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マスター:如月修羅
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/05/31


みんなの思い出



オープニング

●ツツジ迷路のお邪魔虫
 赤、白、ピンク色、紫色、赤と白が混じったの……。
 沢山のツツジが満開だった。
 ツツジの迷路で有名なこの庭園は、今の季節ならば繁盛期なのだが……。
「うにゃぁん」
「うなー」
 迷路の彼方此方に、猫が日向ぼっこをしていたのだ。
 勿論、ただの猫であれば問題なかった。寧ろほのぼのとした光景として、逆に猫好きのお客さんもきたかもしれない。
 それが出来ない理由。
 それは唯一つ……。
 そう、彼らがサーバント、その一言に尽きた。


●お邪魔虫を退治しよう!
「ツツジ園にある迷路に、猫又のサーバントが30匹あらわれました。
彼らは迷路を移動し、思い思いに日向ぼっこをしているそうです。
そこで皆様には……サーバント退治をお願いしたく思います」
 女性がそう言って、パンフレットを差し出した。
 受け取ったそれはツツジ園のパンフレットである。
「ここのページを見ていただけるとお分かりかと思いますが、迷路を作り出している垣根は、大体人の胸元ぐらいまでの大きさなんです。
そのため、道順は確認できますので……迷路というよりは、散歩道ですね。
とはいえ、そこは「迷路として楽しむ」のが楽しみ方だと思います」
 ようは、わざと道に迷ってみたり、あえて道順を確認せずに歩いたり、ということをして楽しんでほしいということだろう。
「出入り口は四つあります。まぁ空の上から見れば 一目瞭然ではありますが、あえて2人一組で道を白みつぶしで行くというのもありだと思います。
全部の道を回っても、大体1時間程度の迷路になっていますから、さほど大変ではないでしょう」
 2人一組を提案するということは、サーバントは弱いのか、という問いかけに女性が頷いた。
「えぇ、皆様ならば1〜2撃当てれば倒すことが可能でしょう。
ただ、問題は……サーバントが火を噴くことと、逃げ足が速いことですね。
とはいえ、彼らは人が近寄ってものんべんだらりと日向ぼっこをしていますので、油断さえさせてしまえばさくっと倒せると思います」
 それは……サーバントとしてどうなんだろう、という気がしないでもなかった。
 女性がとりなすように微笑んだ。
「終わった ら迷路が見える喫茶店で、お茶を頂けますよ。
ツツジを見ながら皆さんでお茶会なんていかがでしょう?」
 ドリンク無料券を手渡し、気を付けていってらっしゃいませ、と送り出した。


リプレイ本文

●迷路へ向かおう!
 ぽかぽか暖かな日差しの中集まったのは、

 鈴木千早(ja0203)
 天ヶ瀬 焔(ja0449)
 苑邑花月(ja0830)
 エイルズレトラ マステリオ(ja2224)
 天ヶ瀬 紗雪(ja7147)
 酒守 夜ヱ香(jb6073)
 志塚 景文(jb8652)
 城前 陸(jb8739)

 の総勢8名だった。
 前もって景文や焔によってスマフォでのやり取りの再確認が行われる。
「道で会った時も確認しようか」
 なんて言葉を交わしつつ、そわそわとどこか落ち着かない。 
「じゃぁ、よろしくね?」 
 2人一組になって、入口へと向かう。
 もちろん、遊びに行くわけではない。
 行くわけではないのだが……。
 皆の目の前の色とりどりのツツジが、早くおいで? と誘っているようだった。


●千早&花月ペアの場合
 赤、白、混じり……さわさわとツツジが風に揺れて音を奏でる。
「躑躅、が……こんなに綺麗に……。春、ですわ、ね〜……」
 千早さんとこんな場所を一緒に歩けるなんて、まるで夢のよう……とほわんと胸が暖かくなりつつツツジが彩る迷路を見つめる。
「本当に……とても綺麗だね」
 猫又のサーバントを倒すことが少々心苦しい……そう思っていた千早が視線をあげ、ツツジを、そして少し後ろを歩く花月を見つめる。
 ふわりとそこだけ明るく見えるのは、きっと気のせいではないだろう。
 勿論、幸せそうに微笑む花月だって、敵を倒すことも忘れてはいない。
 猫又に思いを馳せ……少々瞳を伏せた後、微笑みに陰りが帯びた。倒す猫又のことが、可哀想な気がしないでもない。
「どうぞ許して、下さいね……」
 その言葉に、千早も頷いた。
「可哀そうな気がしますが、これも仕方のない事……なのですね」
 撃退士というのは、時に辛いことだと、悲痛なまなざしで囁く。
 だからこそ。
「せめて、出来るだけ苦しまないように……」
 それは甘い考えだろうか。そうは思ったものの、花月が隣で微笑み頷く。
 せめて、一思いに。
 そんな機会は無情にも早くやってきた。

 白いツツジの真下。
 ぱたんぱたんととてつもなく幸せそうに尻尾を動かしながら、猫又がうなーと 寝言? を言いながら横になっていた。
「のんびりしている猫又さん……これが、普通の猫さん……に、生まれていれば……」
 それに頷き、すっと無音歩行で近づいて行く。
 何一つ物音をたてないそれに、猫又は気がつくこともなくのんびりと尻尾を動かしていた。
 その背から弓を構え今一度横になっているのが普通の猫じゃないかの確認をする……が、明らかにサーバントである。
 やがて、自分の前に立つ気配を感じ顔を上げた所で……。
 虹色の輝きが、瞬いたと思った次の瞬間には、地面にと静かに横たわるその姿があった。
「……」
 そっと瞳を伏せて2人、暫し時間を過ごす。
「参り、ましょう……?」
 まだ居る猫又を探し、ゆっくりと歩き出す……。


 花月と歩いていた千早が、道一つ向こうに居る紗雪と焔に気がついた。
 先に気が付いていたのは焔だったのだろう、紗雪はぺこりと頭を下げる。 
「順調、……です、か……?」
「はい」
 そんな言葉を交わし、歩いていく。
「それにしてもあまり猫又がいないね」
「そう、です……ね……?」
 不思議そうに首を傾げる2人の疑問は、実は先ほど会った焔と紗雪ペアによって解明するのであった。


●焔&紗雪ペアの場合
 車椅子を手配し、ゆるりと紗雪に押してもらい入口から入った焔は猫もふり隊としてもの凄くもふりたい気持ちを堪えていた。
 重症である我が身。
(そう、我が家に戻ればウチには月が居るしな……)
「病室に引き篭もるのもあれですしねー 、気分転換に良いと思うのですよー♪」
 今回は猫との戯れ……いや、負傷中の夫の盾になるべく頑張ろうと心に決める。
 そして、すちゃっと出したのは猫じゃらしと魔法の鈴であった。
 のんびりとツツジの迷路を散策しながら、焔は決意を固めた。
(猫又を作った奴は、全力でふるぼっこにしてやろう) 

 ちりんちりん。
「にゃーにゃー、にゃんこさん、おいでおいでー♪」
 飼い猫は寄ってくるということは、きっと猫さんは寄ってきてくれるはず! と鳴き真似もしてみる。
「……かなりの数だな」
 生命探知によって、焔にはいち早く察した。
 寄ってくる気配がなんだかわらわらしている。
 わらわらわら。
 猫が集まるという鈴の所為なのか、鳴き真似になのか、それとも車椅子が物珍しかったのか。
 5匹がその音に集まり、すでにここが安住の地とでもいうように車椅子を囲って眠り始めた。
 守るように前にたったものの……包囲である。
「うなー」
 その中の1匹がぴょんっと車椅子に乗りあげ、2人顔を見合わせる。
 まさか攻撃を? と思えば、新しくそこを寝床と定めたようで、猫が寝る前のふみふみ行動を行っていた。
 ほんのしばし、戯れてみる。
 猫じゃらしに対しての食いつきはかなりよかった。
(やっぱりふるぼっこに!)
 そんな決意だって固めちゃうのも致し方ないだろう。
 とはいえ、いつまでも戯れるわけにも行かない。
 せめて、一思いに……。
「輪廻転生というのがあってですね? 貴方方に もきっと適応されますよ……次の生ではお昼寝を邪魔されませんように」
 逃げようとした猫又に縛の花を使えば、焔の矢がその身を貫いた。


 生命探知を使っている焔が先に気がつき、紗雪にと伝えれば、景文と夜ヱ香がやってきた。
「お疲れ様!」
 景文が微笑めば、2人も微笑んだ。
「気をつけてな」
「そちらも……!」
 言葉を交わし、歩いて行く。


●景文&夜ヱ香ペアの場合
 作った人の思いが伝わってくる、と夜ヱ香は思う。
「こんなに沢山の花を咲かせるのか……迷路の形を保つのは大変そうだ、良い庭師がいるんだろうな」
 景文がそう言って、ツツジを見た。植込みの木に興味はなかったが、とても綺麗だ、と感嘆が毀れる。
 迷路にしたという ことは、それだけ人の手も入っているだろう。
「ツツジの花、綺麗……迷路にしてあるの、面白い……ね。丹精に手入れしている人の想い……感じる、気がする……」
 こくんと頷き夜ヱ香が辺りを見渡した。
 風で揺れるツツジが音を立てている。
 そして……隣を歩く景文に、少し不思議な気持ち。
 名前を褒めてくれたり、そっと優しく手を握ってくれる。
 そして、その瞳は好意を伝えてくれるけれど。
(面倒見の良いお兄さん……?)
 なぜそうしてくれるかまではちょっと分からない。
 進路を確認していた景文が夜ヱ香の視線に気が付いた。
 出会ったその日に一目惚れした愛おしい人の視線だ、気が付かないわけがない。
「どうかした?」
 微笑んで問いかければ、ふるふると首を振られる。
 愛おしい、その気持ちは行動に移したくもなるけれど。
 今は猫又を倒すことにと意識を向けた。


「猫って自由な感じがするな」
 気まぐれな印象はあるが嫌いではない猫、今回は猫又であるがそれを探して、あちらこちらと歩いて行く。
「猫……、好きなの……?」
 寧ろ好きなのは貴女です、と早く言ってしまいたい気もするが、そうとはまだ言えないから首を振る。
「猫っぽいって言われないか?」
 気を取り直してそう問いかければ、夜ヱ香が首を傾げた。
「そう……かな……」
 そんな夜ヱ香を守るように一歩前にでて……。
「可愛いって意味だよ」
 そう言った次の瞬間には、二股の尻尾が見えていた猫又にと札を当て、小爆発を起こさせた。
「尻尾……可愛くても、だめ……だよ」
 追うようにサンダーブレードが猫又の体を貫く。
「ここは独占しちゃだめな場所……だよ。天界にお帰り……」
 動物が好きだからこそ、違和感を感じて。
 今この場に他の猫又が居ないことを確認して、再び迷路を傷つけないように注意しながら2人、歩いていくのだった。


 食べていたお菓子をもぐもぐしながら、2人に声をかけたのはエイルズレトラだ。
「どんな感じかな?」
「余り見つからなくて」
「あー多分、それはこれらの所為かも」
 不思議そうに景文が首を傾げたのに、エイルズレトラがひらりとお菓子を見せ、陸がマタタビを見せた。
 どうもそれに誘われる猫又がいるようだ。
 なるほど、と納得し気を付けてくださいね、と見送る夜ヱ香にほわんと暖かな光が。
 陸の所謂辻ヒールである。
「じゃぁ、気を付けながらのんびりと行こうか」
 こくんと夜ヱ香が頷き、2人迷路を歩いていく……。


●エイルズレトラ&陸ペアの場合
「うーん、良い天気ですねえ。闘争の空気ではありませんねえ」
 なんて、持ってきたお菓子でエネルギーを補充しつつ言うエイルズレトラに頷きつつ歩いてた陸は、行き止まりだったそこから踵を返し戻った所で。
「陸さん、そっちだと戻っちゃいますよ」
 と、言った感じに迷子になりそうだった。
 1人だった素で迷子になっていたかもしれない。陸があら、と微笑してきちんと正しい方向にと足を進める。
「食べますか?」
「貰います」
 貰ったお菓子を口に含めば、甘い味。一足先にツツジを見ながら甘い物を堪能しつつあちらこちら見れば、お菓子の匂い誘われたのか、どうも猫又が居るようで。
 陸がねこじゃらしを取り出し、何かが居た茂みにとふりふりしてみる。
 ルアーを準備したエイルズレトラの視線の向こうに、猫又が遊べるの?! ときらきらした瞳で此方を見ている姿があった。
 
 あまりにも牧羊的な雰囲気が漂う。
「やる気のない天魔ですねえ。本当にやっちゃって良いんでしょうかね」
 そう言われても仕方がないぐらい、猫又は猫じゃらしにめっちゃ食いついた。
 さらにネズミの縫いぐるみをかじかしている猫又は、もう自分がサーバントだったことを忘れているとしか思えない。
 取り出したミャウリンガルを手に陸がインタビューを試みる。
 ミャウリンガルが本当かどうかは分からないが。
『休暇中だにゃ〜』
 というなんとも意味の分からない答えが返ってきた。
 休暇なんてあるのか。
 なんだかこのまま殺すのは忍びないが、同情はしても容赦はしない。
 陸がマタタビで気をそらしているうちに、無数のカードが猫又の身を束縛し圧迫すればすぐにその身は地面にと横たわる。
「……弱っちいですねえ。何か、こっちが悪い人な気がしてきますね」
 苦笑を浮かべ、再び歩き出す……。

「あ、千早さんからメールだ」
「これで……?」
「30匹だね」
 陸が倒した猫又を見つめ、30匹であることを確認する。
 あとは迷路を楽しむだけ……。


 全員に情報は共有されて。
 今度はゆっくりと楽しもうと、出口までの道のりを楽しむのだった……。


●そしてゴールの後は
 紗雪が皆を見渡す。
「みなさんお疲れ様でした。これでお客さんが安心して迷路を楽しめると良いですね」
 それに皆が頷き、喫茶店にと向かう。
 エイルズレトラは先ほど食べていたお菓子を思い出し……。 
「さて、甘いものを食べすぎましたね。コーヒーをいただきましょうか」
 砂糖をたっぷりと淹れながら呟く。
 持っていたトランプをことん、とテーブルに置いた。
「それ、どうするんですか?」
 柚子茶をのんびりまったりと飲んでいた陸が首を傾げた。
「あぁ、手品をしようかなーって」
「どんな手品です?」
「トランプを使ったのをね……見てみる?」
「えぇ、是非」
 柚子茶から手をはなし、じーっと手元を見つめれば、どうした? と覗き込む人の姿。
 景文が楽しそうなそれに興味を示し、夜ヱ香にと声を掛ける。
 ツツジの迷路にと出入りする人々を見つめていた夜ヱ香が視線を向けた。
「……」
「では、ご覧あれ」
 そんな3人を前にして、エイルズレトラがすらりとトランプを抜き出した。

 
 カフェ オレのお供に、頼んでいた珈琲フロートは珈琲の香りを漂わせながら目の前に。
 そっと髪に飾ったのは摘んできた赤いツツジとコサージュ。
「うん、やっぱり紗雪に似合ってて……すごく綺麗だな」
 紗雪が髪に飾られたツツジを揺らし嬉しそうに微笑みながら、焔に問いかける。
「あとでもう一度迷ってみましょうか? ふふー、もちろん、散歩ですよー」
 はい、あーんと差し出されたそれを焔がぱくんと一口。
「早く怪我が治りますよーに、です」
 その気持ちが嬉しくて。
 きっとすぐに良くなるだろう……そんな予感がした。
「美味しいな」
 今回は心配かけてごめんね。何時も支えてくれてありがとう……そんな気持ちを言葉に乗せて。
 かえってきた笑顔は、今日見た笑顔の中で一番輝いていた。


 そんな2人のすぐ傍で、千早が花月にとツツジがとても綺麗ですね、と微笑みかけた。
「躑躅の花言葉、は「自制心」と「節制」……でも、色……に因って違う、のですわよ、ね。 赤は「恋の喜び」……白は「初恋」……」
 千早さんの前でこんなことを考えていたら、頬が赤く……と少々恥ずかしげにしている花月に微笑みかけ、そっと言葉を紡ぐ。
「花言葉は詳しくないのですが……花月さんの教えて下さったものを鑑みると 今の俺は、白……でしょうか」
 それが今の自分の気持ちなのだと、そこで一旦言葉を切り、自分を見つめる花月と視線を合わせる。
「……花月さんは、何色のツツジがお好きなのですか?」
 ほんの一瞬、言葉を切った後繋げられた質問に、花月は微笑んだ。
 自分のことをどう思っているのか、そんな疑問の答えを貰った気がして。
「今回もご一緒できて嬉しかったです。花月さんと居られるのは、俺にとって……」
 そんな言葉の続きを、きっと花月の答えで素敵な終わりを紡ぐだろう。


 わぁっと上がる歓声は、手品をみた面々のものだろう。
「凄いよねぇ、夜ヱ香さん」
 景文が笑顔でそう問えば、夜ヱ香は暫し瞳を瞬き……小さく頷いた。
 今日はまた少し、お互いを知れただろうか。
「楽しいね」
 言いたいことは数あれど。今はとりあえずその言葉に思いを込めて夜ヱ香に伝える。
 夜ヱ香からの答えは、それに頷くことによって返されて。
 きっと何かは伝わっただろうか。
「お疲れさま……、また、ね……」
  空になって時間のたつ二つのグラスが、今日の終わりを伝えていた。

 
 さわさわと鳴るツツジ達が、また遊びに来てね! と帰路に就く皆を見送っていた……。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

鈴蘭の君・
鈴木千早(ja0203)

大学部2年241組 男 鬼道忍軍
撃退士・
天ヶ瀬 焔(ja0449)

大学部8年30組 男 アストラルヴァンガード
鈴蘭の君・
苑邑花月(ja0830)

大学部3年273組 女 ダアト
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
君との消えない思い出を・
駿河 紗雪(ja7147)

卒業 女 アストラルヴァンガード
ぬいぐるみとお友達・
酒守 夜ヱ香(jb6073)

大学部3年149組 女 アカシックレコーダー:タイプB
撃退士・
志塚 景文(jb8652)

大学部6年162組 男 陰陽師
ガクエンジャー イエロー・
城前 陸(jb8739)

大学部2年315組 女 アストラルヴァンガード