貸し切られた公民館。
そこに11人の撃退士と猫が一匹揃っていた。
「「今日はよろしくお願いします!!」」
やってきた子供達は撃退士達にと元気に挨拶をして。
今日はちょっと変わったお月見の行事があるとなれば、テンションはあがっていくようだ。
そんな中でも、やっぱり人見知りな子や大人しい子はおずおずしながら待っている。
「では、私は子供たちに今日やることの説明と、簡単な運動をしていますね」
発案者の女性がそう言って、よろしくお願いしますと子供達と去っていく。
撃退士達だけでなく、数名、職員も混ざっていて賑やかに調理室へと向かって。
流石に、公民館を管理する職員は主体となれないため、撃退士達が主に進めて行く。
さぁ、お月見泥棒の準備を始めよう!
●お菓子を作ろう!
調理室では、礼野 智美(
ja3600)と礼野 真夢紀(
jb1438)と美森 あやか(
jb1451)が一緒に参加していた。
(……気にはなるけど、俺お菓子は不得手……)
という智美に呼ばれた料理が得意な真夢紀とあやか。
真夢紀は栗案と芋餡のお月見団子。普通のお月見団子と被らないようにと配慮したその餡はちゃんと持ってきている。
「あと、パウンドケーキもいいかなと」
あやかにそう言って林檎とバナナとチョコのジャムも見せる。
「いいですね、私も持ってきてるんですよ」
あやかはスイートポテトとアーモンドクッキーの生地を持ってきていた。
二人とも下ごしらえは先にしておいたので、そこまで時間が掛からずに用意出来そうだ。
早速、料理を始める二人。
栗餡の方は兎さんに……と形をおしりと頭のひょうたんを半分にした形に。
頭はキッチンハサミで耳のようにしていき、食紅で目を入れる。
愛らしい兎が一匹、出来あがった。
「あら、可愛いですね」
ありがとうと微笑み、沢山作りあげて行く。
ミニパウンドケーキも作らないといけないのだ、手を休めるわけにはいかない。
あやかも裏ごしして牛乳と練乳が混ぜられたスイートポテトの生地をアルミカップに入れて行く。
オーブントースターに入れて焼き色がつくまで待っている間に、今度はこれまた家で作ってきていた生地を取り出す。
バターとアーモンドパウダーと、薄力粉がしっかりと混じり合ったそれは、焼いたら美味しくなろうだろう。
「どんな感じでしょうか」
真夢紀に問いかければ、順調との答えが返る。
甘い香りが広がってくるのに、自然と笑みが毀れた。
ゆらりと首元で揺れる指輪と共に、準備を進めて行って……。
しばらくして、出来あがったお菓子を二人、包んでいく。
細いリボンで輪っかを作って行きつつ、首を傾げた。
「そちらは……」
「あ、これはせっかくとったお菓子を持って帰りたいでしょうし、会場の方で食べれた方がよろしいでしょうから」
なるほどと頷き、それ以外を作って行く。
隠すものは万が一にも汚れぬように。
最新の注意を払って作って行くのだった。
琴ヶ瀬 調(
jc0944)は小さ目のクッキーを焼こうと準備をしていた。
型は年少の子供達が見ても分かりやすい、ハートや星形、車や鳥なんかを用意し、ココアとプレーンの二種類の生地で作っていく。
「もう少し多めにした方がいいですわね」
型から抜いたクッキーを数えながら呟く。
予備も必要だろうし、なによりパーティーのことを考えれば、多めがいいだろう。
凝ったものはなかなか作れないけれど、クッキーぐらいならば作れる……。
調は沢山作ったクッキーを天秤に置き、焼いていく。
その間に、巾着状の袋を用意し始めた。
冷めたクッキーを数枚いれて、巾着の紐部分を輪のように結んでやれば、釣竿でもとりやすいだろう。
いい香りと綺麗な焼き目がついてきたクッキーを見つめ、調は思いを馳せる。
甘い香りに包まれながら白蛇(
jb0889)は首を少し傾げていた。
(泥棒ごっこの遊びとは、其の様な物もあるんじゃのぅ)
子供達は月の使途として捉えられ、今日だけは盗んでもいい日らしいけれど。
月見が主目的といえども、参加しようとやってきたその場所は、勿論子供達と混じって……ではなく、調理室の方だった。
静香に一緒に参りましょうと言われたものの、れっきとした大人だと言えば驚いていた。
確かに外見は幼子のものだけれど……2千歳以上(自称)の自分からすれば、やはりお菓子作りのほうだろうか。
用意したのは金平糖。
色とりどりな上に、見た目にもお星さまのようでとても楽しいし、可愛らしい。
ころんと転がった可愛い金平糖を、これまた持ってきていた茶巾に小分けしていく。
茶巾の口を紐で片蝶々結びにしておけば、釣り針でひっかけてもとれはするまい。
(ふむ、いい感じじゃの)
出来上がった茶巾を前に、一人ごちる。
さて、何個作ればいいだろうか。
これをとった子供たちの笑顔に思いをはせ、白蛇はまた一つ、可愛らしい茶巾を作り上げた。
藍那湊(
jc0170)はマシュマロを作りつつ、一人ごちる。
(釣竿でとるなんて面白いなぁ……)
動物や、お花や車など、色んな形のマシュマロを作りあげて行く。
(でも、釣竿っていうぐらいだし)
魚の形もいいだろうか、なんて思いながら魚の形も追加して。
マシュマロは比較的多めに作り、あとはお団子も作っていく。
せっせと作りあげていくそれは、子供達が喜びそうな出来あがりだ。
「喜んでくれるといいけど……」
ころんと転がって行くお団子が、大丈夫だよ、と言ってくれているようだった。
同時進行で職員たちにも手伝ってもらいながら、会場準備も進んでいく。
三方にお月見団子を飾って行く智美。
また、お団子だけじゃなく、お菓子として適さない果物は、籠にといれていく。
「そちらのほうはどうですか?」
パーティーの最中に食べるであろう果物は剥いておいた方がいいだろうか……。
果物を手に持ったままぱたぱたと天井付近の飾りつけをしている露園 繭佳(
jc0602)に声を掛ける。
「きれいに、かざりつけ、出来てます!」
持っていた飾りをまっすぐに飾りつけながら、唇を開く繭佳。
ぱたぱたとはためく羽で飛びながら、言われたのに智美が頷く。
「いいですね」
「はい」
年齢や学年として考えれば、自分も探す方がいいかもしれない。
けれど、こうやってスタッフとして働いても楽しそうだと繭佳は皆と一丸となってつくっていく。
暫しあと。
飾り付けも無事終わり、いい香りが部屋を見たす。
どうやらお菓子も全部包装が終え、あとは隠すだけ。
「じゃぁ、持っていきましょう」
湊や調がそう言い、ほかの皆も自分が作ったお菓子を持っていく。
「楽しみじゃのぅ」
白蛇の言葉に、皆が頷いた。
●お菓子を置こう!
翡翠 龍斗(
ja7594)は愛猫のスノウドロップと共に部屋を見て歩いていた。
「空き部屋がでそうだね」
友人にと声をかける黄昏ひりょ(
jb3452)。
空き部屋にハズレと書いた紙でも置いておこうかという提案に、同じく探索の子達を見守ろうとしていたパウリーネ(
jb8709)が声をかけた。
「すぐに目が届くように扉を開けっぱなしにしておくのはどうであろう?」
閉まらないようにストッパーも使ってとさらに安全策を伝える。
とはいえ、使用する部屋を減らすのも視野にいれればいいだろうか……。
龍斗とひりょが顔を見合わせ考え込む。
それにはペルル・ロゼ・グラス(
jc0873)が案を出した。
「空いてる部屋を一部屋借りたいなの!」
曰く、物質透過で行き来するのだとか。
それなら、と龍斗も和室で部屋続きがあったため、そこを解放して一つの部屋としたいと申し出る。
「結構埋まりそうだな」
龍斗の言葉に皆が頷いた所で、お菓子を持った面々がやってきた。
「どうでしたでしょうか? 部屋の方は」
あやかの問いに、答えが返えれば、隣で聞いてきた真夢紀も唇を開く。
「紙を置く案もいいですよね」
真夢紀が言うように、ひりょのその案と、やはり皆が言うとおり使わない部屋は閉鎖しておいたり、ストッパーで止めておくといいだろうということで話がまとまった。
「あ。俺も探索側に参加するよ」
湊が手を挙げて一部屋使うことを申し出れば、ハズレの部屋は2個程で十分そうだった。
「じゃぁ、鍵をしめてくる」
「俺も行くよ」
調理室や危険な場所の鍵を閉めてくると言う龍斗にひりょが一緒に行くといえば二人連れだって歩きだした。
鍵を閉めれば危険も減るだろう。
皆も動きだした……。
さてでは隠そうと皆が散らばっていた頃。
体格・年齢が近い、同じ小学生の視点。
それは今回のイベントにおいて繭佳の強みだとばかりに、物陰や人形の影等に金平糖やお月見団子を隠していく。
取りやすいように輪っかなリボンがついてる部分を上にして、繭佳は一旦どんな感じかみてみる。
これなら取りやすいだろう。
「いいかんじ、ですよね」
一緒に隠していた調はパウンドケーキとスイートポテトを置きながら頷いた。
「そうですわね」
自分が作ったクッキーや他にも、動物の形をしたマシュマロなんかはまた別の人が置いているだろうか。
リボンがふるりと揺れる様をみて、心が籠ったお菓子を喜んでくれるだろうなと二人は笑いあうのだった。
●お月見泥棒しよう!
畳張りの部屋で、智美は一人自分が隠した色んな形をしたクッキー、芋餡や栗餡のお月見団子やスイートポテトをみるともなしにみてみる。
家具の影や電球の傘の上。
視線をつらつらと移動している……そんな時だった。
「お月見……ください……」
おずおずとした声が聞こえる。
「どうぞ」
きぃっと開くドアにあわてて寝たふりをすれば、子供達が顔をのぞかせた。
どうやら人見知りのグループだったようで、ドア付近で中には入らず、誰からとるのかと相談をしていて。
(下駄箱に置いといてよかったな)
わざと取りやすい縁側に置いていたのがあったのも、こんなことがあったからだろうか。
子供達がそれぞれ一回ずつ釣竿を伸ばしては取ろうと試みている。
「あっ、とれた!」
元気にはしゃぐ声に、智美もそっと笑みを零したのだった。
友人の作った動物の形をしたマシュマロを見つつ、ひりょは子供達を待つ。
凄く可愛らしいひよこやペンギン、他にも沢山動物がいる。
他にも金平糖やクッキー等、喜びそうなものが沢山だ。
子供達がわいわいと楽しそうに笑い声をあげながらやってきた。
「お月見くださ〜い!」
「どうぞ〜」
眠そうな声を出していえば、ゆっくりと開くドア。
それを薄目で見つつ、探索を始めた子供達を見守る。
「う〜ん、眠い……むにゃむにゃ……」
それを起こさないように抜き足、忍び足な子供達。
それすらも楽しそうな様子をこっそりみていたひりょだったが、足がもつれて倒れそうになった少年に、寝返りを打つふりをしてそっと支えてあげる。
(良かった、怪我はしてないみたいだ)
治癒膏は必要なさそうだなとほっと息をついた頃、子供達から歓声が上がった。
「わ、巾着にはいってる!」
「可愛い! 動物だ!」
楽しげな声に、自然とひりょにも笑みが浮かぶのだった。
「わっ、ハズレだー!」
またお前が引き当てたのかよ〜なんて楽しげな声が近付いてくるのに、リリアンで組み紐を編んでいた龍斗が視線をあげる。
「お月見くださ〜い!」
どうぞ、と言えばドアが開いた。
組み紐に夢中になってるふりをし、見守る龍斗。
広い部屋ゆえ、中まで入らないと見つけられないとばかりに、元気よく子供達が駆け回る。
人数分の組み紐を編もうと数をかぞえていた龍斗のすぐ近く、そこに置かれたミニパウンドケーキを手に入れ、少年が笑う。
「わぁ、美味しそう!」
「クッキーもあるよ!」
他にも見つけたらしく、釣竿で一生懸命チャレンジしてはとっていく。
手を貸さずとも、なんとかなりそうだ。
おじゃましました! と去って行く子供達を見送りながら、さて、と再び組み紐にと向かい合ってく……。
二つの部屋を確保したペルルは部屋の中で腰を据えて、葛藤していた。
ひとつ、またひとつとへっていくお菓子。
(う、うらやましい……あたしも食べたいなの……)
自然とたれそうになる涎……。
皆が心を込めて作ったお菓子は、物凄くおいしそうだった。
クッキーもマシュマロもパウンドケーキも金平糖もスイートポテトも、何かもが誘惑してくる。
「ハッ だめだめなの!」
あわてて口元を拭いながら明鏡止水。
(お菓子はあとでいっぱい食べるなの! それまで我慢なの!)
邪念はそれによって払われただろうか。
そんなこんなしていれば、もう一グループやってきたようだ。
「お月見くださ〜い!」
「いいなのなのー!」
ぎぃっと扉が開いて、子供達が入ってくる。
敷いた布団の上にこてんと寝転んで、寝たふりをしていれば、抜き足差し足忍び足で子供達がお菓子をとっていく。
どうやら彼らも慣れてきたようだ。
そんな子供達に、ちょっとした悪戯を。
ドアがしまると同時に物質透過で布団と共に隣の部屋へ。
(ふふ……順番に部屋をまわるグループはきっと、デジャブか双子か? って驚くなの♪)
「お月見くださ〜い」
それに答えてやれば、あれ? と不思議そうな声とともにドアが開いた。
「嘘、さっきもいなかった?」
「あれ、あれ?!」
確認してみようぜ! と大騒ぎするのに、してやったりなペルル。
だがしかし……。
(確認しに戻られると忙しいなの……!)
交互に見て回ろうとする子供達とペルルの忙しくも楽しい時間が過ぎて行く……。
湊は静かに本を読んでいた。
ちらりと視線をやれば、今まさに釣り針にマシュマロの入った小袋が釣り上げられていくところで。
「おもい〜おちる〜」
「まってまって、網でたすけるよ!」
どうやらひとつ釣ると何個かついてくるアタリを引いたようだ。
無事ゲットした子供達の大歓声。
そんな楽しげな様子に、自然と本に落とす視線が緩むのだった。
同じように本を読んで待機するのはパウリーネ。
お月見泥棒って行事、初耳である。
(「お月見ください」か……館に帰ったら突発的に言ってみようかな……)
なんて。
そう考え居た時、がやがやと人がやってくる気配がした。
「お月見くださーい」
「……どうぞ」
ぎぃっと開いたドアをちらりと見た後、本にと視線を落とす。
出来るだけ誰かが怪我をしそうだとか、そういうことが起こらない限りは本を読んでいようと思うパウリーネ。
もちろん、意識は子供達へと向いている。
「あ、あそこにあるよ!」
どうやらまだ自力でとれない子がいたようで、子供達が一生懸命がんばれ! と応援している。
暫く待っても、どうしても取れないようだ。
置いてあるのは棚の上、そんなに難しい場所ではないものの身長的に辛いのかもしれない。
パウリーネは本を膝の上に置くと、そっと踏み台を指差す。
声をかけようか迷ったものの、あまり出過ぎた真似はしたくない。
「あ……」
だがしかし、それに気がついた少女が頭をぺこりと下げる。
そっと一番小さな少女に踏み台を渡せば、無事とれたようだ。
再度本に視線を落としつつ、良かった、とパウリーネは心の中で思うのだった。
そうして、いつしかお菓子は全部なくなって。
どうやら全員無事にお菓子を手に入れたようだ。
歓声があがり、さぁ、パーティーを始めようと会場へと集まるのだった。
●みんなで楽しもう!
皆で楽しもうと龍斗により召喚されたのはケセランだった。
興味津々に集まる子達と遊ぶケセラン。
なんだかシュールに見える光景だが、子供達は楽しそうだ。
そして、その近くでは愛猫のスノウドロップに触ろうとする少女が居る。
おずおずと、こわごわと。
その様子にそっと近寄っていく。
「このクッキーをあげて欲しんだ」
これ? とおずおずと受け取り、一瞬迷った後、スノウドロップにとあげる少女。
美味しそうに食べる姿に笑顔が毀れる少女を見て、一緒に来てよかった、と小さく微笑んだ。
智美と真夢紀とあやかの三人は向いた果物を食べつつ話をしていれば、子供達がやってきた。
手に持って居るのは真夢紀とあやかが作ったお菓子だ。
アーモンドクッキーを美味しそうに頬張りつつ、美味しい、ありがとうとお礼を言うのに、三人から笑顔が毀れる。
そんな三人と、そしてひりょを巻き込んで、子供達と遊ぶのは湊だ。
紙で作った兎耳が皆が笑えば、連動して楽しげに揺れる。
月に関連させたお餅つきは大盛況で、ひりょや湊、それに智美達も怪我がないように見守って行く。
「月みたいに丸いお餅のできあがりだよー」
湊が出来あがったお餅をじゃーんと見せれば、ひと際大きな大歓声があがった。
余ったらお持ち帰りにすればいいだろう。
けれど、ひとつ、またひとつと口に運ばれるお餅に、それは杞憂かもしれないな、と湊は思うのだった。
ちなみにひりょに召喚されたケセランと鳳凰は、子供達にもふもふされたりしつつ、楽しげに遊んでいたのは、いうまでもない。
「あ、さっきのお姉ちゃんだ!」
パーティーを楽しむパウリーネの周りにも子供達が集まった。
「さっきは、ありがとう、とれたよ!」
一番小さかった少女がそういって、自分でとれたお菓子をパウリーネにと見せる。
それは満面の笑顔だった。
「ね、一緒に、たべよ!」
「あぁ、そうであるな」
ゆるりと皆でお菓子を食べに向かう……その近くでは、子供達がお菓子を見せあいっこしていた。
お菓子を見せあいっこしている子供達に声を掛ける者が一人。
「みんな、面白かったかな、だよ」
楽しかったと、繭佳に聞かれ答えた子供達は、あれ? と首を傾げた。
さっきのお月見泥棒にいなかったよね? というのに、スタッフ側としての参加だったと言えばスタッフ側はどうだったの? と興味津々のようで。
「じゃぁ、お月見団を食べながら、お話しよう、だよ」
もちろん! 子供達の楽しげな頷きが返ってきた。
皆が作ったお月見団子、まずは何をつけて食べようか……。
楽しくも悩ましい時間が始まる。
そんな輪を少し離れた場所でみる、少々年齢が高い子供達。
調がそっと近づき声を掛けた。
同年代ぐらいの子の方が話しやすいだろうというその配慮に、子供達に笑顔がぱっと灯る。
「美味しいですわね」
一緒に美味しいお菓子を食べながらのお話は、笑いと話題をどんどん連れてきてくれた。
沢山焼いたクッキーが一つ、また一つと口の中に消えていき、分かりやすい型を心掛けたからか子供達もハートがいい、とか星型がいいとか楽しげに語り合っている。
調にも自然と笑みが浮かぶのだった。
和菓子……湊が用意した黄粉や黒蜜も確保し味を変えつつお団子を、のんびりと楽しむのは白蛇だ。
お茶を一口飲み、ちらりと辺りを見渡す。
子供達が多い故、お酒は出さない方がいいだろうか。
月見と言うからには夜かと思っていたけれど、時間は今は夕方になった頃。
帰る時間が本物のお月見の時間だろうか。
秋を愛でられるのならば、昼でもいい……白蛇が飾られたススキに視線をやった所で、金平糖をぽりぽり食べている少年がいた。
「どうじゃ、美味いか?」
「うん、すっごく美味しい!」
ぱぁっとほころんだ笑顔に、白蛇が頷く。
「うむ、善き哉善き哉」
残りはまたあとで、という少年に微笑むのだった。
両手には沢山のお菓子。
交換したり、ちょっと数が少ない子にお菓子を渡したり、ペルルは自分もお菓子を食べながらパーティーを楽しんでいた。
「やっぱりお姉ちゃん、ひとりだー!」
「ばれちゃったなの?」
くすくすと笑うのに合わせ、二つに別れたポニーテールも動く。
さっきの、凄かったどうやったの? なんて聞かれるのに答えていれば、子供達がやってきて。
「さっきのてじなー?」
「凄かったー!」
気がついたら、子供達に囲まれるのだった。
わいわいと楽しい時間が続いていく。
今日もおしまい。
そんな時間がきた頃。
すっかり全員が仲良くなって、朝とは違って子供達も打ち解けている。
それもこれも、皆様のお蔭ですと女性が本当に嬉しそうに微笑んで頭を下げた。
「「今日はありがとうございました!!」」
子供達が大人になった時、きっと今日の思い出は楽しい時間だったと思い出せるだろう。
手に持っているのはお菓子だけではなく、龍斗の作った組紐もだ。
撃退士達の思いが籠ったこの行事は、無事大成功として終わったのだった……。