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マスター:塩田多弾砲
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/01/27


みんなの思い出



オープニング

 ラーメン!
 麺とスープと具とで構成される料理! その美味はあらゆる世代を虜にし、あらゆる地域からの愛好家を呼び寄せる。
 たとえ店が、遠くにあっても、辺鄙な地域にあっても、店が汚くとも、ラーメンという美味なる至福の前には問題なし。

 そんなわけで。新たな一年が始まった、ここ久遠ヶ原島の商店街でも。いわゆる「ラーメンフェス」なるものが開催されてるわけなのだが。
 ここで、可及的速やかに解決すべき問題が発生した。
 
 ラーメンフェス。半年に一度くらいの割で、商店街の有志らにより行われている不定期イベント。 町内の広場を会場とし、この日にはラーメン作ってみんなに振舞ったりしている。
 最後に人気投票を行い、その優勝者が得られるのは「キング・オブ・ラーメン」。ラーメン好きにとって何物にも代えがたい、誇りある称号。
 次の開催は、数日後。そんな時、事件が起きてしまったのだ。

「困った‥‥」
「田村書房」通称タムショ。
 古書、中古ゲームソフト、中古DVD、その他古玩具や雑貨などを扱っている小さな古書店。
その店を経営している青年・田村金之助、通称金さんは、病院にて焦りまくっていた。
 動けないのだ。腰をちょいとやっちゃって。
 彼の心はいつもラーメン三昧、食事の後に食後のラーメンもホイホイ食っちまう人間なんだぜ……というくらいのラーメン好き。遠くの街に出かけると、必ずあちこちのラーメン屋を探しては、ウホッとばかりに良さげなラーメンを食いまくる、ラーメンナイスガイ(自称)。
 実は彼は、ラーメンフェスに毎回参加する、ちょっとした有名人。
 だが、今回この状態では出られそうにない。
「……引っ越さなきゃあならないのに、最後のラーメンフェスは開催できないのか……」
 そう、彼は引っ越さなければならなかった。関東に住む親戚が大型古書店を経営しており、その二号店の経営を任せたいと言ってきたのだ。
 金之助自身、この町が好きだし、自ら開いたこの古書店を閉店したくはなかった。が、最近経営がうまくいかず、収入も乏しい。引っ越す事には難色を示していたが……やはり、仕方があるまいと決意した。
 ……二号店のすぐ隣に、ラーメン博物館みたいな施設があった事は、おそらく決意とは関係ないだろう。おそらく、きっと、多分。

 けど、ならば最後という事で有終の美を飾ろう……と思ってた矢先。
 店の商品を整理していたところ。古書を詰めこんだ箱を持ち上げた途端、腰からグギッという音が響き、続いて激痛が。
 かくして、一ヶ月安静にって事で、入院を余儀なくされるはめに。当然、ラーメンフェスの参加などできるわけがない。
 引っ越し自体は、なんとかなる。けれど問題は、ラーメンフェスをこんな中途半端な形で退場する事。
 そればかりか、商店街仲間で結成した彼ら……ラーメン四天王のみんなもがっかりさせてしまう。

「クイーン・ザ・トンコツ」こと、リサイクル店の女性店主、東崎雅子。
「ツケメンカイザー」こと、整体師の月山俊二。
「ロード・オン・チャーシュー」こと、タクシー運転手の大田鉢新三郎。
「メン・イン・タンタンメン」こと、雑貨店経営者、豪島民太郎。

 彼らはラーメンにより結ばれた、心の強敵(とも)にして兄弟。
 そんな彼らとも、もう会えないのだ。彼らと最後のラーメンフェスでの戦い、なんとかしてやりたい。

「……というわけで、ラーメンフェスに、参加手伝いとして参加してくれる生徒はいないかな」
「……中止って選択肢は」
「論外。ラーメンに生きラーメンに死す、これが我らのラーメン道。そのために死しても惜しくはない。できれば彼らと最後のラーメン勝負してやりたいんだよ」
「なるほど、それでうちの生徒たちに手伝いを頼みたいと。ったく、たかがラーメンごときで」
 見舞いに来た、金之助の友人にして学園の教師は、腕を組み悩んだ。
「うーむ……」
「つーわけで、どうにかならんかな」
「どうにもならんよ。諦めるって事も選択肢に入れた方がいいんじゃあないか?」
「そんなご無体な、つーか諦めるなんて言っていいのかよー。教師ならここは『諦めるな、ここは俺がインスタントラーメン一週間分おごってやるから、絶対にあきらめるんじゃあねーぜッ!』って励ますとこだろ?」
「いや、おごらねーから。つーかフェス自体は次も誰かがやるだろうし、今回くらい参加中止にしてもいいじゃねーかよ。俺は手伝わねえからな。諦めて腰治しとけ」
「……ふーんそうかそうか。そういえばお前、古いゲーム集めてたっけなあ」
「断っておくが、何言っても手伝わねえからな。いいかげん諦めろ」
「いや、うちの商品の中古ゲームに、今は絶版になってるエッチスケッチワンタッチなのがいくつかあるんだが、お前さんこういうの嫌いだったから関係ないよな」
「よし任せろ! 生徒に呼びかけて、暇してる奴らを無理やりにでも引っ張ってきてやる。なあに、どうせ学生なんざ暇ぶっこいてるようなやつらばっかだ。いい経験になるだろーよ。大丈夫、諦めるな! ここは俺がカップラーメン二週間分おごってやるから、絶対にあきらめるんじゃあねーぜッ!」

「……ってな事で、最後のラーメンフェスに手伝いとして参加してくれる者はいないか? やってもらいたいのは、友人の田村金之助の代役として、ラーメン屋を出店し、作って皆にふるまう事だ。当然、ラーメンもタダでたらふく食えるぞ。うまく終わらせられたら、最後にご褒美もくれるとの事だし、やって損はないぞ?」
 さわやかな笑顔を浮かべつつ、その教師は君たちへと問いかけた.


リプレイ本文

●一食・自己紹介!

「さて、我らがラーメン同士たち! 自己紹介、いってみよーかっ!」
 病室にて。ハイテンションな金之助が、ベッド上から皆へと声をかける。
「はいっ! 道明寺 詩愛(ja3388)です。 ラーメンは私も大好きです! よろしくおねがいします!」
「うむっ! 澄んだ塩ラーメンスープのごとき、礼儀正しい美少女だ!」
「僕は、レグルス・グラウシード(ja8064)です。ラーメン道、すごいんですね。尊敬します」
「君もまた、博多トンコツラーメンの麺がごときハンサムボーイだねっ!」
「神埼 晶(ja8085)です。すごく面白そう! 私もお店、手伝いますよ!」
「おう、面白いぞ! 君のような頼もしい美少女がいてくれれば、味付け玉子トッピングと同じくらい千人力さ!」
「え、ええっと……久遠寺 渚(jb0685)です。よ、よろしく、お願いします」
「ほほう、白髪ねぎがごとき可憐な乙女だねっ。ネギのように、ラーメンを引き立ててくれたまえ!」
「美森 あやか(jb1451)と申します。……お手伝い出来れば、と思いまして……。これ、お見舞いです」
「おおっ、カップ麺! その心遣い、スープのダシのように感謝するよっ!」
「あたくし、フィンブル(jb2738)ですわ。らーめんというものを良くは知りませんが、興味津々ですの。お手伝いさせていただくわあ」
「これはまた、味わい深いチャーシューのごとき美女だなあ! 抱いた興味を満足させてくれるぞ、ラーメンってやつは!」
 と、やたらと興奮気味で訳のわからん賛辞を述べる彼に、今回の話を持ってきた学園教師・大伽鉢が言葉をかけた。
「……おい金の字。とりあえず落ち着け。また腰をやられるぞ」
「大丈夫大丈夫、みんなの顔を見たら麺のコシ同様に復活……(ぐぎっ)……ちょ、ちょっと待て……」
 ほーれいわんこっちゃないと、大伽鉢は呆れ顔。
 やがて落ち着いた金之助は、皆に向き合った。
「……と、とりあえず、説明をさせてくれるかなっ」

●二食・フェス開始!

 ってわけで、一週間と数日後。フェス当日。
 商店街の一角に設けられた、特設会場。その一角に、金之助の「田村ラーメン」のブース。そしてその隣には、詩愛の「ラーメン研究会」のブース。
 詩愛自身は客引きと列整理。そして金之助のラーメンとともに、自分の研究会のラーメン……『特製!エビカニ味噌ラーメン』をも供し、それらを以て「キング・オブ・ラーメン」を目指す。
「……せっかくの参加です。本気で優勝取りにいきますよ!」
 ぐっと拳を握りしめ、詩愛は決意を新たに。
「お釣用の小銭はっと……よし、OK。みんな、用意はいい?」
 レジはないが、電卓はある。経理担当の晶は、制服にエプロン姿で皆に声をかけた。
「晶さん、えと……こ、こちらは用意、できてます……!」調理担当の渚が割烹姿で、まな板と包丁を用意しつつ答える。
「……こちらも、準備完了です……」調理・給仕担当のあやかもまた、同じく割烹着と三角巾姿でそれに返答。しかし少しばかり、緊張した口調。残飯用の大きなポリバケツや、設置された流し台の用意も整っている。
「給仕係。いつでもOKですわよ」
「僕も、給仕の準備はできてます……がんばりましょう」
 フィンブルとレグルスもまた、見たところ準備はできている様子。
 いよいよ始まる。一週間ちょっとではあるが、金之助から、ラーメンの手ほどきを叩きこまれた。それを無駄にはしない!
 他のブースの人たちも、その想いは同じ様子。そう、ラーメン四天王の四名も。
 多くの人々の想いが交錯する中、アナウンスが響いた。
『それではこれより、商店街ラーメンフェスティバル。開始します!』

●三食・フェス開催中!

「はぁいお客さん、こちらよお。……ええっ、ふーふーして食べさせて? はあい、ちょっとまっててねえ」
「味噌らーめん三つ、おまたせしましたー。お冷のおかわり? 少々お待ちくださいー」
「はい、食券です。こちらお釣り……はい、こちら五名様ですね」
 男性客が、フィンブルの色気たっぷりな給仕に鼻の下をのばし、女性客が、レグルスの振舞いに黄色い声を上げる。それを見つつ、晶もまた食券の支払いに大忙し。
 フェスのルールで、ラーメンの料金は食券式の先払い。しかし、それでも思ったより人数が多い。電卓を叩いてお客をさばくだけで、晶はせいいっぱい。
「……ふうっ、参ったなあ。これじゃあ他の人のラーメン食べに行けられないじゃあない」
 つぶやきとともに、晶のお腹が鳴る。そりゃもう半端無く。
そんな中。渚とあやかは金之助から学んだ事を、彼女たちなりに実践し続けていた。

『……すでにこの寸胴で、鶏ガラと豚骨、野菜と根昆布にトビウオのアゴダシでスープを煮込んである。これはラーメン屋の命だ、命と同じく大事になっ!』

『……タレとなる味噌は、これらの合わせみそをこの割合で混ぜてある。それに、これとこの調味料を加え、良く混ぜて……』

『……麺のゆで加減を覚えるには、実践あるのみ。お客の好みで麺の固さも異なるから、可能な限り練習を繰り返し、身体で覚える事!』

『……トッピング関係は、適度に用意しておくこと。メンマは作り置きがあるが、白髪ねぎや味玉などは賞味期限もあるから、それらにも注意な!』

「……基本的な作り方は、そう難しくはありませんが……」
 小さくつぶやきながら、あやかは学んだラーメンの作り方を思い出し、それを実践していく。
「ですが……簡単だからこそ、繊細で難しい作業です」
 渚とともに、あやかは作っては出し、作っては出しの繰り返し。
 実際、金之助の味噌ラーメンはみるからに旨そうなのだ。味噌の香りが色濃く漂うスープには、少し太めの手もみ麺。それらを彩るは、白髪ねぎとチャーシュー、炒めモヤシとバターコーン、そして味付け玉子に万能ねぎ。加えられた麻油と焼き味噌の香ばしい香り。それだけで、口の中につばが湧きあがる。
 見ただけで旨そうなそれは、空の丼が数多く帰ってくることで、本当に旨いだろう事を予想させた。忙しくなるのも当然。
 しかし、忙しく思うと同時に、感動もしていた。
「……こんなおいしそうなラーメンを、自分の手で作り出せる……。そして……皆さんが喜んで、楽しそうに食べてくれている……」
 レシピは他人のものでも、自分の手で作ったごちそう。それが誰かの舌を喜ばせ、満足させる。
 その事実を実感し、彼女は感動を覚えていた。

「「「「たのもー!」」」」

 と、そんな考えに浸ってたあやかと渚の前に。
 四名の男女が、そのラーメンを食べにやって来た。

●四食・好敵手!

「ふむ、金ちゃんは欠席って聞いてたけど、代役の子達もなかなかじゃあない」
 スープをじっくり味わうは、トンコツの東崎雅子。
「……ふ、なるほど。麺もまた、金さんに指示されて君たちが打ったのかい? やるね」
 時間をかけて麺をすする、ツケメンの月山俊二。
「いやはや、このチャーシューの焼き加減。金ちゃんのよりわしは好みだな」
 チャーシューにかぶりつく、チャーシューメンの大田鉢新三郎。
「良いわね〜。この香味油と焼き味噌が、味にインパクトを与えてくれて良いわね〜」
 具と味噌とに注目する、坦々麺の豪島民太郎。
「「「「ごちそうさま!」」」」
 彼らもまた、丼を空に。
「あのっ! ラーメン四天王の皆さんですよね? 私のラーメンもぜひどうぞ! 一杯百円です!」
 食べ終わった頃合いを見て、詩愛が申し出る。
「あら、かわいい子ね。もちろんいただくわよ」と、東崎。
 やがて彼らの前に、新たなラーメンが。それは、詩愛のサークル『ラーメン研究会』名義のラーメン。数日前からチラシを配り、商店街にて宣伝してはいるものの、やはり実績がないためかイマイチ知名度が低かった。
「エビとカニの味噌ラーメン……ふ、なるほど、麺は手打ちの、細ちぢれ麺か。濃いめのスープに合うようにしているわけだね……」
「いやはや、エビとカニから取ったダシのスープか。ちと生臭いが、パンチが効いている。悪くないね」
「良いわね〜。このタレ、赤味噌に干しエビと……カニ味噌も? エビカニ尽くしなところが良いわね〜」
「ふむ、具はワカメに磯海苔、それに……エビカニのすり身の揚げ団子? 面白い味ね。この香味油は……大蒜と生姜と、赤唐辛子を軽く焦がしたものかしら。ふむふむ、嫌いじゃあないわ!」
 手ごたえあり。四人の反応、なかなかいい感じ。
 それを見て、詩愛もまた満足を覚えていた。

●五食・フェス終盤!

 やがて日も落ち、フェスの終わりが近づく。
 皆は、自分のところのラーメンを口にしていない。スープも麺も具も、全てが売り切れたため、店じまいにしたのだ。
「……投票結果は、後日に郵送されるんだったわね。それにしても……お腹すいたー!」
 店じまいした後、晶がため息とともにぼやく。無理もない、忙しくて昼食を取る暇もなかったのだ。
「疲れ……ましたね」
「お腹……空きました」
「あたくしも……らーめん道って、お腹が空くものなのねえ」
 レグルスが指摘し、あやかとフィンブルが空腹を訴える。
「わ、私も……」
「ううっ、ラーメン食べたかったなあ……」
 渚と詩愛のその言葉が終わるとともに、
「「「「なら、食べる?」」」」
 そう問いかける、四名の声があった。

「……こ、これは……!?」
 渚が、坦々麺のスープを口に含んだ。ゴマのうまみが、口いっぱいに広がる。
「こんなにおいしいの、生まれて初めて食べました……!」
 レグルスもまた、美味を実感する。
 ラーメン四天王は、皆に持ち掛けていたのだ。自分たち用に取っておいたラーメンを、皆にごちそうしたいと。
 その言葉に甘えた皆は、それぞれのラーメンへと向かっていた。
 渚とレグルスが向かうは、豪島の坦々麺。甘辛く味付けされたひき肉と、味の濃いゴマダレとが、二人の舌を悦ばせる。
「良いでしょ〜? 『メン・イン・タンタンメン』の自慢の一品、ゴマの香りが良いでしょ〜?」
 訪ねる豪島に、渚とレグルスはうなずく。
「……え、ええっと……はい! おいしいです!」
「ラーメンって、こんなにおいしいものなんですね……! 知りませんでした!」

「ちょっと、なにこれ! つけ麺ってこんなにおいしいものだったの!?」
 晶が食すは、「ツケメンカイザー」のつけ麺。
「ふ、なるほど。君も僕と同じく、つけ麺の魔力に憑りつかれたようだね。その通り。麺のうまさは、ラーメンよりもつけ麺の方がダイレクトに感じられるものさ」
 月山の言葉に、晶はうなずく。
「本当ね。スープもだけど、すっごくおいしいわ、この麺!」

「あらぁ、このお肉! トロっとしていて、柔らかいわあ」
「ええ。金之助さんのチャーシューより、おいしいかも」
「いやはや、美女と美少女とにそう言われると、『ロード・オン・チャーシュー』としては嬉しいねえ!」
 大田鉢のラーメンで舌鼓を打つは、フィンブルとあやか。彼が供するは、とろけるようなチャーシューがたっぷり入った醤油ラーメン。
「確かにこれだけの美味なら、『命をかける』と口にするのもわかりますわね」
「はい! ……金之助さんが夢中になる気持ち、わかります……!」
 言いつつ、二人は肉汁したたるチャーシューを口に運び、じっくりと味わった。

「む……このトンコツスープ、お店出しても十分やっていけますよ!」
 詩愛は、自分がそう口走るのを聞いた。
「ふむ、そう言ってもらえると光栄よ。私も、自分のラーメンは金ちゃんに勝るとも劣らないと自負してるからね」
『クイーン・ザ・トンコツ』が、ラーメンどんぶり越しに微笑んでいるのを、詩愛は見た。
「私、ラーメンの事はそれなりに知っていると思ってたけど、まだまだ知らない味があるものだと知りました。勉強になりましたよ!」
「ふむ、金ちゃんってば、将来有望なラーメンの若人たちと知り合いになったようね。詩愛ちゃん、あなたのエビカニラーメンも見事だったわよ。私たちも、うかうかしてられないわね」
 すっ……と、東崎は手を伸ばす。
「お互い、がんばりましょう。ラーメンを愛する者として」
「はいっ! 私もいつか、もっともっとおいしいラーメンを作って、食べてもらいたいです!」
 がっと、詩愛は固く握手を。この瞬間、詩愛は実感した。
 見知らぬ者だった両者の間に、ラーメンというものを通して、絆が結ばれた事を。

●六食・事後報告!

「すみません、金之助さん。頑張ったんですけど……」
 晶が、やや元気のない声で報告する。
 数日後。退院した金之助とともに、皆は「田村書店」厨房に集まっていた。退院祝いと共にフェスの結果を知らせる事になっていたのだ。
 結果は……惜しくも二位。東崎のトンコツラーメンに、わずかに及ばなかったのだ。
「はあっ、本気で優勝狙ってたんですけど……ほんとうに、ごめんなさい」
 しょんぼりした詩愛は、うつむき加減で謝った。ちなみに自身の「ラーメン研究会」のラーメンも、三十組中十位と健闘。
 そんな詩愛に、金之助は言葉をかけた。
「いやいや、みんな良く頑張ってくれた。いきなりの代役で、ここまでやってくれたんだ。それに……」
 レグルスから受け取ったノートを掲げ、金之助は嬉しそうに目を細める。
「わざわざ作ってくれた、お客や四天王の連中からの感想ノート。これを読めば、来てくれた人たちが、当日のラーメンを楽しんでくれたのは良くわかる。四天王の連中も書いてくれたとはな。これ以上嬉しい事はない……」
 一息つき、彼は……静かに言葉を続けた。
「これで、もう悔いはないよ。引っ越し先でもやっていけると思う。ありがとう、みんな。君たちこそが『キングス・オブ・ラーメン』! この俺のラーメン道にかけて宣言する!」
「あの……あたくしも、是非伝えたい事がありますの……田村様の、らーめん様に対する情熱、感動しましたわ」
 フィンブルの言葉が、金之助の厨房内に静かに響く。
「何か一つの事に情熱を注ぐ事の出来る殿方は、大変愛らしいと思いますわ。でも、問題が一つ……」
「?」
「らーめん道って、とても奥深いものだと知ってしまいましたの。もっと興味が出てしまい、もっと知りたくなってしまいましたわ」
 彼女の言葉を聞き、金之助はニッと笑顔を浮かべサムズアップ。
「よっし、ならば退院記念! この俺が直々に、特性味噌ラーメンをごちそうしよう!」
「はい! ぜひお願いします!」
「あ、僕にはののじの奴、いっぱい入れてください!」
「わ、わたしも……!」
「私は大盛で! あの時食べ損ねちゃったからね!」
「楽しみです……!」
「いただきますわ、田村様!」

 そして、滞りなく引っ越しは行われ。後日。
 皆の元に、手紙が届いた。

『引っ越し先で、古本屋の副業に、ラーメン屋を開いちまったぜ! 皆、関東に来ることがあったら、ぜひ食べに来てくれ!』

 添えられた写真には、店舗の前でサムズアップした金之助の姿が映っていた。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:3人

悪戯☆ホラーシスターズ・
道明寺 詩愛(ja3388)

大学部5年169組 女 アストラルヴァンガード
『山』守りに徹せし・
レグルス・グラウシード(ja8064)

大学部2年131組 男 アストラルヴァンガード
STRAIGHT BULLET・
神埼 晶(ja8085)

卒業 女 インフィルトレイター
未到の結界士・
久遠寺 渚(jb0685)

卒業 女 陰陽師
腕利き料理人・
美森 あやか(jb1451)

大学部2年6組 女 アストラルヴァンガード
銀雨の渇愛・
フィンブル(jb2738)

大学部3年126組 女 アストラルヴァンガード