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マスター:STANZA
シナリオ形態:シリーズ
難易度:難しい
形態:
参加人数:10人
サポート:6人
リプレイ完成日時:2014/06/15


みんなの思い出



オープニング




「大天使ともあろう者が、随分と貧弱なゲートを作ったものですね」
 黒ずくめの男が、室内を見渡して言った。
「あなたには、大天使としてのプライドというものはないのですか?」
 問われても、大天使リュール・オウレアルは答えない。
 ただ小さく鼻を鳴らしただけで、沈黙を保っていた。
 黒ずくめの男はその沈黙を肯定と受け取った様だ。
「そうでしょうね。下等な天使の、しかも生みの親にさえ見捨てられた様な子供を拾って育てる様な変わり者に、プライドなどある筈もない」
 黒一色の衣装に、黒い髪と闇の様な黒い瞳。
 翼も烏の様に黒かったが、それは片方――右側にしか生えていない。
 男の名はメイラス、リュールと同じ大天使だ。
 しかし彼は階級は同じと言えど、立場の上では上司に当たる。
「まあ良いでしょう」
 メイラスはこれ見よがしに溜息を吐き、言った。
「あなたの任務は、天界の裏切り者――つまりあなたの養い子ですが、それを処分し天界への忠誠を示す事です」
 それさえ完遂するなら、個人的な趣味嗜好はどうでも良い。
「これまでは何かと理由を付けて処分を避けて来た様ですが、もう後はありませんよ」
 メイラスの瞳に暗い笑みが宿る。
「あなたが出来ないと言うなら、私がやりますが――どうしますか?」
「……答えるまでもなかろう」
 リュールは吐き出す様に言った。
「あれは私の手で始末を付ける。何度も同じ事を言わせるな」
「言うだけで何の進展も見られないからこそ、こうして重ねて申し上げている……という事を、ご理解頂きたいものですね」
 小さく首を振り、メイラスは続けた。
「私は下等な天使は嫌いです。下等な天使に手を貸そうとする者も嫌いです。大嫌いです」
 例えばリュールの様な者。
 或いは堕天使を保護する人間達。
 嫌いではあるが、しかし。
「ゲームは好きなのですよ。あなたの様なコマを、こう……手の上で転がすのが、ね」

 さあ、ゲームを始めよう。

「もし、万が一……最終的に人間どもが勝利を収める様な事になった場合は――」
 メイラスは暫し考えを巡らせる。
「そうですね、あなたを逃がしてやっても良い」
 それを人類側が受け入れるなら、撃退士に保護を求めるのも良いだろう。
 ただし。
「あなたが一人でも人間を殺したなら、それは難しくなるでしょうね」
 同胞を手にかけた敵を、人類は許しはしないだろう。
 その場合は敵として、天界からも人類からも追われる身になる。
「私としては、どちらでも良いのですがね。上の連中はあなた自身の手で決着を付けさせる事で、あなたを精神的に追い詰めたい様ですが……」
 自分にそんな趣味はない。
 獲物が逃げるなら、追いかけて仕留める。
 それだけだ。

「それにしても、あのリュール・オウレアルが人間界への侵攻に手を貸すとは……」
 メイラスは意地の悪い笑みを浮かべた。
 若く見えるが、彼はリュールよりも年を重ねている。
 リュールの過去についても、多少の事は見聞きしていた。
「あの下等な天使が、よほど大切だと見える」
 鼻で笑い、メイラスはコアの向こうに姿を消した。

「指示は追って伝えますよ」
 一言、そう言い残して。
 

――――――


 その数日後。

 久遠ヶ原学園に、一通の手紙が送られて来た。
 差出人は大天使リュールとなっている。
 だが、その字は彼女自身の手になるものではなかった。
 恐らく裏にいる何者かがリュールの名を使って出したものだろう。

 そこに書かれていたのは――

「……三日後……」
 斡旋所の職員から示された手紙に目を通し、門木章治(jz0029)は小さく呟いた。
「先生にも、お知らせした方が良いだろうと思って」
「……うん、ありがとう」
 いよいよ、リュールが動く。
 今までは後方に控えていた彼女が前線に出て来る。
「……これが、最後になるだろうな」
 少なくとも、リュールとの戦いは。

 門木はもう一度、手紙の文面に目を落とした。
 そこには、とある町への侵攻計画が記されていた。
 指揮官はリュール。
「……手始めに、これを止めて見せろという事か」

 場所は福島県内にある「あけぼのニュータウン」という新興住宅地だ。
 戸数は300世帯ほど。
 新しく開発された住宅地らしく、区画は碁盤の目の様にきっちりと四角に区切られている。
 町全体もほぼ真四角で、東西南北方向に大通りが延び、その中心に公民館と小学校があった。
 大通り沿いにはスーパーや郵便局、銀行や病院などが並び、日常の買い物には事欠かない。
 町の四隅には小さな児童公園があった。

 手紙に書かれた計画では、リュール達は町の北側から攻め込むらしい。
 それを迎え撃つ撃退士側は、戦闘開始まで南側で待機せよと書かれている。
 指定の時刻は正午。

『これはゲームだ』
 門木は手紙の文面をゆっくりと読み上げた。
『指定した時刻、指定した場所から、我々は侵攻を開始する』
『お前達は当然、その阻止に動くだろう』
『だが、指定の時刻まで、双方とも動く事は許さぬ』
『事前の準備や根回しなら、存分に行うが良い。援軍を呼ぶ事も構わぬ』
『しかし住民への警告や避難指示などは、指定の時刻が来るまで一切出来ぬと思え』
『それがルールだ』

『双方が同時に行動を起こし、相手側により多くの被害を与えた方が勝ちとなる』
『お前達が勝てば、次回のゲームでは何らかのアドバンテージを得られるだろう』
『だが、負ければペナルティを負った状態で挑む事になる』

『ゲームは毎回、趣向を変えて行う』
『それを数回繰り返し、最終的にお前達が勝利を収めれば、堕天使エルナハシュ・カドゥケウスに自由を与えてやっても良い』
『また、大天使リュール・オウレアルに関しても寛大な処遇を行う事を約束する』

『ルールに従えば良し』
『従わぬとあらば、今後は如何なる交渉も不可能と思え』
『我々は、いつでも好きな時に裏切者を処分する事が出来る』

『それを忘れるな』

 つまりは、向こうが勝手に仕掛けたゲームに問答無用で付き合えという訳だ。
 身勝手な話だが、こちらがルールを守るなら、向こうもルールに従って行動するらしい。
 その「約束」を鵜呑みにする訳にはいかないが、少なくともこちらからルールを破ることは得策ではないだろう。
「……とりあえず、乗るしかないな」
 こちらが乗ろうと乗るまいと、彼等は侵攻の手を止めはしないだろう。
 ならば向こうの言い分に従って、少しでも有利に進める方が良い。

 今は敵の思惑など気にする必要はない。
 とにかく、その攻撃から町の住人を守れば良いのだ。
 守りながら敵を倒し、撤退に追い込む。
 それなら普段の戦闘と、そう変わる事はない。
 人々を守るのが、撃退士なのだから。

 その上で、先の事も見据えつつ。

「……あいつらには、また厳しい戦いを強いる事になるな」
 だが遠慮はしない。
 その代わり、自分も一緒に背負う。
 共に戦う、仲間なのだから。



リプレイ本文



 斡旋所の一角にある会議室。
 そこに、今回の依頼を受けた生徒達が顔を揃えていた。

 中央にある大きな机の上には、一枚の住宅地図が広げられている。
 そこには今回の現場となる町の全容が記されていた。
 こうして見ると、さほど広くは感じられないが――それでも。
「この全てを私達だけで守るのは、流石に無理でしょうね」
「北側の人たちは、すぐ敵に見つかっちゃいそうなのだよ!」
 カノン(jb2648)の言葉にフィノシュトラ(jb2752)が頷く。
 迅速に移動する為にも、また住民の安全を確保する為にも、撃退署の協力を仰ぐ事は不可欠だった。
 救援要請を出せば、彼等は必ず応じてくれる筈だ。
「ただ、ひとつ問題が…」
「撃退署がルールを無視して先走った場合、ですね」
 ユウ(jb5639)が頷く。
「俺もそこは気になっているが、とにかく説得するしかないだろう」
 ミハイル・エッカート(jb0544)が腕を組み、机の端に腰をかけた。
 とは言え、何をどこまで話すべきか、どう話せば納得して貰えるのか――
 今後の為にも撃退署との関係は良好に保っておきたい。
 嘘をついたり騙したりという様な、信頼を損なう行為は慎むべきだ。
 しかし、だからといって真っ正直に全てを話す必要もないだろう。
「カドキとリュールの関係は、伏せた方が良いと思う」
 七ツ狩 ヨル(jb2630)が言った。
 撃退署の中に、二人が親子である事を知る者はいない筈だ。
「私達がリュールをこちらに引き込む心算なのも、隠した方が良いね」
 青空・アルベール(ja0732)が頷く。
 もし訊ねられれば正直に答えるしかないが、彼等がその可能性に気付く事はまずないだろう。
「僕も門木先生とリュールさんの関係はまだ伝えない方が良いと思いますが…」
 レグルス・グラウシード(ja8064)が言った。
「ただ、門木先生が狙われているという事は伝えた方が良いと思います」
「そうだな。それを知れば、撃退署も慎重にならざるを得ないだろう」
 ミハイルが頷く。
「先生は学園の重要人物で、撃退士の戦力を支える貴重な人材だ」
 本人にその自覚があるかどうかは不明だが。
「何しろ、人類の切り札である聖槍を手入れできるのは先生だけなんだからな」
 メンテに失敗してくず鉄と化す危険性には、敢えて触れずにおく。
「それに、こちらがルールを破れば、今後は天界側が無軌道に動く事になる…」
 カノンは頭の中で組み立てた考えを確認する様に、声に出してみる。
「それよりも『ゲーム』である限り、対応の余地があるという点を強く主張しましょう。その上で、こちらの作戦も伝え、当然被害は出さないよう全力を尽くす約束も」
 最後の一言は、部屋の隅でじっと皆の話を聞いている門木に向けられたものの様に聞こえた。
「ほら、センセもこっちで一緒に考えよう?」
 どうしてそんな隅っこにいるのかと、鏑木愛梨沙(jb3903)が袖を引く。
「センセも仲間なんだから、ね?」
 言われて、ズルズル引きずられる様に輪の中に入って来た門木に、ヨルが尋ねた。
「…そういえばカドキ、リュールの上司の事何か知ってる?」
「…いや」
 元々リュールは積極的に侵略に荷担するタイプではなかった――と言うよりも、今回が初めての事になる。
 彼女にとっても、恐らく初めて組む相手なのだろう。
「で、俺たちが勝てばそいつは素直に堕天を許すのか?」
 ミハイルが訊ねるが、門木は今度も首を振った。
「…裏切り者には死を、それが天界の掟だ。例え許したとしても、それは新たな狩りを楽しむ為の口実だろうな」
 堕天すれば今の門木の様に、天使としての力を殆ど失う事になる。
「…それに、もしそんな形で堕天が許されたとしても…お袋は拒むだろう」
 もしかしたら自ら命を絶つかもしれない。
「…何しろ、頑固だからな…」
 一度自分で決めた事は、滅多な事では曲げない人だ。
 もし彼女が堕天を望んでいないなら、説得は容易ではないだろう。
「…でも、俺は…まだ、何の恩返しもしてないんだ。だから…」
「大丈夫なのだよ、先生」
 青空がにっこり笑った。
「絶対に守って、勝って、リュールにこっちに来て貰おう」
 悪趣味な『ゲーム』で関係ない人達が死ぬのは、もうごめんだ。
 それに――
「…『親子』は一緒にいるべきだからな」
 まずはこの戦いに勝つこと。
 リュールの件がなかったとしても、絶対に負ける訳にはいかない。

 そうと決まれば、後は具体的な作戦だ。
 本当は先に皆を助けられれば良いのだが、それはルール違反になってしまう。
 だからその分、全員を無事に助ける為には綿密な計画と準備が必要になるだろう。
 広げた地図に、事前の調査で判明した情報が次々に書き加えられていった。
「ここは少し見通しが悪いから、敵が身を隠すのに使うかもしれないね」
 青空が、その一角に「危険箇所」として赤い印を付ける。
 公園や学校の周囲に植えられた桜や道路脇の街路樹の下も、空からの視認性が悪いという意味では危険な部類に入るだろう。
「あと、小学校までの避難ルートはこうなっていたのだ」
 青空が町のハザードマップに書かれていた情報を地図に書き加える。
 避難指示があれば、住民達は恐らくこのルートに従って移動を開始するだろう。
「避難は徒歩でとは書いてあったけど、いざとなったら車を使う人も多そうなのだね」
 何度か避難訓練は行われている様だが、訓練と本番では精神状態も違う。
 場所によっては道路が渋滞する可能性もあるだろう。
「やはりヘリも手配しておく必要がありそうだな」
 ミハイルが言った。
 自分の翼として使う為にも、小回りの利くヘリは欲しいと思っていた所だ。
 小型機を3機、大人数の移送が必要になった時の為に大型機も欲しい。
「あ、ここのお宅は昼間、お年寄りが一人でお留守番しているみたいなのです」
 シグリッド=リンドベリ(jb5318)が一軒の家を指差した。
「それからここは、小さいお子さんが三人いて、お母さんだけでは避難が大変そうなのです」
 避難所に逃げて貰うなら、車輌やヘリを優先的に回して貰える様に手配しておいた方が良いだろう。
「在宅で介護をされているご家庭も多い様ですね」
 レイラ(ja0365)が言った。
 ボランティアや就活と称して介護施設を見学したり、ご近所の噂話ネットワークに紛れ込んで得た情報も付け加えてみる。
「介護施設の送迎バスが巡回しているのはこのルート、利用者がいるお宅は――」
 その他にもヘルパーを利用している家庭が何軒か。
「後は病院ですが」
 入院中の患者の中には、動かせない人も多いだろう。
「その方達を滞りなく町の南から外へ逃がせる様、レスキューの指示を的確に出す必要がありますね」
 しかし病院は町の中央、小学校や公民館と同じブロックだ。
 それに病院なら避難所としての機能も備えているだろう。
「この距離なら、町の南側で阻霊符使っても充分に届くのだよ!」
 ならば、開始と同時に阻霊符を使えば、敵は建物の中までは入れない。
 そう長い時間の避難が必要になるとも思えないし、動かせないなら無理に動かす必要はなさそうだ。
 問題なのは寧ろ町の北側に住む人々だろうと、フィノシュトラが地図の北側を指す。
「北側の人達は撃退署の人たちが助けに行くまで、家の中に隠れていてもらうのだよ!」
 一般の住宅は、阻霊符を使っても窓ガラスを割られるなどして侵入される危険がある。
「だから、その人達は急いで避難させる必要があるのだよ!」
 だが北側は最も敵との接触が早い。
 外を出歩いている者がいた場合、近くに隠れる場所がなければ格好の餌食だ。
「その為にも、一刻も早く北に向かう必要がありますね」
 カノンが言った。
 敵と接触し、その注意を自分達に引き付ける事さえ出来れば、当面の安全は確保されるだろう。
 その間に救助を急いで貰えば良い。




「その様な提案、信じられると思うか」
 協力要請の為に撃退署を訪れた生徒達に、応対に出た男はにべもなく言い放った。
「それに、敵の襲撃があると知りながら何の対策も取らないなど、許される事ではない。もしもお前達がその町の住民だったらどうする、それが作戦なら仕方がないと素直に納得するのか?」
 そう言われてしまえば、確かにその通りだ。
「それは、そうだろうな」
 ミハイルが素直に頷く。
 こうした交渉事は、いかにも「その筋の人」に見える彼の独壇場だ。
 いや、別に脅してどうこうしようというわけではないのだが…まずは初っ端で相手に舐められない事が重要なのだ。
「敵が強いるルールに従う必要はないと、そう考えるのは当然だろう」
 住民が怒りや不満を抱くであろう事も承知している。
 だが、それでも。
「こちらがそれに従ううちは敵の出方も見通せるし、対策も立てやすい。予想外の動きをされるよりはマシだと思うが」
「それは相手がそのルールとやらを律儀に守ると仮定しての話だろう」
 ミハイルの言葉に、男は苦々しげに吐き出した。
「守ると、思う…少なくとも、今度の相手は」
 そう答えたのはヨルだ。
「俺達、リュールと交戦した事あるんだけど…」
 その時の印象と今回送られて来た手紙の内容には、かなりのズレが感じられる。
「前に会ったリュールは、こういうゲームを提案するタイプじゃなかった。多分、リュールの後ろに、性格悪い別の天使がいるんだと…思う」
 その性悪天使を引き摺り出す為にも、もっと酷い結果にしない為にも。
「不本意だと思うけど、このゲームのルールには、従って欲しい」
 性悪な首謀者はともかく、実働がリュールならルール自体はちゃんと守ってくれる筈だから。
 だが、それでも男は納得しなかった。
「そのリュールとやらが仮にルールを守ったとしても、性悪天使が破らない保証が何処にある?」
 性格が悪いと言うなら、自らが定めたルールさえ破る事を厭わないだろう。
 しかし、ミハイルはきっぱりと言い放った。
「上等だ、来るなら来い」
 調査で得た情報と作戦計画がびっしりと書き込まれた地図を広げて見せる。
「敵が何を仕掛けてこようと守るべきものは守る。それが俺たち撃退士の仕事だ。一人も殺させるものか」
「なるほど、口だけではない様だな…とりあえずは」
 男はその地図をざっと眺めて言った。
「だが、いくら綿密な計画を立てても、実際に予測した通りに事が動く事は稀だ。不測の事態が起きたらどうする?」
「それは、大丈夫です」
 答えたのはシグリッドだ。
「みんな厳しい戦いを何度も潜り抜けて来た人達で、ぼくよりずっと強いのです」
 だから安心して任せて欲しい。
 勿論、自分も出来るだけの事はする。
「ぼくは弱いですが、ぼくが出来る事を精一杯がんばるのです…!」
 正直、戦うのは苦手だけれど。
 それでも護りたいと思ったのだ。
 シグリッドは懐に忍ばせたブロマイドにそっと手を当てる。
(せんせーが心から笑って過ごせるように…!)
 続いてレグルスが言った。
「ただの挑発とは思えません、何らかの思惑があるのかもしれない…」
 それを確かめる為にも、今は我慢して欲しい。
 最後に青空が口を開いた。
「私達も、撃退署の人達も、この街の人達を助けたい気持ちは同じだと思うのだよ。だから信じて、力を貸して欲しいのだ」
 仲間達がその言葉に頷き、じっと見返す。
 その眼力に負けたのか、男は軽く溜息を吐いた。
「気合いだけで勝てるなら、苦労はせんのだがな」
 だが彼等が多くの場数を踏んで来たと言うのは事実だろう。
「わかった、今回はお前達の指示に従おう」
 ただし、一人でも犠牲者が出れば今後は撃退署の方針に従って貰う。
「良いな?」
「必ず、守り抜きます」
 レイラが答える。
 それは彼等全員の一致した思いだった。

「では、当日の避難経路と連絡網、緊急時の対応を確認させて頂きますね」
 ユウが手元のメモを見ながら細かくチェック。
 それに正午と同時に天魔襲来の緊急放送を流す事、その際には「撃退士が到着するまで建物の内部に待機するように」という指示も加える事。
「もうひとつ、気になっている事があるのですが」
 こうした緊急時に、一般人が味方の天魔を見分ける為の措置はあるのだろうか。
「例えば衣服や目印など、ですが」
「いや、ないな」
「では、市民が私達の姿に恐怖して危険な行動を取る可能性もありますね」
 それは一応、頭に入れておく必要があるだろう。
「他には?」
 問われて、ミハイルが言った。
「今のうちに言っておく。一般人を守るのはもちろんだが、撃退士も死に急ぐことはするなよ」
 一般人だろうと撃退士だろうと、人類側には一人の犠牲者も出さない。
 もしそんな事になれば、先生が悲しむから――なんて事、声に出しては言わないけどな!
「あ、それとリュールにはあまり手出ししないで欲しい」
 ヨルが付け加えた。
「強いから半端に突っつくと被害が拡大しかねない。それよりは避難を優先させて欲しいんだ」
「出て来ても放っておけと?」
「俺達で、何とかする」
 自分達なら、戦わずに斥ける事も出来るだろう――今なら、まだ。
「わかった、信じておこう」




 カチ、カチ。
 当日の朝、見送りに出た門木が皆の前で火打ち石を打ち合わせる。
「…これが武運を祈る時の、おまじないだと聞いた」
 門木も彼なりに、自分に出来る事を頑張っている…らしい。
「…厳しい戦いに送り出すというのに、こんな事くらいしか出来なくて…その、申し訳ないが」
「厳しい戦い?」
 それを聞いて、ミハイルは鼻で笑う。
「俺にはそれくらいが丁度いい」
 明確な目標のある戦いなら、寧ろもっと厳しくても良いくらいだ。
「こんなみみっちい悪意、軽く撥ね除けてやるさ」
 何とも頼もしい限りだ。
「…ありがとう」
 門木は一人ずつ全員の顔をじっと見る。
「…でも、これは特別な戦いじゃない。助けを必要とする人々を守り、脅威を斥ける…お前達が今まで、撃退士として何度もやって来た事と同じだ」
 撃退士としての役割を全力で果たして欲しい。
「…俺の事や、お袋の事は…考えなくていいから、な」
 勿論、彼等の殆どが自分達の為に力を尽くしたいと考えてくれている事は、門木にもわかっていた。
 だが、それを優先させて欲しいとは言えないし、言わない。
 言うつもりもない。
 それは彼等の方でもわかっているのだろう。
 だから、門木の前ではこう言うのだ。
「私達は撃退士ですから」
 ――と。
 カノンの一言に、門木は黙って頷いた。
「せんせー、いってきますねー」
 シグリッドが相変わらずのぼさぼさ頭を撫でる。
 彼にとっては、これが「おまじない」なのかもしれない。
「先生…信じる力を繋いで未来を勝ち取りましょう」
 レイラが言い、門木の手を軽く握って行く。

 後は、無事を祈りながら信じて待つだけだ。




 その日の午前11時頃。
 あけぼのニュータウンの南に広がる空き地には、ちょっとしたベースキャンプが出来上がっていた。
 司令室として用意された大型のテントに、レーダーや通信機器を乗せた車輌、軍用のトラックやジープ、そしてヘリ。
 脇を通る道路を行き交う車からはドライバー達が訝しげな視線を投げて来るが、特に交通規制なども行われてはいない為、大抵はそのまま素通りして行く。
 中にはわざわざ事情を聞きに来る者もいたが、そこは撃退署の職員が「抜き打ちの訓練」だと誤魔化している様だ。

(関係ない人々を巻き込んでの遊戯? 仕組んだ者の悪趣味を感じます)
 レイラは車の中で正午の合図を待っていた。
(門木先生も、リュールさんも、誰も失わないために全力を尽くします)
 手元の地図で、まず最初に駆けつける手筈になっている家をもう一度確認する。
 ここにはベッドから動けない病人と、小さな子供達がいる筈だ。
 何としてでも守り抜く。
 天使の遊戯などの為に人の命が喪われる事など、あってはならないのだ。

「皆が重ねてきてくれたおかげでようやくリュールに手が届く…失敗は許されないね」
「なんだか嫌な感じなのだよ…でも、みんなを守って、そしてリュールさんに人を殺させたりもしないのだよ!」
 青空とフィノシュトラにとっては、ほぼ一年ぶりの関わりとなる。
 その間にも何人もの生徒達が関わり、紡いできた、リュールとの間を繋ぐ細い糸。
 今はここにいない皆の為にも、ここでそれを断ち切ってしまうわけにはいかなかった。

「ゲームのつもりですか? 不愉快です…!」
 レグルスは怒っていた。
 人の命を何だと思っているのだろう。
 だが相手の思惑が何だろうと、癒し手の仕事は変わらない。
 全力で護る、それだけだ。

(リュールさんがついに動きますか…)
 カノンはリュールが最初に姿を現したその時から、ほぼ欠かさずに関わり続けて来た。
 彼女を解放していい、とする天界の意図に抱いた暗い予感は、残念な事に間違ってはいなかった様だ。
 しかし、それも天界の社会通念から考えれば当然の事。
 そこに風穴を開けるのは、容易な事ではないだろうが――それはともかく。
(主導権を握られている以上、今は出来る事をしましょう)
 ここで「何とかできる」と示さないと、門木も何かと心配だろう。
(先生が確信を持って信じられる『撃退士』であるように)
 カノンはお守りの様に忍ばせていた小さな袋に手を触れる。
 ほんの少し、甘い香りが漂ってくる気がした。

「嫌なやり方ね…でもセンセの為に頑張らなきゃ」
 愛梨沙は面と向かっては言えなかった事を口に出してみた。
 言えばきっと、迷惑をかけるだの申し訳ないだのと、縮こまってしまうに違いないのだ。
 でも、本人が聞いていない所でなら堂々と言える。
「リュールがもし人を殺したら堕天も難しいし何よりセンセが悲しむ。絶対させないんだから!」

「せんせーのために頑張るのです…!」
 シグリッドは、今まで余り戦いの場に出た事がない。
 それでも、普通の人間と殆ど変わらない門木よりは頑丈だし、力を貸してくれる召喚獣達もいる。
(誰かが傷ついたらきっとせんせーは悲しむのです)
 だから、頑張る。
(せんせーのお母さんも町の人も、できれば自分たちも無事に戻るのです…!)

「嫌な『間』を取ってきますね」
 ユウはじっと北の方角を見つめる。
(色々思う所はありますが、『ゲーム』と称して人々の命と先生、リュールさんの未来を弄ぶ相手…好きではないですね)
 黒幕はまだ、表には出て来ないのだろう。
 向こうに主導権を握られない為にも、被害は極力抑えたいところだ。




 正午の時報をかき消す様に、町にサイレンが響き渡る。
 それと同時に阻霊符が使われ、町の北側では地中に身を潜めていたサーバント達が弾かれ、飛び出して来た。
 数秒前からエンジンをかけて待機していた車輌の列が一斉に走り出す。
 しかし大通りには一般の車も多く、また屋内待機という指示があったにも関わらず、車で避難所に向かおうとする人も多かった。
 お陰で思う様にスピードが出せず、時間ばかりが過ぎて行く。
「これじゃ走った方が早いのだよ!?」
 車の屋根に乗ったフィノシュトラが叫んだ――その時。
 上空からヘリのローターが回る爆音が近付いて来た。
 ドアから身を乗り出したミハイルが何か叫んでいるが、爆音にかき消されてよく聞こえない。
 だが、どうやら飛び移れと言っている様だ。
「わかったのだよ!」
 とは言っても、風圧による被害を防ぐ為に、ヘリは遥か頭上でホバリングしている。
「北へ急ぐ人だけ、先に運んで貰いましょう」
 ユウが言った。
 翼を使えば飛び移る事は難しくないし、飛べない者はその手を借りれば良い。
 結局、避難所の防衛に当たる青空とシグリッドを除いた全員が三機のヘリに分乗、そのまま一直線に北を目指す。
『車はそのまま簡易バリケードにして、騎士甲冑型の動きを阻害できたらいいと思うのだよ!?』
 途中、フィノシュトラから入った通信を運転手に伝え、青空は車から飛び出した。
「歩いた方が早いね」
「ぼくも行くのです!」
 その後にシグリッドが続く。
 二人は事前にチェックした危険箇所を確認しながら避難所へと急いだ。

 だが、その上空に早くも白い鳥の姿が現れる。
「外に出ている人は、どこでもいいから隠れるんだよ!」
 それをショットガンで撃ち落としながら、青空が叫ぶ。
 その声と銃声を聞いて、のんびりと構えていた人々も慌てて室内へ逃げ込んで行く。
「車に乗ってる人は窓を閉めて下さい!」
 シグリッドも、呼びかけながら空に向けて弓を引いた。
 撃退署の手も借りて、まずは鳥達の一掃を図る。
 人々を移動させるのは、これを全て片付けてからだ。

 町の北側には既にサーバント達が溢れていた。
 騎士型の進軍速度はそれほど早くないが、鳥型の拡散は早い。
 ヘリが上空に到達した時には、既に広範囲に広がっていた。
 移動の最中にも可能な限りの攻撃は加えていたが、何しろ数が多い。
「せめてこれ以上の拡散は食い止めないと…!」
 今、敵の注意を引けるスキルを持つのはカノンひとり。
 カノンはミハイルの援護射撃を受けながら、飛び降りざまにタウントを使った。
 当然敵の攻撃は集中するが、自分に注意が向いている間は一般人に矛先が向けられる事はないだろう。
「最低でも、近隣の方々を避難場所まで撃退署の方々が避難させる間は引き付けないと…」
 そのまま光の翼で滞空し、シールドを活性化させる。
 白い鳥達が大きな塊になって、カノン目掛けて突っ込んで来た。
 しかし、無数の舞い踊る炎がそれを遮り、包み込む。
「俺に出来るのは、攻撃によって皆を護る事だから」
 振り向けば、そこには透明な刃を持つ斧槍を手に、気配を消して佇むヨルの姿があった。
「先にこいつら、片付けよう」
 甲冑型の方は飛べないだけまだマシだ。
 それに地上には撃退署の応援もある。
「防御はあたしに任せて!」
 ヨルを庇う様に、愛梨沙が割って入った。
「誰も殺させないんだから」
 その間にも鳥達の襲撃は続く。
 タウントの効果で、狙われるのは殆どカノンひとり。
 そこに集まったところをヨルが炎の狂想曲で焼き払い、撃ち漏らしを愛梨沙が個別に叩く。
 カノン自身もシールドで防ぎつつ、積極的に接近戦を仕掛けていった。
 三人の連携攻撃でも手の届かない敵は、ヘリで鳥達の上を取ったミハイルが一羽ずつ確実に狙い撃ち。
 苦労して手に入れたスナイパーライフルの、これ以上の使い所があるだろうか。
 白い影に狙いを定めながら、ミハイルはまた高さを活かして全体の状況を把握、それを他の仲間達に伝えて行く。
 それを受けて、フィノシュトラとユウが別の場所に密集した鳥達の中に飛び込んで行った。
 まずはユウのクレセントサイスで無差別攻撃、ただでさえ低いCRがますます下がり、範囲内の鳥達は一撃で散る。
 範囲を外れた鳥にはフィノシュトラが矢継ぎ早に魔法攻撃を叩き込んだ。
「どんどん攻撃すれば、地上にいる人に目が向かなくなるのだよ!」
 威力よりも手数を重視、鬱陶しいと思わせるだけで良いのだ。

 その間に、地上では逃げ遅れた人々の救助活動が行われていた。
「カーテンを閉めて、窓から離れて下さい!」
 そう声をかけながら、レイラは住宅街を駆け抜ける。
 目指すのは寝たきりの病人がいる家だ。
 救急車を優先的に回して貰える様に頼んではおいたが、どうやら到着が遅れている様だ。
 レイラが辿り着いた時、甲冑型サーバントは既に庭先まで入り込んでいた。
 その脇からミカエルの翼を飛ばして自分に注意を向けさせると、得物を蛍丸に持ち替え、烈風突で突き飛ばして住宅から遠ざける。
 その頃ようやく追い付いて来た撃退署の人々にその場を任せ、レイラは次の現場へと急いだ。
 そこには既に救急車が到着していたが、サーバントが近くにいる為に身動きが取れずにいる様だ。
「私が敵を引き付けますので、その間に救出をお願いします」
 守勢に回るつもりだったが、戦えるのが自分一人では仕方がない。
 まずは救助の時間を稼ぐこと。
 倒すのは援軍が来てからで良い。

 町の四隅にある小さな公園、その北東の一角には、逃げ遅れた親子連れがいた。
「僕は癒し手…必ず皆さんの命、護ってみせます!」
 遊具の陰に身を潜めていた彼等の前に立ち、レグルスはコメットを放つ。
 上空からその姿を見付けたフィノシュトラがユウと共に急行、加勢に入った。
『ここには鎧型が三体いるのだよ!』
 それに、要救助者が二人。
 連絡を受けたミハイルは小型ヘリを一機、救助に差し向ける。
『西側の公園にも逃げ遅れた人がいる』
 今度は撃退署の職員からだ。
「わかった、そちらにもヘリを向かわせる。敵の数は? 撃退士は足りているか?」
『敵は二体、現状の戦力で何とかなりそうだ』
 ならば増援は必要ないか。
 見れば、既に北の端から100m付近の所に車輌のバリケードが出来始めている。
 あのラインで甲冑型の足止めが出来ているなら、片付けるのは後回しで良い。
 まずは大量に湧いて来る鳥達を片付けるのが先だ。

『こちらに流れて来た鳥は、ひとまず全部片付いたよ』
 青空からの連絡が入る。
 ならば、後はここから逃がさない様にしながら潰して行くだけだ。

 カノンは相変わらず敵の注目を一身に集めていた。
 そろそろシールドも尽きる頃だが、地上の避難誘導が終わるまでは地上に降りるわけにはいかない。
 更に高い場所から見下ろすミハイルの指示に従って敵の多い場所に移動しては、その注目を自分に集める。
 集まった所に、得物を血色の斧槍に持ち替えたヨルが突っ込んで行った。
 漆黒の闇を纏い、踊る様に宙を駆ける。
 闇に呑まれた白い姿が、ひとつ、またひとつと一閃の煌めきの中に墜ちて行った。
 とにかく、一体でも多く撃ち落とす事に集中する。
 今はそれ以外の事には気が回らなかった。
 愛梨沙はそんな二人をサポートしつつ、隙を見ては自らもコメットを発動、或いは交響珠での魔法攻撃を叩き込む。

 しかし、それでも彼等の手をすり抜けるものはいた。
 数にすれば多くはないが、一羽でも逃がせば一般人に死者が出かねない。
 それは人の集まる避難所の方へ飛んで行き――

『すまん、何羽か取り逃がした』
 ミハイルからの連絡を受け、青空とシグリッドは空を見上げた。
 青い背景に、幾つかの白い点が見える。
「近寄らせないのです、ここは必ず守り抜くのですよ…!」
 まずは射程の長い弓を持つシグリッドが一撃。
 続いて青空がイカロスバレットを乗せたショットガンで叩き落とす。
 だがその後も二羽三羽と、車から降りて建物に入ろうとする人々を狙って、急降下攻撃を仕掛けて来た。
 シグリッドは念の為にストレイシオンを呼び、防御させた上で弓を引く。
 まずは一羽、残る一羽を青空が撃ち落とした。
 これで目に見える敵は片付けた筈だ。
 まだ安心は出来ないが、避難して来た人々を不安にさせてはいけない。
「もう大丈夫だよ、怖い敵は全部やっつけたからね」
 玄関先で震えている子供に、青空はにっこりと笑いかけた。
「ここにいれば大丈夫。きっと助かるから、安心してね」
 さあ、中に入って。
 もし別の敵が来ても、建物の中には絶対に入れないから。
 今のところ甲冑型がバリケードを突破したという連絡はない。
 周囲には魔糸を張り巡らせてあるし、もし何かが近付いたとしても、すぐにわかる。
 後は鳥型さえ警戒しておけば大丈夫だろう。
「甲冑型がここまで来ないという事は、他の皆さんが頑張ってくれてるのですね」
 シグリッドが北の方を見る。
 鳥の姿は、もうここからでは見えなかった。

 最後に残った鳥達の群れを、凍てつく大気が包み込む。
「これで最後、かな」
 ヨルが周囲を確認する。
 白い姿がどこにもないのを確認すると、休む間もなく地上の甲冑型にアサルトライフルの狙いを定めた。
 その同じ敵を狙って、ラストラスに持ち替えたミハイルがダークショットを打ち込む。
 ほぼ真上の角度から二発の直撃を受けたカラッポの鎧は、バラバラに砕けて散った。
「もう一体、集中攻撃で倒すのだよ!」
 フィノシュトラの合図で、地上に降りたユウとカノン、愛梨沙がありったけの攻撃を叩き込んだ。
 向こうではレイラとレグルスが、一体の甲冑に最後の一撃を加えている。
「これで全部なのだよ?」
 フィノシュトラが残骸を数えてみる。
 それは最初に見た数と一致した。

 自分達が勝ったという事で良いのだろうか。

 と、その時。

「今回は、お前達の勝ちだ」
 目の前にふわりと舞い降りた、白く輝く姿。
 リュールだ。
「次のゲームは追って知らせる」
 それだけ告げると、大天使は再び宙に舞う。
 他には何も言わず、何も言えず――




「…そうか…ありがとう。とにかく、無事で良かった」
 学園に戻った生徒達を、門木は精一杯頑張った笑顔で出迎えた。
 どうやら怪我も戦闘後の治療で完治する程度のものだった様で、疲れた様子ではあるが元気そうだ。
 皆、門木の姿を見て安心した様に笑顔を返す――ただひとり、レグルスを除いては。
「…門木先生、先生にとって、リュールさんは」
 真剣な目で問いかける。
「他の無関係な一般の人たちを、こんなふうに危険にさらしてでも取り返したいものですか?」
 彼にとって、母親とは観念の中にしか存在しないものだった。
 生きてはいても、そこにいない人。
 自分の名さえ呼んでくれなかった人。
 だから、知りたい。
 そうまでして取り返したい存在なのか、と。
「…そうだ」
 門木は頷いた。
「…そう、願うくらい…構わないだろう?」
 願ったからといって、その全てを実行に移す訳ではない。
 寧ろ実際にそんな事は出来ないと知っているからこそ、願わずにはいられないのだ。
 願うだけなら、何でも許されるから。

 まあ、それはそれとして。
「…まずは、飯でもどうだ」
 ちょっと高級な料亭の予約、取っておいたんだけど。

 その提案を、生徒達が断る筈もなかった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:9人

202号室のお嬢様・
レイラ(ja0365)

大学部5年135組 女 阿修羅
dear HERO・
青空・アルベール(ja0732)

大学部4年3組 男 インフィルトレイター
『山』守りに徹せし・
レグルス・グラウシード(ja8064)

大学部2年131組 男 アストラルヴァンガード
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
夜明けのその先へ・
七ツ狩 ヨル(jb2630)

大学部1年4組 男 ナイトウォーカー
天蛇の片翼・
カノン・エルナシア(jb2648)

大学部6年5組 女 ディバインナイト
未来祷りし青天の妖精・
フィノシュトラ(jb2752)

大学部6年173組 女 ダアト
208号室の渡り鳥・
鏑木愛梨沙(jb3903)

大学部7年162組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
シグリッド=リンドベリ (jb5318)

高等部3年1組 男 バハムートテイマー
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅