわけにはいかない。
「もがもが……しかし旨い、同じ干瓢巻なのに何人前食っても飽きんな」
「まいど!」
 気のいい大将である。
 C賞の“ガリ寿司桶一杯強制食い“は免除してくれた。
 客が食いたいものを旨く食わせるのが、職人の矜持だそうだ。
(この大将が握った最高の寿司を食ってみたい)
 S賞の寿司食い放題を狙う鐘田だったが、今、当たったところでどれほど食えるだろうか?
 鳳の屋台の存在を知っていれば救われたのだが、生憎と場所が離れていた。
「大将、席を外すぞ、散歩をしてくる」
 鐘田は腹ごなしの散歩に出た。

「くんかくんか……あなたお寿司の匂いがするわね」
 ある屋台の前で、鐘田は黒髪に眼鏡の若い娘に呼び止められた。
「引いていかない? 書籍関係の商品が当たるんだけど」
「本か、残念だが大人しく読書をしている場合じゃない。 腹を空かせたいんだ」
「S賞は、私とのデート権よ」
 タイトスカートに包まれた白い足を組みかえる蓮城 真緋呂(jb6120)。
「場所は本が関係あるところならどこでもいいわ、図書館、本屋――貴方の家でもいいわ」
 鐘田とて男である、ごくりと喉を鳴らす。
「S賞はどのくらいの確率だ?」
「確率は機密事項なんだけど――そうね、あなたの持っているお寿司をくれたら確率を上昇させてあげてもいいわ」
 渡りに船の提案だった。
 鐘田は大将の屋台で当てたA賞の折詰寿司を5人前分持っている。 
 今の腹具合では今日中に喰い切れそうにもない。
 旨いうちに誰かに喰ってもらうのが、米に対する礼儀だと考えた。
「よしやろう、一度だけだがな」
 寿司を一箱渡す。
 真緋呂はさっそく食べ始めた。
「ふぐふぐ……ん〜、美味しい! 寿司屋の腕はギョクでわかるっていうけど本当ね!」
 凄い勢いで空にする真緋呂。 
 お腹が減っていたのだろうか? そう思いつつも鐘田は財布を見る。
 ADとして体力の限界近くまで働いたので、コインもまだ7枚残っている。
 そのうち一枚を投入すると、ガチャ機から黒い玉が出た。 
「C賞ね、じゃSSを書いて」
「俺が書くのかよ!?」
 なぜか屋台のカウンターで小説を書かされるはめになる鐘田。
 手持ちぶたさなのか、鐘田の手元にある寿司折を真緋呂が覗き込んできた。
「お寿司もう一箱いただいてもいい?」
 服の胸元に豊潤な白い膨らみが垣間見えた。
「構わんが、確率はあげろよ」
 チラ見しつつ、慣れない小説を必死で書く。

S:本関連の場所で1日デート権
A:私が選ぶ1万久遠図書
B:話題本のダイジェストコピー冊子
C:あなたが書いた物語

 真緋呂ガチャのラインナップは、金額差の問題でB賞とC賞の当選率が高い。
「出来たぞ」
 ようやっとSSを書き、真緋呂に提出すると、冷めた目で見られた。
「凡作ね、面白くないわ、S賞当選確率低下ね」
「何だそりゃ!? っていうか俺の寿司が!」
 鐘田が小説を書いている間に、手持ちの寿司五箱を真緋呂は平らげてしまっていた。
「お弁当の買い出しに行ってくれたら、当選率はあがるわよ」
「どれだけ食うんだ!?」
 真緋呂に振り回され、もはや大将の寿司など鐘田の頭から飛んでしまっている。
 結果、S賞は当てたものの、デートの食事代で財布が大ダメージを受ける事に気付き、女にハマりこむ恐ろしさはガチャ以上だと思い知る鐘田だった。


「や、やっと出来ました……」
 袋井 雅人(jb1469)は完成させた手作り賞品を屋台に並べ、どっと膝から崩れた。

S:袋井雅人・等身大フィギュア
A:袋井雅人・血まみれフィギュア
B:ラブコメ仮面フィギュア
C:袋井雅人・学園制服フィギュア

全部、自分のフィギュアである。
 精巧に出来た力作ではあるが、果たして中身以外は平凡な眼鏡少年のフィギュアにどれほど需要があるのだろう? いやない。
 というわけで袋井は、祭り開始後、閑古鳥の鳴く屋台でひたすら眠っていた。
 ようやく客が来たのは祭終了直前だった。
「袋井様、貴方のガチャに命をかけようと思います!!」
 袋井の愛人・織神 綾女(jc1222)である。
「綾女さん! さあさあ、私の魂をこめたこのガチャ、どうぞ回していって下さいなー」
 女の子の匂いを察知したとたん、昏睡していた袋井は元気一杯になってバッと顔をあげる。
「いざ、引かせていただきます!」
 ガチャる綾女。
 まずはA賞。
「袋井様、これは?」
「これは私が伝説のホラーゲームとコラボした時のものです」
 続いてB賞。
 頭に女性物パンツをかぶった裸の男フィギュアである。
「この方はどなたでしょう?」
「変態仮面の正体は誰も知らないのです! でも、綾女さんの下着を貸して下されば、今すぐにでも現れますよー!」
 そしてS賞!
「まあ! こんなに大きな袋井様が! これで毎日一緒に過ごせますわ!:
「ハッハハハ! Hな事に使わないで下さいね!」
「そんな……無茶をおっしゃらないで」
 ポッと頬を赤らめる。
 変態に惚れるだけあって変態である。
「おめでとうございまーす、これでコンプですね」
 袋井フィギュアを全種類集めた綾女。
 だが、ガチャを廻す手を止めようとしない
「まだまだです、袋井様への愛は決してこんなものでは……、ガクッ、バタン」
 ガチャ機と体力が空っぽになるまで引き続けた綾女は小数点以下になった体力で、よろよろと自室に帰って行った。
「ふふっ、部屋中にあの方がいっぱい、ああっ、私の心が満たされます」
 こんなに愛していても袋井の恋人、恋音には勝てない。
 乳とは恐ろしいものである。


 ガチャ祭終了後の会場跡地。
 ここには、かつて客だった者たちの搾りカスが今も落ちている。
 その死に顔はどれも満足そう。
 搾取される者の喜びに満ちていた。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: いつか道標に・鐘田将太郎(ja0114)
 歴戦の戦姫・不破 雫(ja1894)
 撃退士・鳳 静矢(ja3856)
 Eternal Wing・ミハイル・エッカート(jb0544)
 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 愛の守り刀・織神 綾女(jc1222)
 食べ物は大切に!・天願寺 蒔絵(jc1646)
重体: Eternal Wing・ミハイル・エッカート(jb0544)
   <ピーマンには勝てなかったよ>という理由により『重体』となる
 食べ物は大切に!・天願寺 蒔絵(jc1646)
   <ガチャ廃化した>という理由により『重体』となる
面白かった!:10人

いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
崩れずの光翼・
向坂 玲治(ja6214)

卒業 男 ディバインナイト
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
深淵を開くもの・
アイリス・レイバルド(jb1510)

大学部4年147組 女 アストラルヴァンガード
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
天性の政治センス・
花祀 美詩(jb6160)

大学部3年3組 女 ルインズブレイド
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
大切な思い出を紡ぐ・
パウリーネ(jb8709)

卒業 女 ナイトウォーカー
乳の妖精・
露園 繭佳(jc0602)

中等部2年1組 女 ディバインナイト
茶華道のたしなみ・
琴ヶ瀬 調(jc0944)

高等部2年1組 女 インフィルトレイター
愛の守り刀・
織神 綾女(jc1222)

大学部4年215組 女 阿修羅
永遠の一瞬・
向坂 巴(jc1251)

卒業 女 アストラルヴァンガード
ハッカー候補生・
賦 艶華(jc1317)

高等部3年1組 女 鬼道忍軍
食べ物は大切に!・
天願寺 蒔絵(jc1646)

大学部2年142組 女 アーティスト
ホテル王女・
玉笹 優祢(jc1751)

中等部2年1組 女 バハムートテイマー