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マスター:樹 シロカ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/04/19


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

●物語は突然に

 春の何処か眠気を誘う空気の中、図書館は今日も静かだった。
 大八木 梨香(jz0061)はいつもの通り、本を入れたカートを押して書架の間を縫って行く。
 閲覧や貸し出しから戻ってきた本をあるべき場所に戻す作業なのだが、いくら梨香が女子にしては長身とはいえ、一番上の棚には届かない。
「……踏み台、どこでしょうね」
 書架の間に置き去りにされている移動式の踏み台を探し出し、梨香は元の棚へと戻ってくる。
 踏み台に上り棚をみると、どうやら面倒になって放り込んだ不届き者がいたらしく、後ろに押し込まれた本や、明らかに場違いな本があることに気がついた。
 黙々とそれらを整理する梨香に、声を掛ける者がいる。
「忙しい所申し訳ないね、ちょっと貸出の方をお願いできるだろうか」
 ふと見ると、大学部の講師ジュリアン・白川(jz0089)だった。
「あ、はい、すぐに……」
 梨香は慌てて踏み台を降りようとした。
 が、慌てすぎたようだ。
「って、あら?」
「危ない!」
 スローモーションで流れる景色の端に、駆け寄って来る白川の姿が見えた気がした。


●おいでませ異世界

 遠くから自分を呼ぶ声に、梨香は薄く眼を開く。
 心配そうに覗きこむ男の顔は、確かに白川だった。
 ……なのだが。
「先生……どうしたんですか、その格好は」
 梨香は思わず言葉を漏らしてしまった。
 何故なら、つい先刻までグレーのスーツに紫のネクタイを締めていた白川が、何故か黒い立烏帽子を被った、狩衣姿だったからである。
 どう贔屓目に見ても、白川の金髪紫眼にあってない。
 だが白川は咳払いを一つすると、憐れむような眼をして梨香を見た。
「大八木君、君も大概なんだよ」
「えっ」
 思わず梨香は己の姿を見下ろす。
「……ええええええッ!?」
 えらく露出度の高い、アラビアンナイトのお姫様の衣装が目に入った。
「ちょ、ちょっと、先生、これどうなってるんですか!」
 ベールの下で口をパクパクさせながら、怪しい平安貴族に縋りつく。
 眉間にしわを寄せ、何処かから取り出した笏を額に当て白川が目を閉じた。
「君が足を滑らせて本と共に落下して来たとき、支えに行ったつもりがぶつかってしまったようだ。どうやらその際におかしな世界に飛ばされたらしい」
「そ、そんな……どうやったら戻れるんですか!? 殴ってみたら戻るでしょうか」
 梨香が真剣な目で物騒な発言をしたそのとき、女の高笑いが響いた。
「ほほほ……どうやら貴方達だけでは戻れそうもありませんわね」
 見上げた樹の枝に、女魔道士といった風情の美女(jz0187)が腰かけていた。
「貴方達はこの世界を壊してしまったんですわ。ごらんなさい、あの空を」
 釣られて女の差す方を見ると、青い綺麗な空にぽっかりと黒い穴があいている。
「あの空を塞ぐまで、元の世界にお返しする訳にはいきませんの。塞ぐ為に必要なのは……」
 女の言葉に、梨香と白川は揃って頭を抱えることになる。


●戦え、プリンス&プリンセス!

 金色のアウルの光が煌めくと、輝く銃弾は襲いかかる『影』を過たず貫いた。
 黒い『影』はぽふん、という音を立てると、光となって霧散する。
 それを確認すると、狩衣姿の白川がライフル片手に駆け寄った。違和感がありすぎる姿だが、当人は真剣だ。
「これか、空のリボン!」
 拾い上げると、青いリボンがきらきら光る。
「これを……集めるんですね」
 アクセサリーがしゃらしゃら音をたてる腕に槍を握り、梨香も青いリボンを握りしめる。
 二人はそれぞれのリボンを突き合わせた。
「成程、明らかに色合いが違う」
 魔女の言うには、同じ色のリボンを集め、縦横に組み合わせて出来上がった布が空を塞ぐのだという。
 リボンを持っているのはこの世界のあちらこちらに潜む『影』たち。
 倒した者によって、『影』が残すリボンの色が変わるのだという。
 但し、稀に同じ色を手に入れられる者同士がいる。
 それは……。
「私の場合は、かぐや姫か紫の上か」
 白川が嘆息する。
「衣装は重要なヒントになりそうですね」
 そう、古今東西の物語の王子様とお姫様。その対の相手だけが同じ色のリボンを持つのだという。
「そういう意味では、私もドレスじゃなくて良かったのかもしれませんが……」
 梨香は辺りを見渡す。
 あちらこちらで『影』を追い、様々な衣装の人々が駆けまわっていた。


リプレイ本文


 メンナクこと命図 泣留男(jb4611)はサングラスを外し、己の姿に愕然とする。
「ぐ……エレガントゴージャスという路線もわかるが、しかしこれではブラッカー(黒愛好者)としてのプライドが……」
 彼の全身は頭の先から足の先まで金粉輝くシャイニングゴールド、首と言わず指と言わず、ゴージャスなジュエリーで覆われている。
 ちなみに衣服はパンツ一枚のみ。怪しすぎる。
「あら……王子様ね?」
 魔女(jz0187)の説明に、メンナクはとりあえず頷いた。
「礼を言うぜ。これをつけてみな、俺ほどじゃないがセクシーの美学を得られるぜ」
「あら、有難う」
 メンナクは大きなルビーのついたネックレスを女にかけてやる。
「この世界にならいるかもな……俺の真の魅力を理解できる女が。そう、お前を愛した瞬間にこそ黒い太陽がアウトバーストするのさ」
 ……黒くなった所を修復するって話、聞いてたか?
 魔女は思ったが、メンナクが絶好調なのでそっとしておくことにした。


 周囲を見回し、彪姫 千代(jb0742)が目を輝かせる。
「おー! よく分かんねーけど絵本の中みたいなんだぞー!」
 千代の姿はアラビアンナイト風だった。……上半身裸は通常通り。
 だがターバンと膨らんだズボンが良く似合っていた。
「でもなんでこんなところにいるのか判らないんだぞ……あっ!」
 大八木 梨香(jz0061)が歩いて来るのが見えた。
「梨香の服もいつもと違うんだぞー!」
 元気いっぱい手を振る千代の姿に、梨香がパッと顔を明るくして駆け寄る。
「トラさんだったんですね!」
 そこで経緯を聞き、千代は嬉しそうに飛び跳ねた。
「おー、じゃあ俺はランプの精霊だな! 三つ願いを言うんだぞー!」
 恐るべき順応性で、千代は納得する。こういう場合は素直な方が得だ。
「それなら一足飛びに元の世界に帰るとか……」
 梨香、現実的。
「おー……それは無理なんだぞ。でも影は倒すんだぞー! みんな出てくるんだぞー! 梨香ー一緒に踊るんだぞ!」
 千代の剣技は、明るい剣舞のようで。『炎虎』の炎と『氷虎』の氷精がその回りを跳ねまわる。
 次々と影は弾け、青いリボンが舞い落ちる。
「影が居そうな所を探すんだぞー! ジメジメーってしてる所が怪しんだぞー!」
「あ、待ってください、トラさん!」
 慌てて梨香が後を追う。
「おー……おんなじなんだぞ!」
 メンナクと遭遇した千代は、嬉しそうに相手の裸の上半身を見た。
「ふ……ソウルで戦うのは同じでも、伊達ワルの香りのしない格好だな」
 この時点でメンナクの宝石はずいぶん減っている。どうやら方々でプレゼントしてしまったらしい。
「お前の伊達ワルを見せてみろ! よかったらこれもやろう」
「えっ!? でもそれではあなたが……」
 残った宝石を全部梨香にあげてしまうメンナク。どうやら彼なりの『おしゃれ頑張れ』という気遣いらしい。
 ちなみにこの時点で、メンナクはパンツ一枚の金粉姿。
「こういうお話、覚えがありますね……王子様、ですか」
 梨香の言葉に千代が反応した。
「梨香……この願いは無し何だぞ……な、これははずかしいんだぞ………」
「えっ」
 どういう訳か、千代が上着を着ていた。



 目をしばたたかせ、美森 仁也(jb2552)は起きあがる。
「ここはどこだ、確か家にいたはずで、あやかが本を持って転んで……あっ!」
 一緒にいたはずの美森 あやか(jb1451)の姿を探す。
「あやか!? ……なんだ、その格好は?」
 いつの間に着替えたのか、蒼い簡素なドレスに何か意匠の入った白い薄いコート姿のあやかが、怪訝な顔を向けた。
「お兄ちゃんこそ」
 仁也は自分の姿を見下ろす。視界が悪いと思ったら、眼帯をしていた。黒い三角帽を被り、白シャツに赤いサッシュを締め、黒の膝丈ズボンにブーツ、黒いコートという出で立ちだ。
「……なんだ、この服は?」
「さっき読んでた本の主人公と恋人の衣装よ。海の巫女の第一王女と、彼女を支えて王になった海賊の長の」
 いつの間にコスプレ。首を傾げる2人に、通りかかった女が事情を説明する。
「なるほど判った。それなら早速行こうか、あやか」
 手を差し伸べると、仁也のマントに隠れるようにしていたあやかが小さく頷く。
「うん。お兄ちゃんが傍にいれば、何でも出来るから」
 健気に笑って見せるあやかが、はっとなる。
「お兄ちゃん、後ろ!」
 仁也は咄嗟に黒い翼を広げ、あやかを抱いて舞い上がる。本来の姿に戻った仁也を、あやかはぎゅっと抱きしめた。
「あやか、少し我慢してて」
「大丈夫、お兄ちゃん」
 少し離れた所に降りると、人の姿に戻った仁也は、大鎌を手にあやかの前に立つ。ドレスで動き難いだろうあやかは、戦いには不利だ。
「影なんかに傷付けさせたりしないからな、大事な俺のお姫様」
 仁也は己に言い聞かせるように呟く。


「気をつけて、希沙良殿」
 サガ=リーヴァレスト(jb0805)が、華成 希沙良(ja7204)の手を引いた。
「……大丈夫、……です」
 希沙良は空いた方の手で白い衣装の裾をつまみ、朽木を乗り越える。 
 サガは長い髪をみずらに結い、金の輪を額に嵌めていた。
「とにかくリボンを集めねばな」
 先程聞かされた話の内容は半信半疑だったが、訳の判らない場所に不思議な衣装で飛ばされていることは間違いない。
 薄暗い森には、そこここに影の気配。
「希沙良殿は後ろで援護を……せめてこんな時くらいは護らせてもらうよ」
「……頑張って……下さい……ませ……」
 サガは背後に希沙良を庇いつつ、太刀で影をなぎ払う。希沙良は愛しい人が傷つかないよう、『アウルの鎧』をサガに纏わせた。
 一つ影が消える度に、青いリボンがはらりと落ちる。
「……あれは……」
 森の奥を指さした希沙良の姿が突然、消える。
「希沙良殿!?」
 それまで彼女がいた場所には、飾り櫛が落ちていた。
 拾い上げたサガは、迫る気配に剣を振る。
「ギャーーーッ!」
 八つの首の一つを落とされた大蛇が、狂ったように叫んだ。
「これは……八岐大蛇なのか? だとすると……」
 サガは櫛を大事に髪にさす。どうやら自分は素戔嗚尊で、希沙良は奇稲田姫ということか。
「ならば、これでどうだ」
 襲い来る首をかいくぐり、サガは太い胴に太刀を突き立てる。
「グギャーーーッ!」
 蛇が黒い霧のように消えた後には、幾本ものリボンが舞い落ちた。と同時に、サガの髪から櫛がするりと離れ、地面に落ちると希沙良の姿に戻る。
「サガ様……お怪我を……」
「うむ大丈夫だ……希沙良殿が無事で何よりだよ」
 そっと翳した手から放たれる癒しの光に、目を細める。



 水面を覗きこみ、若杉 英斗(ja4230)はため息を漏らした。
 別に己の美しさに浸っていた訳ではない。
「……なにコレ?」
 確か学園内にいたのだ。通りかかった可愛い子に見とれ、階段を踏み外した所までは覚えている。
 だが目覚めると、妙な違和感を感じた。それもそのはず、何故か豪華な十二単を着て、眉毛は麻呂眉だ。
「……また、女装か」
 この状況を単なる女装で済ます辺り、英斗の肝は座っていた。
「他に誰かいないかな」
 十二単をずるずる引き摺りながら、歩き出す。

「これは一体……」
 夜来野 遥久(ja6843)は頭上の立烏帽子に触れた。狩衣からは芳香が漂う。
 そこに別の薫香が漂ってきた。
「おーはるひーも平安? 何これ、わらう」
 百々 清世(ja3082)が、やはり狩衣でふわふわと歩いて来る。
 普段物に動じない遥久も流石にやや困惑していたが、知人に会えたことで安堵した。
 そこで清世が突然、背後を指さして笑いだす。
「ちょ、それは卑怯だろ……!」
 振り向くと、麻呂眉で十二単の英斗。
「若杉殿、それは……」
 言葉を失った遥久はそっと目を逸らす。
「お二人はお揃いですね。というわけで、『なよ竹の若杉』、参上! ……いや、あるいは、『若杉の上』かもしれない」
 英斗は動じてるそぶりも見せなかった。
「ともかく皆、和風ってことですね。わっふぅー!」
 ……絶好調である。
「若ちゃん面白すぎ。おにーさんまじ死にそう」
 清世は写真を取るべく携帯を探すが、そこにはポケットも携帯もなく、がっかりする。

 聞き覚えのある声が響いた。
「おや君達が仲間か、これは心強いな」
 怪しい平安貴族追加。ジュリアン・白川(jz0089)がやって来た。
 何故か魔法使いの女もふわふわ飛んでくる。
「きゃーじゅりりんー! おそろー!」
 手を振る清世。
「つーか聞いて、この着物なんかすげぇ和風な匂いする、やばい」
 真顔の清世が、白川に訴える。
「成程。さしずめ君は、匂宮というところか……」
 笑いを堪える白川。清世に匂宮は似合いすぎる。すると遥久は薫宮か。
 魔女が一同に状況を説明した。
「……という訳で、縁ある者同士頑張ってね?」
 黙って聞いていた英斗が、おもむろに口を開く。
「判りました。協力する方が効率が良さそうですね。ですが、最初に言っておきます」
 キリリとした眼差しで一同を見渡す。
「いくら【AP】と言っても、コメディーと言っても、何をやってもいいわけではないです」
 麻呂眉に十二単の男に言われるこの違和感。あと一応ジャンルは冒険だから。もう諦めてるけど。
 だがそんなことは聞いてもいないし聞く気もない遥久が、禍々しく輝く笑顔を魔女に向けた。
「成程、成程。それならば……」
 何やらひそひそ。頷く魔女。突然白い煙が遥久を包む。
「!?」
 煙が晴れると、そこに立っていたのは身の丈六尺を遥かに超える十二単姿。銀の髪は長く伸び、足元まで届いている。
 その迫力、堂々たる態度、いつもより増量されているのは気のせいか。
「はるひー、やばい……後でみんなに……あ、だめだったわ」
 再び携帯を探し、直後にしょんぼり項垂れる清世。
 だが振り向く遥久には、咄嗟に目をつぶった。……目を合わせるとヤバい気がする。
「おそらく、こちらの方が効率は良く」
 遥久が突如身を翻す。手には鋼糸。近付く影を糸に絡め掴んで引き千切り、あっという間にリボンを手にしていた。
「ご一緒にどうです、ミスター白川。折角ですし、皆の士気も上がりますよ」
 イイ笑顔の遥久。何故か胸には『六条御息所』と名札がある。
「いや、待ちたまえ。どう考えてもおかしいだろう?」
 じりじり後じさる白川。だが十二単を翻し、一気に距離を詰めた遥久は、白川の袖をがっちりつかんで離さない。
「夜毎この姿で夢枕に立って見るのも一興ですね。そちらの方がお好みですか?」
 突然、女の笑い声。魔女が目に涙を浮かべて笑っていた。
「素敵なお仲間ね! いいわ、特別サービス」
 白川の身体を白い煙が包み以下省略。六尺十二単の追加である。
「待ちたまえ、最初の装束が変えられるなら、運命とか何とかどうでもよくないか!?」
 白川の抗議は、魔女に一蹴される。
「相手は変わってませんでしょ。要はヤル気が出るかどうかですわ」
 ――こうして俄然やる気を出した遥久と、半ば自棄になった白川が駆け出す。
 ガタイのいい十二単が、金と銀の長い髪を振乱す様は、さながら悪夢の連獅子と言うべきか。
「……なんだろ、なんか……笑うに笑えねぇ、し……?」
 普段なら面白いことには反応する清世が、神妙な顔になる。
 


「……ココは何処? そして何故に十二単? 屋上でお昼食べてたはずなんだけどなあ」
 座りこんだ日ノ宮 雪斗(jb4907)は頭を抱える。
 だがそうしている彼女に迫る黒い影。
「あれは、何? ……て、何かコッチ来たー!? あ、アーテルさーん!!」
 慌てて召喚したスレイプニルがブレスを吐くと、黒い影は消え、青いリボンがひらひら落ちた。
「何だろこれ? なんか綺麗だから拾っておこうっと」
 次々と影を倒す相棒の陰で、こそこそリボンを拾う雪斗。
 だが影の数がどんどん増えてくる。
「多いなあもう! アーテルさん、ダッシュです!」
 しがみつく雪斗を乗せたまま、スレイプニルは一気にその場を離れた。
 森を飛び出した所で、似たような姿の一団を見つけ、雪斗はほっと一息。
「わ、私以外にも人がいた! よかったあ〜」
「やっほー、こっちこっち! 若紫ちゃんかなー一緒にいこ!」
 ようやく遭遇した正真正銘の女子に、清世が生気を取り戻す。
 遥久が満足したためか、遥久と白川の衣装も狩衣に戻っていた。
「で、今更なんだけど……これって結局何かすりゃいいの?」
 白川が清世の襟首を捕まえ、雪斗に事情を説明した。
「……成程。そういう事なら、私も微力ですけど、同行せてください。よろしくお願いします!」
「つー事はあの影っぽいの集めてくればいいの、ね……?」
 ふんわり事情を理解した清世が、その役割を申し出る。
「わかった、まかせろ」

 任せろ、と言っただけのことはあった。
 清世は巨大な影とそのおこぼれのような影を、森から引きずり出してきた。
「こんだけいたらリボンもすぐ集まるくね? 俺偉いわ」
 待ち構える仲間の前を通り過ぎると、安全圏まで退避しひと休み。戦闘する気は皆無である。
 現れた巨大な影を追って、次々と人が集まって来る。
「この姿格好なら、前に出ても問題ない気がしてくるな」
 普段は闇に身を潜ませるサガが、影の正面に立ち、剣を振るった。希沙良はサガの後方から、援護射撃。
「あやか、光をお願い」
 仁也の声に応え、あやかが『星の輝き』で周囲を照らす。弱い影は、それで動きを止めた。
「アーテルさん今です!」
 雪斗のスレイプニルが一息でそれらを焼きつくす。
「あー、めんどくさい。白川先生、蓬莱の玉の枝を持ってきてくださいよ」
「無茶振りにも程があるな」
「なんたってわらわは今、月のプリンセスですからね。蓬莱の玉の枝で、月から宇宙戦艦を呼び寄せる事ができるんですよ」
「……何か色々混ざってないか?」
 英斗が文句を言いながらも、必殺技。
「月に代わって、神輝掌!」
 皆の心を合わせた(?)攻撃が、影を打ち砕く。

 無数の青いリボンが宙を舞い、辺りに降り注いだ。
「お疲れ様。これだけあれば空は直りますわ」
 現れた魔女が指を鳴らすと、それぞれが持つリボンが同じ色を求めて集まり、青いハンカチの様に黒く開いた穴へと飛んで行く。
「おー……綺麗じゃん」
 清世がふわりとほほ笑む。
 空を見上げ、遥久がおもむろに取り出したうさ耳を装着。
「月の元へ帰るには必要かと思いまして」
 真顔で見つめられ、白川は『やらないぞ?』と眼で訴える。『なよ竹の若杉』ですら、うさ耳は笑顔でスルーした。
「これで帰れるな。……さあ行こうか、希沙良殿」
 サガが抱き上げると、希沙良はその頬に軽く口付けた。戦士には何よりの勲章だろう。
「みんな記念撮影なんだぞー!」
 はしゃぐ千代の声が、記憶の最後。



 一同が再び目を覚ましたのは、何故か図書館だった。辺りには衝撃で散らばったらしき本の山。
「ええと……これも魔法で何とかなりませんか?」
 床に伏した梨香の声が、か細く漏れた。

<了>


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:6人

オシャレでスマート・
百々 清世(ja3082)

大学部8年97組 男 インフィルトレイター
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
蒼閃霆公の魂を継ぎし者・
夜来野 遥久(ja6843)

卒業 男 アストラルヴァンガード
撃退士・
彪姫 千代(jb0742)

高等部3年26組 男 ナイトウォーカー
影に潜みて・
サガ=リーヴァレスト(jb0805)

卒業 男 ナイトウォーカー
最愛とともに・
美森 仁也(jb2552)

卒業 男 ルインズブレイド
ソウルこそが道標・
命図 泣留男(jb4611)

大学部3年68組 男 アストラルヴァンガード
温和な召喚士・
日ノ宮 雪斗(jb4907)

大学部4年22組 女 バハムートテイマー