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マスター:STANZA
シナリオ形態:イベント
難易度:普通
形態:
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/01/20


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは初夢シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。




 残念なお知らせがあります。
 先の戦いにおいて使用されました「聖槍アドヴェンティ」ですが。
 門木章治(jz0029)による入念なメンテナンスの結果――

 ふ ん ど し に な り ま し た !!

 さあ皆さん拍手ーーー!
 え? 拍手なんてしてる場合じゃない?
 最終兵器とも言われた武器をどうしてくれるんだ?

 いやいや、ご安心下さい。
 くず鉄になった訳ではありませんから。

 突然変異を起こして形状こそ残念なものになり果てましたが、性能は元のままなのです!
 しかも! なんと! 分裂したのです!
 今なら参加者全員に漏れなく、あの超高性能な武器が配布されるのです!
 しかも魔具コストはたったの「1」!

 どうです、スゴイと思いませんか?
 見た目は褌ですけど! 褌ですけど!!

 この褌、その細長く柔軟な性能を活かして敵を締め付ける事も出来ます。
 ビシバシ振るえば鞭の様にも使えますし、濡らしてピンッと伸ばせば槍の様にもなるのです。
 丸めて投げる事で投擲武器としても使えます。しかもブーメランの様に手元に戻る親切設計!
 手に取って使うだけではありません。
 キリリと締めれば装着者本人にアドヴェンティのパワーが宿るのです。
 言わば褌パワードスーツ!

 どうです、これなら戦える気がしてきたでしょう?
 ラスボスにだって勝てる気がしませんか?

 そんなアナタの為に、特別にご用意させて頂きました。
 最終決戦の場を!


 敵は山の頂上に陣取る「ラスボス(仮)」、ラスボスだけあって、ちょーすげー強敵です。
 皆さんは、その山裾を取り囲む様に布陣しています。

 山の北側は岩だらけの急な斜面、落石に加えて上からの投擲や魔法攻撃がある為、非常に難度の高いルートとなっています。
 難攻不落と言っても良いでしょうが、それだけに敵もまさかここから襲撃を受けるとは考えていない筈。
 虚を衝くには絶好のルートです。

 東西の斜面ではラスボス(仮)を守る精鋭達が待ち受けています。
 東には力自慢のガチムチレスラー軍団が下帯一つの凛々しい姿で。
 西には強力な魔法を操る魔法少女達、ただし生物学的には逞しい成人男性が。
 いずれも突破するのは容易い事ではないでしょう。
 ……主に精神的な苦痛のせいで。

 残る南側は、なだらかで日当たりの良い草原。
 そこには何と、猫の集団が日なたぼっこしています。
 怖ろしい罠です。
 一体何処の誰が、ぽかぽかの日だまりで猫と一緒にのんびりお昼寝という、あの強烈な誘惑に抗えると言うのでしょうかっ!!


 以上、説明オワリ!

 みんながんばれ!
 ふんどしでせかいをすくったら、きっとでんせつになるよ!




リプレイ本文

 風のない、穏やかな午後だった。
 しかし、風もないのに何故か悠然とはためき、たなびき、翻る「それ」は――

「何て事してくれてんだよー、門木センセー!」
 並木坂・マオ(ja0317)の反応は、至極真っ当なものであった。
「いや、ある意味凄い改造っぷりだけど!! 」
 何しろ槍が褌に変異したのだから、それ自体はお見事と言わざるを得まい。
 しかし例え性能は同じと言われても――
「でも、これはあんまりじゃない? ど、どうやって使えっていうのさ、こんな形にしちゃって!」
 褌をつまみ上げて頬を赤らめる、意外と純情乙女なマオさん。
「どうもこうもない、褌は穿くものだろう」
 その声に平然と答えたのは、褌大名の二つ名を誇る緋伝 璃狗(ja0014)だった。
 勿論、その股間にはキリリと締めた聖褌アドヴェンティが燦然と輝いている。
 その姿を見て、マオは盛大に溜息を吐いた。
「は〜、パワーアップできるっていうんなら、着けるしかないのかな」
 こうなったら覚悟を決めよう。
 どのみち、あのラスボス(仮)に通用する武器は他にないのだ。
 わかった、わかりました、着けますよ。
 着ければ良いんでしょ。
 でも――
「もちろん水着の上からだよ、バカ!」
 げいんっ!!
「…って!!」
 とりあえず蹴られた、諸悪の根源。
 しかし、黙って蹴られる門木では…あったが、代わりに黙っていない人がいた。
「門木先生に何という事を!」
 怒り心頭のレイラ(ja0365)が立ち上がる!
 あ、いや、その、暴力はいけません、暴力は、ね?
「わかっています。ですから、ここは度胸で反撃を!」
 いつも安定のカオスだが、それを承知で此処に来た以上は受けて立ってみせよう。
 レイラはひとつ深呼吸すると、着ている物をすぱーんと脱ぎ捨てた。
「水着の上からなんて邪道です」
 褌とは素肌に着けるもの。
「それでなくて、どうして十全の効果が発揮出来ましょう」
 いや、本当はどっちでも良いんですけどね、はい。
「…くっ、負けた…その度胸と開き直りに負けたっ」
 がっくりと膝を付くマオ。
 勝負は決した、これで世界に平和が…いや、そっちの勝負はまだ始まってもいませんでしたね。
 じゃ、そろそろ始めますか。
「…いや、その前に」
 白衣を脱いだ門木が、それをレイラの背にかけた。
「…潔く、脱ぎすぎだ」
 気が付けば、身に着けているのは褌のみ。
「――っ!!(////」
 大丈夫、謎の湯煙効果でカメラには映ってないから――





【東】


「…確かに高性能ですね。形状以外は」
 雫(ja1894)は下着の上から褌を巻き付け、己をパワーアップ。
 何だかすこぶる機嫌が悪そうだが、どうしたのだろう。
「いいえ、別に」
 何でもないと言い置いて、普段通りに鉄塊の様なフランベルジェを打ち振い東の斜面を駈け上がる。
 ただでさえ威力の高いその攻撃は、アド褌ティの効果で更に凶悪になっていた。
 おまけに、ここは雫の独壇場。
 そう、力自慢のガチムチレスラー軍団と戦う事を選んだ者は、他に誰もいなかったのだ。


「え、誰もいないの? じゃあボクそっちに行くー!」
 飛び込んで来たのはイリス・レイバルド(jb0442)だ。
「ボク今有頂天だしー、どこでも良いんだー」
 何故に有頂天なのか。
 それはこの、身に着けたアド褌ティのせいだ。
 水着の上から締めて、その上から更に普段通りに制服を着るという念の入った装備のせいで、外からは見えないけれど。
 でも、その能力は問題なく発揮できる筈!
「とにかーく! これで謎のアウル活性化が見込まれるのは確定的に明らか!」
 これで空を飛ぶのだ。
 天使達の光の翼より、もっともっと高く。
 これでもう、天魔系な方々を見上げなくてすむ、いや寧ろ見下ろす!
「夢だってかまわない! ボクは誰よりも高く飛ぶためにここにいるんだーッ!!」
 しかし、思いきり高く飛ぶには、思いきり勢いを付ける必要があった。
 ということで、敵さん達には踏み台になってもらおう。
「邪魔するヤツは乙女の純情100%イリスちゃん修正ナックル!」
 進路クリア、助走開始!
「スカート覗くヤツは乙女の恥じらい120%イリスちゃん制裁キック!」
 蹴り飛ばされた敵は、空の彼方に飛んでった!
「ちがーう、飛びたいのはボクの方!」
 最後の手段でハンマーをぶん回しながら、竜巻の如くトルネードあたっく!
 敵を蹴散らし、グルグル回りながら――
「飛んだ!」
 空に向かって一直線、渦を巻いて上昇を続ける!
 雲を突き抜け成層圏を越えて、遂には宇宙空間へ…って、さすが夢!
 果たして、帰って来られるのだろうか――?


「なら、ウチもここで!」
 目を輝かせた城咲千歳(ja9494)は、アド褌ティをぶんぶん振り回しながら言った。
「だってコメディですっすから! コメディっすから!!」
 コメディで、しかも夢。
 この組み合わせに不可能はない。
 褌を両手で捧げ持ち、千歳はそこにありったけのアウルを流し込んだ。
 そして祈る。
「アド褌ティ! 無茶な設定の代物ならウチの声に答えて! コメディだから!!」
 伸びろ! どこまでも伸びるんだ!
「伸びた−!」
 それを全身に巻き付ければ、褌アーマーの完成だ!
 ミイラ男とか言うな!
 そして強化されたその腕力で、迫り来る敵を手当たり次第にぶっ飛ばす!
 更には伸びた両腕が鞭の様にしなり、辺りの敵を纏めて薙ぎ払った!
「だってコメディっすから!」
 それは何でも許される魔法の呪文だった。


 身長約30?のまっくろもちぷに悪魔Unknown(jb7615)は、ひとりラスボスを倒す旅に出ていた。
「うな」
 三叉の矛の代わりに大きなフォークを手にした姿は、何かのゲームで見た事ある気もするけれど。
 しかし彼は、その眷属でも色違いでもない。
 この世に一体しか存在しないアド褌ティの妖精なのだ。
 その証拠に、彼の背にたなびくマントは良く見れば褌。
 それこそが聖褌アドヴェンティなのだ。
「うなー」
 今でこそ呪いのせいでこんな声しか出せないが、ラスボス(仮)を倒せば呪いも解ける。
 その真実の姿が如何なるものか、それは誰も知らないけれど。

 さて、その姿は神出鬼没。
 まず現れたのは東の斜面だった。
 身長約30?のほぼ球形に近いその物体は、一生懸命に坂を登る途中で――
 ぽーん!
 蹴っ飛ばされた。
「うな」
 静かに怒りを滾らせた褌妖精、ジト目で相手を睨み付ける。
 そして…刺した。
 手にしたフォークで、沈黙のうちに滅多刺し。
 敵だもん、容赦はいらないよね。


 かくして。
 千歳のコメディ補正と雫のガチ戦モード、そして通りすがりの褌妖精Unknownの怒りで、東斜面はあっという間に制圧された。
 それにしても存在感薄いね、ここの敵。





【西】


 年に数回、ふと思い出す事がある。
 そう、彼――ラグナ・グラウシード(ja3538)は、ナルシストなのだ。
 己の肉体を誇り、陶酔する――それ自体は、決して悪い事ではない。
 だが、風呂場の鏡で堪能する程度に留めておけば良いものを、ついつい見せびらかしたくなってしまうのが彼等のちょっと困った所だ。
「私のこの美しい肉体はそれだけで完璧…だがッ!」
 ラグナは小天使の翼で空に舞い上がると、着ていたものを脱ぎ捨てる。
「アド褌ティを身に着けることにより! 文字通り金剛石のごとく為る!」
 その肢体に燦然と輝く褌一丁。
「ふはははー! 貴様らの攻撃など、このアド褌ティがあれば…!」
 眼下の魔法少女達を見下ろし、ラグナは愛用の大剣を振りかざした。
 と、そこまでは良かったのだ。
 そこまでは。
 しかし、彼は禁断の技を使ってしまった。
「敵は私が引き付ける、その隙に皆はボスの所へ!」
 自らを犠牲に、仲間の活路を開く。
 なんてカッコイイ私。
「美しい私を見ろ! シャイニング非モテオーラぁぁっ!!」
 声と共に、アド褌ティをキャストオフ!
 黄金色に眩く輝く未使用美品!
「キャーーー!」
 下から湧き上がる、茶色い声。
 ぶっとい腕が下から襲い掛かり、ラグナを引きずり下ろす。
 哀れラグナは魔法少女達の餌食に…!?


「こ、これが噂の…!」
 星杜 焔(ja5378)は、新兵器と聞いてわくわくが止まらなかった。
 良い武器というものは、手にしただけで違いがわかるものだ。
 この、しっくりと手に馴染む感じ、程よい重量感、バランス…どれをとっても完璧だ。
 その形状が褌であるという事以外は。
 しかし、この際見た目は気にしない、気にしてはいけない。
 焔はそれをしっかりと両手に持って、ピンと伸ばした。
 斜面には障害物が多いが、そんなものは小天使の翼で飛び越えてしまえば良い。
 いや、今や謎の褌パワーで飛距離も高度も無限大、制限時間もなくなったそれは、まるで大天使の翼!
 意気揚々と上空を飛ぶ焔、眼下に見えるアレは――
 マッチョな身体をミニスカセーラー服に包んだ魔法少女達、ただし♂。
 焔の脳裏に悪夢が甦る。
 しかしそこに友の姿を見て、焔は我に返った。
「ラグナさん、今助けますー!」
 急降下した焔は褌を鞭の様に振るい、ラグナに貼り付いていた魔法少女達を薙ぎ倒す。
「か、かたじけない…!」
 慌てて褌を着け直すラグナの前に立ち、焔は精神統一。
 今こそ謎の褌パワーで超能力を発揮するのだ。
『魔法少女の皆〜聞こえるかい〜』
 みょんみょんみょんと、焔はテレパシーを送る。
『今日は嫁を探しにきました〜。君たちの中で一番強い者を嫁にしたいな〜、魔法少女同士で戦ってNo.1を決めてね〜』
 だがしかし。
「あぁ〜ら、アナタには可愛いお嫁ちゃんがいるくせにv」
「浮気には、オシオキのチューよ!」
 襲いかかる魔法少女達に、焔の正気は砕け散った。
「変態滅ぶべし! 虹色魔弾発射ぁーーーっ!!」
 褌が機関砲に変形、そこから放たれた虹色に輝く光弾が炸裂し、魔法少女達を木っ端微塵に吹っ飛ばす!
 流石、褌でもアドヴェンティ。
 そこに正気というリミッタを外した焔の全力を乗せれば、その威力は筆舌に尽くし難く――


 その同じ頃、影山・狐雀(jb2742)もまた褌一丁で西の斜面上空を飛んでいた。
「褌は確かこうやって着るのが正しいと聞いたのですー。…わふ、ちょっと恥ずかしいです(汗」
  恥ずかしいけれど、それが正式な作法だと言われれば素直に従うのが礼儀というものだ。
「こ、こんな格好になっても能力高いなら頑張って使いますっ」
 男の子だし、大丈夫。
 でも何故だろう、下からの視線がとても痛い気がする。
 それに飛んで来るのは攻撃ではなく、ハートのような…?
「空から爆撃いくのですよー。あ、あまり下からじっくり見ないでくださいですぅ!?」
 どかーん!
 アド褌ティ効果で範囲も効果も数倍になった炸裂符で絨毯爆撃。
 コメディ効果で黒焦げになり、吹っ飛んでいく魔法少女達。
 しかし何故か、その顔は嬉しそうに見えた。
「わけがわかりません…」
 でも、効いているのは確かだ。
「そろそろ引導を渡す頃合いですね−」
 地上に降りた狐雀は、身に付けていた褌をしゅるりと外す。
 その瞬間、周囲から一斉に湧き上がる悲鳴。
「な、なんですか!?」
 思わずビクッと身を震わせ、狐雀はふわふわの尻尾を足の間に巻き込んだ。
 そのまま大事な所を尻尾で隠し、外した褌を剣の様に伸ばして持つ。
「トドメは確かこれでやれとー」
 誰ですか、いたいけな少年にそんなデタラメを教え込んだのは。
 GJです(
「恥ずかしいですけど、行くのですよー!」
 えいっ!
 ぐさりと突き立てられるアド褌ティ、哀れ魔法少女達は塩の柱となり果て風に崩れ去る。
 しかし、その顔には満足そうな笑みが湛えられていたという――


「ハポンの伝統衣装たぁ聞いてたが…」
 見よう見まねで褌を締めたジェイド・ベルデマール(ja7488)は、荒れ狂う冬の日本海を背に雄々しく立っていた。
「このフンドシっての、なかなか動きやすくて良いじゃねぇか」
 余計な武器など使わない。
「男なら、この身体ひとつで勝負だ!」
 ザッバーン!
 仁王立ちするその背で波頭が岩に砕け、激しく散った飛沫が頭上遥かまで立ち上る。
 因みに、このエフェクトは「装着者の脳内イメージを忠実に再現、投影する」という聖褌の特殊効果だ。
「さて、俺もお前等のツラはどっかで拝んだ気がするんだが」
 そして前にも同じ様な事を言った気がするのだが。
「男がそんな気味の悪ぃフリフリしたもん着てんじゃねぇよ、さっさと脱げ」
「あらァ、良いのかしら脱いじゃっても」
 一人の魔法少女が腰をクネらせながら、セーラー服の肩をずらす。
 その下から顔を覗かせる、逞しく盛り上がった筋肉。
「てめぇ等いい体してる癖に揃いも揃ってなよなよしやがって…俺が漢ってもんを教えてやるよ」
 しかし相手は「いや〜ん怖い〜」などと茶色い声を上げながら、障害物の影に逃げ込んでしまった。
 そこからちまちまと放たれる、キラキラエフェクトのかかった魔法攻撃。
「魔法なんざ女々しいもん使ってんじゃ…ねぇ!」
 どすこーい!
 フンドシといえばスモウレスラー、ジェイドは渾身の力を込めて四股を踏む。
 と、その衝撃で障害物が粉砕され、隠れる場所を失った魔法少女達は右往左往。
「掛かって来い、俺がてめぇら全員、満足行くまで相手してやるよ」


 逃げ惑う魔法少女達、しかし彼女達に逃げ場はない。
「アドヴェンティの量産と低コスト化を同時に成功させるなんて、流石は門木先生…」
 ユウ(jb5639)は真面目だった。
 カオスな夢の中でも、やっぱり真面目だった。
「この戦い、先生の為にも絶対負けられませんね」
 素肌に褌を締め、その上から全身を覆うアーマースーツを――え、だめ?
「褌が見えていないと効果が現れないのですか?」
 そんな事はない。
 ないけれど、「その方が絵になるよねー」という主にカメラクルーの陰謀により、そういう事になりました。
「…でしたら、仕方がありません」
 ユウさん、素直な良い子です。
 そんな良い子を騙くらかして良いのだろうかと悩みつつ、中継続行。
 水着の上から着用し直した所で、ユウは逃げて来る魔法少女達に遭遇した。
「この人達を何とかしないと先に進めないようですね…」
 他の何名かと同じく、ユウも彼女達には見覚えがあった。
 現実世界の彼女達は確か改心した筈だが、捨てきれない未練がこうして夢となって現れたのだろうか。
「けれどアドヴェンティを纏った私達は相手が例え魔法少女であっても負けるわけにはいきません!」
 闇の翼を活性化、ベネボランスを振りかざし、魔法少女達を容赦なく斬る!
「そ、そんな! 女神様の様に優しかったアナタが何故!」
「ヒドいわ、ムゴいわ!」
 けれど、これが現実。
 と言うか、反省しない人達に厳しくオシオキするのは当然ですよね。


「褌万歳(きり」
 褌を愛してやまない東風谷映姫(jb4067)は今、震える様な感動を覚えていた。
「この身の引き締まる感覚…やはり最高ですね!」
 流石はアド褌ティ、並の褌とは違う。
 しかし困った事がひとつ。
「このまま身に着けていれば褌は防具、でも私は武器としてもこのアド褌ティを使いたいのです」
 悩める映姫は決断を下した。
 アド褌ティは、やはり武器として使うのが相応しい。
 大丈夫、褌ならば自前の特注品がある。
 ということで褌を締め直し、胸にはセットのサラシを巻いて、いざ出陣。
 そのままアド褌ティを鞭のように振るいながら、西斜面に特攻する。
「私の邪魔をする人は誰ですか!?」
 邪魔をするなら容赦はしない。
 邪魔をしなくても以下同文。
 その鬼気迫る姿に怖れをなして逃げ惑う魔法少女の頭に褌を巻き付け、そのままブン回す。
「アハハハハ!!」
 ブン回された魔法少女の身体は、近くの仲間を次々に薙ぎ倒していった。
 最後にはそのまま跳躍し、地面に叩き付ける様に投げ捨てる。
「フッ…」
 決まった。
 渾身のドヤ顔と、カッコイイポーズでフィニッシュ。
 褌とサラシの白が、目に眩しかった。


 そして満を持して現れたのが、上はYシャツ下は褌の痴女――もとい鬼道忍褌、月臣 朔羅(ja0820)。
 彼女の狙いはただ一つ、首領の首だ。
 邪魔する奴は、容赦なく――吊る!
「どきなさい。吊られたいの?」
 お色気満点の腰つきで攻撃を避けながら素早く接近、そして吊る。
 釣るのではない、吊るのだ。
「褌忍法、褌縫い!」
 伸びた前垂れが相手の身体に巻き付き、締め上げる拘束技だ。
 しかし、ただ拘束するだけでは済まない。
 股間への食い込み方は特に凶悪で、見た目は魔法少女でも中身は♂である彼女達には効果抜群だった。
 白目を剥いた所に更に追い討ちをかけるのが、巧みな腰の動きから繰り出される、尾てい骨へのヒップアタック、その名も尻割り!
 その痛さは、意識が朦朧とするレベル…と言うか、既に意識は飛んでる様な。
 トドメは解いた褌を相手の首に巻きつけ、高所へと吊るす褌常世吊りだ。
 ピンと張った褌を指で弾けば、その超絶パワーが敵に注ぎ込まれる!
「また、つまらぬモノを吊ってしまったわ――」
 アド褌ティを締め直し、朔羅は次の獲物を探す。
 しかし、あまりの仕打ちに怖れをなした魔法少女達は、二度と彼女の周りに近寄る事はなかったという。
「仕方ないわね、準備運動はこれくらいにしましょうか」
 目指すはラスボス(仮)。
 遮る者のない西の斜面を、朔羅は悠然と登って行くのだった。


「受けた当時の覚えがないの、だけれど」
 花見月 レギ(ja9841)は、ひとり呆然と立ち尽くしていた。
 どうしてこうなったのか、記憶がない。
 脈絡なく唐突に、気が付いたら参加していた。
 人、それを「背後の陰謀」と言う。
 それでも受けたからには使命を全うせねばと、褌ひとつ――だけはどうかと思って襦袢を着込み、寒いのでその上からコートを羽織ってみる。
 かなり妙な格好ではある、けれど。
 普通にネクタイ系にしている人よりはマシだと思いたい。
「褌として装備しないといけない、ように聞いた気がしたのだけれど」
 その彼は激戦区である北の斜面に向かったのだったか。
 とりあえず、無事を祈っておこう。
 そして自身は――
「ここに来ないといけない気がしたんだ。何となく」
 遠い目をして呟く。
 その目の前に現れたのは、やはり見覚えのある魔法少女達だった。
 彼女達としても、あっさり通す訳にはいかない事情があるのだろう。
 しかしレギは戦う気になれなかった。
 彼女達には何故か、妙な親しみを感じてしまうのだ。
 ここは穏便に通して貰えるように交渉するのが得策だろうと、スキンケアセットとメイクセットを手土産に近付いてみる。
「冬は肌が乾燥するから…肌は大切に、な。一つしかなくて申し訳ないのだけれど」
 以前、現実世界でも似た展開があったような。
(気のせいだ多分)
 彼女達に気に入られ、押し倒されてちゅー攻めにされているこの状況も、前に一度経験したような気がするけれど――


 通りすがりの褌妖精が、それを横目にぽてぽてと坂を登って行った。





【南】


 南斜面は、天国だった。
「くっ、なんて罠を…!」
 精一杯の抵抗を試みるも、即座に完敗。
 動物好きな璃狗が、猫の誘惑に耐えられるわけもなかった。
「アド褌ティで能力は底上げされている筈なのに…!」
 抵抗力だって上がっている筈だ。
 なのに、それをあっさりと突き破る猫の誘惑。
 ラスボス(仮)よりも、彼等の方がよほど強力なのではないだろうか。
 猫最強。
 まるで強力な磁石に引き寄せられる様に、ふらふらと近寄る璃狗。
 しかし、ここで悲劇は起きた。
「ふしゃあぁぁーーーっ!」
 猫達の尻尾がぶわっと膨らみ、背中の毛がヤマアラシの様に逆立つ。
 璃狗は、何故か猫に嫌われる体質なのだった。
(もふりたいのに、愛でたいのに…!)
 しかし、猫達は触らせてくれない。
 まるで犬でも見たかの様に、一目散に走り去る。
 後に残るは、ぽかぽかの日だまりと、飛び散った猫の毛のみ――


 猫達が逃げた先には、先客の猫がいた。
 しかも人型、二足歩行、おまけに黒いもこもこ毛皮(冬毛)に輝く白い褌がお洒落☆で、なんか強そう。
 それは黒猫忍者、カーディス=キャットフィールド(ja7927)だった。
(…はっ! これが褌の力…体のそこから漲ってくる(どきーん☆)
 聖なる褌ぱぅわぁーが、彼を戦場へと駆り立てる!
 そこに迫り来る百匹の猫!
「…くくくく…私がこの程度の敵に恐ると思いますか!!(カッ」
 今の彼は、向かうところ敵なしだった。
 何が来ようと負ける気がしない。
「全てをなぎ払ってくれましょう!!」
 ごろ〜ん!
 …え? 寝転んじゃうの? そこで?
 言行不一致にも程がありますね、気持ちはわかるけど!
「だって〜こんな素晴らしい日向ぼっこフィールドで戦うなんて勿体無い〜」
「ですよねー」
 とっくに猫もふ体勢に入っていたシグリッド=リンドベリ(jb5318)が、寄って来た猫達をふるもっふしながら答える。
「ねこさん100匹と聞いたら南以外選択肢がありませんでした何も後悔などありません…!」
「ね〜☆」
 お昼寝したい猫は構わずに、お昼寝よりも遊びたい元気な猫達を相手に、シグリッドは猫じゃらしを振る。
 その猫じゃらし…実はアド褌ティだった。
「流石に褌のみは恥ずかしかったのです…」
 恥ずかしいので、上から月の羽衣を羽織って制服の幻影を見せている。
 そのポケット部分からチラチラと覗く布きれ、それこそがアド褌ティだ。
 褌の前垂れが猫の狩猟本能をそそる絶妙な形に変化し、持ち主が何もしなくても勝手に動く。
 緩急のリズムを付け、捕まえられそうで捕まえられない微妙な距離感を保ちつつ、猫の目とココロを惹き付けて離さない。
 流石は最強の武器、その性能は猫のオモチャとしても最強だった。
「アドヴェンティも武器として使われるより、ねこさんと一緒に遊んでもらう方が幸せですよね」
 そんな素敵改造をしてくれた門木先生はやっぱりすごいと、素直に褒め称える素直で純真なシグリッド。
「…ありがとう、にゃん」
 と、背後でいきなり本人の声が。
「門木先生、いつの間に!」
 しかも何故か黒いネコミミ、ネコシッポ、そして語尾に「にゃん」が付いている。
 これはまさか、カーディスの黒猫魔法!?
「シグリッドさんがモフりたそうだったので、召喚してみました(きりり」
「ありがとうございます、ねこさん…!」
 シグリッドはカーディスをもふーっ、続いて門木にゃんをもきゅーっ!
(…門木先生ってなんか可愛いです…)
 もふもふ、もふもふ。
 髪の毛なんか硬そうに見えるけど、実は結構ふわふわだったり。
 もっふもっふー。
「さあ先生、一緒にねこさん達と遊びましょう!」
 言われて、門木もアド褌じゃらしを振る。
 シグリッドの分とダブルになったじゃらしに、猫達はますます大興奮。
 エキサイトするその様子を、カーディスはゴロゴロしながらのんびり見守っていた。
 走り回る猫達に時々踏まれるけれど、気にしないし痛くない――ほんとは痛いけど、そこは猫愛で痩せ我慢。
 そして遊び疲れたら、皆でポカポカお昼寝だ。
 猫も人も、一緒にごろーん、のび〜ん。
 ああ、天国。
 もう動けない。
 最初から動く気ないけど。
「…戦闘は強い人たちにお任せしておきますね!」
 じゃあ、おやすみなさい!


「この猫地雷原を突破すれば良いんだね」
 任せておけと意気揚々、マオは南のぽかぽか斜面にやって来る。
「猫の人達とは話し合いで通らせてもらおうじゃない」
 もちろん猫語で。
 知らない? にゃおりんがる。
 猫まみれで生活してると、自然と話せるようになるんだよ?
 嘘だと思うなら見せてあげようじゃないの、普段から路地裏で仲良くしている成果を。
「にゃ、にゃぁ? うにゃ、にゃー」
 姿勢を低く、猫になった気分で目線を合わせ…
 猫達、胡散臭そうに見ています。
 この「何やってんのコイツ」みたいな顔、結構ササるよね。
「あ、でも、ここ温かいな…何だか眠くなっちゃう」
 見ればちょうど、目の前には一人分のお昼寝スペースが。
『にゃ』
「え、ここに寝ろって? でもアタシにはラスボスと戦う使命が…」
『にゃ、にゃ』
 てしてし、前足で地面を叩く猫。
 ここはお前の場所だと言っている、らしい。
「ふにゃあぁぁぁ…」
 ごろーん。
 マオ、完敗。


「え、褌? 要らないわ、あたしは猫と遊ぶんだからね」
 南斜面の一角にもうひとり、戦いよりも猫愛を選んだ平和主義者(?)がいた。
「褌で戦闘? なにそれおいしいの?」
 その名も月丘 結希(jb1914)、筋金入りの猫スキーだ。
 装備品は猫じゃらし各種に、ヒモ、ボール、あとは沢山の猫缶しかもプレミアム。
 早速寄って来た食いしんぼ猫達に、結希はいそいそと猫缶を開ける。
「ほら、おいで」
 その食べっぷりに目を細めつつ、じっと観察。
 お食事中の猫に手を出してはいけません。慣れていない子には、ほぼ確実に嫌われます。
 なので、撫でたくてもじっと我慢。
 そのうちお腹が一杯になれば…ほら、無防備にお腹を見せて、ごろ〜んと。
 もっふ。
 もふもふわしゃわしゃ。
 お腹を撫でると気持ち良さそうに伸びる子もいれば、抱き付いて猫キックをかます元気な子もいる。
 警戒心の強い子には慌てず騒がず、ゆっくりと距離を詰めて猫じゃらアタック!
 夢中で遊んでいるうちに、いつの間にかすっかり慣れているあたり、猫って気難しい様に見えて意外と単純だったりする。
 たっぷり遊んで、もふって、お昼寝して…あぁ、幸せいっぱい。


 雄々しいふんどし翻しー♪
 我はー進むぞー♪
 ショタを愛でるためー♪

 作詞作曲:藤咲千尋(ja8564

 自作のショタ賛歌を高らかに歌いながら、千尋は猫だらけの南斜面を進む。
 しかし、彼女の目には猫の姿など映らない。
 求めるものは、ただひとつ。
 小豆色のジャージ上下に褌をきっちり締めて、いざ召喚!!
「えろえろいむいむ えっさいむー 我は求め訴えたり!! いでよ!! 来たれ!!」

\ ナ ー シ ュ き ゅ ん ! ! /

 ぼへーん!
 もわもわと虹色の雲が湧き起こり、現れたのは…ぴっかぴかの膝小僧だ!
「ナーシュきゅぅぅぅんっ!!」
 だっきゅる!
「ナーシュきゅん久しぶりー!! 会いたかったよおぉぉっ!!」
「ちひろおねぇさん、こんにちはなのです。呼んでいただいて、ありがとうなので…す?」
 ぺこりと頭を下げたチビ門木が顔を上げると、そこには。
 真っ赤な噴水があった。
 上を向いた鼻からぴゅぴゅーっと噴き出しているのは勿論、鼻血だ。
「だ、大丈夫なのですか!? えっと、えっと、ハンカチどうぞなのです!」
 だが、そんなもので足りる筈もない。
 バスタオルでも足りないのではなかろうか。
「大丈夫、大丈夫…(ぜーはー」
 漸く落ち着いた千尋は…いや、まだでした。
「ちひろおねぇさん!! ちひろおねぇさんだって!! ナーシュきゅんがちひろおねぇさんって!!」
 ばしばしてしてしびたんびたん、千尋の暴走は止まらない。
 そこに更なる追い討ちをかけたのが、ネコ耳ニット帽。
 チビ門木は誕生日に貰ったそれを被って来たのだ。
 千尋の顔を心配そうに覗き込み、かくりと首を傾げる。
 なんてあざとい!
「ぶひーーー!!」
 一段と激しく噴き上がる鼻血の噴水。
 果たして、千尋はこの天国から生きて帰る事が出来るのだろうか。


 そして、ここにも召喚士がいた。
 亀山 淳紅(ja2261)は聖褌を振りかざし、その謎パワーで異界の扉を開く。
「ダルドフさん! 召かぁーん!!」
 どべーん!
 おっさん色の雲(どんなや)が湧き起こり、現れたのは…がっちむちの上腕二頭筋だ!
「某を呼んだのは、ぬしか?」
 何やら偉そうな上から目線(物理的にも)で、ダルドフは召喚士を見下ろした。
「よろしくお願いします、やでー」
 手を振る主の目線に合わせ、ダルドフは背を折り曲げる。
「して、某は何をすれば良い」
「ここはあれです。もふもふの罠です(こく」
 淳紅は好き勝手に寝そべる猫達を指差して言った。
「なのでですね!」
 ちょいちょい、手で「座ってちょーだい」と合図してみる。
「ほら、足元にすりよられたりするとこう、たまらんあかんやん…立ち止まったらそこで試合終了やん…?」
「ふむ、して?」
「せやから…」
 ああもう、皆まで言わせんといてー、おんぶして欲しいだなんて!
「承知した」
 こうすれば良いのかと、ひょいっと肩車。
「え」
「違うのか」
 いいえ違いません。
 おんぶより高くて見晴らしが良いし!
 でもダルドフさん、今日は何だか機嫌が悪い様に見えるんだけど、気のせいだろうか。
「気のせいだ」
 そうですか。
 ならば、そのまま頂上までれっつごー。
「ひらひらにゃんにゃー!」
 またたびをつけた聖褌を猫じゃらし代わりにひらひら振れば、昼寝していた猫達も思わず起きて付いて来る。
「にゃにゃにゃにゃにゃにゃんにゃ、にゃんにゃ、にゃんにゃ♪」
 黒猫が踊ったり猫が踏まれたりする歌を猫語で歌いつつ、尻尾を立てた猫達を引き連れて、いざラスボス(仮)の所まで!


 しかし!
 その大ニャン行列は他の仲間達とまったり過ごしていた猫をも巻き込む事になってしまい…
「猫と遊ぶのを邪魔する奴には天誅!」
 結希と意気投合した猫達のもふもふ攻撃が、ダルドフに襲いかかった!
「いけ、肉球アタックだ!」
 ぺちぺちぺち。
「甘え声だ!」
 ごろにゃ〜ん♪
「今だ、額を脚にこすりつけるんだ!」
 すりんすりーん。
「そ、某に、その様な、軟弱な攻撃が、効くと、でも…っ」
 効いてます、どう見ても。
「すまぬ、某はもう、これ以上っ」
 がくり、膝を付いた。
 そしてモフる。でっかい手で猫達をモフりまくる。
 おっさん猫も好きなのか。
 こうして、動きたくない現代っ子淳紅のラスボスまで楽して進む作戦は、あえなく潰えた。
 さあ、どうする?


「…俺の優利点、どうなるんだろう?」
 アド褌ティを手に、音羽 海流(jb5591)は呟く。
 この褌を着ける事で、CRマイナスの数値が更に大きくなったりは、しないのだろうか。
「とりあえず、巻いてみるか」
 ただしサラシの如く胸に。
 すると…スキルに色々付属効果が付いた、ような?
 でも色々って何だ。
「実戦で試してみるしかないのか?」
 しかし、辿り着いた戦場は――お昼寝天国だった。
「これは、拙いぞ」
 海流は寝るのが趣味だ。
 何故人間は冬眠が出来ないのだと本気で考えるくらい好きだ。
 だが、これでは自分が寝ても、誰にも起こしてもらえないではないか。
「阿鼻叫喚、使ってみるか」
 それは闇で相手を覆い、恐慌状態に陥らせる単体攻撃。
 ところがアド褌ティの効果で南斜面全体が阿鼻叫喚の渦に!
 一斉に起き出し、落ち着きを失って騒ぎ始める猫達!


「あややー、どないしたんー?」
 突如騒ぎ始めた猫達を宥めようと、淳紅は頭を撫でながら話しかけてみる。
 だが気が立っているのか、猫達は全く耳を貸そうとしない――まあ、猫なんて普段からそんなものだけど。
「ここはアタシに任せて!」
 マオの翻訳によれば、猫達は何故かラスボスを倒す使命に目覚めたらしい!
 これもアド褌ティの効果なのか!?
「あんた達が望むなら、仕方ないね」
 行っておいでと、結希が猫の背を撫でる。
 猫は気ままで気紛れな生き物、やりたいようにさせるのが一番良い。

「ほーら見て見てナーシュきゅん、猫さんがいっぱいいるよおお」
 鼻血の海から復活を遂げた千尋は、チビ門木と一緒に猫達をもふもふ。
「可愛いのです、ふかふかなのです」
「でもねええ、ナーシュきゅんがいっちばん可愛いよおお!!」
 ハスハスクンカクンカされて、チビはきゃっきゃと笑いながら身を捩る。
「くすぐったいのですぅー」
 しかしそんな極楽浄土にも、地獄の阿鼻叫喚が!
 一斉に毛を逆立てた猫達は、まるで誰かに呼ばれた様に走り出す。
「あ、猫さん達が…」
 悲しげに呟くチビ門木。
 それを見て、千尋はブチ切れた。
「ナーシュきゅんとの逢瀬を邪魔する奴は誰だろうと――っ!!」
 いや、しかし。
 猫達がいなくなる=ナーシュきゅん独り占め、ではないか。
 おまけに傷心の彼を慰める優しいお姉さんポジションもいただきだ。
 これは寧ろラッキー!?
 …あ、いけない。また鼻血が――
 え、ボス? えーと射ちます。ナーシュきゅんに危害を加えるようなら、ね!

 猫達が向かった先には、再びダルドフに肩車して貰った淳紅の姿があった。
 肩車でラスボス(仮)まで猫まっしぐら作戦、再開!
 ぞろぞろにゃーにゃー、猫達がそれに続く。
「うな」
 その一匹の背には、まっくろ褌妖精がちんまりと乗っかっていた――


 しかし中には、仲間の動きにまるで反応しない猫達もいた。
 そんなのんびり猫達と一緒に、マオにカーディス、シグリッド、そしてネコミミ門木はお昼寝続行。

 そしてレイラは…
「はい先生、あーん…?(///」
 猫に囲まれ、門木(多分本物)と一緒にお弁当タイム。
 相変わらず褌一丁に白衣をひっかけただけという危ない格好だが、気にしない。
 夢の世界でなら大胆になっても大丈夫。
 ただ残念な事に、標的の反応はいつもと変わらず淡泊極まりないのだが。
(でも良いのです、門木先生と一緒にのんびり出来れば…)
 ここならデロいのはないだろうし。
 …ボス戦には参加予定だから、その時はどうなるかわからないけど…ね。





【北】


 そして、ここは激戦地。
「この武器さえあればどんな相手だって!」
 雪室 チルル(ja0220)は愛用の大剣にアド褌ティ(4XLサイズ)を巻き付けた。
 握った手にアウルを込めれば、なんかスゴイ感じに光り輝くぞ!(褌が)
 そして、めっちゃ強くなるんだ!(褌が)
 頭上からは大きな岩やら煮えた油やら、火矢に魔法に爆弾に、とにかくありとあらゆる物が降って来る。
 この高低差は圧倒的に不利、しかし!
「道がなければ作ればいいのよ! あたいに任せて!」
 チルルは上から降ってくる全ての物を、アド褌大剣で薙ぎ払う!
 煮えた油なんぞどうやって払うのかとお尋ねか。
 しかしそこは腐っても聖槍アドヴェンティ、液体だろうが気体だろうが、斬れぬものはないのだ!


「褌と言えば鍛え上げた肉体!」
 伊藤 辺木(ja9371)は己の肉体に自信を持っていた。
「肉体を武器にするって良く言うし!」
 見よ、力仕事で鍛えたこのガッチガチの力瘤!
 何かこれを活かす方法はないものか。
「そうだ、ハンマーになろう」
 フラリとどこか旅行に出掛ける、そんな気分で。

 北風に真っ赤なネクタイをなびかせ、ミハイル・エッカート(jb0544)は大地を踏みしめていた。
 いや、ネクタイに見えるそれは…赤褌ティ。
 ミハイルはそれをしゅるりと緩め、頭に鉢巻のように締めなおす。
「会社の同僚に聞いたぜ。日本のサラリーマンはこうして気合を入れると!」
 それがジャパニーズビジネスマンの伝統なら、黙ってそれに従うまでだ。
 赤褌ティの効果は、怪力。
 その怪力でブン回すのは、辺木。
 ハンマーになった彼を投げるのが、本日のお仕事だ。

 それでは参りましょう。
 アド褌ティハンマー投げ、まずはその準備と手順から。
 1.ハンマー本体は関節に多大な負荷をかけつつ丸まります
 2.アド褌ティで全身を包みます 隙間が出来ないように気を付けましょう
 3.余った布地を投擲手が掴みます
 4.ハンマー投げの要領で崖上にぶん投げます
 はい、簡単なお仕事ですね。
「これにて全身アド褌ティ状態で迎撃凸凹なんのそのってわけさ!」
 ハンマーが喋った。
「よし、やるぞ」
 ぶんっ!
 褌の端を持ったミハイルが、まずは勢いつけてハンマーを振り上げる。
 回し始めれば遠心力が働いて、それほどの力は必要なかった。
「後はバランスと、手を離すタイミングか」
 華麗にステップを踏みつつ、ミハイルはタイミングを計る。
 途中、降って来る岩やら何やらはソレでガンガン打ち砕け!
 中身がどうなってるかなんて、知ったこっちゃない。
 なに、聖なる褌に包まれてるんだ、大丈夫だろう。
「ふはははは! 完璧な奇襲だふはははは関節超いたい」
 何かエコーとドップラー効果のかかった声が聞こえたが、何を言っているのかよくわからなかった。
「めーがーまーわーるー」
「やかましい、いくぞ!」
 ぶぅんっ!!
 狙い違わずハンマーは崖の上に一直線、ミハイルはそれを追って駆け上がる。
 転がって来る物は、岩でも何でもガトリング砲で粉砕だ!
 前に味方がいる?
「めんどくせぇ、根性で避けろ!」
 …またしても、デジャヴか。


 背後からのガトリング砲をアド褌大剣の謎効果で防ぎながら、チルルは走り続けた。
「後ろに続く皆の為に、あたいが道を開く!」
 皆って多分、一人しかしない気がするけど気にしない!
 全てのアウルを大剣(と褌)に収束し、封砲を発射!!
「今こそあたいの全力を出す! これでどうだー!」
 アド褌ティパワーが一直線に迸り、その白く神々しい光が今にも崖上の砦をぶち破らんとしていた辺木ハンマーを包み込んだ。
 そのエネルギーを得て、ハンマーは超パワーアップ!
 チルルと辺木、二人の合体攻撃はそのまま山の半分を吹き飛ばした!
 その爆発に巻き込まれ、ラスボス(仮)第一形態は姿も見せないままに撃沈!!
「あたいは、やりきった…」
 サムズアップと共に沈むチルル。
 皆、後は任せた。


 千 庵(jb3993)は、そこから少し離れた斜面を登っていた。
 身に着けた前垂れが鶏卵型の青褌には、金字で「褌」と記されている。
「ゆけ!」
 雄々しく仁王立ちした庵が叫ぶと、前垂れが変幻自在に伸縮し、触れたもの全てを純白の真新しい褌に変えていった。
 ひらりひらりと舞い踊る純白の布きれ。
 向かうところ敵なしの、これぞまさしく \褌天国/
「伊達に聖褌帝やっとる訳ではないんでのぅ」


 そしてここにも、褌妖精がいた。
「うな」
 降り注ぐ全ての障害物を吸い込み、丸呑みにしていく。
 残酷で可愛い妖精は、真の姿と言葉を取り戻すべく、ラスボス(仮・第二形態)の元へと急ぐのだった。




【ラスボス】


 半分ほどに削れた山の上に、それは居た。
「あれは…二足歩行で歩く巨大な鯖!?」
 焔が叫ぶ。
 多分、ビジュアル的にはこう…頭を上にして斜めになった鯖の臀鰭の辺りから、毛深い素足が伸びている、みたいな。
 しかし、それだけではなかった。
「この鯖には腕が! しかも触手です、緑色の!」
 胸鰭のあたりから伸びる、無数の触手。
 それを発見した映姫は――
「きゃああ!」
 真っ先に捕まってしまった。
 褌とサラシのみの素肌に、ヌルヌルを絡み付く触手。
「あぁっ、だめです、そんな…っ」
 あーんなことやこーんなことを!
 更に、触手は周囲を取り囲む仲間達にもその魔の手を伸ばして来た。
 レイラが、朔羅が、そして遂には男性陣、そして褌妖精までも――!
「いや、俺は…遠慮したいな」
 しっかりとコートの前をかき合わせるレギ、しかし触手はその襟元から入り込む。
 キスマークだらけの火照った肌に、その冷たい感触が気持ち良…いやいや。
 しかし助けに入ろうにも、ラスボスの周囲には雑魚敵がウヨウヨしていた。

「あれ、邪魔だな…」
 海流は褌効果の付いたゴーストアローで助っ人を呼ぶ。
 それは直訳すると幽霊の弓矢、つまりこの世ならざる者達を呼び寄せる召喚魔法なのだ。
『呼びましたか?』
 にこー。
 現れたのは、二人の戦士。
 金髪に赤い瞳の王子様と、青い瞳の大剣使いだ。
 それは終わった世界の亡霊達。
『呼んでくれて、ありがとう。援護しますよ』
『私達に終わりはありませんけれどね』
 大剣使いが口角を上げる。
 二人はそのまま、息の合ったコンビネーションで次々と敵を蹴散らしていった。

「よし、俺も負けてられん!」
 辺木は褌の端を頭上でブンブン回した。
 回して飛ぶ! これぞアド褌ティコプター!
「浮きつつ突撃して褌&ボディで轢殺じゃー!」
 かなり無茶だが、気にしない!

「むははー! コメディって大好き!! 無茶なプレイングしてもええからー!」
 そう、無茶と言えば千歳の方がよっぽどだろう。
 アド褌ティをアウルで硬質化し、さらに長く伸ばす。それを折り紙のように折り合わせれば、巨大なロボの完成だ!
 それに乗り込んで、千歳は暴れた。
 雑魚なんか踏み潰せ!
 触手なんかぶっちぎれ!

 庵は右手に金字で「子」と記された前垂れが鶏卵型の白褌、左手に金字で「安」と記さ(略)赤褌を握り締め、叫んだ。
「変化! 子安褌!」
 途端、両手の褌はバンカーに変わり、股間の青褌は鶏型に生まれ変わる。
 パワーアップを果たした聖褌帝は、何故か大量の┌(┌ ^o^)┐を召喚!
 ┌(┌ ^o^)┐は雑魚敵の股間にくっつき、そして二度と離れない。
 そして┌(┌ ^o^)┐は、爆発によって相手を褌に変えるのだ。
 なんと怖ろしい!

 彼等の活躍によって、ラスボスへの道が開かれた。
「よし、そろそろ決めるか」
 ミハイルは、ひとしきり暴れて再びハンマーとしてその辺に転がっていた辺木を再装備。
「さあ選ばれし勇者よ振り回すがよい!」
「おう、言われるまでもないぜ!」
 頭に締めた赤褌と、辺木の褌。ダブル褌でパワー増大、1+1は無限大!
「俺は企業戦士だ、24時間戦うぞ!」
 力一杯ブン回し、二足歩行鯖の両足をヘシ折った!
 がっくりと膝を付く鯖!

 足を無くせば、それはもはや巨大なだけのただの鯖だ。
「よしゃー! 突撃! 突撃ですダルドフさんー!」
 ダルドフの頭をぺちぺち叩き、淳紅はまたたび聖褌を振りかざす。
 重戦車の如く戦場を駈けるダルドフは、他の仲間が気を惹いているうちに鯖の背後に回り込んだ。
 その尾鰭にこっそり結びつけた、またたび聖褌。
「必殺猫アタック!」
 怒濤の猫雪崩が鯖を囓る!

 その様子を遠目に見ながら、璃狗は忍法褌隠れで気配を殺してラスボスに接近。
 死角に入り込むと、聖褌を一反木綿状態に伸ばし――
「これぞ(猫に嫌われた悲しみという)負の感情が極限に高まった時にだけ使える忍法 褌・殺!」
 鯖の顔面を覆って締め上げる!
 …泣いてなんかいない。泣いてなんか…っ(ぶわっ

 締め上げられた鯖の真上から、昼寝を堪能してエネルギーを蓄えたカーディスが飛び掛かった。
 黒猫の褌パワーを尻尾に集め、風遁のくるくるしっぽあたっくー☆
 すこーんと脳天を叩かれた鯖は、昏倒寸前だ!

「今こそ、皆の力をひとつに合わせる時ですね」
 ユウはするりと褌を外した。
 下に水着を着てるから、外しても大丈夫。
 しかし、大丈夫じゃない人も多かった。
「でも…これも門木先生の為です(///」
 羞恥に耐えつつ、レイラは褌を外す。
 そこに狐雀が自分の褌を結んだ。
 褌の輪は次々と広がり、最後に焔が自分の褌を結びつける。
「鯖はきっと、集団攻撃に弱いと思うんだ…!」
 皆で一斉にアクセス、いや攻撃すればきっと落ちる!
「いくよ、せーの!」
 ぎゅうぅぅーっ!!
 アド褌ティを鯖の胴体に何重にも巻き付け、皆で締め上げる。
 あと一息だ。
 と、その時――宇宙空間まで飛んでったイリスが、火の玉になって帰って来た!
 ひゅるるるどーん!
 木っ端微塵に弾け飛ぶ鯖、爆発する背景!
「正義(褌愛好家)は勝つ!」
 by映姫




●エピローグ


 しかし、戦いはまだ終わらなかった。
「鉄くずに変えられても怒らないとは言いましたが…」
 ラスボス撃破の余韻が残る中、雫は門木(ノーマル)を召喚!
「罰として、先生が倒れるまで殴らせて頂きますね」
 問答無用、はいそこに立って。
 闘気解放+褌パワー+羞恥心で威力を上げ、必殺のデンプシーロールを叩き込む。
 それは相手の身体が戻って来る反動を利用して連打を叩き込む必殺ブローだ。
 まるで紙の様に舞う門木の姿に、レギは思わず――
「それはちょっと…」
 やりすぎではないか、そう声をかけようとしたのだが。
「…いや、問題ない」
 叩かれている本人が、背後に佇んでいた。
「…あれは、召喚されたものだから、な」
 召喚獣は召喚者と生命力を共有している。
「…つまり、ダメージを受けるのは、俺じゃない」
 なるほど、どうりで誰も止めに入らないわけだ。
 しかし雫は余程腹に据えかねているのか、今度はダーク門木を召喚。
「まだ、私の気が済まないので殴らせなさい」
 遂には画面のこちら側を指差し――
「まだです! もっと殴らせなさい!」
 良いけど、ご本人もうボロボロですやん。
 Unknownさん、皆さんをさくっと現実世界に返してやって下さいな。
「うな…いや、了解した」
 女性に擬態し、破廉恥な服と褌に身を包んだ彼女(?)は、釘バットを振りかざす。
「さんきう、そしてぐっばい! 素敵な目覚めを貴様らにくれてやろう!」
 却って深い眠りに落ちてしまいそうな気がするけれど。
 まあ多分、大丈夫。

 さらば聖褌の勇士達、また会う日まで――!


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:20人

執念の褌王・
緋伝 璃狗(ja0014)

卒業 男 鬼道忍軍
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
魔に諍う者・
並木坂・マオ(ja0317)

大学部1年286組 女 ナイトウォーカー
202号室のお嬢様・
レイラ(ja0365)

大学部5年135組 女 阿修羅
封影百手・
月臣 朔羅(ja0820)

卒業 女 鬼道忍軍
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
KILL ALL RIAJU・
ラグナ・グラウシード(ja3538)

大学部5年54組 男 ディバインナイト
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

卒業 男 ディバインナイト
大海原に覇を唱えし者・
ジェイド・ベルデマール(ja7488)

大学部6年68組 男 ルインズブレイド
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
しあわせの立役者・
伊藤 辺木(ja9371)

高等部2年1組 男 インフィルトレイター
逢魔に咲く・
城咲千歳(ja9494)

大学部7年164組 女 鬼道忍軍
偽りの祈りを暴いて・
花見月 レギ(ja9841)

大学部8年103組 男 ルインズブレイド
ハイテンション小動物・
イリス・レイバルド(jb0442)

大学部2年104組 女 ディバインナイト
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
こんな事もあろうかと・
月丘 結希(jb1914)

高等部3年10組 女 陰陽師
アド褌ティの勇士@夢・
影山・狐雀(jb2742)

高等部1年7組 男 陰陽師
不動の聖魔褌帝・
千 庵(jb3993)

大学部8年88組 男 ルインズブレイド
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
東風谷映姫(jb4067)

大学部1年5組 女 陰陽師
撃退士・
シグリッド=リンドベリ (jb5318)

高等部3年1組 男 バハムートテイマー
撃退士・
音羽 海流(jb5591)

高等部3年13組 男 ナイトウォーカー
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
久遠ヶ原学園初代大食い王・
Unknown(jb7615)

卒業 男 ナイトウォーカー