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マスター:スタジオI
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/08


みんなの思い出



オープニング


 ニューススタジオで、中年男性アナウンサー・門目がニュースを読み上げている。
「次のニュースです。 本日警視庁は久遠ヶ原島在住の元撃退士で斡旋所員の四ノ宮 椿容疑者(29)を悪質な連続器物損壊事件により、全国に指名手配しました」
背後のプロジェクターに、国道の速度制限標識が映る。
 標識の真ん中にバズーカで貫かれたような穴が開き、数字が見えなくなっている。
 さらには国道の真ん中、かつて制限速度が書かれていた部分に、巨大なクレーターが出来、これも数字が見えなくなっていた。
「四ノ宮容疑者は、“30”と書かれた速度制限標識や道路、数十件を素手で破壊し、そのまま行方を眩ませています」

 画面が切り替わる。
 顔にモザイクをかけられた男性が、音声を加工された状態でインタビューに応じている。
【四ノ宮容疑者の元同僚 Sさん】
「30という数字にナイーブになっていたのは感じましたね。 最初はカレンダーの“30”という数字をマジックで塗りつぶすくらいだったんですが、30歳の誕生日が近づくたびにエスカレートしてきたんです。 30という数字に憎悪を抱いていたみたいですね。 元々少し変わった先輩だったんで、やっぱりという感じです」

 さらに画面が切り替わる。
 眼鏡をかけた知的な熟年女性が、真剣な顔でこの事件に関する見解を述べている。
【犯罪心理に詳しい久遠ヶ原学園大学部教授・島谷 杏教授】
「これは久遠ヶ原島と言う限定された地域社会が生んだ事件と言えます。 容疑者は結婚を焦っていた。 30歳で独身というのは晩婚化した日本では決してマイノリティではないのですが、久遠ヶ原島は並外れた早婚社会で、見た目が中学生や高校生の人間でも普通に結婚している傾向があります。 周りに煽られて焦りが増幅し、30という数字への破壊衝動に繋がった可能性があります」

 スタジオに画像が戻る。
「警視庁の発表によると、四ノ宮容疑者は味海苔を見ると無条件で襲い掛かり強奪する習性を持つ非常に危険な人物です。 皆さん、決して味海苔を持って外を出歩かないで下さい。 危険ですので四ノ宮容疑者逮捕まで味海苔の食べ歩きは避けて下さい」
 門目アナは、画面に向かって強い目線で訴えた。

 一拍置いて、モニターが、甲板で跳ねる巨大なマグロを映しだす。
「次のニュースです。 久遠ヶ原島近海でマグロ天魔が大量発生し、漁師の一本釣りにより、二百キロ以上の大型のマグロ天魔が捕獲されました――」
 次々にニュースを読み上げていく門目アナ。

 番組終了直前、画面下にスタッフロールが流れ始めた頃、
「さて、本日の“一個だけ嘘ニュース”は、30と書かれた器物破壊事件の四ノ宮 椿さんのニュースでした。 おわかりになられましたでしょうか?」
 今まで真面目くさった顔をしていた門目アナが、突然、変顔をしたシーンで番組は終了した。


「はーい、ご苦労さんでした! 門目ちゃん今日の変顔も冴えていたよー!」
 久遠ヶ原島ケーブルTVのプロデュサー・天田が機嫌よさげにニューススタジオに入ってきた。
 この番組は“ダウトニュース”。
 夜の11時半から六十分に渡って毎日放送している一見、普通のニュース番組だ。
 ただし、番組名通り一つだけ嘘のニュースを混ぜてある。
 嘘のニュースがどれかを、視聴者にリモコンで投票してもらい、正解者の中から抽選で記念品を贈るという趣向にしてある。
 ニュース番組というのは、概して冒頭部分のニュースは刺激的なものの、後半になるにつれダレていき、視聴率も落ちるという傾向がある。
 それを防ぎ、視聴者に常に興味を持ってニュースを見てもらうため、一個だけ嘘ニュースを仕込んでおくというコンセプトなのだ。
 ゲス番組プロデュサーと揶揄される天田ならではの、“ドッキリ企画”だった。
「今日の正解率はどうでした?」
 門目の質問に天田が満足げに応える。
「騙せたよ! 正解率60.4%だね! 椿ちゃんが30って数字に最近、ナイーブなのは事実だから、知っている人は騙されたんじゃないかな?」
「それは、四ノ宮さんはショックでしょうね、指名手配されたのを信じられちゃうなんて」
「うちの局は撃退士個人との繋がりが強くて、ネットよりも早くニュースが出る場合があるから、検索すれば正解がわかるってもんじゃないんだよ」
 調子に乗って、ゲハゲハ笑う天田。
「せっかくだから、ダウトニュースはしばらく指名手配路線で多めで行こう! 撃退士に依頼して“いかにもソイツがやりそうな重大犯罪ニュース“を取り溜めしておくんだ!」
 どんどん、やばい路線へと番組を進めていく天田。
 とはいえ、番組に固定ファンは多く、エスカレートは避けられないのだった。

 というわけでキミたちが“やりかねない”と周りに思わせるような犯罪ニュースVTRをスタッフと協力して撮影して欲しい。
 最後まで番組を見てくれた人には、誤解が解けるようになっているから大丈夫である!


リプレイ本文


 月曜日、番組が半分ほど進行した頃合い。
 門目アナウンサーが強い目で画面の向こうに訴えかける。
「特集です。 年少者への猥褻行為が社会問題となる中。 本丸と言われ続けていた女性がついに指名手配を受けました。 幼女偏愛の美痴女として知られる彼女の犯した犯罪とは?」

 画面がVTRに切り替わる。
 日中路上で、インタビューが行われている。
 制服の色とランドセルで女子小学生だとわかる。
「ぐすっ、すごく恥ずかしかった……好きな男の子に…見られちゃったよぅっ……」
 すすりなく幼女。
「母ちゃんにケツ叩かれちまったぜ……くっそー」
 悔しげに声を絞り出す俺っ娘。
「ママにおむつ穿かされたー」
 よくわかっておらず、ハニースマイルの天然娘。
 彼女らが、この事件の幼すぎる被害者である。

 登場したのは白衣にマイクロビキニの美女、雁久良 霧依(jb0827)。
 画面上隅には“インタビューを元にした犯行再現VTR”と表記されている。
 朝、幼女が出て行く玄関を電柱の影から、そっと眺めている霧依。
 しかし、格好が格好なので目立ち過ぎである。

 深夜、家に忍び込む霧依。
 ベッドで寝ている幼女を欲情に潤んだ瞳で見つめると、変化スキルにより霧依の姿がその幼女そっくりになった
 ベッドに潜りこみ、幼女臭をくんかくんかする霧依。
『ここまではテンプレの変質者、だがここで霧依は驚愕の行動に出る!』

 朝、幼女が泣きながらベッドから出てくる。
「ママー、おねしょしちゃった」
 ママに怒られ、尻ペンされる幼女。
「やだー、もうしないからお尻叩かないでー」
「何言っているの! “今度オネショしたらお尻を叩いて”って貴方が言ったんじゃない!」
「そんな事言ってない〜」
 庭に身を潜め、その姿を窓越しに観察しているのは当然、霧依。
 幼女が、ママに尻ペンされている姿に興奮している。
「ハァハァ♪ 幼女の香りをかぎながらのお漏らしは、最高だったわ♪」
『指名手配された霧依。 だが、“犯人が霧依ならば尻ペンされる時にこそ幼女とすりかわるのではないか”という声が相次ぎ、捜査は難航している』


 火曜日。
「先月、婚活パーティで起きた爆破事件。 警視庁は本日、その容疑者とされる女を指名手配いたしました」

 立食パーティの様子を映した動画。
 華やかだった会場に爆音が響き、動画が乱れる。
『婚活パーティの会場に突如響き渡る爆音、爆弾を仕掛けたとされるのは、この女性』
 動画中に映る参加者の一人、髪の長いインド系美女がクローズアップされた。
 アティーヤ・ミランダ(ja8923)容疑者である。

 画面に、小学校の卒業文集が映る。
 “将来の夢“と題された寄せ書きに、”お嫁さんになりたいです”と書かれていた。
 それをバックに、音声のみのインタビューが流れる。
【爆破された婚活パーティの参加者】
「いくら何でもそんな事をする人には見えませんでしたよ、焦ってるらしいことは知っていましたが……小学校の頃からですからねえ、積極的に頑張っているのに、うまくいかないから余計ですよねえ」
 インタビューを受けている女性がアティーヤに似ているが、モザイクごしなのでよくわからない。

 画面がスタジオに戻る。
「今日は、コメンテーターとして婚活の専門家である四ノ宮 椿さんにお越しいただきました」
 いきなりガチ泣きしている椿。
「うぅう……アティーヤちゃんが可哀そうなのだわ、婚活が上手くいかない女の焦りなんて、リア充にはわからないのだわ」
 同情して鳴き続けている椿に、若干引きながらも門目は尋ねた。
「お一人様ビジネスに注目が集まるようになった現在、なぜこのような事件が起きてしまったんでしょう?」
「社会が、私やアティーヤちゃんを追いつめているのだわ。 自治体が婚活イベントを主催するとか、結婚しない奴は非国民と言われているようなものだわ」
「それは、被害者妄想な気も」
「世間は少子化ばかり心配しているけど、私ら非リアが自殺したらどうするの? 人口減るのだわ!」
 机をガンガン叩いて破壊する椿。
 こういう奴の人口は減って欲しいと門目は思ったが、机になりたくないのでそこは我慢した。

 その様子をスタジオの袖からアティーヤがそっと見守っている。
「う〜ん、喪女のまま三十路に突入するとああなるのか――大丈夫だ。 あたしはまだ大丈夫だ、きっと、たぶん。 メイビー」
 アティーヤは、二十代前半。
 まだ慌てるような年齢じゃない。 メイビー。


 水曜日。
 青年が、ひん曲がった眼鏡と打撲痕のある痛々しい顔でインタビューに応えている。
「いやー、驚きましたよ。 何だか派手な女の子がいるなーって思って見てただけで、面識とか何も無いですよ!」
 重々しいナレーションが入る。
『この男性、街を一人で歩いていると突然、火炎放射器で殴りかかられたのだという、その時、容疑者の咲魔 アコが叫んだ台詞が』
 黒バックに赤文字のおどろおどろしいテロップと、SEが入る。

『くたばりあそばせ!』

【指名手配された咲魔 アコ(jc1188)容疑者の親族男性 Sさん】
 インタビューを受けている人物が変わる。
 今度は代わりに大きなマスクで顔の下半分を覆っている少年。
 マスクの上には、眼鏡が煌めいていた。
「以前から彼女は、僕の事を眼鏡で判別している節がありました。僕が裸眼で映っている映像や写真を見ると、“これは誰か”と訊くことが度々……。 ネタだと思って適当にあしらっていましたが、彼女がこんなに残念な子だったとは」
『なんと、咲魔 アコ容疑者は憎んでいる従兄の男性と間違えて、眼鏡男子を襲撃し続けているというのだ』
「危険を避けるには、ですか? 彼女は夜中に祈りを捧げる習性があるので、男性は夜に眼鏡をかけて出掛けないことですね」

 インタビューが終り、スタジオに画面が戻る。
「というアドバイスだったんですが、必ずしも外に出なければ安全と言うわけではないようです」
 ボコボコになり、眼鏡がひん曲がった門目がスタジオの床に倒れている。
 それを満足げに見降ろすピエロメイクの少女。
「従兄様、思い知りあそばされましたか?」
 倒れた門目に顔を近づけるアコ。
 それでようやく気付く。
「あら、別人でしたのね、失礼いたしました」
 ペコリとお辞儀し、スタスタ去っていくアコ。
 門目は、体を痙攣させながらカメラに向かって強い目で訴える。
「皆さん、すぐにでもコンタクトに取り換えましょう。 確実な安心を得るにはコンタクトレンズです。 久遠ヶ原コンタクトでは現在、乗換キャンペーン実施中……!」
 言うだけ言うとガクッと意識を失う門目。
 番組終了の提供テロップが流れる
 『“より広い視界と、澄んだ視野を“ この番組は、久遠ヶ原コンタクトレンズの提供でお送りいたしました』


 木曜日。
 段ボールを持った捜査員がぞろぞろと屋敷に入って行く映像から始まる。
『資産家の子息を対象とした秘密パーティ。 その主催者二名が未成年者略取の疑いで指名手配された。 この映像は秘密パーティに関する情報を事前入手し、潜入取材を敢行した当番組の独占スクープである』

 お城を思わせるパーティ会場に、身なりのいい十代の少年たちが集まっている。
 幼い頬を紅潮させ、何かを恋い焦がれるかのように待っている。
 やがて会場奥の扉が開き、ステージに二人の女性が現れた。

「おっ〜ほほほ♪ 皆さん、お待たせしましたわ」
 一人はボディコンの美女、爆乳の胸元がハート型に切り抜かれ、ミニスカからむちむちの太ももを晒した桜井・L・瑞穂(ja0027)。
「はぁい、いらっしゃぁい♪ 今日もボク達といっぱい愉しもぉねぇ〜♪」
 もう一人は下着のような小悪魔コスの美少女、お尻もおっぱいも半分以上晒したアムル・アムリタ・アールマティ(jb2503)。
 少年たちが、二人の肉体見たさに欲情しきった顔でステージに近づいていく。
「おっーほほ♪ 我慢が効きませんのね、でもまだお預けですわ」
「この先は、お約束を守ってからだよぉ〜♪」
 部下に会場を廻らせる二人。
 少年たちが、札束を懐から出す。
『このグループは高額な参加料、そして少年たちの実家企業の機密情報を徴収していた』

「お楽しみタイム始めようかぁ〜♪」
「あら? もうですの? 先に皆さんからいただいた情報を吟味した方が?」
 瑞穂のスカートスリットから覗くショーツの紐を、しゅるっと引っ張るアムル。 
「瑞穂ちゃんたらそんなコト言って、我慢できないくせにぃ♪ ほぉら、皆も見てあげてぇ♪」
「あぁ、アムル。ちょ、ほ、解いたらぁっ♪」
 画面がほとんどモザイクに埋め尽くされ、インタビュー取材の音声が被せられる。

【会場となっている屋敷付近の住人】
「あの屋敷から夜な夜な変な声が聞こえてきましたよ」
「品の良いお嬢様だったんだけど、最近、服装も付き合っている仲間も派手になってきて、どうしてこうなっちゃったのかなって」
 モザイクの向こうには肌色が蠢き、放送出来ない事が起きている事を視聴者に伝えていた。

『このパーティの主催をした二人は指名手配直後、我々のインタビューに応じていた』
 淫靡な服装のままの瑞穂とアムルが、マイクの前に立っている。
「取材ですか? おーっほっほっほ♪ テレビで目立てるなんて、またとない機会ですわ!……え。 ちょ、指名手配? そんな、如何してこうなりますのぉ!?」
「ごめんね〜♪ 瑞穂ちゃん、誘っちゃって、でも無茶なネタ振っても、何だかんだで乗ってくれるから楽しくて好き♪」
 動揺する瑞穂の爆乳に顔を埋め、押し倒すアムル。
「捕まっちゃう前に、ボクたちのえっちぃところ見せちゃお〜♪」
「何を考えていますの!? いけませんわ、アムル! 貴女が上になってはわたくしが目立ちませんわ〜!」

 画面がスタジオに戻る。
 門目が鼻血をハンカチで吹いている。
「若者の性風俗の乱れを感じさせる事件でした。 瑞穂容疑者とアムル容疑者は少年たちへの罪を償い、今度はおじさんが参加できるパーティを主催して欲しいのもです」


 金曜日。
「個人情報の流失が問題になる中、新たな個人情報流失事件により指名手配だったアイリス・レイバルド(jb1510)容疑者が逮捕されました」
 モニターに額縁に入った絵画が映る。
 ただし、布がかけられ内容は見えなくなっている。
「アイリス容疑者の作品は現在、警察により閲覧を制限されています。 私たちは、事前にアイリス容疑者の作品を見た人を探し当て、インタビューをとる事ができました」

 暗い部屋で男がモザイクインタビューに応じている。
「あの娘の作品を見て、私は深淵なる真理を知ることが出来ました。 この世界の闇深くには冒涜的な神がいて――」
 よくわからない事を言う男。
 インタビュアーが戸惑っていると、
「わかりませんか? では、たった一文字で深淵の真理を理解出来るものをお見せしましょう。 彼女の作品を見れば誰でもここに行きつくと思いますよ」
 袖をまくり、二の腕を見せる男。
 そこには、腕を刃物で掘って書いた梵字めいた文字が書かれていた。
「わかりましたか?」
 アイリスの作品を見たらヤバい事だけはわかった。

 画面がスタジオに戻る。 
「アイリス容疑者の逮捕に関して直接の原因となったのは、当番組プロデュサー天田でした。 容疑者は天田から得た着想を冒涜的な美術作品として透明フィルムに描きあちこちにそれを貼っていたのです。 その後、それを痕跡が残らないように回収するという、マッチポンプなような事をしていたのですが、回収前に作品を見た人が、精神に異常をきたすという案件が続出したため事件が明るみになったというわけです」
 カオスすぎてなんだかわからない事件だったが、天田もカオスな番組ばかり作っているため自業自得だというネット世論が広まっており、この事件は不起訴処分になるものと思われる。


 土曜日。
「本日最後のニュースです、 春の到来を待ち焦がれる中、今日、一足早いお花見会が」
 読みかけた時、SEが流れた。
 門目の頭上にテロップが点滅する。

【ニュース速報 久遠ヶ原学園のロボット研究機関で火災発生 近隣住人に避難勧告】

 門目の顔が緊迫の色を帯びる。
「速報です。 久遠ヶ原学園のロボット研究機関で火災が発生しました。 現在、周囲では何者かが重火器による一斉射撃をしながら逃走をしています。 繰り返します――」

 やがて、現場からの生中継映像が入る。
 燃え盛る建物群を見下ろす位置に、ヘルメット姿の男性レポーターが立っている。
「こちら現場です。犯人はV兵器ミサイル、機関砲、魔導キャノンなどを乱射しながら逃走しています。 窓の外を見て、火の気配を感じた方は、すぐに避難して下さい」
「犯人の正体は掴めているのでしょうか?」
 レポーターに門目が問いかける。
 「それにつきまして研究所の方にお話を伺う事が出来ました」
 レポーターの隣に白髭に白衣の男が現れる。
 団栗眼を剥き、画面に向かって強い目で叫ぶ。
「皆さん! この顔にピンときたら掩蔽壕ですぞ!」
 研究員は、アニマル帽子を被った金髪美少女のスチール写真を翳していた。
「奴の名はラファル、撃退士三十人と装甲車三台を三秒で消し炭にしたロボ撃退士です!」
『ロボ撃退士? 俗に言うサイボーグのようなものですか? そんなものを一体何の目的で?』
「元は撃退士の損傷した肉体を機械に置き換えて社会復帰させるという計画だったのです! ですがそれは唯一残った生体脳に負担をかける事になり――ああ、恐ろしい、この島は終わりですじゃ!」
白髪を掻き毟り、天を仰ぐ研究員。

 画面がスタジオに戻る。
 危機感に満ちた顔で訴える門目。
「“この顔にピンときたら掩蔽壕“ 皆さん、充分にご警戒ください」
「おう! 気を付けようぜ!」
 門目の隣で、サムズアップするのはアニマル帽の金髪美少女、ラファル A ユーティライネン(jb4620)。
 特にその事には触れず番組は終了した。


 日曜日。
 スタジオには、目の下にクマの出来た天田Pが倒れていた。
 苦情の電話が鳴りっぱなしで、夜も眠れないのだ。

 霧依回の放送日には、
『イエスロリータノータッチって知らねえのか! 俺だって我慢しているんだぞ!』
という謎の抗議が入った。
 アティーヤ回の後は、椿に延々と愚痴を言われた。
 アコ回では、ステマがばれて眼鏡業者から損害賠償を出された。
 瑞穂&アムル回では、あのパーティの会員になるにはどうすればという問い合わせが殺到した。
 アイリス回では、名状しがたき冒涜的な抗議が沢山来た。
 ラファル回では、本当に避難する人々が続出、警察と消防署から大目玉を喰らった。
「悪ふざけが過ぎたな」
 反省するかに思えた天田だったが、
「こういう時は、悪ふざけ番組でも作ってストレス解消するに限る」
 いつか、指名手配されるに違いない。


依頼結果