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マスター:如月修羅
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:24人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2017/03/25


みんなの思い出



オープニング

 風が吹けば肌寒いけれど、日差しをたっぷり浴びた野原はねっ転がったら気持ちよさそう……。
 オオイヌノフグリやところどころにフキノトウも咲いている。
 とはいえまだ春本番というわけではないから、ねっ転がるならシートでも敷いたほうがよさそうか。
 そんな場所は、猫の楽園だった。
 地域猫として管理されてるらしいその猫たちは、とても毛づやがよく人慣れもしていた。
 ところどころでお弁当を広げている人たちにご飯を強請ってる猫もいれば、猫じゃらしで一緒に遊んでる猫も。
 人間の間に納まって一緒に寝ている猫もいた。
「うにゃ〜〜」
 そんな場所のうわさを聞きつけてやってきた撃退士たちは、日頃の疲れをいやすために、万全の準備をしていた。
 今日は、何もかも忘れて、ただただ猫をもふりたい。

 この野原で猫と戯れる注意事項は3点だけ。
1・ごみは持ち帰る
2・猫に危害を加えない
3・猫をもふりに来てる人たちと喧嘩しない

 これを守ったら思う存分猫と戯れるのだ!!
「ねぇねぇ、一緒に遊ばない?」
 そういって足元に居る白猫を口説いてみる。
 すりっと頭を摺り寄せてくれたらOKの合図かも?
 さぁ、思う存分もふりたおすぞ!!!!!


リプレイ本文

 そこは猫の楽園だった。
 あちらこちらで猫達が好きなように遊んだり眠ったり、ご飯を食べたりしている。
 また1人。
 やってきた人影に気が付いた猫達が、いらっしゃいというようににゃぁんと鳴いて猫の楽園へと招き入れる……。

●いっぱいいっぱいもふもふを!
「さいきょーのあたいがもふもふするんだからいっぱいいないとね!」
 どどーんといっぱいのもふもふではなく猫たっぷりの草原を前に雪室 チルル(ja0220)は腕組みをして立っていた。
 やはり最強たるもの、もふもふするためにはこだわりがなくてはならないだろう。
 自分にふさわしい猫を見つけるためにとりだしたるは、マタタビだった。
 体中に装備したマタタビに惹かれたのか、猫たちが我先にとやってくる。
 だが、チルルは冷静にやってきた猫達を検分していく。
 なぜなら最強のもふもふを探さねばならないのだから!! 
 もっともふさわしいもふもふから選考漏れしてしまった猫たちにはお祈りと共にカリカリを。
 満足げに散らばって行く猫たちの中で、一番もっふりとした極上の猫がチルルの元にと残った。
 白毛が美しい毛長の猫。
 ちらりと流し眼をしてくるその瞳はチルルと同じ、美しい青。
 差しのべた手にすりっと体を寄せてきた猫を、驚かせないようにそっと抱き上げる。
「あんたに決めたわ!!」
 チルルの暖かな腕に抱かれ、もふもふされるのを気持ちよさそうに猫が喉を鳴らす。
 ふわふわでさらさらの白い毛に瞳を細め、チルルはもふもふを楽しんでいく。
 


 小田切ルビィ(ja0841)は目の前に広がる光景に、瞳を瞬いた。
「……スッゲー、猫天国かよ。こンだけ居りゃあ、被写体には事欠かねェぜ!」
 感嘆の声をあげつつあちらこちらとまずは散策。
 今回の目的は校内新聞の特集記事として猫写真を撮りまくることにある。
 あわよくば、猫写真集の発行ももくろんでいるのだが、まずはとにかく猫を撮らなければならない。
 猫じゃらしにじゃれつく茶色の美しい猫が、にゃぁんと鳴いていて。
 お菓子を献上すれば、満足げに口元を舐める猫。
「よーし、よし。美人だなぁ、可愛いなぁ、最高の一枚を撮ってやるからな」
 女性モデルを口説くかのようなその台詞に、彼女もまんざらでないようで。
 とても綺麗な一枚が撮れたのだった。
 お礼も兼ねて、もふもふと撫でながら囁く。
「ゴメンな?本当は飼ってやりてえんだが……撃退士ってのは何があるかわからねェからよ」
 うにゃぁ? と見上げてくる猫に微笑んで。
「命張らなくても済む位に平和になったら、また会おうぜ」
 にゃぁん!! と嬉しそうに鳴くこの子と、また会える日はいつになるだろうか。
 そんなに遠い未来ではないだろうと、ルビィは再びカメラを手に歩きだすのだった。


 陽波 透次(ja0280)は木にその身を預けながら、ぼんやりと木々の間から空をみあげ……。
 みゃぁ。
 投げ出されていた手に寄ってきた猫へと視線を落とす。
 茶色と白のぶち猫は、透次の指先が気に入ったらしい。
 ふすふすと鼻を鳴らしながら指にじゃれついてはかるくがじがじしている。
 痛いよ、って微笑みながら首筋を撫で上げれば、うにゃぁと嬉しそうな声が上がる。
(こんな風にのんびりするのも久しぶりか……)
 生き急ぐように今まで全力で駆け抜けてきた、それに、のんびりする時間があれば鍛錬から勉強……そして依頼。
 そうやって日々過ごしてきていて。
 成したい夢のためだ、それも苦ではないけれど。
 ぬくぬくな温もりに餌をあげつつ瞳を細める。
(けど、こうやってゆっくりしてみると……)
 体に力が入らない、疲れているみたいなのに気が付く。
 疲れがたまってるのかな、と思うのと同時にざりざりという掌を舐める猫の頭を撫でてやる。
 ゆっくりと撫でていた指先が、やがてぽとりと猫の脇へ。
 みゃぁ、と鳴くのにうん……と生返事。
 眠りに落ちた透次の膝の上で、ご飯を食べ終えたぶち猫もふぁぁと大あくびをして一緒に眠りに入って行く。



(もう、死んでも良い……)
 じぃんと感動を胸に、雫(ja1894)は目の前に広がる天国に瞳を細めた。
 どこを見ても猫だ、猫がいる。
 そっと正座をした彼女の足元に、仔猫がなぁに、なぁに? とやってきてふんふんと匂いを嗅ぎ始めた。
 怖い存在じゃないと分かったのだろう、よじよじと上がってきた仔猫を、膝の上で恐る恐る震える指先で撫でてみる。
 みゃーっと鳴く仔猫は喜んでいるようで、雫の指先に思う存分じゃれついていた。
「はぁ〜、可愛い……家で飼ってあげたいな〜」
 何度もはぁと熱が籠った吐息を零しつつ、雫は飲み物の方に興味を示した仔猫から、飲み物を遠ざける。
 何時間みてもこの愛らしい仔猫を見ていて飽きない。
 うみゃぁんと抗議の声をあげる仔猫をみる眼差しはいつもと違い柔和で年相応だった。
 次なる仔猫の獲物はどうやら雫が持つ食べ物。
 でもこれを仔猫が食べても良いものか……。
「欲しいんですか?」
 そろそろ仔猫もお腹が空いたのだろう。
「少し待ってて下さいね。貴方に食べさせても良いか訪ねてみますから」
 うみゃー! どうやら仔猫は待つよ! と言ってるようで。
 さぁ、誰に話を聞こうかと表情を引き締める雫がいたのだった。


 佐藤 としお(ja2489)はのんびりと空を見上げて、心の底から呟く。
「あぁ、良い天気だなぁ」
 日差しが眩しいけれど、瞳を細めながらとしおはとにかくじっとしていた。
 出来うる限り動かないのは猫に怖がられないようにするため。
 そのおかげか、なんだなんだ? と猫たちがとしおのもとへだんだん終結しはじめていた。
 猫は触ろうとすれば逃げるけれど、動かずにじっとしていれば好奇心旺盛で向こうから寄って来てくれるのだ!!
「……凄いな……」
 としおの読みはあたっていて、猫山がどんどん形成されていく。
 猫と楽しむのなら動かないでいるのが一番なのではなかろうか。
 暖かな温もりにうとうとしてくる。
 このまま猫と一緒に眠るのもいいだろう。
 うにゃーんと鳴く猫の声をききながら、としおは瞳をゆっくりと閉じていく……。


 もふる、もふるとき、もふれば、もふれ……。
 それはとても見事な四段活用であった。
 Rehni Nam(ja5283)はもふらないという未然形は存在しないとばかりに猫達を見つめる。
 その視線は、先日も大量の猫成分を補充したばかりだというのに物足りない、もっともふらねば! という意志に満ちていて。
 大量の猫成分を補充した反動なのか、2〜3日お猫様に触れられないと言うだけで欠乏症がでそうなのだ!
 Rehniが取り出したのは猫じゃらし。
 よく遊びに来ていた半野良の子も数日遊びに来てくれていないし、かといって寮で勝手に猫を飼うわけにもいかない。
 かといって引越しするのもとそんな葛藤があったから、ここぞとばかりに猫じゃらしに寄ってきたお猫様と戯れることに。
 てしてしととあちらこちらと動きまわる猫じゃらしに、猫も一緒に動きまわる。
 動きが鈍くなった瞬間を狙い、Rehniはもふらせてください! とお願いすれば猫は喜んで膝の上に。
「お腹に顔埋めてもいいですか?」
 思う存分もふった後のお伺いに、いいのよ。というようにちらりと視線を寄こすお猫様。
 もっふりと顔をうずめた後は、煮干しを掌にのっけてお腹を満たしてもらうのだった。


(猫の楽園に、我降り立つ!)
 なんちゃって、と黄昏ひりょ(jb3452)は猫達を前に笑みを浮かべた。
 慌ただしい日々の中に求めた癒しの時間。
 暖かな格好に身を包んでビニールシートを敷いた上に寝っ転がっていれば、猫達もやってきていた。
 彼に触れる暖かな温もりは猫のもの。
(あぁ、猫肌が、猫肌が……)
 しっとりとした温もりは、猫特有のものだろうか。
 恍惚の表情を浮かべたひりょの元に、また一匹。
 暫し共に眠るのだった。
 眠りから覚めれば、他の皆と一緒に猫と遊ぶことに。
 猫の方も相手を見ているから、勿論本気で猫じゃらしをあちらこちらと動かせば、猫も一緒になってぴょんぴょんと。
(あぁ、至福……!)
 感動に震えるひりょを、きょとんと猫達が見上げている。
 その中の一匹。
 寝ている時に一番最後にやってきた若い雌白猫と視線が合う。
 自然とひりょは話しかけていた。
「良かったら……うちに来るかい? 大歓迎だよ」
 先住民の猫二匹も家族が増えれば喜ぶだろう。
 伸ばした腕に、白猫が寄ってくる。
 にゃぁんと鳴いた白猫はひりょの腕の中にまるで前からいたのよというように、収まってくれるのだった。
「これからよろしくね」


 レティシア・シャンテヒルト(jb6767)はのんびりと春を探していた。
 雪解けと共に芽吹く春の花。
 青いオオイヌノフグリが絨毯のように目の前に広がっていて。
 時々喧嘩をしたのだろうか、怪我をしていた猫達には柔らかなアウルの風を吹かせて癒してあげる。
 そんなレティシアの目の前を黄色い蝶々を追いかけトラ模様の仔猫がオオイヌノフグリの上をとことこ駆けて行った。
 好奇心旺盛な仔猫を追いかけ、レティシアもまるでカルガモの雛のように、後ろをついていけば、気分は仔猫のお母さん。
 だからそっと、車道に出そうな仔猫を野原に戻し、食べたらお腹を壊しそうな植物から守る。
「おねむでしょうか?」
 レテシィアの陰ながらの支援に気が付いていたのか。
 にゃぁんと鳴いて足元へやってくる眠そうな仔猫へアウルを練り上げて花籠を作ってあげる。
 帽子の上へ、おやすみなさいと仔猫をのせれば、すやすやととても気持ちよさそうに夢の中。
 レテシィアが小さなゴミまで丁寧に清掃を終えた頃に仔猫が目を覚まし、にゃぁっとレティシアを見上げる。
「……一緒にきますか?」
 にゃぁん!! と鳴いた仔猫は、連れて帰って! とおねだりしているようだった。


 水無瀬 文歌(jb7507)はアイドルだ。
 普段とても忙しく、皆に癒しを与えている分、自分だってたまには癒されたい。
 というわけで、今日はお仕事とか忘れて、猫をたくさんモフりた〜い☆ とここにやってきたのだ。
 文歌は警戒されぬように、猫耳ニット帽を被り、警戒されないようにまずは挨拶をしようとん? お仲間? と寄ってきた猫と目線をあわせるのは難しいけれど、屈んで猫と向かい合う。
「始めまして、今日は宜しくね」
 挨拶し、さらに猫が怖がることもせず真摯に距離を縮めてくれる文歌に、猫たちの警戒も溶けたのだろう。
 じぃっとお姉さん、遊んでくれるの? という好奇心に満ちた瞳を向けてくる。
 そっと伸ばした指先は、ふわっと毛に埋もれても拒まれることはなかった。
 仲良くなった猫たちの背中を撫で撫でしたり、お腹ももふもふさせてもらう。
 背中の毛よりも柔らかい毛を堪能する頃には沢山の猫達がよってきていて。
 猫まみれになりつつ、ふと思い出すのは最愛の人。
「そういえば、私の旦那さまも猫っぽいね〜」
 そんな猫たちに囲まれて日向ぼっこをしつつこの中にも旦那様に似た子はいるのかな? と微笑むのだった。


 藍那湊(jc0170)はあまり猫に触れたことがなかった。
 だから、近くでみているだけでも幸せなのだけれど……と思いつつ、でも折角だし撫でたりもしたいとレジャーシートを敷いて日向ぼっこをしながら猫達と戯れることに。
 なんかくれるのー? と湊の動きに気が付いたのだろう猫達がぴんと耳をたてて湊の方へ視線を向ける。
 おそるおそる差し出した減塩鰹節に、猫達がわぁ! と寄ってきた。
「わ、食べた……っかわいいー……」
 もぐもぐと食べる猫達を見守っていれば、一瞬ぶわっと風が吹く。
「ふわっ!? わわ……っ」
 必然的に鰹節がぶわっと舞いあがり、それは湊の背中や髪や膝の上にかかり、それに猫達が膝の上といわず全身にたかってきた。
 耳や首筋をざらざらと舐め上げる猫達にくすぐったいよと笑みを浮かべつつ撫でてやれば、猫達はヒートアップしてしまったようで。
 体勢を崩した湊の揺れるアホ毛が猫じゃらしに見えたらしい。
 てしてしと遊び始める様子に、暫し猫じゃらしとして献上しようと湊はそっとそのままに。
 でもスマホで写真は撮っておこう。
 猫が大好きな恋人へ送信して……。
(今度は彼女と一緒に来よう♪)
 きっと素敵な笑顔が見れるだろう。


 暖かな日差しの下、ブルーシートにぐてーんと寝そべり上野定吉(jc1230)は瞳を細めていた。
「沢山の猫じゃのう……」
 こんなに暖かで気持ちよければ気も緩むと言うもの。
 ぽやーんと見詰める定吉の近くには噂どおりの沢山の猫達。
 それぞれ楽しそうに日向ぼっことかしているのだが、だがしかし、定吉の元へはやってきてくれない。
 それは自分が熊だからだろうか。
 熊、確かに警戒するのも無理がないかもしれない。
 いやいや、そんなことは……とちらり、と視線をやるけれど、さっと逸らされる瞳。
 ぶわっと泣きそうになりながら、しょうがないので起き上り持って来ていた鮭むすび(無塩)を手にとる。
 無塩を選んだのは猫のため。
 一緒に食べようともってきたそれを、一緒に食べることができないのか……としょぼんとしつつも口に運ぼうとすれば、猫達が、鮭?! と物欲しそうに見詰めている。
「どうじゃ?」
 食べやすい大きさにちぎってほうってやれば、猫達がよってきて。
 ぱぁぁっと先までの涙もなんのその、よってきた猫達に笑顔になる。
 猫じゃらしで遊んで、あとは日向ぼっこしながら土筆もお土産に摘んで帰ろうかと思いを巡らすのだった。

●君と一緒にもふもふを!
 優美でしなやかな強さ、気高さ、……憧れる。
 そんな風に猫達をみていた先で ケイ・リヒャルト(ja0004)の目に入ったのは鈴木悠司(ja0226)だった。
「あら、悠司!」
「……? …ケイさん?」
 何も変わることない日々、だからこそ焦りを覚える日々……そんな思いを抱えてやってきた猫の楽園で、久方ぶり会ったその人に、悠司は瞳を一瞬見開く。
「随分と楽しそうに……猫……か……」
 彼女の楽しげな様子にそう言えば、ケイはその言葉に首を僅かに傾げる。
(猫。紛れもなく素顔を晒す。仮面なんて被らない)
 自分はそんなに楽しそうに見えたのだろうか、と。
そしてそんな彼女を見ながら無邪気にみえる、見えるだけ、というのも知っていると悠司は思う。
 そして、同じように悠人を見詰めるケイもまた思う。
 彼は、本当は。
(本当は弱くて脆い……だからこそ仮面を被って生きる)
 今の悠司はあたしに似ている、と。
(でも……仮面なんか被らずに、ただ、泣いているのかもしれない)
 暫し静かな時間が流れた後、悠司が唇を開いて戯れる猫達をみながらぽつりと呟く。
「猫の世界も弱肉強食なんだろうね」
「弱肉強食…そうかもしれない」
 けれど、とケイが言葉を紡ぐ。
「動物にはそこに『意味』があるわ……。無駄なことは何もないと、在るのは嘘偽り無い世界。打算も計算も在り得ないのよ」
「ケイさんは動物好き……だよね」
 瞳を細めて、ケイを見る悠司。
 何処が良いのだろう。と、思う。
 動物と言う意味では人間も含まれるかもしれない。
(……そう。悪魔も天使も……)
「ケイさんはさ、如何して戦ってるの?」
 ふ、と視線をあげてケイを見つめる。
 強がる強さ。彼女は何時も泣いているようだと何故か想う。
 今、目にする彼女もまた。でも、と思うのだ。
(だけれども何かを持っている。強さを持っている。力を持っている)
「戦う理由……人間……天使も悪魔も……ならでは、ね」
 言葉を探しているのか、思いを探しているのか。
 そういうケイは、それでも悠司から視線をそらさない。
「あたしは己の限界を超える為に」
 そうか、と悠司は頷く。
「悠司は何の為に戦うの……?」
 それに悠司が瞳を細める。
「俺が戦うのは力が欲しいから」
 その力を得た先に、何が在るかは……分からなくて良いと悠司は思うのだった。



「恋音、今日は思う存分猫さん達と戯れましょう!!」
 というわけで、月乃宮 恋音(jb1221)はバスケットに入れたサンドイッチを手に、恋人である袋井 雅人(jb1469)と共に猫達の楽園へピクニックデートをしにやってきた。
「どこがいいですかねぇ?」
 問いかける恋音の隣で、パトロール帰りの雅人は猫が多そうな方へ恋音を誘う。
 見聞を広めてもらうために一緒に来てもらった黒猫も、にゃぁんと鳴いて、そちらを見る。
「こっちはどうでしょう?」
 とはいえ、雅人の恰好が恰好なため、猫達は近づかれた先からたたた! と逃げてしまうのだが。
 マタタビ酒を飲んでマタタビの匂いをさせていても、もうちょっと慣れてくれるまで時間がかかってしまうかもしれない。
 そうして、人が少ない場所を見つけ、恋音は雅人と猫のためにつくってきたローストビーフや卵や人と猫用に作ってきた鶏の胸肉の煮込み(人参とジャガイモは食べやすいように微塵切りだ)を取り出した。
「美味しそうですね」
 きらきらと瞳を輝かせる雅人に、恋音が微笑みを浮かべる。
 慈愛に満ちたその瞳に雅人も笑みをうかべ、手に取ったサンドイッチを美味しそうに頬張った……。
 ところで、うにゃぁん! と彼のほぼ裸の背中に猫が駆け昇っていく!!
「?!」
 恋音が驚いて瞳を瞬かせる中、雅人の声なき悲鳴が響き渡る。
 どうやら恋音のつくったご飯が美味しそうだったため、それを頬張ろうとした雅人に狙いを定めたものらしい。
 そんな中、恋音からご飯を貰って満足そうな黒猫は、雅人をみてにゃぁんと鳴きつつ、他の猫達にもどう? と問いかけているようで。
 ようやく猫達から解放された雅人は、のんびりと猫達にご飯をあげて微笑んでいる恋音をみて、瞳を細めるのだった。


 夏雄(ja0559)とユリア・スズノミヤ(ja9826)はフキノトウを一緒に採りに来ていた。
「おー、フキノトウ取りに来てみれば、猫が沢山いるね」
「やっほぃ、にゃんこ達ー☆」
 ならばここは初志貫徹と夏雄がきりっと表情を改める隣で、ユリアは茣蓙を敷いていた。
 ん? という表情の夏雄にここを拠点にしよう! と宣言を。
 さてはて、そうして2人はフキノトウ採りへと赴く。
「一緒にふきのとう探そう! その嗅覚で我らを導けーぃ!」
 ユリアと共にあちらこちらと猫達が走りまわっているものの、フキノトウの場所を目指しているというよりは走り込んだ先にフキノトウがあるという感じか。
(天ぷら……煮物……味噌……)
 綺麗に摘み取りながら、じゅるりとよだれが毀れ落ちそうになるのはしょうがない。
 そんな彼女とは逆に、夏雄は猫達を自由にさせていた。
 危険がないことを確認しつつ、ぽちぽちと鋏でフキノトウをとっては袋の中へ。
 黙々とやっていっている彼女に、ユリアのよく見つけたー! という声が届く。
「時にユリア君」
「なぁにー?!」 
「フキノトウは根ごと掘ると厄介だから、鋏を使った方がいいよ」
 えぇー?! と声をあげるのにふっと視線をあげて動きを止めれば、肩や膝にわらわらと猫がよってくる。
 フリーズする夏雄をみつけて、ユリアがふっと微笑む。
(……置物みたい)
 置物のようにじっとしてぬっくぬくな彼らを尊重して自由にさせていたけれど、夏雄が辺りを見渡せば猫だらけだった。
 さて、籠も袋の中身もいっぱい、夜ごはんのおかずも手に入ったと2人は意識を改めて猫の方へ。
「これだけいるならオスの三毛猫も」
 流石にいないようだとしょんぼりな夏雄の隣で、ユリアが猫に視線を落とす。
「灰色の猫とサバトラの白猫ならいるよ」
 どどーんと差し出された猫達。
「てるてる取ってこーぃ!」
 ユリアは容赦なく、親友のフードの中へボールをぶんなげる。
 んん?! と悲鳴をあげる夏雄。
「ささ、どらちゃんはこっちを!」
 お次は猫じゃらし。
 夏雄も負けじと猫と遊んで、そして。
「さて、猫を堪能した後は春の味覚を堪能だ。名残惜しいが帰……」
「ふふふ、めっちゃ籠に採取した感が……って」
 2人が帰ろうとそれぞれの袋と籠を持ちあげれば思った以上に重い。
「なんか重い?」
「にゃんこ達かーっ!?」
 うにゃぁぁんと猫達が2人を見上げるのに2人で顔を見合わせて微笑むのだった。


 浪風 悠人(ja3452)は久々にゆっくり時間をとれたからと浪風 威鈴(ja8371)を誘ってピクニックへとやってきていた。
 暖かな日差しにもうすぐ春だなと瞳を細める悠人の隣で威鈴は久しぶりの2人の時間にわくわくが止まらない。
「あった……かい……な」
「ふふ、そうだね」
 悠人も微笑み、シートを敷いてお弁当タイムだ。
 美味しいと頬張る嫁の姿に笑みを浮かべ、悠人も一口。
 暖かな日差しと、愛する嫁の姿、そして楽しそうな猫達……こんなにのんびりした時間を過ごすのはいつぶりだろうか。
「わぁ……♪ 花……綺麗……」
 のんびりと辺りを見渡していた威鈴は、白い花に目をやり微笑む。
 そんな彼女の頭をゆっくりと撫でてやりつつ、そういえば食べれる野草はあるのだろうか、なんて考えてみたりして。
 フキノトウやちょっと気の早い土筆なんかもあるかもしれない。
 のんびりと食べたり、寝そべったり、微笑みあったり。
 そんな時間穏やかに過ごす2人の元へ、警戒心を解いた猫もやってきて。
「猫……だぁ……」
 おいでおいで、と寝そべって手招く威鈴の元へ、続々と猫がやってくる。
「いっぱい……きたぁ……」
 ね? と悠人を見上げれば、悠人も微笑みながら頷く。
 わらわら寄ってくる猫達に、ウィンナーを小さく切ってやり皿にのせてやれば、すぐに猫達が美味しそうに食べ始めて。
「美味しい?」
 体を伏せて同じ目線になるようにして微笑む悠人に、茶色と黒のぶち猫がにゃぁんと鳴く。
 そっと手を伸ばしておびえることなくふんふん鼻を鳴らす猫の頭をなでてやり……顎をかいてやる。
 そんな彼らの隣では、お弁当に狙いを定めてちょっかいをだす猫に慌ててだめだよ! と威鈴が一匹よせてはもう一匹よせて……を繰り返していた。
 それもひと段落した頃、うにゃうにゃと幸せそうな茶色と黒のぶち猫が悠人の足の上にのってきて。
 どうやら悠人と威鈴の2人を気に入ったようだ。
 左手で猫を撫でつつ、抱き寄せた威鈴の髪の毛をゆっくりと撫でる悠人。
「ん……」
 嬉しそうに笑みを浮かべた愛おしい妻。
 その様子はわんこっぽいなと思いつつ、左手の猫もまたいい。
「ねぇ、この子……家に一緒に帰ろうか」
「……うん……」
 飼えるなら、と頷く威鈴に、決まりだね、って悠人が微笑んだ。



 蓮城 真緋呂(jb6120)は魔法瓶にいれたカフェオレを一口飲みつつ、辺りを見渡していた。
 勿論その手には既にサンドイッチが握られていて、もぐもぐと美味しく食べるのは忘れていない。
「あ、あの子すごくもふもふ……!」
 そう言って見詰めた先にはグレーの長毛の猫が。
 真緋呂が猫と距離を縮める様子を、大食いの彼女為に作ってきた重箱片手に樒 和紗(jb6970)が瞳を笑みの形に細めて見守っていた。
 そろり、そろりと縮まる距離が微笑ましい。
「ふふ、手触り良い……♪」
 ロックオンした猫が無事、真緋呂に興味を示してくれたようで。
 撫で撫でもふもふと隣に座ってくれたその猫を思う存分もふる彼女の隣で、和紗も集まって来ていた猫達にねこじゃらしで遊び始める。
 あっちへぴょん、こっちへぴょんっと飛び跳ねるように猫達はねこじゃらしで思う存分遊んでくれて。
「貫禄というか、どーんと動じない雰囲気がいいわね」
 どしーんと座ったまま撫でられている猫に真緋呂が笑いながらそう言い、ふふっと和紗も微笑む。
「サンドイッチだけでは足りないでしょう?」
 重箱をあけてやれば、猫達もなになに? とよってきて。
 そちらには猫缶を。
「慌てずに食べていいですよ」
 わっと嬉しそうによってくる猫と、 満足そうに頬張る真緋呂の様子を愛でていれば、ふと目に入ったのは遠巻きに此方をみていた仔猫。
「和紗さん、何見てるの?」
 突然動きがとまった和紗に首を傾げた真緋呂も、その仔猫に気が付いた。
 青い瞳の黒い仔猫。
「……なんだかに兄様みたいな子」
 誰かに似ているなぁとみていた和紗がくすりと微笑む。
「やはりそう思いましたか」
 おいで、とその子を呼べばいそいそと仔猫がやってくる。
 膝の上にのった仔猫を撫でたりしてやっていれば、やがてうっとりと仔猫が眠りはじめてしまった。
「あら、寝ちゃった」
 微笑を浮かべた真緋呂は、そっと仔猫を見守る和紗をみて独断で飼っていいかと決められるものでもないし……と独りごちる。
「……お店のママに聞かないと勝手には飼えませんから」
 和紗もそれに同意するのに、私も依頼で留守にすることも多いしなぁ……と唸る。
 決めるのは和紗さんだよ、と言う真緋呂に、しばし瞳を眠る仔猫に落としていた和紗が唇を開く。
「聞いてみて良いと言われたら、迎えに来ましょう」
 一緒に家に帰る未来は、遠くないかもしれない。


 この猫の楽園へ来る前に、礼野 智美(ja3600)は姉の部屋から出てきた礼野 明日夢(jb5590)と会話していたことを思い出していた。
 神谷 愛莉(jb5345)がインフルエンザでダウンしている間に、猫と戯れなかったのがよほどつらかったのか、野原猫をもふりにいきたいの〜! と主張していたのだという。
『構いに行くの。アシュも一緒に行くですの』
 腕を掴まれそういわれて、明日夢は明日行こうねと返事したというのだが。
『ついて行こうか?』
 明日夢の話を聞き終えて、お弁当と膝掛けだけというのも心もとないと智美を同行することになって……。
 やってきた猫の楽園、もっふもふが沢山だった。
 もふもふ禁断症状が出てきそうな所での完治した愛莉は、その光景に瞳をきらきらさせていた。
 それにしても、依頼で普段忙しい、智美がくるとはと愛莉は思う。
「智美さん依頼今日ないんですの?」
 戦ってばかりいると癒しが必要なんだなと思う。
 早朝に作ったお弁当をブルーシートの上に広げていた智美はある意味これが依頼かなと微笑む。
 ちなみにお弁当の中身は梅干しに鮭に、猫用に醤油がけしたおかかの混ぜ込みだ。
 猫と遊んでお腹がすいたら、きっとお腹を満たしてくれるに違いない。
 そうなのかと納得して、さっそく近寄ってくれた白と黒のぶち猫の肉球をぷにぷにしまくる愛莉。
 そんな彼女の隣で、明日夢が不思議そうな表情を浮かべる。
 普段の愛莉なら猫を追っかけまわしている頃だ。
 そうしないのはやはり病み上がりだからか……。
 とにもかくも、智美が作ったお弁当を一緒にたべて、ぷにぷにもふもふして……をくりかえしていれば、愛莉がうとうとしはじめる。
 毛布がわりに膝掛けをそっとかけてやり、自分に寄りかかせるようにしながら愛莉の好きなようにさせる明日夢。
 そんな2人を見守る智美は、おかか入りおにぎりを猫へと少し、渡すのだった。
 さて、そろそろ帰ろうかというころ。
 まだ起きない愛莉を智美が背負い、帰路へとつく……。


 
 さよなら楽しい時間。
 楽しい時間もそろそろおしまい。
 月が空を彩る前に帰りましょうと、まだ帰路へついていなかった人々もちらほらと帰り支度を初めて。
 持って来ていたゴミ袋でそれぞれが辺りを綺麗にして、帰る頃。
 猫達がまたきてよね! というようににゃぁんと鳴くのだった。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

胡蝶の夢・
ケイ・リヒャルト(ja0004)

大学部4年5組 女 インフィルトレイター
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
撃退士・
鈴木悠司(ja0226)

大学部9年3組 男 阿修羅
未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
沫に結ぶ・
祭乃守 夏折(ja0559)

卒業 女 鬼道忍軍
戦場ジャーナリスト・
小田切ルビィ(ja0841)

卒業 男 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
白銀のそよ風・
浪風 威鈴(ja8371)

卒業 女 ナイトウォーカー
楽しんだもん勝ち☆・
ユリア・スズノミヤ(ja9826)

卒業 女 ダアト
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
リコのトモダチ・
神谷 愛莉(jb5345)

小等部6年1組 女 バハムートテイマー
リコのトモダチ・
礼野 明日夢(jb5590)

小等部6年3組 男 インフィルトレイター
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
刹那を永遠に――・
レティシア・シャンテヒルト(jb6767)

高等部1年14組 女 アストラルヴァンガード
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
蒼色の情熱・
大空 湊(jc0170)

大学部2年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
大好きマヤカどの・
上野定吉(jc1230)

大学部2年7組 男 ディバインナイト