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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2014/07/12


みんなの思い出



オープニング



 会津若松から南西、会津盆地の向こうに「明神ヶ岳(みょうじんがたけ」と呼ばれる山がある。
 この山にはその昔、イザナギノミコトとイザナミノミコト、二柱の神が祀られていたという。
 その名残か、今でもこの山は五穀豊穣を願う地元の人々から山神様として崇められていた。

 その明神ヶ岳に、大蛇が現れた。
 しかも、二体同時に。

 一体の大蛇は白銀の鱗を身に纏い、身体全体が白く輝いている。
 もう一体は漆黒の鱗に覆われ、周囲に滲み出る様な黒い闇を纏っていた。
 その二体が絡み合い、或いは離れ、青々とした葉を茂らせたブナの木々をすり抜けながら山腹を這いずる。
 白い蛇が鎌首をもたげれば、辺りは目も眩む光に覆われた。
 黒い蛇が立ち上がれば、一寸先も見えない闇が辺りを包む。

 光と闇、どちらに覆われても、普通の人間には何も見えない。
 ただ、光の中では黒い蛇の姿だけがシミの様に広がり、闇のなかでは白い蛇の姿だけが淡く浮かび上がる。



 地元の人々には、蛇の姿が山神様の化身に見えたのだろう。
 それを目の当たりにした麓の集落では、山神様がお怒りになったと大騒ぎになっていた。
 山神様を怒らせれば日照りが続き、植えたばかりの田んぼの稲も育たないまま枯れてしまう。
「なんどかすんなんねべ(何とかしなくては)!」
 そう言って、一人の老人がお供えの酒と一升枡に山盛りの米を手に、山へと入って行った。
 周囲が止めるのも聞かずに――



「爺さまがひとり、山に入ったぎり戻って来ねぇんだど」
 久遠ヶ原学園の斡旋所。
 緊急の招集を受けて駆けつけた、小等部六年の安斉 虎之助(あんざい・とらのすけ)が資料に目を通しながら言った。
「どこか安全な場所に身を潜めてくれていれば良いのですが」
 中等部二年の東條 香織(とうじょう・かおる)が心配そうに頷く。
 今のところ、他に山に入った者はいない様だが……とにかく、急いで助け出さなければ。
 今度の大蛇は光と闇の二匹。
 蛇同士が途中で繋がっている、という訳ではなく、どうやら別々の二体が同時に出た様だ。
「それに、いつもの様に……狐もいますね」
「今度の狐は、尾っぽが八つ」
「しかも光と闇、それぞれに溶け込む迷彩仕様、ですか」
 周囲が光に包まれている時は自らも白く輝き、闇に呑まれている時は漆黒の闇を纏う。
 だが、その辺りは装備やスキルで何とでもなるだろう。
 視界さえ確保できれば、辺りが明るかろうが暗かろうが、殆ど問題はない。
 退治すべき大蛇は二匹に増えたが、それ以外は特に目新しい事もなさそうだ。
「それより、光と闇が同時に出たという事は、そろそろ仕上げが近い……という事でしょうね」
 香織が言った。

 これで恐らく、光と闇の地脈が通る。
 水、風、土、毒、雷、火、光、闇、全ての地脈が通ったその後に何か起こるのか。

 それはまだ、わからないけれど。


 ――――――


「残りの二つ、一気に開くよ」
 子供の姿をした悪魔、レドゥが言った。
「全部の地脈を集めたら、きっとすごいゲートが出来るよね」
 彼自身は、人の魂を狩る事にさほどの興味はない。
 他の下級悪魔とは違ってノルマもないし、特に必要も感じてはいなかった。
 しかし、近頃は少し北の方で天使勢が良い気になって暴れている様だ。
「あいつらにばっかり人間どもの目が行くのも、なんか面白くないしね」
 ここで巨大なゲートを開いたら、きっと人類は大騒ぎになるだろう。
「楽しみだなー」
 レドゥは大きな椅子の肘掛けに頬杖をつきながら、足をぶらぶらさせる。
 そして、目の前に立つ二人のヴァニタスに命じた。
「じゃ、今回も上手くやって来てよね」


 主の元を辞した後、中年男が若い女に話しかける。
「今度も、お前は戦わないのか?」
 その問いに、女はただ黙って目を伏せる。
「闇の中ならお前には有利だろう」
「いや、前に戦った時も……奴等は闇をものともしなかった」
 恐らく今回も対策は取って来るのだろう。
「この程度の力では、勝てる気がしない」
 その言葉に、男は首を傾げる。
「これまでの観察で得たデータによれば、お前の能力値はほぼ全ての面に於いて撃退士を上回っているが」
「数字の上では、そうかもしれないがな」
 女は大きく息を吐き、首を振った。
「怖いんだよ」
 ぽつり、呟く。
「負ければ、何も残らない事が……」
 ヴァニタスになる前の記憶はない。
 ヴァニタスになってからも、積み上げた記憶は殆どない。
 自分が何者だったのかも、名前さえ知らない。
「それは、恐ろしい事なのか?」
 感情を奪われた男が訊ねる。
 彼にとって、記憶とはただのデータの積み重ね。
 仕事に支障が出ない限りは、失われたとしても何の痛みもない。
 記憶ばかりではなく、自分自身さえ。
「まあいい」
 男は無造作に首を振った。
「これが最後の仕上げだ……行くぞ」
 ゲートが完成すれば、恐らく自分達は用済みになるのだろう。
 その事に対しても、何の感慨も湧きはしなかったが――




リプレイ本文

「ふぅん、東條ちゃんっていうのかぁ。宜しくね☆」
 斡旋所の控え室で香織の姿を見るなり、ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)は早速ナンパ。
 相手はまだ中学生だが、それは彼にとって何の障害にもならない様だ。
「あ、後で一緒にご飯行かない☆」
 名物の喜多方ラーメンとか、さ。
「それなら美味しい店を知っています。皆さんで行きましょうね」
 下心がバレたのか、それとも素ボケなのか。
 香織の返答にジェラルドは苦笑い。
「皆で…うん、そうだね☆」
 席が隣ならまだワンチャン、その為にも仕事はさっさと片付けよう。


 転送装置から出た先は麓の集落だった。
 そこから登山道までは道なりに行けば良い。
「お爺さんもこの道を通った筈ですよね」
 若杉 英斗(ja4230)が左右に目を配りながら、香織と虎之助に指示を出す。
「その辺りに隠れていないか、気にしながら行動して貰えると助かります」
 自分達も注意はするが、目は多い方が良い。
「いや、この近くにいる可能性は低いな」
 牙撃鉄鳴(jb5667)は誰にともなく呟き、それでも念の為に索敵で気配を探りながら、先に立って山道を急いだ。
「爺さんの目的からすれば、恐らく祠の付近だ」
 祠のある山頂付近は、彼等が近付く間にも一定の間隔を置いて光から闇へと明滅を繰り返している。

 やがて一行が山頂付近の平坦な場所に出た時、辺りは闇に包まれていた。
 暗視用の装備を付けて周囲を見渡すと、奥にある藪の陰に小さな祠が見え――たと思ったのも束の間、それを押し潰す様にして、真っ黒い何かが上空から振り下ろされる。
 それは巨大な蛇の頭だった。
「随分と罰当たりなことをやるよなあ」
 カイン 大澤(ja8514)が呟く。
 本人は神や仏など余り気にする方ではない様だが、誰かが大切に思うものを否定はしないし、それを踏みにじる事も良しとはしなかった。
「へぇ、面白い敵だねぇ☆」
「しかしまあ、面倒極まるねぃ。片方を潰してしまえば一方の状況のみになるゆえ楽にはなるが」
 ジェラルドの言葉に、皇・B・上総(jb9372)は大袈裟に肩を竦めて見せる。
 随分と余裕がある様に見えるが、それはただのポーズか、それとも本当に余裕があるのだろうか。
「まあ何というか神話に出てきそうなサーバントっすね、昔の神話の怪物も実はサーバントだったんじゃないかと思うと何か妙な怒りが湧いてくるっすよ……!」
 遠距離からの狙撃を狙って最後尾に陣取った天羽 伊都(jb2199)がスナイパーライフルを構える。
 鎌首をもたげ、振り下ろし、或いは払いのける様に振り回す大蛇。
 だが音は一切しない。
(そうか、阻霊符を使わず敵の透過を阻害しない、という事は)
 こういう事かと英斗は思う。
 敵が移動するときの風切り音や、地面を叩く音も聞こえない。
(迷彩仕様相手に視覚で捉えるしかなさそうだな)
 後は感知スキルを駆使しつつ、敵の殺気を感じ取る事が出来れば良いのだが。
 しかも敵は大蛇ばかりではない。
 真っ黒い狐が闇に紛れて散開、素早い動きでこちらを狙って来る。
 とは言え彼等も歴戦の撃退士、狐を逃がさない様に、蛇を中心に半包囲する形で素早く周囲を取り囲んだ。
「でも、あまり間を詰めすぎない様に注意っすよ!」
 後ろから伊都が指示を出した。
「固まったところに範囲攻撃で一網打尽は勘弁っすからね」
 それをやるのは自分達の方だ。
「また芸もなく狐がセットね! まとめてやっつけてやる!」
 雪室 チルル(ja0220)が嬉々として大剣を振りかざす。
 闇の中でもそのクリスタルの剣身は雪の様に白く輝き――でも、ちょっと待って。
「おじいさんは見つかった?」
「いや、まだだ」
 鉄鳴が答える。
 注意して探してはいるのだが、季節柄か木々の緑は濃く、周囲には雑草が生い茂っている。
 これは空から見た方が良さそうだと、鉄鳴は上空に舞い上がった。
「あたい、あの辺りが怪しいと思うわ!」
 事前に地図をチェックしておいたチルルが指した方角へ飛ぶ。
 と、その時。
 誰かが老人を肩に担いで、藪の中から現れた。
「邪魔」
 それは紅香 忍(jb7811)の姿だった。
 そう言えば転送装置から出た後は、誰もその姿を見ていない。
 どうやら影から影へ、単独行動を取っていた様だが……それがたまたま、老人が隠れていた場所と重なっていたらしい。
「……暴れるなら…大人しく…させる」
 腹パンも辞さない構えだが、流石にそれは。
「あたいが注意を引くわ! 今のうちにおじいさんを!」
 敵の攻撃がそちらに向かない様に、チルルが挑発をかける。
 その隙に鉄鳴が老人を引き取って、香織と虎之助に後を託した。
「全く面倒をかける。家で大人しく好きなだけ祈っていろ」
 念の為に安全圏までは英斗が護衛に就いて、老人は無事に離脱。
 何やら盛んに文句を言っていた様だが、今は構っている暇はなかった。
「わかりました、これは代わりにお供えしておきますから…!」
 ついでに怒った神様も(本当はディアボロだけど)きちんと鎮めて来ますから!

 さて、これで心置きなく戦いに専念出来る。
「狐かぁ…白狐やら腹黒狐って呼ばれるから…なんとなく親近感は感じるけど…ちょっと躾が必要だねぇ☆」
 少し苦笑いを交えた表情で言ったジェラルドの全身から、赤黒い闘気が吹き出し、ゆらりと滲む。
 老人を救出している間に周囲は反転、眩い光に包まれていた。
 白い大蛇が鎌首をもたげ、同時に狐達が体色を白く変える。
「何回も同じ手は通じないわ! サングラス装着!」
 チルルは視界を確保すると、大蛇に迫った。
 炎を纏う大蛇と戦ったのは、ついこの間の事。今度は二体同時とは言え、経験があるだけ気は楽だ。しかも今度は前よりも小さいし。
 だが、大蛇は本能的に舐められていると感じたのか、それとも単に注目の効果だったのか。
 煩い敵に一撃を浴びせようと、鎌首をもたげ大きく口を開いた。
「何か吐いて来るっすよ!」
 離れた場所でライフルを構えていた伊都が注意を促す。
 だが、チルルの辞書に避けるとか退くとか、そんな文字は多分なかった。
「何が来たって押し返すだけよ!」
 それはまあ、確かに。彼女ほどの防御力があれば、押しの一手で問題はなさそうな気もする。
 チルルは氷盾『フロストディフェンダー』を構えて突進、だが大蛇の攻撃は不発に終わった。
「……愚かな蛇…狐……我が…糧となれ……我こそ……飢えたる……蛇……」
 蛇の視界が靄で覆われる。こっそりと蛇の死角に回った忍が目隠を使ったのだ。
 その隙に、懐に飛び込んだチルルが剣の切っ先を鱗の間に突き立てる。
 更には、樹上に身を潜めた鉄鳴がレールガンでその目を一撃。
「この程度で俺の目を誤魔化せると思うなよ」
 図体が大きいだけに、的も大きい。部位狙いもそれほど難しくはなかった。
 白い大蛇は身を捩らせ、するすると後退して行く。
 入れ替わる様に、今度は黒い大蛇がその身を起こそうとした――が。
「この手の妙な能力持ちと対峙するには相手に合わせるよりはこっちが乱すように動くのが正解っすよね!」
 その出鼻を挫く様に、伊都がライフルを撃つ。
「下手な鉄砲もってね……!」
 射線に狐が入るならついでに撃ち抜いて、とにかく「動いたら危ない」と思わせるのだ。
 その甲斐あってか、黒い大蛇は起こしかけた身を再び潜める。
 周囲は眩い光に包まれたまま、その中で退くに退けない様子の白蛇がのたうち回っていた。
「さて、明りはつけたまま☆」
 そこを狙って飛び込んだジェラルドが動きを絶つ。
 行動を封じられた蛇は格好の的だ。
「休ませると思うな」
 鉄鳴がレールガンを連射、伊都もその合間を埋める様にライフルを撃ち込んでいった。

「さて、仕事すっかな」
 カインは火炎放射器を構え、敵の接近を待ち構える。
「こいつが、本当に燃やせるなら数段有利なんだが、贅沢はいってられないか」
 闇の中でなら、その炎は敵を照らす辺りにもなるだろう。
「見えづらいだけなら、見えやすくすればいい」
 しかし今は眩い光が満ちている。仲間が白蛇を倒すまで、恐らくこの状態が続くだろう。
 なら、他に何か目印に出来そうなものは――
 カインは自分の手の甲を噛みちぎり、溢れ出た血を口に含んだ。
 それを吹きかけ、マーキング弾の代わりにしようというのだ。
「上手く行けばいいんだけどさ」
 だが遠距離からの攻撃を得意とする相手を自分の間合いに引き込むには、それなりの策が必要だろう。
「待っていても飛び込んでは来ないか」
 ならば作戦変更、吹き付けても届かないなら自分の血で染めてやれば良い。
 カインは自分に向けて撃ち出される炎弾を避けながら距離を詰め、ショットガンを撃ち放った。
 命中と同時に赤い華が散る。
「偏差射撃キツイなあ」
 だが、バラまき型のショットガンなら身体の何処かしらには当たる。
 目印さえ付ければ、後は他の誰かが上手く処理してくれるだろう。
 それに――
(光纏してもだいぶ呑まれなくなってきたか)
 殺戮衝動は、今のところ落ち着いている様だ。

 英斗は玄武牙と名付けたプロスボレーシールドを腕に取り付け、後衛の仲間と狐達との間に立った。
(ディバインナイトとはいえ、多数の敵に囲まれて集中攻撃を喰らえばひとたまりもないからな。集中攻撃を受けないように味方の位置と敵の位置に気をつけながら戦わないと)
 とは言え、敵はこちらが直接攻撃しか出来ないと見て集中的に狙って来る――しかも馬鹿にした様に、こちらの攻撃が届かないぎりぎりの間合いから。
 その攻撃を、英斗は耐えた。柳風で中和しつつ、不死鳥のごとく蘇りつつ、ひたすら耐えた。
 しかし、全てはこの切り札を使う瞬間の為。
「俺が直接攻撃しか出来ないと、いつから勘違いしていた?」
 聖剣発動!
「まとめて切り裂いてやる! くらえ、ディバインソード!!」
 英斗を中心に、無数の白銀に光り輝く聖剣が全方位に向けて放たれる。
「俺は、やりきった…!」
 まだ終わってないけどね。

「見づらいには見づらいねぃ…だが、それならそれでやりようはあるのさ」
 上総は自分が指揮官になったつもりで戦場を見ていた。
 前衛がいる状況で後衛の自分に仕掛ける方法、そしてタイミング。
 少なくとも前衛がいる方向から後衛に仕掛ける様な、無駄な事はしないだろう。
 狙うとしたら、前衛が戦闘で離れ始め、互いの間合いが開ききった瞬間――今だ。
「まあ、確かに恰好のタイミングではあるが…相手を間違えたねぃ」
 ブローズグホーヴィを手に、備える。
「君ら狐が私に攻撃するための距離は…とっくの昔に私の間合いなのだよ」
 その手から雷の矢が放たれ、先頭の狐に命中した。
 なるほど、確かに余裕がある――主に射程的な意味で。
「確かに統率は取れているねぃ。だが、それ故に指揮官の思考を読んでしまえば脆いものさね」
 しかし迫り来る敵は一頭や二頭ではない。
 先手必勝で迎撃に励むも、とうとう一頭の接近を許してしまった。
「魔術師に接近戦をさせないで欲しいものだねぃ…喧嘩は弱いのさ」
 そう言いつつも、上総はレイディアントブレイドに持ち替えて迎撃の構えを取る。
 腰を落とし、狐に向かって剣を突き出し――だが、その間合いに入る直前で、狐はぴたりと止まる。
 八本の尾が束ねられ、その先に灯った光が急激に輝きを増した。
 絶体絶命、だが上総の表情から余裕の笑みは消えない。
 と、その瞬間。
 尾の先から光が消え、攻撃がキャンセルされた。
 ふと見れば、狐の背後にマライカを構えた忍の姿が見える。
「ありがとねぃ、助かったのだよ」
 上総は再び魔道書に持ち替え、ライトニングを叩き込んだ。

 もう手助けが必要ないと見ると、上総は再び大蛇に向き直る。
 その直後、辺りから光が消え、深い闇が落ちて来た。
 白蛇の身体が急速に萎んで消え、替わって黒蛇が動き出す。
 上総は新たな敵に備えて立ち位置を変えた。他の生徒の位置と動き、予測される行動、そして大蛇との距離。
 全てを計算して最適な位置を決めると、上総は影縛の術を発動させた。
 まるで地面に縫い付けられた様に、蛇はそこから動けなくなる。

 英斗の聖剣を喰らった狐達は次々と眠りに落ちていった。
 だが眠らなかったものは手傷を負いながらも逃げて行き、代わりに無傷のものが止めを刺そうとする背中を狙う。
 しかし。
「無粋な邪魔はさせないよ?」
 更にその背後から近付いたジェラルドが、ワイヤーを狐の首に絡めた。
 助ける相手が女の子だったら良かったのに、とは心の中にしまっておこう。
 そろそろ雲行きが怪しくなってきたと見たのか、狐達はじりじりと後退を始める。
 だが、勝手な方向へ逃げ散ろうとするそれを、二人は大蛇の方へ追い立てて行った。

 上総が放ったライトニングの光で敵の姿が浮き上がる。
 ここからは全員で総攻撃だ。
「その位置に来るのを待っていた! 全部吹き飛ばしてやる!」
 待ち構えていたチルルは、氷砲『ブリザードキャノン』で蛇と狐を纏めて吹っ飛ばした。
「我が剛撃を受けてみよ!」
 続けて伊都が大剣で一撃、続けて各人が残った力の全てを叩き込む。
 次第に闇が薄れ始め、やがて夜明けを迎える様な淡い光が差し始めた。
 黒い大蛇は自身に闇を封じ込める様にして急速に縮んで行く。
「これで最後だ」
 逃げる狐の足下にリボルバーを撃ち込み、鉄鳴は苗に回って頭部に一撃。


 残るは、ずっと気配を感じていた二人のヴァニタス、だが。
「来ないならいいや」
 警戒は解かないが、カインは無視する事に決めた様だ。
「大方ゲートの構築が目的だろうが、今回の依頼でこいつらを討伐しろとは言われてないのでな」
 いずれ討たせて貰う、と鉄鳴。
 が、ジェラルドは……何と言うか、いつものジェラルドだった。
 片方が女性と聞いて、いそいそと近付いて行く。
 その後を忍がこっそりとついて行くが、別にナンパを見物しようという訳ではない。
 指揮官の姿を確認し、出来る限りの情報を入手する為だ。

「んー? 闘わないの? …なにか、お悩みのようだけど☆」
 軽い言葉に、返ってきたのは氷よりも冷たい視線。
 しかしジェラルドはメゲなかった。
「あはは☆ボクは女性の物憂げな視線は見逃さないのさ♪ もしよければ、デートしながらその悩みも吹き飛ばしてあげるよ☆」
 だが、今の彼には女の悩みを知る由もない。
 女の方でも、初対面の相手に何も話す気はなかった。
「じゃあ、また今度会った時に、ね☆ あ、ボクはもう、キミの事は忘れないよ☆」

 その頃、祠の前では。
「良かった、壊されてはいない様だね」
 英斗が老人から預かったお供え物を置く。
「暴れてすいませんでした……」
 その隣では、伊都がお祈りを。こう見えても信心深いのだ。
「これで蛇が8体目! 何が起こるんだろうね!」
 チルルが興味津々な様子で、蛇が消えた辺りを覗き込む。

 何が起きるか、それは――


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:15人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
無傷のドラゴンスレイヤー・
カイン=A=アルタイル(ja8514)

高等部1年16組 男 ルインズブレイド
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
黒焔の牙爪・
天羽 伊都(jb2199)

大学部1年128組 男 ルインズブレイド
総てを焼き尽くす、黒・
牙撃鉄鳴(jb5667)

卒業 男 インフィルトレイター
Lightning Eater・
紅香 忍(jb7811)

中等部3年7組 男 鬼道忍軍
天啓煌き・
皇・B・上総(jb9372)

高等部3年30組 女 ダアト