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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/08


みんなの思い出



オープニング


「撃退士PV?」
 久遠ヶ原島にある某斡旋所の待合室で、独身アラサー女子所員・四ノ宮 椿はいつも通りに依頼相談を受けていた。
 今日の依頼主は、この斡旋所と密接な関係にある久遠ヶ原島ケーブルTVの若手社員・久田 久志である。
 若いのに髪が薄く、淡々と話す老成した男だ。
 今度、新事業を始めたいらしくで、それに関する相談である。
「そうです、世はネット時代。 CM一本流すのに多額の宣伝費のかかったTV独走時代とは異なり、誰でも動画サイトなどにCMを流せる時代になりつつあると思います」
「確かにモノさえ作ってしまえば、誰かに見てはもらえそうなのだわね」
「そこで撃退士個人のPV――広義の意味では個人を売り込むCMを、格安で作る事業というのを現在検討しているのです」
 PVは本来的には楽曲を中心としたプロモーションビデオなのだが、今回は宣伝に使用する動画という意味で使用するようである。
「“自分にはこういう特徴がある!”“こういう依頼なら私にお任せ!”的なものをアピールする動画です」
 現在、依頼は教室に貼り出し、撃退士全員に内容を見られる状態にしてから受けたい者に立候補してもらっている形だが、その実、個人指名で来る依頼も裏にはある。
 その場合、報酬に色が付いている場合が多い。
「撃退士の適性にあった依頼、高いモチベーションを保てる依頼をこなすことは、依頼主にも撃退士にもメリットがあります。 何より将来はフリーランスになる学生もいます、撃退士個人のPVを作る事は効果的だと思うのです。 どうです、将来性を感じる事業ではありませんか?」
 すまし顔で、頭をキランと輝かせる久田。
 出来る男だが、若ハゲ過ぎてそっちに全てを持って行かれるキャラだ。
「なるほど、一理あるのだわ」
「まだ会議を通ったわけではありませんが“上”を説得するのに、何人分かサンプルを作ってみたいというのが本日のお願いです」
 身を乗り出す椿。
「PVのサンプル!? 私のじゃダメなのだわ!?」
「婚活PVの制作事業は、現在、検討しておりません」
 目論みを見抜かれ、ぐぬぬとなる椿。
「ならいいのだわ、私がプロデュースして我が斡旋所期待の新人撃退士・ニョロ子ちゃんのPVを作るのだわ」
「ウチの局に時々出てくれる蛇っ娘さんですか、それは楽しみです。
 というわけで完成した、はぐれ天魔の子・ニョロ子のPVがこちら。


 大学生らしきフツメン青年が、街角で新しく出来たイタリアンレストランを見つける。
「お、新しい店だ」
 入口の前で、意中の女の子の妄想を始める青年。
 顔がにやける。
(恵美ちゃん、パスタ大好きなんだよな。 美味しいんだったら誘ってみようかな)
 
 レストランから、青年の知り合いカップルが出てくる。
「お、久しぶり」
 渡りに船と尋ねる青年。
「二人ともここで食べたの? 味、どうだった?」
 顔を見合わせる彼氏と彼女。
 彼氏が、うすら笑顔で言う。
「ん〜? これが美味しいって人は美味いっていう味かな」
 困惑する青年
(なんだよ、意味のないその表現)
 一方、彼女の方は、無表情。
「普通に美味しかったよ」
 ますます困惑する青年。
(普通なのかよ!? 美味しいのかよ!? すっげー上手くないと恵美ちゃんを誘った時、恥かいちゃうよ!)

 その時、CG処理で突然現れるニョロ子。
 蛇で出来た髪の毛がニョロニョロ蠢いている、六歳の美幼女である。
「そんな時は、ニョロ子にお任せにょろ!」

 レストランで食事し始めるニョロ子。
 フォークで巻いたパスタを一口食べると、
 頭の蛇が二匹ピンと立った。
『にょろ〜♪』『にょろ〜♪』
 唄いながら踊る蛇たち。
『その店の美味しさを、頭の蛇が素直に評価! 美味しい程ヘビさんがたくさん立つにょろ! ニョロ子のヘビさんは嘘をつかないにょろ!』
 

 挨拶に出てきたコックにアドバイスしているニョロ子。
「バジルをあと二グラム減らすと、食べやすくなると思うニョロ、ヘビさん評価が“4ニョロ”まで伸びるにょろ!」
『適切なアドバイスで、飲食店の実力UP!』

「体は子供、舌はレディのニョロ子をどうぞよろしくご指名下さいにょろ!」
『蛇っ娘撃退士・ニョロ子ちゃんへのご依頼は、×××@kuon.jpまで!  なお戦闘依頼は受付しておりません』


 椿プロデュースのPVを身終えた久田、微妙そうな顔。
「なんで幼女にメシおごるんですか? この青年が自分で食べて確認した方が……」
 一本のPVは三分程度。 ドラマ仕立て、コメディ仕立て、ドキュメント風、音楽PV風、いかようにも作れるのでキミ達の個性を活かせるように作って欲しい。


リプレイ本文

●月乃宮 恋音(jb1221)編
「プロレス始めました!」
 レスリングコスで、魔物役のジェラルドにパイルドライバーを仕掛けるアイドル☆撃退士、文歌。
「おのれ、撃退士めー!」
 爆散するジェラルド。
 数時間かけて丁寧にメイクしたのに0.1秒で画面から消える。 これがPVの理不尽さ。

 斡旋所で、依頼結果報告をする文歌。
 報告を終え立ち去る時、ふと思う。
(今は、学園が事務処理の大半をしてくれるからいいけど、卒業したらどうするんだろう? アイドル活動との兼業、出来るのかな?)
 その時、斡旋所の扉を、椿が唐突に扉を開けた。
「大丈夫、ちょうどいい娘がいるのだわ!」
 
 扉の向こうには、事務的に整理された小奇麗な部屋があった。
 その部屋で揺れるのは、巨大なおっぱい。
「……いらっしゃいませぇ……」
 胸が、セールスコピーを唱え始める。
「……あのですねぇ、事務処理には自信があるのですよぉ……特にフリーの撃退士の方には、現場を知るもの同士安心していただけると思うのですぅ……」
 最後に椿のナレが〆てPV完成!
『母性と安心の象徴! おっぱい印の月乃宮 恋音に是非、お任せ下さいなのだわ!』

 完成したPVを見終えた恋音は、爆乳を震わせた。
「……あのぉ……袋井先輩、これは一体……(ふるふる)……」
「ハッハハ、恋音の魅力の全てを皆さんにお届けしようと思って気合を入れて編集しましたよ!」
 このPVの監督は恋人の袋井 雅人(jb1469)である。
 ほぼおっぱいしか映っていないPVになるのは、必然だった。

「裏バージョンもばっちりですよ!」
 袋井はもう一つ、別編集のPVを作っていた。
 内容はおっぱいが巨大化しすぎて人を押しつぶしたシーンや、おっぱいが爆発して辺りを焼野原にしたなどの恋音ちゃん珍プレー集。
 最後に、恋音のおっぱいを取り込んだ賞金首風ポスターが映り、
『巨乳罪前科百犯! 月乃宮 恋音を見かけたらすぐに斡旋所まで通報を!』
 と、椿のナレで〆る。
「……これはぁ……輪をかけて酷いですぅ……(ふるふる)……」

●イリス・レイバルド(jb0442)編
 画面下隅からにゅっと金髪ツインテが生えてくる。
「うぃ! 今がお買い得な愛と絆のイリスちゃんですよー」
 物凄いドアップ、それにカメラが耐えるだけの美幼女だから問題ない!

 翼を広げパタパタと青空に飛び立つイリス。
「身近なお手伝いから怖〜い天魔事件の用心棒! シリアスからコメディまでドドンとよってらっしゃい見てらっしゃい!」
 イリスが辿り着いたのは孤児院。
 降り立ったイリスは鬼娘のコスプレをしている。
「西に孤児院あらば、演劇だろうがダンスだろうが節分の鬼役だろうが!」
 子供たちに豆をぶつけられ、逃げていく鬼イリス。

「東に珍事件あらばババッと参上! ズバッと解決!」
 ある公園のベンチにいい男が腰かけている。
 それを誘惑しようとしている金髪ツインテ幼女“偽イリス”
 本物のイリスは公園に降り立つと偽イリスの肩を、背後からポンと叩いた。
 公園に血吹雪と悲鳴が満ちる。
(※映像はイメージであり、実在の事件を元に再現はしていません)

 ベルリンを思わせる巨壁をハンマーをガンガン砕いていくイリス
「真正面に困難という壁があるなら、砕いて突き進むッ!!」
 ようやく壁を砕き終え、肩で息をするイリスちゃん。
 撮影中だという事をハッと思い出し、取り繕うようにアイドルスマイル。
「揺り篭から墓石まで! 幅広活動まったなしなイリスちゃんでっす! どぞよっろしくー!」

 斡旋所の椿に、自分のPVを見せながらイリスははしゃぎ続けている。
「いぁいぁ、これはボクの顔を売り出すチャンス到来! 人気絶頂売り上げ好調でボクグッズを枕元に入れるとボクドリームでボクまみれ! 宇宙を旅する戦士団とかに追いつく勢いで夢が広がるエクスプレス! 世界は救われたのである!」
「そ、そうなの、世界が救われてよかったのだわ」
 ひたすらにうるさく、ひたすらに可愛いイリス。
 ハイテンション幼女に、アラサーがついていくのは大変なのだった。

●川澄文歌(jb7507)編
 華やかな衣装を着て、ステージを舞うアイドル文歌。
 BGMに持ち歌である“みんなに届け♪HappySong☆”が流れている。
『困ったときはアイドル☆撃退士・川澄文歌におまかせ♪ 依頼でお困りの皆さん。そんな時はアイドル☆撃退士・川澄文歌に依頼してみましょう! 戦闘からイベントまでどんな依頼も華麗にこなします♪』
 ナレーションも自分でこなす。
 これがアイドルの心意気!

『アイドルが戦闘なんて大丈夫なの?と思ったそこの貴方! 川澄文歌は全てのジョブに完全対応!』
 荒野に屍姫のメイクをした桜花が出現。
「……必ず殺す」
 立ち向かう文歌。
 踊るようにアクションを起こす毎に、文歌の衣装が次々に変わり自在なジョブチェンジを表現する。
『依頼に応じ、最適のジョブで対応します。 状況に合せ適切なバステを付与する変幻自在な戦術!』

『見た目が頼りないかも……という方も心配無用』
 巨大な翼を広げる青い鳳凰、嘶く六本脚の馬、牙を剥く龍の子供がカットインで入る。
『青い鳳凰ピィちゃんを始め、スレイプニルちゃんやストレイシオンちゃん等、強力な召喚獣を率いて威圧感もバッチリです』
(※普段はとてもおとなしい子達です)

 一転して、華やかなステージで歌う文歌。
 数か月前のスクール対抗アイドルコンテストのEXステージで、桜花とデュエットしたワンシーンが挿入される。
『勿論アイドルとしての実力も十分! 歌にダンスに、貴方の主催するイベントを盛り上げます! 司会もOK!』
“その他、あらゆる依頼に対応しますお気軽にご相談ください”とのテロップで画面が暗転
 これで終わりと思いきや!
「プロレスはじめました!」
 ジェラルドにパイルドライバーを決める、ど迫力シーン!
 恋音編からの再利用。 経費節減、これ大事。

●只野黒子(ja0049)編
 大岩の置かれた不思議な部屋。
「私、只野黒子が重要視するのは“情報処理”と“準備”です」
 前髪で目を隠した金髪の少女・黒子がそこに立ち、カメラに向かって語り始める
 「情報、というのは謂わば道具。 ある意味、武具や武技と同じです」
 却燐のスキルを使う黒子。
 真紅の燐光に包み込まれても、岩は揺るぐことはない。
 「浅く広く、もいいですが行動の趣旨にそって優先すべき物事に絞り込むのも一つの手。  
 ただ殴るだけでなく急所や隙を突く、というのと一緒ですね」
 今度は槍を手にし、岩に激打を見舞う。
 穿たれた穴から砕け散る大岩。
「では、戦闘においてその急所や隙は何が当て嵌まるか? 起こそうとする行動に必要及び有益なもの、同時に起こそうとする行動を阻害する事象の早期発見でしょうか」
 双眼鏡を取り出し、覗きこむ。
 レンズの向こうに見えるのは街角で、いつも通り爆乳をふるふるさせている恋音。
「重要人物の動静、弱点」
 その恋音を、電柱の影から狙っている男がいる。
 ストーカー役の袋井である。
「奇襲、伏撃の兆候……こんなところです」

「続いて準備」
 スナイパーライフルを組み立てる黒子。
「段取り八分、とは言いますが、実際は地味ですし、重要性は理解され難いのは致し方無いかと」
 地図を取り出し、標的までの距離を測り始める。
「ですが、それは軽んじられる物でもなく。 謂わば、縁の下の力持ち」
 計算に従って距離角度を決め、スパイパーライフルを撃つ。
 一撃で命中、袋井の眼鏡が木端微塵になった。
「ま、これのポイントも情報処理と同様、行動に必要十分条件を整え、阻害要因を排する事にあります。 まあ、なんだか授業のようになってしまいましたが、これらに関するノウハウを私は有しています。 何か、ご依頼があればどうぞ」
 テロップで連絡先が表示されてPV終了。

 それを斡旋所で、黒子は椿と見終えた。
「渋いのだわ、私のようなヤングガールには早すぎるPVなのだわ」
「四ノ宮様、失礼ながら年齢に関する情報も調査済です」

●ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)編
 ダーツバーBlackHat。
 客役の黒子がグラスを片手に、英字新聞を広げている。
「ふむ、あれほどの天魔が倒されたんですか、強い人がいるものですね」
 黒子が読んでいる記事を飾る天魔の写真、その胸部にダーツが突き刺さる。
 驚いて振り返る黒子。
 飛んできた方向には店のオーナーであるジェラルドしかいない。
 だが、彼は何食わぬ顔でシェイカーを振っている。
 やがてカクテルをグラスに注ぎながら、ジェラルドは色気と憂いのある横顔で囁く。
「それほど強いつもりはないけど、キャリアと頭を駆使すればそれなりにね、前衛を任せてくれれば守るよ、可愛い娘は特にね」
 出来上がったカクテルと共に、笑顔を黒子に贈るジェラルド。
 テロップに店の住所と連絡先が出て、映像は終了する。

「あれ? もう終わり? カッコいいけど、短すぎるのだわ」
 斡旋所でPVを見た椿が首を傾げた。
「僕のPVは今回おまけだからね、メインは彼のプロデュースさ」
 パチッと指を鳴らすジェラルド。
 その音と誘われ斡旋所に入ってきた人物の姿に、椿は目を見開いた。
「クッキー? どうしたのその格好!?」
 銀色の長髪に、ひまわりの髪飾りがトレードマークだった九鬼。
 だが今の姿は、それではなかった。

●九鬼 龍磨(jb8028)編
 平和な公園。
 銀色の長髪に向日葵の髪飾りを付けた九鬼が、子供たちと一緒に歌い遊んでいる。
 そこに天使の歌声を思わせる音階で、悪魔の笑い声が響く。
「楽しそうだね。 今度は僕と遊ばないか?」
「誰だ!?」
 虚空から現れるのは白き髪に、白獣の耳、白き尾を持つ妖しくい妖狐。
 恋音編や文歌編では0.1秒ずつしか映らなかった和服を思わせる衣装も、今度は万を持して降臨である。
「この辺り一帯はすでに僕が制圧したよ。 つまり僕の所有物だ、その子供たちも、ひまわりのキミもね」
「黙れ、お前になど渡すものか!」
 組みかからんと前に出る九鬼。
 妖狐は虚空から大斧を取り出し、それを振り下ろしてきた。
 九鬼は、蜥蜴陣の防御壁を以てそれを防がんとする。
 激突する蜥蜴陣と斧。
 優美な見た目とは裏腹に、妖狐の力は剛を極めた。
「ぐっ!」
 苦痛の声を噛み殺す九鬼。
 逞しい腕に、銀の刃が突き刺さっている。
「あははぁ☆ いいねぇ、ぞくぞくするよ、その呻き声♪」
 満足げに嘲笑する妖狐。
「お兄ちゃん!」
 怯える子供たち。
 九鬼は、痛みで逃げ出しそうになる脚を、不動の意志を以て支えた。
 恐怖を押し殺し、優しい笑顔を子供たちに向けた。
「にははー、お兄さんは強いからへっちゃらさ! 明日、またここで遊ぼうね! 約束だよ」
 子供たちを避難させた九鬼は、妖狐に向き直る。
 「へっちゃらは誇張かな、撃たれりゃ当たるし痛いんだよね。 でも、耐えることなら得意さ!」
 右腕に食い込んだ妖狐の斧を、左腕の膂力を以て引き抜く九鬼。
 空手でいう立ち関節に妖狐を極め、投げた。
 投げられるままに宙を舞う妖狐。
 だが妖狐は優雅な動作で着地しざま、九鬼の肩を斧によって穿った。
「ぐあっ!」
 血を渋かせ、倒れる九鬼。
 その長い銀髪を妖狐の掌が鷲掴み、九鬼の巨体を引きずり起こす。
「いいねぇ……そう、そうやってもっと睨んで☆ 最期の時に、絶望する様にさぁ♪」
 歓喜の笑いをあげる妖狐。
 だが、次の瞬間、妖狐の腕が軽くなった。
 九鬼が愛刀・新月を振い、掴まれていた己の長い髪を切り捨てたのだ。
 力を込めていた腕から唐突に重みが消えた反動で、妖狐の体勢が一瞬だが崩れる。
 瞬間、九鬼が繰り出すは必殺の日輪草螺旋撃!
「咲けよ大輪、徒花にあらずッ!」
「ぐぉ!」
 斬りつけられた、妖狐は爆散した。
 九鬼の髪を握りしめた掌を残して。
「キミのものになったのは、その髪だけだ」
 
 翌日、九鬼は約束通り再び公園を訪れた。
 彼に元に、子供たちが駆け寄ってくる。
 髪の短くなった九鬼の顔に、ひまわりの笑みが浮かんだ。
『戦いも日常仕事も、隣のひまわりお兄さんにお任せ!』
 九鬼自身のナレーションでPVは終了した。 

 椿はきょとんとした顔で、九鬼を眺める。
「このPVのためだけに、ハゲたのだわ!?」
「ハゲてないから、短くしただけだから!」
 涙目になる九鬼。
「憧れからの卒業っていうのもあるかな」
 ポツリと呟く。
 どうやらこのPV撮影は、九鬼にとっての新たな一歩でもあるようだ。

●染井 桜花(ja4386)編
 メイド服姿の桜花が、御屋敷の呼び鈴を鳴らす。
 玄関から、金髪ツインテ美幼女が飛び出してくる。
「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ! 呼び鈴が鳴る音がする! そう、ボク参上!」
 このお屋敷のお嬢様、イリスちゃんである。
「キミが依頼を受けてくれた桜花ちゃん?」
「……よろしくお願いします」
「そういうダウナーなとこウチのお姉ちゃんに似てるなー、いぁいぁ、だったらお姉ちゃんに面倒見てもらえって話なんだけどね! そうもいかない大人のジジョーが……」
 他人のPVで喋りしゃべりまくるイリス。
 参加者で子供なのがイリスしかいないので、やむ得ない配役。

 黙々と、料理をこなす桜花。
「……お食事の準備が出来ました」
 ハイテンショントークのイリスにも忍耐強く家庭教師をする。
 やがてイリスも、大人しく勉強し始めた。
「……今日の授業は終了です」

 数日後。
 雇い主であるイリスの一家と、ファミレスに入る桜花。
「謎ドリンク作ってきまっす!」
 料理を待ちきれないイリスが、ドリンクバーに走る。
 数瞬後、ファミレス内に銃声が響いた。
 見れば、イリスが銃を持った強盗に口を塞がれている。
「にはは、三分以内に店も客も有り金を全部だしてね。 でないと、この娘の命はないよー」
 なお、強盗役は九鬼である。
 恐怖に悲鳴をあげる客たち。
 その時、強盗の耳に声が響いた。
 『警察だ、キミは完全に包囲されている! 銃を捨てて投降しなさい』
「ええ! もう!?」
 動揺する強盗。
 実は、声の正体は桜花のスキル忍法「霞声」である。
 窓を覗こうとした九鬼の脇に神速で迫り、拳を繰り出す。
「……絶技奥義・瞬撃」
 強盗をKO。
 イリスを抱きしめ、笑顔を向ける。
「……お怪我はありませんか?」
 ファミレス内からは安堵の声よりも早く、拍手の雨が降り注いだ。

『……絶技は“必ず殺す”ための技。 炊事、掃除、洗濯、護衛、貴方の不安を殺します』
 テロップに連絡先が表示されて、PV終了が終了した。

「……珠玉の出来」
 満足げな桜花。
 その隣で九鬼は涙目。
「わ〜ん、新たな一歩を踏み出す決意をするなり、この配役はないよ〜」


 作成されたPVは好評で、久遠ヶ原島ケーブルTVにはPV制作部門が設立された。
 今後は、キミ達の作ったPVがサンプルとしてCM放映されるだろう。
 己の魅力を映像化し、産まれるPV。
 それを作る事は、キミたちをより磨く事にも繋がるはずだ。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 花々に勝る華やかさ・染井 桜花(ja4386)
 外交官ママドル・水無瀬 文歌(jb7507)
 圧し折れぬ者・九鬼 龍磨(jb8028)
重体: −
面白かった!:5人

新世界への扉・
只野黒子(ja0049)

高等部1年1組 女 ルインズブレイド
花々に勝る華やかさ・
染井 桜花(ja4386)

大学部4年6組 女 ルインズブレイド
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
ハイテンション小動物・
イリス・レイバルド(jb0442)

大学部2年104組 女 ディバインナイト
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
圧し折れぬ者・
九鬼 龍磨(jb8028)

卒業 男 ディバインナイト