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マスター:如月修羅
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/04/05


みんなの思い出



オープニング

●ふわもこの、……ディアボロさんです!
 悪魔は、ふわもこというのがあるというのを知った。
 なんとなくそれを作ってみようと思った。ふわもこ、と言えば動物だろう。なにがいい? そうだ、従順でふわもこと言えば犬がいいではないか。
 白い毛並み、耳がちょっと垂れているのが愛嬌だ。うるうるの瞳にふわっふわの毛並み。ちょっとかっこよさも足して仔ライオンみたいにしてみればいい。
 そして出来上がったディアボロは、確かにふわもこでそして主人に従順で、人をよく襲った。命令を守る姿も愛らしい。
 悪魔は大満足した。だがしかし………明らかに可笑しかった。だって、だって………。

●ふわもこ依頼だと思ったか!
 その日、撃退士である一人の小さな少女がやってきた。もちろんただでやってきたわけではない。依頼を携えてやってきた。
 ゴスロリ服に身を包んだ、黒髪の少女は名を宮部静香だと名乗った。
「白い毛並みに、耳がちょっと垂れてて、うるうるの瞳にふわっふわの毛並み。なんとなくガオーって言いそうな仔ライオンっぽいのを想像して欲しいんですわ」
 想像してみた撃退士達は、ちょっと和んだ。ちょっと分かり難いって人はポン・●・ライオンを想像していただくとよりわかりやすいかもしれない。
「まず、そんな顔を想像してもらってから………その後、ボディービルダーを想像してほしいんですの」
「なんで」
 おい、可愛い物からなぜそんないかつい物を想像しないといけないんだ! そんな声が上がるが、説明している方も額を抑えていた。想像力がぱーんしそうっていう表情だ。
「ふわもこ依頼だと思われましたか? 違うんですの」
 ど、どう違うっていうんだ……そんな雰囲気が漂う。だがしかしめっちゃ嫌な予感がします。っていうか、ボディービルダーっていう言葉で想像つくよね、その先あんまり言わないでほしいなぁ……っていう雰囲気を感じ取った静香はそれでも言葉を紡ぐ。
「そんな仔ライオンみたいな顔をもった、体はむっきむっきのボディービルダーのディアボロを倒す依頼なんですわ」
「やっぱりなー!!!!!!」
 悪魔のふわもこの基準意味わかんない。そんな表情を浮かべる静香である。
「わたくし、一人では流石に倒すというか……えぇちょっと色々無理でして。皆様のお力を借りれたらと思いましたの」
 場所はわたくしが後から説明しますわ、と静香が言い、そして小さく、小さく攻撃方法等を付け加えた。必要な情報だが、とても言いたくないのわかります。
「まずは、仔ライオンらしく噛み付きをしてきますわ。がぶっと。そして、むっきむきの腕で抱き着く攻撃もしてきますわ。一般人ならそれで骨が折れてあの世いきですわね」
 想像してみてください。想像力が拒否しても想像してみてください、阿鼻叫喚しか想像つかない。
「嗅覚が鋭いですから、人間を見つけたらそれはもう素晴らしい走りで近寄ってきますわ。どうも、思考は犬のようですわね、飼い主……悪魔に従順で命令通り人間を襲う。けれどそこは犬らしさも残っておりまして……」
「残って、おり、まし、て?」
「そりゃぁもう、盛大に抱き着いてきます。汗でてかてか光る肉体美を披露しながら抱き着いてきます」
「…………」
「あ、ぺろぺろ舐めてくることもあると思います」
 ぺろぺろ舐めるというのには攻撃能力はないが、色々精神ダメージが強そうである。
「あ、大切なことを忘れる所でしたわ! 二体、しもべを召喚いたします」
 静香と撃退士の視線が絡み合う。そして静香が頷いた。
「しもべはディアボロよりはかなり弱いですが、その代わり後衛に居る人を狙うようですわ。ボールを投げてきますの。勿論普通のボールじゃありまんことよ? 攻撃ですわ。なんか犬の持ってこいを連想させますわね。そうそう、幾ら見た目がギャグっぽいからと言って油断いたしますと逃走したり、重症をおったりいたしますわ。気を付けてくださいませね。攻撃力は、かなりあるのですから」
「わかった、見た目に反して? 強いってことだな。……ところで容姿を説明しないって所にすでに諦めの境地を感じるんだが、あえてきこう。して、その容姿は」
「…………同じものが三体ってことですわね」
「やっぱりなー!!!!!!」
 本日二度目の雄叫びが上がった。


リプレイ本文

●ふわもこじゃ、ないんですよ
 静香から貰った地図を片手に、袋小路等を探すうらは=ウィルダム(jb4908)と雫(ja1894)。だがしかし、残念ながらそのような場所はなかったようだ。その変わり、周辺の詳細はよく分かった。どのような逃走経路を取るだろうかとぼんやりながらも検討がつく。
「まぁ大丈夫だよね」
「そうですね」
 二人は地図をしまいながらそう言い、改めて皆にと伝える。皆もそれぞれきちんと読み込んでいたので、一応逃走経路の検討等をするが卓上の理論。現地に行ってみないことにはよく分からないだろうという結論に至った。その時だ手が上がった。
「あの、私ちょっと最初は、様子がみたいですね。缶詰とか、ガムとか持ってきました。反応とかみたいです、いいですか?」
 雁鉄 静寂(jb3365)の提案に否を唱える人は居ない。というか、それで犬の特性がどのくらい強いか判別も可能だろう。
「……ふわもこ……ですね……」
 華成 希沙良(ja7204)が小さく呟く。それに頷く海城 恵神(jb2536)。にっと笑って隣に立つ希沙良の肩を叩く、めっちゃ今から会える相手が楽しみでしょうがない様子が見てわかる。希沙良もそれにつられるかのように、小さく微笑みを浮かべた。
「ふわもこ筋肉ムキムキマッチョメンの変態とな! これは是非一目みとかんといかんね!」
「そんなこと、聞いてません!!」
 雫の驚愕の声が変える、え? となる面々。今回はふわもこもどきの依頼だったはずなのだが……?
「私も可愛い生き物に会える! そんな話をきいてきたんですけど……蓋を開けてみれば相手はなんと顔だけ可愛い体がマッチョの変態。しかも担当する本体は抱き付いてペロペロ舐めると言うじゃないですか」
 今回一緒に本体を抑えることになった平地 千華(jb5018)がそう言って首を傾げる。
「初依頼だし、いいよね♪ ……なんて軟弱なことを思ったのが悪かったのです、はい……」
「う、嘘……」
 実は依頼説明で顔の部分の所しか聞いていなかったのだ。落ち込んでいたが、ふつふつとやる気、もとい殺る気が湧いてくる。なんでそんなもの作った、私の気持ちを返せ、そう思っても仕方ないだろう。
 かくも現実は非常なるものなのです。

●こうなるってわかってました……よね?
 悲喜こもごもひっくるめて現場につけば、どっからかわいてでてきた、ふわもこもどき! それは素晴らしい肉体をてかてかと光らせながら迫ってきた。
 にーんげーんだー! と、その瞳はとても、そう……とてもきらきらしていた。純粋なまでの殺る気である。純粋と殺る気が両立するならばだが。
「何でしょうね……罪悪感が全く湧かず殺る気が溢れて来ます」
 絶対零度の視線でふわもこもどきを睨みつける。というか、楽しみだったのに、ふわもこ! そういう気持ちであろう。悪魔の美的センスを恨んでほしい! 
「うわぁ、と言いたくなる私の気持ちは言うまでも無く皆分かってくれると思っているよ。今私達の心は一つになったね、素晴らしい事だ」
 うるはがそう言って、頷く。確かに、今皆の気持ちは正しく一つだった。
「悪魔の美的センス、理解できない……」
 寧ろ理解できない方が幸せじゃなかろうか。うずうずしていたのは静寂だ。さっと取り出したるはガム(犬用)!
「さぁ、ガムですよ!」
 ぽーんと投げられたそれに、ふわもこもどきが食いつくと思ったか! 当たり! 食いつきました!! てらてら光る巨体を宙に踊らせ、わおんと鳴きながらはむはむしている。悪魔には貰えなかったのか見えない尻尾がぶんぶん振られる幻想が……見えたら気持ち悪い。
「犬……ですね」
「犬だね、ということは遊び放題だぜ!」
 恵神の瞳がきらんと光る。今日のために犬用ビスケットもってきて、ムツ○ロウばりの何かをする気満々なのだから。わふわふはむはむしている顔だけはとても愛らしかったが、ものすごい体の部分が気持ち悪い。想像してほしい、マッチョマンが四つん這いである。一体誰得の光景なんだ。
 とかやってる間に透過能力を無効化する領域を展開する特殊な空間ができあがっていた。そして現れるは二体の同じ……あ、手にボールを持っている! 体育座りで待っていた僕。微妙に可愛くみえなくもない。
「……ひとまず……右をA……左をB……?」
 希沙良の言葉に、恵神が走り出した!
「よっしゃー取り敢えず本体は強い人達に任せてしもべAは私に任せるがいい!」
 ペアである希沙良も必然的にAとなる。それにより、静寂とうらはの攻撃対象も決まった。
「お手! おかわり! ふせ! ち……」
 それに全部答える僕A! ぶっちゃけ最後のは犯罪的だったので、モノケロースU25を構え、撃った希沙良によって阻止される。どこに当たったのか、悶絶してごろごろごろごろーっと転がる僕A!
「見たく……ない……」
 まぁそりゃそうだ。そして、アウルの力で作られた鎧を恵神にとかぶせる。それは守るための力となり、恵神にと加護をもたらす。悶絶していた僕から転がったボールを手に持った。にこぉっと笑顔を浮かべる。
「ほーらとってこーいっ!」
 そして、それに反応してしゅばっと立ち上がってボールを追いかける僕A! ダッシュするその姿からは汗がきらりと光って落ちた。勿論ただ見送ることなどしない。希沙良の射撃と、それを追いかける恵神!
「……サポート……させて……下さい……ね……」
 追いかけっこのような、鬼ごっこのような物に変化している。ボールとったどー! という表情をして見上げる僕Aに、わっしゃわしゃと頭を撫でまくる! だがしかし、顔ばかり可愛いがお座りしている体部分はむきむきマッチョだ、怖い。
「よーしよしよし! ほら、ビスケットだよー」
 そんなの気にしないとばかりに撫で撫でしてビスケットを食べさせる。それは、ムツ○ロウさんのようだった。ほら、あの噛まれても微動だにしない、あんな感じである。
「………、………シュール」
 とはいえ、一緒に戦っている希沙良にはチャンスである。それはもう的確にばっしばし攻撃を当てまくっていた。勿論、恵神だってこれは遊んでいるわけではない。きちんと逃走しないようにあらん限りの知能戦を繰り広げているのだ。犬の特性を無駄なく理解し利用する。高度技術である。
(後ろは我が身を盾にして守って見せるぜっ!)
 そして、とうとう魔の手が延ばされた。がしっとそのむっきむきの腕がありがとー! とでも言うようにぎゅっと抱きついてきたのだ! これが普通の人ならば背骨がばきぼきっと逝ってしまいそうだったがそこは撃退士。加護の力もあり堪える。
「はっはっは! よさんかよさんかー……やめるんだぜぃ!!」
 ボコォ!! そんな音を立てて膝蹴りが決まる。
「悪い子にはお仕置きだぜぃ?」
 にやり、と笑った恵神と希沙良が視線を交わし合う。ここからは、本気の殺り合いだ。
「……さぁ、いきます……」
 その頃僕B班といえば。
 僕Bに抱きつかれていた。ボールで攻撃してくるんじゃなかったのか。そんなことを思うが、実際はぺろぺろされていた。ふるりと銀の髪が揺れ、艶っぽい声が上がる。
「ゃ……あぁ……っ! そ、そんな所を舐めちゃ………っ!」
 だがしかし、よく見てみよう! 舐めているのは腕でした! 無駄に色っぽい。そしてふっと真顔に戻り……。
「……とか言ってると男性諸氏前屈みになると思うかい?」
 ………もしもここに男性諸君が居たら、なっていたかもしれない。しかし今は女性陣だけだったので、とりあえず首を捻ってみるに留めた。ちなみに、その際もうらはに当てないように細心の注意を払った静寂の魔導書から放たれる光の弾丸が炸裂する。それはてらてら光る肉体に吸い込まれ、傷をつけた。
 きゃん! と悲鳴をあげて、ボールがその手から剛速球で静寂にと向かう。
「静寂には指一本触れさせないさ!」
 流石にボールは阻止できないが、その肉体を先に行かせることなどしないと白虎八角棍をてらてら光る筋肉質な腹にとアウルの力を込めて強烈な一撃を放つ! その衝撃は僕Bを地べたに這いずらせるには十二分だった。
「……っいきます」
 腕をさすっていったボールの所為で、流れた血が地面を染め上げるが、攻撃を緩める理由になどなりはしない静寂がそのまま夜空に華を咲かせる花火のように、広範囲に色とりどりの炎を撒き散らし爆発を起こす! それは近くで戦っていた僕A、本体すらも巻き込み盛大な爆発だった。
「そのまま伏せ!」
 僕Bが立ち上がろうとした所にさっと命令する。命令されなれた僕Bはそのまま大人しく伏せをしているが……その、なんだめっちゃその、背徳的な光景に見えなくもなかった。
「そう、いい子だ……そのまま這い蹲っていると良い」
 ぐりぐりとその顔を踏むが、犬はどことなく恍惚としているような……? 静寂にとっては攻撃チャンスであったが、視線をそっとわずかに逸らしてしまったのは誰にも責められないだろう。
「さあ、ハッピーエンドを手に入れよう」
 うらはの楽しそうな声が響く。 
 そして本体を抑えていた組はというと。
 爆発で倒れた本体の顔を此方も雫が踏んづけていた、此方もか! 此方はたまたま視線をあげた先がスカートの中をみる一歩寸前だったのだ。これは正当防衛である。
 ちなみにヒリュウがそんな本体のおしりを踏んづけていた。なんというか。
「シュールだよね……」
 初依頼がこんな濃くていいのか、とちょっと思った千華だった。多彩な武器を取りそろえ、本体の逃走阻止にと動いているが……。
「でも依頼だしちゃんとしないと……トホホ。初依頼、無事に帰れるといいな……色々な意味で」
 ちょっと遠い目になるのも仕方がなかろう。踏んづけられている所からどうにか転がって逃げた本体が、立ち上がりすぐそばにいた雫にと襲いかかる!
「やめ……!」
 最後まで言葉にならなかった。ぎゅうーっと抱きつくそれは骨がきしむ、そして恐れていたことが起こった! そう、本体こそが元祖(?)ぺろぺろ攻撃……攻撃能力はないが……である!
「…………!!!!!!!」
 少女に、むっきむきの腕が絡んでいる時点で犯罪ものだと言うのに、それが可愛い顔とはいえぺろぺろと頬を舐めるのだ。ちなみにそれは子犬がぺろぺろ舐める程度の可愛らしいものではあるが、下がむきむきマッチョである。どう考えてもアウトだ!
「た、助けるよ!!」
 目に見えないほど細く、標的を絡めとり肉を切り裂く金属製の糸が、曇り空のような鈍い灰色を煌めかせながら本体のむきむきマッチョな足にと絡み、引き剥がした! きゃん! と悲痛な声が上がるが慈悲等無用。
 無言で顔を拭った雫が、絶対零度の瞳で見つめた。
「貴方達に生きる価値は有りません」
 そこからは、合流を待つこともなく倒そうという意志が見て取れたのだった。
「行きましょう」
「おっけー! じゃんじゃんいっくよー!」
 ヒリュウ、雫、千華の猛攻撃が始まる! 抱きついてこようとする本体を上手く翻弄し、逃走する隙さえみせない。
 やがて、僕A・Bを倒し終えた四人が集まる。ここからは全員で対処だ。さぁ、もう終わらせて差し上げましょうと皆の視線がぎらぎらしている。
 それを見た本体が、あ、これはダメだ、というように逃走のそぶりを見せた。
「いかせません!」
 静寂が体ごと体当たりする。今まさに逃げようとした本体は大きくそれにバランスを崩して顔からどっさーとスライディングしていった。もともとぼろぼろだった筋肉が砂まみれになる。ちなみに逃走阻止用に置いてあった玉ねぎスライスの匂いにきゃん! と悲痛な声をあげた。
「よし、もう飽きた、終わらせよう」
 恵神がそう言ってトンファーを構えなおす。
「撃退士の魔の手からは逃れられないっ!」
 そのまま首にトンファーを突き刺す! 合わせるように雫、静寂、うらは、千華、希沙良の攻撃が飛来する! それらはぼろぼろの本体の体の上で炸裂した。
「残念、サーバント達の冒険はここで終わってしまったのだった!」
 そして、とうとう本体も沈んだのだった……。
 全員の視線が、あぁ、漸くこの依頼終ったのか……とにじませていたのは、言うまでもない。

●お疲れさまでした!
 きらきらしている人と、ぐったりしている人に別れた今回の依頼。
「疲れた……」
 まさにその一言がこの激戦を現していた。皆様お疲れさまでした! と来ても居ない静香がサムズアップしたように見えた。あぁそうだったと、雫がうっすらと微笑む。
「来なかった静香さんに文句を言いましょう、そうしましょう。その権利があるはずです」
 その言葉に、数名が賛同する。その後、どうなったのか……それはまた別のお話。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
薄紅の記憶を胸に・
キサラ=リーヴァレスト(ja7204)

卒業 女 アストラルヴァンガード
常識は飛び越えるもの・
海城 恵神(jb2536)

高等部3年5組 女 ルインズブレイド
朧雪を掴む・
雁鉄 静寂(jb3365)

卒業 女 ナイトウォーカー
撃退士・
うらは=ウィルダム(jb4908)

大学部3年153組 女 ルインズブレイド
見つけてあげたくて・
平地 千華(jb5018)

大学部3年264組 女 バハムートテイマー