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マスター:如月修羅
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2016/12/24


みんなの思い出



オープニング

●クリスマスリースのお邪魔虫
 そこはとある小さな会場だった。
 和気藹々と楽しそうな笑い声が外まで響く。
 たまたまその場を通りかかった貴方たちは、どこか楽しげな様子に視線をそちらへと向けた。
 天井から床ぐらいまである大きな窓のおかげで、どうやら彼らがクリスマスリーフを作っているのだとわかる。
 楽しげにあぁでもない、こうでもないと悪戦苦闘する彼らに、笑みが浮かんだときだった。
「あれ……?」
 ひざぐらいの生垣の向こう。
 軽く運動もできそうな広さの中庭に、かそこそとなにやら黒く大人の両掌ぐらい大きさのものがうごめいていた。
 ゴミかなにかだろうか?
 いや、違う。
 どうやらそれは蜘蛛のような形をしたディアボロのよう。
 貴方たちは、速やかに武器を片手に走り出す。
 ものすごく遅い動きのディアボロに、中にいる人たちは気が付いていないようだ。
 見える範囲で、敵の数は3体。
 あまり大きくない会場だから、一周回ってみたとしても、時間はそこまでかからなそうではある。
 1人ぐらい誰かあたりを見に行っても大丈夫だろうか……。
 走りながら話し合いをすませる撃退士たちに気が付いてはいるようだが、全てはのろのろと、此方がイライラするほど遅い。
 ただ、蜘蛛ということはなんらかの強力は足止めはありそうだ。
「……!」
 講師と視線が合う。
 はっとしたような講師を安心させるように微笑み、貴方たちは、辿りついたその先で、戦闘を開始する……!
 まずはこの邪魔者を排除しよう。
 ぱっと蜘蛛が赤い糸を吐き出した……。



リプレイ本文

● 
 中庭へ足を踏み入れた撃退士は8名。
 言葉少なに状況を把握し合い、敵へと対峙することに。
(……動きが遅すぎませんか?)
 雫(ja1894)がそう思うのも無理がなかった。
 撃退士達が近寄っているというのに、彼らはまだのろのろと体を動かしているのだから。
 そんなディアボロをみて、雪室 チルル(ja0220)はどことなく不機嫌な表情で、リース作りを楽しむのを邪魔するお邪魔虫を排除するために正面から突っ込んでいく。
(すみやかに終わらせて、私もリース作るのです!)
 春都(jb2291)はこれを終わらせた後、事務所に飾るリースを作るためにお邪魔出来ないかと考えていた。
 勿論、優先は蜘蛛退治であるのだけれど!
 あまり大きくない蜘蛛が自分の影で分からなくならないよう、囮に使う鞘に手をかけつつ、駆け抜けるのだった。
 駆け抜ける仲間達。
 そんな中、窓の前に立ちふさがったのは樒 和紗(jb6970)だ。
「此処は俺が護りますので、ご安心を」
 少しでも見えぬよう、不安にさせぬように。
 弓を持つ手に力が入り放たれた矢は、見事、雫が狙った蜘蛛を穿つ。
「この動きでは必要ないかも知れませんが、念を入れておきましょう」
 雫が瞳を細めながら動かす影の腕。
 矢を射られ、怒りに身を震わす蜘蛛をとらえ、春都が風雷でその足を切り落とす。
(ここにいる人達の誰一人、傷つけさせやしない)
 黄昏ひりょ(jb3452)が痛みに身を震わせ、その元凶へと糸を吐こうとした蜘蛛へ氷の刃を突き立てた。
 誰一人、傷つけさせない。
 その強い願いより放たれたそれは、蜘蛛を二度と動かぬ世界へ誘うのに十分だ。
 それは、とてもゆっくりとした動きとは違い、一瞬のこと。
 ぱっと飛ばされた白い糸のようなもの。
 なるほど、まがりなりにもディアボロだということか。
 ぎしり、と軋んだ音をたてて粘つく糸を盾で受け止め逢見仙也(jc1616)はちらりとちるるを見る。
 それに気が付いたちるるが足を狙って攻撃すればそれを援護するようにひりょの攻撃が決まった。
 最後の悪あがきとばかりにちるる狙って吐き出された糸は、またもや仙也によって受け止められたのだった。


 そうやって蜘蛛達を攻撃する皆とは別に動く者達がいる。
 残された一般人を守るべく、動く者達だ。
「おー……のろいな」
(この面子なら問題は無さそうだけど……)
 砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)は、中に入り、皆を守る盾に。
「出来るだけ中庭側からは離れた位置にいてね?」
 講師の女性2人にきらきら笑顔でそう言い、ママさんやお嬢さん方にも視線を送る。
 まぁ、パパさんや少年の方はそれなりに。
 硝子越しの援護ともなればちょっとだけ楽してることになるけれど、手加減するつもりはまったくない。
(さて、やりますか……)
 硝子越しに見える蜘蛛は、皆の攻撃をうけて苦しそうに足を震わせていた。
 もっと攻撃を当てやすくなるように。
 竜胆から放たれた砂塵が、蜘蛛を覆う……。
 時を同じくして、佐藤 としお(ja2489)は他に居ないかと戦闘を他の皆に任せ、外回りを警戒していた。
 皆が戦うのとは逆の方へ。
 そこは駐車場になっているようで。
 索敵と鋭敏聴覚は精確な情報をとしおに与えてくれる。
(ここは大丈夫そう!)
 敵はどうやら3体のみのようだ。
 そうとなれば、戦場へ戻らなくては……!


 最後となった1体は、失った仲間の分も、という勢いで糸を吐き、噛みついてくる。
 今もまた、仙也が飛んでくる糸を盾で受け止め、和紗と竜胆の援護攻撃に不利を漸く悟ったのだろう。
 粘つく糸を、時にその噛みつきを利用して、ゆっくりと後退しはじめる。
「にがしませんよ」
「ほらほら、こっちですよ〜」
 雫と春都が逃げ出そうとする蜘蛛を追いつめる。
「もう敵は居なくなったかな?」
 ひりょも氷の刃を地面に突き立て追い立てた所に、としおが丁度やってきた。
 居なくなってなかったか、と飛ばした矢に蜘蛛が体を震わした。
「これでおしまいだー!」
 逃げ道を遮断され、動きを完全にとめた蜘蛛に、ちるるの一撃が決まったのだった。
 倒された三体を囲み、他に敵はいないのだろうか、と疑問があがれば、としおが首を振った。
「見てみたけど、大丈夫そうだよ!」
 としおの報告に、皆が武器を降ろす。
 怪我人はいない? と回復手段を持ってきていた者が声をかけるが、多少のかすり傷程度で、特に大きなけがをしたものはいなかったようだ。
 その様子をみて、竜胆が(主に女性に向けて)報告しに行く。
「もう、大丈夫だよ」
 竜胆の微笑みに皆の緊張が解けたようで、
 全員が役割を決めて、的確に動いたおかげであろう。
 誰も怪我をせず、そして周辺への配慮のお陰で物を壊すような被害もださずにすんだ。
 そして。
「竜胆兄、楽し過ぎじゃありませんか?」
「働いたでしょ!? 僕、ちゃんと戦ったよね!?」
 あわててそういう竜胆をジト目で見つつ、和紗は不安で泣きだしていた子をみてマインドケアを。
 そんな心配りもあり、リース作りを再開する運びとなったのだった。



『皆様、ありがとうございました』
 ぜひ、ご一緒に。
 そう誘われ、リース作りへと8人全員が参加することに。
 子どもたちが嬉しそうにここあいてるよー! と誘ってくれる……。


 和紗は誘われるがままに緑の葉のリースを手に取る。
「ふむ。上手く出来たらお店に飾って貰いましょうか……」
 紅白の極細リボンをねじって水引っぽく巻きつかせた緑の葉のリース。
 それに、小さめの松ぼっくりを2個、3個と手に取りバランスをみてとりつける。
「……」
 あっちこっちと熱心に場所を移動して、ようやく納得した場所に配置それらをちょっと手を離してみてみる。
(何かたりないような……)
 もちろんこれだけでは足りないからと牡丹柄の布で包んだボールもおいてみるけれど、まだまだ足りない。
 赤や黄色を中心に花を置いて、ちりめんの大きいリボンを飾ってみる。
「……って、つい熱中していました」
「和紗、どんまい」
 竜胆にそう言われ、照れたように笑みを口元に。
「出来ましたよ」
 それでも完成したリースに微笑みが浮かぶ。
 さて、皆はどんなものを作っているのだろうか……?
 うんうん唸っている少年と視線があえば、ねぇねぇ教えて! と乞われるのだった。


 和紗がはっと意識を取り戻すちょっと前。
 竜胆は隣に座る和紗へと声をかけようとして、苦笑を浮かべた。
「ダメだ。もう入ってる」
(集中しちゃうと黙々やっちゃう子だからなぁ、昔から)
 微笑ましく眺めつつも、でもやはりやり方が分からない。
 和紗とは別の方向へ視線を動かし、話をしても大丈夫そうな人を探す。
「これ、どうしたらいいの?」
 爽やかな笑顔で問いかけた先は、可愛らしい母親とその娘。
 あら、と微笑みながら教えてくれるのになるほどと教えてもらう。
 白い枝にカラフルなビーズを散りばめて。
「どれが似合うと思う?」
 んーっと、と話しかけられた少女は一生懸命リボンを選び始めた。
 こっちがいいよ! と押しかけて来た男の子にはそっとケセランをけしかけて、もふもふを楽しんでもらったりして。
「なるほど、いいね」
 でしょう? と得意げに笑う少女に、笑みが浮かぶ。
(子供って人に教えると得意げに楽しそうになるんだよね)
 他にも教えてくれる?
 その問いかけに、勿論! と笑顔が返るのだった。
 
 楽しげな皆の様子を見詰めながら、雫もリース作りへと参加していた。
「ところでリースってクリスマスツリーと別物ですよね?」
 雫の言葉に、講師がえぇ、そうですよ! と頷きを返した。
「どういった謂れがあるんですか?」
 こうやるんですよ、とまずはやり方を伝えた後、謂われについて語って行く。
 それを聞きつつ、緑の葉の土台の上に、ベルや松ぼっくりを綺麗に並べつつ、こうですか? と問えばいい感じですと微笑まれた。
 次はリボンを、と伸ばした指先の先で、講師が環は永遠の命、といった意味もあると続けるのに耳を傾ける。
「永遠の愛という意味もあるんですか」
 はい、そうですよ。
 そう微笑み、あとは大丈夫そうですね、と講師が去っていく。
 ポインセチアを手に取り綺麗に飾り付ければ、残りは青いLED電球のみ。
「日本でいうお正月の注連縄みたいな物なんですかね?」
 とても大雑把になってしまうけれど、そういうものに違いなかった。
 綺麗に飾り付けられたリースは、ポインセチアと青い光がとても綺麗。
 いいものができた、と雫は微笑みを浮かべる。


(リースって実は作るのも無論初めてだけど、マジマジと見るのも初めてなんだよな)
 ひりょは皆が楽しげに作っているリースをちらちらみながら、内心焦っていた。
 手先が不器用だけど、なんとかなるだろうか。
 不安げな視線が、雫から離れた講師へと向けられる。
「先生、俺にも教えてっ!」
 こうするんですよ、といわれるがままに緑の葉っぱを手に取り、リボンをつけていく。
 大きなものからやっていくといいと言われてその通りやっていくけれど、やればやるほどなんだか不思議な配置に。
 これはね、こうするといいとおもう! なんてアドバイスをくれる少年たちと楽しく作って。
 でも鈴に白や赤い花もなんてやっていくと、なんだかごちゃごちゃしてしまっているような?
(な、なんとか形にはなったが……さすが俺、デザインセンスが……)
 なんというか、使っている物は悪くないから配置が微妙なのだろう。
 若干遠い目になったひりょに、同じように悪戦苦闘していた子どもたちがどうなのー? と寄ってくる。
 あわてて隠そうと試みるのだけれど、全貌が明らかにされてしまうまで、あと数分……。


 としおは講師を主としながらも、近くに居る皆にやり方を教わっていた。
 これはね、こうすると可愛いよ! というアドバイスに頷き、リースを作りあげていく。
「……で、こうかな」
 だがしかしここで個性的だったのは、リースの中央にあるラーメンどんぶりを象った飾りだろうか。
 赤と緑で飾られた真ん中にどどんとあるラーメンどんぶりは、クリスマス仕様のようで。
 それを見た子どもたちが、すげぇぇ! と大興奮していた。
 なんといってもラーメンは皆大好きだ。
「うん、なかなか良くできたんじゃない?」
 としおはにっこりと微笑みを浮かべる。
 どうやってそれ作ったのー? そう言われれば、ラーメンを愛するとしおとしては快く教えるのだった。


 初めてのリース作り。
 クリスマスリースの意味を講師にきけば、そうですね……と話始める。
 輪は永遠、新年の幸福を祈る飾り……そう聞きながら選ぶ飾りは魔よけのベルに小さな松ぼっくり。
 なるほど、と頷き、謂れをしって作るリースはいつも以上に心がこもる。
 春都は不器用だからこそ一生懸命、緑の葉のリースに飾り付けていた。
 斜めになってはもう一度結びなおして。
 ころんとどこか楽しげに揺れる松ぼっくりに満足して、視線を飾りの方へ。
「……あとは……」
 金の飾りを、と探していた春都は立金花を見つける。
 黄色い花がとてもかわいい。
「えへへ……幸せがいっぱいきますように♪」
 ほんのちょっとずれたのはご愛嬌だろう。
 せっかくだから、と皆のを見に行くのだった。
 

 のんびりまったりと仙也はリース作りに参加していた。
 白のリースを手に取って、まずは赤い折紙と花を手に取る。
 上側に赤い折り紙を並べて、それだけでは寂しいと赤い花も飾ってみる。
 赤い隙間から見える白がとても綺麗だ。
 ふむ、とひとつ頷いて、お次は鈴を一番上につけて、綿もつけていく。
 淀みなく手を進めているけれど、実は作るのが初めて。
 つけるだけだからなんとかなるだろうとやっていたけれど、どうみてもクリスマスリースというよりは。
(なんだろうこの正月感を感じる物は)
 賀正という言葉が似合いそうなリースに、暫し考えて。
(そうだ花を空いている下に乗せればそれなりになるな)
 花を置いてみればなるほど、なんというか豪華にも見える。
 でもまだ何かが足りない。
 ついでに、と葉も手に取って遠慮なくおいていくと。
「……正月にこんな感じで花飾ったなー」
 なぜか豪華なお正月飾り、といった感じになってしまったのだった。 


 ちるるはクリスマスに欠かせない、モミの木の枝を手に取った。
 赤いリボン手に取ってバランスをとったあと、次に手を伸ばしたのは折紙の雪の結晶だった。
 白く美しいいろんな形の雪の結晶。
(かわいい!)
 あれもこれも、ではバランスが悪くなるから厳選したそれら。
 鈴もつければ、りん♪ と楽しげな音色が鳴る。
「ねぇ、皆は?」
 ちるるが作った可愛らしいリースを見せれば、子供たちも見せてくれる。
 オンリーワンを目指す彼女の作ったリースは、他の人に比べて大きくて。
 わぁ、すごい! と和気藹々と盛り上がるところにやってきたのは春都。
 ちるるみたいに大きくしたいと切望する少女に、快く手を貸して。
 手の空いた皆も一緒になって作り上げていく。
 出来上がった後の大歓声は、今日の中で一番、楽しそうだった。



 あとで焼きまわしを……! そういうのに頷き、ひりょは楽しげな皆の様子や、リースを写していく。
 ひとつ、ふたつと思い出が収まって行って。 
 リース作りも終わりに近づき、見せ合いっこがはじまったのを気に、皆にとしおが声を掛ける。
「よし、出前のラーメン頼もう!」
 全員分も! としおの提案に、皆が楽しげに笑った。
 リースたちにも美味しい香りがおまけでつくかもしれないのは、御愛嬌というものだろうか。
 春都はラーメンだって! と騒ぐ少年に微笑みかけ、ちるるも凄く楽しそうに笑う少女たちと笑いあう。
 和紗と竜胆はお互いのものを見せ合いっこしているようで。
「みんな、楽しそうですね」
 雫がぽつりと呟くのに仙也も頷き、もう暫し、この時間を楽しむのだった。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
久遠ヶ原から愛をこめて・
春都(jb2291)

卒業 女 陰陽師
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
ついに本気出した・
砂原・ジェンティアン・竜胆(jb7192)

卒業 男 アストラルヴァンガード
童の一種・
逢見仙也(jc1616)

卒業 男 ディバインナイト