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マスター:如月修羅
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2015/01/28


みんなの思い出



オープニング

●お餅マン登場!
「おっもちー!!」
 鏡餅だった。
 いや、鏡餅のようなディアボロだった。
 大人の両手で持てるぐらいの大きさの鏡餅で、ちゃんとつぶらな瞳とちっちゃいお口がついている。
 なんだかそういう生物だよ、と言われたらありそうな気がしないでもないちょっと可愛く見えなくもないディアボロだ。
 鏡餅のようなディアボロ……お餅マンが30体、空き地を占拠していた。
「おもっちー?」
「おもっちー!」
 なんだそれ、鳴き声か。
 会話が出来ているようなソレは、どうも怒っているようで。
 お餅マンの周りにはどうも誰かが捨てたのかお餅が落ちていた。
 ぴょんぴょこ跳ねながら怒っているようなお餅マンは、でもどこか悲しそうだった。


●お餅退治へ
「そのお餅マンは、とても柔らかくてすべすべです。
ぷにーっと、もちーっとしてまして、多分彼らの上にのっかったりしみたら気持ちよさそうですよ」
 ちょっとだけ夢見るように言った後、こほんと咳払いする。
「とても彼らは弱いです。範囲攻撃で一網打尽にすることが可能でしょう。
彼らの攻撃は、頭の上に乗ってるみかんのようなもの、を投げ飛ばす攻撃だけですね」
 依頼としては最上級に簡単な物となっている。
 けれど、と依頼人は少々言いにくそうに唇を開く。
「そのお餅マンは、どうも……お餅を粗末にされたことを怒っているようなのです。
確かに、お餅って好きな人は好きですけれど、余ったりもしますからね……。
空き地に捨てられたお餅に彼らは群がって何か相談しているようです。
このまま空き地から一斉に出て行かれても困りますし、早めに行っていただきたいのですが……。
出来れば、お餅の良さとか伝えていただけますとお餅マン達も喜んでくれると思うんです」
 いや、まぁ倒すだけなんですけど、と言う依頼人は苦笑を零した。
「すみません、皆様にお任せしますね。
上手く彼らの怒りを解くことが出来たら戯れることも可能ですよ」
 さっさと倒すか、少々遊んでから倒すかお任せ致しますと言った後、そうでしたと何か券を取りだした。
「近くでお餅大会をやっていますよ。
突き立てのお餅を食べたり、お餅をついてみたり、お餅を焼いてみたり……。
色々出来るみたいです。
これは無料券ですので、楽しんできて下さい」
 いってらっしゃい、と送り出すのだった。


リプレイ本文

●どちらをとるか
 お餅大会へ向かう人達だろうか。
 楽しげに笑いあいながら去っていく親子を見送るエイルズレトラ マステリオ(ja2224)。
 とっとと終わらせて合流したい。
 そんな気持ちであろうか。
 同じように合流したいけれど……としっかりとした防寒着(帽子、長靴、マフラー、手袋)で身を包む華子=マーヴェリック(jc0898)はお餅大会へ思いを募らせる。
 あまりにも今回のお餅マンを倒すには忍びない。
 かといって、このまま皆に託して1人でお餅大会へ行くのも気が引けた。
 そんな彼女の隣で、ぼそりと唇を開く者が一人。
「食べ物の恨みは怖いとは言いますが……」
 その相手が、まさかのディアボロ。
 然もお餅に愛情十二分のディアボロという話である。
 さらにさらに、数も多いとなれば、一体どういうことだというのか。
「冥魔の考える事は良く分からないですね……」
 それが、セレス・ダリエ(ja0189)の感想だった。
「悪魔からしてみれば……産業廃棄物ですかね」
 仁良井 叶伊(ja0618)が首を傾げる。
 あまり気乗りはしないけれど、数が多いこととどちらにせよ脅威には違いないと意識を切り替えた先で、空き地が見えてきた。
 何かぴょこぴょこ跳ねているのが確認できる。
「あれがディアボロでしょうか」
 今回ばかりは彼らの意見に賛同する……と雫(ja1894)が頷く。
 空き地につけば、話にきいていたのと変わらずもっちもち言いながらお餅マンが話合って居た。
(おぉ……お餅でござる! 拙者お餅大好きでござる!)
「日本独特の調味料によって齎されるその味まさしく和の心!」
 明らかにお餅なディアボロに、タクミ・カラコーゾフ(jc0947)のテンションは上がって行く。
 醤油もきなこもあんこも大好きなタクミからすれば、彼らの気持ちは痛いほど良く分かった。
 ユウ・ターナー(jb5471)は目の前で広がる光景にほぅっと溜息を吐く。
「何だかこのディアボロ……倒すのも可哀相な気がするよ……」
 そんな気持ちに一瞬なった。
「おもっちー!」
 もちもちぴょこぴょこ。
(でも何より、この見た目の質感! もちもちしてて気持ち良さそうなの☆)
 すぐに感想は切り替わった。
 とりあえず、もふりたい。
 声に出さず、表情にも出さずにセレスが言う。
「あのもっちもっち感は、やみつきになりそうですね……」
(ど、どう見ても、か、鏡餅ですね!?)
 小鹿 あけび(jc1037)はついこの間、記念品交換で貰った、鏡餅を思いだした。
 可愛く顔が描かれていたソレが、目の前のお餅マンと重なって行く……。
「どどどうしよう、もしかしてあれ、お餅マンだったんでしょうか?」
「あけびさん……?」
 華子が様子の可笑しいあけびに声を掛ける。
 この間貰った鏡餅です! と言うあけび。
「あたし、お汁粉にして、食べちゃったんですけど……! と、ととと……とっても美味しかったです!!」
 えぇ、勿論とても美味しかったですよ?! とヤケ気味な彼女に、叶伊が突っ込む。
「落ち着いて、それは本物です、今ここに居るのだけがディアボロです!」
「よよ、良かったですー!!」
 というわけでディアボロと触れ合うか触れ合わないか。
 それは皆の気持ち一つだった。


●お餅マンの憂鬱
「私にこのお餅さん達は殺せません……」
 どこか寂しげに見えるお餅マン達をみて、華子が瞳を伏せる。
「じゃぁさっさと倒そうか」
 エイルズレトラが情け容赦なく動こうとしたのに、ユウが止めに入れば、同様に頷く数名に、思った以上にもふりたい人が多いことが分かった。
「まぁ、いいんじゃない?」
 元より、もふりたいという人が居れば、少々目を瞑るつもりだったエイルズレトラが、一歩後ろにと引く。
 警戒したように此方を見ていたお餅マン達は、おもっちーと騒ぎながら様子をうかがっている。
 先に踏み出したのはタクミだ。
 そっと膝をついたタクミにお餅マン達がざわっとした。
「僕も、お餅好きだよ。日本のお餅、すごく美味しい。大好きな味」
 大好きな味。
 その言葉に、お餅マン達が顔を見合わせる。
「お餅そのままも美味しいけど、醤油をつけて海苔で巻いたり、きなこをまぶしたり……それだけじゃなくて」
 視線を合わせれば、つぶらな瞳がちょっとうるうるしていた。
「お雑煮とかお汁粉とか、色んな味で楽しめるのも好き」
 その隣で、セレスもぽつりとお餅マンを見つめながら囁く。
「……お餅の良さ……まあ、美味しい事、ですね」
 言葉は多くなくとも、気持ちが伝わればいい。
(……美味しい事は正義。それさえ伝われば良いでしょう)
 お餅マン達がじっと耳を傾け始めた。 
 このまま懐柔出来なければ力づくでもふるのもありだ。
 寧ろそれがいいかもしれない……セレスが思ったのが伝わったのか、びくりとお餅マンが震えた。
 そんなお餅マンを見て思い出したこと……。
 それは初めての依頼だった、とあけびは言う。
「時期的にってことで、お餅つきがあったんです。その時のお餅は、つき立てで、すごくおいしかったです!」
 思い出したのか、ほんわかと笑うあけびに、お餅マン達の表情も緩む。
 ゆっくりと近づいてきたお餅マンを手に載せれば、ぷにぷにーっとした……普通の鏡餅よりも柔らかい感触だ。
 気持ちよくて、うっかり嵌りそう……。
「すすすみません、喋り過ぎですか?」
 はっと視線に気がついたあけびに、エイルズレトラが首を振る。
 そんな様子を見ながら、同じように倒すことを優先しようとしていた叶伊が、エイルズレトラに声を掛けた。
「一緒に警戒しましょうか」
 2人も居れば、何かの拍子に逃げ出すお餅マンを容赦なく屠ることも出来よう。
 そんな2人にお願いしますね、と一声かけて地面に落ちるお餅を拾ったのは雫だ。
「多少カビが生えていても、表面で留まっているなら削ぎ落とせば平気ですよ」
 ゴミを払い、そっとお餅マンを見つめる。
 拾われたお餅に、どこかほっとしたようにも見えなくなかった。
「乾燥して硬くなっていても。揚げてあげれば美味しく食べられるのに」 
 彼らにはその言葉だけでも嬉しかったのだろう。
 ぴょんぴょこ嬉しそうに飛び跳ねる。
 ユウがそんなお餅マンの傍に寄った。
「お餅ってぷく〜っと膨らんでカワイイの!」
 貴方達もそうなのかな? とそっと屈んで伸ばした指先に、すべすべもちもちーなお餅マンがぴょこぴょこやってきた。
 ぷく〜っと膨らむお餅マンは攻撃ではなくて、喜びの表現のようである。
 すべすべした手触りに笑みが毀れつつぷにぷにと指先で押してみる。
「お餅って美味しいよね」
 だから、きちんと食べてあげないと。
 それに頷くかのように掌でぴょんぴょんするお餅マンは、また違った感触を伝えてくる。
「ふふっ……良い触り心地なの☆ 」
 笑顔になったユウに、お餅マンもなんだか嬉しそうに見えた。
 セレスもむにむにとしてみる。
 表情からは読み取れないが……多分楽しいのだろう。
 飽きることなくむにむにされているお餅マンは、でもどこか嬉しそうにも見えた。
 気持ちは通じあうのかもしれない。
 ぴょんぴょこテンションが上がってエイルズレトラと叶伊の元に来たのは、倒させてもらう。
 仲間が減ったというのに気が付いてないお餅マン達。
「平和? な光景ですね」
「……ディアボロとしてどうなんだろうな」
 なんだか牧羊的な雰囲気が漂っている中、2人は警戒を続けるのだった。
 そんな2人とは別に行動するのは華子だ。
「なんて事を……許してなんて言えないよね」
 雫が拾えなかった分のお餅を拾ってはゴミを払っていく。
 怒りが静まるように、そして感謝する気持ちを体現するように。
 丁寧に丁寧に拾っていく。
 暖かい格好をしている華子にとって、地面に膝をつくこともなんてことはない。
 膝をつく華子の近くでは、掌にのっかったお餅マンをぷにぷにしているタクミ。
「主食にもなって、デザートにもなって汁物にもなって……」
 どんな物にも合うお餅ってすごい。
 そう言うタクミの頭の上にも乗ったお餅マンは、おもっちー♪ と嬉しそうに言うのだった。
 もちもちと楽しそうに交流していたが、やがてそれも終わりを迎える。
「さぁ、もう終わりだ」
 そろそろ終わりにしてもいいだろう。
 エイルズレトラが言えば、先程止めたユウも今度は頷いた。 
「すみません、ちょっと私は捨てた人たちを探してきます」
「かなり時間も立ってたみたいでござるが……」
 それでも一応、と言い置いて去っていく。
 そんな雫を見送った後、そっと掌から離したお餅マンを見るタクミ。
 仲間達が武器を構えた。
「その姿で悪いことしたら駄目だよ。みんながお餅を嫌いになったりすること、しちゃ駄目だよ……」
 情け容赦なく、炸裂掌が爆弾風船がナイトアンセムがファイヤーブレイクがお餅マンを巻き込んでいく。
 こんがりと焼きあがるお餅の匂い……。
「ご、ごめんなさい、お餅は美味しくいただきますからー!」
 初めて見たディアボロ……これだけ可愛ければ……と思うけれど、げしんと鏡餅を割る要領で叩きこむ。
「大丈夫でござる、食べ物を粗末にした人間はバチが当たると決まってるでござるよ!」 
 そしてタクミの言葉に、お餅マン達が頷いたかのように見え……あっさりと倒されたのだった。
 周囲を壊さない程度に、ということでお餅マンが集まっていた場所だけが少々地面が抉れた程度である。   
 こうして脅威? は取り除かれたわけだったが、捨てた相手を探していた雫だった見つからなかった。
 けれど、やはり同じようにお餅をこれいらない〜と捨てようとしている人を見つけて、お説教する。
「確りと反省して下さい。不法投棄で罪にも問わせられますが、聊か大袈裟ですし無粋ですからちゃんと働いて下さいね」
 タクミの言うバチは、正当な形で返っていくようだ。
「じゃぁ、お餅大会へ行くでござる」
 楽しい時間の始まりだ!


●お餅大会へ
 楽しそうな笑い声が聞こえる。
 杵をつく音に合わせ、掛け声も聞こえてきて。
 叶伊が手伝いを申し出れば、会場運営の人からは手伝いは大丈夫だとの答えが返ってきた。
 ただ、力仕事が得意だというのならば、是非餅つきをやって行って欲しいとラブコールが来る。
「壊さないようにしないと……」
 渾身の力でやってしまえば、壊れるというか粉砕するレベルになるのは必須。
 手加減しつつ降りおろせば、子供達から歓声があがった。
 他の人がやっていたのとは違い迫力があるようで。
 力加減の修行になるだろうか。
 そんな叶伊の傍では、突き立てのお餅をハートと食べるエイルズレトラが居た。
 ユウと華子もお餅を作る体験の皆に混じり、沢山沢山作って行く。
「あ、どうぞだよ!」
「ずんだがないのが残念ですけれど……」
 エイルズレトラとハートに作ったお餅を差し出す。 
 もっちもちのお餅は柔らかくとても美味しい。
 順繰りに食べて行くお餅は、とてつもなく伸びて、ハートも格闘しながら食べている姿に、ちょっと和んだ。
 だがしかし、何かが足りない。
「……買いに行こう」
 エイルズレトラは一旦、会場を後にするのだった。 
「……上手く治療出来れば良いのですが」
 張り切りすぎて腰を痛めた老人に雫が癒しを与える。
 痛みがとれたと喜ぶ老人が、お礼を言いながら去っていく。
 見送った後、辺りを見渡せば皆が楽しそうに餅つきをしているのが見え、ほっと息をつく。
 不届き者も居ないようだ。
「……磯辺焼きもいいですね」
 そんな雫の傍らを歩いて行った人が持っていたそれに食欲がそそられた。
 ひと段落したら食べるのもいいかもしれない。
 あけびが雫を見つけてやってくる。
「雫さん、あ、あああの、一緒にお餅食べませんか?!」
 持って居たのはあんこのお餅だ。
 一緒に食べませんか? と言うのに、雫が頷く。
「美味しそうですね」
 2人で歩き出せば、やってきた人影が。
「エイルズレトラさん」
「あ。2人とも……一緒に食べる?」
 戻ってきたエイルズレトラの手には砂糖と醤油。
 これぞ至福のお餅のお供!
 ハートもきらきらと瞳を輝かせ、さぁもっと食べようと嬉しそうだ。
 華子も手伝いを終えて今はお餅を堪能中。
 お餅を美味しく頂いて、皆の笑顔を作り出して……せめてそれがお餅マン達の鎮魂歌になれば……と願う。
 タクミも皆と一緒に、夢にまでみたお餅を鱈腹食べている。
「美味しいでござるー!」
 一個、二個……口の中へと消えていくふんわりお餅。
 お雑煮とかお汁粉がないのがちょっと残念ではある。
 先程の焼いたお餅の香が忘れられない……とはセレスの談。
「……お餅ディアボロの悲しみが伝わってくるようです。お餅、美味しい」
 華子もその言葉に頷いた。
「本当にそうですね……」
 じっくりと見たお餅は、なんとなく先程のお餅マンに見えてこなくもない。
(……然し、あんな所にお餅を捨てるのは良くない……ですね。 あんな所でなくとも、食べ物……大切にしないと)
「こうして美味しくディアボロも食べれたら良かったのに」
 ぽつりと言うセレスの言葉に、ユウがじっくりとお餅を見た後、ぱくりと食いつく。
「美味しいねー」
 ユウもあんこときなこのお餅を口に運びながら、笑う。
 こうやって食べてあげることが、彼らのためにもなるだろう。
 それに、いっぱいいっぱい動いた後は甘い物が最高に美味しく感じた。
「お茶いる?」
「あぁ、是非いただきたい」
 叶伊の手が真っ先に上がった。
 お餅を食べるのにお茶もあれば尚更、疲れた体の癒しになるだろう。
 他にもいるかなー? と一緒に食べる仲間に問いかければ、欲しいと手が上がった。
 もう少し、楽しい時間は続くのだろう……。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:1人

撃退士・
セレス・ダリエ(ja0189)

大学部4年120組 女 ダアト
撃退士・
仁良井 叶伊(ja0618)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
天衣無縫・
ユウ・ターナー(jb5471)

高等部2年25組 女 ナイトウォーカー
その愛は確かなもの・
華子=マーヴェリック(jc0898)

卒業 女 アストラルヴァンガード
GEN-DAI NINJA・
タクミ・カラコーゾフ(jc0947)

大学部2年9組 男 鬼道忍軍
楽しい時間を奏でる・
小鹿 あけび(jc1037)

大学部1年158組 女 鬼道忍軍