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マスター:如月修羅
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:16人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/02/25


みんなの思い出



オープニング

●とある休日
 とある建物の一角にて、大きめな掘り炬燵の上に、きらきら光る物が置いてあった。
 硝子玉、プラスチック玉、鉱石玉。
 どれも丸く小さくきらきら輝いて。
 白、赤、青、黄、緑、紫、マーブルに、透明……。
 きらきら輝くそれらは、いろんな色が置いてあった。
 そして、その近くには、トレイが置いてある。
 白いトレイは少々変わっていて、丸いくぼみがついている。
 ブレスレット、指輪、ストラップ用のくぼみだ。
 それに合わせて作ると、丁度いいのが出来る……そういう便利グッズである。
 籠の中には山盛りのミカン。
 近くにはポットも置いてあってお茶が飲み放題だ。
「さて、と……皆様もお誘い致しましょう」
 静香がそう言って、炬燵から這い出る。
 炬燵は魔物だ、なかなか出たくはないけれど、こんなに素敵な物を独り占めなんてできるものでもないから。


「ねぇ、皆様? もし宜しかったら炬燵の中でストラップとかブレスレットとか作ってみませんこと?
くぼみが付いているトレイがございますから、とても簡単に作れますわよ」
 ミカン食べ放題、お茶もタダですわ。と付け加える。
「大きな掘り炬燵ですから、沢山の方が入れますわ。
出来上がったら、お饅頭でも食べながら見せ合いっこなんかも楽しいと思いますの!
勿論、持ち込み自由ですわ!」
 お饅頭はこちらで用意しておきますわね! と微笑み、場所を伝えるのだった……。


リプレイ本文

●どんな材料を使う?
 暖かな日差しとちょっと肌寒い風が吹くそんなある日。
 準備万端だとでもいうように炬燵には電気が入れられ、机の上にはミカンが山盛り乗っていた。
 湯呑も置いてあり、すぐにでも籠って過ごせそうではあったけれど。
 中を捲れば、オレンジ色の暖かな光が、皆を早く早くと誘い込んでいた……。 


 その日集まった16人+1人の17人は、それぞれのんびりと材料を選んでいた。
 浪風 悠人(ja3452)は浪風 威鈴(ja8371)と共に炬燵に座って材料を選んでいた。
 ぬくぬくの炬燵がより、2人を近づけるような気もする。
(これとか、似合わない、かな?)
 そんなことを思いながら物色する悠人。
 威鈴は嬉しそうに微笑みながら石を見詰めていた。
「石……♪ たくさん……♪」
 魔除けに良い天眼石や金運に良い虎目石を見つけ一つずつ手に取る。
 ころんと転がったそれが、なんだか本当に目のように見えてきて。
「目……玉……♪」
 目玉のように見えるその石を悠人に掲げて無邪気に笑う。
 珍しい物があったら教えたい、そんな気持ちで見詰めれば、悠人が微笑んだ。
「確かに目みたいだな」
「……効能は、ね……」
 そんな風に2人お喋りしながら一つ一つ手にとって選んでいく。
 そんな仲良しな2人の隣では、鎌田 潤(jb5849)が熱心に緑色のビーズを選んでいた。
 ビーズ系は一応出来る。
 四つ編みブレスレットにとする予定だ。
 同じ緑色の中に入っているビーズでも、やはり多少の色の違いがあるため、熱心に選んでいく。
 そんな中、ちょっと違うことで此方に着た者も居た。
「炬燵に入れると聞いて」
 そう言う数多 広星(jb2054)も、隅っこを陣どりながら材料を選ぶ。
 ぬくぬくとした炬燵がその身を捉えて離さない。
 何色にしようか……惑う指先が不自然に揺れる。
 眠さの方が勝っているのかもしれない。
 そんな広星とは正反対のドア側では、水無月 ヒロ(jb5185)が愕然とした声をあげていた。
「あれ、トイレで作るんじゃ無いんですか? え、トレイ?」
 物凄い聞き間違い&勘違いである。
 目の前に出されたトレイに瞳を瞬きつつ、まずは材料の品定め。
「数珠ってこうやって作るんですね……」
 数珠の作り方を考えるとあながち間違えてはいないが、今回はブレスレット作りである。
 ちょっと勘違いしたまま材料を選び始めた。
 

 酒守 夜ヱ香(jb6073)は、今回も誘ってくれた志塚 景文(jb8652)の傍でビーズを見ていた。
「キラキラ、綺麗……だね。何色にしよう……かな」
 灰色ロング丈パーカーを羽織り、黒のニーハイと青チェック柄のミニスカという黄金比からちらりと覗く白い太ももがまぶしい。
 そんな夜ヱ香を、少々まぶしい物でも見るかのように瞳を細め頷く景文。
「そうだね」
 掘り炬燵でのんびりと過ごせそうだけれど、隣に居る彼女のお蔭で心臓の方が少々頑張るかもしれない。
 青系のビーズとピンク系のビーズを選ぶ指先、自然と近くに寄った夜ヱ香の髪の香りに、伸びそうになった指先をぐっと握りこむ。
 ここは我慢だ。
 選び終えたのに気が付き、ふと思う。
 そうだ、ビーズを選ぼう。
 景文のそんな葛藤を知ってか知らずか、夜ヱ香は鞄からフェルトを取り出したのだった。


(戦いばかりしてると、気が滅入るし……)
 ラピスラズリを手に取り陽波 透次(ja0280)は、ちょっと溜息を付く。
 今日は戦いではなくのんびりと気分転換がてらスマホのストラップを作る予定だ。
 どれにしようか、伸ばした指先が迷う。
 迷う指先の先では、一川 夏海(jb6806)が赤いビーズを選んでいた。
(女房へのプレゼントにもなるし宮部にも久しぶりに会えるし悪かねェな)
 自分らしく赤い色をまた一つ、手に取る。 
(ビーズアクセサリー、うぅ、上手く作れるでしょうか……)
 Kamil(jb8698)は初めてのアクセサリー作りにわくわくと不安を抱えていた。
 けれど、周りの楽しそうな雰囲気を感じればビーズを選ぶ視線もどこかわくわくの方が強くなっているようだ。
 茶色や白、黒、灰色……纏まった色合いのそれは、自分のイメージカラーだ。
 そんなKamilに夏海が問いかける。
「何を作る予定なんだ?」
「えと……ブレスレットを作ろうかと」
 それはいいな、と笑い合う横で、北條 茉祐子(jb9584)がビーズをそっと一つ手に取った。
 寮の友人と、自分にブレスレットを作ろう、そう決めていた茉祐子は、友人には黄色のを、自分には青色のビーズを手に取る。
 淡いグラデーションにするためにも、ビーズの色選びを始めるのだった。
「ビーズ、綺麗ですね……」
 そういう茉祐子にツオナ・ザザーブ(jc0622)も素材を見つめながら頷く。
「本当、綺麗よね」
 まだ何を作るか決めていないため、選ぶ所まで行かなかったが、ふと、何かを再現しようと思い付いた。
 それならば、これとこれ……。
 指先が迷うことなく素材を拾い上げて行く。
 ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)も迷いなくビーズを拾い上げていた。
 娘である黒田 紫音(jb0864)が持つ、謎の生物であるうしゃぎを作り上げる予定なのだ。
 どことなく紫音に似ているのだが、ロップイヤーウサギ的なモノという、本当に謎な生物である。
 モチーフとしてキーホルダーを作ろうと一つずつ色を確認していく。
 その隣では紫音が、持ってきたビーズとツールセットを取りだす。
 出来上がった作品は、手伝っているBARに置く予定なのだ。
「パパ、選び終わった?」
 その問いかけに、ジェラルドが頷いた。
 同じように問いかけるのは虚神 イスラ(jb4729)だ。
「ジズ、メッセージジュエリーって知ってる?」
 問いかけられたジズ(jb4789)といえば首を傾げた。
「めっせーじ……は、言葉、じゅえり……は、たからもの……? だいじ、な、言葉?」
 それに、イスラが微笑んで意味を伝える。
「天然石の頭文字を並べると、一つのメッセージになるのさ」
 その言葉に、瞳を瞬くジズ。なるほど、と頷いた。
「いし、頭、文字、言葉。わかった」
「これを組み込んだ装飾品を作ってみないかい?」
 こくこくと頷くジズに、一つ一つ鉱石の名前を書いた紙で説明していく。
 どこかぼんやりしているとも見えるが、一つ一つ石に落とす視線は真剣にも見える。
 ジズなりに真剣に耳を傾けながら吟味していけば、イスラも大切な人に贈るために、選び始めた。


 なかなか決まらなかった者、すぐに決まった者……。
 それぞれ選び終えれば、思い思いの作品を作って行く。
 吟味に吟味を重ねて選ばれた素材達。
 何人かアドバイスをする者もいるお陰か、特に問題もないスタートを切ったのだった。



●何を作ろうか?
 置かれたミカンのオレンジ色がまぶしい。
 一人で黙々とする者、話しながらする者、さまざまだ。
 ぬくぬくな炬燵は、入った者を逃がさないとでもいうようにぽかぽかと皆の体を包み込む。
 

 するめチョコを置き、皆に勧めた後炬燵にと入るヒロ。
 お茶よりもこれはお酒が欲しくなるような……そんな声が聞こえた気もしたが、とりあえずお茶汲みはまだ必要なさそうだ。
 自分も一つ手に取り口に入れつつ、暫し迷う。
「……」
 きょろきょろと周りを見渡し、見よう見まねで鉱石を手に取る。
 数珠は鉱石を使うことが多いため、あながち最初の感想は間違えていなかったかもしれない。
 針を糸に通すのに普段二時間掛かる不器用者である。
 克服しようとやってきたものの、このままだと最初の鉱石を通すまでに二時間は掛かりそうだ。
「あ……テープか何かで、抑えると楽ですよ」
「なるほど、じゃぁここは……」
 Kamilに教えてもらい、疑問も質問すればなんとか出来そうで。
 素直に意見を受け入れやっていくヒロならば、途中ぶちまけたとしても、なんとか最後まで終わらせることが出来そうだった。 
 Kamilはアドバイスをした後、再度自分の作るブレスレットへと視線をやる。
 一個一個丁寧に……。
 茶色のビーズを何個か通した所で、一旦休憩。
 ミカンだけじゃなくマカロンにと手を伸ばした。
 紫音が持ってきた、マカロンは伸びてきた手が一つ二つと浚っていき、 美味しいとあちこちで声があがる。
「うむ、やはりこういうのは簡単なフォルムのモノに限るね☆」
 ジェラルドの手先は器用な方なのだが、あいにくあまり弄ったことのないビーズである。
 少々本来思っていた物よりも、不細工になってしまうのも仕方がないかもしれない。
 とはいえ、愛情を込めて作りあげる一品だ。
 愛嬌のある一品になるに違いない。
 娘の紫音といえば、様々な色のビーズを使い、沢山のモチーフを作りあげて行く。
 普段からよくビーズで小物を作っているため、その指先は迷うことなく動いて小鳥を作りあげて。
 写真を撮ってキャラコミにUPするのもいいだろうか。
 お喋りをしながらの作業はいつもよりも捗る気がした。
「いつもは貰ってばかりだからねぇ♪ はい、あんまり上手じゃないかもしれないけれど☆」
 ジェラルドから渡されたうしゃぎに瞳を瞬く。
 自然と毀れた笑顔が何よりも嬉しいということを伝えていて。
「ありがとう、パパ」
 そんな仲良し親子の傍で、景文が手を動かしていた。
 ストラップを作る指先は、迷うことはない。
 手先の器用さは、ルアーや手縫い作業が出来ることからあると、思っている。
 とはいえ、これはまたちょっと違う分野だ。
 少々ぎこちなくなるのも仕方がないか……。
 ちょっと手を止めてお茶を一口、そんな景文の近くでは、夜ヱ香が黙々と手を動かしていた。
(掘り炬燵……? 中はどうなってるの……かな)
 そんな疑問から中に入る前にちらりと覗けば、中は電気で温められていて。
 淡いオレンジ色の光が暖かな空間を生み出していると気が付けば、そっと足を中に入れたのは記憶に新しい。
 トレーにフェルトを敷いて、紛失防止に努める夜ヱ香に関心したように景文が瞳を細める。
「お2人はミカン居るかしら?」
 静香がそう言ってそんな2人の元へやってくる。
 なんだかお邪魔虫な気がしないでもないが、そんな静香に挨拶すれば、此方こそよろしくお願いいたしますわ、と返事がきた。
 さらにお近づきの証にとばかりに山盛りのミカンを置いていく。
「夜ヱ香さん、食べる?」
「……ありがとう」
 少し悩んだ後、一つ受け取るのだった。
 ミカンを一つ手に取り、もぐりと一口。


 今日すでに何個目かのミカンに舌鼓を打ちつつ、落下防止用の腕に通す物を作る透次は、丁寧に通していく。
 小物作り自体は元々好きだから、この作業もまた楽しい。 
 依頼で判断力を高められるよう願いを込めていれたラピスラズリを配置して、シンプルに作りあげて行く。
(こういう場はやっぱり女子率高いな……)
 ちらりと周りをみて、同士が居ないかと探してみれば、結構1人で参加している者も居る。
 四色分のビーズコードを作ってる潤と目が合う。
「そっちはどうなんです的な?」
 潤の問いかけに、まぁまぁかなと透次が微笑を零す。
 そちらは? との問いに今作っているビーズコードが丁度終わる。
 これから連バーにとりつけて、四つ編みを開始すると告げれば、頑張ってと答えが返った。
 途中で形を整えながら、バランスよく、出来るだけきつく編み上げていく。
 編まれていく緑色のビーズが音を立てた。
 さて、そろそろ丸カンの用意も必要か。
 そんな時に、近くでゆらりゆらりと揺れる影に視線をやってみる。
「……」
 がくん。
 頭がふれ、机とごっつんこしそうな勢いである。
 良く授業中に見るアレを見事に再現する広星にヒロが声を掛けた。
「大丈夫なの?」
「大丈夫……」
 でもなさそうな広星が、眠気覚ましにと伸ばした指先にミカンを渡すのは透次。
 酸っぱくて美味しいよとの言葉に、ありがとうと頷き一つ口に含んだ。
 酸っぱさに瞳が見開き……指先が先程の倍動いたと思ったら。
 すぐにペースダウンして、一個ずついれる動作よりも、うとうとと頭を揺らす作業の方が多くなる。
 今度はビーズをぶちまけてしまった広星が居た。


 ぶちまけられたビーズをそっと戻しつつ、夏海が隣で悪戦苦闘する静香に声を掛けた。
「よォ、おチビちゃん。何か困ってる事はないかい?」
 魔法の窪みによって、あまり手先が器用じゃない夏海でも無理なく作ることが出来る。
 その魔法の窪みに頼っても悪戦苦闘する静香をみれば、確かに困ったことばかりであろう。
「……、!! おチビさんではありませんわ! これから凄くいっぱい沢山大きくなるんですのよ!」
 夏海さんに負けないぐらい! と少々悪戦苦闘から反応が遅れた静香が言えば、夏海が笑う。
 少々言葉が可笑しいのは、やはり身長が小さいのを気にしているからだろうか。
「そうか。んで、手伝いは必要かい?」 
 その言葉に、手伝ってほしいと答えが返った。
 自分のはもうそろそろ終わりそう。
 お土産分も作り終わったことだし、静香を手伝うのもいいだろう。
「あァ〜……炬燵なんて何年ぶりに入ったんだか……。あったけェ〜……」
 ぬくぬくと温まりながら、手伝い始めるのだった。
 そんな2人の傍で 、黙々と試行錯誤していたツオナだったがちょっと休憩しようと視線を上げた。
 目に入るのは山盛りのミカン。
「ミカンなんて”未完”を連想させる物を置くなんて……」
 お茶と饅頭を用意し、一口食べつつやはりこのビーズはここではなく別の場所にした方がいいのでは、と思考を巡らす。
 未完を連想させるミカンに手を伸ばさなかったものの、稀に見る拘りを発揮中のツオナ。
 このモチーフが完成するかどうかは、誰にも分からなかった。
 デュモルチェライト、アースクレイストーン、エンジェライト……天然石をビーズやガラス玉と組み合わせてブレスレット作るイスラ。
 その指先が、大切な人に伝えたい思いを綴っていく。
 ぬくぬく炬燵の中で、手先は器用と言えどやったことのない作業故、壊れ物を扱うように慎重に丁寧に一つ一つ紫の石を入れていく。
 せっかく教えてもらったけれど、アルファベットが分からなかったため選んだ紫の石。
「イスラの、色。きれいな、色」
 満足げに言うジズに、イスラが視線をやった。
 作り上げるブレスレットのその意味は「Dearest(最愛の人)」。
 この意味を伝えるのは、ジズがちゃんとそういう感情を理解してからだ。
 作る手を止め、一つ手に取ったミカン。 
 剥いたそれをそっと口元へ運べば、ジズがあーんと唇を開いた。
(何か雛鳥にごはんあげてる気分だなあ)
 もぐもぐと食べる姿に笑みが毀れる。
 

 仲良がいいイスラとジズの脇で、茉祐子が色の配置を見ながら作っていく。
 窪みがあったお蔭で、出来上がりが想像しやすかった。
 一つ一つ丁寧に通していくビーズ。
 レモネードが好きな友人のために作っている黄色のブレスレットも、そろそろ終わりそうだ。
 甘ずっぱいレモネードのような色合いに、友人の顔が浮かぶ。
 次は四季の空の色のようなグラデーションを出せるように、頑張ろうと思うのだった。
 隣に座る温もりが、とても暖かい。
 悠人は最初にブレスレットを作ることに決めた。
 威鈴の誕生石であるトルコ石とラピスラズリを中心に、自分の誕生石であるアクアマリンを入れてみる。
 暫し見て配置を決めた後、威鈴の瞳の色を思わせるアベンチュリンも入れて、明るめの配色になるように試行錯誤。
 守護、幸運、幸福な恋愛や夫婦生活、癒しの効果に対人関係……沢山の威鈴に身に付けていて欲しい効能や願いを込めた一品だ。
 関係のある石をどうにか綺麗に纏め上げれば、一つ一つ願いを込めて紡いでいく。
 一緒にブレスレットを作る、この時間がとても楽しい。
 悠人の事を考えて小さめの大きさの空色縞瑪瑙と硫黄水晶と透輝石の順に通していく威鈴は、これを完成させたら天眼石のみのブレスレットも作ろうとこっそりと決意した。
 どんな反応をしてくれるだろうか、想像する時間も楽しい。
 そんな隣で、何か極端な物でも作ったら突っ込みを入れようと思っていた悠人だったが、今の所そのような気配はない。
 楽しげな様子に此方までわくわくしてきて。
 そうだ、材料が余ったらストラップも作ろう……。
 此方もこっそりと思うのだった。


 のんびりとした時間が過ぎていく。
 炬燵に入って過ごす時間というのは、なんだかゆっくりと時が流れるように感じさせて。
 けれど、確実に過ぎていく時間。
 作品が出来上がった頃、声をかけたのは静香だ。


●何が出来た?
「そろそろ作品、出来ましたかしら?」
 静香の言葉と共に、出来上がった物の見せ合いっこが始まった。
 ぬくぬくの炬燵から出る者はそう居ない。
 手を拭いた後作品をそっと手に取る者、来た者同士で見せ合う者、さまざまだ。
 

 潤は全員のを見ていく。
 同じブレスレットでもやはり違うし、逆に手の込んだものもあった。 
 紫音の作った、鳥やクロスやハートや球体。  
 それにジェラルドが作った謎の生物? のうしゃぎを見て潤がほぅっと溜息ついた。
 さらに犬や猫もある。
「2人とも、凄い的な?」
「ありがとー潤」
 紫音が笑う。  
 饅頭やお茶を一気飲みという眠気覚ましと共に頑張った広星は、なんとか一つ、虹色のブレスレットを作りあげていた。
 それを目の前の机に置き、ぱたんと横になる。
 隅に座った理由はこのためだ、誰の邪魔にもならぬよう、頭まで潜り込んですやすやと眠りに入る広星。
「あれ、広兄眠っちゃったのかな?」
 紫音がいい、起こさないようにブレスレットをそっと見る。
 出来るだけ早く作りたい、と頑張っていたブレスレットだ。
 早く出来たかと言われればそうでもないかもしれないが、とても綺麗な虹色が、きらりと輝いた。
 そんな娘の近くでにこやかにジェラルドが声を掛けた。
 何度か依頼で顔を合わせたジェラルドに、茉祐子が軽く会釈をしながら首を傾げた。
 作り上げた黄色のブレスレットと青色のブレスレットが仲良く並んでいる。
「綺麗だね」
 茉祐子の青のグラデーションのブレスレットを見ていえば、茉祐子がお饅頭を片手に微笑んだ。
「ありがとうございます」
「そうだ、今度、お茶でもどう? ……いたたっ!?☆」
 みなまでいう前に、紫音がさっとその体をつねりあげる!
 容赦のないそのつねりに上がった声に、笑いが毀れた。
 

 笑い声が上がる中、炬燵の中でぬくぬくしながらミカンを口に運ぶ姿。
(炬燵でみかんはやっぱり格別だな)
 甘い物を食べまくった記憶は未だ新しい。
 あの時の依頼を思い出せば、このミカンの酸っぱさが恋しかった。
 見せ合う皆を見詰めつつ、やはり見せあいっこはちょっと恥ずかしい。
 自分はスマホにつけてひっそりと満足する。
 実用性を重視したそれは、手の中できらきらと輝いて見えた。
 そんな透次の行動に同じくヒロは恥ずかしさから、手で隠しつつ皆のも見ていた。
 見せて欲しいと言われれば、指の隙間からこっそりと見せる。
「とても綺麗ですよ」
 Kamilがそう言えば、ヒロが嬉しそうに微笑んだ。
 そんなKamilも手首に嵌めたブレスレットを光に透かして見る。
 自分カラーにしただけあってその身に映えた。
「おぉ、綺麗だな」
 夏海がそう言って笑ば、ありがとうと頷いた。
「しかしここはどこだ? 宮部ん家か? この饅頭はお前が作ったのか?」
 かなり今更な気がしないでもないが、静香に問いかける夏海に、静香が笑う。
 内緒ですわ、との答えに謎が深まるばかり。
「でもあの不器用さでこの饅頭は作れねぇか……買ったもんかね?」
 それに関してはその通りだったようで、静香から買ったものだという自己申告が入ったのだった。
 そんな雰囲気とは違い、どこかしっとりと甘い雰囲気を放つ2人。
「悠人……見て……?」
 最初に作ったのとは違う、こっそりと作りあげた天眼石でのみ作りあげたブレスレットを無邪気な瞳で見せる威鈴。
 そういえば先程ごそごそとやっていたのはこれだったのか、と微笑む。
「これも作ってたんだな」
「うん……♪」
 嬉しそうに笑う姿に綺麗だと伝え、そっと自分の作ったブレスレットを見せる。
 威鈴のことを思い作りあげたその一品。
 威鈴の瞳が嬉しそうに輝いた。
 世界で一つだけのお互いがお互いを思って作ったその作品達。
 机の上で威鈴と悠人の仲に負けぬとばかり仲良く並んでいた。 
 

 和気藹々としている中で、ケセランがころころ〜と机を転がっていく。
 遊んでいるのではない、これは掃除である。
「あげる……ね」
 そんなケセランの召喚主である夜ヱ香と言えば、いつも連れ出しお世話になっている景文にと青色のブレスレットを差し出した。
「ありがとう」
 景文の嬉しそうな笑顔。
 青色のブレスレットが景文 の腕に付けられる。
 どこか誇らしげに彩る青色が、夜ヱ香の感謝の気持ちだ。
 そんな脇をころころ〜と転がっていくケセラン。
 何度も言うが、遊びではない、掃除である。
 なんとなくシュールなそんな姿も、今は気にならない、そんな一時だった。 
 所で、まだ終わらない人達も居た。
 まだ終わらぬブレスレット。
 紫の石があともう少し、足りない。
 真剣に石を紡ぐジズにイスラがミカンを剥いて、一つ口にと運んだ。
 やがて最後の一個が紡がれたのを見て、イスラが唇を開いた。
 交換しないかい? という問いかけにジズが頷く。
 そっと渡されたのは出来立てのブレスレット。
「嬉しいな、大事にするよ。ジズの初めて、だものね?」
「はじめて? は じめて……」
 頷いた後、うっすらと微笑みを浮かべる。
「イスラに、あげる」
 その答えは、イスラの嬉しそうな微笑みと、今はまだ伝えない大切な思いを込めた、ブレスレットだった。
 そんな皆の楽しげな話声の中、その輪に入らない者が1人いた。
 せっせとビーズを手にとっては悪戦苦闘している。
 拘りが拘りをよんだその作品は、出来上がれば壮大な物になりそうであった。
 あったが、未だ終わらないツオナ。
「……」
 黙々と指先を動かすツオナの作品が出来上がるのはまだ先のようだ……。


 出来あがった手作りの作品達。
 それぞれ愛嬌があって、とても素敵なものばかりだ。
 一つ一つの作品に込められた思いは人それぞれ。
「さぁ、帰りましょうか!」
 壊さぬよう大切にそれらを持ち帰る足取りは、どこか楽しそうにも見えたのだった。 


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:12人

未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
白銀のそよ風・
浪風 威鈴(ja8371)

卒業 女 ナイトウォーカー
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
ご注文はうしゃぎですか?・
黒田 紫音(jb0864)

大学部3年2組 女 陰陽師
死のソースマイスター・
数多 広星(jb2054)

大学部4年4組 男 鬼道忍軍
硝子細工を希う・
虚神 イスラ(jb4729)

大学部3年163組 男 ディバインナイト
無垢なる硝子玉・
ジズ(jb4789)

大学部6年252組 男 阿修羅
優しき心を胸に、その先へ・
水無月 ヒロ(jb5185)

大学部3年117組 男 ルインズブレイド
撃退士・
鎌田 潤(jb5849)

大学部4年47組 男 ナイトウォーカー
ぬいぐるみとお友達・
酒守 夜ヱ香(jb6073)

大学部3年149組 女 アカシックレコーダー:タイプB
撃退士・
一川 夏海(jb6806)

大学部6年3組 男 ディバインナイト
撃退士・
志塚 景文(jb8652)

大学部6年162組 男 陰陽師
買い物上手・
Kamil(jb8698)

大学部7年50組 女 アーティスト
守り刀・
北條 茉祐子(jb9584)

高等部3年22組 女 アカシックレコーダー:タイプB
撃退士・
ツオナ・ザザーブ(jc0622)

大学部2年278組 女 陰陽師