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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/10


みんなの思い出



オープニング



 俺が戦い始めたのは、いつの事だったか。
 久遠ヶ原に入学したのは高校生の頃……もう十年ほどになる。
 学園内にゲートが出現した、あの大惨事を生き延びた俺は、卒業後フリーの撃退士になった。
 それからも、ずっと戦い続け、天魔を屠り続けて来た。

 だが、奴等の数はちっとも減らない。
 それどころか勢いを増している地域すらある。
 やっとの思いで名のある将を追い詰めても、そこまでだ。
 その先、撃破まで至る事は多くない。

 俺は十年間も、ずっと腕を磨いて来た。
 それでもまだ、力が足りないと言うのか?
 ならば、どこまで行けば奴等と対等に渡り合える?

「俺達の戦いは……役に立っているのか?」

 今日もまた、天魔が現れたという一報が届く。
 だが、どうにも腰が重い。
 そいつらを片付けても、また明日には別の場所で同じ様な事件が起きる。
 俺達には、止められない。

 そう思いながらも、俺の足は指定された現場に向かっている。
 もう脊髄反射の様なものだ。
 何も考えなくても、戦い方は身体が知っている。
 やる気がなくても、ディアボロ程度の相手はどうにでもなる。
 やる気があっても、それ以上の敵には歯が立たない。
 今までもそうだった。
 きっと、これからもずっと。

「やってらんねぇな……」

 そんな事を考えながら戦っていたせいだろうか。
 気が付けば、たかがディアボロ相手に……俺ひとりを残して部隊は壊滅していた。
 倒れた仲間達の命に別状はない様だが、とても戦える状態ではない。

 何だ?
 どうなってる?
 こいつら、雑魚じゃなかったのか?

 真昼の繁華街での襲撃。
 今までに何度も経験したパターンだ。
 まずは人々を避難させ、透過を阻止し、それからゆっくりと片付ける。
 それで何も問題はなかった筈だ。
 なのに何故、俺は敵に囲まれてる?
 相手は地獄の番犬の様な、三つ首の犬。
 破壊力のある相手ではあるが、後れを取る事は万が一にもない筈だ。
 なのに……

 そう言えば、仲間達も言っていた。

 ダルい。
 ヤル気が起きない。
 どうせ無駄なのに。
 戦う意味がわからなくなった。
 そろそろ引退したい。

 俺と同じだ。
 それでも、なかなか踏ん切りが付かずに戦い続けてきた所も。
 いっそここで再起不能にでもなれば――




「撃退庁から救援要請だ」
 養成所の職員が言った。
「敵は三つ首の大型犬ディアボロ多数。場所は町の中心部だが、一般人の避難は完了している」
 一報を受けて向かったのは、ベテランの撃退士五人のチーム。
 本来ならその程度の敵に対して後れを取る者達ではない。
 しかし、今日の彼等はいつもと様子が違っていたという。
「いや、敵の能力で精神に変調を来したという訳ではないらしい。なんでも、少し前から何となく様子がおかしかったそうだ」
 同僚の中には「戦う事に疲れた」と、そんな言葉を聞いた者もいる。
 そのせいか、今日の彼等は動きに精彩を欠き、その結果……ほぼ全滅という事態に至ったのだ。
「急げばまだ間に合う。どうか、命まで落とす前に彼等を助けてやって欲しい」
 物理的な救助は勿論、出来れば精神的な面も含めて――



リプレイ本文

 救援に駆けつけた撃退士達の姿を見て、三つ首の犬達が唸りを上げる。
 だが、今はその相手をしている暇はなかった。
(戦う事に疲れた、か…)
 ざっと戦場を見渡した宇田川 千鶴(ja1613)は、まず向かうべき場所を仲間達に伝える。
(ま、それでも放ってはおけんね)
 通りの向こう、立入禁止のロープが張られた駐車場の一角に、犬達が群がっていた。
 その途中にも倒れている人影が見えたが、敵は動かない獲物には興味を示さない様だ。
 ならば、まずはあの場所へ。
「先行して敵を引き付けるわ。救援の方、宜しくね」
 月臣 朔羅(ja0820)がそれに続き、ビルの壁を駆け上がる。
 新米鬼道忍軍の鬼灯丸(jb6304)も、二人の先輩に続いた。
(戦う理由がわからなくなった、やる気が出ない…ねぇ)
 アハハ!
 思わず声が漏れた。
「…ムカつく!!」
 無事に助け出して、ガツンと言ってやらなければ。

「…もう、駄目かな」
 覚悟を決めて目を閉じた時、男の頭上から誰かの声が聞こえた。
 助けに来たと、そう聞こえた気がする。
 思わず目を開けた彼の目の前に、黒い球体が投げ込まれるのが見えた。
 そこから伸びた何か得体の知れないものが、敵を格子状に抉り抜いていく。
 次の瞬間、今度は女の子が降って来た。

 朔羅が虚格牢月を放った直後、千鶴は敵との間に割って入る様に飛び込んだ。
 男に背を向けたまま八岐大蛇を一閃、その一撃を食らった敵は身体の自由を奪われる。
(手の届く人達だけでもと必死で戦っている自分も、戦う日々に『疲れた』と思う時がない訳やない)
 だから余り強くは言えない。
 でも、助けられた人はきっと彼等を覚えていて、何かあったら悲しむと思う。
(私やったら多分そうやから)
 よく考えた上で引退を決めるなら、止めはしない。けれど自棄にならないでほしい…その人達の為にも。
(とは言っても、言葉にして伝えるのは得意やないし)
 せめて自分達が戦う姿を見て、何かを感じてくれたなら。
 それを狙って、千鶴は敵の群れに飛び込んで行った。
 敵の目を自分に惹き付けながら動き回り、動き続け、隙あらば刀で斬り付ける。
 その間にも、朔羅は高所からの攻撃の手を休めなかった。
「目の前の獲物にばかり目を向けていると――抉るわよ?」
 自分に注意を向けさせつつ、壁面を利用して反撃を避けながら、味方の攻撃が当たりやすい位置へと誘導する。
 追い付いて来た鬼灯丸に対して、一頭が完全に背中を向けた。
「そこ、貰った!」
 鬼灯丸はその背中に向けて影手裏剣を投げ付ける。
 無防備な背中に攻撃を受けた犬は唸り声を上げて鬼灯丸に向き直るが、その頃には後続の仲間達が駆けつけていた。

「邪魔だ」
 鬼無里 鴉鳥(ja7179)が虚空刃を放つと、犬達の群れを直線状に切り裂いて斬光が走る。
 鴉鳥が作った道を、仲間達が駆け抜けて行った。
「先輩達のピンチですわ。いそいで助けないといけませんわね」
 クリスティーナ アップルトン(ja9941)は入口のロープをひらりと飛び越え、ポーズを決める。
「『久遠ヶ原の毒りんご姉妹』華麗に参上! ですわ」
 厳密に言えば「毒りんご姉妹の姉」だが、細かい事は気にしない。
「流星の渦の中で果てなさい! スターダスト・イリュージョン!!」
 「閃光」の異名を持つ透き通った刃から放たれた、流星の様な光が敵を貫いた。
「遅くなってすみません、あとは私達に任せるのですわ!」
 声を掛けられ、撃退士は僅かに頷いたかに見えた。或いは、ただ俯き顔を伏せただけかもしれないが。
 その彼を背に、クリスティーナはシールドを展開して攻撃を阻む。
「ぎりぎり間に合ったか。まずは敵陣を切り崩さないとね」
 その様子を確認したグラルス・ガリアクルーズ(ja0505)は、安堵の息を吐いた。
「押し流せ、太陽の炎よ。ヘリオライト・ウェーブ」
 残った敵に荒れ狂う炎が飛び掛かり、呑み込んでいく。
 その間にハイドアンドシークで潜行した蔵里 真由(jb1965)は、一気に前線に飛び出すと切り裂く炎の右手を撃ち込んだ。
「対象識別完了、太陽の如く…溶かせ!」
 無数の赤く光る方程式が溢れ出し、敵を焼き払う。
 犬達は度重なる範囲攻撃により反撃も出来ないままに数を減らし、或いは刀の錆となって散っていった。


「ここはもう大丈夫みたいだね」
 救急箱を抱えて、稲葉 奈津(jb5860)が撃退士の元へ駆けつける。
「ダッセ…あんなんにここまでやられて…本当にベテラン?」
 優しく丁寧に応急処置を施しながら、しかし口から出るのは悪口雑言。
 共感する所もあるが、ここは心を鬼にして、言葉にするのだ。
 そうしなければ、きっと…このまま駄目になってしまうから。
「あんた、名前は? それとも恥ずかしくて名乗れない?」
 問われて、撃退士はぽつり「香西」とだけ答えた。
 フルネームでないのは、やはり恥じる気持ちがあるからだろうか。
「カサイさん、ですね」
 手当てを終えた所に、真由が声をかける。
「まだ動けますか? 倒れている人を一箇所に集めます」
 可能ならば手伝って欲しいと、暗に誘いをかけてみたのだが。
 どうやら動く気はなさそうだ。
 それならそれで構わない。やる気もないのに下手に動かれても、足手纏いになるだけだ。
「では、この場所に皆さんを集めます」
 グラルスが言った。
 ここならある程度の広さもあるし、建物の壁を背にすれば守るのも楽だ。
 グラルスとクリスティーナが護衛としてその場に残り、他の仲間達は戦闘不能となった者達の回収へと散って行った。

 倒しても倒しても、敵は匂いを嗅ぎ付けて集まって来る。
 だが、数は多くても個体の能力はそれほどでもない。駆け出しの撃退士でも、全力で挑めば互角以上の戦いが出来る。
「来いよ! わんちゃん! まだ遊び足りないでしょ? あたしが遊んでやる!」
 鬼灯丸は再び壁を駆け上がると、飛来するブレスを避けながら苦無や手裏剣を投げる。
 真ん中の首はそれほど長くは伸びない様で、鬼灯丸の所までは届かなかった。
 が、至近距離で正面に対した相手には容赦なく伸ばして来る。
 ふいに伸ばされた首を叩き落とし、千鶴は敵の側面に回り込んだ。
 追いかけて来るブレスを避けつつ仲間の前に誘い出し、影縛で動きを封じる。
 そうして何体かを集めた所に、朔羅の虚格牢月が再び捕らえた。

 戦闘不能者の回収に向かった奈津には、鴉鳥が護衛に付いた。
 彼等の生死など殆ど興味はないが、仲間達が助けると言うならば協力は惜しまない。
 鋒刃獄を発動させた鴉鳥は、反撃の隙さえ与えず一刀の下に斬り捨てる。
 その間に、奈津は町の各所に倒れ伏している撃退士達を探して拠点へと運んで行った。
「虚しくなっちゃう気持ち…わかるな…でも、結局どう感じるかは自分次第なんだよね!」
 それにしても、重い。
 意識があるなら多少は軽くなるのだろうが…
「ほんっと面倒臭い! さらに怪我おってないよね?」
 悪態を吐きながらも、扱いは丁寧に。

 何処かで助けを求める声がした。
 その声を頼りに、朔羅と千鶴、そして真由の三人は急いで救助に向かう。
 一般人はもう避難を終えている筈だから、声の主は先行した撃退士の誰かだろう。
 ベテランだという話だったが、何と情けない…とは言え。
「なんにしても放っては置けません、対処を 」
 真由は徘徊していた敵の殲滅を二人に任せ、雷帝霊符による援護に回る。
 ちらりと見えた要救助者は、片腕の肘から先が潰れて血に染まっていた。
 恐らく切断するしかないだろう。
 その姿を見て、真由はかつての自分を思い出す。
『切り落とす位ならこのまま死なせて欲しい』
 あの時の救助隊員達は、そう言って泣く彼女に「それでも生きるべきだ」と説いた。
 だから今、手足を失っても尚、真由は死に物狂いで生きている。
 この男はどうだろう。
 足元に銃が落ちている所を見ると、インフィルトレイターの様だが――

「孔雀の息吹よ、すべてを撃ち抜け。マラカイト・ブラスター」
 近付いて来る敵に向けて、グラルスは淡い緑色の光線を一直線に撃ち出した。
 それが尽きればジェット・ヴォーテクスへと変更し、固定砲台としてひたすら撃破を続けながら、背後の香西に話しかけた。
「貴方達は自らの身を危険に晒し、しかも僕らに格好悪いところを見せて、恥ずかしくないのですか?」
 返事はない。しかしグラルスは構わず続けた。
「しかも明らかに後輩であろう撃退士に助けられ、こんな風に言われて、悔しくないのですか!?」
 少しでも恥ずかしいと、悔しいと感じるなら、自分の戦っている姿を見て心が動かない筈はない。
 それで、考え方を改めて貰えれば――

 傍らではクリスティーナがレラージュボウによる射撃で敵を撃ち倒していた。
 それ以上、近接攻撃の間合いには近付けさせない。
 やがて怪我人が運ばれて来る頃には、敵の姿は一掃されていた。
「よく、持ちこたえてくださいました。貴方のおかげで被害は最小限に抑えられました」
 項垂れたままの香西に、クリスティーナはにっこりと微笑む。
 どうやら嫌味を言っている訳ではない様だが…情けない役立たずという自覚がある彼にとっては、なじられるよりも余程堪えた事だろう。
「俺は、何もしてない」
 しかし、クリスティーナは柔らかな微笑みを浮かべたまま。
 誰でも、疲れたり悩んだりしたときは気持ちが落ち込むもの。やる気が出なくなる事だってあるだろう。
 気持ちが切れたのなら、無理に撃退士を続ける事もない。
 直接天魔と戦わずとも、社会を支える事は出来る。
 けれど、もし彼等が自分達の姿を見て、何かを感じたならば。

 だが、他の仲間達はそれほど甘くはなかった。
 応急手当を終えた奈津は、彼等の前で腰に手を当てて仁王立ちになる。
「さぁーて言わせてもらうよ?」
 前置きをして、大きく息を吸う。
「やる気がねーなら辞めなっ!」
 まずは一言。
「もし、私があんた達と依頼に来てたらって思うとゾッとするね」
 怪我人を相手に容赦なく罵る。
 全員の手当が終わり、話が聞ける状態になるのを今か今かと待ち構えていた鬼灯丸が、そこに加わった。
「ねぇあんた達、戦う意味がわからなくなったとかやる気が出ないとかなんなの? いい年して甘ったれないでよね!」
 どさり、血の滴る犬の生首が、彼等の目の前に投げ捨てられる。
 先程の戦いで切り落としたものだ。
「あたし達が戦ってる姿を見ていて何も思わないなら撃退士なんかやめちまえ!」
 駆け出しの鬼灯丸でも、この程度の事は出来るのに。
「まがりなりにも、多くの人達助けてきたんでしょ?」
 奈津が続ける。
「それなのに…自分の目の届く範囲の事ができない奴に何も変えらんない? あたりめーだろっ!!」
「ベテランであるが故の落とし穴、とでも言うべきかしら。漠然と戦い続けてきたせいで、足元が見えなくなってしまったようね」
 朔羅が言葉を継いだ。
「貴方達の戦いは、本当に無駄だったのかどうか。今までに助けてきた人達の顔を思い出しながら、良く考えてみたらどうですか?」
「助けた方にとっては、大勢の中の顔も覚えていない誰か…なのかもしれんね」
 千鶴がぽつりと呟く。
「でも助けられた方はきっと、一生忘れる事はない」
 その恩人が、こんな形で引退してしまうとしたら…
「『人を救う』という行為は、決して無駄ではない。――いいえ、無駄にしてはいけないのよ」
「そうだよ! それにさ、過去の自分にも失礼なんじゃないの? 頑張った自分を裏切ってんじゃん!」
 朔羅の言葉を受けて、奈津が憤然と言い放つ。
「貴様等は、何を想って天魔と戦うと立ち上がった? 何を抱いて剣を執った?」
 鴉鳥の問いかけに、香西は逆に質問を投げてきた。
 お前達はどうなんだ、と。
「僕が戦うのは、1人でも多くの人を天魔の脅威から救うため。そして後に続く後輩達の先導者になるためです」
「守らなければならない人達がいて、私にはその人達を守る力がある。私が戦う理由は、それで十分ですわ」
 グラルスとクリスティーナが答える。彼等には何の迷いもない様に見えた。
「俺達も、昔はそうだったよ」
 でも今は――
「戦う事に疲れた?」
 鴉鳥が吐き捨てる様に言う。
「――笑わせるなよ、屑共が。貴様等の初志と誓い、諸共に失せたと言うのならば――その想いも向けた相手も、皆総て取るに足らぬ塵芥か。嗤えるなぁ、おい」
 勿論、その顔は笑ってなどいない。
 嗜好に合わないという部分もあったが、見ていられない様だからこそ、言葉は冷酷なまでに厳しく。
「貴様等は一つ思い違いをしている。生きる事こそ即ち戦いに他ならない。撃退士としての戦闘など、その形の一つに過ぎん」
 生は刹那の如く短い。
 故に輝ける燃焼を。その刹那を駆け抜ける疾走を。
 その在り方こそ、尊くも好ましい。
 惰性に溺れる暇などない。そうした者は――悉く、塵だ。
「再起不能?」
 ちらり、鴉鳥は腕を失う事になるだろう一人を見た。
「――優しいな。いっそ死ねよ、生きるだけ無駄だ」
「でも、その前に…」
 真由が無傷で残った男達の手足を物欲しそうに見つめる。
「私にくださいよ、それ」
 冗談…には聞こえなかった。
「あなた達もう戦わないのでしたら、いらないでしょう?」
 だったら、死ぬ前に是非。
 撃退士としてはもう誰一人救えなくても、生体パーツの提供という形なら。
 別に、撃退士なんか嫌なら止めればいいのだ。
 自分達の戦いが総て無意味だったと、自分達の助けた人に価値など無かったと認めるならそうすればいい。
「生きる事はそれ自体が戦いです。それに疲れたと言うのでしたら、もう自分には何も無いと仰るのでしたら、ここがあなた達の終着なんでしょうね」
 だが、自分は違う。
 手足を失っても尚、戦い続ける。
 何の為に?
「この義肢幾らするとお思いです? 手入れするだけでも随分な額が飛んでいくんですよ? 孤児院にも送金しないといけませんし」
 そう、金の為だ。
「お金が総てじゃないとか抜かす輩はお金に困った事が無いから言えるんですよね」
 金がなければ、自由に歩き回る事さえ出来ない。
 しかし金さえあれば、生きて、戦える。
 戦わない事は、緩慢な自殺だ。
 それは彼女にとって侮辱に等しい。
「お前の、それ…」
 血塗れの腕を抱えた男が言った。
「ええ、全て義肢です」
 それを聞いて、男は顔を上げる。
「どこで造ったんだ?」
 そう尋ねた彼は、もう大丈夫だろう。
 残りの者は…
(ここまで罵倒されて奮える怒りも意志もないのなら、やはりその程度と言う他ないな)
 鴉鳥は思う。
 この程度で終わるのか、それとも。
「大丈夫…情熱とか忘れちゃってたとしても…思い出せばいいだけだよ…」
 最後に奈津が言った。
 それまでとは違う、柔らかな空気を纏いながら。

 大丈夫、思い出せる。
 少し時間はかかるかもしれないが、後輩達の戦う姿はその言葉と共に、彼等の心に焼き付いている筈だから――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

雷よりも速い風・
グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)

大学部5年101組 男 ダアト
封影百手・
月臣 朔羅(ja0820)

卒業 女 鬼道忍軍
黄金の愛娘・
宇田川 千鶴(ja1613)

卒業 女 鬼道忍軍
斬天の剣士・
鬼無里 鴉鳥(ja7179)

大学部2年4組 女 ルインズブレイド
華麗に参上!・
クリスティーナ アップルトン(ja9941)

卒業 女 ルインズブレイド
高コスト体質・
蔵里 真由(jb1965)

大学部3年194組 女 ナイトウォーカー
力の在処、心の在処・
稲葉 奈津(jb5860)

卒業 女 ルインズブレイド
欺瞞の瞳に映るもの・
鬼灯丸(jb6304)

大学部5年139組 女 鬼道忍軍