●これが噂の……?
(いやいや、外見可愛いけど……鳴き声、変だろう?)
と心の中で突っ込みを入れる翡翠 龍斗(
ja7594)。そう、今から会うディアボロは、ラッコはラッコでもラッコォォォォ! と鳴くラッコなのだ。
正しい知識を持ってないと危ないということがよく分かる。
猫耳と尻尾をつけ、準備万端な猫野・宮子(
ja0024)。彼女はこれを装備すると戦闘モードになるのだ! ……だがしかし、今回は戦闘というよりはもふもふの方が強いかもしれないのだが。
ちょっと素敵なこと過ぎて、信じられない、と言葉を零すのはユイ・J・オルフェウス(
ja5137)だ。
本が好きな彼女、まるで本の世界のような出来事にわくわくが止まらない。
「お仕事で、可愛い動物さんと一緒なんて……」
ほわんと想像してみる。大きなラッコと戯れる……。
「……ちょっとおっきいですけど、可愛いことには、かわりない、です」
「本当、おっきいラッコかぁ……うん、楽しみだねぇ」
耳と尻尾をパタパタしながら賛同するのはアッシュ・スードニム(
jb3145)だ。ちなみに服の下に着る水着はユイと同じく学校指定の水着である。アッシュの場合は普段よりも露出が減るかもしれないという、なんとも不思議な存在だ。
同じく学校指定の水着を着て居るのは山科 珠洲(
jb6166)。学校指定の水着率が高めである。
「この時期水遊びとか面白いかもしれません」
そういう先には、事前に毛皮を丹念にトリートメント&ブラッシングして、いつもより当社比1.5倍程もこもこふわっふわのラカン・シュトラウス(
jb2603)が居た。
「激モコスティックファイナリティもふまふドリームラカンモード!」
ふわぁ……といい香りと毛並みが風にそよぐ。そんな隣では、鳳 蒼姫(
ja3762)がぐっと拳を握っていた。そして片方の手にはフルーツの盛り合わせとアンパンとアロマオイルセットがあった。
(ラッコさんに突撃なのですよ☆)
そして、一人異様な姿なのは鳳 静矢(
ja3856)だ。
3000久遠で買えるだけの大きな貝を買った彼の思惑とは、如何に?!
皆の視線の先には……どでーんと遠目から見ても分かる黒い物体があった。
「いざゆかん、ラッコへ!!」
●さぁ、行こう!
ボートに乗る者、水上を走る者、空を飛ぶ者。全員水着を服の下に着て、準備万端である!
「静矢さん、行くのですよ☆」
勿論白鳥ボートである。二人乗り込む。
「ふむ、では頑張るとしようか」
貝も積み込んで全力で向かう静矢。勿論漕ぐのは彼の仕事だ!
本が濡れてはいけないと置いて、ユイもボートで向かう。
「思いっきり、もふもふする、です」
その決意は何よりも硬い。
「これで、思いっきりできる、です」
そして、デジカメ片手に龍斗が全力で向かう! そして全力で向かうのは龍斗ばかりではない。
引っ張って行こうと思ったら皆が乗り気じゃなかったため、これは一番乗りしよう、とアッシュがシィルにと乗って突撃する。
「と言うわけで、突撃だ!」
ヒャッハー! と楽しげな主を、妹を見守る気分で乗せるシィル。鮮やかな青の鱗を持ち、退化した翼の付け根に太陽のような模様が浮ぶ。そして、その体には勲章の傷跡が無数にあった。
流石に上空からは早い。すぐに点となって行く。珠洲と一緒なのはラカンだ。一緒に漕ぎながら頷く。
「ボートで移動というのもなかなか楽しいのである」
「そうですよね」
これからのこと思えば二人自然と和やかに会話をして……そして、その脇を走り抜けていく姿。宮子だ!
「魔法少女マジカル♪ みゃーこ出陣にゃ♪ 水の上をすいすいなのにゃー♪」
スタタタ!! と走り去って行く。そうか、水上歩行もあった、と思った瞬間、ぼちゃんと、落ちた。
「……あ、しまった。時間切れにゃー!?」
その言葉に、アッシュが戻ってきて無事回収した。
「うー、ありがとうにゃ。こうなったら着替えてマジカル♪ みゃーこ水着バージョンになるにゃ」
「その方がいいよ! ふふ、水上でも速さは負けないよー! 全速前進だー!」
きゃーっ! と楽しそうな声を上げるアッシュの傍ら、オレンジ色の紐水着姿というなんとも艶やかな姿となったのであった。
●ラッコ・デラックス!
そいつはどでぇぇぇぇんといた。巨大なその姿は、大きな岩のような気がしないでもない。
ぎらぎらと光る眼差しは、細められ鋭い。撃退士どもめ、俺に勝てるかな?! とでもいうように水をぴゅーっと吐いた。
「ラッコォォォォ!!」
雄たけびを上げる姿は……。
「ラ、ラッコォォォ……っ!!」
情けない声が上がる。よじよじと足元から登って北上を目指すアッシュに出番を思いっきり食われた。そして、飛び乗ったのは宮子もである。
「うーん、もふもふにゃ♪ 想像以上のもふもふ具合にゃ♪」
ふっわふわのもっふもふである。すでに触れたその場所からふわっと指先が毛の間にと埋まって行く。
そんな中ふわりと上空に三つの影……珠洲と珠洲に抱えてもらったユイ、そしてラカンだ。
(上空より敵の姿等確認! ……くっ!?もこもこなのであるぅ!? だがこの程度恐るるに足らずなのである!)
目の前にはふんわりやわらかだと目視でも分かる敵もといラッコが居る。
「我がもこもこの方が最強なのである!」
ズビシィとしてみるが、ラッコは動かない体を震わせるばかりだ。そんなラッコによじ登って行けるか、と悩んでいたユイだったが、珠洲が降り立ったのに合わせて足の上へ!
「ありがとう、ございます」
「いえいえ、さぁもふりましょう!」
その言葉にこくこくと頷き、ユイがそっとしゃがみ込んだ。
「失礼して……気持ちいい、です」
「これがもふもふの感触……。くせになりそうです」
二人は、もふもふを堪能する。それはしっとりなめらかふんわりである。そっと指先が埋まっていき、さらさらと音をたてた。
さっきから足の方ばかりもぞもぞするラッコはなんだか涙目にも見える。
そんなラッコをちょっと遠い所から何度か写真を撮った龍斗。よじ登ったり、もふもふしたりしている仲間も一緒に収める。
「可愛いけど……天魔なのだよな」
天魔だからこそ、こんなに大きくなっちゃた気がしないでもない。それにしても、とデジカメを目から離し肉眼で見つめる先には静矢の姿。
「軍師は……何をしているのだろう?」
白鳥ボートからはすでに蒼姫が飛びおり、ふかふかを堪能している。
「ふかふかなの〜☆」
そして残った静矢と言えば、くまの着ぐるみを着て居た。それはくまのマスコットを模したふわふわの手触りがよく、アミューズメントパーク等では絶大な人気を誇る着ぐるみである。
だがしかしここはアミューズメントパークではない。ならばなぜそれを着こんだのかと問われれば……。
「オヤジ……まさかこんな所で再会するなんて!」
まさかの感動的再会だった。ちょうどラッコの顔辺りに居た静矢の声はラッコにとてもよく響いた。
「ラ、ラッコォォ?!」
届いたが、なにそれ俺に子供なんていねぇよ?! という叫びに取って変わる。そう、そしてここで貝の出番である。よじよじと登っていき、石板と貝を渡し割らせようと試みる。
ラッコは困ったように貝をお腹に乗せ、石板をとりあえず持つのみだ。ラッコォォォとなんか切ない声が漏れる。
「ほら、オヤジの好きだった貝だよ、食べてくれ!」
だから俺は親父じゃないし、つうかなんかさっきからもぞもぞすんだけど?! とその石板で打ん殴る。
「オ、オヤジ……まだ私の事がそんなに憎いのか!」
何この人怖い、とラッコが思ったか分からないが、なぜか現実逃避をするかのようにガンガンと貝を割り始めた。
「蒼姫さんは見事スルーなんだ、軍師のこと……」
その頃の蒼姫と言えば、アンパンを一心不乱に貝を叩くラッコの口元に与えようと試み中である。
「アキの十八番、動物さんにはアンパンなのです!」
ありがとー! というようにもぐもぐ。
ちなみに、ラッコの貝を割る攻撃に巻き込まれないように、とちょっと後ろの方で貝割をみているユイ。
(ラッコさんの、頑張ってるとこ、みたい、です)
「頑張れー、です」
ラッコはその応援と次いでフルーツ盛り合わせを貰い、さらにがんがん激しく叩きだす。けれどこれには攻撃能力はないし、それに大きさに反して貝自体はそんなに大きくなかったため大きく揺れることもなかった。
「どのフルーツが好きかなあ?」
なんて、あれやこれや口元に渡す程度には。その少し右側の方で、ころころ〜っとふわっふわを全身で楽しんでいる者が居た。
「ごろごろにゃー♪ ごろごろにゃー…うみゃぁ!? こ、転がりすぎたにゃー」
ぼっちゃーんと水しぶきがあがった。もふもふを堪能していた宮子だ。またむんずと毛を掴んで登ってくる。そして、同じくブロウクンナックルに切り替え、もふもふの毛をむしりながら登る人が居た。龍斗だ。
「ラッコォォォォ!!」
地味な攻撃方法だが、これはかなり痛い。ぴゅーっと水を吐けば、ちょうど首元に居たアッシュが気持ちよさそうに水浴びをしていた。
これ攻撃なんですよ! でもぶっちゃけ冷たい水が肌に沁み渡る。
「最近暑いし、水浴びも良いねぇ」
「本当に……電磁防御も考えましたが、黙って受けてた方が心地よかったものでして」
珠洲も一緒に水浴びをしていた。そんな中、ふわもこ対決? をしていたラカンが頑張っている。
「だが負けぬ! 負けはせぬぞぉぉぉ! なのである!」
ラカンはふるもっふしていた。皆で力を合わせて倒すのである。そのためにはまずは敵を知らなければならない。
そして、一人ではダメだ。仲間だ、仲間とやらなくてはならない!
「みよ! この我の白きもこもこを! 愛くるしいであろう!!」
それは、丁度登ってきた龍斗にと向けられた。
「いや、自分の彼女には劣ります」
さらっと惚気られた。だがしかしこれで負けるラカンでない、ここで負けたらラッコにも勝てないのだから!
「……翡翠殿!? 恐ろしい子! ブレない! 本当にブレない!! 」
これを見るであるー! と当社比でわりましふわっふわを見せるが、つれない。というか、と知らず赤くなった表情で、ツヴァイハンダーFEでぶん殴った。それも本気で。
「な、何を言わせる」
「何をするのであるぅぅぅううう!?」
がんっとそれはヒットしまして……。
「我は本当のことをいtt………」
どんどん語尾が消えていく。そのままラカンはお星様になってしまったのだから……。あれ、攻撃する対象間違えてませんか?!
「……着ぐるみって市販品だったよな? 多分……重体で済むだろう」
合掌している傍ら、一人これまたぶれない男が居た。そう、静矢だ。まだ彼は息子気分である。
だがしかし、流石にこれ以上はやだよ?! となったラッコにとまた石板でぶん殴られた。
「ふっ……ふははは! 油断したな、実は私はお前の息子ではないのだ!」
最初から知っていた気もするが、着ぐるみをぶわっと脱いで種明かしである! ラッコは、ほらぁ、やっぱりーっ! という涙目で見て居た。
飛びおりた静矢をやっぱり眼中になしな蒼姫は今度はアロマオイルでマッサージしていた。
一部分だけでも、効果って結構ありますよね。ラッコはぽやーと夢心地である。
少しゆらりゆらりとご機嫌に揺れる尻尾はゆりかごのようで。ユイがちょっとだけ、と瞳を閉じればそれはふかふかの極上のベットだ。
そのあと、湖へと無事帰還した静矢が挑発しながら、ぐるぐる回るという行動をしていたが、本人もなぜやっていたのか分からないらしいので割愛しよう!
デジカメで皆で撮りあったり、ちょっと首筋をこしょこしょーっとして水浴び攻撃を受けたり、シィルが乗れないけれどラッコと額をごっつんこして交流したりした。
「気持ちいいな……」
「記念なのですよ〜☆ ハイ、チーズ☆」
一応戦闘場面のはずなのだが、明らかに交流会と化していた。けれどそれもまた楽しい思い出の一つで。
知らず皆から笑い声が毀れる。
楽しかった時間も、そろそろおしまい……と皆が武器を手に取る。
●もふもふの果て
どうにか戻ってきたラカンも含め、さぁ終わりにしましょうと全員の攻撃が当たる。
「ラ、ラッコォォォォォ!!!!!!」
一応攻撃をしていたが、やりたいだけもふられただけのラッコは最後、ユキの『大炸裂SHOW』が炸裂し、吹っ飛んだ。
勿論敵味方関係ない攻撃であるから、皆ぼっちゃーんと湖の中へ。
「きゃー?!」
最後まで大騒ぎで終了となったのだった。
ちなみに、珠洲の頼んでいた処理業者がやってきて、大型トラックにラッコを乗っけて去って行きましたとさ。