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「チルルの強硬突撃晩ごはんなのよ!」
どっかで聞いた事のある番組名をチルルアレンジした雪室 チルル(
ja0220)。
「目指すは視聴率1000%なのよ!」
とあるアパートのドアをぶっ壊して、文字通り強行突撃する。
たぶん、視聴率の意味がわかっていない、
「なになに? どうしたのだわ?」
一人寂しく夕食を食べていたところに攻めてこられ、面喰う椿。
アポなしロケである。
「あんた、なに食べているの――って!?」
チルル愕然。
食卓の上には“味海苔 梅味”と“味海苔 ごはん味”“味海苔 さんま味”の大袋しか乗っていない。
「さんま味の味海苔をおかずにごはん味の味海苔を食べて、うめ味海苔で箸休めをするのだわ」
恐るべき椿の食生活に、今度はチルルが面喰う。
「あんた、そんなんじゃダメよ! あたいに任せて!」
エプロンをつけ、台所に立つチルル。
あまりのダメさ加減を見て、チルルの母性本能が覚醒したのだ!
「ふふん、あたいがまともなものを食べさせてあげるのよ!」
ドヤ顔で取り出したのは電話。
「もしもし、ミックスピザのLサイズ二つ、早く届けてね! あたい腹ペコなんだから!」
「作ってくれるんじゃないのだわ!?」
「あー食べた食べた! ドアはあんたたちが直しておいてよねー!」
自分でぶっ壊したドアからぴゅーと出ていくチルル。
「嵐のような子だったのだわ」
しかし、チルルのエネルギーが、一件荒らしたくらいで治まるわけがない。
次の家に無断で飛び込んでいく。
「チルルの強硬突撃晩ごはんなのよ! あんたたち、何食べてるの!?」
「なんですか、あなたは!?」
「勝手に冷蔵庫を開けないで下さい!」
放送終了後も、やりたい放題のチルルちゃんでした
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「砕いて見せよう、その悩み! 闇晴れた空に太陽の如く輝く笑顔を手に入れろ! イリスちゃんの オールディスマイル!!」
トークバラエティ風のセットの中、イリス・レイバルド(
jb0442)が大きくシャウト。
「この番組は明日の笑顔を曇らせる悩み事を!ゲスト様と二人三脚体当たりで解決していこうというバラエティ番組でっす!」
「要するに私の悩みを解決しようって事なのだわね」
本日のゲストも椿、意外に人気者。
「椿ちゃんの悩みはもちろん、婚活だよね? というわけで海苔を流行らせようっ!!」
「どんな発想の飛躍なのだわ!?」
要するに美味しい食べ方を紹介して、海苔を流行らせる事により椿の理解者を増やす。
海苔を単品でドカ食いしている椿には、もう少しましな海苔の食べ方を覚えさせる、という番組らしい。
「一口おにぎりに海苔を巻く! これを流行らせる!」
「それ、流行るの?」
おにぎりに海苔を巻くのはすでに定着しており、それをさらに流行らせるというのは無理ではないかと椿は思った。
「まずはこれ食べて!」
イリスが用意したおにぎりを、食べる椿。
とたん、むせる。
「甘っ! なにこれ!?」
「んゆ? “薄くといたジャムを塗った後、あぶった海苔“を巻いたおにぎりですよー?」
「多分、その工程は省いた方が、美味しいのだわ」
「粉末甘納豆海苔おにぎりもあるよ?」
他にも辛子味噌タレ海苔やら、ココアパウダーおにぎりやら、ほいほい出してくるイリス。
味海苔好きな椿でも、これはないと言いたい味が多い。
「……イリスちゃんも食べてみるといいのだわ」
「ボク少食だから作る人! 椿ちゃんは食べる人ね! リアクション期待してまっす♪」
「私で遊んでいるだけなのだわ!」
シニカルな溜息をつくイリス。
「やっぱだめかー、九割がた失敗すると思ってたんだよねー」
「元から悩みを解決しようって態度じゃないのだわ!」
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本日のパーソナリティは川澄文歌(
jb7507)。
「文歌の気・ま・ま・に☆ハートフル」
「ここまでのが酷かったから、軌道修正しないと強制打ち切りになってしまうのだわ」
そんな背水の陣で行われる、トーク&情報番組である。
「この番組には皆さんも、ネットを介してリアルタイムで参加してもらえるよ♪ コメント付き生放送ってタイプだね。 さっそくコメントが飛び交ってますよ〜♪」
文歌の頭上に“文歌ちゃんマジ女神!”というコメントが飛んでいる。
「やだ、ありがとうございます♪」
頬を赤らめる文歌。
「今、私の頭上に“BBA! はよ結婚しろ!”って文字が飛んで行ったのだわ……」
毎日、番組に呼ばれるのはいいものの、椿はロクな扱いを受けていない。
「まずは“お手紙のコーナー”から♪」
アシスタントの椿が、届いたメールを読み上げる。
「部員ネーム・みゃあさんからの投稿なのだわ『ふみのんがアイドルに必要と考えているものは?』という質問なのだわ」
文歌、しばし物思いにふけってから答える。
「大切なのは“矜持”必要なのは“輝き”……でしょうか。単に皆に媚びるんではなく、本当に人を楽しませようとする“矜持”と、人を惹きつける“輝き”この二つを兼ね備えた人がアイドルにふさわしいと思いますよ」
二人の頭上を“輝き……魅力ビームか”“鉄壁矜持ふみんがーZ”そして“BBAもはよ輝け”というコメントが流れていく。
「文歌ちゃん、コメント遮断していい?」
「次のコーナーは“ふみのんの恐ろしい子ッ!”です♪」
「視聴者さんから寄せられた希望のシチュを、文歌ちゃんが演じるという内容なのだわ、本日のお題は“気になる彼に告白“なのだわ!」
「ちょっと恥ずかしいですね^^;」
アイドルには演技力も必要。 銀幕目指して文歌が演じる!
カメラを潤んだ瞳で見つめる文歌。
愛しさと切実さの籠った声を奏でる。
「いつも見守ってくれて、ありがとう……これからも、私のこと、見守っていてね。 約束……だよ?」
一瞬後、“もちろんさ!”というコメが激流となって流れた。
「えへへ、コメントありがとうございます」
照れ笑いしている文歌。
椿の頭の上には“BBAもやって”というコメントが流れていた。
「絶対やらないのだわ、見えている地雷に引っかかるほど若くないのだわ」
「最後に“歌のコーナー” 先日卑弥呼として歌った新曲“卑弥呼noお願いミ☆”をお聞き下さい♪」
曲の流れる中、文歌が手を振って終了。
「よかった、今日は酷くなかったのだわ……」
文歌のお蔭で後半戦も番組継続が決まった。
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風香院 涙羽(
jb9001)の番組は外ロケで行う。
「涙羽の学園内外案内ですぅ。 “久遠ヶ原の常識、世間の非常識”をキャッチフレーズに、学園と世間とのギャップを検証実験していきたいと思いますぅ」
「実験1はナンパ実験です。 ホストの方数名に学園生をナンパしてもらいますぅ」
学園生数名を、内密に街に放った上でベテランホスト、佐竹にナンパをさせてみた。
「上手くいったよぉ、湊ちゃん、すっごい可愛いだろ?」
佐竹に連れて来られたのは、藍那湊(
jc0170)。
女顔ゆえ、頻繁に性別を間違われる少年である。
状況に気付き、目をしばたかせている。
「え? これってホストクラブに勤めろって話じゃないの」
男らしくなりたい藍那。 ホストクラブという単語に釣られてしまった。
「ハハハッ、湊ちゃん面白い事言うねえ。 今日はウチで遊んでいってよ」
「女の子じゃないから!」
アホ毛ウィップをしならせ、佐竹をふっとばす藍那。
その前で、涙羽が解説をする。
「このように学園生には性別迷子な人間が多いのですぅ。 発育や、ルックスに秀でた学園生が多い事と共に、アウルとの関連性の研究が待たれるのですぅ」
「実験2は年齢当てですぅ。 写真をホストの皆さんに見せて年齢を当ててもらいますぅ。 学園には年齢迷子な方も多いのですぅ」
「ホストは洞察のプロだからね。 年齢を見抜けないようでは、お客さんの心を捕えられないのさ」
自信満々な佐竹。
とりあえず咲魔 聡一(
jb9491)の写真を見せる。
「大人びて見えるけど若いね、十六くらいだね」
確信顔で答えた佐竹の前に、ご本人登場。
「ふっ、プロの洞察力とやらも大した事がないな。 正解は二百三十二歳だ」
咲魔が冷笑すると、佐竹は苦笑いながら咲魔の肩をポンポン叩いた。
「ああ、ごめん。 十三か四歳くらいだよね? 誰しもそういう事言いたくなる年頃があるんだ、わかるわかる」
「中二病じゃない!」
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「龍磨の出動! おうちごはん」
九鬼 龍磨(
jb8028)が、ドアップでスマイル。
誰かの家の冷蔵庫に入っている材料のみで、料理をするというコンセプトの料理番組である。
「で、また私の家なのだわ?」
共演者は、ニョロ子、咲魔、そして家主である椿。
「冷蔵庫の中身へ、いざ出動!」
椿宅の冷蔵庫を開ける九鬼。
「んー、退勤」
冷蔵庫には味海苔とチョコしか入っていなかった。
流石に無理なので、共演者三人にお金を渡し、適当に食材を買って来て貰う。
「あー、こう来たかー! “全員が安いからって買ってきてた”感じの時の冷蔵庫!」
買い出し後、改めて開けた冷蔵庫には以下のようなものが入っていた。
豚肉小間切れ四パック
もやし二袋
にんじん一本
たまねぎ一個
キャベツ半玉
キュウリ二本
塩昆布
「安いからというか、他に選択肢がなかったんだ」
「貰ったお金も時間も少なすぎにょろ」
「まあ、何とかしよう、皆はそこに座っていて」
エプロンをつけ、キッチンに立つ九鬼。
「クッキーのすぺしゃるクッキング、はっじまるよー!」
高らかに唄いながら料理を始める。
「懐かしいにょろ、クッキーとニョロ子が初めて会った時のノリにょろ」
「ハッハハッ、そうだねー」
軽快に唄いながらクッキングする九鬼。
この二人、出会いも料理依頼である。
その頃からクッキーは歌うコックさん!
「肉は直前でもいいから下味をつけると、段違いにおいしいのだ。試してみてねー」
料理工程はほとんど編集ではしょる。
レシピは番組サイト参照の事。
皿に盛って、全員で“いただきます“する。
「この豚肉炒めソースの甘辛さが絶妙なのだわ」
「ただの肉巻き野菜かと思ったら、冷しゃぶ仕立てとは――猛暑の季節に爽やかだな」
「キャベツとキュウリの即席漬け! こういうのが一品あると嬉しいにょろ!」
「おー、聡一くんいい食べっぷり!」
わいわいご飯を食べる四人。
料理番組は楽しそうに食べるのが一番だ。
「ところで明日は咲魔くんの冠番組だね、撮影は快調?」
九鬼が尋ねると、咲魔の箸を動かす手が止まった。
「撮影は終わったんですが」
言いよどむ咲魔。
その理由は、明日の放送でわかる。
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『咲魔 聡一監督作品 撃退探偵アカシックレコーダー』
一組の男女が街角で、ある男を尾行していた。
「アカレコさん、あの男ですか?」
「折角上手いこと事故に見せかけたのに、俺という名探偵に見つかっちゃって犯人超哀れ。同情するぜ」
私立探偵のアカレコこと明石礼孝(咲魔聡一)と、その助手の日陰陽子(川澄文歌)である。
咲魔の冠番組は、探偵ドラマだった。
「この先は蜃気楼スキルで尾行する、陽子ちゃんはここで張っていてくれ」
明石が尾行しているのは、食品会社の経営者の小暮。
浮気がばれ、多額の慰謝料を伴う離婚を持ち出してきた妻を、荷物積み下ろし中の事故に見せかけて殺したのである。
以前、小暮の浮気調査をしていた明石は、トラックの荷台に仕掛けがあると睨んでいた。
それそろ、トラックを処分にかかるだろうと睨み、尾行しているのだ。
小暮は自宅から工場に着き、件のトラックに乗り込もうと運転席ドアを開けた。
その背中に明石が話しかける。
「社長さん、そのトラック売ってもらえねえか? 言い値で買うぜ」
フェイクの札束を見せつける咲魔。
小暮が何か言おうとした時、先読みスキルで先に発言する。
「次にお前は“だめなんだな、このトラックは妻の形見なんだな”と、言う」
「だめなんだな、この……!?」
言いかけた口を押える小暮。
「いけねえなあ、“カタミ”と“カタキ”を言い間違えちゃあ」
尻尾を掴まれている事に気付いたのか、小暮はアクセルを踏み急速発進する。
それを逃がさじと明石、
「自己強化かーらーのー、ロードローラーでドーン!」
スキルで巨大重機を出現させる! トラックに正面衝突させ逃亡を止める明石。
やり方が強引とはいえ無事解決……のはずだが、
「何やってんですか! トラックをバラバラにしちゃったら、証拠も何もないじゃないですか」
正座させられ陽子に説教されていた。
「ごめんよ、陽子ちゃん、脚、綺麗だね〜」
「どこ見ているんですか!」
謝罪はドラマ内だけでは終わらない。 TV局がレンタルしたトラックをガチスキルで壊してしまったため、咲魔は各方面に謝罪周りにいかねばならないのだ。
次回、『俺、恐縮しすぎて、体が縮んだ』をお楽しみに!
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先日、ホストにナンパされた藍那。
コンプレックス解消のため、本格的に男らしくなる番組を制作する。
その名も『藍那 湊の 試みの水平線』
“その1 困っている人の手助けをする”
電車の中、お年寄りの荷物を持ち、席をゆずってあげる。
「男らしいというか当たり前のような気が?」
首を傾げる藍那。
“当たり前だと思っているところが男らしい”とネットからのコメントが流れ大満足。
続いて痴漢を目撃し、それを取り押さえる――絵面を撮りたいのだが、そうそう都合よく痴漢がいるわけがない。
仕込みの役者さんを使う。
(そろそろ来るはずだけど)
藍那が、きょろきょろしていると、
「へへへ、お嬢ちゃん、ちっぱい可愛いねー」
藍那が触られた。
痴漢される娘も仕込みだったのだが、藍那の方が可愛かったらしい。
「……お、男の風上にも置けない」
取り押さえた時のため、予め用意しておいた台詞を決める。
だが、どうにも自分自身に言っているような気がしてならなかった。
電車を降りた藍那。
ニョロ子も修行した相撲部屋に入門する。
「うむ、ここは男が男を磨く伝統の場だ」
いかつい兄弟子が、褌一丁に仁王立ちで出迎えてくれる。
(褌……やっぱり男らしい)
以前から、褌仁王立ちに興味はあった藍那。
自分も同じ格好をしようとしたが、どうにもお尻を出すのが恥ずかしい。
体操服の上から、褌姿で妥協してしまう。
“この時点でダメ””男らしくない“”尻見せろよ ┌(┌ ^o^)┐尻“とコメントでボコられる。
「よしゃこい、ぶつかり稽古じゃ」
兄弟子が土俵上で胸を貸してくれる。
頭からぶつかり、兄弟子を土俵から押し出すという稽古である。
「よし、押せ! 押せ!」
小さな体で懸命に押す藍那。
巨大な肉塊を押す苦しさに、思わず顔があがる。
「うう、ふう」
その表情に、思わず理性を失う兄弟子。
「可愛いんじゃー!」
抱きしめられ、藍那押し倒される。
「アーーッ!」
この後の事は、誰も知らない。
“冠番組を持とう!”第一シーズンいかがだっただろうか?
たった十分間でもスター気分になりたいキミ! 個性を活かす企画をどんどん持ち込んで欲しい!