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マスター:清水裕
シナリオ形態:イベント
難易度:やや易
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/01/02


みんなの思い出



オープニング

●ボランティア募集のお知らせ
 クリスマスが近づいているある日、斡旋所の仕事依頼のボードに新たに依頼が追加された。
 だがどうやら依頼ではないようであった。ちなみに書かれている内容はこうだった。

『―――SANTAのボランティア参加者募集のお知らせ―――』
『クリスマスが近づいている今日この頃、私達の団体の「しあわせにもっともっとなりたい団」はクリスマスをKAKUBETUに素敵にする活動を行いたいと思います。
 ご参加いただける方は、クリスマスの日に下記の住所までお越しください。
 なお、ボランティア内容は、以下の通りを考えております。
 【教会でのキャンドルサービス】
 【商店街でのケーキの無料配布】
 【高級レストランでの催し】
 【イルミネーション満載の公園での温かな飲み物提供】

          しあわせにもっともっとなりたい団 団長
          (その下に住所が書かれている)』

 カップルは参加することは無理かも知れないが、何もすることが無い独り身としてはたまにはそんなことをしてみるというのもアリだろう……か?
 そんなことを考えたりするのであった……。















 ……と、立ち去ろうとした時、紙の隅に小さく書かれている何かが目に付いた。
『協力団体一覧』
『いつもにこにこかっぷるぼくめつぼくらはえがおのりあじゅうぼくめつれんごう』
『●●の心は父心、押せば命の泉湧くでお馴染みのしとう整体』
『厳選して煮詰めたおとこじるを日々頑張って作っている漢家』
 う、うわー……見なかったことにしよう。


リプレイ本文

●住所印字ミス
 クリスマス当日、ぼらんてぃあを募った『しあわせにもっともっとなりたい団』の会場は深く静かに燃え上がっていた。
 それは何故かというと、クリスマスだからだ。
 このぼらんてぃあの真の目的、それはイチャラブカップルにしっとの制裁を加えるという真実だったのだ!
 『し』あわせにも『っと』もっとなりたい『団』……そう、略すと『しっと団』だった!!
「ぼらんてぃあにやって来た者達を洗脳し、しっと兵に仕立て上げクリスマスの街を恐怖と混沌に彩る計画だった……それなのに、何だこれは!?」
 しっと団の団長は理不尽さに叫びを上げ、目の前を見る。
 あるのは会場とは名ばかりの地下組織で、参加するであろう者達は……居なかった。
 居るのは運悪く細道を歩いていた天羽 伊都(jb2199)とクオン・アリセイ(ja6398)の2人だが蝶仮面の奥から見える目が虚ろで、褌の締められた体には力は篭っておらずただ立っているだけであった。
 きっと、洗脳されているから起きたら全てを忘れている事だろう。
「あ、あの団長……これを」
 震えながら団員Aが恐る恐る紙を指し出した。
 広げると、当日の団員を集めるポスターだった。よく出来ていると感心しながら、どうしたのかと目を向ける。
 団員Aが指を指した先には……この場ではなく、それぞれの担当を行う場所の住所が書かれていたのだ。
「なん……だと……?」
 どうやら……住所を印字ミスしてしまっていたようだ。
 それなら人は来ないよね★
 ミスの発覚に震えるしっと団を無視し、楽しい楽しいクリスマスの街に視線を移す事にしよう。

●素敵なクリスマス
 昼の商店街では、ぼらんてぃあによるケーキの無料配布が行われており、そこでは数名の協力者がケーキを渡していた。
「メリークリスマス! 美味しいケーキはいかがですか?」
 或瀬院 由真(ja1687)がちょっとデフォルメチックな熊の着ぐるみを着用して愛嬌を振りまいていた。
 何時もなら「そういうのはちょっと……」と断るであろう一般人だが、前からの宣伝と今日の聖夜に浮かれてるからかお礼を言いながらケーキを受け取っていく。
 それを見ながら、由真は手を合わせ楽しそうにクルクル回る。
「素晴らしいです。きっと、子供達も喜びます!」
 美味しそうにケーキを食べている姿を想像しながら、嬉しそうな声が着ぐるみから聞こえた。
 近くでは崋山轟(jb7635)がケーキ配布をアピールする為に声を大きく上げて呼び掛けている。
「こんちわー! ケーキいかがっすかー!」
 炎をイメージした逆毛に赤い服装の為、子供達が勘違いしたのかサンタさんと呼んで集まってくる。
 そんな子供達へと轟はケーキを渡して行く。
「やるからには全力で! 人々のために奉仕するのも漢の役目だ!」
 何とも熱血漢なサンタである。
 一方でサンタにはしゃぐ子供を驚かすつもりは無いのであろうが、子供達の背後にそっと近づく者が居た。
「ケーキをどうぞ、なのですよー」
 ジェイク・コールドウェル(jb8371)だ。……が、ママに関わったらいけないと言う様な風貌をしていた為か驚き蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
 その姿をジェイクは楽しそうと勘違いしてしまい、ケーキを持って子供達を追いかけ出した。
「あはー、なんだか楽しそうなのですよ?」
 何とも困ったサンタである。
 そんな中でボランティアを頑張りながらも、自らも楽しもうとする者達も居たりした。
「おー、先輩、さっすがー! 可愛い可愛い!」
 白虎 奏(jb1315)が手を叩きながら、自分とお揃いのサンタ衣装の雅楽 彪白(jb1956)を見る。
 返事を返すようにして、彪白も楽しそうに手を叩く。
「かな君、ありがとぉな! かな君もか〜っこぇー!」
 奏は一般的なサンタ衣装だが、彪白の場合は一緒に用意したズボンが大き過ぎ短パンを履いていた。
 ……何と言うか、上の丈が長い為にサンタワンピにしか見えない不思議である。
 こうして、カップルっぽく見える2人はケーキを配る事を開始した。
「これでよし……っと、それじゃあポチ行くっすよ〜!」
 召喚したヒリュウに翼に差し支えない様にした看板を掛けると、奏は歩き出した。
「美味しいケーキいかがっすか〜? おねーさん、ケーキ食べません〜?」
「今ならけーきをぷれぜんとやで♪」
 2人の勧誘に乗る者、ポチの可愛さに釣られる者が増え、ケーキは益々無くなっていく。
 少し人だかりが出来るのを遠巻きに見る男にも、彪白は容赦なかった。
「おにーさんおにーさん、白からのケーキやねん……もろてくれる?」
 男なのだが、女っぽい格好の為に可愛い少女が話しかけてきたぜヒャッホイという風に独り身の男達は簡単にケーキを受け取って行く。
 そんな中で、女性優先に話しかける奏だったがそれが祟ったのか……不意に彪白に背後から抱きつかれた。
「かな君の浮気もん! 白だけやって言うたくせに……!」
「や、やっだなぁ、俺には白先輩だけっすよ〜!」
 一瞬どういう反応をしたらいいか悩んだ奏だったが、にっこりと笑いながら彼の頭を優しく撫でた。
 そんな奏の反応に対し、顔を上げた彪白は意地悪そうに笑っていた。
「いやぁ……かな君えぇ反応するわぁ……」
 と思ったら、直ぐに道行く女性へと奏は声をかけた。
「あ、お姉さん、美味しいケーキいかがっすか〜?」
「やー……ほんまえぇ反応するわぁ……」
 呟く彪白の顔はどんな表情をしていたかは奏のみが知っているのだった。

 クラシックが流れるレストランではサンタと妖精が給仕をしていた。
「美味しい幸せ運んじゃうし〜」
 楽しそうに言いながら妖精に扮するミシェル・G・癸乃(ja0205)は両手に皿を持ちながら、ホール内を歩く。
 皿からは食欲をそそる美味しそうな匂いがした。
 その近くでは占い部の部長である卜部 紫亞(ja0256)が優雅さを振り撒きながら給仕していた。
 しかし優雅でおっとりではあるが、少し声が掛け辛かったりするのは何故だろう。
(「普段から縁が無いとこういう時に困るわね」)
 どうやらやり慣れていないのとこういう場が少し苦手という事だろう。
 それとは対照的に獏(jb5676)は営業スマイルを振り撒きながら、真面目に仕事をしていた。
 料理を運び終え、バックに戻るとミシェルがはしゃいでいた。
「部でこういう活動もいいねっ、それに〜……部長サンタ似合う! せくしー!」
 黒が基本的な服装の紫亞だからか、ミシェルは楽しそうに彼女に抱きつくと獏に向けて写真を撮ってもらうように頼む。
 元々仲間の写真を撮りたかった獏はカメラを取り出すと、妖精とサンタの姿を納めて行く。
 ミシェルは楽しそうにピースをして、同じ様に紫亞もピースをしていた。
 写されていく紫亞の表情は普通なのだが、内心どんな気持ちなのかは判らないが恥かしいのだろうか……?
 客が料理を楽しんでいると店内の音楽が鳴り止み、隅に置かれたピアノへと橋井 隆子(jb8399)が近づいく。
「撃退士としてのデビュー戦よ。私、頑張るわ」
 呟きながら、隆子はピアノに座ると持ってきていた楽譜を開いた。
「これでも少しは腕に覚えのあるアーティストなんだから♪」
 そう言いながら、彼女は鍵盤に指を置くとピアノを弾き始めた。
 鍵盤を弾く姿はまるで一流のピアニスト! そんな感じに隆子は思っているのだろう。
 まあしいて言うなら……彼女が選んだ曲のチョイスが弾くのが難しいが少しクリスマスに合わないものだったりした。

 それから陽が段々と傾いて行き、茜色の空が紫色へと変わり始める中、公園では木々に取り付けられたイルミネーションの灯りが点灯し幻想的な空間を彩り始めた。
 そんな綺麗な空間をカップル達は手を繋いだり、体を近づけたりして歩いていた。
 けれど、冬は寒いので肌寒く感じ始めた。そんな時、カップルの前に顔を照明で明るくした巨大な猫が現れた。
 ……いや、巨大な猫ではない、猫の着ぐるみだ。
『ボランティアです。メリークリスマス。温かなお飲み物をどうぞ』
 そう書かれた画用紙を首に掛け、ある方向を指差した。
 そこでは幾つものポットが用意されており、猫の案内で向かったであろうカップルや親子連れが温かそうな飲み物を受け取っていた。
 寒い中でそんなサービスは嬉しい、そう思われる中でカップル達は猫にお礼を言いながら飲み物を受け取りに歩いて行く。
(「今の僕はねこ、ねこは自由である故に孤高な生物、だからクリスマスに独りで過ごしてても変じゃない。だって孤高だもの、それが自由だもの、今の僕は陽波 透次という独り身のイモじゃない、愛らしいねこさ……」)
 心を無にしているのか着ぐるみの中身である陽波 透次(ja0280)は次々とカップル達に温かな飲み物の場所を教えて行く。
(「嗚呼、幸せそうだなぁあ……皆幸せそうだなぁ……」)
 温かい飲み物を飲みながら笑い合うカップルを見ながら透次は思う。
 ……あれ、悲しくないのに瞳から汗が零れてきちゃった。なんでだろうなんでだろう……。
 飲み物を受け渡す場所では一種の催し物が行われており、明かりが灯った場所の一角でエイルズレトラ マステリオ(ja2224)が手品を行っていた。
 タネが解り易くも他愛の無い手品を行い、親子連れの子供達が目をキラキラさせながらそれを見ていた。
 その期待に応えるべく、エイルズレトラはカードを並べると指定した子供に選んでもらい、それを取ってもらうとビリビリに破り、並べ直し身近にある卵を取ると繋ぎ合せた様なカードを1枚取り出した。
「あなたが選んだカードは……これですよね?」
 瞬間、称賛の声が周りから放たれた。
 それを聞きながら、彼は今度はコインとコップを取り次の手品を披露し始めた。
「熱いのでお気を付け下さい」
 そう言って、鑑夜 翠月(jb0681)は紙カップに注がれた温かい飲み物を並んでいるカップルへと手渡して行く。
 ある程度、波が収まって行くと翠月はその場を離れ、公園の景観を壊さない為にゴミを拾い始めた。
 少し溜まる毎に一定間隔で用意したゴミ箱へと居れて行き、チラリと恋人達の様子を見守って行く。
「……想いが繋がっている方々を見ると、やっぱりちょっと羨ましいですね」
 呟きながら翠月は密かに恋心を抱いている女の子の事を思うのだった。
「メリークリスマスです。どうか暖かいクリスマスを」
 学園の制服を着用したユウ(jb5639)がカップルの邪魔をしない様にしつつ、蓋で保温をした温かい飲み物をカップルへと手渡して行く。
 受け取ったカップルから礼を言われながら、ユウは歩いていき愛で満たされる心で思う。
(「クリスマスに素晴らしい企画ですね。皆さんのクリスマスが少しでも素敵なものになるようにしたいですね」)
 そんな事を考えながら、彼女は珈琲やココアだけでなく、コンソメスープなどのスープ系も用意する為に再び提供を行っている場所に戻っていった。
「はいどうぞ、来年も皆さんに良いことがありますように」
 そう言って、フリフリエプロンを着た月隠 朔夜(jb1520)はココアを差し出した。
 熟年夫婦だろう2人が受け取り、お礼を言う中で朔夜は小さく溜息を吐く。
「今年ももうすぐ終わりね……」
 本当は愛しの旦那さんと一緒に聖夜を過ごしたかったりするのだが、殆ど会えてない。
 そんな旦那と一緒に居る時間が短かった事を思う半面、街の人やカップルに喜んでもらえたら良いと思ってのボランティア参加だった。
「今年最後の大仕事、頑張らなきゃねっ。温かい飲み物いかがですか〜?」
 気を引き締めて朔夜は少し大きな声で周囲に呼び掛け始めた。
 その声によって飲み物の提供に気づき、カップル達は増えて行くのだった。
 まだ熱いカップの中の飲み物を冷まさせようと、彼女の方がフーフーと息を吹きかけ、それを彼氏の方が美味しそうに飲み2人は楽しそうに笑い合う。
 そんな光景を見ながら恙祓 篝(jb7851)は身も心も寒くなっていた。
「…………へっ、寒いなぁ……いや、独り身気楽だしぃ?」
 何だか自己完結しながら、篝は泣きそうな顔をしながら空を見上げる。
 空に映るのは去年まで共に過ごした少女であり、互いが互いの最高の友人となり……そして、篝の前から姿を消した。
 そんな温かな思い出に浸るが、やはり冬は寒く……イチャツクカップルの声が、心を寒くした。
 悲しくなんて無い、悲しくなんて……無いんだ。
「……もういい、飲み物配って幸せそうなカップル見て温まろう」
 呟きながら空から視線を下に落とすと、篝は現実によって冷却させられるのだった。

●動き出すしっと
 様々ない楽しそうにするちゃこらカップルの映像をモニター越しに見ながら、しっと団達は体を震わせていた。
 彼女が出来ない悲しみ? いいや、違う。これは怒りだ!
 何で自分達がもてないのに、クリスマスの日にカップル達はこんなにもラブラブしているのか!
「執行だ、粛清だ……クリスマスをしっとの炎で燃え上がらせるのだ!!」
 目から零れる赤い汗を流しながら団長は叫ぶ、その言葉に団員や洗脳団員は拳を上げる。
 カップルに死を、カップルに死を! 掛け声と共に彼らは地下基地から昇降機に乗り込んだ。
「「しっとの炎を撒き散らせ、しっとの炎を撒き散らせ! カップルに死を、カップルに死を!!」」
「カップルに死を! クリスマスをぶち壊せ!!」
 団長が叫び、スイッチを押すと昇降機は急速に上昇し、団員を地上へと送り出した。
 そして同時に……けたたましいサイレンが街中に響き渡り、一部のサンタの人形の顔がぐるりと回り奇妙な仮面に変わり、明るい色だったイルミネーションは赤一色となり、突如地下から箱が上がり、中からHENTAI共が溢れ出して来た。
 直後、カップル達は悲鳴を上げて逃げ出して行った。
 しっとの宴の開幕である。

 何か悲鳴が聞こえたと思いながら、教会ではキャンドルサービスが行われていた。
 精錬された空気に、聖歌隊の歌声とパイプオルガンの音色が響き渡る。
 そんな中、扉を開け放ち現れた2つの影があった。
「メンルィィリィィクンリッスムァァアッス!!」
 超低い声と共に血の様に真っ赤な衣装で全身を隠した男性(虎綱・ガーフィールド(ja3547)が姿を現した。
「メリー苦しみマース♪ 今からここはしっと団のぼらんてぃあ拠点にさせてもらうのだわ!」
 蝶仮面で顔を隠し、肌寒い様にしか見えない炎の柄の水着を着た天道 花梨(ja4264)だ。
 驚きながら神父が何事かと近く、だがそんな神父を2人は拘束するとすぐさま聖歌隊を飛び越え、神父の服を脱がし十字架に貼り付けたではないか!?
 直後、静かに聖夜を過ごす筈だった教会に悲鳴が起こり、カップル達は逃げ出そうとしていた。
 だが入口を名無し団員達に塞がれ、逃げる事は敵わなかった。
 そんなカップル達へと虎綱はニヤリと布越しに笑いながら1本ずつキャンドルを渡して行く。
「どうぞ」
 真っ赤な色に、リアルな蛇が巻きつきどう見ても妖しい密教が御用達しそうな感じのキャンドルであった。
 怯えながらも逆らってはいけない人種である事に気づいているカップル達は震えながらもキャンドルを手に持つ。
 全員に渡ると、花梨は整髪料のスプレー缶とライターを手に持った。
「ちゃんとキャンドルサービスをやってあげるのだわ♪」
 邪悪に顔を歪ませながら、彼女はカップルに実害は無いも恐怖が一生残る位置を計算し簡易式の火炎放射器で火を吹き上げた。
 当たらないのを知らないカップル達は恐怖の悲鳴をあげ、教会の中はおどろおどろしい音楽とカップルの悲鳴、垂れる蝋が背中に当たる度に聞こえる神父の嬌声、しっと団達の笑いが埋め尽くした。
「しっと神様に、地獄の炎を捧げるのよー!」
 そんな中で、虎綱は心を満たすものを感じながら思う。
「ああ、人が幸せになるのはかくも難しいものか」
 いや、この惨劇はきみらが仕組んだものだからね!

 レストランでも突然扉が開くと共に複数のしっと団員が雪崩れ込み、同時にホールで働いていた数名のスタッフ達も服を脱ぎ協力者としての本性を露とした。
 突然の事にミシェル、紫亞、獏、隆子の4人は驚き、混乱し固まってしまった。
 その混乱に乗じて動く影が1つあった。
「……ん。料理は。全て。頂いて行く」
 最上 憐(jb1522)だどうやら何が起こるかは理解していたらしく、このチャンスを狙っていたらしい。
 素早く店内に潜り込むと憐は身体能力と食欲を増強させ、踊る様に軽やかに移動しながら……皿を掴む。顔を近づける。平らげる。皿を戻す。を行っていく。
「……ん。コレは。依頼。仕方が無いので。嫌々。全力で。料理は。全て。嬉々として。頂く」
 そう言いながら憐はカップルの料理を狙いながら時折、逃げ出した一般客の料理を美味しく食べて行く。
 それらの料理はどれも美味しく、高級レストラン万歳であった。
「お客様、店内では静かにしていただけないかしら」
 ヒャッハーと叫ぶ団員に向け、紫亞が持っていたトレイで殴りつけ、昏倒させる。
 昏倒させた団員を獏が担ぎ、裏のゴミ捨て場へと捨てて行く。
「争いごとって好きじゃないんだよね。楽しく笑顔で皆と過ごせれば、俺はそれでいいな」
 そう言いながら、店内に落ちたゴミと抱えながら後ろに行ったり来たりするのだった。
「そんな曲なんかより、しっとに塗れたイカレた音楽を楽しもうぜヒャッハー!」
 数名の団員がステージに上がると、隆子の演奏するピアノへと近づき、邪魔をすべく鍵盤に手を近づけた。
 瞬間、相手の指を潰す形でピアノの蓋を閉め、ダダーンという音と男達の叫び声が上がった。
「失礼、何だか触られそうな気がしたのよね。それとステージは私だけで十分よ!」
 言いながら隆子は手を押さえる団員を蹴り飛ばしステージから叩き落して行く。
 レストランはどうやら無事だろう。

 ケーキを受け取り、家に持ち帰って食べようとするカップルの前に何 静花(jb4794)が立ち塞がった。
 その出で立ちは赤地と白のビキニに顔に蝶仮面をつけて、頭にサンタ帽だった!?
 え、あの……クリスマス柄の儀礼服って――ほぼ裸はしっとの宿命だ! 俺達は強いられているんだ!!
「おいそこに座れ、ハッピーニューイヤーと言ってみろ」
 彼氏をガン付けながら静花は太股を軽く蹴り、スタンを入れる。
 しかも最後まで言い終わる前に蹴りを入れるので、言い終わらせる気はあるのだろうか?
「もう一度だけチャンスをやろう、ハッピーニューイヤーと言ってみろ」
 カップルの悲鳴を聞きながら、彼女は邪悪な笑みを浮かべる。
 そんな彼女の前に熊の着ぐるみを着た由真が姿を現した。
「だ、ダメです! 気持ちは分りますが、人様に迷惑を掛けてはいけません!」
「クリスマスで家に帰らない奴が悪い! 邪魔をするな!」
 ゆらりと由真に襲い掛かろうと飛び出し、突然の事に驚きながら彼女は店先に飾られていた盾を掴んだ。
「ダメですってば!? あ、すみません! つい勢いでっ」
 勢いで飛び掛ってきた静花を盾で吹き飛ばすと、驚きながら彼女は近づいて行く。
 運が良いのか悪いのか、一撃で相手は気絶していた。
「私だって欲しいですよ、彼氏……」
 こんな行動に出た静花を見ながら、由真は涙を流した。
 そんな中でも、団員達は増えて行きケーキを持つカップル達に襲い掛かって行く。
「待ちな! それ以上好き勝手にはさせねえ!!」
 団員を先へと行かさない様に轟が前に立ち塞がった。
「邪魔すんじゃねぇ! 俺達はしっとの炎を燃やしているだけだ!!」
「へっ、だったら……熱き魂の撃退士、崋山轟が相手になってやらあ!!」
 叫びながら轟は拳を握り締め、しっと団員達へと立ち向かっていった。
 だが、轟が居る方向だけでなく団員達は別のカップル達へと襲い掛かって行く。
「むむ、リア充爆発……クラッカーでお祝いですかにゃ?」
 何かを感じジェイクがクラッカーを手に移動すると、逃げ惑うカップルを追いかける団員達と遭遇した。
 そのまま彼もしっとの炎を撒き散らす事は……無かった。
「ダメですよー迷惑な行為は? お仕置きなのです」
 飛び掛る団員に向け、クラッカーを放つと爆音と共に紙吹雪が放たれ、団員達を吹き飛ばした。
 そして、追い討ちをかけるべく、ジェイクはコートの中から巨大なクラッカーを取り出した。
 炸裂音が激しいです!

 イルミネーション彩る公園でも団員達は集まり、公園内を散策していたカップル達を捕まえると公園の中央へと連れ出していった。
 公園に居る殆どのカップルを連行し終えると、彼氏達は怒りながら「大丈夫だ、俺が着いている」とか「俺達をどうするつもりだ!」とか「彼女には指一本触れさせない!!」という声が聞こえた。
 そんな中、公園の粛清を任せられた司令官的団員が団員の波を開き、姿を現した。
「ほう……寒くても二人で居ればシ・ア・ワ・セ★とでもほざくか……」
 冬なのにサンオイルを塗りたくった小麦色の肌を周囲に曝け出し、一昔流行ったワイルド系芸人の様なGパンを穿いた周りよりも幾分豪華な蝶仮面をつけた男(自称、ラグナ・グラウシード(ja3538)さん)はチラリと見える素顔に血管を浮き上がらせながら近づいてくる。
 危険なオーラを撒き散らしながら、ラグナは彼氏を次々と掴むと目の前の噴水に叩き込んで行く。
「温まりすぎて燃えてしまうではないか! すぐに冷やさなければー」
 次々と噴水に叩き込みながら、ラグナは歓喜の笑いを口から漏らして行く。
 そして、溺れそうになりながらも短時間の真冬の寒中水泳をした彼氏は凍えながら、噴水から出てくる。
「あら……震えてらっしゃるの?」
 そんな彼氏達の前にセクシーサンタコスの江見 兎和子(jb0123)が色っぽい仕草で近づいて行き、温かな飲み物を手渡していった。
「さあ、温かい内にお飲みになって……温まりましょうね……。うふ……、遠慮なさらないで……?」
 兎和子の妖しい笑みに勧められるまま、彼氏達は飲み物に手をつけた。
 温かい事は温かいだが味は、辛く苦く気が狂ってしまいそうな味であった。
 兎和子特製の強壮剤ブレンドの特製ドリンクという事だったらしい。
 しっと団員達により、このままではカップル達は地獄となってしまうだろう!
「これ以上はダメです」
 高笑いする団員の一人をハリセンで気持ちよく叩きながら朔夜が姿を現した。
 それに続いて、ユウと篝、エイルズレトラが姿を現した。
「こんな馬鹿な事をせずに、此方の手伝いをしませんか?」
 少し哀れむ表情でユウが問いかけるが、ラグナ達は知ったこっちゃ無かった。
 ……と言うか、篝もしっと団相手に知ったこっちゃ無かった。
「寒いんじゃボケぇー!!」
 問答無用で鎮圧に掛かり始めたのだ。
 ちらほらと降り始めた雪混じりの砂利を投げつけたり、温かい飲み物を入れていたポットを力の限り投げつけたり、一気に近づいてコーンスープが入った紙カップをダンクしてみたりと一気にしっと団を駆逐して行く。
 鎮圧やない、これ八つ当たりやねん。
「まだだ! まだ終わらない!! 独りでも多くのカップルを駆逐する! それが、それが私のしめ――がごふっぁ!?」
 叫び、ラグナは小麦色の肌で攻撃を受けつつ立っていたが、ポットの集中砲火には耐え切れず……ついに撃沈してしまった。
「ああ、なるほど。だから何時までたってもリア充になれないのですねえ。いいかい、良い子のみんな。あのおじちゃん達みたいになっちゃダメだよ?」
 八つ当たりの光景を見ながらエイルズレトラが保護した子供達に言い聞かせた。
 阿鼻叫喚の図が一通り終え、カップル達は吊橋効果でますます愛をヒートアップさせようとしていた。
 そんな中、急にイルミネーションの明かりが消え、公園内は暗闇に包まれた。
 突然の事に驚きの声が上がり、同時にキスとか起きそうな雰囲気が一気に冷めてしまった。
「……」
 ハンカチを敷いた手で電源プラグを全て引き抜いた緋流 美咲(jb8394)は少し満足そうな顔をしながら、雰囲気を破壊した事を感じつつ、暗闇の公園から逃げだs――ガゴンッ!
 周りが見えなくなっていた為、電灯がある事に気づかずに顔をぶつけてしまい、目を回しながらその場に倒れるのだった。

●潰えるしっと
「くっ、全滅……全滅だと!?」
 モニター越しに団長は怒りの声を荒げ叫ぶ。
 2013年のクリスマスを消し去る事は無理だった。
「だが、だがまだ手はある。手はあるはずだ!」
 叫びながら団長は叫び立ち上がろうとした。その時だった。
 モニターが変わり、何処かから回線が繋がった。
『今年は失敗のようだな』
「そ、その声は……いえ、まだ。まだです!」
『その台詞が出る時点で終わりなのだよ』
 その言葉と共に、地下基地に警報が鳴り響いた。
 どうやら自爆装置が起動したらしい。
「ま……待ってください! 来年、来年こそは!!」
『長い休暇を取りたまえ、それでは2013年のしっと団長。さよならだ』
 一方的に回線が切れた直後、激しい音と光が放たれた。
 直後、地上が大きく揺れた。

「何だか騒がしいですね」
 呟きながら、屋根の上をソーニャ(jb2649)が天使の翼を広げて飛び回っていた。
 その衣装は猫耳を付けたサンタであり、肩には白い大きな袋をパンパンにさせていた。
 中には彼女が自分の小遣いで買えるおもちゃが大量に詰め込まれていた。
「ボクたちぼっちだけど、空には満天の星。みんなボクたちをみているよ、みんな見ているボクも、パパやママも」
 謡いながらソーニャは独り夜の空を飛び回り、光の翼が消失すると共に目的の場所へと辿り着いた。
 そこは天魔によって家族を失った子供達の施設であり、こっそりと窓を開けると彼女は中へと忍び込んだ。
 天魔と気づかれたら怖がられるだろうか、そんな不安を感じながらもソーニャは息を吸い込むと……。
「ぼっちサンタがみんなにプレゼントを持ってきましたよー♪」
 それからどうなったかは彼女の心の中に留めておく事にしよう……。

 そして、再び静かになった街中で……一部教会の方では邪教が続いているかも知れないが……。
 クリスマスは再び静かに過ぎて行く。
 カップルは街を歩きデートをしたり、高級レストランで楽しいひと時を過ごしたり、再び灯ったイルミネーションを寄り添いながら見る。
 ボランティアに参加した者の内数名も、恋人と一緒に過ごしたりするのであろう。
 そんな素敵な聖夜は過ぎて行くのであった。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:9人

ラッキーガール・
ミシェル・G・癸乃(ja0205)

大学部4年130組 女 阿修羅
原罪の魔女・
卜部 紫亞(ja0256)

卒業 女 ダアト
未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
揺るがぬ護壁・
橘 由真(ja1687)

大学部7年148組 女 ディバインナイト
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
KILL ALL RIAJU・
ラグナ・グラウシード(ja3538)

大学部5年54組 男 ディバインナイト
世紀末愚か者伝説・
虎綱・ガーフィールド(ja3547)

大学部4年193組 男 鬼道忍軍
しっ闘士正統後継者・
天道 花梨(ja4264)

中等部2年10組 女 鬼道忍軍
紅茶をご一緒に・
クオン・アリセイ(ja6398)

大学部4年262組 男 ダアト
猟奇的な色気・
江見 兎和子(jb0123)

大学部8年313組 女 阿修羅
夜を紡ぎし翠闇の魔人・
鑑夜 翠月(jb0681)

大学部3年267組 男 ナイトウォーカー
地震、雷、火事、兄貴!・
白虎 奏(jb1315)

大学部2年121組 男 バハムートテイマー
衝華に問う・
月隠 朔夜(jb1520)

大学部6年2組 女 阿修羅
カレーは飲み物・
最上 憐(jb1522)

中等部3年6組 女 ナイトウォーカー
にゃんこさんと一緒☆・
雅楽 彪白(jb1956)

大学部4年299組 男 ナイトウォーカー
黒焔の牙爪・
天羽 伊都(jb2199)

大学部1年128組 男 ルインズブレイド
カリスマ猫・
ソーニャ(jb2649)

大学部3年129組 女 インフィルトレイター
遠野先生FC名誉会員・
何 静花(jb4794)

大学部2年314組 女 阿修羅
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
能力者・
獏(jb5676)

大学部7年189組 男 ナイトウォーカー
成層圏の彼方へ・
崋山轟(jb7635)

大学部2年122組 男 阿修羅
炎刀を秘める者・
恙祓 篝(jb7851)

大学部2年35組 男 ナイトウォーカー
撃退士・
ジェイク・コールドウェル(jb8371)

大学部2年5組 男 アカシックレコーダー:タイプA
誠心誠意・
緋流 美咲(jb8394)

大学部2年68組 女 ルインズブレイド
演技派女優・
橋井 隆子(jb8399)

大学部7年72組 女 陰陽師