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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/04/11


みんなの思い出



オープニング



 ヴァニタス、リコ・ロゼ(jz0318)の主は今、絶賛放置プレイの最中だった。
 どこにいるのかもわからない、配下を管理するつもりも、監視するするつもりもない。
 エネルギー供給という主としての役割だけは果たしている様だが、飼い主である自覚には乏しい様だ。
 言ってみれば野良猫に首輪だけ付けて放置している様な状況だろうか。

 その自由気ままな野良猫は今、種子島を拠点に活動……活動は、していない様だ。
 少なくとも、ヴァニタスとしての活動は。
「だってリコ、トモダチと約束したもん。悪いことしないって」
 だからリコはもう、シマイが何をしていても関係ない。
 大好きなふー様に誘われても、悪い事なら協力しない――誘ってなんか、くれないけどね!

 そんなわけで、リコは種子島の片隅で気ままに子供達と遊んだりしながら、のんびりと日々を過ごしていた。

 ところが。

「え? ヤマナシに、ぬいぐるみのディアボロ……?」
 リコの元に、久遠ヶ原学園のトモダチから連絡が入る。
「それ、リコじゃないよ! リコはずっと、種子島にいるもん!」
 それに自慢ではないが、山梨がどこにあるのかもわからない。
「さくらんぼがおいしいとこ?」
 それは山形。
「あっ、フグがおいしいとこだ!」
 それは山口。
「えー、じゃあヤマナシって……そっか、ナシがおいしいとこだ!」
 いや、梨も美味しいかもしれないけれど、山梨と言ったら「ほうとう」でしょ!
「リコそれ知らないー。食べに行きたいー」
 じゃなくて。
 山梨の某所で、リコが使う様なぬいぐるみ型のディアボロを使って悪さをしている者がいるらしい。
 可愛いぬいぐるみを公園のベンチや道端に置いておき、可愛いものが好きな子供達――或いは大人が近寄り、触れた途端に爆発するという悪質なものだ。
 しかも、現地ではそれがリコの仕業ではないかという憶測が流れているという。
 あの嫌味なシマウマおっさん悪魔が、また悪意のある悪戯を仕掛けてきたのだろうか。
「でも、あのおじさんも今はけっこう忙しいっぽい?」
 リコを弄って遊んでいる暇など、なさそうに見える。
 だとしたら、半端に情報を囓った自称情報通あたりが、「ぬいぐるみを使った攻撃」という事から適当な推理をでっち上げたのだろうか。
 どちらにしても、リコにとっては迷惑な話だ。
「リコはもう、悪いことしないんだから!」
 リコのふりをして悪い事をする者がいるなら、止めなければ。
「ヤマナシ、行くよ! どこかわかんないけど!」
 誰かのゲートを使わせてもらえば近くまでは飛べるだろう。
 勿論、ディアボロ退治に行く事は内緒だけれど。

 しかし、リコにはもうひとつ気がかりな事があった。
「それ、もしかしたらリコのご主人さまかも……」
 リコの主人も可愛いものが大好きで、よく人形やぬいぐるみをモチーフにしたディアボロを作っていた。
 最近は特に目立った活動もせず、人間界で遊び暮らしていた様だが――そろそろ、それにも飽きて来たのだろうか。
「ご主人さまでも、悪いことするならリコが止めなきゃ」
 例えそのせいで捨てられる事になっても。
「リコ、もともと死んじゃってるもんね。死ぬのなんか怖くないよ!」
 ほんとは怖いけど。
 怖かったけど。
 でも、自分で選んだのだから仕方がない。

 もう一度、今度は本当に消えてしまう事になっても。
 トモダチだけは、失いたくないから。


 そして、どうにか辿り着いたとある公園で――
「それ、さわっちゃダメだよ!」
 今まさに、ベンチに置かれたピンクの犬っぽいぬいぐるみに手を伸ばそうとした子供に向かって、リコが走りながら叫ぶ。
 突然の大声に驚いた子供は、身を固くしてその場に立ち竦んだ。
「おどかしてゴメンね、でもそのまま動かないで!」
 ぬいぐるみから引き離せば大丈夫。
 そう考えたリコは、子供を抱きかかえて跳んだ。

 しかし、その瞬間。

 ぬいぐるみはドロリと溶けて、アメーバの様に地中へと染み込んで行った。
「え……なにこれ、もしかして地面に本体とか……?」
 どうしよう、阻霊符は持っているけれど――
「なんかすっごい大きなやつだったら、リコだけじゃ無理っぽい……よね」
 幸い、自分から姿を現す事はない様だ。
 助けを呼ぼう。
 遠くへ逃げてしまわないうちに退治しなければ。
 リコは迷わず、久遠ヶ原学園に電話を入れた。



リプレイ本文

 リコが連絡を入れてから、暫く後。

『○○町の児童公園にディアボロが現れました。危険ですから絶対に近付かないで下さい』
『また、公園内にいる人は撃退士の指示に従って、速やかに避難して下さい』

 公園内に設置された防災無線のスピーカーから、少し割れた音が響く。
 どうやら撃退士の誰かが役所に連絡を入れてくれた様だ。
 直後、バッグに入れた携帯が賑やかな音を立て始めた。
「うん、本物のリコさんで間違いないですの」
 その声に振り向くと、小学校の低学年くらいの少女が走り込んで来る姿が見える。
 通話を切って笑いかけたその顔には見覚えがあった。
 名前は確か、神谷 愛莉(jb5345)と言ったっけ。
 それに電話で本物を確認するという、このパターンも前にあった気がする。
「あ、それエリの従弟ですの」
 正直、愛莉のリコに対する印象は良好とは言い難かったが、その従弟と幼馴染が『そんなに悪いヴァニタスじゃない』と言って仕事を譲ってくれたらしい。
「エリが前に会った時は、初めてとニセモノだったんだって」
 それに、敵がディアボロならCRの高い愛莉が行った方が有利になるだろう。

「リコさん! だいじょぶなの!?」
 続いて走り込んで来たのは、カマふぃ――香奈沢 風禰(jb2286)。
「種子島じゃないから、カマふぃじゃないなの! フィーなの!」
 あれ、もしかして気付いて貰えない?
 じゃあこれでどうよ!
 カマキリの着ぐるみ、装・着!
「フィーはカマふぃだった、なの!」
 じゃーん!
 しかしリコは「もー、ちゃんとわかってるよー」と、笑いながらカマふぃのカマをぺしぺし叩く。
「リコ、バカだけどトモダチの顔は忘れな――」
 が、その言葉は血相を変えて飛び込んで来た、浅茅 いばら(jb8764)の叫びに吹っ飛ばされた。
「リコ、無事か?!」
「いばらん!」
 とりあえず元気そうな姿を見て、いばらは一安心。
「リコ、よぉがんばったなぁ。うちらも加勢するさかい、もう大丈夫や」
「うん、ありがと!」
 そしてもう一人、見知った顔が――Julia Felgenhauer(jb8170)だ。
「リコ、久しぶりね」
「あっ、ゆりりん! ひっさしぶりー!」
 ぱたぱた手を振る相変わらずの脳天気な姿に、ユリアもまた安堵の息を吐いた。
「けどこんな所に現れるなんて、迷子にでもなったのかしら?」
「せや、山梨なんて来たことないはずやのに」
「何がどうしたなの!」
 三人に訊かれ、リコは簡単に事情を説明する。
「リコ迷子じゃないよ!」
 ちゃんと山梨に来ようと思って来たのだ。
 ただこの場所が山梨のどこなのか、それがわからないだけで。
 それを迷子と言うのだが、それはひとまず後回し。
「何れにせよ、まずは敵を倒さないとね」
 積もる話はそれからだ。

(へえ、この子がリコちゃんか)
 馴染みの者達ときゃっきゃする姿を見て、藍那湊(jc0170)は思う。
(初めて会ったけど、ひとを助けられるいい子みたいだね)
 それに、皆に好かれてもいる様だ。
(彼女の大事なもの、俺たちも守りたいな)
 リコ自身も、その気持ちと一緒に。
「俺は湊、よろしくねリコちゃん」
「みなとんだね、よろしく!」
 あ、また勝手に変な渾名付けてるし。
「ん? そこの娘はヴァニタスだが他の連中と仲が良いのか」
 しかも通報者本人だと聞いて、鳳・白虎(jc1058)はリコに声をかけた。
「手は多い方が良い。手伝ってくれるってんなら頼りにさせて貰うぞ?」
「うん、リコがんばるよ、おじさん!」
「おじ…うん、まあ、そうだな」
 14歳から見れば、33歳は立派なおじさんだ。
 本当なら、娘の友達に「○○ちゃんのおじさん」と呼ばれる事もあるのだろうし――今は訳あって、それも叶わないが。

「それにしても、可愛いぬいぐるみに擬態して誘き寄せて、か。えげつねぇなぁ」
「戦場では子供が喜びそうな人形に地雷を仕込む事など珍しくもないが――」
 白虎の言葉に、エカテリーナ・コドロワ(jc0366)が吐き捨てる様に言った。
「反吐が出るな」
 他の場所では既に犠牲者も出ている様だ。
「これ以上のさばらせてはおけないな、さっさと退治だ、退治」
 とは言えまず必要なのは、公園内に残っている者達の避難誘導か。
 外から入って来る者については、愛莉が要請した放送のお陰で抑えられている様だ。
「ひーちゃん、お願いしますの」
 愛莉はヒリュウを呼び出し、上空から逃げ遅れた者の姿を探しつつ、自分もその後を追って走った。
「子供達が不安になるといけないから、本当の事は親だけに伝えた方が良いかもね」
 湊の提案を受けて、愛莉が大人達に事情を説明して回る。
「久遠が原の撃退士です。公園内にディアボロが出たとの通報が入りました。子供さんが落し物に見える爆発物にさわらないよう手を繋いで逃げて下さい」
 慌てて出口へ向かう人々を背に、エカテリーナはアサルトライフルを構えた。
「子供には触手の一本たりとも触れさせんぞ! 大人しく我々の餌食になってもらう!」
 姿の見えない敵に向かって銃口を向ける。
 だが、どうやら武器を持つ者の前には姿を現さない様だ。
「反撃も出来ない弱者を襲うしか能が無いか」
 待っていろ、避難が済んだら力ずくでも引きずり出してやる。

 一方、公園内の様子を上空から見て見て回っていたユリアは、片隅のベンチに置かれたバッグに目を留めた。
「あれもディアボロの一部かしら」
 周りに人はいない。銃で撃って確かめてみようか。
「でも、本当のただの忘れ物だったら…」
「とりあえずぬいぐるみ以外に擬態されて不意を突かれるのも困るな」
 連絡を受けて駆けつけた白虎が冥魔認識を使ってみる。
「もっとも、俺のレベルでは何処まで見破れるかは判らんが」
 特に怪しい反応はないが、これは測定不能なのか、それとも。
「触ってみれば、はっきりするわよね」
 普通の人間が即死する威力でも、撃退士なら――
「ただの忘れ物ね」
「ふう、脅かしやがる」

「はいはーい、今から公園のお掃除しまーす!」
 保護者の姿が見当たらない子供達には湊が声をかけた。
「落とし物は後で届けてあげるからね、ほら、あそこのワープ装置までダッシュだー!」
 指差したのは、カマふぃが張った四神結界の魔法陣。
「カマふぃに援護はお任せ、なの! みんなここに入るなの!」
 全員が揃ったら、カマふぃは急いで次の地点に結界を張る。
「3、2、1でワープ! なの!」
 移動は自力でどうぞー。
 まあ、言ってみればインチキだけれど、子供は案外ノリが良いものだ。
 最初の結界から次へと走り、そして最後は公園の外に張った結界へ。
「避難完了なの!」
「出来たら誰も中に入らんよう、声かけてもらえると助かるんやけど」
 放送が聞こえなかった者もいるかもしれない。
 避難を終えた者達にそう声をかけると、いばらは公園に駆け戻った。


 広場の隅に置かれたベンチには、ぬいぐるみがぽつんと置き去りにされていた。
「今度こそ本物だな」
 白虎の冥魔認識に反応はないが、どう見ても怪しい。
 そしてレベルが15以上である事も確定だ。
 準備を整え、阻霊符を発動。
「これで地面にいる敵、透過出来なくなって出てくる筈ですの」
 愛莉の言葉と同時にベンチが弾け飛び、ぬいぐるみが半透明の触手に姿を変える。
 長く伸びたそれは、半透明のブヨブヨとした巨大な水饅頭に繋がっていた。
「あれが本体ね」
 湊に風の烙印を授けて貰ったユリアは、陽光の翼で宙に舞う。
「私が注意を引き付けるわ」
 槍の様に伸びて来る無数の触手を落ち着いてかわし、切り払い、急降下からの一撃離脱を繰り返す。
 カマふぃはアウルで生み出した蛇の幻影を放ち、ブヨブヨに噛み付かせた。
「爆弾人形とはずいぶんと悍ましい真似をしてくれるな。だがそんな小細工は我々には通用せんぞ。灰燼に帰すのは貴様のほうだ!」
 エカテリーナはアサルトライフルを撃ち放ち、半透明の肉片を吹っ飛ばす。
 だが、次の攻撃を加えようとした時には、切り離された肉片は繋がって元通り。
 穴を開けても僅かな時間で塞がってしまう。
「なるほど、大した回復力だな」
「リコ、ああいうタイプのディアボロ、弱点とか思いうかばへんやろか」
 その動きを目で追いながら、いばらが問う。
 だが、それはリコのぬいぐるみと似て非なるもの。
「んー、よくわかんない…けど、あのアンコが怪しいよね!」
 本体の中央に見える黒い塊の事か。
「あれを潰せばええねんな」
 いばらは陰影の翼で空へ。
「リコは出来ればぬいぐるみに吠えて貰ったりして欲しい。束縛がかかるのは大きい筈や」
「うん、わかった!」
 だが、リコのとらさんがいくら吠えても、効いた様子は全くなかった。
 ユリアといばら、二つに増えた空中の標的に向かって、更に多くの触手が伸びる。
「なら、もうひとつ増えたらどうなるかな」
 ルミナリィシールドを構え、湊は正面から突っ込んで行った。
(体積は無限じゃないはずだし、触手を伸ばせばそのぶん本体は薄くなるはず…?)
 弾幕を盾で防ぎつつ、ひたすら前へ。
 背後に回り込んだ触手の先端が爆発しても、氷の柱を身代わりにそれを受けきり、決して足を止めなかった。
「俺は男だし少しの怪我くらい平気だよー。さあ、今のうちに攻撃しちゃって!」
 それに応えて、仲間達が攻撃を集中させる。
 コアの露出まで、あと僅か。
「ちょっと凍っててもらおうかな」
 湊が呼び出した氷の蔓がブヨブヨに絡み付き、その動きを抑えた。
「コアの一斉攻撃前に【ブレイブロア】使ったら少しは攻撃力上がるから、タイミング遅らせて欲しいですの」
 愛莉が言うが早いか、ストレイシオンのすーちゃんが力強い咆哮を上げる。
「漲って来たなの! 一気に行くなのー!」
 カマふぃがリコの手を取り、カマダチの友情攻撃!
「ふたりは、カマキュア!!!?」
 光と陰の刃がぶよぶよの身体を切り裂き、どらごんの炎が弾ける。
 そこに愛莉のすーちゃんがアイアンスラッシャーを放った。
 真空の刃が傷口をより深く抉ったところに、上空からユリアといばらが急降下。
 二人は反撃を避けながら、或いはまともに喰らうのも構わずに、螺旋を描く様に切り込んで行く。
「風穴を開けてあげるわ」
「血塗れ上等や、うちは【鬼】みたいなもんやさかいな!」
 閃滅の淡い緑色に包まれたユリアが八岐大蛇を振り下ろし、そこに鬼神一閃、いばらの小太刀二刀・闇月が閃いた。
「『極黒の死神』と呼ばれたこの私を見くびるなよ! 一気に引導を渡してやる!」
 剥き出しになった声に、エカテリーナがアサルトライフルの一撃を。
「ぬいぐるみは人を癒すもの。人を助けられるもの。こういう使い方は、メッだよ」
 湊が盾から持ち替えた両刃の剣ディープフリーズをコア目掛けて振り下ろす。
「串刺しにしてやる、これでトドメだ!」
 白虎の繰り出した青龍戟がコアを刺し貫くと、黒い塊が弾けて、中から淡い光を放つ球体がいくつか、ふわりと飛び出して来た。
 それは見る間に透明になり、空の色に同化して――消えた。


「久しぶりね。元気だったかしら?」
 完全に倒した事を確認し、ユリアは改めてリコに声をかける。
「貴女が公園に居た人を助けてくれたのよね。ありがとう」
 リコが何故こんな所にいるのか、不思議には思ったけれど追求はしない。
 ユリアは純粋に再会を喜んでいた。
「また会えて嬉しいわ」
「うん、リコも嬉しいよ! みんなも来てくれてありがと!」
「お前がいち早く動いてくれたおかげで、被害が広がることなく敵を倒すことができた、感謝するぞ」
 エカテリーナにも礼を言われ、リコはすっかり良い気分。
 だがしかし、いばらと目が合った途端。
「なんでこんな所まできたんや、前もいうたやろ?」
 お説教が始まった。
「リコの実力では敵わない相手やったらどうするつもりやったん」
 別に怒ってはいない。ただ――
「めっちゃ心配したんやからな」
「…ごめん、なさい」
 しょぼんとヘコんだリコの頭を、いばらは軽くぽんぽん叩く。
「まあ、ええわ。無事に倒せたんやし、リコも怪我ないし」
「リコちゃんのお供はかわいいなぁ」
 ほっと一息吐いた湊はリコが抱いているどらごんを覗き込む。
「やっぱりぬいぐるみはこうでないと…触っても大丈夫?」
「うん、良いよ!」
 が、その耳にけたたましい音が飛び込んで来た。
「パラッパー! 皆の勝利なの!」
 じゃんじゃんカタカタぴーぴーと、カマふぃの一人ファンファーレだ。
 あ、そうそう、怪我をした人の手当てもしなくちゃね!
「カマふぃの治療は愛と涙と正義なの!」
 それが終わったら、皆で仲良くほうとうを食べに行こう。
「戦いのあとってお腹すいちゃうよね」
 でも…ほーとー…って何?

 これです。
 土鍋で煮込んだアツアツの、味噌煮込みうどんに似て非なるもの。
「ほうとうは食べたいけど熱いの食べるのは…」
 湯気を立てる鍋を前に、愛莉は困った様に眉を寄せる。
「俺も熱いのは苦手なんだよね」
 鍋からちょっと身を引きつつ、湊が頷いた。
 でも冷まして食べれば大丈夫、さあ一緒にふーふーしよう。
 ふー、ふー…
「そう言えば、ふー様ってどうしてる、なの?」
 カマふぃの問いに、リコは少し寂しそうな笑みを浮かべた。
「うん、リコがいなくても大丈夫そう、かな」
 元々リコが勝手に追っかけているだけ、だったし。
「リコとはご主人様も違うし」
「どんな奴なん?」
 そう言えば余り聞いた事がなかったと、いばらが訊ねる。
「んー、可愛いものが大好きな、おねえさん?」
 でも放任主義で、気紛れで。
 この件にも絡んでいるかもしれないが、まだ確証はない。
 しかし、だとすると彼女の身に危険が及ぶ可能性もあるか。
「リコはすごいと思うわ、主に逆らうかも知れんことをやってたことになるかもしれんし」
「んー? リコ、バカなだけだよぉ?」
「バカやない」
 きっぱりと言われ、リコは嬉しそうに頬を赤らめた。
(…うち、やっぱリコをほっとけへんわ。…好き、やから、な)
 いざとなったら学園での保護も考えるべきか。
「何かあったらちゃんと、リコさんのカマダチやマブダチやらトモダチを頼ってなの!」
 カマふぃが自慢のカマでどーんと胸を叩く。
「リコさんは消えたらダメなの! だって、フィーたちの大事なトモダチなんだからなの!」
「うん、ありがと」
 大丈夫、わかってる。

「さあ、堅い話はこれでおしまい」
 ユリアが空気を変えた。
「春になったし、また可愛い服が欲しくなる頃かな?」
「あっ、リコお買い物行きたい! 遊園地も行きたい! それから、それから…」
 ユリアにとって、リコは一つの期待だった。
(何の目標もなく学園にきた私。それに対してあの種子島で会って以来どんどん変わりつつあるリコ)
 その行く末を見届けたい。
 今やりたいことはただ一つ、それだけだ。
「じゃあ、順番に全部行ってみる?」
 時間の許す限り。

 これで事件が解決した訳ではないけれど、息抜きくらい、良いよね。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:4人

種子島・伝説のカマ(白)・
香奈沢 風禰(jb2286)

卒業 女 陰陽師
リコのトモダチ・
神谷 愛莉(jb5345)

小等部6年1組 女 バハムートテイマー
リコのトモダチ・
Julia Felgenhauer(jb8170)

大学部4年116組 女 アカシックレコーダー:タイプB
Half of Rose・
浅茅 いばら(jb8764)

高等部3年1組 男 阿修羅
蒼色の情熱・
大空 湊(jc0170)

大学部2年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
負けた方が、害虫だ・
エカテリーナ・コドロワ(jc0366)

大学部6年7組 女 インフィルトレイター
225号室のとらおじさん・
鳳・白虎(jc1058)

大学部6年273組 男 ディバインナイト