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マスター:清水裕
シナリオ形態:イベント
難易度:やや易
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/03/04


みんなの思い出



オープニング


『一大事だ、早く喫茶店に来てくれ!』
 そう勘十郎から電話が掛かってきたのは少し前の事だった。
 まさか天魔に襲われたりしたとか、はたまた強盗に押し入られたとか!?
 そう思いながら、友人達を連れて総勢25名くらいで喫茶店へと突入した。
 扉を開けると何時もの様に扉に付いたベルの音が響き、店内に入ると……。
 テーブルやチェアが倒れ、珈琲カップや皿も何枚か割れていた。
 ついでにパウンドケーキらしき残骸も転がっていた。
 まるで……いや、十中八九何者かと抗戦したと思われる形跡だ……!
 しかし、勘十郎と衣月が店内には居なかった。
 ……良く見ると、衣月が何時も着ているウェイトレス衣装が点々と落ちていた。
 ヘッドドレス、リボン、エプロン、スカート、ブラウス、靴、ソックス……それらはまるで歩きながら脱ぎ散らかしたように、店内から休憩室に向かって落ちていた。
 ……って、ちょっと待て、落ちている服を見ると今現在衣月の服装は……下着姿のはずだ。
 ある意味見てみたい。と言うか超見てみたい。……そう思っていると背中を突き刺すほどの女性陣の視線を感じた。
 やばい、ゴミを見るような目だ。ドMだったら、「ありがとうございます!」と言いたくなるほどの目だ。
 い、いや。これは人助けだしー……中に犯人が居たりしたら危険だしー。
 って事で、開けるしかない! 勢いよく休憩室の扉を開けると、そこには……。
「お、お前達……やっと来てくれたのか」
 心底安心した表情の勘十郎が、引き剥がしたカーテンを手に、(どう見ても安物な)下着姿で大の字になって眠りこけている衣月を前に立っていた。
 ……あ、もしもし。警察ですか?
 迷わず彼らは携帯を片手に警察へと電話を行った。


「だから、下着姿のままじゃ風邪を引いてしまうだろうと思って、手ごろなカーテンを掛けようとしていた所だったんだって!」
 電話を奪い取って通話を切りながら、勘十郎は叫びながら彼らへと訴えかける。
 その間、衣月はまだ気持ち良さそうに眠り続けていた。
「そ、それに俺はフェミニストだからー。襲う訳が無いって言うかー。襲われたりしたら抵抗しないタイプって感じー」
 何か凄くむかつく感じのコギャル風に言い始める勘十郎(ただし正座)
 そんな時、近くにあったビデオカメラに気づき……かまわず再生を行った。
 小さな画面では、笑いながら一枚一枚着ている服を脱ぎながら歩く衣月が居た。
『は、はふぅ〜……熱いんれしゅよぉ〜……服も邪魔らのれすよぉ〜……ぇ〜い♪』
『ぐはっ!? ちょ、脱いだら駄目だって! ちゃんと服着て服!! あ、だ……だけどおっさんな俺が女性の腕を掴んだだけでも痴漢扱いされる世の中……だったら、ここは映像を撮りつつ休憩室に導くしかない! はぁはぁ……決して、下着姿を見たいとか言うわけじゃないんだからね!』
 ……画面から視線を動かし勘十郎を下種を見るような瞳で見始める女性陣。
 そして、更にビデオカメラからは声が聞こえる。
『3枚組み千円じゃなくてさぁ、もっとピーチ●ョンとかワ●ールとかの高めのを着けたり穿いたりしたら良いと思うだよなぁ……はぁはぁ』
 ……なんでそう下着メーカーに詳しいんだよこのオッサン。
 そんな事を言っていた勘十郎に視線を移すと物凄く脂汗を垂らしていた。
「……そ、そうだ。此処に今度開催されるチョコレート祭りのチケットが26枚あるんだ! これをやるから楽しんで来たらどうだ!?」
 うわ、汚い! このオッサン汚いよ! 買収する気だよ!!
 そんな汚いオッサンの手から26枚のチケットを奪い取りながら、女性陣は微笑む。
 あ、助かったか……? そう思った瞬間、携帯を使い電話を行った。
 もしもし、警察ですか?

 そして、サイレンが遠ざかる音が聞こえる中、衣月はやっと目を覚ましたのだった。
「ん〜……良く寝たのですよぉ〜……あれ??」


リプレイ本文

●□□□□□
 軽快な音と共に3階に到着したエレベーターの扉が開き、数名の男女が降りてくる。
 左右にある扉からも同じ様に男女は降り、総勢26名がフロア前の入口へと集まった。
 締め切られた扉の前に並び立つボーイへとチケットを渡すと、招く様にしながら扉を開けた。
 扉が開くと先ず初めに鼻を擽るような甘いチョコの香りと適温に調整された空調の風、そして目に入るのは赤い敷物が敷かれた広い空間……そして白い布が被せられた長テーブルの上には幾つもの銀のトレーがあり、上には色取り取りの色んなチョコレート! 更に中央には巨大なチョコレートの噴水!!
 そんな甘い匂いと魅惑的な光景に心踊らせながら彼らは中へと入った。
「あ、あれ? 『シュミレーションGO!』とか『ファミケン』は??」
 どうやら、犬乃 さんぽ(ja1272)はチョコではなく、昔廃刊となった子供は必ず通るであろう分厚い漫画雑誌のイベントだと勘違いしていたようだ。
 けれど、今は楽しんだ者勝ちという事で皿を手に取り、中へと入るのだった。

●■□□□□
『ちょこれーと食べ放題なう( ´∀`)』
 そう顔文字付きの呟きをアプリに打つと、ルーガ・スレイアー(jb2600)は先ず手始めにジャンドゥーヤを1つ皿に載せると携帯で撮影をし、口に運びながら文字を打ち始める。
『じゃんどーや(゜д゜)ウマー』
 チョコの甘く滑らかな口どけ、そして中のペーストされたナッツ類の甘さが口の中に広がっていく。
 それを味わいながら、片っ端から色んなチョコを写真に収めては食べて、呟くを繰り返して行く。
 更に目玉となっているであろう巨大なチョコの噴水を写真に収める。
『液体チョコを滝のごとく流す( ・ω・) ?でもない所業』
 チョコ色、白色、抹茶色と各種味がある噴水に近づこうとしたルーガだったが、動きが止まった。
「……」
 どうやら甘い物は得意ではなかったらしい。口元に手を当てながら彼女は椅子に座り休憩を始めるのだった。

「わぁ、チョコがいっぱい……。どれ食べてもいいんだよね?」
 ワクワクと目を輝かせながら片桐 のどか(jb8653)は辺りを見る。
 その近くではまるで高級なレストランの様な趣きとなっている会場にときめく月守 美雪(jb8419)がうっとりしている。
「こんな所でチョコレート食べ放題なんて嬉しいわ」
 そう言いながら、心では今日だけはカロリーの事はあえて忘れる事を決意する。
 そんな美雪へとのどかが話しかけた。
「ねぇねぇ、どれが美味しそうかなぁ?」
「いろいろあるから迷っちゃうよね。私はあまり目にする機会の少ない物を中心に食べるよ」
 そっかぁ。と楽しそうに返事をしながらのどかは考え、一つの結論を出した。
「うん、全種類制覇をしよう!」
 のどかは楽しそうに歩き、生チョコから食べる事にした。
 ココアパウダーが振られた生チョコを1つ口の中に入れると程好い甘さが口の中を滑り、ゆっくりと広がるように溶けて行き……ゆっくりと飲んで行く。
「うん、おいしい〜! 幸せ〜」
 顔を綻ばせながらのどかはミルク、ホワイト、ビターと色々な生チョコを味わうと別のチョコも次々と食べ初めて行く。
 その視界には人は映らず、目に入るのはチョコチョコチョコ。どれもこれも味わいながら、食べて行くスピードも早かった。
 しかしそのスピードはお腹の満腹度が上がって行くにつれて遅くなって行き、更には……。
「うぅん、しょっぱい物が食べたくなってきたかも……」
 甘い物ばかりで飽き始めて来てしまうのだった。
 一方、目にする機会が少ない物を中心に食べ始めた美雪はジャンドゥーヤを味わい、次にロシェを手に取った。
「へぇ、こんなものもあるのね」
 手乗り爆弾の様な形をしたチョコを面白そうに見つつ、それを口に入れた。
 ナッツ類が混ぜられたチョコを砕くとトロリとしたチョコが口の中に広がり、サクットロ〜っとした食感と2つの甘さが口の中に広がり、美雪を幸せな気分へとしていく。
 そして他のチョコも形を楽しみつつマイペースに食べて行く。
 目標は全種類制覇! ……だが、問題はあった。
(美味しいんですけど、食べ過ぎると後が大変なんですよね……うぅ、美味しいのに……)
 心の中でそう思いながら、彼女は悶々するのだった。
 口の中が甘くなるという事もあるのだが、一番重要なのはやっぱり明日の体●計!
 だけどやっぱり美味しいチョコは食べたい……。女の子の心は複雑であった。
 ちなみに最上 憐(jb1522)はカロリーなんて気にしない、と言うか食●でも覚えているとでも言わんばかりに色んなチョコを食べて食べて食べまくりであった。
「……ん。沢山。甘い物。いっぱい。いただきます」
 どうやらまだまだ食べれる余裕がありそうだ。

「ちょこちょこちょっこ〜ちょこれいと〜♪ とろけるあまさ〜みわくのかおり〜♪ すとれすかいしょう……でもまって〜♪ たべすぎ・ずつうに・き・を・つ・け・て〜♪ み〜んなだいすき、いっただっきま〜す♪」
 楽しそうに鼻歌を歌いながら、ルルウィ・エレドゥ(jb2638)はトレイから取ったチョコケーキにフォークを突き刺し、気持ち良く頬張った。
 チョコがコーティングされた中には、ふんわりとしたチョコ色のスポンジに挟められた生チョコクリーム、そしてサクサクとしたクラッシュアーモンドの食感。
 フルーツを使わないのが逆に味を引き立て、チョコの味を最大限に引き出していた。
 それをルルウィは矢継ぎ早に頬張り始めて行く。……が、それを止める者が現れた。
「っと、ルルウィちゃん。このままじゃ汚れるからこれを着てね」
 そう言いながら、九鬼 龍磨(jb8028)は用意したスモックをルルウィへと差し出した。
 薄い桃色のスモックで胸の辺りには流れ星のアップリケが付けられていた。
「九鬼さん、ありがと〜♪ お洋服汚さないように気を付けるね〜」
 喜びながら貰ったスモックを頭から被り、ルルウィは食べる事を再開し始めた。
 それに満足しながら龍麿は甘さ控えめ系のチョコを捜し始めるのだった。
 そして色々回り終え、2人が辿り着いた場所は……。
「わあ〜、チョコつけると美味しいね〜♪」
「酒のつまみはチョコに合うかな……イカにー枝豆にー」
 ファウンテンの前に立ち、ルルウィは果物。龍麿は酒のつまみをチョコレートで絡めて食べていた。
 ルルウィは美味しいのかニコニコ笑顔を作り、龍麿の方は……正直な話微妙なはずだ。そしてイカ+チョコはリト●グルメにあったよねこれ。

「美味しいですねぇ……」
 月乃宮 恋音(jb1221)がホワイトチョコで創られたトリュフを食べながら、彼氏である袋井 雅人(jb1469)に照れ笑いを向ける。
 その微笑みを見ながら、雅人も恋音が絶賛したトリュフを食べてみた。
 粉砂糖が塗された白い玉の様なトリュフは少し食べると、柔らかくも硬い歯応えと共に程好く溶けて行き……ホワイトチョコ独特の甘さが口の中に広がっていく。
 味の感想を聞きたいのか、恋音はチラチラと雅人の顔を見ており、それに気づき雅人は笑みを向ける。
 それから2人は次々と色んなチョコを食べつつ、同時に雅人は同行した魚住 衣月(jz0174)と話をしたい恋音に気づいている為、少しずつ彼女の居る方向に行くように仕向けていた。
 そして、ある程度まで近づくと、少しワザとらしくだが話をする切欠を作り出した。
「魚住さん、こんにちは。こんな所で会えるなんて奇遇ですね」
「い、一緒に来ているので、奇遇じゃないと思うのですよぉ〜……?」
 苦笑しながら返事をする衣月へと、恋音も話しかける。
「……こんにちわぁ。……魚住さんも食べていますかぁ……?」
「はぃ〜……、凄く美味しいですよぉ〜……♪ 今はこれを制覇中ですよぉ〜……」
 ほんわかしながら、衣月は皿に乗ったトリュフを口に運んでいく。
 それに便乗するようにして恋音も同じ物をも食べてみたが、少し洋酒が効いているのかアルコールの味がした。
「……こういうのも、美味しいのですよぉ……」
 自分には少し大人の味過ぎたのか、恋音はホワイトチョコを串に刺すと、ミルクチョコのファウンテンへと潜らせた。
 白いチョコに蕩けた茶色のチョコが掛けられ、衣月へと差し出す。
 衣月はそれを口を開けながら徐々に近づき……食べた。
「お、美味しいですよぉ〜……ヒック」
 溶けたチョコを口元につけ、頬を染めながら衣月は微笑む。
 もう一個と考えながら、恋音は同じ動作を繰り返し、チョコを衣月の方に差し出した……が、既に衣月の姿がなく、フラフラと何処かへと歩いて行くのが見えた。
 ちょっと不思議に思いながらその姿を見ていると、溶けたチョコの熱で柔らかくなったホワイトチョコが彼女の胸へと落ちてしまった。
「恋音、チョコが付いてますよ。ちょっと動かないで下さいね。今舐め取ります」
「……大丈夫ですよぉ。すぐに拭けば……え?」
 ハンカチを取り出し、胸元を拭こうとした瞬間、雅人が恋音の胸元に顔を埋めると綺麗に舐め始めた。
「……んっ……んんっ」
「レロレロッ。んっ、これでよしと♪」
 顔を赤くする恋音の顔を見て、雅人も顔を赤くした。
「ヘイ、ソコノボーイ&ガール。コウイウ行為ハチャント部屋ヲ取ッテシナ」
 何か問題があった時の対応する係であろう黒人が2人に話しかけるのだった。

「チョコがいっぱいなのです♪」
 テンション高めに叫びながら江沢 怕遊(jb6968)は色んなチョコを片っ端から食べ尽くす勢いでチョコを食べ始めた。
 トリュフに生チョコ、プラリネ、チョコケーキ。色んなチョコを堪能しながら、喉が渇き始めたので近くにあったちょこれーとふぉんでゅという飲み物を飲もうと器を掴んだ。
「あ、熱いのですっ!?」
 ぐつぐつと熱せられているのだから熱いのは当たり前だろうが、怕遊は初めて見る物だったので知らないのは当たり前だろう。
 ヒリヒリする手を振りながら、周囲を見るとエイルズレトラ マステリオ(ja2224)がテーブルで休憩がてらマジックをしているのを見かけた。
「タネも仕掛けもありません……嘘ですが」
 そう言いながら何も載ってなかった皿の上にハンカチを被せただけで、チョコが出たりとか。
 そのチョコを皿の上からハンドパワーで浮かび上がらせたりとかし始めた。
「おー、凄いのです!」
 目をキラキラさせながら、怕遊はエイルズレトラのマジックに見惚れる。
 それにちょっとばかり調子に乗ったのか彼はもう少し派手なパフォーマンスを見せようとした。
 しかしそれはやりすぎたらしく……怕遊と一緒にエイルズレトラは会場から摘み出されてしまった。
「あ〜ん、まだチョコレート、全種類制覇してないのにー」
 閉じられた扉を見ながら、彼は情けない声を上げるのだった。

●■■■□□
「ただ出されたチョコを食べる……そんなんじゃスイーツマスター失格だよ! って事で、ス〜パ〜ァ〜〜〜ックッキンタ〜イムッ!!」
 元気にそう言いながら、皿に置かれた四角の形をしたチョコケーキの底へと下妻ユーカリ(ja0593)はチョコバーをズボズボと差し込んで行く。
 そして完成したのは高床式チョコレート倉庫。神代の時代の甘さを知らなかった日本人の姿を思い浮かべながら、ユーカリはおもむろにそれを食べた。
 ミルクチョコに包まれたチョコバーはふんわりビターなチョコケーキとマッチして、新しい食感を生み出していた。
 それを味わい終えると、今度は持ち込んだ竹串を取り出すと別の皿に載せていた生チョコとトリュフを掴み出した。
「その名もズバリ串チョコ!」
 そう言いながら、彼女は串に刺すだけ刺すとまるで仕事帰りの中年よろしくといった感じに、まるで熱いかのごとくハフハフとしながら食べ出し、チョコを頬張って行く。
 何というか凄く楽しそうだから良いのだろう……。

 甘い物を食べ過ぎてぐったりしているルーガやのどかへと救いの手は差し伸べられた。
「珈琲か紅茶はいかがですか?」
 チョコをイメージした服装の鴉乃宮 歌音(ja0427)が香ばしい香りを放つカップを差し出す。
「わぁ、ありがとぉ〜」
「頂くぞ」
 歌音からそれを受け取り、2人は口を付け……一息吐く。
「なんか、もう……胸いっぱいでくるちいぞ……」
 そう言いながら、ルーガはシャツの第三ボタンまで開け放って行き、魅惑の谷間が周囲に曝け出される。
 一方で、のどかはしょっぱい物があったらなと思いつつ、苦さと酸味が混ざり合った珈琲を飲んで行く。
 そんな2人を見ながら、歌音は言う。
「女性は甘味が止まらないからと言っても、チョコの食べ過ぎには注意だよ」
 言われた言葉に否定する事が出来ないのどかはウッと目を反らし、ルーガはあまり気にした様子は無かった。
 きっとその言葉の真意に気づいたのだろう。
 そんな彼女をフォローすべく、一言余計に言う。
「気にするな。動けばプラマイゼロ。依頼をこなせば良いだけだ」
 そして、歌音は生チョコを一欠けら食べるのだった。

「……ホワイトチョコとか苺とか抹茶味とか……その他、あんまり見かけない系統のチョコ中心にするか……」
 友チョコやら友人知人から送られたチョコが部屋にはまだまだある礼野 智美(ja3600)は通常よりはあまり食べる気がしなかった。
 なので、彼女は普通とは違う味のチョコを求める事にしたようだ。
 初めに苺チョコがコーティングされたコーンパフのお菓子をサクサクと食べる。
 苺の軽い酸味のするチョコと共に、パフのサクサクとした食感と甘くどい味が口の中に広がった。
 それを食べると今度はファウンテンに向かい、果物を選び始めた。
(こうチョコばかりだと、正直フルーツはそのまま食べたい気がするけど……)
 定番の串に刺さったバナナを持ちながら、智美は思うがそれをホワイトチョコのファウンテンへと潜らせた。
 すると串に刺さったバナナはホワイトチョコバナナへと変わった。それを食べながら、今度はスポンジケーキを抹茶チョコに潜らせて……今度はそれを食べてみた。
 ほろ甘い抹茶の味と、ふんわりとしたスポンジが口の中で解れていき、普通のチョコケーキとは違った味を引き出してくれた。
 とりあえずはチケットを差し出した勘十郎に感謝するべきだろうか。
「まあ、変態死すべし。だけどね」
 そう言いながら、智美はゆっくりとボンボンの方へと歩くのだった。

「一機君、これも美味しいわよ。はい、あーん」
 ハイスピードでチョコを味わいながら、美味しいと思ったチョコを米田 一機(jb7387)へと蓮城 真緋呂(jb6120)は放り込んで行く。
 チョコフォンデュを楽しんでいる一機だが、時折差し出されるチョコには文句を言わずに食べて行く。
 それが彼なりの優しさだろう。
 そんな優しさを時折見せながら、パインをフォンデュへと通して……食べた。
 ほんのり温かいチョコとパインの甘酸っぱい酸味が口の中に広がっていく。
「よし、今度は苺か……それともパンでいってみようか……」
 色んな味の可能性にワクワクしつつ、一機はどれを付けてみようかと考える。
 一方、真緋呂は真緋呂で一通り食べ終え、気に入った物を食べ始めた。
「このリキュールのボンボン、美味しかったのよね」
 鼻歌交じりに皿に載せたボンボンを手に取ると、それを口の中へと放り込んだ。
 チョコを噛むと共に中の液体が零れ、舌を刺激すると共に苺の味がした。
 苺のリキュールが中に入ったボンボンの美味しさを味わいながら、幾つも口の中に入って行く。
 そして解るであろうその結果は……。
「うわ、これアカンやつや」
「一機君もたべらるら〜」
 実際ボンボン出よう訳が無いのだが、酔った気になっているであろう真緋呂を引っ張りながら、一機は隅の方へと彼女を連れて行くのだった。
 お楽しみはこれからだ!?

「わぁ、凄い凄い! 噴水みたい! ……マシュマロとかこのロールケーキつけて食べちゃうもん♪」
 楽しそうに言いながら、さんぽは串にさされたマシュマロを掴むとファウンテンへと近づける。
 すると、白色のマシュマロにチョコが掛けられて行き、戻した時にはチョココーティングされていた。
 それに口を付けると、マシュマロの柔らかさとほんのり甘いチョコの甘みが口に広がっていき、さんぽは目を輝かせる。
 そのまま今度はロールケーキを苺のファウンテンに通し、食べた。
 苺チョコ独特の甘みとロールケーキのふんわりとした食感と巻かれた生クリームとカスタードの甘みが広がって行く。
「よし、持ってきたシベリアにもつけちゃう!」
 シベリアに串を刺すと一番味にマッチしそうな抹茶チョコへと通して、それに口付けた。
 カステラ、羊羹、抹茶チョコの味が一体となり、さんぽの口の中を埋め尽くして行く。
「こ、コレはまさに……うーまーいーぞー!」

 口を輝かせているさんぽを見ながら、雪室 チルル(ja0220)は頷く。
「ああやって食べるのね! それじゃああたいも挑戦よ!」
 ドキドキしながら、チルルはチョコレートファウンテンへと向かうと、用意されている果物やスポンジを皿の上にたっぷりと置くと少し恐る恐る潜らせ始めた。
 真っ赤な苺が徐々にチョコに染まり始め、潜り終えるとチョコに包まれ……溶けたチョコは今にも垂れそうだった。
 チルルは口を開けながら素早くイチゴを食べると、ほんのりとしたチョコの甘みと苺の甘みが口いっぱいに広がっていく。
 次にメロンをホワイトチョコにすると、ザクッとした固めのメロンの果肉とホワイトチョコの甘みが広がり、色んな味を試して行く。
 そして、ある程度食べると味にも飽き始め……チルルはチョコケーキの方へと進出を開始した。
「んーっ! これも美味しいわ! ……そうだ。美味しいに美味しいを合わせたらもっと美味しくなるはずよ!」
 元気よくそう言うとチルルはチョコケーキを幾つか皿に載せると、ファウンテンへと向かって行った。
 初めに柔らかだけど分厚いチョコが挟められた甘いチョコケーキを串に刺すと、ビターチョコのファウンテンへと通し、全体をチョコで被った物を勢い良くがぶり付いた。
 甘さと苦さのコンビネーションがチルルの口に広がり、美味しそうに顔を綻ばせるのだった。

「お嬢様、お待たせしました♪」
 椅子に座ってフラフラと揺れながらチョコを食べる衣月を見つけた藤井 雪彦(jb4731)がそう言いながら、執事風に話しかけた。
 ゆっくりとだが話しかけた雪彦の方を向くと衣月は笑みを浮かべ、頭を下げ挨拶する。
「あ、こんにちわですよぉ〜……もぐっく」
 どうやら食べているチョコは洋酒が入ったボンボンのようだった。きっとお気に入りだったりするのだろうか?
 そんな彼女の口元がチョコで汚れているのに気づくと、雪彦はハンカチを取ると……すっと拭いてあげた。
「お口にちょこれいとがついてますよ☆」
「ありがろ〜ろらいますよぉ〜……もぐもぐ」
 顔を赤くしながらお礼を言う衣月に雪彦は微笑みながら、そっと皿にチョコを載せる。
 それに気づかずに衣月はチョコを食べる。
「これろおいひいれるろぉ〜……♪」
「それは、嬉し……良かった♪」
 雪彦は満面の笑みを浮かべながら、衣月を見るのだった。

●■■■■■
「はじめての依頼デスカラ。まずは情報を集めないと」
 そう言いながら長田・E・勇太(jb9116)はボンボンを試食しながら、参加している人達とコミュニケーションを図っていた。
 このチョコは美味しいとか、これとこれの組合せは最高とか、まさかのあの組合せが絶妙なバランスが生み出されていく……とかチョコに関する話題ばかりが仕入れられた。
「アメリカのチョコよりおいしい気がするネ」
 そう言いながら、集めたチョコ情報でおいしいチョコを味わいつつ、まだ情報を得ようとする。
 学園内の要注意人物や危険な場所。その他様々な学園に関する情報を集めて行く……が、その内容の殆どは。
「なんかロクな情報がない気が……気のせいか」
 突っ込まれる事も無いので、きっと知っておくべき情報なのだろう。そう勇太は思うのだった。

「はぁ〜……、美味しくって幸せですぅ〜」
 ポワポワと幸せな気持ちになりながら御堂島流紗(jb3866)は口に含んだチョコを味わう。
 そんな彼女をクアトロシリカ・グラム(jb8124)が引っ張って、同行する氷咲 冴雪(jb9078)を追う。
「のんびりして食べるのは良いけど、ちゃんと歩こうね流紗ちゃん……って、冴雪っち待って待って」
「随分色々な種類があるんですのね……。あ、あら、申し訳ありませんわ」
 トリュフとガナッシュを皿に載せていた冴雪は照れながら、2人の元へと近づく。
 そしてクアトロシリカと流紗へと冴雪はガナッシュを差し出した。
「流紗さんもクゥも食べてごらんなさいな」
 差し出されたガナッシュを口に入れると、クアトロシリカは甘さに笑みを浮かべる。
 そして流紗もますますポワポワとしてその場を動かなくなった。
「って、ああ流紗ちゃん、また立ち止まらないでよ!?」
 驚きつつも、流紗を引っ張りながらクアトロシリカはチョコからチョコへの移動を行う。
 そして辿り着いたのはチョコレートファウンテン!
「私は定番通りの苺にしますぅ〜」
「では私はお豆腐を……」
「じゃじゃーん☆ 大好物のちくわ登場ー!」
 意気揚々と3人はチョコを掛けて行く。
 苺はチョコが掛かって美味しそうになっていき、豆腐は……串に刺さらないのでお玉で浸すようにして苺チョコを掛けて行く。
 そして、ちくわは独特のあのボディへとホワイトチョコが掛けられて行き、何というか異様な感じに変化して行く。
 だけどこういうキワモノってきっと美味いはず。そんな想いと共に2人へとクアトロシリカはチョコがけちくわを差し出した。
「2人とも食べてみて! 絶対美味しいから!」
 満面の笑顔で勧めながら、チョコが垂れそうになるちくわを前へと近づける。
 冴雪は冴雪でチョコがけ豆腐を食べているので、どうやら食べるのは流紗しか居ないようだ。
 勢いに半ば飲まれつつ流紗はチョコがけちくわを食べてみる。
「……チョコがけちくわですぅ」
 ホワイトチョコの味と、ちくわの味と食感が口の中で混ざり合い、どう言えばいいのかまったく分からない味が生まれた。
 ちなみにチョコがけ豆腐の方も豆腐の中が冷たく、チョコの味が豆腐の水分でまったく味がしなくなっていき……。
「……ちょっと微妙ですわね」
「うーん、練り物って味があまり主張しないから、イケると思ったのよね!」
 そう笑う彼女達に、口直しと言うべきチョコがけ苺を流紗は差出し、自分も味わうのだった。

「美味しいチョコが多くて目移りしますね」
 そう言いながら木嶋香里(jb7748)は色んなチョコを食べ歩きレシピを研究していた。
 後日彼女が女将を務める和風サロンである『椿』で出す為の新作を模索しているのだ。
 だが色んなチョコを食べたのだが、ビビッと来るようなレシピは思い浮かばない。
 悩んでいる彼女へと、不意に肩を叩く者が現れた。
「美咲? どうしたんです?」
 首を傾げる香里へと緋流 美咲(jb8394)は、チョコを両頬一杯に頬張った状態で語りかけた。
「ハムスター!」
 懇親のボケを放つと、一瞬呆気に取られた香里だったが直ぐに微笑んで楽しそうに笑った。
 きっと根を詰めすぎている香里の肩の力を抜かそうとしての行動だったのだろう。
 その役目が終わったので、美咲は口の中いっぱいのチョコをモグモグしながら食べて行く。
 そんな彼女の鼻から一筋の赤い道が作り出された……というか、鼻血であった。
 しかし当の本人はまったく気づいていないらしく、美味しそうにチョコをモグモグしていた。
 コメディとホラーどっちで見たらいいのかまったくわからない状況であったりする。
「あら、美咲。鼻から血が……」
「ありがとうございます、香里。体質ですね、コレは……」
 鼻血に気づいた香里がティッシュを取ると美咲の鼻を拭いて行く。
 お礼を言いながら美咲はティッシュを受け取り、丸めて鼻に詰めていく。
 そして一旦休憩を兼ねて、美咲は衣月を捜し始める。
 その手には可愛い下着がいっぱい載ったカタログ。どうやら下着のアピールを行おうとしているようだ。
「魚住さん、この間は大変でしたね!」
 そう話しかけたと同時に、衣月は……。

「はひゅぅ〜……なんらか、あひゅいのれふよぉ〜……んしょ……」
 そう言うといきなり……着ていた上着を脱ぎ出した。
 するとどうでしょう、周囲に上だけ下着姿の衣月さんが降臨してしまいました。
 下着カタログを持って近づいていた美咲は驚き。間近で給仕をしていた雪彦は固まった。
「もしかして、お菓子のアルコールでも酔ってしまう人なのかと思ったが、まさか本当に酔ってしまう人だったなんて……」
 食べようとしていたチョコが掛けられた固めのドーナツを皿に落としながら、龍崎海(ja0565)は漏らす。
 だが、直ぐに気を取り直すと数名ほどまともな思考を持っているであろう参加者数名へと声をかける。
「魚住さんが酔ったみたいなので、フォローをお願いします」
 一瞬、隅の方で同じく参加している一機と真緋呂が見え、片方が酔って自分の胸を触らせているのが見えたが、ある意味男のロマンの一つなのでそっとしておいて上げる事にした。
 ……と言うよりも、手一杯である。
 そして、酔っ払った衣月はスカートに手を掛けて、スカートが地面に落ちて安物の下着姿となり、ブラも外そうとしていた……がそこで両手を塞がれて身動きを取れないようにされた。
「あついのれひゅよぉ〜……すずしくなるのれふよぉ〜……ぐぅ」
 顔を真っ赤にしながら、呂律の回らない声で何かを言うだけ言って、衣月は糸が切れた様に眠り始めた。
 運ばれていく衣月を見ながら、海は口直しにチョコ風味の紅茶を飲む。
(なるほど、目の前で店長はああいう事が起きたから、緊急で俺達を招集したんだな……)
 留置所に居るであろう勘十郎に哀れみを抱きつつ、海は再びチョコを楽しみ始めることにするのだった。

 チョコは媚薬であり、美味しいお菓子であり、食べる芸術品であり、人を幸せにする。
 まさにそんな状況が一つとなった状態でチョコ祭りは過ぎて行くのだった。
 ちなみに数名ほどイカツイ黒人のスタッフに追い出しを喰らったりしてしまっているが、ただ退場されただけです。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
ドクタークロウ・
鴉乃宮 歌音(ja0427)

卒業 男 インフィルトレイター
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
みんなのアイドル・
下妻ユーカリ(ja0593)

卒業 女 鬼道忍軍
ヨーヨー美少女(♂)・
犬乃 さんぽ(ja1272)

大学部4年5組 男 鬼道忍軍
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
カレーは飲み物・
最上 憐(jb1522)

中等部3年6組 女 ナイトウォーカー
駆逐されそう。なう・
ルーガ・スレイアー(jb2600)

大学部6年174組 女 ルインズブレイド
お菓子の国の住人・
ルルウィ・エレドゥ(jb2638)

高等部1年20組 女 ナイトウォーカー
ドォルと共にハロウィンを・
御堂島流紗(jb3866)

大学部2年31組 女 陰陽師
君との消えない思い出を・
藤井 雪彦(jb4731)

卒業 男 陰陽師
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
女の子じゃないよ!・
江沢 怕遊(jb6968)

大学部4年282組 男 アカシックレコーダー:タイプB
あなたへの絆・
米田 一機(jb7387)

大学部3年5組 男 アストラルヴァンガード
和風サロン『椿』女将・
木嶋香里(jb7748)

大学部2年5組 女 ルインズブレイド
圧し折れぬ者・
九鬼 龍磨(jb8028)

卒業 男 ディバインナイト
撃退士・
クアトロシリカ・グラム(jb8124)

大学部1年256組 女 ルインズブレイド
誠心誠意・
緋流 美咲(jb8394)

大学部2年68組 女 ルインズブレイド
アイス大好き・
月守 美雪(jb8419)

大学部6年278組 女 ディバインナイト
撃退士・
片桐 のどか(jb8653)

大学部2年8組 女 鬼道忍軍
撃退士・
氷咲 冴雪(jb9078)

大学部3年124組 女 アカシックレコーダー:タイプB
BBA恐怖症・
長田・E・勇太(jb9116)

大学部2年247組 男 阿修羅