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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/11/06


みんなの思い出



オープニング



 戦いは終わった。
 種子島は元通り、天魔に襲われる心配のない安全な土地になった――

 いや、なろうとしている。

 実際にはまだ、戦後の処理が続いていた。
 先に冥魔勢との戦いが終結した北部では復興作業が、南部では宇宙センターのゲート跡から溢れて来るサーバントなどの残党退治や、行方不明者の捜索が現在も行われている。

 宇宙センターの職員や、周辺の住民の中には、突然の襲撃を受けてゲート内に連れ去られた者も多い。
 撃退士達の働きによって、その殆どは無事に救助された。
 しかし。

「あの、爽兄ぃ……いや、涼風 爽を見ませんでしたか?」
 まだ混乱の続く避難所の中、そう声をかけながら人捜しをする少年の姿があった。
 彼の名は涼風 桂(すずかぜ・けい)、涼風 爽(すずかぜ・そう)の下の弟だ。
「宇宙センターの技術職員をしてるんですけど、背は僕よりだいぶ高くて、頑固な寝癖があって、ここのところに火傷の跡があって……」
 と、桂は自分のうなじを掻き上げて見せる。
 当日、爽はいつものように職場である宇宙センターの中にいた。
 既に救出された同僚の話だと、爽は近くの孤児院を心配して出て行った後、連絡が取れなくなったという。

 その時、背後から女の子の声がした。
「ね、そーちゃんのこと探してるのって、キミ?」
 振り向くと、ピンクのツインテールが目に飛び込んで来る。
 その子は自分をリコ・ロゼ(jz0318)と紹介した。
「きみは……爽兄ぃこと知ってるの!?」
「うん、さっき孤児院の子に聞いて――あっ、リコはそーちゃんのトモダチだよっ♪」
「僕は弟の桂っていいます」
「けーたん、だね。ヨロシクだよっ☆」
 なんて握手してる場合じゃない。
「そーちゃん、まだ戻ってないの? ゲートの中に連れてかれたっぽいんだけど」
 子供達の話では、爽は逃げ遅れた彼等を施設の一角に集めて、こう言ったそうだ。

『ね、かくれんぼしよう。誰が一番上手かな?』
 ただし、声を出してはいけない。
 この部屋から出てもいけない。
 誰が来ても、ずっと隠れていること。
『俺か、誰か知ってる人が出ても良いよって言うまでだ』

 そう言って部屋を出て行ったきり、爽は戻らなかった。
「爽兄ぃ……」
 自分たち兄弟の時と似ている、桂は思った。
 その時の記憶は曖昧だが、爽が二人を守ってくれた事だけは、はっきりと覚えている。
「あのとき、爽兄ぃはひどい火傷をして……でも、帰って来た」
 帰って来て、身寄りのなかった自分たちを弟にしてくれて、三人で家族になって。
「だから、今度も帰って来るって……信じてる」
 きっとどこかで助けを待っている筈だ。
「でも僕は撃退士で……撃退士なら、自分の家族を優先しちゃダメだって、爽兄ぃなら、きっと言う」
 すぐ上の兄、和幸はまだ入院中だった。
「和幸兄さんは爽兄ぃのことが大好きで、爽兄ぃのことになると他がなんにも見えなくなっちゃうから……」
 だから、言えない。
 見つかるまでは見舞いにも行けない。
 行ったら絶対、消息を訊かれて……そうしたら、飛び出して行くに決まってるから。

「うん、わかった!」
 俯いた桂の肩を叩いて、リコが言った。
「けーたんが行けないなら、リコが行くよ!」
 リコは爽の家族ではない。
 トモダチではあるけれど、それでエコヒイキなんて言う奴はおしりペンペンしてやる――たとえそれが助けられた本人だとしても。
 それに、他にも行方不明者が何人かいる事も確かだ。
 その中には抗天魔陣が使える撃退士もいた。
 爽は一般人、普通ならゲート内では短時間で命を奪われてしまうが、そのスキルを使える者がいるなら、きっと大丈夫。
「待っててね、必ず連れて帰るから。泣いちゃダメだよっ♪」
 そう言って、リコは桂の視界から姿を消した。
 ピンクのツインテールを波打たせ、踊るように、弾むように、人垣をかき分けて。


 ――――


 その頃、ゲート内部。

「どうやら、コアは破壊されたようだな」
 抗天魔陣の結界を張っていた男が安堵の息を吐く。
 これならもう、陣の外に出ても同行者が魂を吸われる危険はなかった。
「だが、この中にいればサーバントには俺達の気配が感じにくくなる――気休め程度だが、ないよりはマシだろう」
「あなたも少し休んでください」
 男の背後から爽が声をかけた。
 他には初老の男性と若い女性が一人ずつ、二人とも意識はないが、今のところ命に別状はなさそうだ。
「あー、いや、大丈夫だ」
 撃退士の男――佐野というらしい――が答える。
「サーバントどもがウロウロしてやがるし、まだ気は抜けねぇよ。それより――」
 佐野は後ろを振り返った。
「兄ちゃんの方が心配だぜ、起き上がってて大丈夫なんか?」
 ゲート内に連行された一般人はほぼ瞬時に意識を失い、動く事さえ出来なくなる。
 たまたま佐野と鉢合わせしなければ、今頃は三人とも全てを吸い尽くされて命を失っていただろう。
「一応、鍛えてますから」
「そういう問題じゃねぇだろ」
 佐野は呆れたように頭を掻く。
 その後の手当てで爽だけは意識を回復し、なんとか自力で動けるようになった。
 しかし、だからといって無理が出来る状態ではない筈だ。
「ま、残った連中は俺の仲間があらかた助けただろうよ……多分な」
 本当なら、この男もその場にいる筈だったのだが。

「はぐれて迷ったんだよ、ゲートん中で。俺は方向音痴なんだ」

 つまり、今も迂闊に動く事が出来ない。
 だからお願い、誰か迎えに来て。




リプレイ本文

「種子島の騒動も一応決着…やけど」
 浅茅 いばら(jb8764)は周囲の様子を見渡して、額の汗をそっと拭う。
 互いの無事を喜び合う避難民、炊き出しの食料を配るボランティア、未だ警戒を解かずに光纏したままの撃退士――
「まあ、残党狩りはせんとあかんな」
 と、そう思っていた矢先の要請だった。

「ん? 爽さんが行方不明なの?」
 種子島での大規模作戦が終わり、カマモードを解除していた香奈沢 風禰(jb2286)が、リコの呼びかけに応えて飛んで来る。
 勿論、私市 琥珀(jb5268)も一緒だ。
「爽さん達を助けるよ!」
 そしてリコさんを護る――とは口に出さず、まずは変身カマキリーズ。
「種子島の本当の総決算なの!」
「リコも手伝ってくれるなら…一層がんばらな、な」
 いばらの言葉に「ありがと♪」と答えたリコの頭に、大きな手がふわりと乗せられた。
「爽の奴、無茶しやがって…リコ、おじさんも手を貸すぜ。爽は俺にとっても友人だからな」
 ピンク色の頭を撫でるその手は、鳳・白虎(jc1058)のものだ。
「よろしくお願いしますね」
 木嶋香里(jb7748)はリコと行動を共にするのは今回が初めてとなる。
 そしてもう一人。
「はじめまして。『救出依頼なら、回復スキルがある人がいいから』って頼まれまして…」
 そう言いながら学生証を見せたのは、美森 あやか(jb1451)――ただしそれは自分のものではない。
 リコと交友のある友人達のものだった。
「証明するのに必要だと思うからって、渡されましたの」
 つまりトモダチの友達。
 だが、のんびり自己紹介している時間はなかった。
「まだ残っている方がいらっしゃったんですね。出来るだけ早く救出しませんと」
「そうだな」
 頷いたエカテリーナ・コドロワ(jc0366)が先に立って歩き出す。
「こうしている間にも要救助者に危険が迫っているかもしれん。急ぐぞ」
「必ず助けてみせます!」
 香里がそのすぐ後に続いた。
「協力し合って無事に終わらせましょう!」


 現場に向かって歩きながら簡単な打ち合わせを済ませ、一行はゲートの内部に突入する。
 入ってすぐの地点に敵の姿はなかった。
 カマふぃは鳳凰を召還し、能力の底上げと共に「聖炎の護り」によってバステを無効化する。
 きさカマはまず、リコと特殊抵抗に不安がありそうな数人に聖なる刻印を刻んだ。
 次いで生命探知を使って周囲の反応を調べる。
「連絡が取れないからまずは探さないとね!」
 得られた反応では、前方に3つ、右に4つ、左に2つと5つの塊が接近していた。
 判明している要救助者は、爽ひとり。
 誰かと一緒にいるのか、それとも反応は全て敵なのか。
「こっちかな?」
 とりあえず最も数が少ない方に行ってみる。
「敵の可能性もあるから気を付けてね!」
 ゲート内の構造は複雑な迷路のようだった。
 しかし、あちこちに飾られた醜悪なオブジェには僅かに違いがあり、それがちょっとした目印になる。
「リコさん、サラマンダーのぬいぐるみさんは、私達よりも小さいですから…空中から索敵や捜索してくれると助かります」
 あやかに言われ、オレンジ色のぬいぐるみがパタパタ飛んで行く。
 それに続いて索敵を使ったエカテリーナが、すぐ後ろにはいばらが続いた。
「一刻も早く合流したい所ですね」
 三番手の香里が奇襲に警戒しながら盾を構えて進む。
 戦闘はなるべく避けたいところだが、要救助者を連れた帰路の安全を確保する為には、あまり避けてばかりもいられなかった。
「帰路もそうだが、ゲートから出て人を襲われても困るからな。出会ったら出来る限り倒した方が良さそうか」
 殿を行く白虎が後ろを振り返る。
 と、エカテリーナが警戒の声を上げるのと同時に、ぬいぐるみが慌てふためいて戻って来た――その後ろに三匹の巨大な甲虫を引き連れて。

「さぁ、戦闘開始なの!」
 カマふぃは仲間を守るべく四神結界を張った。
「往生際の悪い虫けらどもだ。まあいい、何であれ行く手を阻む者は死あるのみだ」
 結界の端に立ち、エカテリーナがアサルトライフルを構える。
 その背後に黒紫色の炎が出現し、皮膚の至る所に黒い模様が浮かび上がった。
「貴様らにここに居座る資格はない。負け犬は負け犬らしく退場しろ。嫌なら力ずくでも退場させてやる!」
 急降下して来るその腹に一発。
 だが見るからに固そうな装甲を持つそれは、一撃では落ちなかった。
「リコは後ろから皆を支援したってや」
 放っておくといつの間にか前に出ているリコにそう声をかけ、いばらは宙に舞い上がる。
「あんたが前に出るのは、うちが心配なんや」
 今回は後衛向きの仲間が多い、彼等に攻撃が届く前に倒す為にも先手必勝だ。
 手負いとなった一体の上を取り、開いた羽根に小太刀で斬り付けた。
「今日のきさカマは首飾りでどーん!」
 落ちかけた所に、きさカマがロザリオから氷の弾丸を生み出して、どーん!
 その間にエカテリーナは次の敵を撃ち抜き、今度は白虎が上からトンファーを叩き込む。
 が、打撃はあまり効果的ではないらしい。
「かってぇなコイツ」
 直刀に持ち替えてもう一撃、今度は羽根を絶ち切り地上へ落とす。
 三体目も同じように、各自の連携で難なく仕留めていった。
「この騒ぎで他の連中に集まって来られても厄介だ、すぐに離れるぞ」
 エカテリーナの指示で、今度は4つの反応があった場所へ。

 そこに蠢いていた蠍は暴れる前に、あやかのアンタレスと香里のコメットで焼き尽くし、押し潰した。
「戦闘は苦手なのですが…そうも言っていられませんね。皆さん、下がってください」
「巻き込まれないように気を付けてくださいね!」
 それでもまだ体力が残っているものには遠距離からの攻撃を。
「次は2つと5つの反応が同時にあった場所だね!」
 きさカマが指差す方角に進むと、そこには――宿敵がいた。

「なるほど、因縁の相手か」
 エカテリーナは二体の黄金カマキリと、緑と白のカマキリを交互に見て頷く。
「そちらは任せた、その代わり残りは引き受ける」
 残る五体は蛇女、数は多いが飛ばないだけ対処もし易いだろう。
「もう一度、コメットいきます!」
 香里が再び彗星の雨を降らせ、あやかはサジタリーアローで串刺しに、更にはサラマンダーの炎でこんがり焼いて。
 それでも残ったものにはエカテリーナが銃撃を叩き込んでいった。
 いばらと白虎は彼等を守るように、背後や側面からの奇襲を警戒する。

 そしてカマキリーズは黄金カマキリと向き合っていた。
「僕達は種子島の守護神カマキリ!」
 きさカマが緑色のカマを振り上げる。
「…種子島でカマキリに出会ってカマふぃたちのカマキリ人生ははじまったなの!」
 カマふぃは白いカマを。
「さらば集大成、黄金のカマキリ! これからはカマふぃたちが良いカマキリとして種子島の伝説になるなの!」
「良いカマキリが悪いカマキリを倒してめでたしめでたしなんだよ!」
 振り上げた緑と白のカマが交差する時、究極の超すごい必殺技が誕生する!
 ――嘘です誕生しません普通に戦います。
「…良いカマキリの毒は悪いカマキリには効くなの!」
 カマふぃは蠱毒で応戦、きさカマはロザリオでどーん!
 遠距離からの攻撃には黄金のカマも届かない、これなら一方的に攻撃し放題――なんて、そんなに上手くはいかなかった。
 黄金カマは二人の頭上を一気に飛び越えると、背後に回ってカマを振り上げる。
 しかし、リコのアラクネーが蜘蛛の糸でその動きを止めた。
「ごめん、余計なことしちゃったかな」
「ううん、リコさんぐっじょぶなの! ありがとなの!」
 さあ、動きを止めているうちに怒濤の連続攻撃だ!
 もう一体は使い切った蠱毒から切り替えた呪縛陣で動きを止めて、二人の魔法攻撃でどーん!
「…ぐっじょぶ! さらば黄金のカマキリ!」
「これで種子島には良いカマキリしか居なくなったよ!」
 かっこいいファインティングポーズを決めながら高らかに叫ぶカマキリーズ。
「「カマァァァァ!」」


「…今、なんか変な声がしなかったか?」
「しましたね」
 ゲートの奥で、撃退士の佐野と爽が顔を見合わせる。
「あの声は聞き覚えがあります」
 やたらと押しの強い、カマキリの着ぐるみに身を包んだ二人組だ。
「じゃあ助けが来たってことか」
 佐野は声がした方に向かって「おおーい!」と声を張り上げた。
 下手をすれば敵の方が先に寄って来るかもしれないが――


「誰か呼んでるぞ」
 周囲を警戒していた白虎の声に、いばらも耳を澄ます。
「向こうからや」
 一同は声のする方へ走った。
 きさカマの生命探知には4つの反応、近くには他に何もいないようだ――今のところは。

「おぉーい、こっちだ!」
 駆け寄った撃退士達の目に、無精髭を生やした中年男の姿が映る。
 その隣には爽の姿が、そして背後には二人の人物が横たわっていた。
「爽、無事か!」
 白虎の問いに、爽は軽く手を上げて応えた。
「奇跡的に生きてますよ、パイパイさん」
「パイパイはやめろ」
 いや、好きなように呼んで良いとは言ったけど。
「助けに来ましたので安心してくださいね♪」
 癒やしの風で四人を包んだ香里が爽に声をかける。
「弟さんが心配されていましたよ」
「そうだろうな…泣いてなかった?」
「泣きそうでした」
 くすりと笑った香里に、爽も笑顔を返す。
「帰ったら久々に大決壊の泣き顔が見られそうだ」
 その為には、ここを無事に抜け出す必要があった。
「あの、よかったらこれをどうぞ」
 あやかが差し出したのは、紅茶とカロリーブロック。
「きっと暫く何も食べていないだろうと思いましたので」
「ありがとう」
「嬢ちゃん気が利くねぇ」
 爽と佐野が早速それを頬張っている間に、撃退士達も自分の怪我を治療する。
「カマキリは回復も出来るなの!」
 しかし治療を施しても二人の意識は戻らなかった。
「せやけど命に別状はないみたいやね」
 横たわる二人の状態を診て、いばらが安堵の息を吐く。
 ここを出て適切な治療を施せば快方に向かうだろう。

「もたもたしている時間はない。自分の足で歩けるなら歩け。その方が効率がいいからな」
 エカテリーナに促され、治療を終えた一行は立ち上がった。
「アンタ頑張ったな、後は俺たちに任せて…と言いたい所だがもう少しだけ辛抱してくれ」
「僕達は元気いっぱいだから、運ぶのは消耗してる佐野さんにお願いしたいんだよ」
 白虎ときさカマが佐野に声をかける。
「その代わり僕達が全力で護るよ!」
 なるほど、確かに戦闘要員よりは運び屋の方が楽そうだ。
「抗天魔陣の回復をさせてもらっても良いですか?」
 あやかが尋ね、アウルディバイドで使用回数を回復させる。
 弱い天魔に気付かれにくくなる効果のあるそれは、脱出時に使ば、より安全かつ速やかな移動に役立つことだろう。

 白虎は初老の男性を、佐野は若い女性を背負い、その二人を真ん中に守るようにして、一行は急ぐ。
「爽、お前は撃退士じゃないんだから余り無茶すんじゃねーぞ。つらくなったら直ぐに言えよ」
 白虎の問いに爽は笑顔で大丈夫だと答えたが、その足元は明らかにふらついている。
 安全の為には少しでもスピードを上げたいところだったが、かといって彼に負担をかけるわけにはいかなかった。
 生命探知を使い切ったきさカマに代わって、あやかが反応を探りながら来た道を戻る。
 ルートは来る時にマッピングしてあった。
 このまま何事もなく出られれば良いのだが――

「やはり、そう上手くはいかんか」
 敵の気配にエカテリーナが立ち止まる。
 香里は爽達の前で盾を構えつつゆっくりと後退、佐野に抗天魔陣の使用を促し、カマふぃは四神結界を張った。
 姿を現したのは銀色スズメバチ4体と慟哭のラミア2体の混成部隊。
「こいつは厳しそうだな」
 白虎は背負っていた男を結界の中に寝かせて前に出る。
 まずは香里が最後のコメットを降らせ、エカテリーナはありったけの高火力を二体のラミアに叩き込んだ。
 あの二体がいる限り、不用意に飛ぶと「切なる願望」でスタンを喰らって落とされる危険がある。
 いばらは白緑カマの援護を受けてラミアの背後に回り込み、その背に斬り付けた。
 直後、ラミアが嘆きの叫びを上げる。
 その声を耳にした何人かがその場で金縛りに遭ったように動けなくなった――が。
「大丈夫です」
 あやかがクリアランスで回復を助ける。
 その間にリコのサラマンダーが炎を吐いて敵の動きを妨害しつつダメージを与えた。
「リコ、おおきに」
「助かったぜ」
 いばらと白虎が止めの一撃、ラミアはその場に崩れ落ちる。
 残るは四体のスズメバチだが、こちらはそう面倒な事もない。
 体当たり攻撃は香里が庇護の翼や防壁陣で守り、跳ね返った所に仲間の攻撃が集中。
 それを繰り返すだけで片が付いた。
「この勢いで脱出を済ませましょう!」


 その後は襲撃に遭う事もなく、一行は無事にゲートの外へと脱出を果たした。
 待ちかねた様に飛びだして来た弟に体当たりされて転がる爽の姿に、誰もがほっと胸を撫で下ろす。
 しかし――
「残りのサーバントを一気に叩くぞ」
 エカテリーナは休む間もなくゲートの中へ戻って行く。
 その後にいばらが続いた。
「種子島の騒動はまだ終わって間もない、今のうちに不安の芽は全部摘み取らんとな」
 不安げな様子で腕を掴んだリコに、いばらは柔らかな笑みを向ける。
「…そうしないと楓もゆっくり休めへんやろ」
 大丈夫、無理はしない。
(リコが憧れていたふー様が、どうかゆっくりと休めますようと――切に切にねがっとる)
 その為に出来ること。
 したいこと。
「わかった。でも…いばらんが行くならリコも行くよ」
 リコばかりではなく、皆も一緒だ。
「大勢で行った方が早く終わりますし、危険も少ないですしね!」
 香里がぐっと拳を握った。


 最後の一体まで綺麗に片付けたら、関係者全員で記念撮影だ。
「はい、ちぇきーらなの!」
「いえぇーい!」
 ぱしゃ!
「今度はみんなで遊びに来たいなの!」
 遊びに来るのも良いけれど、その逆はどうだろう。
「島のことが一段落ついたら一度久遠ヶ原に遊びに来るか?」
 いばらの問いに、リコは「行きたい!」と即答した。
「うちらは普通に歓迎するで。もちろん学校に入れとか、そう言う強制はせぇへんし」
 ただ、自分達のいる環境を見せてやりたいと思った。
「勿論、入学するなら歓迎するぞ。まぁ、あの主人…ネイサンって言う悪魔がどう出るか…だが」
 白虎が腕組みをする。
「そういやリコ、奴からは今の所何もコンタクトは来てないのか?」
「うん、オシャレに忙しいんじゃないかな」
 だと良いがと苦笑いを浮かべ、白虎は続けた。
「もしおまえの身に危険が及ぶなら、何か対策しないといけねぇからな。なんかあったら俺たちに知らせろよ?」
「うん、ありがと♪」
 でも大丈夫。
「リコ、ひとりじゃないから」
 みんなと一緒なら、きっと何もかも上手く行くから――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 腕利き料理人・美森 あやか(jb1451)
 Half of Rose・浅茅 いばら(jb8764)
 負けた方が、害虫だ・エカテリーナ・コドロワ(jc0366)
重体: −
面白かった!:8人

腕利き料理人・
美森 あやか(jb1451)

大学部2年6組 女 アストラルヴァンガード
種子島・伝説のカマ(白)・
香奈沢 風禰(jb2286)

卒業 女 陰陽師
種子島・伝説のカマ(緑)・
私市 琥珀(jb5268)

卒業 男 アストラルヴァンガード
和風サロン『椿』女将・
木嶋香里(jb7748)

大学部2年5組 女 ルインズブレイド
Half of Rose・
浅茅 いばら(jb8764)

高等部3年1組 男 阿修羅
負けた方が、害虫だ・
エカテリーナ・コドロワ(jc0366)

大学部6年7組 女 インフィルトレイター
225号室のとらおじさん・
鳳・白虎(jc1058)

大学部6年273組 男 ディバインナイト