【第一回 門木章治教諭に関するアンケート調査】
参加者一覧(学生番号順・敬称略)
■レイラ(
ja0365)
■黒百合(
ja0422)
■エイルズレトラ マステリオ(
ja2224)
■矢野 胡桃(
ja2617)
■礼野 智美(
ja3600)
■カーディス=キャットフィールド(
ja7927)
■レグルス・グラウシード(
ja8064)
■ジェラルド&ブラックパレード(
ja9284)
■ミハイル・エッカート(
jb0544)
■鑑夜 翠月(
jb0681)
■月乃宮 恋音(
jb1221)
■袋井 雅人(
jb1469)
■天宮 佳槻(
jb1989)
■カノン(
jb2648)
■シェリア・ロウ・ド・ロンド(
jb3671)
■鏑木愛梨沙(
jb3903)
■ラファル A ユーティライネン(
jb4620)
■シグリッド=リンドベリ (
jb5318)
■ユウ(
jb5639)
■蓮城 真緋呂(
jb6120)
■華桜りりか(
jb6883)
■ゼロ=シュバイツァー(
jb7501)
■アルベルト・レベッカ・ベッカー(
jb9518)
■蒼月 夜刀(
jb9630)
■築田多紀(
jb9792)
「……ご協力、ありがとうございましたぁ……」
恋音が回収したのは、以上の25名分。
そう、実は恋音さん、このアンケートを実施した「有志」のうちの一人だったのだ。
他の仲間達もそれぞれに回収しているだろうが、彼女の担当分はここまで。
さて、これから教室に戻って全員分の集計処理と文書化の作業にかかるわけだが――
如何に彼女が自他共に認める超一流の事務処理能力の持ち主であろうとも、その作業には相当な時間と労力が必要だった。
というわけで。
結果が出るまで、ただぼんやり待っているのもつまらない。
ここは少し時を遡って、皆の記入時の様子をこっそり覗いてみることにしよう。
「生徒が先生を評価するなんて世も末だなーおい。こんなのが横行したら教師の成り手がいなくなっちまうぞ」
と、ラファルは至極まっとう(本人談)な感想を述べるが。
「良いじゃない、そんなに真面目に考えなくてもさ☆」
そう言って笑ったのはジェラルドだ。
「あはは☆ こういう悪乗りも嫌いじゃないね♪」
悪乗り、なのか。
それなら本人の目の前で書いたって構わないよ、ね?
というわけで、シグリッドはわざわざ科学室で書き書き。
「だいすきなせんせーの良いところを書けばいいのですね!」
「……何だ、それ」
手元を覗き込んだ門木が首を傾げる。
「秘密なのですよー」
いや、丸見えなんだけど。
「せんせーは気にしなくて良いのですよ〜」
ささ、こちらへどうぞと門木を手招きするのは黒猫忍者にゃーでぃす君。
黒猫さんはお菓子と軽食で、お・も・て・な・し(はぁと
「せんせーちゃんと食べないとダメですよ〜」
いちじくのタルトにプリン、玉子サンドは手作りもふ(=‘ω‘=)
ドリンクは紅茶にココア、緑茶。
「集計作業の皆さんにも持って行ってあげましょうかね〜」
でも、その前に。
「いつもせんせー寒そうな格好しているので、こちらをどうぞです」
取り出したのは猫模様付きの腹巻。
前には三角の小さな耳と、後ろには尻尾も付いてます(もふ
「シャツに白衣って寒くないのです?」
「……ここは暖房が効いてるし、な」
「でも外に出たら寒いのでは〜」
廊下ですれ違っても、その格好ですよね?
「……ん…あまり感じない、かな」
鈍いのか。
こんな所まで鈍いのかこの人は。
「良いのですよ、せんせーはそれで」
こくり、シグリッドが頷く。
だって鈍くなかったら、とっくにああしてこうしてごにょごにょごにょ。
暑さ寒さに関しては、きっと周りが注意してくれるから大丈夫。
ところでシグ君、それいつまで書いてるんですか?
「あ、裏も書いていいんですよね?」
止めないと延々書き続けるらしい、けれど。
何をそんなに書く事が……
「たくさんあるのですよー?」
あれとかこれとかそれとか(えんどれす
「門木先生への意見? …そういえば、一つだけ言いたいことがあったわね」
アルベルトは記憶に新しい事件を思い浮かべ、憎しみを込めながら筆をとった。
そう、あれは忘れもしない――
「あら、性別記入欄なんてあるのね」
途中で気が付き、男性に丸を……いやいや、こっちじゃない。
少々思い直して横線を引き、改めて女性の項目に丸を付け……うーん、これもなんか違う。
「性別:アルベルト・レベッカ・ベッカー……っていうの、だめかしらね?」
結局両方ともぐしゃぐしゃと線を引いて塗り潰してしまった。
「きゃはァ、彼の評価ねェ…こうかしらァ♪」
黒百合さん、やけに楽しそうですが、一体何を書いているのでしょうか。
背後から迸る真っ黒なオーラが気になります。
結果が気になりますが、見てみたい様な、怖いから見たくない様な。
「門木先生に関してのアンケートですか?」
用紙を受け取った翠月は暫し考え、こくりと頷いた。
「科学室ではお世話になりますし、折角の機会ですから協力させて頂きますね」
これは、何か嬉しい事を書いてくれそうな予感……!
「門木先生の、つうしんぼ? ……面白そう、ね」
胡桃さん、何やら悪巧みの構え。
え、違う?
「何か企んでいるのは、あちらではないかしら……ね」
ちらり、胡桃が投げた視線の先には用紙を前に腕組みをするゼロの姿があった。
「採点? 先生も大変なんやなぁ〜」
棒読みです。
「どうしよう人の採点とか向いてないんですけど」
まるでフラットになった心電図の様に、平坦で抑揚のないお言葉です。
「あ、せや! 実技試験と称して門木先生と飲みに行こう!」
戻った。
心拍再開、血圧上昇、覚醒、即退院、そして酒盛り。
「たこ焼きとかおでんとかお酒とかお酒とかお酒とかで先生の本性を引き出せたらええな〜」
どうやら、それが本音らしい。
「そうと決まれば善は急げや、へーか、りんりん、居酒屋ひとつ借り切るで!」
「章治せんせいのあんけーと、です? んぅ…、……ぅ?」
眉間に皺を寄せて真面目に考えていたりりかを掻っ攫い、胡桃を引き連れ、科学室に回って門木とシグリッドを纏めて拉致。
「え、まだ書き終わってないのですよ…!」
「あたしも、まだぜんぜんなの…」
しかしゼロさんが耳を貸す筈もないのです。
「そんなん向こうで書けばええやん!」
俺もまだ書いてへんし!
「無記名なら、思うままにでいいんです、よね?」
今、目の前を何かが通り過ぎた気がするけれど、気のせいだと思う事にして。
カノンはアンケート用紙に目を戻した。
記入欄いっぱいに埋める。ひたすら埋める。
「あ、欄が足りなく……」
裏面も、行きますか?
そして数時間後。
「……集計と文書化の処理、終わりましたぁ……」
居酒屋に現れた恋音は、分厚いレポートの束とアンケートの原本を門木に手渡す。
その頃には噂が広まって、参加したほぼ全ての者達が店に顔を揃えていた。
「な、借り切っといて正解やろ?」
ゼロさん、鼻高々のドヤ顔であります。
「まぁ、何が書かれていても気にしないで、ね。先生」
ちゃっかり隣に座った胡桃が、さっそく給餌……じゃない、給仕をしながら門木の手元を覗き込む。
「え? 私? ……ナイショ、よ」
「……これだろ」
そう言って門木が指差したのは。
●mgmg度 ☆5
「上背がある男性って素敵ね?」(中等部二年、女子)
どうしてわかったのだろう。
まさか鈍感ぼんやり昼行灯は世を忍ぶ仮の姿!?
「……お前以外に、いないだろ…こんな項目」
おじさん好きのmgmgももんがは、この世に一匹の希少種なのだ。
いかに門木が鈍くても、それくらいはわかるというもの。
それでは、結果発表に参りましょうか。
まずは最も意見が多かった項目から――
●イケメン度 ☆4(平均)
「☆3 今のままの方が親しみ易いかと」(高等部一年、女子)
「☆4 時々周りに身だしなみを整えてもらった時は凄いので、基本的にイケメンなんだと思います。ただ、それを自分で演出する意思と技術を持たないだけで。その分マイナスで☆4です」(大学部二年、女子)
「☆5 撫でるとねこさんみたいにふわふわな髪の毛も好きだし、背も高くてかっこいいのですよー。優しいところ、決めた事はしっかり実行する芯の強いところ、ちょっとぼんやりしてるのがほっとけないし食べ物の好みが子供っぽくてギャップが可愛いのとあと時々見せる笑顔が(ry」(中等部二年、男子)
「☆4 ちゃんと整えればイケメンだというのは知ってる。でも自分一人で整えられないから、☆1つマイナスで」(高等部二年、女子)
「☆5 とてもかっこいいと思うの、です。素敵なの…」(高等部二年、女子)
「☆5 よくも私の愛銃を靴に突然変異させてくれたわね。あの時は本当に深い悲しみに包まれたわ。許すまじ門木先生…! ――(長い空白)―― でも格好良いから許してあげるわ。ただし、2度目はないわよ」(大学部二年、不明)
「☆3 基本的にはイケメン? ただし髪が少しぼさぼさ」(小等部六年、男子)
何か趣旨の違うコメントが混ざっている気がする。
しかも性別不明とか。
「……そこは、アンケート用紙だけでは性別が判断できなくなっていたのですぅ……」
恋音が答える。
確認に行ったスタッフの言によれば、ご本人にお会いしても判断できなかったとか。
●きちんとすればカッコ良いのにとても残念です度 ☆5
「せんせーいつもきちんとすればもっとかっこかわいいのです」(大学部一年、男子)
●可愛い度 ☆3
「ある意味、可愛い人…天使だと思う。ピュアだし。外見がおっさんでなければ、もっと評価は上がってたかな」(高等部二年、女子)
●科学室のフェアリー度 ☆5
「せんせーちょーふぇありー! まじえんじぇるまじふぇありーですの!」(大学部一年、男子)
●お兄ちゃん度 ☆5
「兄さまだったら嬉しいなといつも思っているの…」(高等部二年、女子)
●靴底のすり減り具合 ☆5
「穴が開きそうになったら新しい靴を買っても良いとは思うのだが、どうしてそこまですり減ったものを履き続けれるか分からない」(小等部一年、女子)
付された注釈によれば、虫眼鏡を持って靴底を丹念に調べたらしいが。
「……いつの間に…?」
それにしても、そんなに減っているだろうか。
しかし丁度良い、そろそろ健康サンダルは卒業しようと考えていたところだし――
「……もう少し、どうにかした方が良い…の、かな」
そのままで良い派と、もう少し頑張りましょう派が拮抗している様だが、どちらかと言えば変化を望む声の方が多いか。
しかし、そこに強力に異議を唱える者がいた。
「せんせーは変身しなくても十分かっこいいのです。それ以上無意識に多方面に向かって人たらしスキルを発動しないでほしいのです」
シグリッドが真剣な目つきでこくりと頷く。
「……人、たらし?」
「そうです」
つまりはこういう事だと、シグリッドは続く項目を指差した。
● もてもてハーレム度 ☆5(平均)
「☆5 よ! モテモテ!! 俺には無縁な世界だな。別に羨ましいわけじゃない。むしろ傍から見ていて面白そ……じゃなくて大変そうだ。くくく、この先どうなるのか興味あるぜ」(大学部三年、男子)
「☆5 先生の人柄の皆さんからの評価だと思います。大変素晴らしいです。けれど、いつか答えを出さなくてはいけないと気づいたときは、確りと答えて下さい。中途半端はハリセンでお仕置きです」(大学部一年、女子)
本人、特にモテたいと考えている訳ではない、らしいが。
勿論ハーレムを作るつもりもない。
どちらかと言えば、一人の相手を一途に想い続けるタイプだ――例えそれが報われぬ想いであっても。
ただ、一人を選ぶのは難しいかもしれない。
誰かを選べば誰かが残る。
残った彼等が納得し、喜んで背中を押してくれる様な選択を、自分は出来るのか。
出来ないなら、敢えて選ばないのもひとつの手では――
などと考えるのはただの逃げ、ハリセンお仕置きまっしぐらコースだろうか。
●優しさ度 ☆5(平均)
「☆5 とても素晴らしいことだと思います。けれど、やさしすぎることは時に残酷なこともあります。時には厳しさを持ちましょう。それもやさしさに繋がります」(大学部一年、女子)
「☆4 誰にでも優しいわよね、先生。でも平等に優しすぎてそれが傷つけたりしちゃう場合もあるから、やっぱり☆1つマイナス」(高等部二年、女子)
「……難しい、な」
厳しくするのは、苦手だ。
頑張っている姿を見ると、たとえ結果が大失敗でも、つい応援したくなってしまう。
それに教師である以上は、生徒に対して分け隔てなく平等公平公正に接する事は、義務の様なものだろう。
そこはきっと、変えられない――教師と生徒という関係である限り。
先生と言えば、こんなコメントもあった。
●授業の教え方 ☆?(回答不能)
「…科学室のヌシなのに、授業を教えている記憶がないのですが…というか、教員免許はどうなってるんでしょうか? 技官だったら教員免許いらないって聞いた事は有りますけど、それ以前に人界知識が…初等部なら何とかなりそうな気はしますけど…武器改造特化教官?」(高等部一年、女子)
「……免許は、持ってるぞ」
確か科学室にある机の抽斗に突っ込んであった筈だ。
知識の質を問われると厳しいが、量を計るだけなら試験をパスするには充分なだけの蓄えがある。
「……教員試験で、小学生でもわかる様な一般常識を問われる事は、まずないからな」
七夕とクリスマスの違いとか、犬と猫の見分け方とか……今はどちらもわかるけれど。多分。
ごく稀に授業を受け持つ事もあるが、殆ど自習。
ほぼ科学室での強化担当に特化していると言って良いだろう。
●社会 ☆3
「もっと人間社会について勉強するといいと思います! あと、子どもにお年玉とかお盆玉をあげるのは、ジャパンの大事な風習で、昔はカタナ・ソードや薬などでしたが、現代では『お金』と決まっているそうです。なので、生徒が『お年玉ください(・∀・)!』といってきたら、ちゃんとお金を渡しましょう!」(高等部一年、男子)
「……うん、もっと色々、知りたいとは思うが…な」
お年玉とは年神様への捧げ物を、お裾分けしていただくもの。
催促したらバチが当たるよ?
それに、何でも金の価値に換算するのは良くない傾向だと思うな!
そして次は――
●女性に流され度 ☆5
「最近女性だけでもない気もしますが、積極的な押しにガードが弱かったり、逆に無意識に勘違いさせるような行為をしたりそもそも……(集計欄に入りきらなかった分は、お手元の原本でご確認下さい」(大学部二年、女子)
「……勘違いって、何だ?」
門木は首を傾げる。
このパターンはいつものお説教だ。
という事は、これを書いたのは――
「……後で本人に訊いてみるか」
「いや、それは流石にやめた方がええんちゃうか?」
門木のグラスになみなみと酒を注ぎながら、ゼロは苦笑い。
「……何故だ? 疑問があれば、本人に聞くのが最も正確かつ適切な方法、だろう」
「嫌われても知らんで?」
「……それは、困る」
「ほな黙っとき、ナンパ師の言うことは素直に聞くもんや」
でも、それでは答えがわからない。
わからなければ更にお説教のネタが増え、時間が長引く事になるだろう。
「……それも、嫌いじゃないが…」
寧ろ好きだけど。
こう、ちゃんと見てくれてるって気がするし。
「……でも、説教する方は…その、多分、怒ってる、わけだし」
「なら、この二つの『大好き』の違いを言うてみ?」
ゼロはアンケートの次の項目を指差した。
「わかったら、俺の試験は初級合格や」
そして、求める答えも自ずと明らかになるだろう。
「どや?」
●LOVE度 ☆5
「門木先生大好きです」(大学部一年、女子)
●大好き度 ☆5
「章治せんせい、大好きなの…」(高等部二年、女子)
「……何か、違うのか…?」
「当分説教漬けやな」
相変わらずここで足踏み。
果たして、門木が違いのわかる男になれる日は来るのだろうか。
「そんなまじえんじぇるふぇありーなせんせーには、このコメントをプレゼントするのですよー」
にゃーでぃす君が肉球でぽちっと指差したのは――
●鈍感度 ☆5
「MAX以外にどうつけろと( 鈍いでしょ。鈍過ぎでしょ」(高等部二年、女子)
恐らく、このコメントに異議を唱える者はいないだろう――本人以外は。
いや、或いは本人さえも……?
●不器用度 ☆3
「決してくず鉄的な意味で無く。少し前まで他人を頼ることが下手だったように思います。
周囲のおかげで☆は下がり続けているので、このまま☆1を目指しましょう」(大学部二年、女子)
●国語 ☆4
「以前よりはずっと『自分の気持ち』を出すことがうまくなったと思います!」(高等部一年、男子)
「……そう、かな」
だとしたら、皆のお陰だ。
以前は頼るどころか関わる事さえ苦手で、会話も上手く出来ず、言いたい事もきちんと伝える事が出来なかった。
今でも付き合い上手とは言い難いし、気の利いた台詞のひとつも言えない、けれど。
それでも皆が、傍に居てくれるから。
例えその理由が、強化や改造の為に必要だから、という実利的なものにすぎないとしても。
「それだけじゃないのは、わかってるだろ」
ミハイルが次の項目を指差した。
●重要度 ☆5
「学園に欠かせない存在です。それは科学室に於ける活動に限ってではありません。先生を大好きで先生の存在そのものが支えになっている人が大勢いるからです。だから、その事を忘れないで下さい」(大学部一年、女子)
●要人自覚度 ☆1
「先生の存在が学園や人類にとってどれほど重要か自覚してくれ。別に俺は先生が要人だから守るわけじゃない。理由? 言わせるな、恥ずかしい」(大学部三年、男子)
「別に、俺が書いたわけじゃないからな」
「……知ってる、そういうの…ツンデレって言うんだよ、な」
「待て、ツンはまだしもデレの要素は欠片もないだろう」
ダウト。
「……採点、しようか」
「おう、望む所だ。やってみろ」
では遠慮なく。
「……ミハイル・エッカート、ツンデレ度☆5、ハーフボイル度☆5、ピーマン耐性☆0」
こんなもんで、どうでしょ?
そしてやはり、多いのが強化関連の項目だった。
●信頼度 ☆4
「たまにくずにはしてくれるけど、基本信頼しているわ」(中等部二年、女子)
●強化度 ☆3
「そこそこ成功させてくれているので☆3」(小等部六年、男子)
と、そこそこ評価してくれるコメントもあるにはある、が。
やはり圧倒的なのは怨嗟の声。
●技術 ☆4
「最近、大失敗の数が減ったように思えます。努力の成果が出ましたね! でも、『変異許可書』でも普通に成功させるのはどうかと思います。みんな、怒ってましたよ(´・ω・) 」(高等部一年、男子)
●突然変異の空気読み度 ☆2
「どうして変異許可証使った時に成功で、大事な魔具の時に変異しちゃうんですかね!?
ある意味クズ鉄よりタチ悪いと思うの。弓返して、弓!」(高等部二年、女子)
●変異度 ☆3
「大切なものが変異してしまったの、です」(高等部二年、女子)
●呪われ?度 ☆4
「…強化にくず鉄のリスクが伴うのは承知の上。レベルが高くなるにつれてリスクが上がるのも当然。しかし。割と気楽な強化の時にはレベル5まで『強化失敗、変化無し』なのに 、これはと思ったものや大事なもの、重宝してるものに限ってくず鉄とはどういう事でしょう? それも、高いレベルの強化なら保証書を付けなかった自分も悪いと諦めが付きますが、レベル3や4で普通保証書は付けないでしょう。自分にとって貴重なものを…それも低レベルで立て続けに。何か先生に恨まれるような事をしましたか? してませんよね? 科学室というか、先生にはきっと過去の無数のくず鉄の呪いg…」(中等部三年、男子)
この後も文章は延々と続いていた。
だが、それは何故か判読不能になっている――文字である事は確かなのだが、読もうとすると頭が割れる様に痛むのだ。
はっ、まさかこれがくず鉄の呪い!? ※違います
●くず鉄キング度 ☆4(平均)
「☆5 バレンタイン…アイテム補助を奨励しないならもう少し強化の可能性上げて下さい…」(高等部一年、女子)
「☆2 実はあまりくず鉄になったことはないの…」(高等部二年、女子)
●くず鉄の錬金術師度 ☆5
「何でもかんでもくず鉄にするなと……ていうか、どうやったら飲み物がくず鉄になるんですかね!? 突然変異狙って変異許可書つけてカフェオレを改造したら、紙パックごとくず鉄になりましたよ!? いやまあ、くず鉄じゃなくても飲み物が剣だの防具だのに変わるのも、十分真理とか理に反してると思いますが」(中等部三年、男子)
●変異罠度 ☆5
「俺のブリュンヒルデドレス返しやがれ。大失敗無いとか言いつつ変異はあるなんて反則だろ」(高等部二年、女子)
これらの声に関しては、素直に「ゴメンナサイ」と言うしかない。
ちょっと、いや、かなり胃が痛む、けれど。
保証書や許可書の誤動作は、システムの不具合か何かだと思います多分きっと。
もしくはそれも自然の摂理――
「生物が鉱物に変わる現象の何処が自然なんですかね? 摂理があるならきちんと種明かしをお願いします」
いやまあ、それは、その……ね?
「章治せんせい、だいじょうぶ…です?」
鳩尾を押さえた門木に、りりかが甘いチョコを差し出した。
「チョコを食べると、幸せな気分になれるの…」
お茶もどうぞー。
「りんりん、こんな時は茶より酒やろ!」
「ゼロさんは飲みすぎ、なの…」
そろそろ取り上げた方が良いだろうか。
しかし中にはこんな、暖かいコメントも。
●憎まれ役度 ☆5
「いつもお疲れ様☆ 上手く行っても行かなくても、真面目にちゃんと報告するし、いっつも一生懸命やってくれてる事はわかるので。。。強化する程のアイテムは大事なモノが多いから、憎まれる役目だけど、、、絶対に必要な役目なんだよねぇ♪ あ、Sランクの変異についてはちょっと、うん、皆さんの怒りを体感したけど( 」(大学部五年、男子)
●縁の下の力持ち度 ☆5
「いつも僕達のアイテムのお世話をして下さり、ありがとうございます。僕達がこうして強大な天魔と戦えるのも、無事に帰ってこれるのも、先生がアイテムを強くしてくれているからだと思います。いつもアイテム強化で忙しそうで、何時か疲労困憊で倒れてしまうのではないかと心配です。どうかお体にはお気を付け下さいね」(高等部二年、男子)
これはそのまま額面通りに、有難く頂いても良いのだろう。
だが、次のコメントは……
●苦労人ランキング ☆5
「日々の業務ご苦労様、毎日疲れて帰宅するのでしょうから夜道に注意してね帰ってね♪」(中等部二年、女子)
こちらも一見すると、ごく普通の暖かい労りの言葉の様に見える。
しかし、これには「裏項目」なるものが存在した。
●闇討ちランキング ★5
「それで、最後は何がいい? 斬死? 轢死? 圧死? 爆死? 頓死? 毒死? 最後は自殺に偽装してあげるからあの世では安心してね?」(中等部二年、女子)
しかも星が黒いよ。
「……これが、中等部二年、病というもの、なのか…?」
そして同一人物による回答と思われるものが、もうひとつ。
●金(久遠)返せランキング ☆5
「成功率90%で5連続失敗(強化保証書付き)って随分と素敵な結果ですね、最後は見事にクズ鉄にして頂けましたし(はぁーと」(中等部二年、女子)
「ほぉんと、近頃は物騒な世の中になったものよねェ♪」
くすくす、黒百合が笑う。
「学校の行き帰りも危ないわよねェ? 良かったら私が送り迎えしてあげましょォかぁ……?」
いや、その、それは……ご厚意(?)だけ、有難く頂いておきます、ね!
それ以外では、こんなところか。
●存在空気度 ☆5
「科学室で門木って見たことねーんだよな。少なくとも成功失敗のテロップではお目にかかったことねーよ。ギメルとか良く会うのにさ」(高等部二年、女子)
え、そうだったかな。
でもほら、入口には24時間365日休まず立ってるし……ほぼ看板で代用してますけどね!
●マザコン度 ☆5
「☆5 10? 五段階では足りません」(高等部一年、女子)
「☆4 …中々ですね…いや、否定はしないよ?」(小等部六年、男子)
「☆5 【かがくしつ かどきしょうじくん】来年はお母さん離れしましょう」(中等部二年、女子)
最後、自分の事を思いっきり棚に上げてませんか?
そろそろお父さん離れ――え、必要ない?
と言うか運命の糸で結ばれてるから離れられない?
はい、ごちそうさまでした。
●体力度 ☆1
「今後のために鍛えろ。弱体化したリュールを守れるくらいにはな。堕天を都合よく見逃してくれる天界じゃないってことはよく知ってるだろ? ふんっ、どうしても無理なら俺が守るさ」(大学部三年、男子)
「……いや、多分…今でもお袋の方が強いと、思う」
堕天の影響で弱体化したとは言え、元がアレですよ、何と言うか、バケモノ級?
ただ、確かに物理攻撃には紙より脆いし、足元は覚束ないし――うん。
足手纏いにならない程度には、鍛えられると良いな。
そして、次のこれは……何ですか?
腐向け、とか書いてあるんですけど?
●ときめき度 ☆5
「科学室の裏で密かに怪しい実験とかしてそう。つ、試験の案件と称して殿方を実験室に招き入れ実験器具に拘束してからのあれやこれやの背徳行為…! キャー! やばいっ、やばいですわ!(お前がやばい アイデアの神が囁きかけてきます…冬の即売会でこのネタを同人本にしろと、やおい神が(ry」(高等部二年、腐女子)
セルフツッコミ付きのコメントは、以下、掛け算の数式とフランス語の羅列が延々と続いていた。
「……何だ、これは…何の数式だ? いや、化学式か?」
見た事のない数式に興味を示した門木は、それを解こうとする、が。
「……既存のどんな公式にも当て嵌まらない、まさか、新たな数学上の未解決問題か」
違いますから。
いくら頑張っても解けませんから、それ。
以下は項目ごとではなく、回答者ごとに纏めた方が良いだろう。
●慕われ度 ☆5
「『○○FC名誉会員』の人数が最も多いのは、慕う人が多い証拠」
●くず鉄度 ☆5
「『くず鉄王』相手に、最高値以外の評価はない」
●恨まれ度 ☆5
「『くず鉄』『突然変異』『変異許可証の失敗』等、理由は枚挙にいとまがない」
●助かり度 ☆5
「逆に、『突然変異で得をした』方も多く、そもそも『強化の技術』ある事を考えると、助けられている人も多い」
●弄られ度 ☆5
「上記の各項目を纏めると、『理由はどうあれ、とても弄りやすい方』である事は間違いない」(高等部一年、女子)
「……ふぁんくらぶ、名誉会員…」
確かそれは、ブロマイドを100枚集めると貰える称号。
そんなに多いとは、有難いことです。
弄りやすいのは、まあ、うん、抱き枕まで作って頂いたことだし。
生徒達に親しみを持って貰えるのは良い事ですよね、理由はどうあれ。
そしてもう一名。
●恨まれキング度 ☆5
「私のアバドンの弓を返して下さーい!!」
●おっぱいキング度 ☆1
「もっとたくさんの女の子のおっぱいを揉みましょう!!」
●モテモテキング度 ☆3
「実はかなりモテモテなので門木先生が手を出せばハーレムキングも夢じゃないかも」
●ヘンタイキング度 ☆3
「本人はいたって真面目なのにアイテム強化の突然変異とくず鉄のせいで変人度が上昇」
●眼鏡キング度 ☆5 白衣キング度 ☆5
「眼鏡と白衣は既に門木先生の体の一部です!!」(高等部三年、男子)
何だか色々と酷い気がするのですが、酷いは褒め言葉というやつでしょうか。
「あ、個人的には朴念仁とした門木先生のことは大好きですよ! まあ男に好かれても嬉しくはないと思いますが……」
そんな事はない。
好意を持って貰えるのは年齢性別関係なく素直に嬉しい。
けどね?
「……その、あれ、と、ハーレムは…遠慮しておくの、です」
門木先生、恥ずかしくて言えないそうですよ……「おっぱい」って。
最後に――
●ボケ力 ☆2
「たまに見せるところはいいね!」
●つっこみ力 ☆?
「もう少し色々と気づくといいかもね!」
●天然力 ☆測定不能
「ええ、流石です」(高等部一年、30歳男子)
さて、これで全ての回答に目を通したわけだが。
回答してくれた皆さんの感想は如何に?
「くず鉄メーカーでもマザコンっぽくてもいいじゃないですか」
レイラが言った――って言うか惚気た。
「門木先生はそんなところも含めてとっても素敵な人なんです!」
と、綺麗に締めて頂いたところで、そろそろお開きに――
いや、まだ始まったばかりですね。
「時間があったらたまには飲みに行きましょう☆」
ジェラルドが門木に声をかけるが。
「ってもう飲んでるよね♪」
じゃあもっと飲もう、楽しもう。
ところでゼロさん。
店を確保してくれたのは良いけど、お代は誰が払うのかな?
「そんなん決まっとるやん、なあ?」
ぽむ。
叩かれたのは、門木の肩。
「先生、甲斐性の見せ所やな!」
まあ、アンケートへの協力の謝礼としては妥当な線だろう。
頑張れ門木……の、財布。
「……まあ、とにかく…、ありがとう。ご苦労様、でした」
寄せられたコメントや要望などに対しては、出来る限り応えていきたい……とは思う、けれど。
何しろ門木先生の事ですので、結果が出るまでには時間がかかるでしょう。
結果が出ても、そうは見えないかもしれません。
或いはそのままお蔵入り、という事もあるでしょうが――
気長に見守って頂けると幸い、です。