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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
形態:
参加人数:10人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/09/29


みんなの思い出



オープニング


 9月も半月ほどが過ぎ、夏休みの余韻を楽しんでいた学生達も、そろそろ通常モードに戻り始めた頃。
「先生、ちょっと……その、話とか、あんだけど」
 風雲荘のリビングでひとり晩酌を楽しんでいた門木章治(jz0029)に、生意気そうな少年が声をかけた。
 少年の名はマサト、14歳の中等部三年生だ。
 彼は大天使メイラスの計略で兄を殺され、その復讐の為に自ら使徒となった――甘い言葉で誘う目の前の男こそが、殺戮の首謀者であるとも知らずに。
 同じく母を亡くした12歳のサトル、父を奪われた13歳のアヤという仲間と共に「黒咎」の一員となった彼は、憎しみの矛先を撃退士達に向けた事もある。
 だが事実を知った三人は久遠ヶ原学園に保護され、今ではこの風雲荘に居候しながら学園に通っていた。
「……なんだ、まだ夏休みの宿題が残ってるのか」
「ちげーよ、つかそんなんとっくに終わってるっての!」
 門木に言われて、マサトは頬を膨らませる。
 確かに夏休みが終わる直前になって門木に泣きついた事は認めるが――
「でも全然手伝ってくんなかったし」
「……当たり前だ」
 宿題は自分でやるもの、そうでなければ意味がない。
「まあ、終わるまでずっと付き合ってくれたし、わかんないとことか教えてくれたのは感謝してっけど……じゃなくて!」
 マサトはきょろきょろと辺りを見回し、他に誰もいない事を確認してから声を潜めて言った。
「サトルの奴、新学期になってからずっと学校サボってんだ」
 それを聞いて、門木は片方の眉を上げる。
「……特に変わった様子はなかったがな」
「うん、朝もちゃんと俺らと一緒に登校してっけど――でも教室には行ってないって、アヤが」
 三人とも学年は違うが、同じ境遇の仲間として互いに気にかけている様だ。
 特にしっかり者のアヤは女子特有の「噂話ネットワーク」を通じて様々な情報に通じていた。
「あいつ、クラスの奴等に苛められてるらしくて、さ」
 彼等三人は異色の存在だ。
 学園には人間以外にも天使や悪魔、或いはそのハーフなど、様々な出自の生徒が所属している。
 だが、使徒は珍しい。
 ましてや一般人と殆ど変わらない程度の力しか持たないとなれば、尚更だ。
 彼等の主人は門木の異父弟である天使テリオス。
 しかし天使としてさほど能力が高いわけでもない彼に、三人の使徒を抱える事は負担が大きすぎた。
 結果として、三人はさして強くもない一人分の力を三つに分けて与えられる事となったのだ。
 それでは効果が薄まりすぎて、雑魚サーバントにも劣る程度の力しか発揮出来ない。
 他の学生の様にレベルアップで能力を上げる事も出来なかった。
「弱い奴って、叩かれるじゃん」
 マサトは苦笑いを浮かべながら言った。
「アヤは頭が切れるし口も達者で、なんかすげぇオーラ出てっから、寧ろ他の生徒にも一目置かれてる。で、俺はバカだからそーゆーの気にしねーけどさ。でもサトルは――」
 そこで門木が口を挟む。
「……お前は馬鹿じゃない」
「へ?」
「……確かに勉強は出来ないし、やる気もないが、な」
「んだよ、褒めてんじゃねーのかよ!」
「……褒め言葉だが?」
 真顔で返されて、マサトは思わず頬を赤らめ、目を逸らした。
「だから、俺の事はいいんだって! サトルだよサトル、あいつ押し弱いし、内に籠もるタイプだし、俺らにも相談とかする気ねーし……」
 本人が助けを求めないなら、周りが気を回してやるしかない。
「……ん、わかった」
 門木はマサトの頭をぐちゃぐちゃに掻き回した。
「てめなにすんだよ! セットが乱れんだろーが!」
 セットなんて、したことないけどな!
「……お前は良い子だな」
「褒めんな気色わりぃ! つか、あいつには言うなよ、俺がチクったとか絶対だぞ!」
「……わかってる」
 苛められています、なんて口が裂けても言えない。
 大人には絶対に知られたくない。
 それは門木にも身に覚えのある事だった。
 だから、直接手を差し伸べることはしない。
 その代わり――


「……北海道に、月見に行くぞ」
 後日、門木はそう宣言した。
 そろそろ十五夜も近いから、月見をするのはわかる。
 でも何故そこで北海道?
 月なんてどこで見たって同じじゃない?
 と、そんな疑問が出るのは当然だろう。
「……ん、まあ…近頃あまり遠出をしてないからな」
 ただし普通の旅行ではない。
「……グループ対抗のヒッチハイク旅行だ」
 何それ。
 グループ対抗?
 それに今時ヒッチハイクって。
「……普通に電車や飛行機で行っても良いが、たまには変わった旅行も良いだろう?」
 厳密な計画は立てられない、ほぼ行き当たりばったりの運任せ。
 その代わり、普通では考えられないような希有な経験をする事もあるだろう。
 楽しい事や、嬉しい事。
 トラブルやアクシデントに見舞われる事もあるかもしれない。
 それも全部ひっくるめて、楽しい思い出にしてしまおうという計画だ。
 同行する仲間をいくつかのグループに分け、それぞれ独自のルートで目的地を目指す。
 一番に着いたからといって特に何があるわけでもないが、競争にすれば気分も盛り上がるだろう。
「……お前達三人は一緒でも良いし、三人別々のグループに入っても良い」
 門木はサトル、マサト、アヤの三人に言った。
「……勿論、危険な目に遭わせるわけにはいかないが…そこはグループに一人は大人が入るようにすれば大丈夫だろう」
「でも、それじゃ目的地に着くまで何日かかるかわからないじゃない」
 アヤは学校の事を心配している様だ。
「……勉強の遅れが心配なら、後で俺が補習に付き合ってやる」
 授業を休む事に関しては問題ない。
「……ここは久遠ヶ原だからな」

 学校だけが世界の全てではない。
 外に目を向ければ、経験したことのない様々な出来事が待っている。
 それに、決して一人ではないことを感じてほしかった。
 彼等三人を迎え入れた時、出来る事なら何でもすると誓った。
 必要な時には皆が支えになると。
 それは決して、腫れ物の様に扱い、手取り足取り何でもしてやり、過保護に甘やかすという意味ではない。
 それが突然降って湧いた理不尽な不幸でも、自分の問題は自分で解決するしかないのだ。
 ただ、一人で悩んだり、抱え込む必要はない。
 それを伝えたかった。
 サトルには勿論、平気そうな顔をしているマサトとアヤにも。

「面白そーじゃん、行こうぜサトル!」
「そうね、学校をサボるのもたまには良いかも……しかも教師が率先してとか、普通ありえないし」
 マサトとアヤに言われ、サトルも頷く。
「うん、皆が行くなら良いよ……僕も、行きます」
 最後に丁寧口調になったのは、それが門木に向けた言葉だからだ。
 サトルは表面上は穏やで人懐こいように見えるが、門木や他の住人達には殆ど心を開かず、その間に強固な壁を築いていた。
 それもこの旅行で少しは崩してくれると良いのだが。

「……よし、まずはグループ分けと集合場所を決めるか」
 いや、その前に参加者を募らなければ。
 風雲荘に馴染みがなくても構わない。
 気ままなヒッチハイクの旅に興味があるなら――



リプレイ本文

「ヒッチハイクがんばる、です!」
 南の島の遊園地には行けなかったザジテン・カロナール(jc0759)は、血走った目で仲間達を見た。
 これはきっと、楽しみにしすぎて昨夜は一睡も出来なかったパターンだろう。
 それくらいテンション高く張り切っているが、中学生の彼が舞い上がるのも無理はない。
 良い歳をした大人でさえ、この有様なのだから。
「北海道初めてですー!! 楽しみですの!  ゜*。:゜ (*´∀`*) ゜:。*」
「俺はクッシーに会いに行く!」
 もふもふ黒猫忍者カーディス=キャットフィールド(ja7927)と、どう見てもマフィアなミハイル・エッカート(jb0544)の心は一足先に北の大地へ飛んでいるらしい。
「ところでヒッチハイクってなんだろう? 俳句でも読むの?」
「ヒッチハイクは人生の通過儀礼の様なものなんですよ!」
 首を傾げる雪室 チルル(ja0220)に、ザジテンは思いっきり勘違いした知識を伝授。
「だれも人生で1度はヒッチハイクで旅するものなんです、この前見た映画でそう言ってました」
 その映画によれば、ヒッチハイクとはかくかくしかじか。
「わかったわ、要は誰かの車を拾って一緒に移動すればいいのね!」
 それで、俳句とはどういう関係が?
「それはな」
 ゼロ=シュバイツァー(jb7501)が悪い顔で微笑んだ。
「旅の思い出を俳句にして残すのが、最近の流行りなんやで?」
「んむ、ゼロさんにしては良いあどばいすなの…」
 こくり、華桜りりか(jb6883)が頷く。
 嘘八百には違いないが、それはそれで楽しそうだ。
 と言うか、そんなまともな事を言うなんて何か悪い物でも食べたのだろうか(失礼
 それとも悪巧みを隠蔽する為の印象操作だろうか。
 うん、きっと後者だ。だって今日は超魔王こと月乃宮 恋音(jb1221)の目が光っているのだから。
「…それでは皆さん、準備は出来ましたでしょうかぁ…」
 旅のマネージャーを買って出た恋音が、グループの人数と大まかな予定を確認する。
「…合流地点は屈斜路湖、途中経過については定時連絡を入れさせて頂きますねぇ…」
 出発を確認したら、恋音は緊急連絡役として学園に戻り、そこで待機する手筈になっていた。
 全員の電話番号は登録済み、学園側と交渉して門木の不在時の対応も手配してある。
 本来ならその役目は門木が担うべきものだろうが――
「…大丈夫ですぅ…こうした事は、得意ですのでぇ…」
 皆の役に立てるならそれで良い。
 それに、向こうで合流した後は恋音も皆と一緒に楽しませて貰うつもりだった。
「…ありがとう、よろしくな」
「では、そろそろ行きましょうか」
 シェリー・アルマス(jc1667)が声をかける。
 皆が浮かれた様子の中、一番年下の――サトルと言ったか、その子だけが少し静かなのが気にかかるけれど。
(…やっぱ辛いよね、自分がクラスメイトと違うって事は)
 後で機会があったら少し話をしてみよう。
「章治兄さま、向こうで会いましょう、なの…」
「…ん、気を付けてな」
 後ろ髪を引かれつつも、空気を読んだりりかは門木に手を振った。
「皆さんと楽しい旅行になるといいですね」
 何故かぐっと拳を握ったユウ(jb5639)は、めっちゃ良い笑顔でカノン(jb2648)を見る。
(カノンさん、頑張って下さい)
 伝われ、この想い。

「ハイ! こちら現場です!」
 ゼロが悪い顔でマイクを握る。
「ということで始まりました『ドキッ! サボリ魔たちのヒッチハイク!』のお時間です。実況はいつもあなたにソースの香り、たこ焼き神のゼロです」
 撮影担当は各班のカメラ係、それでカバー出来ない分は謎の美女ネットワークを通じて秘密裏に撮影を行っております!
「おや、早速映像が送られて来ましたね」
 それでは見てみましょう!

 尚ここから先は尺の都合により通常の語り口で進行させて頂きます。
 が、語りはあくまでゼロさんですので、脳内での適切な変換をお願い致します。

「最初に聞いた時は何を言い出すのかと思いましたが…」
 他の皆を見送って、カノンは軽く溜息を吐いた。
 ここはひとつ説教すべきかとも思ったが、事情が事情だから仕方がない。
 いや、そういう事情だった筈なのだ、最初の段階では。
 しかし気が付けば肝心の三人は別行動で、それはつまり――
「先生と、2人きり、です、か…?」
「…ごめん、嫌だったかな」
「い、いえ、そんな事は」
 火照ってきた顔の熱を振り払う様に、ぶんぶんと首を振る。
 気分転換なら離れた方が良い事もあるだろうし、個人旅の希望も多いのだから仕方がない、という事にしておこう。
「先生、くれぐれも節度をもっていきましょう、くれぐれも…!」
「…わかってる」
 今日のカノンはサンドベージュの綿パンに白いカットソーを合わせ、上には淡いオレンジのラフなジャケットを羽織っている。
 明るめの配色にしたのは、ドライバーに暗い印象を与えないようにという配慮からだった。
 その効果か、五分もしないうちに一台の車がカノンの前に止まる。
 だが連れがいるとわかると、そのまま走り去ってしまった。
 次の車も、その次も、そんな下心が見え見えのドライバーばかり。
 漸くまともな車が止まってくれたのは、二時間ほどが経った頃だった。
「あんたら、不倫で駆け落ちとか?」
 そう言われて、カノンは超高速で首を振る。
「いえ、こちらは引率の先生で…!」
 学校行事で下級生のレクリエーションに付き添っていたところ、他の生徒とはぐれてしまって云々。
 その説明も間違ってはいないが、そんなに全力で否定しなくても――

 ミハイルはいつもの格好で道路脇に立っていた。
「このほうが身も心も引き締まるからな」
 それに、これなら電車を逃したサラリーマンに見える筈だ。見えるだろう? 見えるよな!
 やがてその前に、黒塗りのリムジンが厳かに停車する。
 ドアが開き、黒ずくめの男が降りてきた。
「お迎えに上がりやした、どうぞお乗り下せぇ」
 どうやら誰かと間違えられている様だが、このまま乗ってみるのも面白そうだ。
「おう、出してくれ」
 どこに行くのか知らないけれど。

 こちらは大所帯の黒咎御一行様。
「北海道…行ったことのない所に行くのは楽しみなの」
 初めてのヒッチハイクは少し不安もあるけれど、皆と一緒なら大丈夫。
「サトルさん、マサトさん、アヤさん…今日はよろしくお願いします、ですよ」
 りりかはぺこりと頭を下げる。
「テリオスさんも…お久しぶりなの」
 返事はないけど知ってる、この人ただのツンデレだって。
 一行はこの五人とチルル、ユウ、ザジテン、シェリー、総勢九人の大所帯だ。
「私達は引率ですが、実際に皆を引っ張るのは皆さんですよ」
 ユウは中学生を中心とした未成年組に念を押す。
「ルートや車の選択などはお任せします、よく話し合って決めて下さいね」
 もし何か危ない目に遭いそうになったり、変な人に絡まれそうになった場合はすぐに言うように。
「そう、例えばこんな、言って聞かない相手には実力行使あるのみです」
 ユウは寄って来た柄と頭の悪そうな虫達に視線を据える。
「丁度そこに、手頃な岩が転がっていますね」
 ツッコミハリセンの一撃で、それはシャボン玉の様に弾けて散った。
「まだ、何かあるでしょうか?」
 ニッコリと、それはそれは良い笑顔を向ける。
 以上、正しいクズの撃退法でした。
 尚、一連のレクチャーによって、年少の者達は彼女をボスと認識した様です。
 では旅を始めましょうか。
「こんなにいるんだから、でかい乗り物が良いわよね!」
 大型トラックか何かを拾おうと、チルルが言う。
 だがこのご時世に荷台を空にして走っているトラックはまずないだろう。
「じゃあバスを拾えば良いわね、あれなんかどう?」
 いや、あれは普通の路線バス。
「止まってくれても、乗車賃を払わないと乗れないんじゃないかな」
 シェリーが困った様に微笑んだ。
「マイクロバスならどうですか? ほら、あれ!」
 ヒリュウのクラウディルを頭に乗せたザジテンが、行き先を書いたダンボールを高く掲げる。
 どうやら何処かの旅館の送迎バスの様だ。
「あっ、止まってくれましたよ!」
 手招きされて、大人の代表としてユウが交渉に当たる。
「体験学習? 近頃の学校は面白い事するんだねぇ」
 話を聞いた運転手は、そんなに遠くまでは行けないと言いながらも全員を乗せて二時間ほど走ってくれた。
「なに、今日は暇なもんでね」
 運転する間、仕事の事や今までに乗せた客の事、趣味の話や地元の自慢など、休む間もなく話し続ける。
 聞けば元はタクシーの運転手だったらしい。
 なるほど、話が上手いわけだ。

「えーっと頑張って北海道にわたって目的地という名のゴールにたどり着く!!!」
 黒猫忍者カーディス君は、色んな事があんまり良くわかっていなかった。
「でゴールってどこでしょう?」
 かくーり。
 よくわからないけれど、とりあえず北海道へ行けば良い、らしい。
 というわけで、ただいま優雅に釧路行きの船の上。
「昔は苫小牧に向かう航路だったみたいですねー」
 道央が魔界の支配下になって後、ルートが変更された…というのは手配してくれた恋音に教えて貰った事だけれど。
 ヒッチハイクは向こうに着いてからね!

「何だと、ミシェルさんがお怒り!?」
 リムジンの助手席から電話応対の声が聞こえる。
「そんな筈あるか、今この車に――」
 そこまで言って、男は後ろを振り返った。
「あんた、誰だ?」
「ミハイルだが」
 確かに名前は似ているし、どうやら年格好も似ているらしい。
 だが。
「人違いかよ!?」
 途端に車内の空気が沸騰した。
「誰だ確認もしねぇで乗せたボケは!?」
 内輪で散々揉めて責任を押し付け合った後、漸く一人の男がミハイルに声をかけた。
「すまねえ旦那、そういう事なんで降りちゃくれませんかね?」
「そう言われても困るな、そっちが勝手に間違えたんだろう」
 それに、こんな何もない所で降ろされても困る。
「ジャパニーズマフィアは義に篤いと聞いたんだが、本国に帰ったらボスに報告する必要があるな」
 それを聞いて、男達は勝手に青くなった。
 そうそう、その調子でもう少し乗せてってね、流石に乗り心地抜群だし。

「ありがとうございました!」
 皆で丁寧にお礼を言って、九人の大所帯はマイクロバスを降りた。
「気を付けてな、今度はうちの旅館にも遊びにおいで!」
 りりかに手作りチョコをどっさり貰って、運転手は今来た道を戻って行く。
 さて、次の車を探さなければ。
「今度はどんな人に会えるんでしょうね!」
 ザジテンは再び張り切ってダンボールを掲げる。
 次に止まってくれたのは――
「ヘーイ、ユーたちヒッチハイクね!」
 何だかノリの良い外国人風の男だった。
「ミーのクルマみんな乗るヨ、どこでも連れてくヨ!」
 しかし、その車は車検を通ったのが不思議なくらいのポンコツで、しかも軽自動車だ。
 どうやってこれに全員乗れと言うのか。
「だいじょびネー、ミーの国じゃ屋根にも乗るフツー!」
「なら大丈夫ね、乗せて貰いましょ!」
 あ、チルルさんちょっと待ってそれ大丈夫じゃないから。
「あの、お気持ちは嬉しいのですが」
 ユウが申し訳なさそうに言った。
「この国では法律違反で捕まってしまいます」
 残念だが気持ちだけは有難く頂いて、次の車を待つ事にした。
 そして一時間後、今度は大きなキャンピングカーが止まる。
 運転席に座っているのは、体格の良い超コワモテおじさんだった。
 またしても外国人、しかも今度は言葉が通じない。
「でも止まってくれたんだから乗って良いのよね!」
 物怖じしないチルルは不明言語を野生の勘で超理解、戸惑う仲間達を車に招き入れた。
「中にあるものは何でも使って良いって」
「すごいですチルルさん!」
 尊敬の眼差しで見つめるザジテンに、チルルはまんざらでもない様子で胸を張る。
「わかんない事があったら何でも聞いて良いわよ!」
 なんたってもう何年も学園に通ってる大先輩だし。
 見よ、この溢れる先輩風オーラ!
「そこの三人も遠慮せずに頼ってね!」
 調子はどう?
 なに、今ひとつ?
「そんな時は気合と根性よ!」
 それで全てが上手く行く、多分。

 リムジンから降ろされたミハイルは、引き続き沿道に立って腕を上げ続けていた。
 しかしどう見てもマフィアなその格好を見れば、堅気の衆なら止まるどころかスピードを上げてぶっちぎりたくなるのが人情だろう。
「おい、待てこの野郎!」
 忍耐ゲージが振り切れたミハイルは縮地を発動、気付いていながら素通りした車を追いかける。
「ひえぇぇぇっ!?」
 バックミラーに映ったその姿は、まるで未来から来た殺人機械のTなんとかさん。
「た、助けてぇぇぇっ!!」
 あー、そんなにスピード出すと危ないよー?
 事故っても知らないよー?
 いや、その前にスピード違反で止められたね、交差点で張ってた警官に。
「俺? 俺は自前の脚で走ってるんだ、警察に文句言われる筋合いは無い」
 どやっ!

 夕刻、コワモテおじさんは車をキャンプ場に乗り入れた。
「そろそろ陽も暮れるし、今日はここで泊まるんだって」
 通訳のチルルが皆に知らせる。
 車には寝台が五つ、足りない分は――
「こんな事もあろうかと、テントや寝袋を持って来たわ! あたいってエライ!」
 因みにコワモテさんは明日、日本海の方へ向かうそうだ。
「明日はこう上手く行くとも限りませんし、今のうちに分かれた場合の事を考えておきましょうか」
 恋音への連絡を終え、ユウは焚き火を囲む輪に入る。
「んと…2組、3組くらい? に、分かれた方がいい、です?」
「でも、明日も大きな車が見付かれば良いんですよね。僕、頑張ります!」
 首を傾げるりりかにザジテンが言った。
「皆一緒の方が楽しいですし!」
 黒咎達とは歳が近い事もあって、もうすっかり打ち解けている――様に見える。
 と、静かに流れ始める笛の音。
「なに、これ?」
 サトルが興味を示す。
 音のする方を見ると、コワモテさんが小さな木の筒の様なものを吹いていた。
 音はオカリナに似ているが、形は全く違う。
「お師匠さま、あれは…?」
『…コカリナという楽器ですねぇ…』
 こっそり動画を送ったりりかの問いに、恋音から即座に返事が返った。
『…桜の木のオカリナとも言われる東欧の民族楽器が、日本で改良されたものだと聞きますぅ…』
 なるほど、流石は物知り。
 コカリナは皆にも聞き覚えのある曲を次々に奏でていく。
「言葉がわからなくても、何となく通じるって言うか…音楽って、すごいんですね」
 ザジテンの言葉に、サトルも無言で頷いていた。
 そしてチルルがここで一句。
 コワモテの 人情に触れる 俳句旅
 字余りの上に季語がないけど気にしない!

「…皆さん、順調に進んでいる様ですねぇ…」
 マネージャーの恋音は、旅の進み具合を表に纏めてみる。
 海路のカーディスはまだ海の上、仙台を通過したミハイルは牛タンで燃料補給、既に岩手に入っている。
 が、ひとつだけ余り進んでいない組があった。
「…先生達、大丈夫でしょうかぁ…」

 あんまり大丈夫じゃなかった、主に宿の関係が。
 近くでアイドルのコンサートがあるとかで、数日前から全て満室という予想外の事態。
 たった一部屋、空いていたのはスイートルーム――というわけで。
 当然の如く、部屋の真ん中にはダブルベッドがどーんと居座っている。
「…ひとりで、使って良いよ。俺はどこか、朝までやってる居酒屋にでも――」
 だが、そそくさと出て行こうとする門木の服を掴み、カノンは慌てて引き戻した。
「あ、あの、大丈夫です」
 絶対に眠れない自信はあるけれど。
「あ、いえ、信用してないとかではなく、むしろ別に間違いがあっても…じゃなくて!!」
「…え?」
 今、なんて?
「あの、ですから、そうじゃなくて!!」
 耳まで真っ赤にして狼狽えるカノン、だが逆に門木は何かがストンと落ちた様にクールダウンしていた。
「うん、今のは聞かなかったことにしておく」
 大丈夫、何もしない。
 そう言って貰えただけで充分だ――例え慌てた末の失言だったとしても。
「俺は向こうのソファで寝るから…」
 眠れないなら、何か話でもしようか。
 聞いて欲しい事が、沢山あるから――


 翌朝、北海道は清々しい空気に包まれていた。
「気持ちの良い朝なのですー」
 釧路港に降り立った黒猫忍者は、大きくひとつ伸びをする。
 ホテルまで辿りつけなくても大丈夫セットを背中に背負って、手には「北海道食べ歩きマップ・野生編」と「北海道ヒッチハイク旅」と書いた紙を持って、いざ出発。
「屈斜路湖は多分あっちですの!」
 黒猫忍者は歩く、ずんずん歩く。
 市街地を抜けて、道なき道を進み、やがて走り出す。
「まっすぐまっすぐー♪」
 車が止まってくれないなら自分で走れば良いじゃない、地図で見たらすぐそこだし。
 しかし彼は知らなかった。
 北の大地では全てのスケールが本州とは桁違いに大きい事を。

「今日の目的地は八戸港のフェリーターミナルだね」
 コワモテさんと別れた後、シェリーが地図の一点を指差す。
「ここから船に乗るんだよ」
 かつては苫小牧だった行き先は今、釧路に変更されていた。
「それにしても車が少ないね」
 必然的に大型車に行き会う確率も低くなる。
「今日は二手に分かれましょうか」
 ユウが言った。
「ミニバンなら五人程度は乗れるでしょうし、走っている台数も多いでしょう」
 まずは八戸市内を合流場所にしておけば、向かう車も多いだろう。
「連絡を密に取りあって、お互いに確認しながら行きましょう」
 もし何かあっても、恋音に連絡すればきっと大丈夫。
 転移装置を使って飛んで来てくれるだろう――多分、緊急依頼の名目で集めた助っ人達と共に。

「えと、あたしはテリオスさんと一緒なの…ですね」
 それに彼の使徒である黒咎の三人も。
 りりかは大人としての責任を感じつつ、四人を従えて沿道に立った。
 はっきり言ってテリオスは戦力外、引率役として役に立てるところでは頑張るのだ。
「これでも二十歳、なのですよ…?」
 そう言うとほぼ全員が驚いた顔をするのは少しばかり心外だけれど。
「車を拾うのは、三人のお仕事なの、ですね」
 楽をしている様に見えるかもしれないが、これは教育という名の愛の鞭だ。
「そういえば…テリオスさんは章治兄さまとお話しをしているの、です?」
 待っている間、話しかけてみる。
「何故」
「きっと楽しいの、ですよ?」
 ああ見えて、慣れれば色々な事を話してくれる。
「たまには兄弟でお話しをするのも良いと思うの…それにまたこうして遊びましょう…ですよ」
 そういえば、人間界を知る為にと持たされているテリオスのスマホは、ただ黒いだけの待ち受け画面だ。
 りりかは遊園地で撮った集合写真を転送、勝手に設定を弄ってみる。
「これでよし、なの」
 満足。
「華桜先輩、車止まってくれましたよ!」
 アヤの声で慌てて顔を上げる。
 危ない、置いて行かれたら迷子になってしまう…!

 その頃、カノン達は軽トラに拾われていた。
 運転手は道の駅に野菜を届けている農家の老人。
 何ヶ所か回る配達の途中らしいが、距離を稼ぐついでに名産品集めも出来て一石二鳥――と、思ったのだが。
「…え、昼間乗せて貰ったお爺さんのお宅に、泊めて頂いてるのですかぁ…」
 夕刻の定時連絡で、恋音の元にそんな報せが入る。
 しかも暫く動けそうにないとか。
「…事件や事故ではないのですねぇ…はい、わかりましたぁ…」
 一体、何が起きているのやら。


 三日目の朝には、彼等を除いた全員が無事に北海道へと渡っていた。
 それを確認した恋音は転移装置で屈斜路湖に移動し、付近の宿と足を確保しておく。
 先に着いた人から順に温泉でゆっくり出来るように手配して、後は皆を待つだけだ。
 修学旅行で函館に来た時以来の北海道、ここから先は未知の世界。
 全員が揃ったらマネージャー業は返上だ。

「俺はこのまっすぐ道路を思いっきり走りたい!」
 ミハイルはその宣言通り、走っていた。
「車…全然走ってねぇな!」
 さっきから人家が全く見えないし、腹も減ってきた。
 ここでは「ちょっとコンビニで腹拵え」というわけにもいかない。
 補給が出来ないと思ったら、ますます腹が減ってきた。
「誰か俺の空腹を何とかしてくれ!」
 そうだ、荷物の中には仙台で買った銘菓があるじゃないか。
「俺、これ大好きなんだ」
 名産品集めの為に買ったものだが、背に腹は代えられない。
 腹拵えをしたら阿寒湖に寄ってマリモを捕まえよう。
 しかし、そろそろ普通の道にも飽きて来た。
「少し脇に逸れてみるか」
 道なき道を、いざ行かん!

 その頃、黒猫忍者は半ば野生化していた。
 既に荷物の大半を失い、毛並みはぼさぼさ、お腹はぐうぐう。
「…こ ここはどこですか!?」
 森の中です。
「とりあえず人里に出たいです! 人間に会いたいです!」
 出会ったのは熊さんでした。
「きゃあぁぁぁ!」
 涙で全力ダッシュの黒猫忍者、彼の明日はどっちだ。

 それはミハイルが知っていた。多分。
「よう、カーディスじゃないか」
「あぁーーんみはいるさーーーーーん!!。゜(゜´Д`゜)゜」
 全力ダッシュでその胸に飛び込む――が。
 ずだぁんごろごろどっしゃーん!
「なぜよけるんですかぁ…(うるっ」
「すまん、つい」
「えぐえぐやせいにかえってしまいそうでしたの!!」
 ちーん!
「俺のスーツで鼻をかむな!」
 そんなこんなで、行くぜ阿寒湖!
 黒猫忍者を引きずって、湿原を突っ切り谷を飛び越え、まっすぐに。
「あの地平線の向こうへ行こう!」
 うふふ、あはは。

 そして着いたよ阿寒湖に!
「まりも! まりも! どこですのー!」
 あれだ。
「でけぇ!」
 しかしマリモは採取不可、仕方ないから人工マリモで我慢してやるんだぜ。
「今日から俺のペットな。名前は…」
「まりりん、とかどうでしょうー」
 何か聞こえた気がするが、まあ後で適当に考えるか。
 マリモプリンにマリモ羊羹、マリモを模したデザートを堪能したら、次は待ってろ屈斜路湖!

 一方こちらは大所帯。
「車、通りませんね」
 ザジテンは疲れた様子で道路脇に座り込む。
 先程から一時間余り、一台の車も通っていなかった。
 おまけに何だか空の雲行きが怪しい――と思っているうちに雨が降ってきた。
 ビニール傘はあるけれど、そこに入れるのはせいぜい二人だ。
「どこか雨宿り出来る場所…」
 シェリーが辺りを見回すが、ない。何もない。
 とりあえず木の下に駆け込んで雨を凌ぐ。
「大丈夫、止まない雨はないよ」
 不安げな子供達にタオルを手渡し、シェリーはにっこり微笑んだ。
「濡れたところ拭いておいてね、風邪引くといけないから」
 そうだ、丁度良い――
「折角だから、私の昔話…聞いて貰えるかな?」
 シェリーは何事かと目を向けた黒咎の三人に向かって話し始めた。
「私、幼い頃に苛めにあった事あるんだ。日本生まれ・日本国籍持ちの外人だから、純日本人の小学校に通ってたんだけど…それで悪ガキ達に目を付けられて、ね」
 久遠ヶ原では珍しくもないだろうが、普通の学校ではさぞかし目立ったことだろう。
「最初は知られたくなかったからずっと黙ってた。けど、やっぱり耐えられなくなって。だから、勇気を出して…先生に…友達に打ち明けた」
 サトルの顔に怯えた様な色が広がる。
「そうしたら、ちゃんと手を打ってくれたよ。それに、苛めに対しても嫌な事は嫌だと言える様になった」
「大丈夫、だったんですか? 仕返しとか、なかった?」
「うん」
 シェリーは少し悪戯っぽく笑う。
「…母さん譲りの性格と言われる様になったのは、その頃からかな」
 だから皆もそうしろ、とは言わない。
 ただ、こんな方法もあると伝えたかった。
「あそこで打ち明けなければ、私は今も苛められっ子だったかも――あ、虹」
 いつの間にか雨は上がり、空には大きな虹がかかっていた。
「お祈りが通じましたよ!」
 てるてる坊主を握り締めたザジテンが得意げに胸を張る。
 来ない車を待っていても仕方ない、お菓子でも食べながら皆でのんびり歩こうか。

「くっしゃろこーー! わたしはたどりついたぞー!」
「クッシーはどこだー!」
 土煙を上げて走って来る、黒い人と黒い猫。
 一番乗りは、この二人――ではなかった。
「ふはははは、残念やったな!」
 ゼロさんは可愛いおねぇさんや綺麗なレディに各所でおもてなしを頂いて、ついでに車に乗せて貰ってお土産も頂いて、もうウハウハ(死語)です。
 もちろん実況しながらですよ、皆さん忘れてませんよね?
 あんまり早く着いたので、余興に落とし穴など掘ってみました。
「。゜(゜´Д`゜)゜。わーんゴールですnっ!?」
 ずぼーん!
 見事に嵌まった黒猫忍者、そして『大成功』の看板を看板と高々と掲げるゼロの勇姿。
「てってれー♪」

 広い道路を借り切って、大所帯はじゃれ合いながらダラダラ歩く。
 と、そこに後ろからクラクションが。
「道いっぱい広がってチンタラ歩くなガキ共、轢かれてぇのか!」
 怖そうなオッチャンが怒鳴る。
 あれは家畜運送用のトラックか。
「邪魔だ、乗ってけ!」
 え、乗せてくれるの?
 この人も顔は怖いけど根はいい人系だった。
 荷台はちょっと牛臭いけど、この際だから文句は言わない。
「人界生活も今月で一年、少しは物知りになったと思っていましたけど」
 まだまだ足りないなぁと、ザジテンは大きく息を吐く。
 人間界って奥が深い。

 そして来ました屈斜路湖。
「ばんざーい、ばんざーい!」
 恋音の出迎えを受けて、ザジテンは思わず万歳三唱。
 ユウは喜び合う皆の姿を写真に収める。
 ところで――
「章治兄さまは、まだなの…です?」
「…はぃ…まだ盛岡の辺りで足止めされているそうですぅ…」
 一体何をしているのやら。
 待っている間に湖畔を散歩したり、買い物にでも行ってみようか。
「アヤさん、何かあればあたしで良ければお話しを聞くの…」
 女の子同士、秘密の恋バナとか?

「クッシーは昼寝中か?」
 ミハイルはひとり湖畔をウロウロ。
「俺が会いに来てやったんだ、姿くらい見せろ」
 しかし相手は野生動物(?)、遭遇には根気と忍耐が必要だ。
 ホテルのベランダに動画モードにしたスマホをセットしておけば何かが映るに違いない。
 きっと、多分。


 翌日。
「遅かったじゃないか章治、何を…」
 出迎えたミハイルが門木の頭を見て驚く。
「章治にいさま、髪が短くなったの…です?}
 何があったのかと、りりかが訊ねる。
「まあ、色々な」
 話すと長くなるから割愛させて貰おうと思ったら。
「ならこのゼロさんが、かいつまんで話したるわ」
 ゼロさんはは何でもお見通しなのです、だって神様ですもの――たこ焼き専門だけどね。
「まず事の発端は、軽トラの爺さんが車の乗り降りしんどそうにしとった事や」
 そこで門木が運転席にステップを設置してやった。
「感謝感激の爺さんは自宅で熱烈歓迎、しかしそこがえらいボロ屋で、きっつぁん今度は雨漏りの補修やら何やら始めよってな」
 その家は息子に先立たれた老夫婦の二人暮らし、彼等にその姿を重ねるのも無理はない。
 門木は家の補修や畑仕事の手伝いを、カノンはお袋の味を受け継ぐべく料理を仕込まれて、ぷち親孝行もどきを演じてきたという次第だ。
 この髪も婆さんに切って貰ったらしい。
「詳しくは夜に、実況付きの上映会を行います!」
 大丈夫、部屋の中までは遠慮したから。
 でもその前に、酒盛りだ!

「月見と言ったらお酒ですよね! 浴びるように飲もう!!」
 しかし何故かその背を押して、シェリーはホテルのテラスへと案内する。
 花や電飾で飾られた一角には、チルルに恋音、りりかの姿もあった。
「超魔王と大魔王の揃い踏みて、何やこれ」
 と、クラッカーの弾ける盛大な音と共に、大きな幕が広げられた。

『お誕生日おめでとう』

 今日は9月生まれの四人全員のサプライズパーティだ。
「え、あたいも!?」
 チルルは目を丸くして、そう言えばと思い出す。
 テーブルにはミハイルが用意した四つのケーキと、皆からのプレゼントが置かれていた。
 幸運のマリモキーホルダーはミハイルから。
「おたんじょうびおめでとうですよ!」
 瓶詰めのマリモとお手製のマリモゼリー(ゼロには酒入り)は黒猫さんから。
 門木はゼロに東北の銘酒を、女子三人にはそれぞれの誕生花をブーケにして。
「りりかには、これな」
 良い香りのする茉莉花の花束を差し出す。
「ありがとう、嬉しいの…」
 お礼に手作りチョコはいかがですか?
 もちろん皆でね!

「ね、明日は知床半島行ってみない?」
「知床!」
 シェリーの提案に、自然大好きっ子のザジテンはテンションMAX。
 帰りは女満別から羽田行きの飛行機もあるし――
「明日はスーパームーンだし」
 シェリーが言った。
 十五夜に劣らぬ月見イベント、これは外せない。
「…では、そのように手配しておきますねぇ…」
 恋音がメモを取りながら頷いた。
「…折角ですしぃ、観光船でクルーズしながらのお月見は如何でしょうかぁ…」
 よし、それで行こう。


 そして船の上。
「付き合わせて、悪かったな」
 月を眺めながら、門木はカノンに声をかける。
「俺、ああいうの弱くて…」
「知ってます」
「うん」
 その様子をこっそり写メったユウは、早速リュールに送信。
 これを見れば余計な解説は要らないだろう、うん。

 少し離れた所では、年少組が目を輝かせている。
「お月見も旅もできて楽しかったです」
 ヒリュウを頭に乗せ、ザジテンは満足そうに微笑んだ。
 海の上には金色の道がまっすぐ沖まで続いている。
 その上を歩いて、どこまでも遠くに行けそうな気がした。


 尚、ミハイルの定点観測カメラには、何か黒い物体がぼんやりと映っていたそうな。
「クッシーか!?」

 いや、それ多分――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
重体: −
面白かった!:9人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
天蛇の片翼・
カノン・エルナシア(jb2648)

大学部6年5組 女 ディバインナイト
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
Cherry Blossom・
華桜りりか(jb6883)

卒業 女 陰陽師
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
海に惹かれて人界へ・
ザジテン・カロナール(jc0759)

高等部1年1組 男 バハムートテイマー
もふもふコレクター・
シェリー・アルマス(jc1667)

大学部1年197組 女 アストラルヴァンガード