●いらっしゃい!
ぱちぱちと火の爆ぜる音と共に、白い煙が青い空へと上がっていく。
薩摩芋パーティーというだけあって、薩摩芋の焼ける甘くて美味しい香りが辺りに立ち込めている。
そこにはすでに何人もの人達が集まってわいわいしていて。
「あら、いらっしゃい!」
やってきた集団に気がついた村人が微笑んだ。
「こんにちわ! もう始まってるのかな?」
「あぁ、もう出来てるよ!」
久慈羅 菜都(
ja8631)の声がかけられればある者は手招きし、ある者は薩摩芋を差し出して……。
「ほらほら、食べなさいな!」
大きな焼き芋が目の前に差し出される。
「わわ! ありがとうございます!」
嬉しい悲鳴があがる。両手で甘いほっくりとした焼き芋を抱えて微笑んだのだった。
「落ち葉焚きIN焼き芋パーティー!」はすでに始まって少したっているようだ。
そして、メインである落ち葉炊き……焼き芋等を焼いて楽しむ方法は、大きく二種類ある。
一つは広場になっている場所に大きく盛られた落ち葉で、皆と一緒に焼くこと。
そしてもう一個が個別で焼くことである。
「別に焼きたい人はこっちにきて下さいー!」
担当者の声に、数名のグループが歩き出した。
「楽しみだねーっ」
「あ、あれかな?」
そんな声があちらこちらから上がっている中、担当者の説明も佳境だ。
「では今から分けますので……」
思い思いに手に取った落ち葉を持って、移動していくのだった……。
時を同じくして、ルーガ・スレイアー(
jb2600)の操るスマフォにて。
とある時間のツイッターのタイムライン上では……?
『秋の風物詩なう( ´∀`)』
という呟きに、写真UPして! だのなんだの反応があったりしたのだった。
●美味しく焼けるかな?
ぱちぱちと葉が、そして枝が爆ぜる音が聞こえる。
それはメインとなる大きな焚き火だ!
すでに始まっている落ち葉焚きでひたすら焼くことに専念するのは焚火で焼き芋は初めて……とわくわくしながら友人を誘ったイザベラ(
jb6573)とひたすら食べまくろうかな、なんて考えいてる満月 美華(
jb6831)だ。
一緒に来ているリーゼロッテ 御剣(
jb6732)はというと、見た目以上に食べるからには、きちんと持ってくる。そういう観念から鹿児島からネットで取り寄せて用意した安納芋を四箱持ってくるという徹底ぶりだ。
長い木の棒の先にアルミホイル巻き付け、更にその上にパン生地巻いてクルクル回しながらイザベラが微笑む。
「大勢で賑やかで、何か楽しいですね! ふへへへ……」
「本当にそうね……」
美華も芋だけでなく、串に刺したハムやチーズを焼きながら頷いた。
ちょこちょことリーゼロッテが近くに居た人たちからも物を貰えばお返しの安納芋を渡していく。
特に大量に作って困っていた優多達のグループからは感謝されたようである。
「ウフフッ、みんなで食べるお芋って最高〜♪ リザさんのパン貰い〜♪」
「あ、スープもどうぞ!」
皆であったまりながら魔法瓶のオニオンスープを飲んで、そろそろいい頃合いと食べ始めれば、ほんわりと甘い風味が広がる。
とろりと溶けたチーズや、あったかいハム、そして香ばしいパンに甘い甘い薩摩芋!
これも美味しい、そっちも美味しいと和気藹々と時間を過ごす中、リーゼロッテは視線を感じ何度かあちらこちらを見渡す。
「どうしたの?」
「気になることがあるのかしら?」
美華とイザベラの不思議そうな視線に、いや、でも気のせいよね? と首を振る。そう? と少々ふに落ちないながらも、また一つ焼き上がった食べ物も前にすれば三人で美味しく頂くうちに忘れてしまう。
「うーん♪ 食欲の秋ね♪」
もぐもぐと美味しい焼き芋を食べながら美華が言えば、二人がにこにこ笑って頷いた。さて、また焼けたよ! と取り出されたのはアツアツの焼き芋!
「はい、リーゼさんっ!」
ずずずいっ!
「あーん♪」
「あ〜ん♪」
ほっかほかの焼き芋がリーゼロッテにと差し出されれば、勿論それを拒む理由もなければ貰うわけで……。が、しかし、それは冷めてるわけではないので……?
「……あっちぃぃぃっ!! リザさん!!」
悶絶した後、きゃーきゃーと追いかけっこを始める二人のやりとりをみて、美華が持ってきていたジュースを差し出すのだった。
さて、リーゼロッテが気になっていた視線の主はというと……。
(……あれがわたくしのお姉様……?)
エミリア リーベル(
jb7121)は生き別れの双子の姉であり、自分の怨敵であるリーゼロッテがどんな人間かこっそりと観察する為に参加していたのだが。
(……綺麗な人……ここは遠目からどんな人なのかを観察……)
さらにゆっくりと観察しようと移動を開始した所で、目の前にある大きな焚火に釘付けになった。近づいてみると、熱気と共に漂ってくる美味しい香り。焚火で料理をするということを知らなかったため、串に刺された食べ物や、火の中から取り出されるアルミホイル等が物珍しい。
何もかもが興味深々である。そんなエミリアにも大きくて美味しそうな薩摩芋が手渡される。一口食べてみれば、ほわんと甘い味が広がった。
(あっ、この食べ物美味しいわ……なんて食べ物なのかしら……?)
受け取ったそれを手に、少々場所を移動しつつ見て回ればやがて物を貰えるかも? と寄ってきていたリスを発見する。
だがしかし、美味しい薩摩芋のはずなのだが寄ってこない。他の人のは食べているのに。
しばしの間攻防を繰り広げてみれば、ふと思うのはなぜここに来たのかだ。
(あら……わたくし……何しに来たのでしたっけ?)
けれども楽しい時間が過ごせたのならば、まぁいいか、と今一度リスにあげようと挑戦してみるのだった。
虚神 イスラ(
jb4729)に誘われてやってきたジズ(
jb4789)は、美味しい物があることは理解していたが、それがどうやって作りだされるのかはわかっていなかった。
「手間だけれど、面白いよ落ち葉炊き」
「燃す? 燃料? ……葉?」
そうだよ、とイスラが頷くのに視線を大きな焚火にとやる。そこではぱちぱちと木や葉が爆ぜていて。
「こんろもあいえいちも火炎放射機もあるのに」
人間って、不思議と見つめていれば、イスラも同じ場所を見つめる。
「文明の利器があっても、アナログに回帰して風情を楽しみたいものなのさ。僕はそういうの、嫌いじゃないけどね。そうそう鳴門金時って芋が、甘くてほくほくして美味しいんだって」
「いも? 昔、食べた」
取りだされた芋を見て、……でも苦かった、としょぼんとするのに微笑み、これは甘いから大丈夫だよと安心させれば、さらにでてきたジズの好物のトウモロコシ。
邪魔にならないようにと散策に移るジズのために、イスラは調理を開始するのだった。
あちらこちらに枯葉だけでなく木の枝も落ちている。皆が使っている棒……枝を探していたジズは、長くてちょうど良さそうな棒を発見!
振ってみたり、重さを確かめてみればそれはとてもしっくりとなじんだ。
戻ってくれば、とてもおいしそうな香り!
「良い、棒だ」
はいっと見せられた棒に、ふっと笑みをこぼして。
「良い枝見つけたねジズ」
撫で撫でと頭を撫でてやれば料理も出来あがって一緒に食べ始める。
鮭を筆頭に、キノコやソーセージ、そしてトウモロコシの味が広がる。焼き芋につけあわせのカスタードやコンポートをつければまた違った甘くて美味しい味わい。
きっとこんなに美味しいのは、料理の腕だけではなくて二人で食べているからだろう。
食べ終わり、ほっと一息つけばひらり舞い落ちる赤い紅葉。じっと見つめれば、イスラが首を傾げた。
「綺麗、だ」
イスラの髪に乗った紅葉を手に取り、瞠目する。そんな様子に自意識過剰だったかな? と内心苦笑を零しつつもお気に入りが増えたようでよかったと見守るイスラ。
きっと今こんなに胸が痛いのは。
(隣に、居る優しい人のお陰……)
「世界は、こんなに、綺麗」
「そうだね、僕も君がいなければ……こんな世界を知る事もなかったろう」
今日と言う日の思い出に、この葉は栞にしようか。
ワイワイと焚き火を囲むのはクリフ・ロジャーズ(
jb2560) とアダム(
jb2614) 、そしてシエロ=ヴェルガ(
jb2679) と桝本 侑吾(
ja8758)の四人だ。
アルミホイルと新聞紙はクリフと侑吾が用意してきていたため、十二分にある。そして大事な食料は、薩摩芋とじゃがいも、そして椎茸である。バターや調味料も準備済みだ!
いそいそとクリフが濡らした新聞紙にサツマイモとじゃがいもをくるみこみ、更にアルミホイルにくるんで火の元へ突入させる。
ぱちぱちと盛大に火があがる傍ら、シエロが用意した椎茸をアルミホイルに包んで焼きあげようと、火の中へ。
「焼き椎茸って美味しいのよね」
「あー美味しそうだな」
「クリフ。焼き芋にはマーガリン持って来たわよ」
「俺はマヨネーズとバターだ」
「桝本、調味料持って来てるのね。醤油はある?」
そうやら醤油もあるようだ。ジャガイモや薩摩芋にそれはきっとよくあうだろう。ぱちぱちと音をたて、いい匂いが立ち込めてくる。先に出来上がるのはやはり椎茸だろうか。
そして。
焼き上がりを待つ間アダムといえば。
(男らしくいもをむいてみんなにたべさせる!)
と気持ちを新たにしていた。
時々転がしていれば、いい匂いがしてきたほどよく焼けたと思われる熱いのを取りだしたクリフは、はいっとアダムに渡してみた……が?
「わわっ」
熱いと落としてしまう程度の生き物である、とはのちにアダムが語った言葉だったという。
そんなこんなで皆に行きわたった頃、宮部 静香(jz0201)がきょろきょろと辺りを見渡しているのに気がついた侑吾が手招きする。
「まぁ、食え」
ずいっと差し出されたジャガイモに、瞳を瞬いていれば、クリフもジャガイモも差し出す。
「じゃがいも、よかったらどうぞー」
二人から差し出されたジャガイモを満面の笑みで受け取り、一口ぱくりっ。
「美味しいですわ、お二人ともありがとうございました!」
しばし談笑した後、では、また……と去って行った頃には、焼き芋も美味しく焼き上がっていた。
「良い匂いね。焼き芋も美味しそう。お好みでマーガリン塗ってみて?」
「さつまいもにマーガリンも良いな」
シエロのアドバイス通りにもくもくと塗って食べてみれば、また違った味わい。
「くりふ〜くりふ〜」
とクリフの膝の上に座ったアダムが、貰った持てる熱さ程度の焼き芋をふーふーしてみる。これは自分が食べるためではない。
「た、たべれるあつさじゃないんだからな……! ふーふーしてやるからだいじょうぶだ! あんしんしろ!」
微笑んで口に差し出せば、クリフが微笑んでぱくり!
「ありがと。アダムもふーふーしながら食べなよ?」
うむっ! といいつつ、ジャガバターをぱくんとしてみる。
「な、なんだこれは……ほくほくのいもととろけるバターのマリアージュ……う、うますぎるじゃないか……!」
多分稲妻が走った。この感動をまた食べたいとシエロにおねだりしてみる。
「シエロー。今度これごはんにだすといいぞ!」
「えぇ、その時は他の野菜もね?」
シエロにもクリフにも頭を撫で撫でされている傍らで、ビールを飲みたいと侑吾が呟いた。
(こういう紅葉の下で飲む酒も美味そうだ……酒持ってくれば良かったな)
「椎茸に醤油とバターもビールに合うね、うまーい」
「あら。日本酒じゃないの? ─というか桝本……成人してたのね」
「……何歳だと思われていたんだ、俺」
天魔から見ると、若く見えるのかもしれない。
「シエロさんも飲めるクチなら今度一緒に飲むか」
「えぇ言葉に甘えて、今度一緒にね」
そして、ビールについて考えていたアダムは、ちょこちょこと侑吾にとまとわりついて聞いてみる。
「ビール……? うまいのか? おれものみたいんだぞ?」
「いや、アダム君はまだ早いから」
頭をぽふっとされ、さらに。
「アダムが飲める飲み物じゃないわよ。まだ高校生でしょう?」
との言葉に、きりっと年齢を言ってみるけれど。
「おれは400才なんだからなっ」
ビールを飲むのは高校を卒業してからになりそうだった。
今日はリスが居るから、少しだけ淋しくはない……。そう思ったかは分からないが、ソーニャ(
jb2649)は一人、いや……リスと一緒に団栗を拾ってみる。
リスが手に取る団栗は、勿論リスたちにとっては主食であるから、身が入っていて美味しいものばかりだ。
ソーニャも自然と似たような綺麗な団栗をポケットいっぱいに詰め込んだところで、ふといい匂いを感じて歩き出した。
「あ、いらっしゃい! お嬢ちゃん」
気が付いたおばちゃんが手招きをしてくれたのに寄っていけば、ひょいっと一個甘い焼き芋が!
ぱくりと食べれば甘いそれに笑顔が毀れました。
周りのみんなのように楽しく食べている姿を見れば、自分の持っている団栗も栗みたいなら食べれるのに……とちょっとだけ齧ってみれば、渋くない。
馬刀葉椎は食べれますものね! 貰ったアルミホイルで焼いて貰ったおばちゃんや、近くに居た保科 梢(
jb7636)に渡せば、笑顔が返ってきて。
「団栗も食べれるんだね!」
それにとこくりと頷き今日はちょっぴりぼっちではなかったかも……と思ったソーニャだった。
貰った団栗を口に含みつつ、大きな目の前の焚き火の中に入っている持ってきた薩摩芋の様子を覗いてみる梢。
一個は、団栗をくれたソーニャに手渡せば笑顔が返ってくる。
(こういう所で焼き芋だなんて本格的だね。このために今日はあんまりご飯食べてないし一杯食べるよ!)
もうわくわくどきどきしっぱなしである。けれど、ぱちんっと爆ぜれば吃驚して飛びのいた。
そんな姿を近くに居た人達が微笑ましく見詰めているのに気がつき、小さく笑うと焼けるまでの間、周りをきょろきょろうろうろ。
先ほどの団栗のように、焼かれてるのは焼き芋だけじゃなくて。
(沢山あるなぁ……)
マシュマロや、秋刀魚やお肉や……本当に沢山の料理。
でもまずは……と戻ってくれば、焼き芋がちょうどいい頃合いだ!
「いただきまーす!」
ぱくん! と豪快に一口!
「……んんっ」
熱くてちょっと涙目になった物の、ほわんと甘い風味が口の中に広がり、自然と笑顔が綻んだのだった。
そんな焼いてる光景をみて、ぼんやりと思いを馳せていたのは彩咲・陽花(
jb1871)だ。
その身を包む巫女装束が火にあたり仄かに赤く色づく。
(実家を思い出すな……)
少し懐かしく見つめていれば、そんな陽花の隣で葛城 縁(
jb1826)がせっせと焼き芋の皮を剥いていた。
もちろんそれは、隣でぼんやりしている陽花のため!
「陽花さん? 何を考えているのかなー?」
「……」
答えが返ってこないのに、こういうときはー! と気合を入れる。
「そんなことより、お芋だよー♪」
ずずいっと目の前に出された焼き芋に吃驚する間もなく、口の中に押し込まれる。
「ふぅ……むぅ!? んんっ……」
はむはむごくん! と呑み込んだ後、心遣いで冷めた美味しい焼き芋で元気づけてくれた親友に、にへっと微笑む。
「美味しいね! ん、何か実家でよくやってただけに、ちょっと複雑な気分だね」
「今は物思いに耽るよりも焼き芋だよ! ほら、陽花さん。次が焼けてるよ?」
すでに次へ、次へと焼き芋は突入されている。
「沢山食べようよ♪」
「はふ、まあ考えても仕方ないよね。今は焼き芋を堪能だよー」
ぐっと力強く言われた言葉に、笑いを零し二人で地面に座ってはむはむと楽しむ。
ほんのり甘いそれに、こっちが甘いよ〜と交換してみたり、ひらりと舞い落ちた紅葉を取りあって少し遊んでみたり……。他にももらった団栗を二人仲良く分け合って食べてみたり!
「んむんむっ♪ 結構美味しいね?」
「どんぐりって不思議ー!」
初めての味に二人で顔を見合わせる。ちょっと不思議な体験が出来たかもしれない。だがしかし、まだ焼き芋は残っているのだ!
すちゃっと取りだした芋を手に取る。
「むふふぅ〜美味しいねーっ!」
また一個、と口に運んだ縁に苦笑をこぼす。
「……そして相変わらずよく食べるよね、縁は」
その言葉に、ぱくんと今まさに焼き芋を食べようとしていた縁が瞳をパチクリした後にそうかなぁ? と首をかしげた。
(焼き芋ですか、時期的には丁度いいですね)
ぱちぱちと火が音を立てている中に薩摩芋をいれながら、宮路 鈴也(
jb7784)は思う。
目の前に広がる赤や黄色が食欲を倍増してくれる。
「焼けるにはまだまだかかりそうですね」
とはいえ、すぐに焼けるわけもない。ならば何か手伝おうと申し出てみれば、大きな焚き火の火の管理は流石に、客人に任せるわけにはいかぬということからいれる薩摩芋の処理の手伝いをすることになった。
一個一個村の女性たちと一緒に作っていく。ホイルで包みながら、10個程作った時だった。
「甘いなー、でも、このままじゃあ食べにくいぞー」
そんな声が聞こえてきた。もぐもぐと食べながら、スマフォも手放さない……ルーガだ。
「おソース的なものはないのかー?」
(……薩摩芋に、ソース?)
鈴也はちょっと流石にそれは無理かな、と思いつつ隣に居たおばあちゃんにと聞いてみれば、バターがあるとのことだった。ジャガイモにつけると美味しいが、薩摩芋は……?
「バターがあるようですよ、如何ですか?」
話しかけ、渡せば大喜びでつけて食べている。どうやら美味しいらしく、ありがとうと満面の笑みだった。
「ほら、焼けてるよ!」
先ほどいれた薩摩芋がほっくりと焼き上がっている。おっちゃんからほら、手伝ってくれたお礼だ。とジャガイモも渡される。
「ありがとうございます」
渡された薩摩芋とジャガイモからはほかほかと湯気が立っていて。
火傷しないようにちまちまと食べてみる。ほわんと広がる甘い味。
「やはり出来て立ては美味しいですね」
先ほどのバターも貰って、ジャガイモも食べてみれば素朴で、でもとても美味しいほくほくとした舌触り。
真っ赤に燃えあがるような紅葉に目をやりながら、舌鼓を打ったのだった。
ちょっと離れた場所で、1グループの元から不思議な匂いがしていた。
ロジー・ビィ(
jb6232)と白桃 佐賀野(
jb6761)とジェンティアン・砂原(
jb7192)の所だ。なぜこんな匂いが発生しているのか、少し時間を遡ろう。
ジェンティアンは秋といえば秋刀魚だと秋刀魚を持参していた。そもそも甘い物食べれないしね? というわけである。ホイルに包んで焼きつつ、勿論大根も忘れてない。
「マシュマロ〜」
じゃじゃん! と出されたのは白桃のマシュマロだ。ちなみに少し焼いてすぐにどけないとどうなるかというと。
「どの位焼けば……あっ全部溶けちゃった〜」
「うん、白桃ちゃんのマシュマロは香りだけで胸いっぱいだわ」
じゅわっと広がる甘い香りに苦笑を零す。そんな二人のやりとりをみて、ロジーが自信満々に取りだしたのは。
「じゃーんっ! こんなものを持ってきましたの」
スルメと、アルミホイルである。アルミホイルには何かが包まっているようなのだが……。
「まずはスルメから……と。あら、炭になってしまいましたわね。残念」
ただ焼いただけで炭になるってどういうことなのだろうか。一抹のなんともいえない雰囲気が漂う。
「じゃ、ホイル焼きですわね……これが本命ですわ☆」
ほどよく焼き上がっていた秋刀魚の隣に入れられる。中身はなにか、という二人の問いに。
「中身? それは食べてみてのお楽しみですの」
現実逃避をするかのように、焼けた秋刀魚にのせて醤油たらして……と食べ始める。ちなみに焼き芋は流石に一本は多かったので半分誰かに渡そうと折っておくことにした。
(ああ、美味)
「ジェンちゃんそれは? お魚? 美味しそうだね〜」
貰った秋刀魚をもぐもぐしてみれば、骨が多く少し苦戦。もぐもぐと薩摩芋を楽しむロジーの料理ができあがり……そして最初に戻る。
「さぁ! お2人共、味のハーモニーをご堪能下さいませっ!」
「ロジーちゃんは……それはなんだろう……? 一口いいかなぁ」
開けられたそれは、薩摩芋を厚めに刳抜き、中はありとあらゆる秋の旬の物という品物だった。
「ビィちゃんの料理は……何かシグナルなってる」
覚えていないが、多分海で食べたことがあるため本能が語りかけてるに違いない。
(だがしかしレディの勧めは断れないのが僕!)
白桃と同時に口に入れたジェンティアンは……。
しばし、ふるふると震える白桃の料理をご覧ください!
「中々前衛的、な味……だね……そうだこれ掛けようよ」
焼きマシュマロどばぁとかけてみる。
「あ〜口直……げふんあっちもいい匂い〜」
友人の元へと飲み物を貰いに行った白桃が戻る頃には、ジェンティアンの意識も戻っており。
のちに、こう語っている。
口に入れた瞬間、違う世界(別名黄泉の世界?)が見えたのだと。
ちなみに作ったロジーはというと美味しく頂いていたのだった。
●ブースにて
足元に置いたダンボールから、わくわくと薩摩芋を取り出しているのはみくず(
jb2654)だ。
ぎりぎりの値段まで値切ったそれらは、宝の山のようにダンボールに鎮座している。
(焼きいも! 秋の味覚! もちろんもぐもぐするのだ!)
「芋を!」
もちろん皆にも分ける……! けれども、沢山あった方がいい。
そんな決心が兄である紫 北斗(
jb2918)にはたった一言だけであったが、分かるのだろうか。妹の食べる量が半端ないからとブースを借りての参加だ。
持参した取り皿を脇に寄せ、予算の許す限りのこれまた沢山の量の秋刀魚、そして醤油や酢橘もある。秋の味覚盛りだくさんであった。
「冷や飯で焼きおにぎりも作るで?」
「うんっ」
北斗の言葉に大きく頷き、みくずも北斗と一緒に枯れ木や落ち葉でこんもり山を作っていく。
火を起こして食材をいれれば、やがておいしそうな香りがしてくる。
ちらちらと薩摩芋と秋刀魚を見ているみくずに苦笑し、秋刀魚を食べたい人は早めにこないとみくずに全て食べられてしまうなぁ……なんて思っていた。
北斗が取り出した焼き芋をみくずに渡せば、軍手を手にぱかっと焼き芋を割る。ほっくりとした薩摩芋がお目見えし、皮ごと口に含んだみくずから笑顔がこぼれた。
「ん〜おいひい♪ やっぱり秋はお芋だねー」
「やねぇ……」
(紅葉を見ながら秋の味覚を楽しむ……ほんに地球の文化は良いものどすなぁ)
ひらりと舞い落ちた赤や黄色が目の前にも落ちてくる。
しばし焼くのをみくずに任せ、紅葉を見ながら秋の味覚の秋刀魚と焼き芋を味わっていたが、ふと気が付く。
すでに残り半分を切っている。このままだと妹に全て食べられてしまうのではないだろうかと!
「ほれ、もうちょっと景色や香りで目や嗅覚でも味わってみたらどうや」
秋刀魚の骨かからさんようになー? と世話を焼く兄に笑い、みくずがぺろりとまた一本食べ終わった後口を開いた。
「あ、お兄ちゃん。お夕飯はおいもご飯とかどうかな? かな?」
まだ食い足りないんかい!!? と呆れた北斗だったが、この後はおかずを買いに商店街に行こうとこっそりと決めたのだった……。
「こんな大会もあるのですね」
と鶏肉、牡蠣、鱈、鮭に茸各種を乗せ包んだ物にさらに切り目をいれた栗、ジャガイモにさらには薄く切った餅に一夜干しの魚、そして串に醤油やバター、塩にコンソメという調味料もバスケットにいれて持ってきたのは水屋 優多(
ja7279)だ。
ちなみに紙皿と紙コップ、割り箸も持ってきている。用意万端である。
「どんど焼きみたいだよね」
と笑うのは神谷 託人(
jb5589)だ。ちなみに託人が持ってきたものと言えば。
「優多がおかずで聖歌がご飯と汁物……じゃあデザートを」
というわけで、バナナと林檎を持参している。自分と友人の優多が甘い物が好きだかと用意したものだ。
(聖歌は甘い物駄目だけど、バナナ位なら食べれる筈だし)
と仲良しな従兄への心遣いも忘れない。ちなみに道具は火箸にミトン、新聞紙である。そしてご飯を用意するのは音羽 聖歌(
jb5486)。
「島じゃ大抵腐葉土にするから落ち葉焚きなんてなかったしな」
と言いながらすでに調理は開始されていたりする。
Y字型の枝を組んで飯盒持込でご飯とキャベツとソーセージのポトフを作っていて、ホイル焼きをする優多に場所を開けてやる。
時間の掛る林檎の処理をしながら、託人が口を開いた。
「聖歌は料理上手だよね」
「けど作りすぎたかな……俺はそれなりに食うけど優多は人並み、託人、お前は小食だろ?」
じっと見詰めれば、託人がほんの少し間をおいたあと頷いた。
「……最悪ホイル焼きと焼き芋類は持ち帰って、スープは何とか食べて……」
物々交換や、欲しい人にあげるのも限界がありますしね、とそんな二人に優多がにこっと微笑んだ。
「ご飯は……きりたんぽにでもして持って帰りましょうか?」
それはいいかもなーと二人が頷いた。
そして出来た料理はやっぱりとても多くて。
「この3人で行動って珍しいよね」
出来あがったホイル焼きを分けながらそういえば、同じくスープをよそって頷く。
「戦闘依頼だと彼奴と一緒が多いし託人は妹と行動多いですし」
ご飯を分けているのは聖歌だ。
「優多は最近種子島多いし」
そんなことをお喋りしつつ、いただきます! と声をそろえれば、美味しい料理に舌鼓を打つ
どれもこれも暖かく、とても美味しい。最後の焼き林檎とバナナを食べながら、託人は今日は優多も居てくれて、助かったかも……とちらりと聖歌を見て思ったのだった。
●色づく……?
『はっぱ赤くなったなう( ´∀`)』
写目をとり、UPしつつぽちぽちしながら歩いていけば、遊具を見つけ興味津津にシーソーに座ってみるものの勿論誰も反対に乗っていなので動くこともなく。
(これの一体何が楽しいのだろう……?)
不思議そうな表情をしていれば、ルーガの様子に気がついたジェンティアンがやってきた。
「こうやって遊ぶんだよ」
そうして漸く楽しい時間を過ごせたのだった。
他にも遊ぶ人達も、散策する人達もいる。
ひらひらと舞う紅葉を見ながら、ロジーは思う。
(紅葉……綺麗ですわね。
燃盛り、散行くと考えると……少し、切ないですけれど)
ひらり、とまた一枚葉が落ちた。
腹ごしらえに歩くのは白桃。
(人間界は四季? で景色変わって楽しいね〜
夏は青々してたのに 今は赤や黄色になってて不思議)
手に取った紅葉は、夏のそれとは違い、真っ赤に染まっている。
そして……それぞれゆっくりと、のんびりと思い思いに時間を過ごしたのだった。
ひらりひらりと舞い落ちる赤や黄色は、やがて土へと還るのだろうか。
ぱちぱちと火が爆ぜ、空へ高く高く煙が舞いあがる……。
空へ空へと楽しい思い出をのせて。
こうして、一日がゆっくりと過ぎていった……。