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マスター:塩田多弾砲
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:7人
リプレイ完成日時:2013/06/25


みんなの思い出



オープニング

「いやはや」とは、彼……「ロード・オン・チャーシュー」の異名を持つタクシー運転手、大田鉢新三郎の口癖。
手作りチャーシューおよびチャーシューメンに関しては一家言あり、自作するのも得意。
そんな彼は、肉全般が好きだった。肉なら何でもOK。彼がチャーシューメンつくりを得意になったのも、肉をよりおいしく食べるためと言っても過言でもない。
それは、彼の娘……中学一年生の大田鉢小鳥も同様。というか、彼女は父親以上に肉好き、しかもカレー好きだった。

「ただいまー」
「おかえりー。とーちゃん、今日はカレーだよー」
「ああ……そうか、そうだったな」
 家に帰ると、玄関にもカレーの匂いが漂ってくるのがわかった。今日は一週間に一度、カレーを食べる日。そのカレーを作るのは、決まって小鳥だった。
 小鳥がまだ幼いころ、新三郎は妻・早苗に先立たれ、それ以来父ひとり娘ひとりで生活している。
 小鳥は中学一年生であるが、大田鉢家の家事一般を受け持っていた。部活には入っておらず、学校が終わるとできるだけすぐに帰り、洗濯や掃除をしてくれている。また、料理もできるだけ自分で行い、出来合いの総菜で済ます事はあまりない。
 しかし、新三郎は娘に対しちょっとした悩みがあった。
「今日のカレーは?」
「豚角煮カレー・角煮大盛り。それにラーメンサラダ・ゴママヨネーズ風味」
「……で、お前のその姿は?」
「黒ゴスロリ、黒ネコミミ装備だけど、それがどうかした?」
 良くわからないが、アニメキャラやらゲームキャラやら、常時何かのコスプレをしているのだ。登下校時にはさすがに制服だが、それでもネコミミなどのアクセを付けなかった事はない。
 今コスプレしているのは、好きなアニメだかゲームだかのキャラクター。ゴスロリ風味のその姿を見ていると、たまにはコスプレしてない娘の姿を見たくなったり。
「……父親として、こういう場合はどう接すればいいのか、悩むなあ。いやはや」
「さ、たべよ? いっただきまーす」
 悩む父親などどこ吹く風で、小鳥はカレーに煮込まれた肉の塊にかじりついた。

 さて、その小鳥。
 父親がラーメン好きな影響から、ラーメンも好きであったが。それ以上に、カレーが大好きであった。
 亡き母親がカレー好きで、最後に食べたのが母の作ってくれたカレーゆえか、あの味を追い求めている……。
 なんてことはなく、自分で色々なカレーの情報を得ては、好きに作っている。実際好物ゆえか、父親の作るチャーシューメン同様に、カレーを作る実力も結構ある。
 そんな彼女は、今やある目的のために、カレー作りに夢中になっていた。なぜなら……。
 
「ラーメンフェスやった商店街で、今度新しくカレー屋ができてね。それでカレーコンテストする事になったんだなこれが」
 以前、ラーメンフェス関係で依頼した、田原金之助の友人である教師・大手町団十郎。彼は再び、依頼を持ち掛けていた。
 宣伝も兼ねて、老若男女が自慢のカレーを持ちより、優勝を決めるというイベントである。
「で、ラーメン四天王のひとり……の娘が、カレーコンテストに参加するって事になったんだが」
 大田鉢新三郎の娘、大田鉢小鳥。彼女は張り切ってカレーコンテストに参加を希望していた……のだが、ちょっと問題が。
「いざ参加! ……って決めると、どういうのを作ればいいか迷ってしまったようでね。『ここは定番チキンカレー。いやいや、やっぱビーフカレー。それよりスープカレー、いやいやインドカレー、欧風カレーも捨てがたいしブツブツ』と、煮詰まってしまってるんだな。カレーなだけに」
 うまい事言ったとドヤ顔になった大手町だが、君たちの反応の薄さと漂った微妙な空気から、その考えを改めた。
「……と、とにかくだな。それで新さんが頼んできたんだよ。『こないだのラーメンフェスん時みたいに、娘の手伝いや応援をしてくれるようにと、生徒さんに声をかけて頼んではくれないか』ってな。俺も手助けしようとは思ったが、『カレーラーメンとかどうだ』って言ってみたら、即座に却下されちまった」
 それもそのはず。今回のこのカレーコンテストには「カレーに添えてかけるのはライスのみ」。「カレーうどんやカレーパンといったものは、今回対象外」だというのだ。
「このカレー屋の親会社が、北海道のブランド米を扱っているそうでな。このコンテストで、北海道ブランド米の普及と宣伝も同時に行いたいらしい。だから、カレーはライスのみ。それで、優勝したら白老牛十キロ、および焼肉屋での一日食い放題券が副賞でもらえる事になってる。小鳥嬢はそれを手に入れたいと思っているんだな……母親の命日に、供えるために」
 このカレーコンテストが行われ、結果発表される日は、ちょうど母親の命日。そして母の早苗もまた、娘同様に肉が大好物だった。かつては仙台に旅行した時、牛タンやタン塩、タンシチューなどを大量に平らげたという武勇伝すらあったらしい(ちなみに早苗本人の好みは、ラム肉他ジンギスカン)。
「で、小鳥嬢は小さかったとはいえ、生前には母親の事をろくに覚えていなかった。だからこそ……『肉』を母娘の思い出として絆としているわけだな。母への想いを、このカレーコンテストに参加する事で表したい。そのための手助けをしてくれれば、と思う」
 もし優勝したら、焼き肉、ステーキ、ジンギスカン、その他肉料理一日食い放題に招待する、との事。
「というわけで、もしも暇で、ちょっとばかりカレーを味見したりカレーつくりを手伝ったり、なおかつ焼肉食い放題できる可能性に賭けたい奴がいたら、手伝っちゃあくれんかな」


リプレイ本文

●香味1「あの子を助けに来たみんな」

「みなさん、今回はお手伝いに来ていただきありがとうございました。改めまして、大田鉢小鳥と申します。よろしくお願いします」
 礼儀正しく挨拶した少女は、ぺこりとお辞儀した。
 それに対し、参加した撃退士たちも挨拶を返す。
「初めまして、グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)と申します。僕も、料理を少し嗜みます。よろしくお願いしますね」
「わぁ、オッドアイかっこいい! まるでマンガの『邪眼王子』みたいですね!」
「これ、小鳥! ……いやはや、失礼しました。この通りお転婆で、困ってしまいます」
同席していた父親、大田鉢新三郎が娘を窘める。
「こんにちは小鳥ちゃん、自分は神棟星嵐(jb1397)です。よろしくお願いします」
「はい! こっちのお兄さんもかっこいいなあ、好きな乙女ゲーのキャラより素敵だよー」
「小鳥! ……まったく、申し訳ありません。なにぶん変な趣味に入れ込み過ぎてるようで、本当に困った娘ですよ」
 二人に続き挨拶するは、小鳥より年下の少女。
「……ん。私。最上 憐(jb1522)。よろしく」
「…………」
「……ん。何か。問題。気になる事。変な点。あった?」
「……きゃーっ! かわいい! お人形さんみたい! 妹にしてお持ち帰りしたーい!」
 いきなりぎゅっと抱きしめ、頬すりすり。
『ゴツン!』この音は、小鳥が父親に鉄拳制裁された時の音。
「……痛いよー、とーちゃんー」
「小鳥、いい加減にしなさい。確かにかわいいお嬢さんだが、やっていい事と悪い事があるぞ?」
「ははは。お父さん、感情豊かな娘さんじゃあないですか。ボクの目には実に魅力的に映りますよ」
 優男風の青年が、新三郎に声をかける。
「おおっと、自己紹介が遅れました。ボクは藤井 雪彦(jb4731)と申します。以後、お見知りおきを」
 軽く、フレンドリーな口調で、彼は花束を差し出した。
「この花は、コンテストの優勝を願い、カレー好きな美少女と、その美人なお母上に捧げます……」
「あ、これはこれはどうも! かーちゃん……じゃなかった、母も花が好きでした。あとで仏壇に活けさせてもらいますね」
 彼に続くは、豊かな胸と、プラチナブロンドのショートボブな髪を持つ女性。
「あたしは、三島 奏(jb5830)。小鳥ちゃん、お母さんのカレー、思い出すきっかけになれたらと思うよ。よろしくね」
「はいっ……あ、あの……?」
「ん? なんだい?」
「……その……今、ふっと思い出しそうになりました。もっと思い出すために……ぎゅって、そのおっぱい……じゃなくて、胸で抱きしめてもらえませんか?」
 と、そのまま返答を待たず、小鳥は奏に抱き付き、その胸に顔をうずめた。
「え? ひゃあっ!」これは、奏の戸惑いの声。
「小鳥!」これは、父親が激怒した声。
『ゴツン! ゴツン!』これは、小鳥が父親に更なる鉄拳制裁された音。
「いやはや全く、なんてうらやま……もとい、怪しからん事を。申し訳ありません。小鳥! これ以上はとーちゃんマジに怒るぞ?」
「うう〜。だって、すごくカッコいい美人さんなんだもん。おっぱいおっきいし」
 言いつつ、自分の小さな胸を絶望的に見つめる小鳥。
 そんな彼女に、最後に控えていた少女が名乗った。
「失礼、自己紹介させていただくでござる。拙者、エイネ アクライア (jb6014)。『かれえらいす』とは、美味な食べ物と聞いたでござるが、よくわからないでござる。なので、味見専門でお手伝いするでござるよ! ときに……」
「? なあに?」
「小鳥殿は、こすぷれ、なるものをするのでござったな。拙者も着てみたいでござる。よろしければ、服を選んではくださらぬか?」
「もちろんだよー! そうだなー、エイネちゃんだったら、あれやこれやソレや……」
 ゴツン!の三乗。三度小鳥は、父親に鉄拳制裁されたのだった。

●香味2「おいしいカレーの構想レシピ」

 カレー作りは、次の日から。
 担当はそれぞれ、以下のように振り分けられた。

:神棟、グラルス:調理手伝い(兼当日雑用)。
:奏、藤井:調理アシスト。
:憐、エイネ:味見役(兼コスプレ要員)。

 現在、大田鉢家の台所にて。アイデア出しも兼ね典型的なカレーをまずは作っていた。エプロン姿になった小鳥は、手際よく食材を処理し、炒め、基本のカレーを作っていく。
「で、小鳥ちゃんのお母さん、どんなカレーを作っていたのかな?」
「んー、そうですね……おいしいのなら、どんなんでも良いんですけど……」
 神棟からの質問に、小鳥はあいまいな返答をした。母の作ったカレーは、正直覚えがない……というか、毎回全く異なるカレーを作っていたので、これといった特徴が思い出せず、思いつかないというのだ。
「ただ唯一、『肉入り』って事だけは毎回共通でした。とーちゃん……じゃなくて、父も肉好きでしたし。だから、肉を、それも塊で入ってたら、いいかなって」
「お母さんの好きな肉は、羊肉だったと聞いているけど。だったら、ラムまたはマトンのカレーにする? それとも、ビーフや牛すじカレーみたいな方向で作ってみようか?」
 グラルスの提案に、ぐつぐつと煮込み始めた鍋をかき回しつつ、小鳥は考えるように目を閉じた。
「そうですね……牛はメジャーすぎて、ちょっとインパクトに欠けますが……ハズレは無い安定したカレーが出来ますし。羊肉はちと癖があるけど、インパクトや個性って点なら、牛よりポイント高いですし……」
 うーんと唸る小鳥へと、憐が呟く。
「……ん。牛と。羊。どちらも。おいしそう。美味そう。期待できそう。両方。食べてみたい」
「……両方?」
 その言葉に小鳥は、豆電球がぴこんと飛び出したかのような、閃いた表情を浮かべた。
「それだよ憐ちゃん! 両方やっちゃおう! ダブルカレー! 二種類のルゥを一つのお皿で楽しめる! うん、豪華だしインパクトあるし、これはいける!」
 
 そして、しばらく。
 小鳥は、カレーを仕上げた。
「とりあえず、これは牛すじカレー。まずはこちらを食べてみて! エイネちゃんも!」
「おお、これは美味そうでござるなぁ!」
 出来上がったカレーを、味見係の二人へと差し出す。続き、奏たちへと、美味そうな匂いが立ち込める一皿を差し出した。
「では……いっただきまーす!」
 小鳥とともに、テーブルを囲みカレーを食す一同。
「……ん。味見は。任せて。いくらでも。飲めるよ。飲み干せるよ。飲みつくせるよ?」
 言いつつ、胃の腑へとカレーを流し込む憐。
「これは、実に美味でござる! むむ……少しばかり辛味が効いているが……この独特の旨み。匙が止まらぬ!」エイネもまた、憐に続きカレーを口に運び、味わう。
「あら、なかなかいけるわ。さすがはいつも作っているだけのことはあるわね」
「いやぁ、全く。とろけるような味わいですね」
 奏と藤井もまた、その辛味と旨みとを味わっていた。
「みなさんのアイデアで、なんだか光明が見えてきた気分です。これ食べ終わったら、早速構想を練りましょう……でも、その前に」
 小鳥は、憐へと向き合った。
「憐ちゃん、『飲める』とか言ってたけど、ひょっとして『カレーは飲み物』って思ってるクチ?」
「……ん。カレーは。飲み物。飲み下すもの。ごっくんするもの。違うの?」
「……なんてこと言うの!」
 くわっ!といった様相で、小鳥は憐へと詰め寄る。
「……そんな事、当然じゃあない!」
 力説したのち、ぐっと拳を握る。
「でも! わたしたちが作るのはカレー『ライス』! すなわち、米とのコラボが前提であり決め手! そしてお米は、よーく噛んで食べなきゃあダメ!」
 更に力説し、小鳥はビシ!という効果音とともにある方向へと指を向けた。
「お米作ってる新潟の人に、謝るべき! でしょ? そーよね? そーだわよね?」
 小鳥にそう言われ、憐は、小鳥と同じ方向を向くと、ともに一礼した。
「……ん。米農家の。おじさん。おばさん。謝罪します。謝ります。ごめんなさい」
 その様子を、言葉を失いつつ見守る一同。
「……っていうか、カレーっていつから飲料だったンだ……」
 ぼそっとつぶやく奏。見なかった事に、聞かなかった事にしようと、即刻心に決めた彼女だった。

 そして、さらにしばらく。
 羊肉と牛肉のダブルカレーに決定した後、レシピはとんとん拍子で進んでいった。
「スポンサー米を用いた、ガーリックライスですか! 藤井さん、奏さん、肉に合って美味しいかも!」
「うん。で、ルゥだけど……」
 羊肉用と、牛肉用の二種類。
 基本は、インド風のスパイスカレーをベースに。あまりサラサラしすぎず、とろみを出すように。
「……この通り、出来上がり」
 ぱくっ。
 味見役の憐とエイネともに、小鳥はできたそのルゥを味見。
「……ん。いける。悪くない。いい感じ」
「ふむ、これは……良い味わいでござる」
「……うん、おいしい!」

 そして、さらにさらにしばらく。
「……ん。美味だけど。もう。少し。インパクトが。欲しいかも」
「うん。憐ちゃんの言う通り、もうちょっとコクが欲しいかなー」
「グラルス。ガーリックライス、カレーにかけるのなら味は薄目がいいかしら?」
「そうですね奏さん。炒めるのもバターでなく、オリーブオイルの方が良いかもしれません」
「福神漬けは、どこのが良いでしょうかね。神棟さん」
「ネットで調べたら、この銘柄を見つけたよ。取り寄せてはどうかな」
「藤井殿ー。もう少し味見したいでござるー」
 熱きカレーの、気合のレシピは。徐々に完成に近づきつつあった。

●香味3「コスプレ本番お料理開始」

 コンテスト当日。
「キラキラ輝くみなぎる愛! ここで勝たなきゃ女がすたる!」
 フリルのついた、赤とピンクの黒ゴス風姿になった小鳥が、くるりと回る。
「勇気リンリン叡智の光! 気合のレシピを今見せる! ……なんだか、恥ずかしいでござるなあ」
 同じく、青と緑色の白ゴス姿のエイネも、同じくくるりと回って決めポーズ。
「何言ってるのエイネちゃん! めがっさ似合ってるよー。……さ、憐ちゃんも!」
 小鳥に促され、なぜかコス姿の憐も、また決めポーズを。
「……ん。……紫ローズは。乙女の秘密。……って。やっぱり。恥ずかしい」
「……っきゃーっ! かわいーっ! やっぱり似合ってるーっ! 恥ずかしがってるとこもかわいーっ!」と、再び頬すりすり。
 その様子を、父・新三郎はじめ、他の皆は生暖かい眼差しで見つめるのみ。
「小鳥……いやはや、全くなんというか……」
「……ま、まあ。良いんじゃないでしょうか」
「……かわいいし、ねえ」
 グラルスと奏は、そう言うしかなかった。
 ……しかし、コスプレに限らず、珍妙な姿での参加者は、小鳥たちだけではなかった。
「……ん。あの女の子たち。全員。着ぐるみ着てる」
「あっちの男性たちは、筋骨隆々でふんどし姿……消防団ですか、辛そうなカレーを作りそうです」
 それが関係しているのか。コンテスト開始の時が近づくにつれ、小鳥の表情が固くなっていくのを藤井は見た。
「……気になる?」
 藤井が、穏やかに声をかける。
「あ、ううん。大丈夫、です。ちょっと……かーちゃん……母の事、思い出しちゃって」
 笑顔を見せ、彼女は所定の位置へと付いた。そろそろ、始まる。
「……ちぇっ、かぶるなぁ〜」
 これは本当に、全力で手伝わなきゃねっ♪
 母を思う気持ちは同じ。自身の母の形見のハンカチを握りしめ……藤井もまた、アシスタントとして所定の位置につく。

『それでは、これよりコンテスト……開催いたします!』

 アナウンスが響き、カレーコンテストがここに始まった!

 羊肉と牛肉の、ダブルカレー。
 二つのルゥを造るのは、ちと骨が折れる。が、不可能ではない。
肉はそれぞれ、下処理したのち、マトンはヨーグルト漬けに、牛は薄切りで赤ワイン漬けにして、柔らさを出し臭みを取っている。
小鳥は、ルゥに取り掛かった。コスプレ姿の上にエプロン。手元は作業しやすいように腕まくりし、具となる野菜を刻んでは、ボウルに入れていた。奏も、その作業を手伝う。
「グラルスさん、神棟さんのアドバイス通りに……」
 厚手の鍋にサラダ油を入れ強火。玉ねぎを入れて、強火から弱くしつつ黄金色になるまで炒め。
 黄金色になったら、すりおろしニンニクとショウガ、各種スパイスを加え、さっと炒め合わせていく。
「……ん。とっても。いい匂い。いい香り。おいしそうな匂い」
 離れた場所で、応援している憐のもとにも、匂いは漂い伝わってきた。
 やがて、パウダー・スパイスと塩、香菜、ミントの葉を取り出した小鳥は、それらを半カップ程の水とともに鍋の炒め玉ねぎ加え、中火にし、煮込んでいった。
 福神漬けの用意を終えた後、鍋の中、その表面にスパイス色の油が浮き出るのを確認したら。
 食材の王道、「肉」の用意だ。
 表面が白くなるまで、肉を炒め。数回に分けて湯を足す。
この状態で沸騰させ、その後に弱火に落とし、蓋をして煮込む。
「……30分程したらヨーグルトを加え、45分経ったら塩加減を調整して……」
 終えたら、ライスの用意。
 炊き上がった、真っ白なごはん。そのままでもいいが、炒め、そして世界へ向けて味付けを。
「下処理他は任せろっ!」
 藤井がアシストとして加わる。そのかいあって、これまで以上に無く、早く、確実にできあがっていた。
「君は料理に想いを、お母さんへの愛情だけを込めるんだ!」
 藤井の言葉が、新たな勢力を変える。そして……。

 コンテストの時間は、終わった。

●香味4「戦い終わって日が暮れて」

「‥‥ん。食べ放題。つまり。ココのモノは。全て。食して。良いんだよね?」
 食べ放題の店にて。
 憐の前には、食べ放題ブッフェ。そしてそれを前にして、舌なめずりしている憐。
 コンテストは、見事に優勝した。大量の肉とともに、小鳥は優勝カップをもらい、藤井からも優勝記念として言葉をかけた。
「良かったね♪きっとお母さんも喜んでるよ☆」
「はい! これもみなさんのおかげです! ありがとうございました!」
 そして、優勝が決まった時。エイネは、喜びのあまり小鳥の元へ突撃。抱きしめて、腰で身体を持ち上げ、くるくる回り始め……
「おめでとうでござるよ、小鳥殿〜!」
 そして、目を回して倒れてしまった。

 その後日、すなわち今。
 小鳥は白老牛を手に入れ、仏壇……すなわち母親へと供えた。
 そして、食べ放題開始。皆、食欲とともに肉を消費していく。
「これで……」
 小鳥は、静かに呟いた。これで、親との絆、深まったかな。と。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

雷よりも速い風・
グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)

大学部5年101組 男 ダアト
戦いの中で戦いを……・
神棟星嵐(jb1397)

大学部6年70組 男 ナイトウォーカー
カレーは飲み物・
最上 憐(jb1522)

中等部3年6組 女 ナイトウォーカー
君との消えない思い出を・
藤井 雪彦(jb4731)

卒業 男 陰陽師
月夜の宴に輝く星々・
三島 奏(jb5830)

大学部7年170組 女 阿修羅
撃退士・
エイネ アクライア (jb6014)

大学部8年5組 女 アカシックレコーダー:タイプB