現場は混乱していた。
カオスだった。
しかしどんなに酷い状況でも、そこに撃退士が駆けつければ、すぐに秩序と平穏が――戻ると思うだろう?
お前、素人だな?
見ろ、これが…これがお前の信じる撃退士の、本当の姿だ!
「あっはァ♪ こんなアタシ向けの依頼なかなかないわァ…さーて、どの子から剥こうかしらねェ?」
シグネ=リンドベリ(
jb8023)は嬉々としてパンツ(を穿いたディアボロ)を見上げる。
しかし。
「拘束スキルも飛行スキルも無いのよねェ…仕方ないかァ」
ここは自らを囮にするしかない。
「スカート穿いていれば降りてきてくれるかしらァ?」
大丈夫、下にスパッツ穿いてきた。
そして急降下して来た所をヨーヨーでキャッチ――あんど、ぽいっ。
だって男に用はないもの。
「…脱がしてうっかり汚いモノが視界に入ったらイヤよねェ?」
いや、そこは綺麗な可能性も微レ存もしくは――
「付いてない可能性もあるけど、万が一付いてたらヤダしィ…」
とにかく装備を解除させれば良いのよね?
だったらショットガンを撃ち込んで物理的に布切れにしましょう。
だがしかし、ぱんつは不思議な力で守られている、と言うか中身ごと粉砕されてますけど。
その状況を見て、南条 政康(
jc0482)は思い出した。
「そう、忘れもしない…あれは斡旋所の職員に恥を忍んで尋ねた時の事でござる」
「脱がせたパンツは持ち帰ってOKなのかっ(くわぁっ)!」
その問いを、職員は「無理」と一刀両断。
あのパンツはディアボロの一部、だから脱がせただけでダメージを負うのだ。
無念。
だが別にパンツが欲しくて尋ねたわけではない。ない。
「あくまでこれは依頼でござる。与えられた任務を完璧に遂行する為に念には念を云々」
空に浮かぶパンツ(を穿いた略)をキッと見上げ、政康は右腕の軍師に語りかける。
「ゆくぞ、タダムネ。狙うはパンティーのみ! 男の下着など捨て置くのだ!」
『心得ました。しかし殿、ひとつ問題がございます』
「なんだ、申してみよ」
『手が届きません』
「…」
政康は飛べない。
スキル星の鎖も使えない。
だいたい、あれは相手のパンツを引きずり下ろす技ではないし、まさかそんな勘違いをする者が――え、いるの?
「マジでござるか!?」
いや、それはともかく。
これでは上空を飛ぶパンティーをどうやってゲットすればいいのかっ!?
『ご安心めされよ。こんな事もあろうかと、コレを用意しておきました』
差し出される、ヒラヒラのワンピース。
これでパンツ(略)はスカートを狙って向こうから急降下してくるに違いない。
「そこですかさず、パンティーを脱がせるわけか。さすがはタダムネ、キレるのぅ」
『恐れ入りまする』
勝てる。これで勝てるぞ。
さあ来いパンツ!
だが男型、お前は駄目だ。
狙うは女型のみ!
「あれ作った悪魔とはいい友達になれそう♪」
雁久良 霧依(
jb0827)はコスプレ用のミニスカセーラー服とルーズソックスで登場、ただし上半身は服としての機能をほぼ消失している。
いや、その、きょぬーがですね?
服を押し上げてですね?
お腹が丸見えなんですよ、ええ。
「…私まだまだ女子高生でいけるわね♪」
霧依はばっちんウインク。
「イメクラ? なんて思ってる人はいないわよね〜?」
それではまず、全うにお仕事――なんて、すると思う?
「仲間のパンツ脱がすのが最優先よ、決まってるじゃない♪」
さ、脱がせて欲しい人はいるかしら?
「何を考えてあんなのを作ったのかな(汗」
猫耳猫尻尾の魔法少女、猫野・宮子(
ja0024)はどうしてこうなったと頭を抱える。
しかし、これもお仕事!
「と、ともかく魔法少女・マジカル♪みゃーこ出撃するにゃー!」
見上げた空には、パンツ、ぱんつ、パンツ。
「と、とにかくあのパンツを脱がせばいいのにゃね! …何かこう、変な気分だけど頑張るにゃ(汗」
相手は遥か上空、とても手の届く高さではないが、魔法少女は常にアグレッシヴに動くのだ。
「飛んでいるなら僕も跳べばいいのにゃ! 建物を使えばあの高さでもいけるにゃ!」
壁走りで近くの建物を駆け上がり、みゃーこは屋上に立った。
そして手近な一体を狙ってジャンプ!
「そのパンツ貰ったにゃ! …と、見せかけて狙いはそっちにゃー!」
だって一番近くにいたの、男なんだもの。
それを踏み台に更に高く跳んだみゃーこは、女パンツにしっかりと手をかけた。
「パンツ獲ったにゃ!」
ズリ下ろしながら、パンツと共に地上に落下するみゃーこ。
猫さん柄の白いぱんつが下から丸見えだけど、気付いてないから恥ずかしくないもん!
落下途中で自爆するパンツ、それを確認しつつ、みゃーこは華麗に着地を決めた。
そこを狙って急降下する男パンツがみゃーこのスカートを捲ろうとした、その瞬間。
「甘いにゃ!」
カウンターでパンツを掴み、目を瞑って一気に、一気に…!
「でも、なんか色んな意味でいやんな感じなのにゃ」
躊躇うみゃーこ。
しかしその時、天の声が降って来た!
「臆するな!」
そこに
そこに助けを求める声があるならば
それで誰かの笑顔を護れるのならば
例え変質者と蔑まれようとも
例え警官に追われることになろうとも
僕は
──パンツを脱がそう
電信柱のてっぺんに、すらりと伸びた黒い影。
あれは誰だ、赤いマフラーを風になびかせた黒兎、彼こそが我らのヒーロー、その名も――
「我は月夜の影に跳ね、悲しみを斬り払う一匹の黒兎。《夜影跳人》ブラックラビット!」
とう!
インレ(
jb3056)は華麗に舞い上がり、空中三回転半後方捻りで見事に着地。
恐怖に震える一般人を安心させる為にも、ヒーローには格好良く登場する事が求められるのだ。
ヒーローは言った。
「その手にあるのは何だ。誰かの笑顔を護る為に鍛えた力だろう!」
いいえ、ぱんつです。
ぱんつです。
だが、その声に背中を押されたみゃーこは、思いきってパンツを引きずり下ろした。
しかし――
「…ぇ、きゃぁ!?」
その隙に、すぱーんと捲られるミニスカ。
「ぼ、僕のは見えてないにゃよね?(///」
大丈夫、見えないよ――パンツはね。
だって穿いてないもの。
昔のエロい人は言った。
他人のパンツを脱がせる時、汝もまたパンツを脱がされているのだと。
「ごめーん、間違えちゃった〜♪」
猫さんぱんつは、霧依の手に握られていた。
「…え…?…。…ちょ、何してるにゃー!?」
返すにゃ! ぱんつ返すにゃ!
しかし霧依は聞こえないふり。
「あぁん、足が滑っちゃった♪」
そう言いながら押し倒s――
ブツッ、ザァーーー
※この部分は削除されました※
「あらァ、これは負けてられないわねェ?」
シグネの何かに火が点いた。
「触って楽しいのはやっぱり女の子でしょォ」
女型を捕まえてガムテープと紐で拘束し、物陰に引きずって行く。
そしてパンツを…いや、まだだ。
誰がパンツだけ脱がすと言った(真顔
後ろから抱えてスモックをたくし上げ、胸を揉みしだきながら耳を囓る。
「ふふ、どんな反応するのかなァ…良い声で鳴いてねェ…?」
しかし相手は不感症なのか、撫で回しても吸い付いても舌の上で転がしても、反応がない。
「ちょっとォ、あたしのテクに反応しないってどういうことォ?」
つまらん。
鳴かぬなら 剥がしてしまえ そのぱんつ
スパっと脱がしてはい終了。
「リンドベリと言うと………知らないな」
何 静花(
jb4794)には、そんな名字を持つ者に心当たりはない。
ないと言ったらない。
そんな事より。
最近考えた、魔装についてである。
V兵器について、これらすべてはヒヒイロカネに仕舞い込める仕様だったはず…
そして魔装は様々なものがあり、その中には下着もあった。
下着もあった
下着も、あった
ひょっとしなくてもこれは大変な事のではないのか、すごく不安になった所に今回の依頼。
もしや奴等は気付いてしまったのではないか、この下らなくも大切な何かにすべてを守らせていると言う敵の仕様も…
全滅させなくては!(使命感
幸い、静花は今日も女子儀礼服姿、つまりスカートめくりの対象である。
ここは己を囮に無情なる殲滅を敢行しよう。
「ところで、全く関係ないけど中身はスパッツ、装備で言うならスパッツ、魔装としてスパッツだけど意味あるのだろうか?」
わかりません、にほんこむつかしいネ!
とにかく、スカートを捲ってくる相手を全て倒せば良いのである。
見られたって、パンツじゃないから恥ずかしくないもん。
パンツでも恥ずかしくないけど。
「スカートをめくる奴はみんな敵、泣こうが喚こうがパンツを引っこ抜く」
飛んでいない?
それは味方だ?
スカートをめくる奴が敵だ。
パンツを下ろそうとする奴も敵だ。
格好が違うしズボン?
何か意味があるのか?
わかりません、にほんこむつかしいネ!
「どさくさ紛れに捲ってきたこいつが悪いのだ」
痴漢は撃退。
一般人?
それがどうした。
無型・鑚剄で動きを止めて、中華包丁で解体されても文句は言えまい?
だが、それを諫める天の声。
「静花よ! 何の為の鍛錬、何の為の中国武術か! 今この時の為だろう!」
インレは言った。
その力は敵に対して使われるべきものだと。
そいつは後で警察に突き出しておくから――その前に自分達が突き出されていなければ。
「ぐぬぬ、どれだけの女性が恥辱を味わったか。破廉恥な奴らめ。今回は僕が破廉恥になってやる!」
築田多紀(
jb9792)は、この日の為にマネキンを用意し、素早く的確にぱんつを脱がす為の練習を重ねて来た。
何日も何日も、寝る間も惜しみ、食事さえ忘れて――
嘘です。
依頼を受けたのは、ついさっき。
すぐに駆けつけたので、練習する余裕なんてこれっぽっちもありませんでした。
しかし人間にはイメージトレーニングという素晴らしい武器があるのです。
大丈夫、脳内で何度も練習した。
勝利のイメージも掴んだ。
「今日は僕の冬の必須アイテムうさぎのましゅまろぱんつを封印する」
初めてのミニスカにも挑戦する。
被害に遭った方々の恥辱に比べたら、寒さなど屁でも何でもない。
いつもの言葉遣いだって封印だ。
「破廉恥王に僕はなる!」
いや、違った。
「はれんちくいーんに、あたしはなるのよ!」
やや棒読みだが、中にはきっと「それが萌える」という勢力もいる筈だ。
「スカートめくりをする変態ディアボロを、ニンジャの力でぱん…ぱん、つ、を下ろしてやっつけちゃうよ!」
犬乃 さんぽ(
ja1272)が真っ赤になっているのは、来た風が冷たいから…ではない。
ではないが。
「この季節にスカートめくられたら風邪引いちゃうもん、そんな悪い天魔はニンジャの力で成敗だから!」
由緒正しき日本の戦闘服、ミニスカセーラー服に身を包み、さんぽはニンジャ陰陽の技を振るう!
「日本って言ったら、サムライ、ニンジャ、オンミョージだよね! ボクも、あの有名な安倍川餅(あべの かわもち)のように魔を払っちゃうから…でも、美味しそうな名前だよね」
多分それ名前間違えてるけど、今はパンツだ。
「ボクが囮になるよ、ぱんつじゃないから恥ずかしく…って、今日はぱんつだったぁぁぁぁ」
ひらりと翻るスカートの裾。
今日のインナーはヒラヒラのドレスビスチェだ。
「みっ、見ちゃ駄目だもん!」
涙目でスカートを押さえつつ、さんぽは呪縛陣でパンツの動きを止める。
「みんな、今だよ!」
この日のために何枚ぱんつを脱がせてきたか、ただし脳内で。
「目に物を見せてくれ…みせてあげるわ、よ」
ミニスカとニーハイソックスを身に着けた多紀は、往来の真ん中に立って、スカートの裾をちらりと持ち上げて見せた。
これだけ挑発すれば、奴等もきっと捲りに来るだろう。
来なかったら…いや、来る。きっと来る。来た!
「きゃー、やめてこないで」
やや棒読みに怯えた表情で叫べば、他の奴等も寄って来る筈。筈。
「来たn…きたわね」
勝利のイメージは見えている。
がしっと飛び付き、素早くズルっと!
よし、来た。女型だ。そーれ脱がせろー!
「はっはっは、よいではないかっ! よいではないかっ!」
政康は鼻息も荒く一気に行った!
楽しんでなんかいない、しかたなくやるのでござる。
ほんとでござるよ!
『あーれーーー』
くるくるくる。
「忍犬召喚…行けっ!」
さんぽは忍犬フェンリルを身代わりにした!
股間に食い付き、パンツを食いちぎる猛犬の図。
因みに人並の知性を持つ鳳凰は、その命令を軽く無視したらしい。
静花にボコされた霧依は、とりあえず真面目にお仕事。
星の鎖で男性型を狙って引き摺り下ろし、すかさず股間を思いっきり掴む。
「あら、結構立派ね♪」
ちゃんと付いてるらしい。
それを中身ごと引き千切る勢いで、かつしっかり見ながらパンツを剥がす。
女性型は片足を掴んで大きく開かせ、そのまま破り捨てた。
「ボク、なんにも見てないよ、ボク」
うっかり見ちゃった、と言うか見せられちゃった、さんぽは真っ赤になっておろおろわたわた。
「あら、可愛いのね♪」
脱がせちゃいたいけど、ダメかしら?
星の鎖が切れたら次は囮作戦で。
「きゃあん♪ …あら、霧依ってばパンツ穿き忘れちゃった〜♪ いや〜んチョベリバー♪」
嬉しそうである。
勿論わざとである。
因みに処理は完璧でつr――
ピィーガァーーー
※削除※
「ふむ、頭から急降下して来るか」
インレは慌てず騒がず襲ってきた所にカウンター、煌めく焔を纏った拳でパンツを掴む。
「ヒーローを舐めるなよ──パンツを脱がす事に躊躇など、ない!」
ズバァッ!
若さとは、躊躇わない事。
そして悔やまない事。
どこかのヒーローが、そう言っていた。
「え、ちょっと何ィ?」
シグネは思いきり不満そうな声を上げる。
残ってるのが男性型ばかりって、どういう事ですか。
「やだァ、乙女がそんな事出来ないわァ」
女の子になら出来るけどォ?
「お嫁に逝けなくなっちゃうから、男のヒトよろしくねェ(きゃっ」
え、霧依さんが独り占めですか。
はい、どうぞどうぞヤッちゃって♪
そして、パンツは滅びた。
これから先、人類はノーパンで…そうじゃない。
「後始末はインレに任せよう」
しかし、静花がその姿を探すより先に、彼はスタイリッシュかつダイナミックに退場していた。
事が終われば颯爽と、名も告げずに去る。
ヒーローとは孤独なものなのだ。
「別に警察が怖い訳ではない、わしの方が強いしな」
夕日に向かって、政康が呆然と呟く。
「なんだか、大切ななにかを失くした気がするぞ」
『きっと気のせいでございます…』
そう、きっと。多分。
記録からは削除されたアレコレも、彼等の記憶にはしっかりと刻まれていた。
それは今後の人生にとって――
恐らく何の糧にもならないと思います、はい。