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ぱちぱちと何かが爆ぜる音が聴こえる。
突如始まったたき火の周りには、総勢17名を超える撃退士が集まっていて。
のんびりと美味しそうな香りが漂う中、それぞれ思い思いに過ごしているのだった。
龍崎海(
ja0565)は焼き芋を配る人に挨拶をしつつ、半ば強引に差し出された焼き芋を受け取る。
「お言葉に甘えて、じゃあ焼き芋をもらおうかな」
貰ったほっくほくの焼き芋を食べつつ、のんびりと辺りを見渡す。
楽しげに仲間と会話する人や、のんびり絵を描く人をみつつ、持っていたミネラルウォーターを唇に運ぶ。
喉を潤す水に瞳を細めつつ、ほっくりとした甘さを味わって。
あっという間に食べ終わった焼き芋。
それ以外にも美味しそうな香りが満ちていて、お腹が鳴ってしまいそう。
「うーん、他のも食べたくなったし、いっそこれで夕食にしちゃうか」
そうときまれば、じゃがいもを受け取って。
とろりと溶けたバターと一緒にほっくりじゃがいもを口に含めば、ふんわりととろけるよう。
動きに合わせてがさりと鳴った大きい袋に、コンビニで買ったものがあったことを思い出す。
貰ってばかりも……と差し出したのは、チョコだった。
「こっちだけもらうのも悪いから、チョコを持っているので食べたい人はどうぞ」
ありがとう! そういって受け取った皆に、笑顔が浮かぶのだった。
雫(
ja1894)は、そんな彼の近くではらはらと投げ入れる人々を見ていた。
(あっ、直接投げ入れたら炭化する気が……)
どうしたのかな? とチョコを渡しながら首を傾げる海に首をふり、自分も依頼終了後に採っていたキノコや栗を差し出した。
ありがとう! と受け取られたそれらは、雫の助言により濡れキッチンペーパーで巻かれ、清楚な布を持ってる人はそれで巻いたうえでアルミホイルを巻いて行く。
凄いね、と頷きながら海はマシュマロを受け取って食べ始める。
他にもまだまだ美味しそうな食べ物が差し入れられていくのだった。
差し入れたキノコや栗が美味しそうに焼けて行くのを感じながら、雫は囁く。
「不思議ですよね……」
先にこっちをどうぞ! と差し出された焼き芋を受け取り、辺りを見渡した。
視線の先では、サツマイモをみて眉をしかめている者の姿があったり、ひたすらリスを追いかけている者の姿も見える。
そんな皆を見ながら口に運んだ焼き芋は、ほっくりと甘い。
じんわりと広がる暖かな熱。
「家で料理するよりも外で焚火とかで焼いた方が美味しく感じる事が多いです」
それは、皆が楽しそうだからだろうか。
火を囲むと和気あいあいとできる……そう言っていたのは誰だったか。
雫はこれもお願い、と寄こされたサツマイモを受け取り、キッチンペーパーを巻いてやるのだった。
佐藤 としお(
ja2489)が雫の言葉に頷く。
「寒い日はたき火を囲んでってね?」
こんな風に囲めば、そこから交流が生まれる。
だがしかし、としおはとある農家さんから依頼された”サツマイモ型”ディアボロ討伐をしてきた帰りということもあって、サツマイモ自体からは視線をそらしてしまう。
いやだってもうサツマイモという存在は“おなかいっぱい”だ。
ということは、だ。
「じゃがバターひとつ!」
おうよ! と元気な声と共に、としおに渡されたのは大きな湯気がたったじゃがいもだ。
火傷しないように注意しながら、ほっくほくのバターがとろーりととけたじゃがいもを口に運べば、じんわりと沁み入る暖かさ。
「んー、やっぱうまい!!」
そして、取り出したるのは非常食として常に持っているカップラーメンだった。
このほっくほくのじゃがいもを、ラーメンに入れたらどうなるというのか。
いや、何も言わずとも分かっている。
きっちり五分待って、再び貰ったじゃがバターを入れて、そっと一口。
「んー……!」
じんわりとバターが溶けた味噌が美味しい。
それに汁を吸ったじゃがいもも、また違った美味しさ。
ハッピーが沢山で、としおは嬉しそうに微笑むのだった。
そんなとしおの美味しそうな香りを感じながら、浪風 悠人(
ja3452)は憂いを帯びた瞳で皆を見ていた。
(今年の秋って何処行ったんでしょうね……)
雫がキッチンペーパーを巻いた芋をいれれば、それを棒で突っつく悠人。
火に当たっているとはいえ、やはり当たる風はとても冷たい。
もしよかったらどうぞ、と手渡された焼き芋を食べつつ、辺りを見渡せば楽しそうな人々。
この所複雑な心境になる依頼ばかりだったゆえか、こんな状況に唇がほころぶ。
ほっくほくの甘い焼き芋を食べ終わって、ジャガイモへ。
バターをかければとろりととろける。
火傷しないようにゆっくりと食べて、次は再び焼き芋を。
「バター貰ってもいい?」
ジャガイモ用のバターを受け取り、切り込みを入れた所につければ、不思議そうなとしおの視線。
サツマイモの甘味に、バターの塩気がついて、風味が豊かになるのだと伝えれば、ラーメンに合うかと思案顔。
そんな彼の様子に笑みを浮かべつつ、食べればサツマイモの甘味が強調されたようで。
「ハチミツがあっても良いね」
ハチミツならあるよー! と声が掛けられ、受け取れば、また違った甘いスイーツとなるのだった。
全部食べ終わり、ほっと息をつけば浮かぶは愛おしい妻の顔。
今晩は何か温まる物を作ろう。
そう心に決めて、帰路へ着くのだった。
帰路につく悠人と入れ違うように着たのは礼野 智美(
ja3600)。
依頼帰りで小腹が空いてるし……とご相伴にあずかる事にしたのだ。
どれがいい? という問いかけにチョイスしたのは焼き芋だった。
(最近寒くなったしな……)
受け取った焼き芋が掌へと熱をうつし、ほかほかと暖かい。
ぶるりと震える寒さのお陰か、温かい物がとても美味しく感じる。
ほくほくとした甘さに瞳を細めつつ、ゆっくりと食べて。
(流石に飽きてきたか……)
いくら美味しくても、やっぱり飽きはくる。
何かないかと視線を巡らせれば、ジャガイモ用のバターが目に入った。
(これもこれで美味しいんだけど……妹がこれ大好きでよく「太るぞ」って注意するんだけどなぁ……)
カロリーは女性の敵とも言われるが、今回は戦闘でカロリー消費をしているわけだし、と美味しく頂いて。
バターのコクがまた違った味わいだったと思いながらも喉が渇く。
一緒の依頼だった人に一声かけて、帰路へと。
実家から送られてきた薩摩芋を近所にお裾わけして、スイートポテトも作って。
あとのおかずはどうしよう……?
そう悩みながら足を進めるのだった。
「うみゅ? この香りは……」
今日も元気に働いちゃったなーっと、ユリア・スズノミヤ(
ja9826)は商店街で仮装しながら売り子という一仕事を終えて帰路へついてる途中だった。
そんな彼女の元へ、ほんわかと甘い香り。
目がきらりんと妖しく光る。
「おいも達!!!」
おかずを悩んで帰路へつく智美の脇を、歪なパンダの着ぐるみがカボチャパンツから元気な足を見せて、駆け抜けていく。
ばばーんと辿りついた先には、焚火とそれらを囲む人々。
待たせたな! というわけで、じゃがバターを所望すれば、どうぞ! と手渡される。
もぐりと食べれば広がるまったり美味しいお味。
定番だけれど、最高のその一品を頬張りながら、星型の方の瞳を細めて堪能して。
「マヨないのかにゃー」
残念ながらマヨはないものの、じゃがバターは満足できるほど沢山たべれるようだ。
着ぐるみの頭をとるのことなく消費されていく様子に、三度見どころか何度も見られつつ、どんどん消費していく。
さて、そろそろお腹もいっぱいになったし、と辺りを見渡せば、ダンスによさそうな場所を発見し、そこで軽快に踊りだす。
「他に何を踊れますの?」
宮部 静香がそんなユリアへと声を掛ければどんなダンスでも! と答えを返す。
ならばロボットダンスは出来るのか? と問いかけられて。
「うみゅ、ではいっくよー!」
乞われるままに踊るダンスは、皆に盛大に喜ばれたのだった。
●
ロボットダンスで大盛況の中、なぜか鮭を抱えたラッコが通りかかった。
……いや、鳳 静矢(
ja3856)……シズラッコが通りかかった。
とても手触り最高なシズラッコは食材を集めていた撃退士たちの波にもまれ、良く分からぬうちに食材を集めてこうやってここまで辿り着いたのだ。
ドラ猫型ディアボロを退治した帰りの彼の持つ鮭はその報酬らしいのだが、それを持った手がふるふると震える。
焚火を囲む彼らをみて、漸くなぜ皆が食料を集めていたのか理解したのだ。
「キュゥ!」
刀をとりだして、輪切りにしていく静矢に、それ食べれる? とおそるおそる声がかけられた。
『もらいたての新鮮な魚屋の鮭だから焼いて食べれる!』
キュキュッと書かれた言葉に納得して、火を強くして欲しいという要望にこたえるのだった。
焼けた鮭の美味しそうな香りが、焼き芋の香りと共に当たりに広がって行く。
既にお腹はぺこぺこだ。
本当はコンビニで飲み物と菓子パンでも買おうかと思っていたのだからそれは当り前で、焼き上がった鮭に舌鼓を打つ。
鮭のやわらかい甘みが口の中に広がり、キュゥ! と満足そうな鳴き声が上がる。
焼き芋と交換して欲しいと言うのに快く応じて、赤い紅葉と、皆の楽しそうな様子を見ながら焼き芋をパクリと一口。
甘いほくほくの焼き芋が、口の中でとろければ、まさに秋の味覚を全力で楽しんで。
「キュゥ〜♪」
凄く幸せそうな鳴き声が響き、いやそれにしても一体どっからこの鳴き声でてるんだと、近くに居る人々の不思議そうな視線が静矢に注がれていく……。
Rehni Nam(
ja5283)は美味しい香りと鳴き声が聴こえる方へと向かって行く。
そこで目に入ったのは、焚火を囲む人々だった。
紅葉がひらひらと舞う中、輪の方へと足を進める。
「何やら美味しそうな匂いがするのでやってきました!」
いらっしゃーい! と迎え入れられ、何がいい? と問いかけが。
お腹がぺこぺこだと提示された物を見ていたRehniは、じゃがいもに視線を向けた。
「私にも……じゃがいも、分けていただけませんか?」
勿論だよ! と渡されたじゃがいもは、すでにバターがとろーりと溶けていて、きらきらと輝いている。
「わーい、ありがとうございます〜」
はむっと一口食べれば、広がるほっくりした甘さ。
はむはむ……と一心不乱に食べて行く。
「ん〜、良い感じに溶けたバターの香りと塩気、濃厚な味わいがたまらないのですよー♪」
よかったー! と嬉しそうな声が返る。
最後の一口まで美味しく頂いて、まだまだ食べれそうだと、声を掛ける。
「……えと、お代わり、宜しいですか?」
お味噌はないという返答に、残念だと肩を落とす。
しかし、はっと気が付いた。
こんな時は大佐にお使いを頼めばいいのだと!
召喚された大佐は、傷跡がある瞳をしかめつつも、Rehniに言われるのを一生懸命覚えようとしている。
「お味噌と長ネギ、2lのお茶もお願いしますね」
それと、と大佐の食べたい物を2つまでなら買っても良いと伝えるのも忘れない。
お財布と買い物メモも一緒に渡せば、きっと大丈夫だろう。
しばし時間がたって大佐が帰ってくれば、きちんと買い物は出来ていた。
ただ流石に大佐の言う事はわからなかったようで、Rehniのものだけのようなのだが。
サイコロステーキを火にあてながら、お疲れ様でした、と大佐を労う。
焚火でこんなに豪華なものを調理することもなかなかないだろう。
きっと美味しいものができるに違いない。
依頼帰りに半ば強引に迎え入れられた陽波 透次(
ja0280)は、そこまで言うならばとご一緒することに。
(焼き芋か……自分で焼いて食べるの美味しいよね)
残すのも勿体ないし頑張って食べなきゃと気合を入れる。
(……食べ物を粗末にしては行けない……)
とても実感が籠っていた。
灯火も応援に呼ぼうかと検討しつつ、一体どれぐらいまだ残ってるのかと視線を向ければ、静香が木を見上げているのを見つける。
「こんにちわ」
近づき声を掛けられば、木を見るのをやめて透次の方を向く静香。
「まぁ、透次さん!」
(静香さんも依頼帰りだろうか……)
依頼帰りなのかなんなのか、なぜかイキイキしている様子に首を傾げる。
「お疲れ様です」
透次さんも! と微笑む静香に何をしているのかときけば、リスを探しているのだと答えが返る。
じっと見つめた先では木々が赤や黄色に彩られていて。
(ここら辺はリスがいるのか……)
冬に備えて餌を蓄えるために活発に活動してるのかと瞳を細める。
「どんぐりや木の実が目当てなら、どんぐりや木の実がある場所を張ってればどうだろう?」
それを聞き、ぱっと笑顔を浮かべた静香が探してきますわ! と駆けだすのを見送り、伊達眼鏡を取り出す。
自然が豊かなここで勉強するのもいいだろうと透次は受け取ったマシュマロとクッキーを頬張る。
とろりと熱く溶けたマシュマロが甘い。
「甘味も……うん、ありがたい」
鳥の鳴き声を聞きながら、勉強していくのだった。
透次と別れ歩く静香を発見した草薙 雅(
jb1080)。
リスを探す静香にさりげなくアプローチを、と取り出したのはハーモニカ。
その音色で静香の注意を引く作戦なのだが、音色に気が付いた静香が気が付き、声を掛けてきて。
「ありがとうでござる」
綺麗な音色だと伝える静香に差し出したのは素早く織り上げたリス。
一緒に探すのも勿論いいのだけれど、リスはお持ち帰りできないからこそ、折り紙で作りあげたのだ。
大喜びで受け取り、大事にしますわね、と雅へとお礼を言う静香。
静香を見詰める雅の視線が笑みの形に和む。
「そうだ……」
オマケに作り出すのは千代紙のわらべ人形。
陰陽師の家系ゆえに紙人形作りは得意だ。
ささっと作りあげていくまるで魔法のような光景に目を奪われる静香へ、わらべ人形も手渡して。
「静香殿、どうぞでござる」
こんなに沢山、いいんですの? と首を傾げる静香へ頷いて。
もし、良かったら……と差し出されたのは先程拾った、綺麗などんぐりだった。
今日の思い出に、おひとつどうぞ。
そう言って差し出されたどんぐり。
出来ればお友達からスタートしたいという雅の思いは静香に伝わっているかは不明だが、少なくとも良い人だと思っているのは確かだ。
帰る時に、秘伝のタレを絡めた大学芋を一緒にお土産として静香へと渡せば、静香が嬉しそうに微笑むのだった。
今日の仕事は早めに終わった……。
月乃宮 恋音(
jb1221)は途中で寄ったスーパーの袋片手に、帰路へついている途中だった。
広場を通りかかれば、見知った顔が。
不思議に思って近寄れば、どうやら焚火で焼き芋を焼いているようだ。
混ざりたいという要望に、どうぞどうぞと場所が開けられる。
「もしよかったらいかがですかぁ?」
参加料の代わりにと、買い出しで購入していたお茶や清涼飲料と調味料を提供する。
芋に水分をとられていた面々に大好評だ。
「こちらも、是非どうぞですよぉ」
ホイル焼きにすると美味しい椎茸と林檎を渡せば喜ばれた。
さっそく火にくべられ、じんわりと焼かれていく。
いっぱい食べて行ってね! と差し出されたじゃがバターを牛乳と共に頂きながら、雫や透次や 達と会話を交わす。
ほっくほくのじゃがバターだけじゃなくて、是非是非こっちも! とちょっと大きめの焼き芋を手渡されれば、気になるのはカロリーだろうか。
美味しい物にはカロリーがあるというそれは、揺るぎない事実だ。
ぷにぷにお腹になってしまったら困る……と思うものの、恋音の場合はお胸の方にいってしまうかもしれない。
それでも、食べた一口はやっぱりとっても美味しいのだった。
はい、どうぞー!
天城 絵梨(
jc2448)はそう言って渡された焼き芋を受け取り、腰を降ろした。
はらはらと舞う紅葉がとても美しい。
「美味しい」
ほっくほくの焼き芋は、頬がとろけそうになるほど甘い。
依頼帰りの身に、じんわりした甘さが染み渡っていく。
心も体もほっかほかになれば、食べ物の秋だけでなく、芸術の秋も堪能しなくてはと手持ちの墨を取り出した。
「秋はやっぱり、これをやらないとね♪」
はさらさらとスケッチに描くのは焚火を囲む面々だ。
美味しそうに食べている人や、勉強の傍ら食べている人、それに雑談に興じながら食べている人だっている。
「よし、完成!」
墨で描かれた人物や紅葉は、日本らしく味がある。
通りかかった静香が、覗き込んだ。
「あら、……渋くて素敵ですわね」
静香がそう言って、山水画のようなタッチになっている絵をみて感想を述べる。
スケッチの中で生き生きと過ごす人々が、笑ったような気がした。
●
藍那湊(
jc0170)は赭々 燈戴(
jc0703)と共に、焼き芋が出来るまでの間、銀杏を見つけて拾って行く。
依頼帰りに立ち寄ったこの場所で、のんびりした時間を共に過ごしていた。
「はは、すげーニオイだろ。食えるのは実じゃなくて、この中にある種なんだよ」
直接触るとかぶれるからとポリ袋を二重にして拾い上げる。
それにこうすれば匂い対策にもなるだろう? と言えば、湊が感心したように頷く。
「へぇ……」
軟派な性格だけれど、知識は確かな祖父に感心して。
「帰ったら下処理して食わせてやろうか」
是非! と湊が頷いた所で、燈戴の視線の先に見知った姿が。
「おい、あれお前の嫁じゃねぇか? 行って来い」
湊の背中を押して言えば、驚いたように瞳を一瞬見開いた湊が、ありがとう、と嬉しそうに掛けて行く。
嬉しそうに掛けて行く湊を見送り、同じ煙でも違うもんだな、と囁く。
(子供ができてから数十年、煙草は吸ってねぇな)
「……禁煙継続かねェ」
嬉しそうに話をしている仲睦まじい孫とその想い人を見つめ、笑みを浮かべた。
(銀杏は今宵の酒のつまみだ)
その時のことを思い浮かべ、瞳を細めれば、なんだかがさこそ何かを探している姿が目に入った。
「何やってんだい、お嬢ちゃん?」
声をかけられた静香は、折紙のリスを大事そうに手に持ちつつ、本物のリスも探しているのだという。
ならばと一緒に索敵も使用しつつ探すことを申し出れば、嬉しそうに静香が笑った。
暫し2人で探して、彷徨って。
なかなか見つからないからこそ、自然の営みなのかもしれないけれど、しょぼんとした静香に燈戴が綺麗な紅葉をそっと静香の頭に乗せてやる。
不思議そうに瞳を瞬いた静香に微笑みを浮かべる。
「お嬢ちゃんがリスみたいだぜ」
ぱっと嬉しそうに笑った静香にからから気持ちの笑い声をあげ、記念に一枚、写真を撮るのだった。
来海 みるく(
ja1252)は湊へ振る舞う料理を作るべく、食材調達のために山に入った帰りに、偶然、湊たちと会うことになった。
だがしかし、山で食材をとるというわりにはガスマスクに包丁という姿で。
さらに何やらモゾモゾ動く頭陀袋を手に持っているといったら、ちょっとしたホラー映画のワンシーンにあるかもしれない。
「あ、湊〜」
とはいえ、愛おしい人の姿を見れば、ガスマスクをとりつつ手を振って。
駆けつけてきた湊は、そんな彼女へと微笑みを浮かべた。
「お疲れさま。ちょうどいい具合に焼けるみたい、一緒に食べよう」
焼き立てをみるくへ渡しつつもやはり視線はモゾモゾ動く頭陀袋へ。
「これですか? ジビエ肉を作った手料理をと思いましてね」
モゾモゾと動くそれを見せた後、小首を傾げた。
「……湊は今帰りですか?」
そうなんだと頷き、共に座るは焚火の近くの丸太。
貰った焼き芋を半分こにし、ふーふー冷まし始めるみるく。
そのまま自分で食べるかと思えば、差し出したのは湊の口へ。
「はい、あーん」
頬を染め、照れながらも一口。
美味しいね、と微笑む湊に伸ばされたのはみるくの指先だった。
「湊、オベント付いていますよ」
口元についた欠片をとって、ぱくりと食べてしまう。
そして食べ始めた彼女に、瞳を驚きで瞬いていた湊は、幸せそうに微笑んだ。
よく料理を作ってくれるみるくが、食べている姿はとても新鮮に映る。
しばし瞳を和ませていたけれど、先ほどの仕返しをちょっとしなくては。
着けていたストールをするりと解いて、そっと近寄る。
「寒いの苦手だったね」
不思議そうな表情をした彼女の肩へ掛け、くるまって。
「む……。ボク今、汗臭い……ですのに、もぉ……湊はもぉ」
寄り添いあえば、そういいながらももちろん離れることなんてしない。
温もりに瞳を伏せたみるくの頬。
先ほどの湊と同じように……ビスケットの欠片がついていて。
「いただきます」
舌先でぺろりといただけば、恥ずかしさがマックスになってしまったらしい。
ぱっとガスマスクで顔を隠してしまって。
ふっと湊がガスマスクか、と囁きを唇へ乗せた。
「……なんですか」
手を重ねてそっと囁けば、湊が耳元で、囁く。
「そのうち、照れてるとこもちゃんと見せてね」
そういわれ、重ねる掌にきゅっと力がこもった……。
白野 小梅(
jb4012)とマリー・ゴールド(
jc1045)は、新・秋の味覚を、楽しく味わおうと焚火を囲んでいた。
提供したアケビや栗たちはすでにみんなに回っている。
マリーは焼き芋に蜂蜜をとろーりと掛けて、ぱくりと口に含んだ。
「ほふほふとろとろですぅ」
じんわりと広がる甘さに瞳が笑みの形になって、幸せに頬も緩む。
もぐもぐごっくんと全部食べ切り、次は栗へとその指先を伸ばす。
勿論かけるのはとろーり蜂蜜だ。
「おいひぃですぅ」
はふはふと熱さに息を弾ませつつ、体に染み入る蜂蜜と栗の甘さ。
最高の組み合わせにとっても幸せそうに瞳を和ませる。
そんな彼女の隣で、真剣に火であるものを炙っていた小梅。
「ちょっと違うのぉ」
しかし、ただ炙っただけではあったかいドーナッツ。
食べてみても、普通の味に首を傾げたところで、マリーが魔法のように蜂蜜を取り出した。
「!!」
小梅の瞳がきらきら光る。
とろ〜りとかかる黄金色。
そしてさっそく炙った後に時間をおけば……?
「パリパリうまーなのぉ」
ぱぁっと満面の笑顔の小梅に、ぎゅっと抱き着くマリー。
だってとても愛らしいのだから仕方がない。
「いやぁ〜ん、可愛いです」
すりすりぎゅー状態にされながらも、流石ドーナッツマスターだという言うべきか小梅の探究心は止まらない。
ちょっと動かしにくい指先を動かしながら、焼栗や焼き芋をスプーンで掘り出し、蜂蜜ぱりぱりドーナッツへのっけてみる。
ぱくり。
そこに広がるは秋の味覚。
「秋ドーナツなのぉ」
美味しかったようで、さらに笑顔になる。
そんな彼女へ、マリーがあーん? と蜂蜜のかかった栗や焼き芋をあげて。
美味しそうに食べる姿に、愛おしさが募る。
「たまならいですぅ」
そうして焼いたマシュマロに蜂蜜をかけて小梅と共にほおばって。
とろけるような甘さに、とろけるような幸せ。
秋の味覚はとてもおいしい。
2人で楽しく食べていたところに、リスを探して静香がとおりかかった。
しゅばっと移動し、とろーりぱりぱりな蜂蜜が掛かったドーナッツをどうぞ! と手渡す。
ありがたく受け取った静香は、もぐりと一口。
「美味しい?」
こくこく大きく頷いて美味しい! と笑顔になる静香に小梅もにこっと笑う。
マリーと2人で作った美味しい「秋の味覚」。
これはみんなに喜ばれるに違いない。
そんな小梅の様子が愛らしいと、マリーにも笑顔が浮ぶ。
次の獲物へとシュバッと移動する小梅に、マリーは美味しい秋の味覚ももう少し作ろうと、林檎に蜂蜜を掛け始めるのだった。
ぱちぱちと火が爆ぜる音が聴こえる。
和気あいあいとした時間が過ぎていく……。