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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/11/22


みんなの思い出



オープニング




 東北地方、某所。
 周囲が天魔の侵攻を受ける中にあって、その町はこれまで運良く難を逃れて来た。
 だが、とうとうその運も尽きる時が来た様だ。

 今までは訓練でしか聞く事のなかった警報のサイレンが鳴り響く。
 町の各所に設置されたスピーカーからは、避難を促すアナウンスが途切れる事なく流れ続けていた。
『町内、ショッピングモールにて、天魔の発生が確認されました。住民の皆さんは、ただちに最寄りの避難所へ避難して下さい』
 各避難所には引退した撃退士や、様々な事情で撃退士となる道を選ばなかった人々が真っ先に駆けつけて、阻霊符を使うことになっている。
 敵の侵入さえ阻止すれば、後は撃退士達が何とかしてくれるのを待つだけだ。
 だから避難所に辿り着く事が出来れば、ひとまずは安心して良いだろう。
 そこに辿り付く事さえ出来れば。

 週末のショッピングモールは、家族連れの買い物客で賑わっていた。
 屋外型のモールは南北に長く、南側の入口から続く通りの両側には小売店が軒を連ねている。
 最も奥には映画館の入った大型複合施設があり、そこが周辺一帯の避難所にもなっていた。
 今、敵は南側の入口辺りから現れて、逃げ惑う客達を次々に襲いながら北上している。
 足に自信のある若い者なら逃げ切る事も出来るだろう。
 だが、小さな子供や高齢者は――

「誰かが足止めしないと、大勢の人が逃げ遅れる……!」
 ひとりの少年が立ち止まり、後ろを振り向いた。
 一緒に買い物に来ていた家族がそれに気付いて引き止めようとするが、少年はそれを振り払い、元来た方へ走り出す。
「俺が食い止めるから、母さん達は先に逃げて!」
 少年はアウルの力など持っていない。
 腕っ節に自信があるわけでもない、ごく普通の高校生だ。
 けれど――
「昔、父さんが俺達を守ってくれたように……俺も家族を守るんだ」
 父が敵の前に踏み留まり、時間を稼いでくれたからこそ、自分と妹、それに母の三人は生き延びる事が出来たのだから。
 今度は自分が家族を守る番だ。

「父さんも、普通の人だった。天魔の一撃で、あっさり死んでしまうほど……脆くて、儚くて……」
 後になって、人はその行為を口々になじった。
 何の役にも立たない愚行だと。
 彼の行為は全く足止めにはならなかったし、余計な死体を増やしただけだと。
 一緒に逃げていれば、家族四人が全員無事に助かったものを、と。
「そうかもしれない、けど……!」
 少年は人の流れに逆らって走る。
 人波が切れた所で、両腕を広げて仁王立った。
「父さんは馬鹿じゃない。間違ってなんかいない」
 何も出来ない一般人にも、出来る事はある。
「俺は今でも、父さんが助けてくれたんだって信じてる。父さんは俺のヒーローなんだ」
 だから自分も、ここを動かない。
 全員が無事に避難を終えて、父や自分の行為が間違っていなかったのだと証明されるまでは――たとえ死んでも。

 敵はたかがネズミだ。
 二本足で歩き剣を振り回すそれをネズミと呼んで良いものかどうか、わからないけれど。
 おまけに、それはかなり高い知能を持っている様だった。
 リーダー格と思しきひときわ身体の大きなネズミが、少年の前で立ち止まる。
 それは、ただひとり逃げずに立ち向かおうとする少年に興味を示したらしい。
 手にした剣を一振り。
 少年の鼻先を掠めた切っ先が、シャツの肩口を切り裂く。
 その下に覗く皮膚に、赤い線が走った。
 だが深くはない。
 もう一ヶ所、二ヶ所、三ヶ所――
 それはまるで猫が獲物を嬲る様に、じわじわと傷を増やしていく。

 ネズミ顔が、ニヤリと笑った様に見えた。



リプレイ本文

 御門 彰(jb7305)の頭上で、突如サイレンが鳴り響く。
「うわ、びっくりした……!」
 たまの休日、普段はしないウィンドウショッピングに出てみようかと思ったら――
「嗚呼、折角の休日が……」
 オシャレを気取ったツケだろうか。
「兎も角、撃退士の義務を果たさなきゃだね」
 咳払いをひとつ、戦闘モード、ON!
「さぁ、幕を開けよ!」
 館内放送では敵が何処に現れたのか不明だが、人の流れに逆流すれば良いだろう。

 一方、学園内で救助の要請を受けた生徒達は、転送装置へ急ぐ。
「一人で足止めなんて無謀すぎるよ!」
 何が何でも守らなくては徒、伊藤司(jb7383)は真っ先に飛び出して行った。
 蓮城 真緋呂(jb6120)がその後に続く。
「ほんと、無茶するわ」
 場合によっては撃退士でも厳しいだろう。
 それを一般人が、なんて。
「勇敢な少年です。むざむざ死なせるわけにはいきませんネ」
 アリーネ ジルベルト(jb8556)が頷く。

 最初はよくあるヒーロー志願者が沸いたのかと思ったが、話を聞けばどうも少し違うらしい。
「悲劇的な死を遂げた人は英雄になる。時間が立てば立つほど、頭の中で美化されていく」
 ましてやそれが親という、子供にとって絶対的な存在であれば尚のこと。
「周囲に否定されたことで、自分だけは父親を認めようと意固地になっているのかな」
 狩野 峰雪(ja0345)は少年の心を思う。
 いずれにしても、一刻も早く助けに行かなくては。

「今回は翔也に任せるね…、あの年近くの人に何て言えば良いかわかんないからさ…」
「よっしゃ任せろ! とは言え俺も何て言えば良いかわからねぇな!」
 走りながら一人二役を演じている様に見えるのは双城 燈真(ja3216)、彼には翔也と言う裏人格が存在し、普段から互いに意思疎通が出来るらしい。
「「まぁ思った事を言えば良いか(よね…)! 」」

「自分を犠牲にしてでも誰かを助ける…」
 走りながら、川内 日菜子(jb7813)は溜息を吐いた。
 そういう奴は戦士には向かないと、苛立ち混じりに呟く。
 それは撃退士の仕事だ。
 なのに、一般人を危険に晒すなんて。
 自分が現場にいたら、絶対にそんな事はさせなかった。
 例えどんな事情があったとしても。



 現場に到着した彼等は南と北に別れた。
 まずは敵の背後を取る形で、南側から三人が奇襲をかける。
 ひときわ目立つボス格のネズミはこちらに背を向け、少年をいたぶる事に夢中になっていた。
「そこまでよ。私達が来たからには、もう手出しさせない」
 その真後ろから、真緋呂が寒雷霊符から生み出した雷の刃を叩き付ける。
 不意打ちを食らって振り向いたボスの目の前で、子分のネズミ達が峰雪の放った紫電の矢に次々と貫かれていった。
 彼等が事態を把握する前に、頭上からは燈真――いや、翔也が降って来る。
「ちゃんと上も見なきゃダメだぜこのネズミ野郎ども!」
 陰陽の翼で東側から建物を飛び越え、ボスの真上で効果を切ってそのまま落下しつつ、雪村で脳天から斬り付けた。

 その隙に、北側から駆けつけた日菜子が縮地を使った全力移動でボスと少年の間に割り込む。
 直後、鏑木愛梨沙(jb3903)が星の輝きを放った。
 眩い光を目にしたネズミ達が目を背け、動きを止める。
 それに抗して向かって来たものは、アリーネが氷の大剣で纏めて薙ぎ払った。
「ネズミども、ここから先は通しません」
 楽しみを邪魔されたボスは、日菜子に向かって苛立たしげに剣を振り上げるが――
「手出しさせないって言ってるでしょ?」
 接近した真緋呂が、持ち替えた阿弥陀蓮華で背中から斬り付ける。
 そこを日菜子が突き飛ばして少年から引き離し、更に彰が忍法「髪芝居」で幻影を見せ、心理的圧力で自由を奪った。
「弱い者をいたぶるのが趣味ですか。反吐がでますネ」
「多少力と知恵を得た所で所詮は畜生か……やる事が下劣だな(いじめ、いくない!)」
 アリーネが眉を寄せ、彰が吐き捨てる様に言う。
「大丈夫だった? 怪我は……うん、見た目よりは酷くなさそうかな」
 スレイプニルと共に駆けつけた司が避難を促した。
 だが――
「あんたの親父はクソッタレだが、今のあんたはそれ以上にクソッタレだ」
 いきなり放たれた言葉に、少年は傷の痛みも忘れて、抱え上げて連れ出そうとする日菜子の腕を振り払った。
「父さんの悪口を言うな!」
 日菜子にしてみれば、悪口を言ったつもりはない。
 ただ、救う事で悲しむ人間を生むのなら、彼もその父親も――そして自分も、ヒーロー失格だ。
 その想いが、そのまま出た。
 どうやら言葉を飾る事は不得手らしい。
「そうよね、『家族』を守りたい気持ちは誰だって同じよね」
 それをフォローする様に、愛梨沙が言った。
 ルミナリィシールドで防御を固めつつ、少年にライトヒールをかける。
「よく頑張ったわね。でもちょっと無茶だったかな?」
 これ以上ここに留まるのは危険すぎる、彼はもう充分にその役目を果たしたのだ。
「後はあたし達に任せて――」
「いやだ!」
 先程の一言で依怙地になったのだろうか。
 その瞳に、スーツ姿の背中が映った。
 それは回避射撃で援護に当たる峰雪の姿。

「父さん……!?」
 違う、そんな筈はない。
 けれど、大人の男性が見せる背中は――あの日の父を思わせた。
『自らを犠牲に、他の命を救うことは、簡単に真似のできない勇敢で尊い行為だけれど』
 その背が語る。
 周囲に認めさせることが目的になってしまっては本末転倒だし、それで死んでしまったら、父親も喜ばない。
 父親はヒーローになるために、尊敬されるために犠牲になったのではなく、ただ、守りたいとの、咄嗟の行動だったのだろうから。
 行為の是非を証明してもらいたいわけじゃなくて、家族みんなで生きていてほしい、それだけだと思うよ――?

「お前が死んだらそれこそお前の親父は無駄死にしたって事になるんじゃねぇか?」
 じっと動かない少年に、翔也が声をかける。
「守る為に死んでまた守る為に死んでじゃ負の連鎖だと俺と燈真は思うぜ?」
「親父が命を賭してまであんたを生かした理由を考えろ」
 日菜子が強引にその腕を引いた。
 しかし。
「お前ら、どうせ俺には何も出来ないと思ってんだろ!」
 少年が叫ぶ。
「ここにいたって死ぬだけだって、一般人は大人しく撃退士に守られてろって、馬鹿にしてんだろ!?」
「そんなことないよ」
 司が首を振った。
「俺も撃退士になる前、一般人だった頃に、天魔に襲われて……死にかけた事があるんだ」
 その時の恐怖と無力感は今も忘れられない。
「だから、きみがどれだけ頑張ってたか、どんな思いでここに立ってたのかも、わかる気がする」
 けれど、だからこそ許せないのだ。
 こうして抵抗も出来ない人々が天魔に襲われている状況が。
「恐れずに、よく頑張ったね」
 スーツのおじさん、峰雪が背を向けたまま言った。
「でも今あなたが守るべきは、ここではないと……そう思わないかな」
 この場を守る事は、撃退士でも出来る。
 だが、避難所で彼の身を案じる母と妹の心を守る事が出来るのは、ただひとり――彼だけなのだ。
「さぁ、君を待っている人達の所に、はやく行って。安心させてあげなさい」
 アリーネが背中を押すと、少年の足は素直に動いた。
 しかし日菜子に抱えられての脱出は頑なに拒否、司と共にストレイシオンに守られつつ後退する。
 行く手を阻もうとする敵をトリックスターで吹き飛ばしながら避難所へ。

 残った仲間達はそれを援護すべく、敵の足止めにかかった。
「ここから先へは通さないんだから!」
 愛梨沙は追いすがろうとするネズミ達をシールドで弾き返す。
 必要なのは、倒す事より止める事。
「たいして耐久力も無さそうだし、その内撲滅出来るでしょ」
 例えそこで止められなくても心配はなかった。
「遊びで弱きを弄ぶ輩に激昂と鉄拳制裁を――貴様ら全員ウェルダンに焼いてやる…ッ」
 日菜子はボスに突っ込んで行くと炎打蹴を叩き込み、少年達を追いかけようとしていたネズミ達さえ、その華麗な技で強引に振り向かせる。
 自身に注目を集めた後は、発勁を乗せた拳を叩き付けて一直線に薙ぎ払い。
「爆ぜろッ!!!」
 その勢いに怖れをなしたネズミ達は、ボスに庇護を求める様にその周囲に集まり始める。
 が、その前に翔也が立ち塞がった。
「何かあったらリーダー便りか!? そう言うなまくらネズミはぶった切ってやるぜ!」
 雪の様に白い光を放つ刃が一閃、ネズミ達を切り伏せる。

 少年が充分に離れれば、もう遠慮はいらない――今までも遠慮など全くしていなかった気はするが。
「じゃ、そろそろ終わりにしましょうか」
 阿弥陀蓮華を揺らめかせ、真緋呂がボスに迫る。
 たかがネズミだが、指揮能力を発揮されても面倒だ。
 頭はさっさと潰してしまうに限る。
「今度は私と戯れて貰おう。先の少年よりは貴公も楽しめるだろうよ」
 彰が大鎌を振りかざすと、芳香剤のきつい匂いが辺りに充満した。
「弄っていたにしろ、あの子を殺さなかった事は褒めてあげる。だから苦しまずに逝かせてあげるわ」
 真っ向から斬り込んで行った真緋呂は予測防御で反撃の軌道を読み、鍔で受けた相手の力を利用して逆袈裟に斬り上げる。
 そこに彰の大鎌が一閃、ネズミ頭を切り落とした――えも言われぬ香りと共に。

 その間に少年を無事に避難させた司は、護衛としてその場に留まっていた。
 避難所に着いた途端、母と妹を探して奥に駆け込んで行った少年の事も気がかりではあったが、二人が無事に避難しているなら、いずれは再開を果たせるだろう。
 それよりも、司にはやるべき事があった。
 彼にとって大切なのは、敵を倒す事よりも一般人を守る事。
 逃げ遅れた者がいると聞けばストレイシオンにその場を守らせて救助に赴く。
「怪我は勿論、怖い思いもさせないよ!」
 その為なら自身の身を盾にすることも辞さない覚悟だった。

 文字通り頭を落とされたネズミ達は統制を失って散り始める。
 が、撃退士達の反応は早かった。
 標的が散る前に、峰雪はナパームショットで纏めて攻撃、弱らせたところで逃走の気配を見せるものから潰していく。
 真緋呂は蜃気楼を身に纏い、敵集団の側面に回り込んだ。
 阿弥陀蓮華に太陽の光を収束させ、一直線に赤光の一撃を放つ。
 アリーネは逃げる相手を背中から、向かって来るなら盾ごと叩き斬る力押しで敵の頭数を減らしていった。
「そんな盾で私の攻撃を受けられるものかっ!」
 チャンスと見ればエメラルドスラッシュも出し惜しみせず、遠い間合いでは氷雪撃を叩き込む。
「凍てつき砕け散るがいい。ブリザードストライク!!」
 細かな氷塊が吹雪の様に吹き付け、ネズミの身体を弾き飛ばした。
 彰は忍ビームの三連射で残りを掃討。
「幕を閉じよ。ここから先は何の面白みもない殺戮劇である(牽制の忍ビーム! 追撃の忍ビーム! そして必殺! 忍ビーム!!)」



「うん、もう大丈夫。敵は一匹も残ってないわ」
「建物の被害も最小限に抑えられた様ですね」
 周囲を見回った愛梨沙とアリーネが報告する。
 ゴミ箱が蹴り倒されたり、花壇が踏み荒らされたり、屋外に置かれた飲食用の椅子やテーブルが破損した程度なら仕方がないだろう。
「後できちんと直して、掃除もしないとね」
 だが、まずは安全宣言と避難の解除、そして怪我人の治療だ。

 避難所の一角に作られた救護所で、愛梨沙はスキルを駆使して治療に当たる。
 逃げる際に転んだり階段から落ちたりといった、軽い怪我は意外に多かった。
「私も救急箱を持って来ました。応急手当くらいならお手伝いします」
 アリーネが申し出る。
 擦り傷程度ならそれで充分だろう。
 そしてほぼ唯一、敵の攻撃による傷を負った少年は――

「無事ですか? 少年」
 アリーネの問いに、少年は黙って頷いた。
「お母さんや妹さんとは会えた?」
 愛梨沙の問いにもやはり黙って頷いたのは、何となく気まずい思いがあるのだろうか。
 しかし、アリーネはそんな態度を気にする風もなく言った。
「君のおかげでたくさんの人々が助かりました。私からもお礼を言わせてください。ありがとう」
「え」
 礼を言うのは自分の方だと、少年は首を振る。
 だがアリーネの言葉には続きがあった。
「ですが、一歩間違えれば君の命はなかったところです。君のまわりの方が悲しむような事にならないよう、今後はよく考えて行動するべきです」
 その勇気は称賛に値するし、自分もそんな勇気を持って天魔と戦い続けたいと思う。
 しかし、時には逃げる事も必要だろう。
「それは弱さではない、勇気だと、私は思います」
「あなたにもしものことがあったら、今後誰がお母さんと妹さんを守るのかな」
 峰雪が静かに語りかける。
「お父さんとあなたを失ったら、二人はどんなに悲しいだろう」
「そうね、キミがお父さんを尊敬するのは判るけど……」
 愛梨沙が頷く。
「ね、何故一人残ったの?」
 真緋呂が尋ねた。
 斡旋所で事情を聞いてはいるが、本人の口から聞きたかったのだ。
「そっか。うーん…」
 その話を聞いた真緋呂は暫く考え、やがて独り言の様に言った。
「貴方もお父さんも勇敢だと思う。立ち向かう術が無いんだもの、怖かったはず。だけど『間違い』かどうかと考えると…正しいとは私には言えない。逆に間違いだとも言えない」
「ふむ……我々撃退士でも意見の分かれる難しい問題だな」
 腕組みをした彰が重々しく頷く。
「この件については口を噤ませてもらおう」
 とは言え、思う所はある。
(感情任せに動いちゃう事もあるよね。人間だもの)
 それが人間の愚かさであり、素晴らしさでもあるのだろう。
 正しさはきっと、ひとつじゃない。
「貴方が正しいと思っていれば、お父さんは正しかったんじゃないかな」
 それが真緋呂の出した答えだった。
「でも貴方が命を落とせば認める人がいなくなる。貴方は生きなきゃ」
「そうだね。あなたが生き延びて、二人を守り続けることが、お父さんへの恩返しになるし」
 峰雪が俯いた少年の頭に手を置いて、軽く叩く。
「そうすることで、いつか憧れのお父さんに追い付いて、越えることができるかもしれないよ」
「これはただの想像でしか無いけれど……」
 愛梨沙が言った。
「自分が死んでもキミが居るからお父さんは自分の命を投げ出す守り方が出来たんじゃ無いかな?」


 それぞれが自分なりの答えを出したところで、日菜子が尋ねた。
「それで、今回のあんたの最適解は?」
 日菜子が思うのは『家族を不安がらせないこと』だが――

「わからない」
 少年は首を振った。
 遺したかったのはその「行為」ではなく、「想い」だったのではないか。
 そんな、ぼんやりとした考えが頭の中で形を取りつつはあったけれど。
「わからないから……もっと、生きてみる」

 父が自分に生きていてほしいと願った。
 それだけは絶対に、確かな事だから。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

Mr.Goombah・
狩野 峰雪(ja0345)

大学部7年5組 男 インフィルトレイター
夜に光もたらす者・
双城 燈真(ja3216)

大学部4年192組 男 アカシックレコーダー:タイプB
208号室の渡り鳥・
鏑木愛梨沙(jb3903)

大学部7年162組 女 アストラルヴァンガード
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
撃退士・
御門 彰(jb7305)

大学部3年322組 男 鬼道忍軍
闇を解き放つ者・
伊藤司(jb7383)

大学部3年93組 男 鬼道忍軍
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅
撃退士・
アリーネ ジルベルト(jb8556)

大学部4年2組 女 ディバインナイト