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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
形態:
参加人数:9人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/08/07


みんなの思い出



オープニング




 悪魔シマイ・マナフは滅した。

 あれから一ヶ月近くが経とうとしている。
 まだ一部の残党が残っているとは言え、種子島の北部から冥魔の影は消えた。
 南部には相変わらず天界の勢力が居座り続けているが、北部はほぼ安全と言って良いだろう。

 その間、リコ・ロゼ(jz0318)は休む暇もなく島じゅうを飛び回っていた。
 最初の頃は荒らされた町の片付けや、復興作業に携わるスタッフへの炊き出しの手伝い。
 それが落ち着いてからは不自由な生活を余儀なくされた人々への慰問。
 今日も午前中に幼稚園で子供達の相手をして来たところだ。
 そして午後からは別の幼稚園に慰問に行くことになっている。
「リコのディアボロ、すっごい人気なんだよっ♪」
 仮住まいにしている旅館の食堂で昼食を摂りながら、リコはそう言って笑った。
 ここは以前、市役所を拠点としていた八塚 楓(jz0229)と対峙した時に、仲間の撃退士達と共に宿泊した所だ。
 シマイの拠点が失われた今、リコはそこを根城としている。
 主人の厚意によって宿泊費も食費も無料だが、リコは予定がない時には旅館の業務を手伝っていた。
「リコちゃん、あんた働きすぎだよ。少しは休んだらどうなんだい?」
 心配した女将が声をかけるが、リコは大丈夫だと首を振る。
「リコ、島の人にすっごいめいわくかけちゃったし」
「そんなもの、もうとっくにチャラになってるよ」
 もうリコのディアボロを怖がる子供はいない。
 子供達がリコと遊ぶ事を良く思わない親も――いないとは言わないが、かなり減って来た。
「あんたの事を悪く言う者なんて、もうこの島にはいやしないよ」
 それでも、リコは首を振った。
「そうかもしれないけど……だったら余計に、リコはみんなの役に立ちたいんだ♪」

 嘘ではない。
 けれど、もうひとつ理由があった。
 忙しくしていれば、思い出す暇もないから。
 今は何も考えたくないから。

「まったく、しょうがないねぇ」
 女将は呆れた様に肩を竦め、言った。
「そんなに仕事が好きなら、これもあんたに頼もうかね」
「え、なに?」
 興味津々の様子で身を乗り出して来たリコに、女将は先程予約を受けたばかりの一件について話し始めた。

「宇宙センターの近くにある施設から電話があってね」
「え……それってもしかして、ひまわり園?」
「なんだい、知ってるのかい?」
「うん、去年一緒にお泊まり会したんだ♪ かっこいいお兄さんがいるんだよ!」
 かっこいいお兄さんとは、涼風爽(すずかぜ・そう)の事だろうか。
 彼の本職は宇宙センター勤務の技術者であって、施設の職員ではないのだが――どうやらリコは勘違いしているようだ。
「そうかい、知り合いならますます丁度良いね」
 女将は話を続ける。
「そこの子供達が、海水浴に来るんだよ」
 南部はまだ危ないが、北部はほぼ安全だ。
 外で思いきり遊ぶ事も出来ず、窮屈な思いをしてきた子供達に、一足早く自由を満喫させてやりたい。
 そう考えて企画された小旅行だった。
「一週間後、二泊の予定で泊まりに来ることになっててね」
 その間の子供達の世話や万一の事態に備えた護衛が今回の仕事だ。
「念の為に、久遠ヶ原学園にも頼んでおいたから、そっちからも何人か来ると思うけど――」
「えっ、ほんと!?」
 目を輝かせたリコに、女将はこくりと頷いて見せた。
「まあ、そうそう何かが起きるとは思えないし、保険みたいなものだけどね」
 撃退士達にも「遊びに来るつもりで構わない」と言ってある程だし、リコにとっても良い休養になるだろう。
「じゃ、任せたからね」
「うん、任されたよっ!」
 ぽんと肩を叩いた女将に、リコは大袈裟なガッツポーズで応えた。

 また皆に会えるかもしれない。
 遊びじゃなくて、お仕事だけど。

「たっのしみぃーーー!」


 ――――――


 そして当日。
 やって来たのは孤児院の子供達20人あまりと引率の職員達、そして何故か今回も一緒だった爽兄ちゃん。
 彼等は着いた早々部屋に荷物を放り出し、近くの海水浴場へと走る。

 しかし――

 暫くは何事もなく、監視役の撃退士達が「このままずっと遊んでいるだけで大丈夫そうだ」と思い始めた頃。
 海中からそれが現れた。

「なに、あれ……?」
 最初に気付いたのはリコだった。
 波間に浮かぶ、丸く半透明な物体。
 クラゲのように見えるが、まだその季節には早い気もする。
「るーたん、ちょっと見て来てくれる?」
 リコはイルカのぬいぐるみ型ディアボロに偵察を頼んだ。
 丸っこいピンク色のイルカが不器用に泳ぎ、浮遊物に近付いていく。
 が――
『ぴぃぃーーーっ!!』
 突然の悲鳴と共に、ピンク色の背鰭が波間に消えた。
「るーたん!?」
 呼び戻そうとしても反応がない。

 クラゲの様なぶよぶよは波間を漂いながらゆっくりと近付いて来る。
 それは次第に数を増やしながら岸に近付き、やがて海から上がり――ぶよぶよの下から伸びた無数の触手で立ち上がった。
「流石は種子島、宇宙人のお出ましかな」
 爽が鼻で笑っている。
「でも、ずいぶんとレトロなデザインだね……今時あまり見かけないかな」
 クラゲのようなタコのような。
 身長は爽よりは低く、リコよりは高い。
 頭のぶよぶよは直径2mほどもあるだろうか。
 半透明な傘の中に、ピンク色の塊が見えた。
「るーたん!」
 リコの声に反応し、塊がぴくりと動く。
 まだ生きていた。
 どうやら、それは獲物を丸呑みにして、身体の中に蓄えておくらしい。
 生かしたまま捕まえるのは、天界勢の手法だ。
「ってことは……これ、サーバント?」
 しかし、天使の勢力圏は島の南側だけだった筈。
 悪魔が退いた為に、北上を始めたのだろうか。

 いや、今はそんな事を考えている暇はない。
 海水浴客は他にも沢山いる。
 彼等を安全な場所に逃がして、このサーバント達を一匹残らず退治しなければ。




リプレイ本文

 青い空、白い雲、どこまでも広がる海、そして宇宙人。

 宇宙人?

「…何か出ましたね」
 せっかく友達と遊ぼうと思って来たのにと、音羽 千速(ja9066)が眉を寄せる。
 その顔は無粋な邪魔に対して怒っている様な、そのデザインの時代錯誤的な空気読まない感に呆れている様な。
「バカンスって聞いたらなんやサーバント?」
 浅茅 いばら(jb8764)は、あからさまに不機嫌な顔でソレを睨み付けた。
「ッたく、折角のおもろい気分台無しにせんとってや」
 そう言って、リコの腕を掴んで引き戻す。
「リコは下がっとき」
「でも!」
 リコは宇宙人に呑み込まれたピンクのイルカを指差す。
「大丈夫、僕達がイルカさんを助けます!!」
 答えたのは千速だった。
 あれがサーバントなら、ヴァニタスであるリコを矢面に立たせるわけにはいかない。
 それに、ぬいぐるみがなければリコは戦う事も出来なかった。
「だから皆を守って後方に下がって!」
 その言葉に渋々ながらも従い、リコはいばらと共に下がる。
「久しぶりにまったり出来る依頼だったのにィ…」
 木陰で昼寝を楽しんでいた黒百合(ja0422)がゆっくりと身を起こした。
「…まァ、いいわァ。新ジョブの練習台になってもらうからァ…♪」
(ナマアシみわくのサーバントってか…)
 サラ・U(jb4507)はそれをガン見しつつ、いつ覚えたのか懐かしい歌のワンフレーズっぽい台詞を思い浮かべた。
「お父さんが撮りためてたヒーローアニメによく出てくるの火星人みたいな…ああいうアレ」
 語彙がアレだが、とにかくそういうアレは、のーさんきゅー。
「さっさと片付けちゃおう!」
 とは言え小さな子供達を怖がらせるわけにはいかないし――
「子どもが見てるから、ただ倒すだけじゃもったいないね」
 え、そっち?
「カマふぃ達といるうちに、だんだんやりたくなっちゃって!」
 着ぐるみ戦隊とか楽しそうだよね!
「わかった、じゃあまず僕が!」
 きさカマこと私市 琥珀(jb5268)が、仮の姿(人間体)のまま立ち上がる。
 皆を集めて作戦会議、ああしてこうして、ごにょごにょごにょ。
「いくよ! とりゃー!」
 琥珀は愛と勇気だけを武器にして徒手空拳、宇宙人に向かって突撃!
 しかし、お約束のようにあっさり触手に捕まって、腹(頭?)の中に呑み込まれた!
「ぎゃぁー!」
 服が! 服が溶ける!
「なんやあれ、えげつな…っ」
 いばらはますます嫌悪感を露わにしてリコを背後に隠した。
「服とかすとか、ほんまになんやねんこいつら…」
 カオスレートとかそう言うことよりも、何より、服が! 服が溶けるなんて!
「肌なんて露出するんはあかん」
 そんなの、お父さん許しません――じゃなくて。
 誰にも見せたくない、それが本音。
「うちが肌をさらすんもまっぴらごめんやけど!」
 だから下がる。
 宇宙人に捕まった仲間を見捨てるわけではないけれど、思いっきり後ろに下がる。
 でも大丈夫、琥珀には星の輝きと真の姿がある!
 琥珀はブヨブヨの傘をその拳で突き破って見事に生還、すかさず星の輝きを使った!

 解説しよう。星の輝きとは自身を中心とした半径20m程度を明るく照らし、己の姿を輝かせるスキルである。
 ただし自分よりもレベルが10以上低い敵や一般人は、あまりの美しさに目が眩み、思わず顔を背けてしまうのだ。
 つまり、ギャラリーには何も見えない筈。

 さあ皆、今のうちに変身するんだ!

 琥珀は勿論、カマキリの着ぐるみで毎度お馴染みきさカマに!
 香奈沢 風禰(jb2286)は勿論カマふぃに変身だ!
 黒百合は熊の着ぐるみを着込み、サラはもふもふにセルフ改造した怪獣の着ぐるみに身体を押し込み、頭にはケセランの頭巾を。
(き、着ぐるみ…!)
 茅野 未来(jc0692)は着ぐるみを持っていなかった。
(え、と、どうしよう…)
 荷物をがさごそ、ようやく見付けたのはラビットファーニットとうさぎパーカー。
 これで何とかうさぎに…!
 鳳・白虎(jc1058)はどうやら着替える必要はないらしく、抗魔のマントを身体に巻いてその場に立つ。
 そしてアルティミシア(jc1611)は闇の翼で遥か上空へ舞い上がった。
 千速といばら、そしてリコは変身せずに生身で戦う枠だ。

 一分足らずの間に着替えを済ませたヒーロー達は、波打ち際にずらりと勢揃い。
「毎度御馴染みのカマふぃが来たなの! 宇宙人にお仕置きなの!」
「僕はきさカマ! 悪い宇宙人をやっつけるぞー!」
 力の1号カマふぃと技の2号きさカマは、互いのカマを合わせてびしっとポーズを決める。
 あ、誰かここ写真撮ってくれてもいいのよ?
「がう! がうがうー!」
 黒百合は熊になりきっていた。
 熊は普通、喋らない。故にこの声だ。台詞がないのは楽で良い、かも。
 サラは超嬉しそうなとびきりの笑顔でバッと振り向き、光輝くシャインセイバーを振りかざした。
「愛と正義ともふもふの味方、けサラん参上!」
 その顔には「くぅーっ、これやってみたかったんだー!」と書かれている、ような。
「え、えと、なのり、とか…するの、です?」
 未来は涙目でぷるぷる震えながら、それでもなんとか頑張った。
「う、うさみみくなの、です、ぴょん!」
 と、跳ねたところで隣の白虎に思いっきりびびる。
「ぴゃっ!?」
 だって大きな人がいきなり派手にマントを翻すとか心臓止まるレベルで怖いから!
「宇宙人め、俺たちが相手だ! 変身っウイングタイガー! とぅっ」
 悪魔の血を活性化させ、その名の通り白い虎のもふもふ獣人となった白虎は着ぐるみ要らず。
「おっと、怖がらせちまったか?」
 隣でぷるぷるしている未来の頭をぽふぽふしてみるが――あれ、逆効果だった?
「で、でも、がんばるの、です。だって、いるかさんが…!」
 可愛いぬいぐるみのおかげでやる気UP。
「戦闘が終わったらサインが待ってるなの! ちゃんと見てるといいなの!」
 カマをぶんぶん振ってアピールし、カマキリあんどフレンズのヒーローショーの開幕だ!

「がう!」
 真っ先に飛び出した熊百合が、その手で皆を制する。
 ジェスチャーで「雨」と「爆発」と「危険」を表現し、誰も近付かないようにと念を押すと、超カッコイイポーズ(主観)でコメットを発動した。
「がうがう、がー!」
「かわいいー!」
 それを見ていた子供達から歓声が上がる。
 しかし、当の熊さんは何やらご不満な様子。
「がう!」
 違う? 可愛いじゃなくて格好良い?
 これは失礼しました、でもその着ぐるみはどう見ても可愛い――と、それは置いといて。
 開幕爆撃で頭数を減らすのは基本、更にはきさカマも加わって視覚効果も抜群だ!
「カマ流星群をくらえー!」
 隕石で押し潰したら、次は蠍の劫火で焼き払う!
「がう!」
 一通り派手に撃ち込んだら、後は近寄らずに遠距離から。
「この姿になったら、きさカマは無敵だ! ばすんばすん行くよー!」
「行くなのー!」
 カマふぃは鳳翼霊符でぺちぺち叩きながら、蠱毒を織り交ぜて宇宙人に毒を与えていく。
「宇宙人にもカマふぃの毒は強力に効くなの!」
 本当はただのサーバントだが、そこは演出の都合で。
「がおー!」
 けサラんは微妙にがに股で敵に向かって突進して行く。
 出来れば優雅に華麗に行きたかったところだが、元が怪獣の着ぐるみだからそこは仕方ない。
 襲い来る触手を手当たり次第にぶった切り、けサラんは進む!
「手? 足かなぁ…よくわかんないけど、切り落としちゃえば動き回れないよね!」
 絡み付いて来るやつは尻尾で薙ぎ払え!
「おようふく、とけるだけ…いたくない、です?」
 うさみみくは、少し下がった位置で皆の様子をじっと見ていた。
 彼女にとっては、服が溶けてなくなっても、心配なのは着替えの事のみ。
 別に見られても何とも思わないし、見る方も多分平気、だってお風呂だってお父さんと一緒だし。
「でも…とじこめられて、いきができなくなるのはくるしそうなの、ですね…」
 助けなきゃ。
「みんなにめいわくをかけるのはいけない、です…」
 怖いけど、可愛いイルカさんの為なら――
「いるかさん、たすけるの、です…!」
 未来はるーたんを呑み込んだ宇宙人に向かって走る。
 小太刀を持った両手をぶんぶんグルグル振り回しながら、駄々っ子アタック!
 だがしかし波打ち際で急ブレーキ、相手は海の中だった!
「…ボクおよげない、です…」
 しょぼーん。
「大丈夫だ、俺が取り返して来る」
 困った顔で海を見つめるその頭をぽんと叩く――
(いや、また泣かれるのは勘弁だな)
 叩こうとして引っ込め、白虎はもふもふ陰陽の翼を広げた。
「いくぜ、フライングタイガー!」
 かーらーのー!
「タイガーパーンチ!」
 その拳が宇宙人の傘を真上から突き破る!
 ぐずぐずに崩れた傘の中からピンクのイルカを拾い上げ、白虎はリコの元へと促した。
「ほれ、ご主人様のトコへ帰んな」
『きゅー!』
 嬉しそうに飛び跳ねて泳ぎ去るイルカ、だがそれを狙って別の宇宙人が触手を伸ばす!
「っと、やべぇ!」
 白虎は慌ててそれを防ごうとするが、間に合わない!
 しかし!
「ボクに任せて!」
 水上歩行で海に出た千速が辻風で触手を弾き飛ばし、本体を水鏡旋棍で叩き付けた。
 傘が弾け飛び、半透明なゼリー状のブヨブヨが波間にバラ撒かれる。
 千速はそのままるーたんの護衛に付くと、無事にリコの所まで送り届けた。
「ありがと、ちはやん! これでリコも戦えるよっ!」
 しかし、即座にいばらからのダメ出しが。
「あかん、うちらに任しとき」
 そのイルカ、どう見ても攻撃力なさそうだし。
「リコは子供達が怖がらんように声かけたって。それも立派な戦いやと思うし」
「…そっか。うん、わかった!」
 くるりと後ろを振り向いたリコは、まるでイルカのぬいぐるみが喋っているかの様にそれを動かしながら、子供達に向かって戦いの実況を始めた。
 それを見て安心したいばらは海の方に向き直り、飛燕の構えを取る。
 だが、仲間の壁を越えてくるものは殆どいない。
「護りは任せて!」
 もっふもふけサラんは触手を輪切りにしつつ盾を構え、或いは水弾を拳で弾き返して侵攻を防いでいた。
「やれやれ、どうやら無事に戻ったな」
 白虎はるーたんの無事を確認すると戦列に復帰、女の子達にデロの被害がないか警戒しつつ宇宙人を叩いていく。
「男は自己責任だ、まあタオルくらいは投げてやるがな」
 本人の為ではなく、周りがアレなモノを見なくて済むように。
 とは言え、そんな事態には陥る事もなく片が付きそうだった。
「せっかく、友達を作るチャンス、なの、に…くらげに邪魔された」
 上空に浮かんだアルティミシアは手にした法具にアウルを込める。
「許しません」
 数珠玉のひとつひとつに閉じ込められたリンドウの花びらがふわりと浮かび上がり、花びらの列をなして渦を巻く。
「あなた(くらげ)のハート、(物理的に)撃ち抜いて、あげます」
 花びらの渦が収縮し、弾け、一列になって眼下の敵に吸い込まれていった。
「…くらげにハート、ありました、か?」
 撃ち抜かれてキュンキュンするようなハートは持ち合わせていないだろう。
 だが心臓は、多分ある。
 そこを撃ち抜かれれば、ハートブレイクどころか確実に息の根が止まるだろうけれど。
「人の楽しみを、邪魔する方は、制裁を受けても、文句は言えないの、です、よ?」
 天から降る花びらは、その美しい絵面とは裏腹に容赦なく敵を沈めていく。
 このまま何事もなく終われば、新たなデロ被害は出さずに済みそうだった。
 しかし、どこかでそれを残念がる声がした――気がする。
 謎の電波を受信した一体の宇宙人が、海中に姿を消した。
 そのまま透過で砂に潜り、獲物に近付いて行く。
 今回、多くの者が阻霊符を持っていたが、誰もそれを使おうとはしなかったのだ。
 そして遂に犠牲者が出てしまった。
 カマふぃの足元から姿を現した宇宙人はその身体を触手で絡めとり、ばっくん!
 腹の中で必死に抵抗するカマふぃ、すぐさまブヨブヨを突き破って脱出するが、身体に纏わり付いた粘液がカマキリの外皮(着ぐるみ)を溶かす!
「この姿は『素』なの! 人類の初めの姿は皆、この『素』なの! いわゆる『裸』!!!!」
 だからデロくたってカマキリはカマキリなのであると、力説するカマふぃ。
 しかしそれは内容が高度すぎて常人には理解し難いものだった。
「カマふぃ、落ち着いて!」
 きさカマが再び星の光をぺかーっ!
 皆が目を逸らしてるうちに、早く着替えを!
 あ、溶けた外皮は学園に帰る頃には不思議な力で復活しますので、ご安心を!
 きさカマはカマふぃの仇(死んでません)に怒りのレイジングアタック!
「がうー!」
「がおー!」
 最後に残った一体を熊百合が雷の剣で貫き、けサラんが一刀両断!
 ギャラリーから拍手が湧き起こる!


「ありがとう、とても楽しいショーだったよ」
 口裏を合わせた爽が皆の活躍を労う。
 子供達はすっかり「自分達の為に用意された特別なショー」だと思い込んだ様だ。
「そう言や初対面だったな」
 白虎が爽に握手を求めて来る。
「爽って呼んでも良いか?」
「ええ、どうぞ…じゃあ俺はパイさんって呼ばせてもらおうかな」
 それともフーさん――は誰かと被るから、トラさん…も、有名な人がいるか。
「やっぱりパイさんかな」
「ああ、好きなように呼べば良い」
 白虎は子供達の前にしゃがみ込む。
「俺は白虎(バイフー)だ。呼びにくかったらおじさんで良いぞ」
「じゃあ、ぱいぱい!」
「ぱ…」
 ああ、いや、子供達は単に語呂が良いからそれを選んだのだろう。
 中華な魔法少女でもパンダな宇宙人でも、ましてやおっぱいの事でもない。多分。
「おう、よろしくな」
 その様子を見ていたリコが、じっと白虎の顔を見つめる。
「とらおじさん、なんかカッコよくなった?」
 今度はシブいオジサマを追っかけるのも良いかな。
「でも爽ちゃんもカッコイイし、リコ迷っちゃうな〜」
 それを聞いて、いばらは心中穏やかではない。
 穏やかではないけれど、それがリコの本心ではない事も、何となくわかってしまった。
 そんな風に誤魔化していないと、辛くて堪らないのだろう。
「ね、皆で買い物とか行かない?」
 もふもふ着ぐるみを脱いで、麦わら帽子を被り直したサラが言った。
 この砂浜は片付けが終わるまで立入禁止になる。
 BBQの予定は明日の昼だが、今のうちに準備をしておこうというのだ。
 だが、目的はそれだけではなかった。
 リコには内緒だが――
「実はな」
 こしょこしょ、白虎が爽の耳元で何事かを告げる。
「そういう事なら、俺も喜んで協力させてもらいますよ」
 知らぬはひとり、リコばかり。
 だがこれはサプライズ、リコにはもう少し待っていてもらおう。


「爽さんはフィー達と一緒に行くなの!」
 カマキリの外皮を一時的に失った風禰は今、人間体だ。
 よって一人称も「カマふぃ」ではなく「フィー」である。
「お休み中のカマふぃの分まで僕がカマキリとして頑張るよ!」
 というわけで、きさカマは以後、常にカマキリとして生きる――少なくとも帰りの船に乗るまでは。
「きさカマは買い出しをする、いっぱい買い出しする」
「れっつごー、なの!」
 爽を巻き込んで、いざ商店街へ。
「爽さん、ちゃんとまだ宇宙センターにはカマポス張ってるなの?」
「ご心配なく、ちゃんと貼ってあるよ」
 いつ抜き打ちで検査に来るかわからないから剥がせない――とは言えないけれど。
「じゃあ、孤児院のもちゃんとラミネ加工はしておいてほしいなの!」
「仰せの通りに、お嬢様」
 くすくすと笑いながら、爽は恭しく頭を下げる。
 そんな話をしながら真っ先に向かったのはオモチャ屋だった。
 まずは大量の花火を買い込んで、次は――
「人生ゲームでカマキリの人生を満喫するなの!」
 ごめん意味わかんない。
 そのうちオリジナルで「カマキリライフバージョン」とか作ってしまいそうな気がするけれど、そもそもカマキリの一生ってそんなにバラエティ豊かなものだったろうか。
「次はBBQの材料なの!」
 ついでにケーキ作りの材料も買い込んで、今夜は二人で頑張るのだ。

「買い物です、か? ボクも、一緒で、良いのでしょう、か」
 リコに誘われたアルティミシアは、殆ど表情を変えずにかくりと首を傾げた。
 そうすれば友達になれるのだろうか。
 一緒にご飯を食べたり、話をしたり、海で遊んだり。
「うん、大勢の方が楽しいでしょ? だからアルたんも――ミクりんも一緒に♪」
 急に話を向けられて、未来は跳び上がるほど驚いた。
 大きい人、怖い。リコはそれほど大きいわけではないけれど、小さな未来から見れば充分に怖い人だ。
 身長差的に怖くないのは唯一アルティミシアだけだろうか。
 とは言え超人見知りな未来は、それでも慣れるまでにかなりの時間がかかるのだけれど。
「んー、リコ嫌われちゃってるかなー」
 そうじゃない、と思いつつも言葉が出ない未来の顔を見て、リコは抱えていたイルカのるーたんを差し出した。
「でもこの子は気になってしょうがないって顔してる」
 図星だ。
「いいよ、しばらく面倒見てあげてね?」
 預けられたるーたんにメロメロほわほわ、幸せそうにもふる未来は、頭を撫でられた事にも気付かないほど夢中になっていた。
「じゃ、行こうか!」
 サラが声をかける。
 同行するのはリコと千速、それにアルティミシア。いばらと白虎は荷物持ち担当だ。
 黒百合もどこかへ行ってしまったし、これで全員が出払ってしまう事に。
「え、あ…」
 流石に一人で残るのは心細いし――それにサプライズ企画の事も聞いている。
 今日はじめて会った相手だし、やっぱりちょっと怖いけど、でも。
「おめでとう、っていってもらえるのは…きっとうれしいの、ですね…」
 皆を見失わないうちに、未来は小走りでその背を追いかけて行った。

 買い物の途中、何人かはこっそり別行動でプレゼントを選ぶ。
(でも何が良いんだろう?)
 中一男子に女の子が喜びそうなものは、ちょっとよくわからない。
 千速はその代わりに豪華なデザートを奮発する事で手を打ったようだ。
 未来が選んだのは、小さな白い薔薇の飾りがついたヘアピン。
「きれいなかみのいろ、つけたらきっとかわいい、です…」
 可愛く包んでもらって、ぎゅっと胸に押し当てる。
「…が、がんばっておめでとうっていうの、です…」

 一方、黒百合は一人離れて釣りを満喫していた。
 釣りと言っても竿と糸を使うばかりが釣りではない。
 予め手配しておいたウェットスーツを着込み、足にはフィンを装着、背中には酸素ボンベを背負って、物質透過オン。
 銛と網を持って海中へ沈む。
 海水を透過すると、水の抵抗は全く感じなくなった。
 これなら水の流れで獲物に気付かれる事もないし、邪魔な岩や珊瑚も、毒を持つ魚屋危険な鮫などもスルー出来る。
「後は息を止めておけば完璧かしらァ♪」
 暫し海底をまるで地上の様に歩き回り、その景色を満喫しつつ獲物を探す。
 狙うはマダイや伊勢エビなどの高級魚だ。
 上手く獲れたら今夜のおかずに出来るだろうか――

 そんなわけで、夕食のメニューは豪華な伊勢エビの造りに鯛飯、トコブシの天ぷら、キビナゴの塩焼きに鯖の刺身と、海の幸尽くし。
「明日のBBQにも色々獲ってくるから、楽しみにしててねェ♪」


 そして翌日、綺麗に片付いた砂浜で改めてバカンス気分。
 白虎は砂浜にビーチパラソルとレジャーシート、それにデッキチェアを用意して、ついでにクーラーボックスに入れた冷たい飲み物や氷、乾いたタオル、救急箱や日焼け止めなどなど――
「なんだか荷物番のお父さんみたいですね」
 爽が笑う。
「おう、お前もこっちは気にしないで遊んで来い」
 しかし爽は首を振った。
「日焼けするとちょっとキツいから」
 被っていたパーカのフードを取って首筋の火傷跡を見せる。
 普段は隠さない主義だが、日に焼けるとピリピリと痛むらしい。
「そうか。じゃあビールでも飲むか」
「お、良いですね」
 白虎が投げて寄越した冷えたビールを受け取って、二人で乾杯。
 真っ昼間からビールなんて、バカンスならではのちょっとした贅沢だ。

「ほれ、リコもちゃんと帽子被らんとな」
 いばらはリコの頭に白いリボンの付いた麦わら帽子を被せてやる。
「あ、サラたんとお揃いだ♪」
 デザインは違うけれど、テイストが似ていればそれはお揃い。
「いばらんとはパーカがお揃いだね♪」
 リコは淡いピンクのパーカにショートパンツ付きのワンピース型、いばらは白のパーカにハーフパンツタイプの水着だ。
「よーし、海はいろか」
 ただし水際で波と戯れたり、磯でヤドカリを捕まえたりするだけで、泳いだりはしない。
 それだけでも結構楽しめるものだ。
「波と追いかけっこしてみよか」
 引き波を追いかけて、寄せて来る波には足元をさらわれない様に逃げる。
 それだけの事だが、寄せては返す波の動きは案外予測が難しく、足を取られて転ぶ事もしばしば。
「ねえ、これ楽しいよ!」
 リコは遠巻きに見ている皆に「おいでおいで」と手を振った。
「海、これが」
 アルティミシアは水着だけはしっかり用意してきたものの、どうしていいかわからずにいた。
「故郷には、海が、無かったもので…これは、水なのです、か?」
「うん、水だけどしょっぱいよ。舐めてみる?」
 種子島の海は綺麗だから大丈夫と言うリコの勧めに従って、指に付けた海水を舐めてみる。
「塩辛い、です。これは、身体を浸けても、大丈夫なのでしょう、か?」
「うん、へーきだよ! 気持ち良いよ!」
 言われて、アルティミシアは恐る恐る足を浸けてみた。
「冷たい、です」
 でも、慣れると少し温く感じてきた。
 押し寄せる波の力も思ったより強く、特に引き潮の時は足の下にある砂ごと持って行かれそうになる。
 ちょっと怖いから、これ以上深い所へ行くのはやめておこう。
「あれは、何をしているの、です?」
 アルティミシアが指差した先には、砂の城を造っている未来と子供達の姿があった。
 未来は幼稚園くらいの子供と一緒にいても違和感がない、と言うかすっかり馴染んでいた。
 あそこに混ざりたい、気もするけれど――
「ボク、表情が薄い、ので、子供に怖がられないか、心配です」
「そんなことないよ、アルたん可愛いもん♪」
 寧ろ怖がられているのは自分の方だと、リコは苦笑い。
 背中を押されて、アルティミシアは恐る恐る近付いてみた。
「あの、ボクにもお手伝い、させてもらっていい、ですか?」
「あ、えと、どうぞ、です…」
 頭に帽子代わりのるーたんを乗せた未来は、小さなバケツとシャベルを手渡した。
 まだ少しびびってはいるけれど、怖くはない。
「いっしょに、おおきなおしろ、つくるの、です…」

 やがて昼も近くなって来た頃。
「そろそろ陽射しも強くなって来たからな、みんな日陰に入れよー」
 パイパイパパが子供達を集めて回る。
 BBQは砂浜に面した専用の会場で行われる事になっていた。
 ここなら屋根もあるし、近くには陽射しを遮る木々も多い。熱射病になる危険は少ないだろう。
 大きなテーブルや椅子も揃っているし、例の企てをするにも丁度良かった。
「…火の番はまかせて!」
 サラが張り切って火を熾し始める。
 うん、料理はほら、ちょっとアレだから、誰かお願い!
「料理たって、ただ網に乗せて焼くだけだろう?」
 白虎が笑う。しかし違うのだ。世の中には普通に料理が出来る人には計り知れない闇が存在するのだ。
「そういうもんかねえ。ま、焼くのは俺に任せろ」
 今日も黒百合が獲ってきた海の幸が山盛り、肉も野菜も、デザートもたっぷりある。
 まずは半分に切った伊勢エビを焼いて、アジは遠火で塩焼きに、名前がわからない二枚貝はそのまま網に乗せて。
「料理なら、ボクも、出来ます」
「ああ、いいっていいて、ここは大人に任せとけ」
 手伝いを申し出たアルティミシアに、白虎は礼を言いつつも首を振った。
 子供は何も気にせず、ただ楽しめば良い。
「ところで、これは何の貝だ?」
「知らないけど、でも撃退士なら何食べても大丈夫でしょォ?」
 わかった、これ一般人は食べないようにね、撃退士の「大丈夫」は一般には「危険」と同義だから。
 後は普通に肉と野菜、キノコを焼いて。
「ほな、うちも食べるほう専門にさせてもらうわ」
 いばらは焼き上がった肉を早速ぱくり。
「うん、美味いわ。ほら、遠慮せんとリコも食べ? 食べることは健康につながるんや」
「食べるよ! いっぱい食べる!」
 ヴァニタスになって何が良かったかと言えば、ダイエットを気にしなくて済むようになった事だ。
「ほらほらみんなも仰山食べて」
 遠慮していたら山ほど買い込んだ食材が余ってしまう。
「ほーら、じゃんっじゃん食えよっ」
 白虎はすっかり奉行と化していた。
 サラは火加減調整の合間に湯を沸かし、お茶やコーヒーを淹れる。
「子供達にはカフェインのない麦茶が良いかな」
 あ、デカフェの茶葉もあるよ、料理はアレだけど飲み物は得意だから安心して!

 場の空気はすっかり普通のBBQ。
 ここで何かのサプライズが行われようとは誰も予想していなかっただろう。
 そんな虚を衝いて、サラが皆に目配せをする。
 いばらがリコの注意を惹く中、その背後でこっそり準備が行われ――
「リコ、ちょっとこっち向いてくれる?」
 更に言われて振り向いた途端。
 ぱーん!
 クラッカーが一斉に弾けた。
「誕生日おめでとうなんだよ!」
「え? え? なに? え?」
 サラに言われて、リコは目をぱちくり。
「はっぴーばーすでーなの! リコさーん!」
「遅くなっちゃったけど、リコさんおめでとうー!」
「リコさん、おめでとう!」
「ハッピーバースデー、リコ」
「おめでとうさん」
「お、おめ、おめ、で…(ぷるぷる」
「おめでとォ♪」
「おめでとうござい、ます」
 どれが誰の声なのか、わからないほどあちこちから押し寄せる「おめでとう」の声。
「リコの誕生日は大変な時期と重なってたから、おめでとうできなかったんだよね…」
 企画をしたサラが照れた様に笑う。
「次はいつあえるか分からないし、きちんとお祝いしたいなって! だから遅くなっちゃったけど、おめでとう!」
 途端にリコの両目から大粒の涙が溢れ出す。
「あ、嬉し泣きはまだ早いよ!」
 プレゼントだと手渡されたのは、リコのどらごんのぬいぐるみを模した小振りのショルダーバッグ。
 中にはカラフルなフルーツキャンディがぎっしり詰まっていた。
「それ、ヨナベしてぬったんだ」
「え、これ手作り? サラたんが作ったの?」
「うん、どうかな」
 喜んでくれるだろうか、どきどき。
「ふぇ…っ」
 あ、喜びすぎて言葉も出ない感じ?
「まだあるなの! あげるなの!」
 カマキリーズからは、カマキリグッズ満載てんこ盛りセット。
「うちからは、これ…前のと同じ花やけど、リコにはこういう花が似合う」
 いばらは柔らかなピンク色のプリムラの花束を。
「うん、バラよりも柔らこうて、綺麗やもん」
 白虎からは二つ。
「これは俺で、こっちはウチの娘からな」
 仏桑花の髪飾りは買い出しに出た時にこっそり選んでおいたもの、みかんねこのぬいぐるみとリボンは娘から託されたものだ。
「ずっと14歳とか関係ねーよ、誕生日は誕生日だ。子供は元気に笑ってるのが一番だぜ?」
 そして未来は頑張った。
 涙目でぷるぷるしながら、蚊の鳴くような声で。
「お、おめでとう、ございま、す…」
 小さな包みを押し付ける様に手渡して、ぴゅっと逃げた。
 爽と子供達からは海で拾った貝殻を繋ぎ合わせたネックレスを。
「まだあるぞ」
 白虎がクーラーボックスからアイスケーキを取り出す。
 そこには『Happy Birthdayリコ』の文字が書かれていた。
 もうひとつ、カマキリーズ手作りの大きなバースデーケーキも!
 その上にはカマキリの形をした飴細工が鎮座していた。
「カマキリはケーキでも美味しいんだよ!」
 他にもいろいろ、盛りだくさん。
 そして、言葉のプレゼントも。
「落ち込みたいときは、存分に落ち込んでいいんだよ?」
 サラの言葉が胸の奥に染みる。
「ちゃんと皆でひっぱりあげるからね!」
「ありがと…みんな、ありがと…」
 リコはそれだけ言うのがやっとだった。
 そして、泣いた。
 思いきり、声も涙も涸れるまで泣いた。
 嬉しさと悲しさと悔しさと、今まで溜まっていたもの全部、吐き出すように。


 BBQパーティは夜まで続き、そこからは花火大会に。
「たーまやーなの!」
 空には大きな打ち上げ花火、そして地上には――
「きさカマファイヤー!」
 きさカマは踊る。
 両鎌に花火を持って踊る。
 次は是非ともカマふぃと一緒に!

 やがてその喧噪も一段落、夜の砂浜にはいばらとリコだけが残っていた。
「楓のことが忘れられんと思うのは分かる」
 暫く夜の海を眺めてから、いばらは切り出す。
「うちだって楓は護りたかったから」
「うん」
「…でも何よりいまはリコを護りたい。こんな風に他人を好きっておもったん、多分はじめてなんや」
 だから。
「だから、傍にいてもええかな」
 辺りは暗く、すく隣にいても表情はよく見えない。
「リコをひとりにさせへんから 」
 ややあって、リコの声が聞こえた。
「リコはね、ちゃんと生きてるよ。死んじゃってるけど、ちゃんと生きてる」
 いつか、終わりが来る日まで。
「その時にね、いばらんと一緒にいれたらいいなあって、思う」
 リコの唇がいばらの頬に触れる。
 自分がしようと思ったのに、先を越されてしまった。


 そして翌日、最終日。
 船を待つ間、一行は港で円陣を組んで再開を祈る。
「ふぁいおー! また会うなのー!」
 最後は勿論、皆で記念撮影だ。
「撮るよー!」
 はい、ちぇきーら!

 アルティミシアに、信頼出来る友達は見付かっただろうか。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
リコのトモダチ・
音羽 千速(ja9066)

高等部1年18組 男 鬼道忍軍
種子島・伝説のカマ(白)・
香奈沢 風禰(jb2286)

卒業 女 陰陽師
リコのトモダチ・
サラ・U(jb4507)

大学部4年140組 女 ディバインナイト
種子島・伝説のカマ(緑)・
私市 琥珀(jb5268)

卒業 男 アストラルヴァンガード
Half of Rose・
浅茅 いばら(jb8764)

高等部3年1組 男 阿修羅
撃退士・
茅野 未来(jc0692)

小等部6年1組 女 阿修羅
225号室のとらおじさん・
鳳・白虎(jc1058)

大学部6年273組 男 ディバインナイト
破廉恥はデストロイ!・
アルティミシア(jc1611)

中等部2年10組 女 ナイトウォーカー