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マスター:如月修羅
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:10人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/05/25


みんなの思い出



オープニング

●青い鳥、小鳥、鳥
 青い鳥を見つけると、幸せになれるよ。
 童話であるだろう、幸せの青い鳥。それにあやかるわけではなかろうが、そんな噂があるとある山。
 そこには、青い鳥が沢山いるのだと言う。
「つっても、山の中じゃそうそう見つからんって……」
「まぁな、移動するしな」
「それに寝てるかもしんねぇじゃん!」
「昼間から寝てるのは、なっちんだけだって」
「うっせ!! ほら、お前がみたいっつったんだろ、きぃやん、お前も探せよ!」
 わいわいと二人の少年が楽しげに笑いながら山の中を歩く。
 その足が止まった。
「ん………? なんだ?」
「サーバントだ!!」
 なっちんと呼ばれた少年が慌てて携帯を取り出す。
「連絡して、一旦退却しよう!」
「そうだな……!」
 彼らの視線の先には、異様な程大きな角を生やし、大きな牙をたたえた鹿が三頭、並んでいた。

●依頼です
「とある山に、鹿のサーバントが三匹現れました。大きな角と、大きな牙で攻撃してくると思われます。出会った撃退士達を目視しながら、攻撃はしかけてこなかったそうなので、遠距離攻撃はないようです。三体、必ず全部を倒す様にしてくださいね」
 そう言って女性が山の地図を差し出す。
「今回、2人の少年を保護しながらそのサーバントを倒してください。一応撃退士ではありますが、戦闘面ではまだまだ弱いため、今回は戦力にならないと思って下さい。指示に従うそうです」
 なんでまた、一緒に? という言葉に、女性が微笑んだ。
「道案内と、……今回行く山では、青い鳥を見つけると幸せになれるというジンクスがあるんです。その子たちは、どうしても早く青い鳥が見たいそうで。皆さんも探してみるといいでしょう」
 なんなら、双眼鏡をお渡しいたしましょうか? と笑う。
「そうそう、青い鳥の羽根を見つけたら幸せの御守りになるそうですよ? そちらも、合わせて探してみては、如何?」
 さぁ、いってらっしゃい、と女性が見送った。


リプレイ本文

●青い鳥の前に
 きぃやんとなっちんが率先して途中まで案内するその場所へ10名の撃退士が向かっていた。
「よぉっし! ユウ、頑張っちゃうんだカラっ☆」
 一緒に歩いていたユウ・ターナー(jb5471)とすでにきぃやんとなっちんは仲良し状態である。年も近ければ、より仲良くなりやすいということだろうか、いや、ユウの明るさと人懐っこさも影響しているのは、間違いない。
 その近くで、ヤナギ・エリューナク(ja0006) がじっとユウを見つめるが、何かを思い出せそうで思い出せない……そんなちょっとした違和感がある。
(青い鳥か。メルヘンでいいね)
 凪澤 小紅(ja0266)がじっと前を見据えながら思う。表情は変わっていないが、少々思う所があるようだ。
(まじないの類だろうか……? 何事も信心から、悪くはない)
 鴉乃宮 歌音(ja0427)がふと思う。その隣で、尻尾と羽根がパタパタと揺れるアッシュ・スードニム(jb3145)
「幸せの青い鳥、かぁ……。ね、ね、早く倒して探しに行こー!」
 青い鳥を探すためにも、きちんと倒すと心中で拳を握る。辺りを注意をして見渡すユリア(jb2624)。不意打ちをされないようにと気を配る。勿論、すぐに戦闘になったら配置につけるように後ろの方に居るのは忘れない。
(青い鳥……ですか。素敵な言い伝えですね)
 自然と微笑みが毀れたのはウィズレー・ブルー(jb2685)だ。そろそろ少年達が敵と出会った場所……生命探知の用意に抜かりはない。
 教室の窓から見える鳥は自由のようでいて、必死に地に落ちないよう羽ばたいている。それは天魔に翻弄される人間のようでいて。
(安息の枝は根元から切り倒され、死の淵はいつでも口を開いて待っている)
 小柴 春夜(ja7470)が心の中で呟く。だがしかし、本音は眠いの一言かもしれない。それでも、山中にある敵の気配に、瞳は開き戦いに備える。そう、そろそろ戦いが待っているのだから。
 出会った場所には移動していたのか敵の姿は見られなかった。少年二人が顔を見合わせるが、そこに頭をわしゃっとしたのは蜘蛛霧 兆晴(jb5298)だ。
「こっから探すからな! 危険だと思って戻ったのはいい判断だ、流石撃退士だなっ!」
 その言葉に、二人がくすぐったげに微笑む。
「青い鳥、見つかるといいね。さぁまずは敵を見つけようか」
 桜木 真里(ja5827)がそんな三人を見つめて小さく微笑んだ。

●獣の姿
 ウィズレーが辺りを見渡す。少年二人を後ろの方にやりながら、態勢を整えていく。
 歌音の周りに青色のモニタのような光が浮かぶ。幻視探査『通信士E』の難点は、視界が完全に遮断されていた場合は見つけられないことだろうか、その変わり衣類の一部でも出ていれば発見は可能だ。
 先に発見したのはウィズレーだった。隠れている場合でも見破ることができたのが大きい、しかしこちらの難点は大きさが分からないことだ。
「あそこに居ます!」
 それが、本当に鹿だろうか。それは分からないがすぐにアッシュがアディを召喚する。皆も意識をし、小紅が全身の闘争心を解き放つ!
「頼んだよ、アディ」
 それに二人が乗って、上から戦闘をみるという具合だ。
 二人がこわごわ乗ってみる。すぐに舞い上がった。ある程度の距離を飛べば、あとはそこで停止している。戦闘に参加するわけではないので、大丈夫だろう。これで二人を気にすることもなく戦うことができる!
 基本はウィズレー、春夜、アッシュの三人がばらばらになり、それ以外に二人が臨機応変につく。一人はそのまま三体を遊撃だろうか。
 前もってどの人の所にあたると決めて居なかったため、それぞれの判断で動くことになる。そこにあるのは、仲間に対する信用だろう。
 木の陰から飛び出してきたのは、やはり三頭の鹿だった。

●戦うこととは
 ここに居る皆の思うことは、この戦いが上から見守る少年達にどう影響するかということ。
 この行動の結果によって、少年達は撃退士というものは怖い物と思うかもしれない、逆に守るために戦う姿にあこがれるかもしれない。
 今はまだ答えはでない。
 一頭の鹿がそのまま突進してくる! 受け流すことも考慮していた春夜が前にでた。
「……っ」
 受け流そうとぶつかってきた方向へと体を動かす。その隙に、仲間の動きを見定めたユリアの射撃が飛ぶ。
「大丈夫だよ、任せて!」
 それは今まさにまた体を突き動かそうとした鹿に当たった。その脇を潜り抜ける姿がある。
「多勢に無勢ってのはちっと申し訳ねぇけどっ、悪く思わないでくれな?」
 兆晴がラジェーションレガースとともに、体内でアウルを燃焼させたその力で思いっきり角目がけて、蹴りを下から上へと放つ! それは強烈な一撃となって、鹿の動きを鈍らせた。
 ユリアの波線状の攻撃が足元に当たり、春夜の六花護符から放たれた雪の玉の様な物がその胴体に吸い込まれる。
「さぁ、ここからが本番だ」
 春夜がにやりと笑い、再びその淡い雪の玉のような光をその足元にとあてる。
 ユリアが手を掲げた。
 夜空に華を咲かせる花火のように、月光色の光の球を爆発させ、光の粒子を撒き散らす。それは、広範囲に及んだ。
「この一撃は強烈だよ」
 くすっと笑う前では、鹿が右往左往していて兆晴がそれに合わせて動く。
「おっと、逃がさないぜ!」
 足にこれでもかと攻撃を加えた。
 ぶっちゃけ、この鹿は足が痛そうである。ふらふらしているその姿を見て、視線を交わし合う。一気に行こう、そう物語っていた。
 一方その頃。
 別の個体を相手していたウィズレー。
「……参ります」
 槍を目の前の敵に突き刺す! それは大きな角でいなされてしまったが、ウィズレーの目的は攻撃だけでなく、注意を自分に引き付けること! 
「いくぞ!」
 小紅が力を込めて一撃を放つ! それに大きく体が揺らめいた。そこに激しい風の渦に鹿を巻き込む真里。
「逃がさないよ」
 無数の何者かの手が、鹿の体を絡め取る。好機。
 小紅とウィズレーの攻撃が、その胴体に炸裂する。
「はっ……行かせるものか」
 小紅がさっとその胴体に切り込み、ウィズレーが突き刺す。
「まだまだです」
 二人に答えるように、また、無数の手が絡めとった。
「うん、ここで終わらせよう」
 動くこともできずに、鹿はただただ攻撃に身をすくませるのみ。そして、それに攻撃を止める理由など、どこにもなかった。
 そして此方と言えば。
 飛び出したのはアッシュだ。後ろから駆け抜けてきて、壁となる。すでにそこにはヤナギが影を凝縮した棒手裏剣を突き刺していた。
「相手は、飛び道具を持っちゃいねェし……こっちも飛び道具を使いてェが、そればっかりに頼ってると包囲を抜けられるからな」
 とはいえ、臨機応変に使い所だ、と不敵に笑う。
 その笑いに反応したわけではなかろうが、鹿が大きくその角を振った。後ろに回ろうとしたヤナギを行かせまいとその角を突き刺す。
「……っ?!」
 アッシュがさっと動いた。
「よそ見しちゃ、嫌だよ?」
 くすくす笑いながらその中に割り込む。扇でとっさにその体を守るが、流石に態勢は崩す。
「さ、いまのうちに行っちゃって☆」
 ユウの矢がその角に当たった! アッシュに攻撃しようとしていたそれは、その攻撃に大きく後ろに態勢を崩した。勿論そんな大きな隙を見逃すヤナギではない。
「よし、行くぜ」
 そのまま後ろに回り込む! 
 二人の連携プレイは何も言わなくても統率がとれていた。懐かしい記憶はあるが、それがなんなのか分からない。
 アッシュとヤナギ、ユウ三人が頷く。
「一気に、いっちゃお?」
 くすくすとアッシュが笑った。
 そんな三班を補助するのは遊撃に回った歌音だ。少しでも逃げようというそぶりをすれば、アサルトライフルAL54から射撃が行われる。
「『肉体の断罪と魂の救済を求める。あるべき場所へ還れ』」
 闇を持って闇を祓う。そんな処刑人のごとく、冥界の力を込める。黒霧がその武器から溢れ出た。
 足元を狙われれば、慌てて後退やそれを避けなければならない。必然と攻撃を加えてくる三班の方にと行くしかなかった。
「さぁ、終わりだ」
 頃合いを見計らい、皆が一斉に攻撃する。
 それは、信頼から成せることだっただろう。
 三頭、全てが地面に倒れ伏したのだった。
 
 そして、怪我人の手当てが終わった後、二人が興奮した表情で先ほどの戦いの在り様を皆に伝え、僕たちもせんぱいたちみたいになる! と元気よく宣言した。
 きっと、もう少したったら彼ら二人も戦闘に参加できるだろう。
 彼らは皆の戦いを通して、仲間との信頼関係を、そして攻撃の仕方を学んだようだった。
 皆の思いは伝わったのだろう。

●青い鳥を探してみよう
 さぁ、今度は青い鳥探しである。青い鳥というとルリビタキが有名だろうか。コルリ辺りも見られるかもしれない。
「青い鳥は実在する。オオルリ、カワセミ、ブッポウソウ等が該当するぞ。ちなみに、 アオバズクは青じゃないし、コバルトスズメは雀じゃない」
 歌音曰くらしいです。なんでそんなややっこしい名前をつけたんだろうね?
 そのまま持っていた双眼鏡でじっと見てみる。
(無理に羽根をとるわけにはいかない。落ちてたらラッキー程度にだ)
 自然を大事にしないといけないですからね!
 掌に明りを灯し餌になりそうな木の実がなっている場所を探しながら、真里が二人にと話しかける。木の実が落ち込んだ暗い窪みなんかにも、鳥の羽根はあるかもしれない。
「二人は幼馴染なんだよね? 仲良しで良いね」
 二人はそれに笑って頷いた。
「見つけられたら二人は何かお願いをするのかな」
 顔を見合わせ、にこっと笑った。それは、まだ内緒なのだそうだ。
(小鳥は高い音が隙って聞いたことがあった気がする……口笛、吹いたら来ないかな?)
 吹き始めたが、ちょっと音程が外れているのは愛嬌である。
 幸不幸は自分次第だと思う。けれども……探してみるは悪くない、と春夜が歩く。
 山を歩くは眠くならないし、嫌いではないから苦でなかった。
(お騒がせな子供達を優先するとして、他に見つけることが出来たら、真っ先に思い浮かぶ人に渡したい)
 思い浮かんだのは、恋人役を務め、言い寄ってきた男を問答無用で蹴り飛ばした人だ。
 この思いは繋がっているのか、そう思いながら飛んでいたユリアにと声をかける。
「見つかったか?」
「ううん〜見つからないなぁ……」
 特に双眼鏡とか持っていないため、裸眼で探すことになる。石のような質感の、闇夜の如き黒い翼が背中から生えており、動きにあわせて揺れた。
 空を飛んでいるため広範囲は見渡せるが……なかなか見つからない。
「青い鳥かー。さてはて、果たして見つかるかな?」
 少しだけ、不安がよぎる。けれど、見つかればいいと思う。
「せっかくだしね?」
 その近くでは、イヴァに乗ったアッシュが飛んでいた。
「こっちにもないなみたいだよ」
 イヴァの首元の毛には茶色が交じり、滑々した肌触りのお腹に太陽のように見える模様が浮んでいる。とても愛らしい。
 くすくす笑い、そっとその首筋を撫でる。驚かせないように静かに飛んでは居るが、小鳥達は空を飛ぶ人達にちょっとびっくりしているかもしれない。
 その代わり、大きな鳥達は、なにしてるのー? と二人の元へと飛んできた。
「きぃやん、一緒に探そうぜ!」
 借り受けた双眼鏡を手に、にかっと笑う。木に登った方がいいかと思いながら、二人を見つめる。
「なぁ、お前何お願いしたいんだ?」
 それは、青い鳥をみつけてから! そう笑うきぃやんにそれもそうかと頷く。
「俺はお前等が強くなる事を願うよ。強くなれば大事な友達を護れる。そしたら、この先もずっと一緒、だろ?」
 ありがとう、と二人が微笑む。そんな二人をみて、兆晴も笑う。
「よっし! 木に登ってみようか!」
 木登りは得意である。
 ウィズレーもお手伝いできれば……と再び生命探知を試みる。
 けれど、やはり大雑把にしか捉えられない。仕方がない……でも、希望は忘れない。
「きっと、見つかりますね」
 その頃、ユウとヤナギは二人タッグを組んでいた。
「見付かるといいな〜v うぅん、絶対に見付けちゃうんだカラ♪」
 ぐっと拳を握ったユウに微笑み、ヤナギも一緒になって探す。感知まで使って本気のユウと羽根だけでも見つかれば、と地面を中心に探すヤナギ。
 上と下、ばっちりである。
「こっちにはねぇな」
「うーん、こっちもだーでも、皆で幸せになりたいもんねっ! がんばろ!」
 二人、またあっちこっちを見て回る。そんな中、一人静かに探している小紅。
 フンが多く落ちている場所には鳥が好む食べ物が多いはず。そうしたらそこに羽根があるだろう。
 また、鳥が移動しやすいルートがあると聞いたことがあった。それに気が付ければ、遭遇する確率はどんっと上がるだろう。
 暫くのち、小紅の瞳が何かを捉えた。その瞳に、喜びが広がる。
「あちらだ」
 その言葉に、全員の瞳が青い鳥たちを見る。
(どうか、二人の未来が幸せでありますように)
(青い鳥、本当にこんなにいたんだ……)
 まるで、青い鳥達は、鹿達を倒してくれてありがとうとでもいうように少しの間木々に止まったりあちらこちらと動きながらチチチチチと鳴く。
 目を楽しませてくれ、そして願い事もゆっくりとすることが出来た。
 そして……暫くのち、去っていった場所には。
「あ、青い羽根……」
 欲しいと言った人数よりちょっと多めにそれはあった。
 これなら大切な人への贈り物にもなるだろう。
 それぞれ手に取り、微笑む。
 ふわりとそれは温もりを放つようで……お守りは、きっと皆の幸せを叶えてくれるだろう。
 そんな気持ちになる。
「これで、きっと妹も早く退院できるよ!」
 病気で入院している妹が早く退院できるようにと願いを込めたきぃやんが笑う。
 そんなきぃやんの妹に、お守りを渡したかったなっちん。
 二人の願いが叶うどうかは、まだ少し先の話し……。
「ありがとうございました!」
 その言葉が、青い空の下、響き渡った。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

Eternal Flame・
ヤナギ・エリューナク(ja0006)

大学部7年2組 男 鬼道忍軍
繋いだ手にぬくもりを・
凪澤 小紅(ja0266)

大学部4年6組 女 阿修羅
ドクタークロウ・
鴉乃宮 歌音(ja0427)

卒業 男 インフィルトレイター
真ごころを君に・
桜木 真里(ja5827)

卒業 男 ダアト
淡き花は幻夜に微笑む・
小柴 春夜(ja7470)

大学部5年235組 男 ディバインナイト
カレーパンマイスター・
ユリア(jb2624)

大学部5年165組 女 ナイトウォーカー
セーレの友だち・
ウィズレー・ブルー(jb2685)

大学部8年7組 女 アストラルヴァンガード
優しさを知る者・
アッシュ・スードニム(jb3145)

大学部2年287組 女 バハムートテイマー
青い鳥の仲間・
蜘蛛霧 兆晴(jb5298)

大学部7年286組 男 阿修羅
天衣無縫・
ユウ・ターナー(jb5471)

高等部2年25組 女 ナイトウォーカー