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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/08/21


みんなの思い出



オープニング


 秋田県大館市。
 北辺を青森県に接するその都市の一角に、総合病院があった。

 地域医療の中核を担っていたその病院は今、先日の悪魔マルコシアスによる襲撃を受けて、一時的に閉鎖されている。
 撃退士達の尽力により人的被害は最小限に抑えられたものの、病院としての機能を完全に回復するまでには、まだ暫くの時間がかかるだろう。
 現在、殆どの患者は近隣の病院で治療を受けている。
 だが総合病院にはここにしかない設備も多く、その使用がどうしても必要な患者も少なくない。
 その為、病院は再建工事を行う傍ら、それらの患者のみを受け入れていた。



「ずいぶん綺麗になってきたね」
 診察の合間に補修工事の進み具合を見物していた医師が、休憩に入った顔見知りの作業員に声をかけた。
 病棟を取り囲む植え込みの柵に腰を下ろした作業員は、紙コップにはいったコーヒーを飲みながら答える。
「ああ、もう最初はメチャクチャで、こんなもんブッ壊して建て直した方が早ぇと思ったんだがなぁ」
 やってみれば何とかなるもんだ、そう言って笑った。
「これなら九月の再開には間に合いそうだね」
「間に合わせるさ」
 被害を受けたのは、主に下層階。
 四階から上は窓ガラスが割れ、備品が散乱する程度で済んでいた。
 現在、真っ先に機能を回復させた三階部分と、上層の入院設備を使って患者を受け入れている。
「本格的に再開したら、のんびり散歩してる暇なんかなくなるぜ、先生?」
 作業員がニヤリと笑う。
「確かにね」
 医師は小さく肩を竦めて、苦笑いを返した。
「前は食事の時間も不規則になるくらい、忙しかったから……」
 だが、そんな日々が懐かしく思えるのも事実だ。
 身体を壊すほどに忙しいのは困るし、医者が暇で困るくらい皆が健康なら、それが一番ではあるのだが。
「なあ、先生」
 そろそろ仕事に戻るかと腰を上げ、作業員はふと思い付いた様に尋ねた。
「もう、大丈夫なんだよな?」
「大丈夫、とは?」
「襲撃とか、ねえよな?」
「……そうだね。ここを襲った悪魔は撤退したし、青森の方で暴れていた連中も撃退士達が片付けてくれたみたいだし……」
 もう大丈夫、そう言いかけた時。

 ――うわあぁぁぁっ!!

 何処かで悲鳴が上がった。
 見れば、正面玄関から作業員達が転がる様に走り出て来る。
 その後を追いかけて来るのは――
「何だ、ありゃぁっ!?」
 作業員が頓狂な声を上げる。
 見えたのは、異形の……何か。
 悪魔の襲撃の時に現れたものとは、また違う。
 まるで裸のマネキンの様なそれは、逆立ちをして歩いていた。
 いや、そうじゃない。
 足が付いているべき所に腕が、腕が付いているべき場所に脚が付いているのだ。
 そして、胴体から切り離された首は、ボールの様に両足の間に挟まれていた。
 身体は大人のサイズだが、顔だけはまるで赤子の様に丸く、胴体の大きさに不釣り合いなほど大きい。
 髪はなく、つるんとした顔には眉毛もない。
 鼻も口も、膨らんだ頬の肉に埋もれて目立たなかった。
 眼球があるべき場所には、顔の半分を占める程に巨大な、暗く陥没した穴があるばかり。

 薄気味悪い。

 それを見た者は、誰もが背筋に寒いものを感じただろう。
 首を投げられ、思わず受け止めてしまったそれが「にやり」と笑う様などを間近で見てしまえば――

「ギャアァァァッッッ!!!」

 理性を保つのは難しかった。




リプレイ本文

 病院の玄関からは、工事関係者達が次々と転がり出て来る。
 その流れに逆らって走りながら、蒸姫 ギア(jb4049)は叫んだ。
「そんなに慌てちゃ、危ないんだからなっ…ギア達が来たからもう大丈夫、余裕ある人は近くの人に手を貸すんだぞ」
 しかし、彼等のパニックは収まる気配を見せない。
 それもその筈、あんなものに追いかけられては――
「あの人形…センスが悪い、だからギア、それが許せないから。べっ、別に病院の人とか心配してるわけじゃ、無いんだからなっ(ツン」
 混乱して怪我しない様に気を遣ったりしてる訳でも、ないんだからなっ。
 戦闘の邪魔になるから、適当に誘導してるだけなんだからなっ。
「うはぁ。心が不安定になる形してはんなー…」
 その姿を見て、亀山 淳紅(ja2261)は寒気を感じた様に自分の両腕を擦った。
「ずいぶんとまた趣味の悪い敵ね……」
 蒼波セツナ(ja1159)も眉をひそめ、嫌悪に満ちた眼差しを向ける。
「さっさと倒してけりをつけてしまいたいところだわ」
「同感。こんな変な奴、早く倒しちゃおう」
 来崎 麻夜(jb0905)が頷き、周囲に目を向けた。
「被害が出てないのが救いかな、うん」
 少なくとも肉体的には。その代わり、精神的なダメージが半端ではない様だが。
 腰を抜かして座り込んでいる者、悲鳴を上げ続けている者、中には気を失っている者もいた。
 恐慌を来した者達に向けて、淳紅が高らかに歌い上げる。
「Qualsiasi cosa non ha che e preoccupato!」
 何も心配することは無いと、にっこり笑った。
「怖い夢は、ちゃちゃっと自分らが袋にいれてぽいぽーいしたるかんな! せやからもうちょっと、ここで待っててくださいな! やでー♪」
 黒いゴミ袋を旗の様に振りながら、淳紅はマネキン達に走り寄る。
 途端、異形のマネキンは慌てた様子で逃げ始めた。

 大部分は来た道を戻って病院の中へと引き返すが、中にはそこから外れて勝手な方向へ逃げようとするものもいる。
「むむっ! 大館の平和はあたしが守りますよ!」
 そこに立ちはだかったのは、地元出身の丁嵐 桜(ja6549)だ。
「ここから先は通しません!」
 どすこーい!
 エア突っ張りが炸裂し、マネキン達はその気迫に圧されて方向を変える。
 桜はそのまま行く先々に回り込み、土俵際ならぬ玄関先に追い詰め、押し込め、出口を塞いだ。
 繰り出す技は相撲そのものだが、小柄な身体でちょこまかと動き回りマネキン達を追い込んで行く姿は、まるで牧羊犬の様だ。
「きゃはーっ! 何だかあのマネキンさん、変なの☆」
 作業員の手に預けていた頭を引ったくる様に取り返し、逆立ち姿で逃げ惑う後ろ姿を、ユウ・ターナー(jb5471)は指を指して笑った。
 弾みで頭が転がり落ちそうになり、足でお手玉をしているものもいた。
「何処が変なんだろー…ね、クリスちゃん」
「さあ……」
 問われてクリスティン・ノール(jb5470)も一緒に首を傾げる。
「それにしても不思議な形の敵ですの」
 しかし、敵は敵。
「病院には沢山の護らなきゃいけない人が居ますですの。早くやっつけて、みんなを安心させますですの!」
 二人は不器用に走るマネキンを追って地下に降りた。
 既に阻霊符は使ってあるから、それ以上は逃げられない。行き止まりを悟ったマネキン達は再び反転、逃げ場を求めて階段を上がろうとする。
 が、そこには十八 九十七(ja4233)が待ち構えていた。
「雑魚がちょこまか幾つ出ようが、九十七ちゃんの敵じゃァねぇんですの。そこんトコ、表現規制モノのグロテスクにならない程度に、示さにゃならんですねぃ」
 その脇をすり抜けて、セツナは階段を駆け下りる。
「まだ人が残っているかもしれません」
 既に電気は通っているので、地下空間は明るい。
 呼びかけながら、工具類が散らばりケーブルが剥き出しになった廊下を走った。
 小部屋の一つに固まっている作業員達を見付け、セツナは彼等を引き連れて出口へと向かう。
 途中、慌てて逃げ去る影が見えたが、今はその方が都合が良かった。
(この人達の目の前で倒したら、精神的なショックが心配だものね)
 この病院に階段は三箇所あるが、マネキン達は最初に使ったらしい中央階段に集まっている。迂回路を探す知恵はない様だ。
 西階段に回ったセツナは作業員達を安全な場所へ逃がすと、防火扉を閉めた。
 次いで、東階段の扉も閉める。
 これで地下からの出口は仲間達が守る中央階段ひとつに絞られた。

 同じ頃、上層階には館内放送のアナウンスが響いていた。
『上の階にいる人は防火扉を閉めて、ボクらが行くまで近くの部屋に閉じ籠もってて』
 麻夜の声だ。
 受付に人影はなく、自分で機械を弄ってみたのだが、どうやら上手く行った様だ。
『動けない人がいるなら、そこに集まって動かないでね。奴等に扉を破る力はないし、足も遅いし、ただ気持ち悪いだけだから』
 マイクのスイッチを切ると、麻夜は淳紅と共に逃げ遅れた人々を護りつつ上の階へ――
「待って、急いだ方がいいだろうから…」
 呼び止めたギアが、二人の足に風神の加護を与える。
「万能たる蒸気の式よ、今鋼鉄の姿を現し、速く駆ける力となれ。これで慌てても、人界でいう所の階段落ちも防げるから」
 もし落ちたとしても華麗に着地を決められると真面目な顔で言い、ギアは自らも避難誘導に加わった。
「おおきに」
「ありがとう」
 自力で動ける者達を先に行かせ、三人は恐怖に固まった人々に手を貸し、或いは担ぎ上げて階段を駆け上がる。
「はいはーい! 皆さん上へ! 防火扉もばんばん閉めてってなぁ!」
 エレベーターはボタンを固定し、封じておいた。後は階段を一つ残らず封鎖すれば、二階より上は安全になる筈だ。
 途中で何体かのマネキンを追い越したが、‘Requiem’を聞かせて足を止め、スリープミストをかけてそのまま走り去る。
「大丈夫や。あれはもう眠ってしもうたで、よう起きんわ」
 避難を終えるまで、それは眠り続けるだろう。片付けるのはそれからだ。
 不安は煽らず、むしろ払拭する気概で。
 わざわざグロい光景見せる事もない。そのままの形でも、奴等は充分にグロいのだ。


 安全確保の連絡を受けて、階段の上に陣取っていた九十七は背後の防火扉を閉めた。
 これで九十七、ユウ、クリスティンの三人は敵と共に閉じ込められた事になるが、相手は所詮、逃げるだけしか能がない雑魚だ。

「さァて、始めましょうかねぃ」
 出口を塞がれ立ち往生したマネキン達に向けて、ピアスジャベリンを放つ。
 ボウリングで見事ストライクを取った時の様な、小気味良い音が辺りに響いた。
 転んで頭を放り出したマネキン達が、自分のそれを探して右往左往している。
「どれでも同じでしょう?」
 ゴミ袋に入れようと、転がった頭の耳を掴んで持ち上げた途端。
『おぉ〜ん、ぅおぉ〜ん』
 まるで年寄りの様に泣き出した。
 低く引きずる、腹の底に染みる声。まるで怨霊だ。
「勘弁して欲しいですね、ええ、はい」
 表向きは冷静を保ちつつ、狂化メーターは確実に上がっていく。振り切れるのも時間の問題だろう。

 階段のすぐ下では、ユウとクリスティンがマネキン達を迎え撃っていた。
「クリスはユウねーさまの盾となって動きますですの!」
 前に出たクリスティンがレアメタルシールドを構える。
 相手の攻撃は全て受け止める覚悟だった。
「まずはあの、弱点とばかりにひけらかしてる頭を狙っちゃうンだカラ☆ ふふふ…ユウ、この時の為にこんなのを持ってきたのだーーー!」
 じゃーーんっ!
 自慢げに取り出したのは、釘バット。
「ホームラン、打っちゃうよーっっ☆」
 せーの、カッキーン!
 ……なんて、爽やかな音は響く筈もなかった。
 ぐしゃっと言うか、ぶちゃっと言うか。
 血飛沫その他のナマっぽい何かが飛び散って、壁や天井に真っ赤なシミを作る。
 勿論、至近距離でぶっ飛ばしたユウの全身も、大変な事になっていた。
「…、……、………キモチワルイ」
 クリスティンの盾も、返り血には無力。
「ユウねーさま、大丈夫ですの?」
「…うん、クリスちゃん。ここは剣と弓で凌ごうねっ♪」
 超イイ笑顔でそう言うと、ユウは弓でマネキンの眉間を射貫いた。
 うぉ〜んと泣きながら逃げるそれをクリスティンが追い、手の形をした足を狙って剣を振る。
 カランと軽い音がして、マネキンが膝……いや、肘を折った。
 そこに得物を剣に持ち替えたユウが飛び込み、下から力一杯逆袈裟に斬り上げる。
 再び、天井が真っ赤に染まった。

「大切な故郷は、あたしが守ります!」
 玄関を塞いだ桜は四股を踏み、柏手を打って気合いを入れる。そんな事をしなくても、最初から気合いは入りまくりだが。
 故郷を守る戦いとあって、桜はめちゃめちゃ燃え上がっていた。
「よっ…ドスコーイ!」
 どーん!
「ふーっ…」
 パーン!
 小さな身体が何倍にも大きく見えた。
 その間にも、外へと脱出を計る人々が桜の脇をすり抜けて行く。
 と、その中に紛れてちゃっかり通り抜けようとしたマネキンが一体。
「あんたは違うでしょ!」
 ばちこーん!
 張り手をかます。足の間に挟んだ頭が、勢いよく吹っ飛んだ。
 間髪を入れずに突っ張りで押し返し、押し倒す。
 最後は必殺の今生投げ。胴体を頭上に抱え上げ、床に全力で叩き付ける。
「うおおおっ! どっせーーい!!」
 乾いた音がして、マネキンはバラバラに砕け散った。

「逃げちゃ、ダメだよ?」
 クスクス。
 二階から戻った麻夜はShadow StalkerとSilent Danceで気配と足音を消してこっそり近付き、レヴィアタンの鎖鞭でマネキンの足元(と言っても形は手だが)を払う。
 関節が外れ、腕が転がった。
 一体、また一体と、その場に尻餅をついていく。
「さ、ボクと踊ろう?」
 Dancer in the Dark。右半身に闇を纏い、影を引き連れて踊る様に攻撃を加える。
「あぁ、でもその格好じゃ上手く踊れないかな?」
 まともに立っているものは一体もいなかった。

「よう眠っとるわ」
 気味の悪いサーバントも、寝顔は可愛い……わけはなかった。
 淳紅は頭部を黒いゴミ袋に突っ込むと、その身体にゼロ距離のマジックスクリューをねじ込む。
 全ての関節が外れ、パーツが床に転がった。
 同時に、ゴミ袋の中から怨霊の如き泣き声が湧き出して来る。
 腹の底に染みる声は、まるで攻撃力があるかの様にはらわたを抉った。
 それを無視して袋の口を縛り、部屋の隅に放り投げる。
 泣き声が少し、小さくなった気がした。

「飛んだり跳ねたり、という事は……流石にないわね」
 星煌の腹で叩き砕いたマネキンの身体。
 そこから転がり落ちた頭を見て、セツナはほっと息を吐いた。
「でも、噛み付く位は有り得そうよね」
 慎重に、慎重に。
 そーっとつまみ上げ、ゴミ袋に入れる。
 それは途端に例の泣き声を上げたが、セツナは眉一つ動かさなかった。

 黒いゴミ袋に入れられた頭が大合唱で泣き喚いている。
 その山に最後のひとつを加え、桜が満足げに言った。
「一階の敵は、これが最後ですっ」
 残るは地下に籠もった敵だけだ。
 一緒に閉じ込められた三人からはまだ何の連絡も無いが、果たして無事なのだろうか。
 いや、苦戦する様な相手ではないから、無事ではあるのだろうけれど。

 地下に通じる中央階段の防火扉を、そっと開けてみる。
 その隙間から鼻をつく異臭が立ち上り、ギアは思わず扉を閉めた。
 ここに、もう敵はいない。
 と、そこにクリスティンからの連絡が入った。
『只今、残ったマネキンさん達を西階段に追い詰めましたの』
 わかった、それなら挟み撃ちだ。
 ギアは西階段の防火扉を開けた。クリスティン達に追われて階段を駆け上がって来る一団が見える。
「やっぱりセンス悪い…特に、手足とか逆に付いてるのが、ギアいらいらするんだからなっ、設計ミスなんだぞ」
 ギアはそこに向けて閉じた飛鷲翔扇から炎陣球を放った。
「噴き出す蒸気で纏めて焼かれるがいい…更にこれもとっておきなよ」
 ついでにギア状に広げた扇に、闘刃武舞を乗せる。
「行け、蒸気の歯車達!」
 無数に分裂した刃が舞い、マネキン達を切り刻んだ――その頭部もろとも。

「これは……ずいぶん派手にやったものね」
 地下フロア全体に飛び散った赤や薄黄色、ピンク色をしたモノを見て、セツナが軽く溜息を吐いた。
 スプラッタには耐性がある方だが、これを全部、綺麗に片付けなければならないのかと思うと、少し心が折れそうになる。
 と、そこに――何やら描写不能なスラングを声高らかに叫びながら現れたのは。
「■ ■ ■ ■ ▽▽▽▽××××ピーーーーー!!」
 両手にゴミ袋をぶら下げた九十七だった。
 袋の中にはマネキンの頭部が入っている筈だが、それにしては形が崩れ、殆ど液体になっている感さえある。
「おぅ、こん中見るかてめーら! ヒャーッハッハッハ!」
 いえ、結構です。何となく想像は付くし。
 恐らく敵の頭を集め、後で纏めて消毒というくだりは覚えていたのだろう。だから一応、袋には詰めた。
 だがその後、彼女はそれを武器にして殴りかかったり、蹴り飛ばしてみたり、或いはサンドバッグにしてみたりと……まあ、色々とお試しになったに違いない。
「天魔ぶちころ大正義ーっ!!」
 戦利品を高く掲げ、九十七は勝利の雄叫びを上げた。



 病院の裏庭、一目に着かない片隅で、黒いゴミ袋はひっそりと燃やされた。
 セツナと淳紅のファイアーブレイクに、九十七のグレネード弾、麻夜 のNight Rainbow、ギアの炎陣球……炎っぽいスキルのありったけをぶち込んで、最後にクリスティンのトーチを添える。
 これで一斉火葬は完了だ。残った残骸は、然るべき組織がきちんと処理してくれるだろう。
「ヘンテコな敵さんは、クリス達がやっつけたました。もう大丈夫ですの」
 笑顔で伝えるクリスティンに、避難していた人々は一様に安堵の色を浮かべた。
「なら、もう工事は再開出来るのか?」
 時計を見ながら現場監督らしき人が尋ねる。
「地下の内装が遅れ気味でな、出来れば残り時間で少しでも進めておきたいんだが」
「あー、えーと、それはー」
 ユウが何とも苦しそうな笑顔で答えた。
「もうちょっとだけ、待ってて貰えるかなっ☆」


 この現場は、とても一般の方々にお見せ出来る代物ではない。
「まあ、潰れちゃったものは仕方ないよね」
 麻夜がニッコリと微笑む。
 そこはどう見ても、猟奇殺人の現場だった。
 欠片の一片も、シミひとつさえ残さず、綺麗に片付けなければ。
「…特に頭は絶対、だね……」
 ユウが少し引き攣った苦笑いを浮かべる。
「頑張りましょうっ!」
 桜が人一倍の気合いを込めて言った。
 この病院に「何かが出る」などという噂を立てない為にも、徹底的に。

(そうだ、これが終わったら……)
 桜は思う。少し実家に寄ってみようか。
 いきなり顔を出したら、びっくりするかな――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

憐憫穿ちし真理の魔女・
蒼波セツナ(ja1159)

大学部4年327組 女 ダアト
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
胸に秘めるは正義か狂気か・
十八 九十七(ja4233)

大学部4年18組 女 インフィルトレイター
序二段・
丁嵐 桜(ja6549)

大学部1年7組 女 阿修羅
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー
ツンデレ刑事・
蒸姫 ギア(jb4049)

大学部2年152組 男 陰陽師
繋ぐ手のあたたかさ・
クリスティン・ノール(jb5470)

中等部3年3組 女 ディバインナイト
天衣無縫・
ユウ・ターナー(jb5471)

高等部2年25組 女 ナイトウォーカー