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マスター:如月修羅
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:22人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/10/08


みんなの思い出



オープニング

●栗合戦
「栗合戦をいたしませんか?」
 そう言ってとある栗拾いの農家からもらったパンフレット片手に宮部 静香 (jz0201) が微笑んだ。
「栗合戦は制限時間が一時間の合戦ですわ」
 一体どんなことをするんだ? との問いかけに、静香がどこから持ってきたのかホワイトボードにペンを走らせる。

1・二チームに別れる。
2・それぞれのチームで最終的にどのくらい採れたかを競い合う。
その際は、栗の数(毬栗)を数える。
※妨害もありだが、怪我がないように注意すること。
※毬栗は痛いので、厚手の服や手袋を使うこと。
※用具は貸出される。
勿論、持ち込みも可能。

3・結果発表の後、優勝チームには(手製の)メダル が配られる。
4・その後は栗ごはんとモンブランが振る舞われる。
5・栗合戦で集めた毬栗はお土産になる。

【重要】
妨害有りなので、それも含めて楽しめる方!!


「と、こんな感じですわね。
今回は私も参加いたしますわ! 便宜上、Aチーム、Bチームと一応つけておきますけれど、皆様で名前を付けてくださって大丈夫ですわよ。
わたくしは、人の少ないチームに入らせていただきますわね。
ただ、もしも物凄く偏った場合はわたくし、人数が多い方に入らせていただきますわ」
 出来るかは分からないが、召喚するのもありか、とか武器を使うのは? という問いに、静香が小さく唸った後唇を開いた。
「妨害もあり、ですし、大丈夫ですわ。
ただ、怪我が出ない程度に、そして木とかを傷つけないようにしてくださいませね? あと、スキルを使って毬栗を大量ゲット、というのもあるかもしれませんが……」
 流石に、と苦笑を零した。
「節度ある程度に、お願いいたしますわね。
例えば、落ちている毬栗を巻き上げて拾う、とか届かない所にある毬栗を飛んで拾う、とかはいいですけれど、攻撃して木に成っている毬栗を落とす、とか全部根こそぎとっていく、とかはおやめくださいませ」
 節度を守って、楽しく栗合戦をいたしましょうね、と静香が微笑んだ。
「わたくし、勝ちに行きますわよ!」
 なんだか物凄く張り切っているようだ……。

 


リプレイ本文

●戦いの場所へ
 青々とした空。
 のどかに飛ぶ鳥達は、これから起こる熾烈な戦い……いや、栗拾いのことなどは知りもせず、楽しげにさえずる。
 木々に鈴なりに生る栗達は、今か今かと出番を待っているかのようで。
 開会式が始まるまでのしばしの時間、ゼロ=シュバイツァー(jb7501)が農家の奥様達にさりげなく栗の採れる穴場を聴く。
 こそっと教えてもらえばお礼を言って、程良く談笑していた時に、声が響き渡る。
「それでは、これから栗合戦開会式を始めます!」 
 どこかそわそわと落ち着かなさげな雰囲気は、やはり妨害もありという栗拾いの所為か。
 そんな暖かな陽気な元、決戦の場所へ集まったのは総勢23人の撃退士達だった。
「皆様は撃退士とのことですから… …」
 あまり長くはないが、必要なことをてきぱきと述べられていく。
 そんな栗農家の方の話を聞くその身を包むのはそれぞれ注意事項に沿った服で。
「まずは、チーム分けを……」
 その言葉に、皆が友達や恋人に声をかけながら軽く分かれてみる。
 ささっと別れたのはAチーム9名、そしてBチームは9名だった。
(あのお嬢ちゃんやけに張り切ってたなァ)
 一川 夏海(jb6806)の視線に気がつき、張り切った顔をしていた宮部 静香(jz0201)が魅かれるようにBチームに入れば、人の少ない方へ……と礼野 智美(ja3600)がAチームへ。
(AでもBでもどちらでも構わない。ただただ、目の前の栗を拾うだけだ!)  
 とはいえ、一応どちらかに入っておくべきだろうと佐藤 としお(ja2489)は迷った末に、Aチームへと向かった。
 エイルズレトラ マステリオ(ja2224)とイツキ(jc0383)の2名は、どうやら今回栗合戦そのものには参加しないのか、チームには入らないようで。
 のんびりと別の場所で栗拾いをするのもありだろう。
 2人は手を振り、頑張ってと言い残すと去って行った。
 改めて、総勢21名の栗合戦が始まる。
「では、スタート!」
 空砲が空に響き渡れば、皆が一斉に動き出す。
 わっと散っていく様はある意味壮観だった。


●栗合戦の始まりです
 ばらばらと落ちている毬栗達は、これから起こるであろう激戦に、身を震わせているようにも見えた。
 とはいえ、武器やスキルが飛び交うような激戦ではなかった。
 皆、攻撃よりは毬栗を拾うために使う……そこには静かだが、かなり熾烈な「毬栗の数を競う」という正々堂々な勝負である。
 そんな正々堂々な戦いに闘志を燃やすのはAチームのエルリック・R・橋場(ja0112)達だった。
 エルリックの栗を拾う指先は、素早い。
 恋人である橋場・R・アトリアーナ(ja1403)のためにも、沢山採る所存だ。
(アトリに喜んで貰う為にも、沢山拾うので御座る!)
「……妨害している暇があれば栗を拾うのですの」
 栗拾いに来ていて、邪魔をするなんて邪道ですの!
 まさにその言葉通りアトリアーナはせっせと恋人のエルリックと友人の天風 静流(ja0373)と拾う。
(栗合戦か、秋らしい催しなのかな?)
 ばらばらに散らばる面々に視線をやりながらそう思う。
 スキル飛び交い身の危険を感じるような催しならばどうしようかと思っていたが、その心配は少なくとも静流達の所ではなさそうだった。
 とはいえ、この場所がそんなことになればエルリックは黙っていない。
(アトリに手を出す輩には容赦は不要で御座るな?)
 勿論、自分からやるつもりは毛頭ないのだが。
「シズル、怪我は大丈夫なの?」
 重体ゆえにゆっくりと動く静流。
 闘志を燃やすアトリアーナは、静香には負けない! とばかりに手の動きは止めないものの、声をかければ静流が微笑を零す。
「いっておいで、私はこのざまだからね」
 もっと先に行きたいのかとそう言えば、アトリアーナは首を振った。
「一緒に、頑張りましょうですの」
「替えの籠ならあるでござる!」
 用意周到なエルリックが籠を見せれば、その籠も全部使い切ろうと頑張るのだった。 
 ちなみに、そんなアトリアーナに闘志を燃やされているBチームの静香といえば、夏海の傍でただひたすらに召喚したヒリュウと共に栗拾いをしていた。
 その表情はとてもわくわくきらきら闘争心の塊である。
(……そんな顔されちゃあこっちまで燃え上がるってもんだぜェ!)
 1人足りない人数をカバーする、という名目で召喚されたヒリュウは、毬栗とじゃれあってはひたすら痛がっていた。
「それは……手助けなのか?」
 麦わら帽子を直しな がら問いかければ、静香はドヤ顔していた。
「大丈夫ですわ、うちの子は出来る子ですわ!」
 あんまりできない子っぽかった。
 それならば、もっと沢山採らなくては、とばかりに木の上に登り、毬栗から栗部分を抜いてはさり気なくAチームの方へとぶん投げる。
 こういうのだって、地味に相手の戦力を削るはず。
「へっへっへ……。悪く思うんじゃねェぞ……」
 黒い笑みを浮かべながら不気味に笑う夏海。
 ぽんっと飛んできた毬栗を手にとって、Aチームの黄昏ひりょ(jb3452)がはぁっと溜息ついた。
 今回はスキルを使うのはほぼ機動力を上げたりするのばかりだったため、怪我人等がでることはなさそうだ。
 そこは安心したひりょだったが、地味なトラップがあるとは……。
 安物 のタオルに大量にひっつけた毬栗の中身も確認する。
 白野 小梅(jb4012)がそんなひりょをきらきらとした瞳で見つめていた。
(お兄ちゃんと一緒♪ ミセスちゃんと一緒♪)
「くーり♪ くーり♪」
 自分の前に大きな籠を持って来て、木の上の毬栗を取って行く。
 スキルを使うからには、それぞれの特色が現れていて。
 そんな中特に際立っていたのは尻尾を揺らし駆けるミセスダイナマイトボディー(jb1529)だろうか。
 豪快に毬栗を掴むその腕はがっしりとしている。
 悪魔顕現を使い豪快に取って行くミセスに、小梅が木の上の毬栗を届ける。
「栗採ったよぉ、あげるぅ☆」
「おおきにな」
 ミセスがそれを受け取り、籠を待機場所へと置きに行く。
 あわよくばナイトアンセムを発動させようかと思いながらも、身近にいるのはAチームだ。
 仲間を巻き込むわけにはいかないだろう。
 程良い小梅とのコンビネーションで貢献するのだった。
 正々堂々と。
 Bチームの川内 日菜子(jb7813)は軍手、トング、背負い籠を持ち気合十分だ。
「スポーツマンシップに則って、正々堂々と真っ向勝負だ」
 闘志漲るその姿は、協力ならば惜しまないが、今回の妨害には一切手を貸さないというところからも感じ取れるだろう。
 一個一個地面に落ちた物のみを拾っていく。
 今回はそこまで妨害がないことから、スキルを使うこともなく、それこそ正々堂々と数を競え合えるだろうか。
 皆が楽しそうにやっている姿を見て、日菜子の拾う手にも力が入る。
 負けられない戦いになりそうだった。
「今日は平和に過ごしたいんだ……」
 そう呟きながらトングで毬栗を拾うのはBチームの若杉 英斗(ja4230)だった。
 東北の大規模作戦とかがあって、最近ちょっと疲れ気味。
 そんな英斗は思うことは唯一つ。
「癒されたいんですよ……」
 それは切実な願いだった。
 一つ、一つ、拾いながら気がつけば鼻歌の一つでもでるというもの。
「♪マロン マロン〜  ♪マロンはロマン〜♪
でもちょっぴりチクリと 心が痛むの〜♪ イ〜ガイガ〜」
 気がついたら、リスが木の上から覗いていたのに気がつきちょっと心が癒される。
 まだ、時間はある……もう少し、頑張ろうとまた一つ、拾うのだった。
 同じくBチームのゼロは、友人の姿を見て戦々恐々していた。
 教えてもらった穴場へ向かう、その一歩前である。
「げ、まおーが敵か…」
 幾ら重症を負っているとはいえ、スリープミストの一つでも食らえば死ねる。
 死ねてしまうのでフルダッシュで穴場へと退避する。
 どうやら、今回は食らうこともなかったようで。
 ひとつ安堵の溜息を吐き、気持ちを落ち着ける。
(それにしても、ほんまにただの栗拾いなんやろか)
 闇の翼と物質透過を使い、誰も居ない栗の木の攻略にかかりながら思う。
 色々な心配をしないといけないだけ、普通とは言えなかったかもしれなかった。
 高い木に成っている栗の実を見つめた後、小さく溜息着く少女が1人。
 改めて地面に落ちる栗を1人、もくもくと拾う有凪 エリ(jc0387)の後ろから近付いたのは、同じBチームの神ヶ島 鈴歌(jb9935)だった。
「どんな感じです〜?」
「きゃっ?!」
 びくっとしたエリだったが、別に妨害ではない。
 地道に一つずつ栗を集める同士、籠の中には沢山の栗があった。
 真面目にこつこつと。
 エリの手は止まらない。
「……栗……いっぱい……です……」 
 では、とエリが頭を下げ、またひとつ……と毬栗を拾っていく。
 再びお互いちまちま的確に拾いながら、鈴歌はエリから離れていく。
 その後ろでは、再び声を掛けられたエリがびくっと肩を跳ねさせているのだった。
「栗さんの将来の姿は美味しいモンブランですねぇ〜♪」
 周りの人たちがスキルを使い、頑張っている中……。
 将来はモンブランになってくれるだろう、毬栗に思いを馳せながら拾っていく。
 ほっくほくで甘いこの栗は、モンブランになったら物凄く甘く美味しくなるだろう。
 妨害があるかと思っていたが、小さな毬栗が空から故意に降ってくるぐらいの害しかなかったため、自ずとはかどっていく。
 知らず、誰も周りに居ない場所まで潜り込んでいたのに気がついたのはそれから少したってからだった。
「ここの栗は一際美味しそうな栗がたくさんなのですぅ〜♪
皆さんで食べたら美味しくて笑顔がいっぱいですねぇ〜♪」
 にこにこ笑顔がきっともっと沢山広がっていく。
 鈴歌は手早く、毬栗を拾っていくのだった。


 時間は半分を切った。
 時間はじりじりと容赦なく終わりに近づいていく。
 Aチーム、Bチームとも、戦況は上々だ。
 桜色のトレーナーに長ズボン。
 たゆんと胸元を揺らしつつAチームに貢献するためにも、藪の向こう側に移動する月乃宮 恋音(jb1221)。
 ひとつ、手に取るたびに胸元が揺れる。
 しかし、その動きはとてもゆっくりで……。
 重体ゆえなその動きに、恋人が心配気に声をかける。
「恋音、くれぐれも無理はしないで下さいね」
「はい」
 ほんわかと微笑む恋音。
「勝ち負けよりも栗拾いを楽しみましょう」
 袋井 雅人(jb1469)がそんな恋音を守るために身を隠し護衛する。
 今回は阻害に動く者が少なかったため、問題はなさそうだ。
 1人少々気になる友人はいたものの、その友人は先手必勝とばかりにその場から離れている。
 地道に栗を拾いながら、どこからか飛んできたのであろうビニール袋等も回収していく。
「どうです?」
 恋音に声をかければ、籠には沢山の毬栗が。
「料理も沢山作れますねぇ」
 この後、台所も借りようか。
 雅人はその料理に思いを馳せつつ、見つけた空き缶を拾う。
(山歩きや森歩きは大得意なのですよ)
 久遠ヶ原学園に来る前に、記憶喪失で森の中を彷徨っていたのだ。
 こんな風に歩くのは慣れている。
 とはいえ、昔と違うことは……。
 わいわいと響く楽しげな笑い声が、そして、隣で一緒に毬栗を拾う恋人が、今は一人じゃないことを教えてくれた。
(栗ご飯にモンブランが食べられるなんてこれは張り切っちゃいますよ!)
 栗大好き! な鈴代 征治(ja1305)は、Aチームの一時保管場所を守っていた。
 ちなみに落ちている毬栗を拾うことも忘れていない。
 栗を奪おうとする者が現れるでは? と注意は怠らなかったが、今回は大丈夫そうで。
 鳴る子が音を出すことはなく、栗拾いに集中できる……そんな時、ちらりと見えた姿。
「としおさん、どこに行くんでしょうか?」
 ふらふらと歩いて行くとしおに気がつき、征治が首を傾げる。
 どうも栗を拾っているようなので、そのまま声をかけず見送るのだった。
 そんなとしおといえば1人彷徨っていた。
 帰り道が分かるから、迷っているわけではない。
 ないのだが、気がついたら栗がない森奥まで来ている。
 戻ろうと踵を返した所で、現 れる気配。
「……なにやつ?!」
 ガサリと音を立てて現れたのは、茶色の小熊だった。
「うぉぉぉー!」
 突進してきた小熊、とっさに態勢を整え構え……。
「一本取ったー!!」
 相撲が始まっていた。

 Aチームの征治と同じように、青いビニールシートの一時的な集積地を作っていたのは、Bチーム、ナナシ(jb3008)だ。
 籠を背負い、闇の翼と物質透過を使って人知れず毬栗を取っていっていた。
 地上は仲間に任せて、自分は木の上のを。
 ただの飛行だけでなく木の枝や葉も透過すれば、背中に溜まっていく毬栗の数も、勿論多くなっていくというものだ。
「あぁ……そろそろか」
 とはいえ、無限ではない。
 一度置きに行った後、次にやるのは壁走り。 壁ではなく栗の木だが、そのまま走って手に取った先には、沢山の毬栗が。
 まだまだ、その手を休むことはできないようだった。

 約一名がなんだか大変なことになっているとは露知らず。
 栗合戦は佳境に迫っていた。
「あと15分ですよーラストスパートに向けて頑張ってくださいー!」
 そろそろ終わりが見える。
 妨害するものがほぼ居なかったため、栗合戦はひたすらに純粋な勝負である。
 思い浮かべるは料理屋の従業員。
 Bチームの蒼月 夜刀(jb9630)はもくもくとただただひたすら栗を拾い集めていた。 
(栗か……そうだな、この際大量にとって店で出すか。あいつらも喜びそうだし)
 お店にも出せるようにとひたすらに栗を拾い集めて行く。
 ちなみに、ゴゴゴゴと音が聞こえそうな勢いで、気迫を使い周りを威圧していた。
 そのお陰か何かなのか、袋の中に毬栗を入れる作業を妨害するような事態になっていない。
「もう少しだな……」
 待っている人のため、最後まであきらめるわけにはいかなかった。
 そんな所から少々離れて、栗を火はさみで毬栗を拾う姿があった。
 Aチームである智美は栗合戦を楽しむというよりは、「栗を持って帰る」が目的だった。
 妹とか親友とか後輩とか、料理好き周囲に多いし、育ちざかりも多いし……とは、智美の談だ。
 周りに負けず劣らずの勢いで拾っていく。
 何をどうしても刺さる時は刺さる……と火ばさみという選択はしたものの、やはりちくりと足元に刺さって。
 持って来ていた救急箱が役にたってしまおうのだろうか。
 みつあみを結いあげ、お団子頭にしたその場所に、こんっと毬栗が落ちてくる。
 バンダナを滑り落ちて行き、直接当たることはなかったけれど。
「これも……入れておくか」
 さくっと戦利品の一つとして入れるのだった。
 パウリーネ(jb8709)がBチームが有利かどうか確認するように辺りを見渡す。
 もしもこれでAチームが勝っていたら、テラーエリアも使うのも辞さない構えだ。
(地上に降りなければならないがね……)
 だがしかし、逆転で勝つためには必要かもしれない。
 空の上から眺め、毬栗を一つ一つ採って行く。
(栗はそうだな、甘露煮にでもしようか)
 そう思いつつ、手に取った栗は、虫食いがあって。
 暫し見詰めた後、小さく頷く。
(まぁ……これはこれで普通に使うがね)
 ひょいっと籠に入れる。
 これだって、立派な戦力になるだろう。

 
 あとちょっとで、栗合戦が終わろうとしていた。
 ぱぁんっと空砲が空にと響き渡る。
「お疲れ様でした、終了です! 終了ですよー!!」
 多 少の妨害があった栗合戦も、終わりを告げたのだった。
 呼びかけに応じ、皆がスタート地点に戻ってくる。
「あれ? としおさんは?」
 同じAチームだった征治が問いかければ、これまた同じチームだった雅人が首を傾げる。
「そういえば、お見かけしたような……?」
 隣にいる恋音に問いかければ、首を傾げていた。
「あ、そういえば奥の方に……行ってましたよ……」
 と敵だったエリが言えば、がさりと音を立てながらとしおが帰ってきた。
「いやーちょっと小熊と相撲してた!」
 その言葉にどよめきが起こるが、小熊は遠くへいったらしいので、一応警告だけしておけばいいだろうととしおが頷く。
「毬栗はどんな感じなんや?」
 としおの籠の中の毬栗は……? とミセスが覗きこめば、小熊から貰ったと言う枝付き毬栗もばっちりと入っていたのだった。 
 そんな驚愕が飛び交う合間を、スタッフ達が動き回り、回収していく。
「お疲れ様でした!」
 それぞれの毬栗が詰まった籠を回収し終えて、スタッフが毬栗を数え始める。
 自然とその動向に皆の意識が集まる。
「結果は……Aチームでした!」
 どちらもそれぞれ戦略やスキルを駆使して、かなりの接戦だった。
 やる気や意気込みも十分だったのだから、負けた理由というのは特に大きなものはではなかっただろう。
 それこそ、「運」というやつだ。
 勝ったAチームの歓声と、負けたBチームからの惜しみない拍手が沸き起こる。
 それは空にまで響き渡るようで……。
「おめでとー!」
「あぁ、負けちゃったかぁ……」
 勝ったAチームの皆には手作りのメダルが首から下げられる。
 わいわいと楽しそうな面々に、遠慮がちな声が掛かった。
「では、 後程この栗は皆様にお土産として渡しますね。
さて、では皆様、当農園自慢の栗ごはんとモンブランをお楽しみ下さい!」
 楽しい時間が、これから始まる。


●ゆっくりとした時間をどうぞ
「互いの完璧な健闘を称えて、栗ご飯で乾杯だ!」
 日菜子の号令により、皆が楽しげに乾杯してから食べ始める。
 ほっかほかの栗ご飯が、甘いモンブランが、皆の健闘を称えるかのようで。
「いただきます!」
 手を合わせて食べ始めるのだった。
 そんな暖かな栗ごはんに甘いモンブラン。
 ゼロも受け取り、食べ始めればさらに料理が増えた。
 台所を借りて恋音が作った料理達もその場に並ぶ。
 栗金団、甘露煮、むき栗の塩煮……。
 どれをとっても美味しそうだ。
「是非、食べてください」
 恋音が近くに居た日菜子やゼロや、奥様達に勧めれば、普段は作る側だった奥様達が喜んで口に運ぶ。
 美味しいと口ぐちに感嘆の声があがる。
「美味しいですね」
 と雅人はきらっきらの笑顔だ。
 むき栗の塩煮の、しょっぱさのお陰で引き立つ甘さ。
 癖になる一品だ。 
 夏海も一口ずつ貰い、その味に感嘆の声を漏らす。
 そんな夏海に、モンブランが配られ一口食べれば、作ったと言う奥様に声をかける。
「おお! モンブランまで作れんのかァ! ヘイ、作り方教えてくれよ!」
 自分のお店に出す予定だというソレのレシピを聞きつつ、とても真顔でもう一つのお願いが。 
「ヘイ、農家。あんたメイドになる気はないか?」
 ちなみに、それに関しては物凄く微妙な表情で即答で却下されたのだった。
 それとは別にのんびりと鳥と木々のざわめきを聴きながら時を過ごす者も居る。
「あのね、お姉ちゃんのお土産にするのぉ」
 お握りを作って欲しいとの願いは、すぐに叶えられた。お土産とは別に、小梅にもご飯が渡されて。
 小梅とひりょは、並んで美味しくご飯を食べていた。
「小梅ちゃん、美味しいね」
「美味しいのぉ! お兄ちゃん、もうちょっと食べる?」
 モンブランに行く前にお代りを。
 頑張って動いたからにはお腹も減るというものだ。
「ありがとう、アトリ君」
 あまり動けない静流のために、ご飯を持って来て皆と一緒にご飯とモンブランを囲むアトリアーナは幸せそうだ。
「美味しいですの」
「あぁ、本当に……」
 少々浮かない顔の静流にエルリックが声を掛ければ、先ほどの栗のことで。
 持ち帰れないのかと思っていたようだが、お土産できちんと持ち帰れるとの話を聞けば静流に笑顔が広がる。
 家で色々と作れるだろう。
「あーんですの!」
 そんなエルリックにアトリアーナからモンブランが差し出される。
「美味しいでござる!」
 いつも以上に美味しく感じるのは、やはり好きな人から貰うからだろうか。
「アトリもどうぞでござる!」
「ふふ、美味しいな」
 ちょっと照れながら貰うアトリアーナ達を見ながら、静流がほんわかと微笑むのだった。
 そんな近くで、もぐもぐと栗ご飯を堪能する姿があった。
(もっと、栗ご飯に入ってる栗について語れればいいのに……)
 パウリーネが猛然とご飯を食べている征治を見た後、自分も食す栗ご飯を見つめる。
 白いご飯の中に輝く黄色い栗。
 ほくほくとしていて、ご飯の甘さと栗の甘さ、どちらもマッチしていて美味しい。
「栗、美味しいと思わないか」
「ですよね!!」
 パウリーネがぽつりと零せば、栗が大好きな征治が頷いた。
 その言葉を受けて、はっととしおが名案を閃いた顔をする。
「栗ラーメンとか作れない だろうか?」
 栗ラーメンとは、栗が載っているかはたまた麺に栗が練りこまれているのか。
 栗ご飯の中の栗について語りあうはずが、気がついたらとしおと征治と、栗ご飯含めて栗の魅力について語り合う。
 そんな盛り上がる面々に、夜刀が通り掛る。
「なんの話?」
「栗の魅力を語ってたんだ」 
 パウリーネがそう言えば、夜刀が興味深げに話に加わる。
 お店に出すメニューとかアイデアが、そこから何かでてくる、かもしれない。
 そんな近くで智美やナナシ、鈴歌が栗ご飯やモンブランを堪能していた。
 ほんわかと味わうそれは、とても美味しく幸せな気分になる。
「美味しい」
「美味しいですね」
「美味しいですぅ〜」
 自然と3人から、そんな言葉が毀れた。 
 まだまだ沢山食べれそうな。そんな予感に三人は包まれていた。
 その近くで、英斗は栗ご飯と、そして紅茶も堪能している。
 疲れた体に沁み入る紅茶。
 そして、ほくほくのご飯はほんのりと薫る栗の味がまた堪らない。
 味わって食べれば、一番楽しみにしていた物が待っている。
「モンブラン楽しみにしてた!」
 そして楽しみのモンブラン。
 口に含めば甘い、栗の香りだ。

 そんな風に皆が楽しんでいる中、頃合いを見計らってお土産の栗が配られる。
 忘れて帰らないように、という配慮のようで、きちんと1人1人に確認しながら渡されていく。
 それぞれ渡された栗達は、袋に入れられていた。
 勿論、それは皆が各自で拾った分だ。
 あまり拾えなかった人の分は、さりげなく足されているようで。
「貰っていない方いませんかー?」
「大丈夫……です……」
 エリがそう言って微笑めば、奥様方が微笑んだ。
「あら、貴女もっと食べなさい!」
 栗ごはんを勧められる。
「そうそう、美味しいしさー」
 奥様方と談笑していた、今は先ほどとは違いふくよかな愛嬌のある姿に戻ったミセスの笑顔も加わって、エリが小さく頷いた。 
 そんな楽しく騒ぐ皆の声が木々の間を響き渡る。
 ころん、と自然と落ちた毬栗が、まるで仲間に入れてとばかりに転がっていく。
 まだ、もう少し一緒に過ごそう?
 そんな声が聞こえた気がした。

 毬栗合戦はこうして、楽しい時間を残して無事に終わったのである……。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:10人

銀と金の輪舞曲・
エルリック・R・橋場(ja0112)

大学部4年118組 女 鬼道忍軍
撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
無傷のドラゴンスレイヤー・
橋場・R・アトリアーナ(ja1403)

大学部4年163組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
食欲魔神・
Md.瑞姫・イェーガー(jb1529)

大学部6年1組 女 ナイトウォーカー
誓いを胸に・
ナナシ(jb3008)

卒業 女 鬼道忍軍
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
Standingにゃんこますたー・
白野 小梅(jb4012)

小等部6年1組 女 ダアト
撃退士・
一川 夏海(jb6806)

大学部6年3組 男 ディバインナイト
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅
大切な思い出を紡ぐ・
パウリーネ(jb8709)

卒業 女 ナイトウォーカー
充実した撃退士・
蒼月 夜刀(jb9630)

高等部1年30組 男 ルインズブレイド
翠眼に銀の髪、揺らして・
神ヶ島 鈴歌(jb9935)

高等部2年26組 女 阿修羅
シスコンピアニスト・
イツキ(jc0383)

大学部4年67組 男 ルインズブレイド
楽しく避難訓練♪・
有凪 エリ(jc0387)

大学部3年206組 女 アカシックレコーダー:タイプB