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マスター:STANZA
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:7人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2014/07/01


みんなの思い出



オープニング



●それは、よくわからない情景だった

 南の島と聞くと暑いイメージがあるが、ここ数日の種子島は都心部よりも涼しかった。
「人界は気温の差が激しいと聞きますが、高松ゲートとこの辺りではさほど気温差はありませんのね」
「本番、これから。油断は禁物だね」
 幾度かの転移の末、港に到着した悪魔マリアンヌは興味深そうに周囲を見ている。対するリロ・ロロイは周りの様子には興味なさそうだ。
「シマイのじーじが見あたらないの」
 マリアンヌの豊かな胸から声があがった。いや、胸の下にホールドされている幼女から、だ。
「この辺りには居ないようだね」
「レディーの出迎えに来てくれないとは、男としてイカンなの。遺憾なのですよ!」
「ふふふ。前日に連絡鳥を放った程度の連絡でしたから、今頃ビックリしてるかもしれませんわね」
「それはじーじの方が遺憾なの」
 おっとり微笑むマリアンヌの胸の下、頭に乗せられた重量級の胸を重そうに振り落とそうとしながら幼女は大変遺憾そうな表情になった。その身もしっかりとメイド服を着込んでる。
「確か今の潜伏先はこちらですわね。ヴィオ、もう何回か転移してくださいます?」
 マリアンヌの声に、幼女メイド、ヴィオレットは「仕方がないのです」と小さな肩を落とす。高松からずっと連続転移してきて少し疲れているのだが、目的地がまだだから仕方がない。
「仕方がないの。リロも行くですよ」
「いつでもいいよ」
 真白き書に視線を落としていたリロが頷く。次の瞬間、三人の姿が忽然と港から消えた。
 その様子を見るともなく見ていた港の漁師達は顔を見合わせる。唐突、かつ牧歌的な様子だったので反応をし損ねていたが間違いない。

 新たな天魔。

 その一報は即座に久遠ヶ原学園に届けられた。




●種子島に悪魔が来た、らしい

「種子島にメイド悪魔が三体!?」
 連絡を受け、四国対策室の面々は顔を見合わせた。
 が、普段から四国の騒動に関わっていない者達にとっては、報告を聞いても何の事やらサッパリわからない。

 メイド悪魔と言うのは、マリアンヌ、リロ・ロロイ、及び名の知れない幼女、らしい。
 それが、どうやら種子島に向かった、らしい。
 種子島で何か悪さをするつもり、らしい。

 よくわからないが、それは非常によろしくない事態、らしい。

 という事で、久遠ヶ原学園の生徒達が種子島に向かう事となった。
 表向きは「四国に出ている合宿の延長で、種子島にも足を伸ばした」という事の様だ。
 だが実際は、島での彼等の動きを監視するのがその役目。
 そして、もし何か事が起きた時には迅速に対処し、出来れば撃退する――

 と、言われて学園を出発した生徒達だった、が。


●悪魔なんて、影も形もないんだけど

 種子島は平和だった。
 先に出発した別のグループは、何かとんでもない事件に巻き込まれた様だが、こちらは何事もなく旅を終えていた。
 そして島には特に異常は見られない。
 相変わらず天魔による事件は度々起きている様だが、悲しい事にそれはもう、ごく当たり前の光景となってしまっていた。
 それ以外、変わったところはない。

 それでも、任務は任務。
 撃退士達は周囲の監視を続けながら島を南下、しかしやっぱり怪しい動きは何もない。

 そしてとうとう、最南端の種子島宇宙センターまで辿り着いてしまった。

 さて、これからどうしたものか。
 合宿と言われたものの、考えてみたら何処に宿を取るのかも聞いてない。
 と言うか、そもそも宿の手配をしてあるのかどうか、それさえ不明だった。

 彼等が宇宙センターの建物を見上げて途方に暮れていた、その時。
「あれ、君達……」
 センターから姿を現した、職員が数名。
 その中の一人が声をかけて来た。
「久遠ヶ原の生徒だよね?」
 年の頃は20代の半ばほど、短く整えた黒髪は後頭部の一部だけがピョコンと跳ねている。
 服の襟元から覗く首筋には大きな火傷の跡があった。
 彼の名は涼風爽(すずかぜ・そう)、先発メンバーとして種子島に向かい、そして今頃は鯖魚人と遊んでねちょんねちょんになっているであろう、涼風和幸の兄だ。
「弟から、夏には会いに来るって手紙が来たけど……もしかして君達も遊びに来たのかな?」
 センター周辺でも、このところ目立った事件は起きていない。
 今もこの辺りはとりあえず平和だし、誰も撃退士を呼んだ覚えはなかった。
 となれば、遊びに来たと考えるのが妥当だろう。
「丁度良かった、今から孤児院の慰問に行くところなんだ。君達も一緒にどう?」
 爽は名前通りの爽やかな笑みを浮かべた。

 確かに、この辺りに天魔の気配はない。
 噂のメイド悪魔達も何処へ消えたのか消息が掴めなかった。
 ならば表向きの理由通りに合宿――という名の「みんなでお泊まり楽しいな!」にしてしまっても良いのではないだろうか。 


●悪魔はここにいた

「え、なになに、お泊まり会!?」
 確かに、周辺には天魔の気配はなかった。
 少なくとも人間に危害を加えそうな、危険な天魔の気配は。
 だが、悪魔はここにいた。
「なにそれ楽しそう! リコも行くー!!」
 どこからどうやって話を聞きつけたのか、飛び込んで来たヴァニタスのリコ・ロゼが瞳をキラキラと輝かせている。
「見かけない顔だけど、地元の子かな?」
 爽はリコの正体を知らない。
 知っていても恐らく、子供達に危害を加えないならと快諾したことだろう。
「良いよ、一緒に行こう」
「やったー! おにーさん良い人っ(はぁと」
 ふー様には負けるけど、ちょっと良い男だし、なんて。
「リコ、魔法のぬいぐるみでみんなと遊ぶね! あ、雪を降らせることも出来るよ!」
 お菓子も作ってみたいし、ガールズトークもしたいし、それから、それから――!


●何して遊ぶ?

 今日、センターに慰問に行く予定だったのは爽を含めて三人の職員。
 当初はいつも通りに、室内での絵本の読み聞かせや簡単なゲームなどをして過ごす予定だったけれど。
 撃退士が一緒なら、外で遊んでも大丈夫だろう。
 島に天魔が現れる様になって以来、外で遊ぶ機会はめっきり減ってしまった。
「天気も良いし、海水浴や磯遊びも良いかな」
 バーベキューや花火、キャンプファイアーも良いかもしれない。
 撃退士達には孤児院に泊まって貰うのが良いだろう。
 少し狭いかもしれないが、子供達もきっと喜んでくれる。
 いや、せっかくだから、そのまま海辺でキャンプも良いだろうか。

 計画を立てたら、早速準備だ――



リプレイ本文

「種子島に遊びに行くと聞いて、なの!」
「皆安心して、僕達は良いカマキリだよ!」
 白カマふぃの香奈沢 風禰(jb2286)と、緑のきさカマ私市 琥珀(jb5268)、種子島(の一部)ではもうすっかりお馴染みとなった(気がする)二人が、子供達の前でカッコイイポーズを取る。
「久しぶりなの! 種子島大好き、カマふぃ、あでゅーなの!」
「久しぶりだね、爽さん! 元気してたかな?」
 二人のカマキリに握手を求められた爽は、笑顔でカマを握り返した。
「ありがとう、俺も子供達も元気だよ」
 それに今日は、新しい友達も――
「リコさんも久しぶり! なんか大変だったみたいだねぇ?」
「あれ、知ってる子?」
「うん、一緒に雪遊びした仲だよ」
 戦った事もあるけれど、それは伏せておこう。
 きさカマはリコにも握手を求め、カマふぃは…何故か嘆いている。
「なぜ、四国に現れたなの! 前回迎えに行けなかったなの! リコさん、カマふぃ忘れちゃいやんなの!」
「ごめんね、でも忘れたわけじゃないよ!」
 カマふぃのインパクトは絶大だし!
「リコね、いんぼーに巻き込まれたっぽいカンジ?」
 あそこは四国じゃなかった気もするけど、まあいいや。
「でも、おかげでトモダチいっぱい出来たんだよ♪」
 ほら、あそこ!

「り〜こ〜ちゃん! 元気だった?」
 指差した方から、カナリア=ココア(jb7592)が手を振りながら駆けて来る。
「カナりん、やふー!」
 リコも思いきり手を振り返し、再会を祝してハグ&喜びのダンス。
「カナりん水着かわいー」
「リコちゃんもー」
 デザインは違うけど、タンキニでお揃いだ。
「なんや、リコもおるん?」
 浅茅 いばら(jb8764)は軽く手を上げ、二人の元へゆっくりと歩いて行く。
 種子島で合宿と言うから、何だか面白い事になりそうだとは思っていたけれど。
「一緒に遊ばへ…」
「いーばらーん!」
 どかーん!
 言い終わる前に、リコの体当たりが炸裂した!
 あ、攻撃じゃないよ愛情表現だよ!
「また会えたねっ」
「ああ、せやな…(けほっ」
 それは良いけど、降りてくれないかな。
 思いっきり押し倒して馬乗りになってるんだけど。
「あ、ごめーん(てへっ」
 その様子を見て、Julia Felgenhauer(jb8170)は思う。
「新しく現れた悪魔の偵察って依頼だったと思うのだけど、いいのかしら?」
 どうも近頃、依頼に関する情報が正確さに欠けるのではないだろうか。
「この前に来た時も現れたのはリコで、遊んだだけだったし」
 だが、友の姿を見付けたリコが放っておく筈もない。
「ゆりりーん、また遊びに来てくれたんだぁー!」
 だっきゅる!
 いや、だから遊びに来た訳じゃ…ないとは、言えない気がする。
 だってもう、しっかり水着に着替えて準備万端だし。
 黒のビキニにショートパンツ、上に羽織った白いパーカーが眩しいね!

 と、リコが肩に掛けた小さなバッグから軽快な曲が鳴り響いた。
「あれ、電話…誰だろ?」
 登録されていない番号からだ。
 試しに出てみると、相手の声が二重に聞こえた。
『あ、もしもしリコさん?』
 携帯と、すぐ後ろから――振り向くと、そこには携帯を手にぺこりと頭を下げる音羽 千速(ja9066)の姿があった。
「…よし、本物。偽物じゃないから大丈夫」
 リコの姿を見た千速は、本物かどうか確かめる為に後輩から電話番号を聞いたらしい。
(偽物だったりしたら、大変だもん…!)
 でも本物なら心配はいらないだろう。
「そーいえば、種子島は今まで来た事あったけど未だ遊んだ事はなかったよなぁ」
 海水浴にバーベキューに、夜はキャンプ?
「リコも一緒に遊ぶやろ?」
 改めて問いかけたいばらの言葉に、リコは「もっちろーん!」と頷く。
 ふー様はいないけど、友達いっぱい。
 と言うかふー様は別格だから、一緒に遊ぶなんて考えられないし。
「うちは『マブダチ』やしな(にまり」
 異性の友達なのか、それとも同性の仲良しさんだと思われているのか…その辺りはどうもハッキリしないけれど。

 そしてその頃、若菜 白兎(ja2109)は、隅っこの方できゅぅーっとなっていた。
(わるい天魔の姿が見えないのは良かった、ですけど)
 リコは知らない仲ではないけれど、皆と楽しそうに話している所に自分から入って行くのは、かなりハードルが高い。
(知らないお兄さんや、孤児院の子たちといきなり遊ぶのー、と言われても…こ、心の準備が…)
 こういうシチュエーションは、すごく苦手だ。
 同じ苦手でも天魔退治の仕事なら、頑張れば何とかなるけれど――
 しかし置かれたハードルを吹っ飛ばしてタックルをかけて来る、それがリコたんクオリティ。
「うさたんみーっけ!」
 一人でぽつんと立っている白兎の姿を見付けたリコは、全力ではぎゅもふ!
「うさたんも一緒に遊ぼうね!」
「はわわっ」
 おたおたわたわたしている白兎の腕に、ぽふんと置かれたぬいぐるみ。
「とらねこさん…」
 本当はトラで、しかもディアボロだが、その丸っこい姿は可愛い猫にしか見えない。
「こないだ気に入ってくれてたよね♪」
 こくりと頷き、白兎はそれをきゅーっと抱き締める。
「じゃ、いこ?」
 差し出された手を素直にとって、白兎はリコと一緒に海岸へ走った。


「よし、じゃあ折角だし引率警戒しながら外で遊べるように尽力しようっと!」
 千速はまず、リコに確認。
「えーと、リコさん。浮き輪の代わりになるぬいぐるみって作れないかなぁ?」
 まだ泳げない子が捕まって泳げるようなのだと良いんだけど。
「んー、作れるけど今はムリ!」
 だってディアボロ作るのって色々準備が必要なんだよ?
 ならば仕方がない。
 千速は変化の術でイルカに変身すると、子供達を背中に乗せて泳ぎ始めた。
「海の上を走る事だって出来るよ!」
 元の姿に戻ったら、肩車をして走ってあげるね!

「カマふぃ焼く、なの」
 砂浜ではアロマオイルセットのオイルを全身に塗りたくったカマふぃが、バーベキューの網の上でこんがり焼かれていた。
 違う、その焼くじゃない。
「きさカマは焼ける、焦げ目が付くか付かない程度にこんがりと焼ける」
 いや、やっぱり網の上で焼く方だろうか。
 ヤキカマって美味しいの?
「皆も一緒に美味しくなる、なの!」
 こんがり焼けたカマふぃは、物珍しそうに近寄って来た子供達にもオイルを塗りつける。
 きさカマは逃げる子供達を追いかけたり、一緒に海で遊んだり――
「みんな、海は突然深くなってるから気を付けるんだよー!」
 もし危なくなっても大丈夫!
「きさカマは助ける、救助カマキリだから!」
 深みに嵌まった子を助け…いや違う、嵌まってるのは自分だ。
 爽と二人、オイルを塗られてこんもり埋められている!
「きさカマは砂風呂で疲れを癒すよ!」
 って言うか蒸し焼き?
「リコさんもこんがり焼く、なの!」
「えー、でもリコ焼きたくなーい」
 ふー様はきっと、色白美少女が好きだと思うんだ!
 勝手な妄想だけど!
 それを聞いて、いばらが荷物をごそごそ。
 リコは帽子も被っていないし、何か陽射しを遮るものが必要だろう。
「ああ、これならええかな」
 晴雨兼用傘ー!
「使ったほうがええ、しみになるで。ヴァニタスでもそういうのが気になるお年ごろやろ?」
 かく言う本人は帽子に長袖パーカ、紫外線対策はバッチリだ(多分違う

 向こうでは、カナリアがまだ海で泳ぐのは危ない小さな子供達を相手にしていた。
「海のお化けに触られてしまうぞ〜!」
 だから海の近くに行かない様にね!
 水に入らなくても楽しい事は沢山あるから!
「まずは貝殻アートを作りまーす、一緒に作る子は集まってね♪」
 集まった子供達と、まずは貝殻を拾う。
「綺麗な貝殻を集めたら、お姉ちゃんが可愛いモノを作るよ♪」
 集めた貝殻にくじりで穴をあけ、タコ糸を穴に通して…ネックレスの完成!
「どうかな♪」
「わあ、きれいー!」
 女の子達には大好評だ。
「すごいすごい、リコのも作ってー!」
「じゃあ、これは腕輪にしようね♪」
 白い貝殻は髪飾りにしようか。
 男の子には流木アートが良いかな。
 画用紙に絵を描く様に、流木や貝殻を貼り付けて。
「完成したら…今日の思い出に孤児院に飾って欲しい」

「さっ、遊びましょうか」
 ユリアはビーチボールを取り出して子供達を誘う。
 輪になってトスを繋ぎ、落とした子が負けだ。
「こら、危ないことしちゃ駄目よ?」
 至近距離でアタックとか、いくらビーチボールでも痛いから!

 白兎はひとりせっせと砂の城を作っていた。
 他の子が作る砂場のお山程度のものとはレベルの違う、本格的かつ壮大な力作だ。
 勿論、作りながらほんわり皆の様子を気にかける事も忘れない。
「大きな波とかジョーズとか、海には危険がいっぱいなの」
 綺麗な砂浜にはガラスの欠片なんて落ちていないけれど、貝殻で怪我する事はあるかもしれないし。

 けれど心配した様な事は何も起きず、やがて空から白くて冷たいふわふわの雪が降って来る。
 今日は陽射しも強いし気温も高いから、雪は地面に触れた途端に消えてしまう。
 しかしリコのぞうさんは頑張った。
 やがて狭い範囲ではあるが、砂浜に雪が積もり始める。
「雪合戦しよーぜー!」
 思い思いに遊んでいた子供達がそこに集まり――
「これ使い、変な季節にしもやけ作ってもあかんしな」
 いばらがこんな事もあろうかと持って来た軍手を皆に配る。
 元々はBBQ用に用意したものだけどね!
 子どもたちの相手もいつぶりだろうか。
(リコと仲よぉなったんも、子どもがきっかけやったなそういえば)
 子供達は砂に埋もれた爽やきさカマに容赦なく雪玉をぶつけ、問答無用で白兎を巻き込み――けれど力作を壊す様な事はしない。
「お城をバックに記念撮影するなの!」
 ほんのり雪化粧したお城を前に、カマふぃがシャッターを切った。


 遊んだ後はBBQだ。
「ちゃんと牛さんを成仏させてから食べようなの!」
「みんな、お肉になった牛さんに感謝するんだよー!」
 カスタネットやシンバル、それにきさカマの鼻歌を伴奏に、カマふぃの「魂浄化の宴@コンサート」開催!
 鎮魂の調べに乗せて焼かれるお肉は、あっという間に消えていく。
「自分の分も食べて良い」
 どちらかと言うと飲み専門らしいカナリアは、食欲旺盛な子供達に肉を譲ってやっていた。
 ユリアもまた、食べる事には余り熱心ではない様だ。
「私? 大丈夫よ。始める前にちょっと摘み食いしちゃったの。内緒よ?」
 少し離れたところで見ると笑顔ってまた違って見えるのだとか。
 いばらは流石に男の子、実は結構肉食だった。
「ま、ハーフやしなぁ」
 多分それは関係ないけど野菜も食べるよ、肉肉野菜肉野菜。
「こら、お肉ばっかりじゃなくて野菜も食べないとだめだぞ」
 子供達に注意しながら、千速はバームクーヘン作りに精を出していた。
 木の棒にアルミホイルを巻いた心棒にバターを塗って、ホットケーキミックスを溶いてバターと砂糖を加えた生地をかけて…
「甘くした方が美味しいし焦げ目がつき易いって」
 ゆっくり回しながら何度もそれを繰り返せば、綺麗な年輪の出来上がりだ。
 その一切れを差し出され、白兎はそれはもう幸せそうな笑顔になる。
「お肉より野菜…トウモロコシ、好き」
 でも甘いお菓子はもっと好き。
 タマネギは苦手だけど。

 やがて夜になり、砂浜にはキャンプファイヤーがものごっつファイアー!
 その勢いで、カマふぃは花火を持ったまま自分がロケット噴射!
 それを回収しようとしたきさカマは、巻き添えにされて一緒に吹っ飛ぶ!
「きさカマ飛ぶーッ!?」
 よいこは真似してはいけません。
「あと人に向けては絶対にしちゃ駄目、解った?」
 カナリアせんせーとの、お約束。
 後は炎を囲んでマイムマイムを踊ったり、いばらはマシュマロを焼いてみたり。
「楽しい♪」
「なんかこういう空間にいるとすごいのんびりできるわぁ」


 種子島の夜は更けて、子供達はそろそろおねむの時間。
「わーい、キャンプだキャンプだ」
 千速は早速、テントのひとつに転がり込む。
「この平和な一時がずっと続いていくと良いね」
 そこでは琥珀と爽がしみじみボーイズトーク――あれ、いばらは?

 彼は何故か女子テントに引きずり込まれていたが、違和感ないし別に良いよね(良いのか
「やっと一息つけるわね」
 子供達を寝かしつけ、ユリアはほっと一息。
 とは言ってもここは種子島、天魔と人が争う紛争地帯だ。
「言葉通りじゃないと分かっていても、やっぱり責任は果たさないと」
 眠ってしまう訳にはいかない。
 それに、夜はまだまだこれからだった。

 女子達は風禰が持って来たミニチュアドールハウスやジグソーパズルセットで遊びつつ、ガールズトークに花を咲かせる。
「あの後、無事に帰ってこれたのね。良かったわ」
「うん、ありがとね。あ、クッキー美味しかったよ!」
「少なかったからお腹の足し程度にしかならなかったと思うけど」
 口に合ったなら幸いと、ユリアが微笑む。
「ね、また作ってくれる?」
「ええ」
 今度は一緒に作ろうか。
「リコちゃん、リコちゃん! 好きな男性のタイプってどういうタイプ?」
「ふー様!」
 カナリアの問いに答えるリコは流石にブレない。
「そういえば私、リコの言うふー様って人を全く知らないのよね」
 ユリアが訊ねる。
「どんな人なのかしら?」
「えっとね、目つき悪くて口も悪くて、ヤンデレのブラコン? でもほんとは繊細で優しくて、照れ屋さんでカワイイの!」
 乙女フィルタ全開。
「あー、守ってあげたい感じ、みたいな?」
 カナリアが頷く。
「リコちゃんだったら良い奥様になると思うよ♪」
「ほんと? うれしー!」
 因みに見た目はこんな感じと、リコはバッグに付けた自作のマスコットを見せる。
「リコの作るぬいぐるみは相変わらず可愛いわね。羨ましいわ」
 デフォルメされすぎて、本物の姿は想像も付かないけれど。

(がーるずとーく…難易度高いの)
 皆の会話を聞きながら、白兎はふにゃーっとなっていた。
 と言うか、よいこは既に眠気まっくす。
(ぬいぐるみでぃあぼろさん…)
 トラ猫を抱っこして、すやぁ。

 だが、夜更かしお姉さん達もそろそろ限界だった。
 蚊取り豚をセットして、お休みなさい。
「なあリコ」
 隣で寝息を立て始めたリコに、いばらが囁いた。
「あんたはすごーく人間臭い冥魔やと思う。うちもある意味ご同類やからわかるんよ」
 解いたピンクの髪をそっと撫でる。
「…うちはあんたのこと信じてる。種子島のあれこれは何かの勘違いて思うし、撃退庁もあんたをほぼ無害としてるて聞いた」
 だから。
「…どうか失望させんでな?」


 そして翌朝。
 きさカマの踊りに合わせてカマふぃが餅花を盛大に振り、種子島の米の豊作を祈願。
 後は皆で記念撮影をして、最後にサイン入りのカマぽすをプレゼント!
「ちゃんと見えるところに貼ってなの!」
 カマふぃの布教(?)活動に隙はなかった――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

祈りの煌めき・
若菜 白兎(ja2109)

中等部1年8組 女 アストラルヴァンガード
リコのトモダチ・
音羽 千速(ja9066)

高等部1年18組 男 鬼道忍軍
種子島・伝説のカマ(白)・
香奈沢 風禰(jb2286)

卒業 女 陰陽師
種子島・伝説のカマ(緑)・
私市 琥珀(jb5268)

卒業 男 アストラルヴァンガード
もみもみぺろぺろ・
カナリア=ココア(jb7592)

大学部4年107組 女 鬼道忍軍
リコのトモダチ・
Julia Felgenhauer(jb8170)

大学部4年116組 女 アカシックレコーダー:タイプB
Half of Rose・
浅茅 いばら(jb8764)

高等部3年1組 男 阿修羅