.


マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/06/04


みんなの思い出



オープニング

宝狩の告知ポスターが、島内に張り出された頃、島の外から一人のゲストが訪れた。
 幼いはぐれ天魔、ニョロ子。 
 彼女は、島に着くなり一件の居酒屋に入った。
『つぼ焼き亭・でんでん』 
 あどけなく可愛らしい彼女には似つかわしくない店である。 
 しかも、もう潰れていた。
「オーナー、今日は何の用にょろ?」
 オーナー室に入るとニョロ子は、帽子を脱いだ。
 彼女は、あどけなく可愛らしい美少女なのだが、髪の毛が無数の蛇で出来ていて、常にニョロニョロしているのである。
 そのため伝説上のメデューサと同じく石化能力があると誤解され、人に逃げられてしまうため、外出時は帽子着用なのだ。
 ただ、この居酒屋のオーナー・松井はニョロ子の両親の知り合いであり、幼い頃からよく知っているため、帽子を脱いで話せる貴重な人間だった。
「実はね、今度、この店舗を使って別の店を出そうと思うんだ」
 松井は、企画屋出身で、いろいろと趣向をこらした店を全国各地に出していた。
「また、変な店にょろか? この『つぼ焼き亭・でんでん』は、さすがのニョロ子もドン引きだったにょろ。 エスカルゴ料理専門店なのはいいとして、店の前のガラスケースに、無数のデンデンムシがびっしり貼りついて蠢いている姿はおぞましかったにょろ。 食欲失せたにょろ」
「ハッハハッ、好みのカタツムリをお客さんに選んでもらう趣向だったんだけど、撃退士さんたちのニーズに合わなかったみたいだね」
「撃退士関係ないにょろ」
 松井は、ライトブラウンの口髭を揺らしながら笑った。
 一店舗潰したのに、全く気にしていないらしい。
「で、今度はどんな店にょろか?」
「うん、久遠ヶ原の店だからね、久遠ヶ原ならではの趣向を取り入れたいと思う」
「ディアボロやサーバントを、料理する気にょろ?」
「おいおい、おじさんはそこまで悪趣味じゃないよ」
「トラウマがあるにょろ、信用出来ないにょろ、当分、グロはごめんにょろ」
「出す料理は普通だよ。 作り方で魅せるタイプにしようと思っている」
 世の中にはお客の前でオムレツを焼いて、ひっくり返す時はフライパンで天井高く打ちあげて見事にキャッチしてみせたり、ステーキを焼く時に、アルコールをかけ、美しい炎を噴き上げさせたりしてクッキングショーで客を楽しませるタイプの料理店がある。
 そういうのを松井はやりたいらしかった。
「撃退士はいろんなスキルを持っているだろ? 手から火を出したり、刃物を物凄く早く動かしたりも出来るんだよね?」
「まさか、それで肉を焼いたり、野菜を切らせたりするつもりにょろか?」
「YES! 撃退士たちによる、アクロバッティックかつ神秘的なクッキングショーだ! 面白そうだろ?」
「面白いだけにょろ、普通に作った方が、きっと美味しく出来るにょろ」
 ニョロ子は幼いがゆえに率直な感想を述べた。
 この松井という男、発想はあるし、それを実現する行動力もあるのだが、どうにも情熱が空回りがちなタイプなのだ。
「いやいや、味の良い店は世の中に星の数ほどあるよ! けど、料理の美味しさってのは味だけじゃない、楽しさも肝心なんだ。 ニョロ子ちゃんだって、一人でする食事より、家族や友達と賑やか食べる食事の方が美味しく感じるだろ?」
「うむ〜、そこは反論出来ないにょろ」
「派手で楽しいクッキングショーを見ながら、食事するんだ。 きっと美味しく感じる。 むろん、味そのものにだって力は入れるけどね」
「それで、ニョロ子に何をして欲しいにょろ?」
 わざわざここに呼んだ以上、何らかの用はあるはずである。
「うん、出店前にPR動画を作るんで、それにゲスト役として出演して欲しい。 むろん、ニョロ子ちゃんの特技についてはテロップで説明しておく」
 ニョロ子の特技というのは、料理を食べた時に独特のリアクションが出来る事だ。
『美味しい』と感じた分だけ、頭の蛇が、くせっ毛のように立つのである。
 普通に美味しければ一本、今までの最高は五本、それ以上もあるのかもしれないが、ニョロ子自身にコントロールできるわけではないので、わからない。
「わかったニョロ、ただニョロ子の特技だけじゃなく『ニョロ子の目を見ても石になりません』ってテロップに書いて欲しいにょろ、それならお引き受けにょろ」
 そのPR動画とやらを何人の人が見るかわからないが、出来るだけたくさんの人に怖がられなくなり、目を見てお話出来ればいいとニョロ子は思っているのだ。
「ありがとう、食べる側はこれで確保出来たとして問題は作る側なんだよね」
「うむ〜、そんな変な料理方法、誰も練習していると思えないにょろ。 作ってくれる人がいなきゃにょろ子も食べられないにょろ」
「うん、だから人材確保のためにこのキャンペーンと連動しようと思う」
 松井が差し出したのは、宝狩のパンフレットだった。
「これにょろか。 ここに来るまでにもこれを持った撃退士の人たちが、血眼になって駆け回っていたにょろ」
「ああ、こいつを報酬に添えれば、アウル料理を必死に練習してくれるんじゃないかと思うよ」
 松井がポケットから何かを取り出した。
 現在、久遠ヶ原で行われている宝狩、その地図の破片だった。
「それは?」
「知り合いの調理指導担当の先生に貰ったんだ、私の企画が成功すれば、卒業後の生徒に就職先が増えるだろうから、ぜひに活かしてくれとね」
 その先生とやらも空回りしがちな、松井の情熱に実を結ばせてやりたいのだろう。
 思いはニョロ子も一緒だった。
「これに見合う魅力的なパフォーマンスで、美味しい料理を作ってくれる撃退士が来てくれると嬉しいね!」


リプレイ本文

● 
 久遠ヶ原島内にある自然公園。
 緑の丘陵地帯で、撮影は行われようとしていた。
「最初に、皆さんにお断りしておく事があるにょろ」
 特設キッチン正面の審査員席に座るニョロ子が、神妙な顔で告げた。
「誰でも味には好みがあるにょろ。 しかも、今回みたいな変な審査だと蛇さんのご機嫌がどこへ向くか、ニョロ子にもわからないにょろ。 蛇さんが動かなくても気にしないで欲しいにょろ」
 年上の撃退士、いやアウル料理人たちに一生懸命気を遣う若干、六歳の蛇っ娘。
 千早服の巫女・草摩 京(jb9670)は頬を緩めた。
「ニョロ子ちゃん……可愛い」
 自分の顔を見てニコニコし続けている戦巫女・京に、さすがにニョロ子も違和感を感じている。
(前に籠絡したちびっ子天使も可愛かったですが、へびっ子悪魔も素敵ですね。 ならば、まず信頼を勝ち取りませんと、私はニョロ子ちゃんが喜びそうな品で行きましょう)
 笑顔の下は黒かった。

 店のオーナー・松井の目が熱意に潤んでいる。
「アウル料理自体、未確立分野だからね。 点数はさておき、いろいろ試してもらうだけでも、意義はあると思う。 天魔との戦いが終わった後、キミ達の行く先の一つになるかもしれない」
「はやぁ〜、これってアウルや魔具の平和利用の1つになるのでしょうか……?」
 小柄な黒髪の少女・相羽 菜莉(ja9474)がのんびりした声で驚いた
「ぬぬっ! これは、オリョーリ上手で売出し中のふゆみにはピッタンコな依頼なんだよっ!」
 金髪ツインテールの新崎 ふゆみ(ja8965)はキラキラしている。
「つまり、料理漫画みたいなアレだよね? いっちょやってみますか!」
 黒一点の九鬼 龍磨(jb8028)はそういう解釈のようだ。
「アウルでクッキングですか、任せて欲しいのです。料理自体は得意とは言っても家庭料理の域ですが…… アウル料理なら、私が(多分)第一人者です! 」
自信ありげな銀髪少女・Rehni Nam(ja5283)は、自信に満ちた足取りで、キッチンに向かった。


「私の作るメニューは青椒肉絲、中華風玉子スープ、ザーサイ添えの白飯です」
Rehniは包丁を煌めかせた」
「……包丁、一閃――ッ!! 」
 いきなりの見せ所!
 千切りにした豚肉が、そのまま中華鍋の中へ吸い込まれてゆく。
 すでに油を引いて熱したこの中華鍋の下辺の分子を加速させ、燃え盛る劫火を出現させる。
 中華は火力が命!
 生体レンジと呼ばれる開発途上技を先行公開である。
 
 ピーマン・筍、パプリカも追加投入
 彩りを添えた中華鍋を、手首ではなく、腕、体全体で振るい、そして炎を操る。
 観客よ、これが撃退料理人ですと言わんばかりに!
 それとは別に作って置いた卵スープにお玉を叩き付けると、その衝撃でスープが吹き飛び、並べてあった器に吸い込まれる
 塩抜きしておいたザーサイを、熱々の白飯に添えて完成。
 ニョロ子は、それらを一口ずつ箸でつまむと、幼げな顔をしたりという風に頷かせた。
「青椒肉絲は筍入りなのが嬉しいにょろね、入れない時もあるにょろが、歯ごたえのコリコリで飽きが来なくなるにょろ、卵スープはゴマ油の香りがいい感じにょろ、ほかほかご飯にザーサイは反則にょろね、手が停まらなくなるにょろ」
 批評するニョロ子、母が有名レストランガイドの記者なので鍛えあげられている。
 ニョロ子の頭で、蛇たちが蠢き始めている。
 紫色の和服の似合う少女・水無月沙羅(ja0670)がその事に気付いた
「ニョロ子様が、判定を出されますよ」
 ニョロ子の頭の蛇が、歌いながらぴょこん、ぴょこん、ぴょこんと首をもたげる。
「にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪」
「おお! 蛇さんが三匹も立ったの、久しぶりにょろー!」
 その事実に、ニョロ子が誰よりも目を見開いていた。


「ぬーん……やっぱ、アシュラらしく、パワーでみせちゃおっかなっ☆ミ」
 ふゆみはイタリアンで勝負することにしたらしい。
 メニューは、マルゲリータピザとカルボナーラ。
 生地をある程度作ったところで
「将来はだーりんのりっぱなオヨメサンになる予定のふゆみの…カレーな技を、とくとごらんあれっ☆ミ」
 全身から光纏の光が放たれる。
 闘気解放で、お客さんにアピールだ。
「それじゃーいくよー☆」
掌底でパスタ生地にアタック! 強烈な衝撃が、強いこしを出す!
そして、ピザ生地は……
「ふゆみ必殺☆ どどどーんっ!」
 と、空に投げたところを烈風突!
高く舞い上がった生地を回転させ、丸く広げる。
「廻っているにょろ! すごい廻っているにょろ!」
 ニョロ子、大喜びである。
 子供は、回るものが大好きなのだ。
 パスタ生地は裁断、ゆででソースと絡め、 ピザにはトマトソースを塗って具を散らし、 最後に、
「食べやすく切ったげるねっ、サービスだよっ☆」
キャピっという笑顔に似合わぬ鋭い剣技・十字切りでピザを食べやすくカットした。
「めしあがれ☆」
 パスタをフォークでくるくる巻いて口に運んだニョロ子の顔に衝撃が走る。
「このコシ! これが阿修羅のパワーにょろか!?」
「にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪」
 四匹!
「美味しさもあるけど、これはトークの勝利にょろ、ふゆみお姉さんと食事したらきっと楽しいと思うにょろ」


(私情、大切。 うふふふふ  黒いですが、愛情は本物ですよ?)
もはや、ニョロ子には理解不能な笑顔を、厨房に立つ京は浮かべている。

【メニュー】
・親子丼
・ミニ月見そば
・まぐろの黄身あえ
・味噌プリン(黒蜜がけ)

「全部、卵にょろ!」
 顔を輝かせるニョロ子。

 京は食材を並べ、神に奉納を始めた。
 神楽衣装で光纏し、奉納舞を行う
 ニョロ子は首を傾げている。
 大人であれば、漠然と意味はわかるのだが、六歳児にはちょっとハードルが高い。
 表情に変化があったのは、京が『悪王子・招来』なる名前からして恐ろしげな技を使った時だ。
「にょーーー!」
 にょろ子は食卓の下に隠れた。
 身長三メートルの武人が現れたのだ、子供は怯える。
「ど、どちら様にょろ?」
「あら、怖がらせちゃいましたね、この人は――お料理アシスタントさんです」
 わかりやすく説明するとなると、それしかなかった。
「ち、ちょっと大きすぎる気もするにょろ」
 恐る恐る食卓に戻るニョロ子。
 全長七十センチの太刀を包丁替わりに携える
 食材を宙に放り投げ、アウルの燃焼で加速させた抜刀術で、斬る。
 食材は一瞬で切断され、皿の上に落ちる
  仕上げや調理はダンスで舞うように軽やかに行い、最後は『お料理アシスタントさん』を背後に立たせ、神に捧げた料理としてドンッと机の上に置きカメラアピールする。
「親子丼は卵の半熟感が何とも言えないにょろ。 月見そばは最後に卵をちゅるんってするのが楽しいにょろね。 まぐろの黄味あえはもっちりさっぱりしたマグロに卵がコクをプラスして大人の味にょろ。 デザートの味噌プリンは、上の方がチーズのように濃厚なのに、下の方が上品でさっぱりしていて美味しいにょろ」
 判定は?
「にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪」
「三匹ですか、ありがとうございます」
「味的には、間違いなく三人の中で一番だったにょろ。 ただ、演出がニョロ子には少し難しかったにょろ――あとアシスタントさんが怖いにょろ」
「また食べたくなったら声をかけて下さいね。いくらでも作りますよ♪」
 演出で怖がらせてしまったようであるが、味で挽回した模様である。


「闘気解放にこんな使い方があったとは……負けてられませんよー!」
 菜莉がキッチンに入った。
 長身な京の後だと、心なしかキッチンが広く見える。

【メニュー】
 酢豚
 中華丼
 ワンタン麺

 菜莉は武器としても使用している中華包丁を手に取った。
「火力が大事、パフォーマンスも大事、派手にいきますよー!」
 材料を切る! 
 包丁に星の輝きを集め、肉を叩いてほぐす!
 ニョロ子の目は、それを受けてキラキラと輝いた。
 子供がキラキラしたものが好きなのは、天魔といえど変わりがないようである。
 中華鍋でご飯をひっくり返す時にも星の輝きで、さらなるキラキラ演出を忘れない。
 最初に、ワンタン麺が仕上がった。
「ふむ、香港風に仕上げられているにょろ、麺の質やゆで方、スープのダシに至るまで、可能な限り細部に拘っているにょろ」
 続いて、酢豚。
「炒めきったあとに、最後に生パイナップルを添えたのが好感触にょろ」
 最後に中華丼。
「酢豚にパインが苦手な人は、こうやって丼ものを別に用意すると良いにょろ。 おかずに甘い物が入っていても問題なくなるにょろ」
そう講評された、菜莉の料理の評点は――。
「にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪」
「三匹ですか、ありがとうございます」
 菜莉は、嬉しそうにお辞儀した。


「クッキーのすぺしゃるクッキング、はっじまるよー!」
 髪は結い上げ、大柄な体にコックコート着用した龍磨が開始宣言をした。
 タウントを使用し、注目オーラを放つ事も忘れない。
 公園にいた人々がそれに誘われ、徐々にロケ現場に集まってきた。
「味重視で作るよ! 最近高いけど豚肉も入れるよ!
 作り方を解説しつつ、餃子とチャーハンの材料、調理道具をすべて、キッチンに平行に並べた。
 忍法「高速機動」により、全ての調理を平行して行う。
 それが龍磨のアウルクッキングだった。
「あ、あまりの早さに分身して見えるだと!?」
 空気の読める観客が、謎のナレーションを担当してくれた。
 チャーハンの材料をひょいっと投げ上げて、すぱぱぱーとみじん切り!
 豪快なパフォーマンスと対照的に、餃子の皮は丁寧に包む。
「見ろ、あの正確無比な餃子の耳を! まるでロボットだ!」
 高速移動により、豪快な動作と正確な動作が同時に行われているように見えるのだから、観客たちは感心する
 大型コンロにトーチでど派手に着火をした!
 中華鍋から打ち上げられ、宙を舞うチャーハンと餃子、
「くらえ、ウルトラC級のアクロバットをー!」
 小さな天使の翼で空を舞う龍磨が、赤と雷の中華皿で華麗にキャッチ!
 パフォーマンスをほへーと、頬を紅潮させて観ているニョロ子。
「めしあがれー」
 その前に完成した料理を龍磨が置く。
 ニョロ子が、チャーハンを、続いて餃子を、口にした。
「卵チャーハンはトーチの火力のおかげで、ご家庭では実現困難な黄金パラパラチャーハンになっているにょろ。 餃子の方は種を作って包む手作り本格派で女性にも嬉しいニンニク抜き野菜たっぷり版にょろ」
 その間に龍磨がお楽しみデザートの牛乳寒天を作り始めた。
「彩りたのしく味はうららか、みかんに桃にパイナップル〜♪」
 涼やかな切り子ガラスの器に盛りつける。
「果物は、これからの季節に合わせたにょろね、口がさっぱりするにょろ」
 立った蛇は……
「にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪ にょろー♪」
 四匹!
「パフォーマンスが完璧だったし、歌が楽しかったにょろ、キャラが濃い以外、言う事ないにょろ」
「え〜と、キャラが薄かったら五匹だったって事かな?」
「それはニョロ子にもわからないにょろ」


「あえて、ニョロ子さまのお腹がいっぱいになるかもしれない最後に召し上がってもらおうと思っていたんです」。
「最後でもルール上、二口までしか食べられないのにょろ、そうじゃないとコーヘーセーが保てないのにょろ」
 申し訳なさげな顔をするニョロ子
 沙羅にめげた様子はなかった
「大丈夫です、それならそれでニョロ子様に全部食べていただく方法はありますから」
「全部、食べていいのは助かるにょろ、さっきから名残惜しい料理ばかりで、ストレスになりかけていたにょろ。 ところで――」
 ニョロ子は、沙羅の隣に立つ女性に尋ねた。
「お姉さん、誰にょろ?」
 沙羅と同じく着物姿で、顔立にも面影がある女性、水無月 葵(ja0968)はたおやかに挨拶をした。
「姉の葵です、本日は妹のアシスタントをさせていただきます」
「アシスタントさんにょろか――料理が始まったら、巨大化したりしないにょろよね?」
 京の武人が、ちょっとトラウマになっている。
「ニョロ子様のために、お子様ランチを作ります」
「はやぁ〜、その手があったんですねぇ」
 菜莉が感心するのも無理はない。
 各品一口か二口までしか食べてはいけないルールであるが、お子様ランチならば、料理の品数を多くし、その分、各品を減らす事が出来る。
子供にお腹いっぱい食べて大きく成長して欲しいという優しい親心、愛情が籠っていた。
 

【お子様ランチのメニュー】
 カレーピラフの俵握り
チーズインハンバーグ 小鳥の人参グラッセ、リスのポテトフライ添え
ホウレン草と空豆のペペロンチーノ
たっぷり野菜のお花畑サラダ
エビフライとカニクリームコロッケ
デザート ??

 姉の葵がパフォーマンスを始めた。 
「野菜で花びらを作ってお花を作ります」
 生け花のように盛り付けて『お花畑サラダ』の完成である。
「野菜を飾り切り、彫り物をします。人参で小鳥、ジャガイモでリスを作ります」
 ハンバーグの楽しい添え物が出来上がった。
 さらに葵は剣を採り、氷の龍の彫刻を掘り始めた。
 これが何になるのかはわからないが、ニョロ子はわくわくしながら眺めている。
 その間に、妹の沙羅はこっそりと地味に料理を作っていた。
 姉との連携で、迅速にお子様ランチが完成した。

「美味しいにょろ、どれも大人が食べても納得のいくと思う本格な料理になっているにょろ――ただ、これが気になってしょうがないにょろ」
 デザートが、伏せてあるガラスのコップにドライアイスの白い煙を入れて、中が見えないのである。
「ヒミツのデザートは全部食べ終るまでのお楽しみです」
ニョロ子が食べ終えると、沙羅が伏せてあるコップを取った。
その下からアイスクリームとフルーツのプリンアラモードが現れる。
「お子様ランチには、美味しい物をいっぱい食べたい☆と子供心のドキドキ、ワクワクの夢を盛り込みました」
 姉妹は、母性溢れる笑顔で微笑んだ。


「水無月姉妹も、蛇三匹だね」
「合計二十匹! おめでとう、約束通り地図の破片はあげるよ」
 松井が、宝狩地図破片を差し出した。
「ただ、誰も五点を出せなかったのが残念だな」
 龍磨が少し悔しそうに言う。
「五匹立った事が過去にあるのですよね? どんなお料理だったのですか?」
 京の問いかけに、ニョロ子は少し寂しそうな顔をした。
「実は、何の料理だったのか覚えていないにょろ」
「あら?」
「ただ、その時はたった一度だけニョロ子の家族が揃って食事をした時だったにょろ――いつも外国で仕事をしている父様と母様が、ニョロ子の事をニコニコしながら見ていてくれたにょろ、その笑顔しか覚えていないにょろ」
 料理の美味しさが、本当に味だけではないことを実感するアウル料理人たちだった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ひょっとこ仮面参上☆ミ・新崎 ふゆみ(ja8965)
 圧し折れぬ者・九鬼 龍磨(jb8028)
重体: −
面白かった!:3人

料理は心〜学園最強料理人・
水無月沙羅(ja0670)

卒業 女 阿修羅
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
ひょっとこ仮面参上☆ミ・
新崎 ふゆみ(ja8965)

大学部2年141組 女 阿修羅
アウル料理人・
相羽 菜莉(ja9474)

大学部4年212組 女 アストラルヴァンガード
圧し折れぬ者・
九鬼 龍磨(jb8028)

卒業 男 ディバインナイト
『楽園』華茶会・
草摩 京(jb9670)

大学部5年144組 女 阿修羅