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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2017/08/19


みんなの思い出



オープニング



 それは学園が夏休みに入ってすぐのこと。
「うわぁ、宿題がいっぱーい! こういうの見ると、なんか夏休みーって感じするよね!」
 リコ・ロゼ(jz0318)は机に積み上がった宿題の山を見て、嬉しそうに言った。
 宿題をどっさり出されて喜ぶ生徒はあまりいないだろう。
 だがリコは自分から望んで、他の生徒よりも多くの宿題を出してもらったのだ。
「だってリコ、中学飛ばして高校生になっちゃったでしょ? だから中学の分までいっぱい勉強しないと三年生になれないもん!」
 事実、担任の教師からはこのままでは留年待ったなしと言い渡されていた。
 国語や地理、歴史はまだ良いとして、数学や物理、化学などはまるで一言もわからない外国語で授業を受けているようで――なお、英語もちんぷんかんぷん。
「家庭科や美術は得意なんだけどなー」
 音楽もそこそこだが、それら得意な科目は進級試験に影響を与えない。
「家庭科で100点取ったら数学の点に分けられるとか、そういうのあればいいのにー」
 今までも同級生やアパートの仲間達に教えてもらったり、中等部の教科書を見せてもらったりして頑張ってはいたけれど、元々リコは打てば響くようなタイプではない。
 打たれてから響くまでに、普通よりも多くの時間が必要なのだ。
 だが、試験は待ってくれない。
 いっそ留年して、じっくり勉強するのも良いか……とも思ったけれど。
「やっぱりクラスのみんなと一緒に卒業したいもんね!」
 そのためには、まず進級。
「リコ、がんばる!」

 その宣言通り、リコは毎日真面目に頑張っていた。
 そんなある日――

「ごめんください」
 リコの住むアパート、風雲荘の玄関先で聞き覚えのある女性の声がした。
 リビングで教科書を広げていたリコは、ノートをとる手をぴたりと止める。
「あの声、まさか……」
 リコは足音を忍ばせ、そーっと玄関に近付いてみた。
 声の主は応対に出た管理人、リュールと話をしているようだ。
「こちらにうちの娘……莉子がお世話になっていると伺ったものですから――」
「ママ!?」
 リコは思わず声を上げる。
 この前はほとんど話をすることもなく別れてしまった。
 きっと、もう二度と会うことはないだろうと思っていたのに。
「まさか……リコを連れ戻しに来たの? 連れ戻して、また……ひどいこと、しようと……」
 しかし、母親は首を振った。
「今日はね、パパには内緒で来たの」
「……え?」
 その意味を量りかね、リコは首を傾げる。
「パパはああいう人だから……でも、ね。ママは今の莉子ちゃんに、もう一度会ってみたくて」
 今はどんな暮らしをしているのか。
 どんな人達に囲まれているのか。
 本当に幸せなのか、満足しているのか。
「だから、ね。ママに今の莉子ちゃんを見せてちょうだい」
「見て……どうするの?」
「どうもしないわ。ただ、見てみたいだけ。親が子供の様子を気にかけるのは当然でしょう?」
「……ふぅん……」
 親なんて、もうとっくにやめたと思ってたのに。
 その言葉を飲み込んで、リコは気のなさそうな返事を返す。
「だから、ね? ママは莉子ちゃんの邪魔はしないわ。普段と同じようにしててくれればいいから」
 そう言って差し出された高級そうな菓子折に、リュールはあっさり陥落した。
「子を思う親の気持ちはわからんでもない」
 上がれと身振りで示し、リュールはリコに声をかける。

「今日は友達を呼んでいるのだろう?」
「うん、お勉強教えてもらう約束だけど……」
「ならば、気にせず予定取りにすればいい」
「でも……大丈夫かな、リコの友達に変なこと言ったりしないかな」
「変なこと?」
「……こんな、人間じゃない子と付き合って、とか……」
 それを聞いて、リュールは小さく笑った。
「私なら、そんなことを言うためにわざわざ娘を訪ねたりはせんな」
「じゃ、何しに来たの?」
「ただ、お前に会いに来たんだ。本人がそう言っただろう」
「うん……でも、ほんとかなぁ……」
「心配するな、何か妙な動きがあれば私が叩き出す――氷漬けにしてな」
 そう言って、リュールはピンク色の頭を撫でた。



リプレイ本文

 夏休み、礼野 智美(ja3600)は菜園ライフを満喫していた。
 毎朝五時から畑に出ては三時間の畑仕事を済ませ、採れたての野菜を朝食に添えるのが彼女の日課だ。
「…昼? 熱中症で倒れるのが落ちだぞ。早朝のまだ耐えれる時にやるのが基本。朝採るのが美味しい物多いし」
 その日も智美は畑の雑草を取り、虫や病気を見て回り、薩摩芋の蔓を戻し、玉蜀黍や南瓜に枝豆を収穫し、スイカは冷蔵庫へ。
 一仕事を終えてシャワーを浴び、遅めの朝食を摂り終えた頃――

「こんにちは、カマふぃが来たなの!」
「今日はみんなで勉強会! 勿論きさカマも一緒だよ!」
 香奈沢 風禰(jb2286)と私市 琥珀(jb5268)が揃って顔を出す。
 暑さにもメゲず、二人は今日もカマキリだ。
 出迎えたリコの表情が微妙に固いのは、母親がリビングの隅でこちらを見ているせいだろう。
「あれ? リコさんのママさん来てるなの?」
 気付いたカマふぃは、臆する様子もなく母親の前に立ち、カマ首を傾げた。
「こんにちはなの! 仲直りしたなの?」
「そうね、仲直り…出来るといいわね」
 微妙に視線を外しつつ曖昧に微笑んだその表情を見て、カマふぃは何かを察した。
 カマキリの野生の勘が告げている、ここはママなどいないかのように普段通りに振る舞うべし、と。
 くるり、カマふぃはリコに向き直る。
「今日は勉強会という名の戦闘なの! これは戦いの後のご褒美なの!」
 どさりと置いた荷物の中には安納芋のジュースがこれでもかというほど詰められていた。
「きさカマはアメムチスパルタきさカマスペシャルで行くんだよ!」
 リコにはお菓子、カマふぃには安納芋アイス。
「正解したらあまーい蜜が待ってるんだよ! 正解しないともらえないんだよ−?」
 他にも勉強で困ってる人はいるかな?
「あ、うちもどっちか言うたら教わる方やと思う」
 浅茅 いばら(jb8764)が手を挙げる。
「リコの勉強を手伝うからにはうちが留年してもかっこつかんし」
 好きな事に関する狭い領域の知識は深いが、そんな一点豪華主義は学校のシステムと相容れない。
 あまり興味のない分野は正直なところ身が入らないが、一緒に進級するためにはそうも言っていられない現実があった。

 その時、玄関先にちらりと動く影が――
「ロゼ、お姉…ちゃ〜ん…はぅっ」
 勉強会の話を聞いて一緒に頑張ろうとやって来た桃源 寿華(jc2603)は、しかし極度の人見知りだった。
 玄関の脇から顔を出したり引っ込めたり、ぴょこぴょこ反復運動を繰り返す。
 それに気付いたリコが大きく手を振った。
「じゅかりん、遊びに来てくれたの?」
「ううん…一緒に、お勉強…」
「そっか、うん、がんばろっ!」
 そこにふらりとはぐれ総帥・緋打石(jb5225)見参。
 困った声が聞こえた気がすると思って来てみれば、勉強会とな?
 自身の試験勉強は既に終わり、暇を持て余していた…わけでもないけれど、なんか面白そうだし。
 しかもリコママが来ているとあらば、この機会を逃す手はない。
 そこに智美も加わって、教師陣は揃った。


 使うのはリコのぬいぐるみ部屋。
 丸いちゃぶ台を生徒四人が囲み、その少し後ろから三人の先生が覗き込むというスタイルで勉強は始まった。
「高校の教科だって基礎は小中学生の頃にあるんや、せやから寿華さんと一緒にやるんはええ方法やと思う」
 学園に来る前は普通の中学校に通っていた寿華は普通の教科なら問題なく出来る、ただし英語以外は。
「ロゼお姉ちゃん…これ、読める?」
 寿華が指さした英単語は「thousand」だが、リコの答えは――
「んー? とほうさんど…って何だろ?」
 何だろうって、こっちが訊きたい。
「もー、こういうのフリガナ欲しいよねー」
 リコの言い分に寿華がこくこく頷く。
 意味がわからない上に読む事も出来ないとあっては、どうやっても頭に入らない。
「なら、こういうんはどうや?」
 いばらはカラーイラストがふんだんに入った子供向けのペーパーバックを広げて見せた。
「これは桃太郎、こっちは浦島太郎の英語訳や、二人とも元のお話は知っとるやろ?」
 これなら英語はさっぱりわからなくても意味は大体わかるだろう。
 カタカナで振り仮名を書き込めば音読も出来るし、教科書の例文よりは頭に入りやすいと思うのだ。
「子供の歌なんかで覚えるのもええやろな」
 語学はとにかく慣れ親しんで好きになるのが大事――これは語学に限らず他の勉強でも、人に対しても同じかもしれない。
(「リコのお母さんにも、まずは添うてみることやろな」)
 少し苦手意識があるし、色んな意味で強敵ではある。
 けれど、ここまで来るということは「莉子」を見守りたい意志があるはずで…それならきっと、歩み寄って行けるはずだ。
「リコさん、リコさんは将来何になりたいなの?」
 早くも飽きてきたカマふぃが尋ねる。
「リコはお嫁さんになるんだよ☆」
「それは知ってるなの、それ以外にってことなの」
「それ以外…?」
 正直、考えたことがなかった。
「カマふぃは?」
 その問いに、よくぞ訊いてくれましたとカマを振り上げるカマふぃ。
「カマふぃは種子島宇宙センターに就職するなの!」
 それが種子島伝説のカマキリ(白)の宿命。
「宇宙センターの一角にカマキリグッズコーナーを設立出来たら良いななの!」
「すごいね、カマふぃ頭いいんだ!」
 ぴたっ、白カマキリの動きが止まる。
「夢を大きく持つのは良いことなんだよ、だからきさカマも一緒に頑張るんだよ!」
 たとえ現実は厳しくとも、なせば成る成さねばならぬカマキリ道。
「はい、ここ注目なんだよ! 試験に出るんだよ!」
 すちゃ、先端にカマキリ人形が付いた指示棒で教科書を指しつつ手取り足取りカマ取りながら。
 難問が解けたらご褒美のお菓子とアイスが待っている。
 それ以上のご褒美、宇宙センターのカマキリという輝かしい称号も待ってるぞ、きっと!
「勉強は嫌いだけど頑張るなの! みんなもレッツファイトなの!」

 勉強開始から一時間ほどが過ぎた頃。
 ノックの音がしてリコの母親が入って来る。
 その手に持ったトレイには、程よく冷えたスイカが載っていた。
「あ、どうも…おおきに」
 いばらがぺこりと頭を下げる。
(「挨拶もできない奴だとか、そういうふうに見られたないしな」)
 しかし帽子は取らず、軽く鍔を持ち上げる程度に止めた。
 挨拶は出来るが行儀のなってないやつ、とは思われたかもしれないが――そこは譲れないのだ。
「俺が頼んでおいたんだ。集中力途切れたままやるより、一休みしてからのほうが効率良いし」
 礼を言いつつ受け取った智美が皆に配る。
 後で下げに来ると言って部屋を出ようとした母親は、ふとあちこちに飾られた写真に目を留めた。
 サーバントの残骸を背景に撮られたものや、依頼で関わった人達と撮ったもの、アパートの日常を写したもの。
 種族に関わりなく肩を寄せ合い笑い合う写真の中のリコは、どれも楽しそうな笑顔を見せていた。
「あの、それも見せてもらって良いかしら」
「あ、どうぞ」
 いばらが無造作に広げておいたアルバムを手に、母親は部屋を出て行く。
 ひとまずは作戦成功、だろうか。

(「確か、中学校は一度も行ってないって何かの話のついでに聞いた事あるような…」)
 智美は自分や姉妹が使っていた教科書や参考書、ノートなどをリコの目の前に置く。
(「…初等部5年の義弟用に取っておいて良かった」)
 数学ばかりは中学校の内容をやっておかないと高校の勉強は出来ないだろうし、物理や化学、英語も基礎がないと難しそうだ。
 まずは何処までの内容を理解しているか確認した上で、重要ポイントを抜き出し、系統毎に纏めておこうか。
「ああ、その問題はまずここからだな」
 躓いた部分を見てその基礎となる知識を教え、その上でもう一度。
「あっそっか! わかった!」
「正直、確率統計なんかは夏休み余裕があったら覚える、位の認識で良いと思うぞ…公務員試験なんかだと絶対出る項目だけど」
「んー、それはパスでいいかなー」
「ふむ、苦手科目の傾向を見るに、リコは自分に縁遠い物事が身に付きにくいようじゃな」
 緋打石の言葉に「あ、そうかも」とリコ。
「好きこそものの上手なれと言うし、興味のないことをいくら頑張っても効率が悪かろう。そこは捨てるのもアリじゃな」
「いいの!?」
「物理は専攻によっては重要視しないことがあるし、他にもそうしたものは色々あるじゃろう」
 どうしても進みたい道があって、そこに必要な勉強なら頑張るしかないけれど…カマふぃのように。
「化学は料理と思えば楽しかろうし、暗記も苦にならぬのではないか?」
 試験の突破だけでいいならコツを掴んでしまえばいい。
「きちんと身に着けたいならその前提で鍛えてやるが」
「今は時間もないし、目の前のテストだけで…」
「承知、では数学と物理は絶対に解ける問題を増やすとしよう」
 得意苦手の差はどうしようもないが、これなら攻略パターン丸暗記でとりあえず点数は稼げる。

 こうして皆の勉強はどうにか順調に進む――が、寿華はいきなり湯気を噴いた。
「わかんないの…っ! 凄く、難しい…の!(ぷんすこ」
「じゅかりん、どうしたの!?」
「わかんないの…天使と、悪魔…私は、自分が…襲われた、事も、誰かが、襲われた事も、なかった…から」
 自分のことだから撃退士はわかる。
 でも学園で色々教わっても、天使と悪魔のことはやっぱりよくわからない。
「うん、それはちゃんと勉強しなきゃね。でも嫌われる気持ちなんて知らないほうがいいよ」
 リコは少し寂しそうな笑みを浮かべた。
「誰もそんなの知らなくて済むようにしたいね」
「ロゼお姉ちゃん…、本当に…ヴァニタス…って、教科書、に…書いて…ある、通り…なの?」
「ん、大体はね」
「お姉ちゃんは…優しい…し、一緒…だと、楽しい…よ?」
「ありがと♪ ね、辞書で人間を調べたら、じゅかりんがどんな子かわかると思う?」
「ううん、…ぁ、そう…か」
 個人は一般論では括れない。
 周りの人はリコのことを前から知っているようだし、どんな人だったのか訊いてみたいけれど。
(「でも、何も知らない私でもわかることもあるの」)
 寿華は真っ直ぐにリコを見た。
「きっと…神様…も、生きてて…良いよ…って、ロゼお姉ちゃんに、思ったの」
「じゅかりん…」
「でも…きっと、少し…意地悪で…おっちょこ、ちょい…な、神…様、だったの」
 生きて欲しいと思ったから、その時できる方法でリコを生かしたのだ。
 その証拠に、こんなに沢山の人に愛されている。
(「私もお姉ちゃんに会えたから」)
「あぁもうっ、じゅかりんってばなんて良い子なのっ」
 リコ、全力ハグ。
 この子リコの妹にしていいですか(まがお


「戦闘終了、ミッションコンクリートなの!」
「コンプリート、なんだよ?」
 まあ勉強時間は終わったのだから、厳しいことは言うまい。
「ここからはスーパー甘味タイムなんだよ!」
「冷たい安納芋ジュースをどうぞなの!」
 はい、リコママもどうぞー。
「きさカマは食べる、安納芋アイスとクッキーを両手に持ってぜいたくに食べる…カマァ!」
「それクッキーで挟んだらどうかな?」
「おぉ、それは美味そうじゃ」
「クッキーサンドやね」
「あまり挟みすぎると溶けて垂れるぞ」
「これ、くらい…かな」
 皆でわいわいお菓子を楽しんだ後は、スーパー水遊びタイム。
 庭にデフォルメカマキリ柄の大きなビニールプールを用意して、スイカをどぼん。
「カマキリ柄のビニールプール…略してカマプール!」
 カマ風の手すりも付いてるよ!
「どうせだから一緒にスイカも冷やすんだよ、省エネなんだよ!」
 プールに浸かってホースで頭から水をかけたりかけられたり、足だけでいいとか遠慮してる派にも遠慮なくぶっかけて怒られてみたり。
 スイカも身体も程よく冷えたところで、縁側に座ってタネ飛ばし!
「せや、前から訊こう思うとったんやけど」
 下に置いたプールで足を冷やしながら、いばらが問う。
「リコはなんで高等部に編入したん?」
 人間界の知識が少なかったり、学力不足の天魔はあえてもっと下の学年から編入することも多いのに。
「そんなの決まってるじゃない、いばらんがいるからだよっ☆」
「えっ」
 てっきり苦手なことを克服しようとする真摯な姿勢や向上心の表れだとばかり――
 いや、リコが頑張っているのは自分が一番よく知っている。
(「そういうんもうちの好きなところやし、うちも頑張らんとな」)
 好きなことに関する呑み込みの速さはいばらも舌を巻くほどだし、うかうかしていると追い越されそうだ。
「お姉ちゃん、勉強…したい、なら。卒業したら、もう一回…高等部に、入学して、ほしい…の」
「えっ」
「その頃は…私も、高校生、なの。お姉ちゃんと、一緒に…学校に通って、私も一緒に、卒業したいな…だめ?」
「リコ的には全然ダメじゃないよ!」
 でも一度卒業したら戻れないんじゃないかな、多分。
 そして話題はいつの間にか思い出語りに。
「種子島ではじまって色々これまであったなの!」

 そんな中、いつの間にか姿を消した緋打石は奥の部屋で母親と話し込んでいた。
「自分は家族を奪った奴等の同族だが、話を聞いてくれ」
 自分でもお節介だと思いつつ、緋打石は語る。
「天魔にも家族の繋がりはある。だからそれを失った時の気持ちもわかるつもりだが…リコは失われてはいない」
 まだ知り合って間もないが、今のリコが優しい子であることは分かる、それこそ他人を優先するぐらいに。
 だからこそ、その危機に駆けつけることが出来なかったと悔やみ、その身を案じていた。
「リコには笑顔が似合うと思わないか」
「そうね…昔はとてもよく笑う子だったわ、こんな風に」
 母親は膝に置いたアルバムの表紙を撫でる。
「自分は理想の家族とやらを押し付けるつもりはない。だが…歯痒いのだ」
 互いの想いが噛み合っていないことが。
「あの時和解出来ていればと後悔して欲しくない」
 手遅れになってからでは遅いから。
「だからせめて、片親だけでも味方してやってくれ」
 緋打石は立ち上がり、深々と頭を下げた――自分でもらしくないと不思議がりながら。


 そして夕刻。
「カマふぃはいつもちぇきーらしてきたなの! だから今日も皆で新しい想い出のちぇきーらなの!」
 はいカメラセット!
「ママさんも遠慮しないで撮ろうなの!」
 帰ろうとした母親を強引に巻き込んで、ちぇきーら!
「今のリコさんはこんな感じで生活してるんだよ」
「ママさんもまた来て一緒にリコさんとカマふぃたちと想い出作ろうなの!」
「ひどい事しないって言うならまた遊びに来て、今度は一緒に遊ぼうなんだよ!」
 カマキリ二人にそう言われ、母親は嬉しそうに頷いた。
「ありがとう、リコは良いお友達を持ったわね」
 次に来る時は娘に我が家の味を教えたい。
 そう言って、母親は帰って行った。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
種子島・伝説のカマ(白)・
香奈沢 風禰(jb2286)

卒業 女 陰陽師
新たなる風、巻き起こす翼・
緋打石(jb5225)

卒業 女 鬼道忍軍
種子島・伝説のカマ(緑)・
私市 琥珀(jb5268)

卒業 男 アストラルヴァンガード
Half of Rose・
浅茅 いばら(jb8764)

高等部3年1組 男 阿修羅
一緒なら怖くない・
桃源 寿華(jc2603)

中等部3年1組 女 陰陽師