●レイラ(
ja0365)の回答
(くず鉄の考察ですか? なかなか興味深い研究題材ですね)
しかし、まるっと丸投げな感じは気のせいだろうか。
レイラは暫しの沈黙と共に門木を見つめ、吐息と共に目を逸らした。
(…さぁ、頑張りましょう)
だが気になる。やはり気になる。
(あぁ、ダメダメ…試験に集中しないと)
そうは思っても、問題など全く頭に入らない。
もう、こうなったら…!
「先生!」
意を決して立ち上がった。
「先生はちゃんと食事をとられていますか?」
しかし、答えは聞いてない。どうせろくに食べていないのだ。
という事で、差し出したのは懐石料理風の手作り弁当。
それを手渡し、スッキリした所で…回答、行きます。
学園におけるくず鉄とは産業廃棄物であり、本来は鉄を含まないような食物でさえアイテム強化の結果くず鉄に変化するという現象が起こっている。
くず鉄が生成されるのは学園の科学室に限定されている。そこにはアイテム強化の為に数多の撃退士が足しげく通い、また、撃退士のアイテムには幾多の天魔との戦いを経たものも存在する。
即ち、撃退士やアイテムは知らず知らずのうちに血と汗と涙という名の微細な鉄を科学室に持ち込んでいるのである。
故に、アイテム強化に大失敗すると、その蓄積と、彼等の呪いに似た願いが怨念のような化学反応を起こして、漂う血の中の鉄を呼び寄せアイテムを粉砕し、くず鉄が生成されるのである。
結論:くず鉄それは撃退士の血と汗と涙がもたらした呪いに似た現象である。
寸評:呪い、つまりは科学的な解明も対処も困難。後はお祓いでもするか、甘んじて耐えるしかないという事か。
●フローラ・シュトリエ(
jb1440)の回答
「まずはアイテム強化の現場を見学させて貰っても良いかしら? やっぱり、実際に見ながらなら何か推測でも立ちやすいかしら、と思って」
見ても良いけど、全部は無理。何しろ一子相伝門外不出、他言無用の秘術だからね。
と言うわけで、いちごオレを犠牲、いや素材に強化を繰り返すこと数回。見事くず鉄の完成だ。
「何か魔力のようなものを注ぎ込んだり、何かを加えていた形跡はなかったわね」
さて、ここから導き出される結論は?
強化の際に、アウルの力を伝達する回路みたいなのの繋がりがおかしくなったり間違っていたりすると暴走みたいな感じになって、くず鉄になってしまうのではないだろうか。
Lv2以下の強化が失敗しないのは、この時はまだ回路が複雑でなかったり、アウル側で自己修復できる範囲だったりするのかもしれない。
「回路云々自体が推測に都合が良いからって所はあるけれどね。強化の際に色々と弄ったりする訳でアウルの不思議パワーがおかしな方向に行ってしまうと、とかかしら。ヒヒイロカネに収納したりしてるのだって質量保存の法則とか完全に無視してる訳だから、そういった物を変質させる効果とかがあってもおかしくはなさそうだし…」
結論:アウルの不思議パワーが暴走した結果だった?
寸評:なるほど、くず鉄になるアイテムは元々その様な欠陥回路を持っていた、つまり、くず鉄化は必然、不可抗力、なるべくしてなった、と。
「あ、ついでにもうひとつ」
くず鉄化させることで買い直す、強化し直すなどの必要性を生じさせ、儲けようと目論む購買と科学室の共謀があるのではないだろうか。
ほら、今も購買と科学室で特別企画みたいな事やってるし。
「くず鉄化によって儲かる所は怪しい、とかどうかしら?」
「…待て、俺は儲けてない、ぞ…?」
●平賀 クロム(
jb6178)の回答
「俺、撃退士にならなかったらV兵器開発者や強化技術者になりたかったんすよ。なのでこの問題は凄く興味深いっす!」
ほう。なら科学室の助手でもやってみる? あ、学校卒業してから、だけど。
「科学の基本はトライアル&エラー! まずは実験っす!」
そんなわけで、こちらも科学室へ。
今回の犠牲者はサバイバルナイフ、ポケットティッシュ、コーラ、そして花束。
「ナイフがくず鉄化するのはまぁいいんすよ、鉄っすし」
ごろん、ごろん。無情にも次々にくず鉄と化すアイテム達。
「けど、なんでティッシュやらコーラやら花束やらがくず鉄化するんすか?! 物理法則とかどこ行ったんすか!」
うん、どこ行ったんだろうね…と、見ている方も思わず目を逸らしたくなる。
「…ちょっと待った」
クロムは最後に転がって来た、元は花束だった筈のくず鉄を手に取った。
「花束? 花束って生花っすよね。て事は、まだ生きてるんすよね」
もしかして:生物もくず鉄化する?
「さ、流石にこれは倫理的に実験出来ないっすけども」
クロムはちらりと門木を見る。
問題ないと言われたら、喜んで門木を実験台にしそうな目つきに見えるのは、たぶん気のせい。
ただ、元生物を全く別の物に変換する技術なら心当たりがないでもなかった。
「まさか強化って、ディアボロやサーバント作るのと原理的には同じ技術?」
でも、それなら門木が原理を知らないのはおかしい、か。
「…振り出しに戻ったっす」
さて他にAがBになるような事象は何かあるだろうか。
クロムは脳味噌を雑巾絞りしながら、手持ちぶさたに氷結晶の塊を作り出してはごろんごろんと床に転がす。
「アウルは氷や火に変化させられるっすけど…、…ん?」
何か閃いた?
結論:物を熱する時、それが適度なら望む成果を得られるが、失敗すると炭化する。この場合、元が食物でも布でも大抵は共通して炭化する。これと同じように、物を強化する時に最適でない量のエネルギー(アウル?)を与えられる事で、炭化ならぬくず鉄化を引き起こすのではないだろうか。
寸評:つまりは「やりすぎちゃった、てへっ☆」という事だな。
●フランツィスカ=K=レンギン(
jb6455)の回答
「まずはくず鉄について考えてみましょう」
先人達の多大な犠牲を伴う実験により生成された4個のくず鉄を前に、フランツィスカは考え込む。
「科学室で生成されるくず鉄の大きな特性は…」
以下、沈思黙考する彼女の脳内を言語化し、スクリーンに投影した結果である。
第一に装備や道具類だけでなく食物までもがくず鉄へと変成すること。またこれと類似した現象として、一定の確率で別の装備、道具類および食物へと突然変異する事も忘れてはならない。
第二にある状態を超える事でくず鉄の生成確率が上がって行くことである。そして、一度くず鉄となったものはそれ以上強化することも変化することもできない。
先に挙げた第一特性から考察されることは、食べ物すらくず鉄になるということは、装備や道具類が壊れてくず鉄と化している訳ではないという事である。ということは、全てのものがくず鉄という物質に完全に変化する一種の錬金術的な力が働いていると言えるのではないだろうか。
第二特性で着目するべき点は、一定の法則の元にくず鉄の生成確率が上昇する事である。
これらを踏まえて私は一つの仮説を組み立てるものである。
全ての物質には一定の可能性と呼ばれるものが存在するのではないか、と。
回答:原則的には原料から特定の物質へと生成されたことで、その可能性は基本的に無くなるものであるが、科学室での強化は物質の中に内在する可能性を物質の強化という形で消費しているのではないか。そして、その可能性を一度に全て変換することでくず鉄の生成や突然変異と言った現象を引き起すのだと推察される。
「これをもって、私のくず鉄生成原理の考察と致します」
寸評:くず鉄は可能性、つまりは未来を使い果たした過去の絞りカスの様なもの、という事か。どうりで、それ以上は強化も変異も出来ないわけだ。
●ルーネ(
ja3012)の回答
「くず鉄とは突然変異の究極形ではないでしょうか」
ルーネは元はコーラやいちごオレだった筈のくず鉄を手に取りながら、まずは強化についての考察を巡らせる。
以下、やはり脳内の思考投影である。
魔具魔装はヒヒイロカネにアウル運用の為の強化を行っているのだろう。
では食料はどうやって強化を行っているのか。
我々人類はアウルを目覚めさせることによって身体能力が強化される。そのアウルは異界の影響により発現した能力である。
これがもし人体以外にも作用するのだとしたら。
数多の撃退士や天魔が過ごす学園。知らぬうちに力の一端が漏れ出ていないとは限らないだろう。
それらが一番集まりやすいのが科学室で、強化の作業をする時に流れ込んでいるのなら。
素材の強化をアウルが行い、結果、物攻や魔攻といった存在しない力が時折付与されるのかもしれない。
因みに強化しても回復力は変わらない。
次に、突然変異はどうか。
上記を正しいと仮定して考えると、突然変異はアウルによる強化に耐えられなかった素材がアウルによって再構成される事で発生しているのではないだろうか。
強化の際に流れ込む力の配合により、強化される項目が変化する。魔具魔装ならヒヒイロカネに刻まれた装備の性質にもよるだろう。
それらが一度に変化出来る規定値を超えていたら。
自壊するのを防ぐ為、注入されたアウルが自らを受け止められるよう素材や性質を再構成していると考えられないだろうか。
結論:食料が何故ヒヒイロカネの魔具になるのか、またはその逆が何故起こるかはまだ仮説が立たない。だが、再構成して結局自壊した物。それがくず鉄なのだろうと思う。
「どうですか、先生っ!?」
寸評:科学室はミステリーゾーンだったのか。ならば場所を変えればくず鉄化は起きなくなるのだろうか。
●森田良助(
ja9460)の回答
「皆、逆に考えてみない?」
良助は教壇に立ち、熱の籠もった目で教室を見渡した。
「くず鉄になったんじゃなくて『元に戻った』だけなんだって。どういうことかって? 簡単なことだよ…!」
「つまり、この世にあるものは元々全てくず鉄だったんだ!!」
これぞ、万物くず鉄起源説。
「魔具も魔装も食料品も! 果ては天魔や僕たち人間に至るまで、元々全部くず鉄だったんだ!」
これまでの科学や歴史から宗教まで、全てをひっくり返す衝撃的な新説だ。
「『くず鉄が突然変異』を起こし、僕達が生まれたんだよ! たまに強化したものが別の物に突然変異するのは、その名残なんだ!」
良助の熱弁は続く。
「そして今日も動物は子孫を増やし、魔具や魔装などの道具は何万個と工場で製造されているんだ…!」
「何れはこの世をくず鉄が支配するために…!」
「僕たちは自分がくず鉄だったことも忘れ、愚かにもくず鉄を増やすために生きていたんだ!」
「強化したものがくず鉄になるのは『先祖返り』!」
「くず鉄に変化したんじゃない!」
「『元に戻った』だけなんだ!」
ここで良助は声を潜める。
それと共に、何故か教室の窓には暗幕が引かれ、明かりが落とされた。
真っ暗な教室に良助の静かな声が響く。
「そして、その『先祖返り』を行う者こそ真のくず鉄…! 僕たちの母…いや、王といったほうがいいかもしれない!」
つまり。
「強化を担当している門木章治、あんただ!!」
声と共に、門木の姿がスポットライトに浮かび上がった。
「あんたは様々な物を強化する時に非常に少ない頻度で、大失敗と偽り『先祖返り』を行い、少しずつだけど確実に様々な物をくず鉄に戻しているんだ! 何れは自分がくず鉄の王として君臨しこの世を治めるために!」
どうだ、反論できるかっ!
つまり結論!
「くず鉄は『生成』してるんじゃなくて『元に戻ってる』だけなんだ! 」
こりゃ一本取られたわ! はっはっはっは!
寸評:そうか。人も天魔も、この世の存在は全て、くず鉄という根っこで繋がっていたのか。ならば、俺達がしなければならなかったのは、戦う事ではなく愛s(以下自粛
●下妻笹緒(
ja0544)の回答
「くず鉄生成原理を考察する」
満を持して壇上に上がったのは、もっきゅもきゅのパンダちゃん。
「まず皆が勘違いしているのが『実験結果によりアイテムがくず鉄になる』という固定観念だ」
「これがそもそもの間違いであり、くず鉄化の謎を迷宮入りさせてしまっている」
「なるほど、イメージ的には貴重な品が爆発、変化、変質し、スクラップになってしまった――その方が馴染みやすいし、違和感なく受け入れられるのだろう」
「だがしかし、その前提こそが実は大きく異なっているのだ」
「正しくは『アイテムがくず鉄になる』のではない『使命を全うしたアイテムがくず鉄に戻る』のだ」
「即ちくず鉄こそが世界を構成する基本骨子、原初の元素であり、万物は死した後、そこへと還る」
「武器であろうと食料品であろうとパンツであろうと、元を辿ればすべてくず鉄に行き着くのだ」
まさかの万物くず鉄起源説、再び。
そしてまたもや教室は暗転、門木にライトが当たる。
今度は何だ?
「門木章治(カドキショウジ)の名はアナグラムであり、正しく並び替えるとジドウショキカ」
正しいのか、それ。
「自動初期化、つまりはアイテムがフォーマットされ――その基本性能が素の状態へと戻ることを示しているのは、もはや語るまでもない事実と言えよう」
事実なのか!?
「なればこそ嘆くことはないのだ」
パンダはもふもふの手で、恭しくくず鉄を捧げ持つ。
「アイテムのくず鉄化は、愛用の品が天命を果たしたという紛れもない証左」
「万が一、嘘だと思う者がいるのならば、目の前にあるキーボードに聞いてみるといい…この情報は本当なのか、と」
結論:鉄の元素記号はFe。そこに全ての答えが書かれている。
寸評:何だ、その謎かけの様な答えは――
●総評
「おおっ!?」
キーボードに視線を落とした生徒達から驚きの声が上がった。
「先生、これ!」
良助が一点を指差すと、そこには。
「Fとeは、それぞれ日本語の『は』と『い』に対応してるんだ!」
つまりは、はい。イエスだ。
「まさか、これが真実なの!?」
フローラが驚きの声を上げる。
門木は眼鏡を直しながら不敵に口角を上げた。
「…万物くず鉄起源、よくぞ見破った」
うそ、マジ?
「…二人には、後で科学室に来て貰おう」
知られたからには生かしてはおけない。先祖返りの刑にしてやるふはははは。
「先生、なんかキャラ違ってないっすか?」
クロムがツッコミを入れる。
「って言うか俺のくず鉄、返して欲しいっす!」
ごめん、それは大人の事情で。
「だったら代わりに、先生の弁当貰って良いっすか?」
「…え」
後で大事に食べようと思ってたのに。
しかし、涙目になりかけた門木に「また作りますから」とレイラが言ってくれた。
「ですから…今度、先生の家に食事を作りにいって良いですか?」
いや、出来れば学校の調理室で。
家、帰ってないし。
かくして、科学の試験は何事もなく無事に終了し、全員が合格した。
何だ?
くず鉄が増えてる?
しかも人型に見えるだと?
…気のせいだ。