.


マスター:押下 子葉
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/01/09


みんなの思い出



オープニング

 広大な土地を、何か巨大な物体が動いていた。
 巨大な鉄の塊のようにも見えるそれ。
 側面に付いた履帯が回り、格子状の跡を残しながら大地を踏みしめる。かと思うと突如として停止し、物体の上部に載った砲塔を回転させ、虚空へ向けて轟音と共に大砲を撃ち放ち。
 鈍く光る外観は重厚さを見る者に与え、重々しい動きが逆に威圧感を振りまき、周囲の空気を震わせていく。
 その物体は、人類が第一次世界大戦の頃に開発した鉄の獅子……戦車に酷似していた。

 その動き回る鉄のようなものの塊を、遠巻きに見守る人影が二つ。
「どうだね、零式くん。私の作った兵器は」
「どう、と問われましても」
 どこか自慢げな声色の中年男性に、高校生くらいの少女が困り顔を返す。
 彼女の名は零式。長く艶やかな黒髪、セーラー服の上からでもわかる胸の膨らみ、切れ長の瞳など、世の一般的な基準に照らし合わせれば美少女と呼べるであろう少女だが、彼女はその天使に仕えるシュトラッサーでもあった。
 返答に窮する少女へ、天使はさらに続ける。
「この新兵器で戦列を組めば、人間はおろか冥魔どもすらも容易に蹂躙することが出来るだろう」
 眉間に皺を作りつつ『そうですか』としか返せない零式は、天使の言には懐疑的だった。冥魔との戦いは、このような兵器で雌雄を決せるものではないのではないか、と。
「それで、私を呼んだのは?」
 しかし、上司に対してあまり疑義を挟むのも問題と思い、零式は話を先に進める。最も、ここで兵器自慢するぐらいだから、呼んだ理由も察しが付こうというものではあった。
 一方、新兵器完成に興奮することしきりな天使は、そんな零式の思いに気付くことなく。
「この新兵器を含む小規模な部隊を人間界に送り込む。試験運用を兼ねて原住民を少し殺すから、君はそれを観察し、状況を報告してくれたまえ」
 やはり。冷静な少女は小さくため息をつくと、天使に向かって頭を下げる。
 天使の命令は予想していたとはいえ、意味も無く人間を殺すというのはあまり心地良いものではない。
 もちろん、それを断れる立場にあるわけではないのだが。
「謹んで承りました……しかし」
「しかし、何だね?」
 天使へ答えつつも、一つの懸念を持つに至った零式に対して、訝しげな視線が向けられる。
「この規模の攻撃ならば、必ず撃退士が出てくるでしょう。万が一にも鹵獲でもされれば、厄介なことになるのではないでしょうか?」
 天界の技術が漏洩するのは、人間を大きく利することになるだろう。人間がそれを模倣出来るとも思えないが、情報を与えることはそれは避けなければならないはずだ。
 だが、天使はその疑問は予想済みだとばかりに答える。
「それも織り込んである。自壊機能は付いているから、もしものときは君が作動させたまえ」
「……自壊機能、ですか」
 用意周到なことではあるが、そんなものを付けた兵器を使うぐらいなら……。
 天使に対して頭を下げつつ、零式はそんな思いを抱いたのであった。

「千葉県のとある町に、敵が出現しました」
 集まった撃退士たちへ向けて、オペレーターのアカネ・ポーヴルが開口一番に言った言葉はそれだった。
 久遠ヶ原学園の空き教室に集められた撃退士たち。その理由はもちろん……。
「私たちが言うところの戦車のような敵兵器が二輌。それから随伴する骸骨兵が何体か確認されています」
 時折、手元の資料に目を落としつつ、アカネは撃退士たちへと状況を説明していく。
 聞く側の撃退士たちは、真剣な表情をする者が多かった。現に今、この瞬間にも一般人が危険に曝されているのだ。
「敵戦車についての詳細な情報は不明です。十分に注意して依頼を遂行して下さい」
 とんとん、と書類を整えなおすと、アカネは一同へ向けて真剣な眼差しを向けたのであった。


リプレイ本文

 ゆっくりと動く鉄の獅子が、無慈悲に力無き者を蹂躙していた。
 蹂躙の対象に選ばれたのは、逃げ惑う市民。砲塔が逃げる背を捉え、同軸機関銃が忌まわしい音を響かせる。
 戦争のための兵器。しかしそこにある光景は、戦争ではなくただの虐殺だった。

 その光景を悔しそうに見つめる目があった。囮作戦のために伏せている撃退士たちだ。
 彼らは、自分たちの設定した戦場に敵を誘引するべく、待ち構えていたのだが……。
 今はまだ、敵は射程外。
「好き勝手にされるなど……」
 水無月 神奈(ja0914)は歯噛みし、手にした蛍丸を握り締める。
 その傍らで同じように状況を見つめるのは、今回が初依頼という姫咲 翼(jb2064)。
「まだなのか? まだ射程には入らないのか?」
 わかっている。こちらの射程がまだ届かないことぐらい。だが、そう言わずにはいられない。
 一方、囮班の残り二人は……我慢できず、すでに動き出していた。
「重戦車相手も大変ですけど……市民の安全も確保しませんと!」
「そうね。これ以上、見ていることは出来ないよ」
 鑑夜 翠月(jb0681)とフローラ・シュトリエ(jb1440)は住宅の隙間を巧みに移動すると、敵の隊列の側面へと至る。
 敵は二輌の戦車を前後に並べ、その脇を歩兵で固めていた。
 フローラは可愛らしい杖を、翠月は自身より大きな弓を、それぞれ構える。そして……。
 少女ら……いや、少年と少女は、見えない矢を撃ち放ち、氷の欠片を飛散させた。
 数秒も置かず、それらの攻撃が隊列の最も左前方を行く歩兵に直撃。歩兵がその場にくず折れる。倒したか。
「さて、すぐに逃げるわよ!」
 フローラの言葉に、翠月が頷き。彼らは敵にあえて身を曝しながら、他の二人の元へと戻り始める。
 突然の攻撃に動揺し、脚を止めて周囲を警戒・撃退士を見つけることになる戦車部隊の目には、もはや逃げる市民は映っていなかった。

 開始された囮行動。途中で神奈や翼が合流したが、それは決して楽なものではなかった。
 戦車の上面に設えられた砲塔が、少女のほうを向く。だが、少女……神奈のほうはそれを良く見ていた。
「当たるものか!」
 砲身の向きから弾道を予測し、その直線上から退避。直後、神奈の背を魔法の砲弾が通過していく。
 着弾した砲弾が爆発・アスファルトを飛散させるが……神奈の回避はそれをも考慮したものだ。瓦礫の散り具合を考え、自身に当たる破片を最小に抑える。
 あの敵には当たらぬ……そう判断した先頭の重戦車は、狙いを変える。翼……そして、彼の召喚していた蒼龍へと。
 再び狙いが定められる。敵の再装填は早い。
「きやがれぇぇぇ!」
 翼もストレイシオンへと指示を出して、防御の態勢を取った。
 刹那、狙いを絞った砲身から魔法の砲弾が再び発射される。蒼い光の塊が飛翔し、ストレイシオンを捉えたと思われた瞬間。
 魔法弾が弾かれ、逸らされた。それは目標を見失い、近くの駐車場に落ちて爆発する。
 ストレイシオンの防御結界だ。
 その隙に、先頭の戦車を見据えた翠月の手には、先ほどの弓に代わって分厚い魔法書。
 戦車だけでなく、その横を歩く歩兵にも当たるよう調整を施した上で……翠月はアウルの力を解き放った。
「少しでも、傷を負わせられれば……っ」
 魔法書から放物線を描くように飛翔するのは、一筋の炎。それは敵の頭上へと至るや、まるで花火のような爆発を起こす。
 巻き込まれた右の先頭を行く歩兵は、身体の一部を吹き飛ばされて怯んだ。
 しかし……戦車のほうは健在であった。特に損傷も見受けられない。
「相当、頑丈だな……人が使う兵器を模しているように見えるが、この様子だと仕様は同じか?」
 攻撃の様子を見ていた神奈が分析する。一般に戦車というものは、かなり高い防御力を誇る。恐らく今回の敵戦車も、その例に漏れないのだろう。
 翠月へ向けて、反撃とばかりに機関砲が放たれるも、
「絶対ェに……通さねぇぞ!!」
 翼の指示を受けたストレイシオンがカバーに入って、これを防ぐ。
「まぁ、だからこそ、こうして私たちが囮をしているわけだけれど、ねっ!」
 手に持ったライトブレットAG8で牽制の射撃を放ちつつ、フローラは神奈の言葉に応じた。
 彼女たちは囮。伏兵が潜む場所まで、敵を誘導するのが仕事。
 そうとも知らずに、天界の戦車部隊は撃退士たちを追ったのだった。

 想定したルートこそ違うが、敵の戦車部隊は確実に陽動に引っかかっている。
 その状況把握を可能としたのは、伏兵に位置する佐藤 七佳(ja0030)が準備を申請した光信機であった。
 囮班・フローラからの状況報告を元に、伏兵班は、事前に翠月と彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)の選定した複数の奇襲箇所のうちの一つへと移動する。
 そこには、五階建てのマンションがあった。

「生物系でない相手だと良心が咎めません。こういうのを身勝手って言うんでしょうね」
 ゆっくりと進んでくる戦車部隊の姿を遠くに見ながら、佐藤 七佳(ja0030)は自嘲するように呟いた。
 天魔との戦いでも、普段から罪悪感を感じていた彼女である。しかし、相手が命の無い兵器であったなら……。
 そんな少女の頭を、デニス・トールマン(jb2314)は力強くわしわしと撫でた。
「優しいんだな、お前さんは」
 サングラスの奥の瞳が笑う。それは父が娘に向けるような優しげなもので。家庭にあっては良き父であった男にしかなしえない瞳だった。
 そんな二人の横にいる夏雄(ja0559)も、七佳へ向けて言葉を発する。
「身勝手でも何でも良いよ。自分が死ぬのも、誰かに死なれるのも嬉しくないからね」
 フードの陰に隠れ、少女の表情は見えない。
「さて……お喋りの時間は終わりのようですよ。各自、配置を」
 彩はマンションのある通りへ差し掛かろうとしていた敵戦車を見据え、仲間たちに声をかけた。

 後方の戦車がマンションの下へと至ったとき、伏兵班は行動を開始した。
 マンションの二階部分からはデニスが、五階からは七佳が。それぞれ降下や壁走りを開始する。夏雄と彩はそれぞれ、地上に降りて敵の側面や背後を伺う位置に就いていた。
「Yeah,Rock 'n' roll!」
 デニスが鬨の声を上げた。
 敵は完全に正面を逃げる囮の撃退士に気を取られており……頭上からのそれは、完全な奇襲となる。
 『Heaven or Hell』の文字を刻む断裂と圧壊にそれぞれ特化された斧を携える巨漢は、大した障害も無く易々と後方の戦車の上面へと取り付いた。
 そのまま、圧壊用の肉厚な刃を前に向けて振るう。対象は……戦車の砲塔・魔法砲の砲身だ。
 アズラエルアクスが唸り、砲身へと叩き付けられる。がぁん、と金属が叩き付け合う甲高い音が響いた。
「ぐあっ!? ……ッ、さっさとしねぇと、鼓膜がヤベェな……!」
 だが、二撃目は必要なかった。打ち付けられたデニスの一撃が、戦車の砲身を大いに捻じ曲げ、その使用を不可能とならしめたのである。
 他方、七佳も光の翼のようなアウルの噴射をさせ、姿勢を整えながら加速。引いた右手に回転する多重魔法陣を現す。
「あたしのスピードについて来れる相手はそうそう居ませんよッ!」
 その意図は、重力も加味した一撃による一点突破。さらに戦車は上面装甲が弱いという予想もあった。
 果たして、戦車はおろか随伴歩兵も七佳の突撃に対応することが出来ない。デニスが取り付いたのを確認していた七佳は、後方の戦車を彼に任せて、先頭の戦車を狙う。
「てぇやぁぁぁぁ!!」
 気合いと共に。『Celestial Penetrator』……天より貫くものと名付けられた近接戦用魔術構成を起動。手が触れる瞬間にアウルの杭を重戦車上面へと叩き込んだ。
 刹那の衝撃。七佳は息を呑み、そのすさまじい衝撃に耐える。
 ハッチもしくは砲塔狙いであった一撃は外れてしまった。しかし、戦車上面を確かな一発が貫き……強固であったはずの装甲に、大穴を穿っていた。

 戦車への奇襲を警戒・それを排除するのは随伴歩兵の役目だが、それは果たされていなかった。
 伏兵の残り二人と、反撃に転じた囮班の四人がそれをさせなかったからだ。
 まず、彩と夏雄の二人が、後方の戦車の右側面に布陣する骸骨兵を狙う。
 降下してきた彩に気付いた骸骨兵が、彼女へとライフルを向けるより早く、夏雄のアサルトライフルAL54は敵を捉えていた。
「反応が遅い、ね」
 少女の指が引き金を引き。乾いた音を立てて弾丸が飛び出し、骸骨兵の左側面へとその刃を突き立てる。
 銃撃に絡め取られる仲間の骸骨兵を他所に、戦車の反対側より迂回してきた別の歩兵が夏雄へと迫り、狙いをつけるも……。
「愚かですね。敵は一人だけとは限らないというに」
 これに対応するのは彩である。その手に、脚に、打撃補助具とした魔具を身につけ。
 いつの間にか戦車の背後に回っており、これまた敵歩兵を側面より殴る格好だ。
 素早く接近して、対応のとれぬ骸骨兵へすらりと長い脚を見舞う。手応え、あり。
 そのまま彩はその場を離れた。一箇所に留まることは敵の攻撃を引き寄せることになる。姿勢も低めつつ動く様は、獰猛な肉食獣が駆けているようにも見えた。
 瀕死の敵へ迫るのは……囮班に所属していたはずの神奈。彼女は、家屋等の障害物を利用して敵の目から隠れ、密かに敵の後方に移動していたのだ。
 蛍丸を構えて、
「水無月の技、避けうるか?」
 刀身にアウルの力を蓄え、黒い光が放たれる。神奈はそれをそのまま、渾身の力で振り抜いた。
 向かっていく黒光の衝撃波は敵兵のうち一体を貫き、砕けさせる。
 しかし、神奈はその結果を確認することなく走り出していた。狙いは、封砲の射線から逸れていたもう一体の敵骸骨兵。
 その気配に気付いたのか、慌てて骸骨兵が神奈のほうへと銃口を向ける。……しかし、水無月の次女は冷静に射線を読んだ。
「はぁぁぁ!!」
 骸骨兵の発砲と、その発砲を避けた神奈が敵の首を切り落としたのは、ほぼ同時だった。

 その伏兵班の二人の反対側・敵隊列前方でも、骸骨兵は押されていた。
 反撃を開始した当初こそ、敵の発砲がフローラに命中したのだが……。
「……っ。痛かったわ、これはお返しよ!」
 痛みを堪えて骸骨兵に肉薄するフローラ。その手にはカレンデュラがあった。戦車の前面に対してやや斜め方向から仕掛けているのは、敵戦車の正面にある主砲を警戒してのことだろう。
 近接された骸骨兵はなおも射撃しようとするも、しかし近付かれすぎたために狙いを付けられなくなっている。
 その知能が足りない敵に容赦なく杖が振るわれ、これを痛打した。
 その敵へ、翼が追撃をかけんと近付く。刀身を煌かせた日本刀・星煌を操るのは、学友より教わった剣術だ。
「刀を……体の一部に」
 上半身を覆う鎧の首元に、姉の形見の赤いマフラーがはためく。赤はまるで、彼の大切な家族や知人が流した血のように……。
「絶対ェに……討つ!!」
 気合いと共に振り下ろされた刀は、骸骨兵を確実に捉え、討ち取ることに成功する。
 後方よりの遠距離魔法を主体とするのは、翠月だ。かのj……もとへ、彼は手に『万魔殿』の名を持つ魔法書を携え、禍々しき形の刃を生み出しては、それを操って骸骨兵を攻撃する。刃が直撃し、骸骨兵の頭部が吹き飛んだ。
「気を付けて撃たなくては……っ」
 今回の撃退士たちは、周囲の民家等に対する被害に注意している。このときの翠月も、左右に素早く視線を走らせて、仮に外れても周囲に被害が出ないよう自身の位置を調節した上で魔法を放っていた。

 随伴歩兵たちが壊滅する中、それでも重戦車は抵抗を続けていた。
 前方の戦車の砲塔が旋回する。砲身が向く先は真後ろ――狙いは、後方の戦車に取り付いてハッチを破壊せんとしていたデニスか。
「デニスさ――!!」
 先頭の戦車のハッチへCelestial Penetratorを叩き込もうとしていた七佳が咄嗟に飛ばした警告は、砲撃の轟音に掻き消された。
 自身の主砲に耐えうる装甲を持つゆえに、同士討ちでも後方の戦車の被害はあまり大きくない。だが……。
 七佳の、そして砲撃の音を聞いた撃退士たちの視線が後方の戦車の上に集まる中――
「……なるほどな、ストリートのゴロツキ共のパンチよりは効いたぜ」
 ミラージュシールドを構えた巨漢の、不敵な笑みがそこにあった。デニスは砲撃に耐えたのだ。
 もしも開発者の天使が知ったら、悔しさのあまりに卒倒することだろう。
「砲塔の後ろにハッチがある!」
 周囲……主に七佳へと言いつつ、デニスは自分の担当する戦車のハッチを破壊した。
 戦車の中には、四体の戦車兵……。
「よぅ、邪魔するぜ」
 魔具をガルムSPに持ち替えた大男が、にぃと笑った。

「いくら強力な敵でも、やりようはあるってことね」
 フローラが快活に笑うと、翠月がそうですねと釣られる。
 あの後、撃退士たちはハッチから、覗き窓から、攻撃を加えて戦車兵を撃破していた。
 今の彼らの背後には、乗り手を失った重戦車が二輌、佇んでいる。その上ではデニスが、
「わっしょーい! わっしょーい!」
 諸手を挙げて喜びを表して……いや、何でわっしょい?
「この戦車を研究すれば、天界の技術がわかるかもしれませんね」
 戦車の装甲に指で触れつつ、彩が興味深そうに呟いた。
 確かに、戦車を捕獲出来たのは大手柄と言えるかも知れない。
 ……しかし。

「そうはさせぬ」

 その場の誰のものでもない、凛とした声が響いた。
 風が撃退士たちの間を吹き抜け……突如として、重戦車の左側面にあるメッシュ部分が激しく斬り付けられる。
 すると……。
 一瞬にして、重戦車は戦車の形をした白い粒の塊となり……次の瞬間には、崩壊した。
「何だ!?」
「これは!?」
 雪崩のように殺到した塩に塗れつつ、撃退士たちは動揺を隠しえない。
 二輌目の戦車も同様に、一瞬にして白塊と化して、崩れ去った。
「これは……塩か!?」
 崩れた戦車から落下して白い粒に埋もれたデニスが感じたのは、強烈な塩の味。
「そう。自壊機能だそうだ」
 再び、撃退士でない声が響く。撃退士たちの視線が集まった先は、抜き身の日本刀を携えた黒髪の少女。
 この状況で……この少女が、敵でないはずがない。
 そう感じた神奈の身体が、自然と動き出す。
「唸れ、蛍丸……っ!」
 少女へ向けて、黒い衝撃波を放った。しかし。
「いきなりとは卑怯な奴め」
 衝撃波が届く前に、少女の姿は掻き消え……次の瞬間、神奈の身体を衝撃が走っていた。
 その彼女の背後には、刀を振り抜いた姿の少女。
 水無月の次女が、塩の海に崩れ落ちて。その姿を見ぬままに、少女は刀を鞘へと収める。
「私にも報告の仕事がある。これ以上は戦う気は無い」
 それだけ言い残すと、少女の姿は掻き消えたのであった。

 後日、戦場となった町の住民から、撃退士たちへお礼の言葉が届いた。
 何はともあれ、被害は最小限で、任務は果たされたのだ。



依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: 郷の守り人・水無月 神奈(ja0914)
   <シュトラッサーの反撃による。>という理由により『重体』となる
面白かった!:6人

Defender of the Society・
佐藤 七佳(ja0030)

大学部3年61組 女 ディバインナイト
撃退士・
彩・ギネヴィア・パラダイン(ja0173)

大学部6年319組 女 鬼道忍軍
沫に結ぶ・
祭乃守 夏折(ja0559)

卒業 女 鬼道忍軍
郷の守り人・
水無月 神奈(ja0914)

大学部6年4組 女 ルインズブレイド
夜を紡ぎし翠闇の魔人・
鑑夜 翠月(jb0681)

大学部3年267組 男 ナイトウォーカー
EisBlumen Jungfrau・
フローラ・シュトリエ(jb1440)

大学部5年272組 女 陰陽師
大洋の救命者・
姫咲 翼(jb2064)

大学部8年166組 男 バハムートテイマー
紫電を纏いし者・
デニス・トールマン(jb2314)

大学部8年262組 男 ディバインナイト