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マスター:清水裕
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
形態:
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/11/20


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオはIF世界を舞台としたマジカルハロウィンナイトシナリオです。
 WTRPGの世界観には一切関係ありませんのでご注意ください。

●禁断魔法ツルペッターン
「あははははー、きょにゅーはウーネひとりだけで十分だよー★」
 ある日、魔法世界クオン=ガ=ハーラを包み込むようにしてオーロラが空に現れ、楽しそうな声が響いた。
 何のことかまったく分らない人々は首を傾げながら、その綺麗なオーロラを見ていた。
 翌日……。
 何ということでしょう、バストFくらいのある爆乳で姉御肌の酒場のお姉さんのおっぱいがAサイズの貧乳となっているではありませんか。
 乳が無くなった事を信じられないのか、何度も特注のブラをつけては落とすをし続けるお姉さんを尻目に男達は恐怖に顔を歪ませながら走った。
 目指すは、メロンを売ってるメロンの様なおっぱいの女性店員! 残念、貧乳だ!!
 ファッキン! だが望みはまだある、谷間にチョークを挟むティーチャーは……くそ、AAカップで嘆いてやがる!!
 嘘だといってよ●ーニィ! 一体何が原因なんだ……行く先々の巨乳おっぱいが残念おっぱいになってやがる!
 元巨乳達の嘆きの声が世界を満たす中、占い師の婆さんは震えた声で言った。
「こ……これは、禁断の魔法……ツルペッターンじゃ!」
「なん……だと」
 禁断魔法ツルペッターン、それは相手を貧乳にする一種の呪いとも言える魔法であった。
 しかしそれは大量の魔力を使う為に使った者が簡単に特定できるという魔法であった。
「じゃが、世界中に広めるほどの魔力……並大抵の者ではないぞ……それでも、行くというのか?」
 そこに、おっぱいがあるなら……。集まった50人の勇者達は頷き、決意を示す。
 しばらく婆さんは考え、目を閉じる……が、決意を前にした彼らを止めるわけには行かない。
 そして、地図のとある場所を指差した。そこは……『まおー塔』と書かれていた。
「この場所に巨乳を奪った者がおる、しかし魔王は強い。そんな装備で大丈夫か?」
「「大丈夫だ、問題ない」」
 キリッとした彼らへと、婆さんは心配そうに道具を一度だけ呼び出す球を差し出すのだった。

●まおー塔に待つ者は
 あれから野を駆け、山を駆け、海を渡り、死闘を繰り広げ……ようやく勇者50(ブレイヴフィフティー(笑))はまおー塔へと辿り着いた。
「あははー、よく来たなゆーしゃたちー♪ ウーネは最上階に居るからやってきておいでー★」
 楽しそうに笑う声が塔の上から聞こえ、彼らは塔に入ろうとする。
 しかし、扉を開くと先に見えるのは塔の中ではなく……塔の反対側だった。
 一体これは如何いう事か……そう思っていると、勇者50の後方から前へと出てくる者がいた。
「この扉は特殊な魔法で入れなくなっているみたいですね」
 ローブの隙間から豊満な胸を覗かせながら、旅の途中で仲間にした自称神官のミリアは言う。
 揺れる乳を覗き込みながら、勇者50の男達は絶望した。
「「くそっ! 魔王を前にしておきながら……俺たちは、俺たちは愛(読み:おっぱい)を取り戻せないのか!!」」
 成り行きで参加した女勇者はゴミを見るような目で男達を軽蔑した。元々巨乳だった女達は膝を落とした。
 そんな彼らへと助けの手が差し伸べられた。
「大丈夫です。あなた達はこのミリアが責任を持って送ります」
 ミリアはそう言うと、持っていた杖を天にかざした。直後、杖の珠が光り輝き、吹き抜けの扉に変化が現れた。
 どうやら、彼女の力で扉の空間を繋げたようだ。
「さあ、今の内に早く」
 言われるままに、彼らは駆け出し……塔の中へと入って行った。
 そして、全員が入ったと同時に空間は遮断された。
 どうやら魔力が尽きてしまったからだろう。
『皆さん、後は頼みます……』
 そんな声が何処かから聞こえる中、彼らは何故か備え付けられた「まおー塔案内マップ」を見るのだった。


リプレイ本文

●気がつけば……
 まおー塔の説明マップを読み終え、いざ塔を上ろうとするが……不意に大宇宙の意思と言うか何か変な電波という感じの物が彼らへと『円陣を組め、組むんだ……』と送信してきた。
 若干、と言うか殆どのメンバーが恥かしそうにしているがそんなことは気にしない。従いたくない者は何故か体が勝手に動いてしまっていた。
 更に言うと世界の意志に従わなければならないという気分を感じながら、口から言葉が漏れ出した。
「打倒、魔王だよ!」
 顔を赤くする猫野・宮子(ja0024)の口から、大きな声が発せられた。
「打倒、魔王よ!!」
 勇者の雪室 チルル(ja0220)が元気に叫んだ。
「打倒、魔王……だ……!!!」
 小さくも魂が込められたSpica=Virgia=Azlight(ja8786)の声が響く。
「打倒、魔王です!!!!」
 オドオドしつつもやる気を出すオブリオ・M・ファンタズマ(jb7188)の声が重なる。
「打倒、魔王だよね!!!!!」
 シャルロット・ムスペルヘイム(jb0623)が拳を打ちつけながら闘志を滾らせる。
「打倒、魔王よね!!!!!!」
 天王寺 摩耶(jb6746)が魔王に対する怒りを込めながら叫ぶ。
「打倒、魔王だよ!!!!!!!」
 自称元LLサイズのビキニアーマー戦士のエルレーン・バルハザード(ja0889)が血涙を流しながら、恨みの声を上げた。
「打倒、魔王です!!!!!!!!」
 牛図(jb3275)がおっぱいが無かったら赤ちゃんのご飯がなくなるという心配を込めた叫びを上げる。
 と、8人の叫びが塔の中に響き渡る……ん?
 8人? 改めてメンバーを確認してみた。
 宮子、牛図、スピカ、チルル、エルレーン、麻耶、オブリオ、シャルロットの8人だ。
 8人しか居なかった。一体どういうことかと驚きながら、彼らは入り口を振り返った。
 ……なんか、42名の勇者が時空の狭間へと飲み込まれて行くのが見えた。
「ジャック、ファイトだ!」
「おうよロバート!」
「「おっぱーい!!」」
 叫びながら、比較的入口に近かったモブ2名がドアに手をかけて塔の中に突入し、急いで扉を閉めた。
 多分吸い込まれないようにする為だろう……って、残り40名がー!!
 助かったという風に汗を拭うおっぱい兄弟を無視しながら、残り40名の旅の思い出が彼らの中に蘇った。
 ……あぁ、あいつらのほとんどが昨日の夜に『俺、この戦いが終わったら巨乳に戻った彼女とぱふぱふするんだ……』とか言ってたっけ。
 どう考えてもフラグを立ててたな……。
 そう思いながら、星になった40名へと彼らは静かに敬礼をした。

●塔を昇り始めて
 敬礼を終え、彼らは塔を昇るために走り出した。
 静かな塔の中に石造りの階段の乾いた音が響き渡る。
 そして彼らは2階の間への扉へと辿り着いた。
 頷き合い、静かに扉を押し込むと古びた音と共に開かれ……中には魔王の分身が待ち構えて……居なかった。
 呆気に取られながら彼らは中に入り、部屋の中央まで行くと紙が1枚置かれていた。
『たびにでます、さがさないでください。ぶんしん2ごう』
 ……わぁ、分身のはずなのに統率利いていないのかな? それとも、こちらの人数が減ったから気を利かせてくれたのかなー……?
 そう思いながら、彼らは3階に上がり同じ様に扉を開けた。
 しかしそこにもやっぱり居なかった。『きゅうりょうねあげもとむ。ぶんしん3ごう』
 4階に上っても……居なかった。と言うか塔の壁に穴が空いていた。
 そして5階も居ないだろう。そう思いながら扉を開けた……。
「あ、やっときたー★」
 魔王の分身(巨乳)がいた。
 やって来た勇者達を招くように分身は嬉しそうに跳ね回る。ぶるんぶるんおっぱいを揺らしながら跳ね回る。
 エルレーンから物凄い舌打ちが聞こえたが、気にしないで上げるのが優しさです。
 遂に塔に入ってからの初めての戦いが始まろうとしており、誰が一番手を引き受けるかを相談しようとした時。
「先手必勝! 戦う種目は『じゃんけん』よ!!」
 摩耶が前に出て、即座に種目を言い放った。
 それに対し分身は楽しそうに両手を挙げた。
「うん、いいよー♪」
 ワクワクとする分身に対し、摩耶は気魄を高めて前を見据える。
「「さいしょはグー!」」
 構えた2人の気が燃え上がり、突き出した拳の拳圧が2人を押し戻す。
「あ、あれは――じゃん気ッ!」
「知っているのかロバート!」
 良く分らないこの状況を説明するのかおっぱい兄弟が語り出した。
「じゃん気、それは一流のじゃん拳士が放つ気魄。その拳は刃物をも圧し折り、その張り手は岩をも砕き、、その突き出された2つの指は束ねた紙を裁断すると言われるものだ」
 うん、要するに超じゃんけんってことですね。
 説明を行う兄弟を無視しつつ、彼らは様子を見守る。
「更にそこから放たれるじゃん気はじゃん拳士の手とリンクしており、相手の体を触っているような気分もするらしい。……要するにあのおっぱいをだな、ぶるんぶるんで豊満果実を触ってるってことなんだよ……くそっ!」
 何か聞き捨てならない言葉が含まれていたが今は摩耶の戦いがどうなるかを見るべきだ。
 2人のじゃんけんを見ると、未だ勝負は付いておらず……互いが同じ手を出すばかりであった。
 更に言うとあいこでもじゃん気は放たれるらしく、両者が両者同じ型の攻撃を受け――あ、ちょきで着ている服がちょきちょきと切れてきていた。
 見せられないのが残念だが、衣類という抵抗がなくなっていくおっぱいはじゃんけんをする度に左右に激しく揺れ動いていた。
 そして、摩耶は摩耶で豊満な……ほうまんな……ほうま――洗濯板が左右に揺れ動いているだけだった。
 あれ、悲しくないのに涙がでちゃう……。
「あはは、おもしろいねー♪」
 分身は楽しそうに笑いながら腕を回し、じゃんけんを楽しんでいる。
 それに対し、摩耶は深く息を吐いてからゆっくりと吸うと……正面を見た。
「この勝負で決めるよ」
 力を込め、摩耶は握り締めた拳を後ろへと引いた。正面の分身も同じように拳を引き、どの手を出すか判りはしない。
 瞬間、両者の体からはじゃん気が熱く燃え上がった。
「最初は」「グー!」
「「じゃんけん!!」」
 ぽん! 重なり合う声と共に両者のじゃん気は形となり、互いに向かって放たれた!
 摩耶の体を貫き、分身の出した手が壁に減り込む形で明らかとなる。……パーだ。
 一方、摩耶の出した手も壁に減り込まれた。……チョキだ!
「私の、勝ちよ」
 全てのじゃん気を放出し過ぎた摩耶は膝をついたが、不敵に笑った。
 直後、チョキのじゃん気が通り過ぎた影響か、分身の服が木っ端微塵に破けた。
「「いよっしゃーー!!」」
 赤褐色の体が10人の前に晒され、おっぱい兄弟は自由と成ったおっぱいに歓声を上げる。
「み、見ちゃ駄目だよ!」
「けっ! そんなに乳がいいのか乳がよぉ!!」
 グサッ! と言う音と共に、突き出された指を拭う宮子と唾を吐きながら悪態をつくエルレーン。
 その足元には目を押さえたおっぱい兄弟。何が起きたのでしょうね。
「わ……私は見ていませんっ!?」
 そう言いながら両手で顔を押さえながら牛図は叫びながら首を振る。
 そして、負けた分身は悔しそうであり楽しそうに満足すると両手を挙げて跳ね回った。
「楽しかったねー、ウーネはもう行くねー★ またねー♪」
 手を振りながら、分身は楽しそうに階下の扉へと去って行った。
 揺れるおっぱいを見ながら、摩耶の心は微妙に複雑であった。
(何だろう、この……勝負に勝ったのに試合に負けたような気分は…………)
 多分元からぺったんこと豊満べりーめろんの違いだと思います。
 それから彼らは直ぐに6階へと続く階段を昇り始めるのだった。

 6階、何だか変な売店があり。
 店員の使い魔は「店長が逃げて、長い間此処で一人きりです」と涙ながらに言う。
 そんな使い魔を可哀想に思いながら、軽く小休憩がてら魔王についての情報を聞き出すことを開始した。
「魔王様ですか? 魔王様は巨乳で馬鹿というか子供っぽいという感じの人ですね。まー素直なところが可愛くてわたし達はついて行くんですけどね」
 甘いチョコレート(売り物)とお茶を飲みながら久しぶりの雑談に花を咲かせながら、使い魔はペラペラと話してくれた。
 馬鹿馬鹿言ってるけど、本体は塔の中に居るのだから丸聞こえだったりするんじゃないだろうか……。
 そう思いながら休憩と情報収集を終えた彼らは上を目指す為に扉を開け、階段を昇り始めた。
「え、ま……魔王様!? いえ、私は何もしていませんよ!? え、丸聞こえだったって? …………ぎゃ、ぎゃーーー!!」
 何か下のほうから誰かの悲鳴が聞こえたがきっと気のせいだろう。そう思いながら7階の扉を開けた。

 8階、9階と分身は居らず、またしばらく居ないのかと思いながら10階の扉を開けると分身は……居た。
「ごろごろー、ごろごろごろー……」
 何だか退屈そうに分身は床を転がっていた。
 押し潰された柔らかな黒糖饅頭が物凄く美味しそうであり、天に向けられた弾力性のあるプリンは分身が動く度に左右に揺れて行く。
 そんな分身に牛図が前に出ると息を吸い込み、大きな声で言った。
「まおーさん、あっそびましょーー!!」
 瞬間、彼の叫び声が塔を揺らし、仲間達が耳を押さえる中で分身が目をキラキラさせながら彼らを見た。
 物凄く興味がありますといった様子であった。
「まおーさん、外で遊びましょう。他の階のみんなも連れて」
「うん、いいよー★ みんなー、お外であそぼー♪」
「「わーい★」」
 牛図の言葉に反応するように何階の分身かは判らないが上階下階の扉を開け……30人ぐらいの分身が姿を現した。
 人口密度が増えた10階だったが、牛図は構わず手を振った。
「さあ、お外に行きましょう! ……皆さん、後はお願いします」
 こっそり仲間達に耳打ちすると彼は体当たりをして壁に穴を空けて、外へと飛び出していった。
 それに続くように分身たちも嬉しそうに穴へと飛び出していった。
 驚きながら牛図たちが落ちた穴を覗くと彼らは翼を広げ、空を滑空して降りていくのが見えた。
 ……このまま待っているわけにもいかない。牛図が託した想いを汲み取り彼らは11階へと向かい出すのだった。
 一方、数時間ぶりの外気を味わいながら地上に降り立った牛図はワクワクする分身たちへと言う。
「では、最初の遊びは……かくれんぼをしましょう!」
「「わーい、かくれんぼー★ かっくれろー♪」」
 はしゃぎながら分身たちは散らばり、隠れようとしていた牛図が鬼となってしまい……目を閉じると数を数え始めた。
 ある程度まで数え、呼び掛けた時と同じような大声を出した。
「もーぅいーいかーい?!」
「「もういいよー♪」」
 楽しそうな声が響き渡り、牛図は駆け出した。幸い隠れるのに適した木やら岩陰やら隠れるのに適した場所だった。
 やるからには全力で楽しまないとと考えながら、牛図は駆け出し木の後ろを見る。
「1人目、見つけましたよ」
「見つかっちゃったー!」
 使い魔が言ってた通りなのか、隠れるのが下手なのか分身は直ぐに見つかっていく。
「「見つかっちゃったー♪」」
(うーん、でも私がやったらやったで直ぐに見つかるのでは――いや、岩になってみたらとか)
 最後の分身を見つけ終え、牛図は自分が隠れるべきかと思ったがそっちだったらどうなっていたか分らないことを思うのだった。
 まあ、直ぐに見つかるのはアレだ。だったら今度は走り回る遊びだ。
「よし、じゃあ今度は鬼ごっこをしましょう!」
「「わーい、じゃあウーネたちが鬼をするねー★」」
 牛図の言葉に反応して分身たちは30人で一気に楽しそうにハモった。
「え……、まあ大丈夫でしょう。それでは一塊になってから、30ほど数えてください!」
 一瞬驚いた表情をしたが直ぐに調子を取り戻し、牛図は言う。すると分身たちは1体1体分散して数を数え始めた。
「いーち」「にーい」「さーん」
 その声を聞きながら、彼は一目散に駆け出した。
 ある程度離れた所で大きく弾んだ声で「さーんじゅー♪」と言う声が響き渡った。
 ……その日、まおー塔周囲の森は原っぱとなったことは言うまでもないだろう……。
 しかもその後、数百年はこの地は荒れた大地となるのだが……この時代の人間が知るはずも無かった。

 もぬけの殻の11階を抜け、12階まで上がると分身が立っていた。
「えへへ、何して遊ぶのー?」
 どんな遊びを仕掛けてくるかワクワクしながら分身が問い掛けると、エルレーンが怒りながら涙を流して飛び出してきた。
「私のボイン返してよっ!」
 どう見ても嘘である。貧乳魔法が世界中に蔓延してたとしてもどう見ても嘘である。
 だけど、その証拠はないのであえて此処はエルレーン(貧)と呼ぶことにしよう。
 そしてどうでもいいけど、結界の中に飛び込んじゃってますよこの貧……じゃなくてこの人。
「くっ、入ったからには仕方ない……。よーし、びーえるイラスト描きでしょうぶっ!」
「びーえる??」
「びーえるとは所謂カップリングのことを言うのっ! 好きに描いちゃっていいんだよっ!!」
 どう見てもうそが混じっているが、どんなものかを教えたのでそれで十分だ。
 ……きたない! このえるれーん(ひん)さんまじきたない!!
 よく判らないまま話を進め、エルレーンは持っていた紙とペンを分身に差出し、自らもペンを握り締めるとイラストを描き始めた。
 ちなみに机はないので子供が地べたに落書きをするようなポーズである。
「きちくうけ、よわきぜめ……げへ、げへ、ぐへへへへへへ……」
「びーえるー★ びーえるーー★ えへへー♪」
 片方はどう見ても珍種の『┌(┌ ^o^)┐』であり、もう片方はグーでペンを握ってうぞうぞと何かを書いていく。
 ちなみに分身の谷間をおっぱい兄弟は自らの瞳で録画行っている。永久保存まであと少し!!
 それから2人は描き終え、出来上がった作品を仲間たちに審査してもらうべく、前へと出した。
「まずは私の作品から見てもらうよっ!」
 エルレーンが周囲に晒したイラストはとあるグラげふげふ兄弟さんの禁断の関係的イラストであった。
 半裸の2人がベッドの上でくんずほぐれつと言うプロレスごっこの様なことをしており、エルレーンの興奮っぷりが伝わるようであった。
 無論、そんな耐性がないであろう女性仲間数名は引き、判らないお子様は首を傾げて、一応心得がある者は感心して見ていた。
 ありきたりではあるが画が上手く、構図もしっかりとしたびーえるイラストであった。
(げへへ、これで私の勝ちは確定だよっ!)
 ひんにゅう、ひきょう、ふじょし。まさにHHHであった。
 そんなことにまったく気にしない分身は楽しそうに描いた絵を晒した。
「びーえるってよくわからないけど、こんな感じでいいのかなー?」
 分身が出したイラストは、書き殴ったような絵であり良く分からないが……樹が鳥のような物に何かこっつんこと突かれているよく分からない絵だった。
 たぶん鳥は……啄木鳥だろう。
 当然、周りは首を傾げるだけであり、当たり前の如く勝者はエルレーンとなった。
 よく分からない絵だった。なのにエルレーンはその絵に引かれた。
 それは何故だ。その理由は……あ、これってまさか……。きっと分身本人はわからずに描いたのだろう。だがしかし、底知れぬ才能を彼女は感じ取った。
(樹には性別はないけど、もし……もし男だったら、そして啄木鳥がオスだったら……そして、突いて突いて突きまくり……! 樹は動けないから抵抗が出来ない、強気だけど拘束されている。強気拘束攻め……っ!?)
「そん、な……」
 何だかよく分からないがエルレーンは膝を突き、『orz』といポーズを取った。
 試合に勝ったはずなのに勝負に負けたと別の意味で感じながら、エルレーンは塔を上って行く仲間たちを見ながら倒れるのだった。
 本当、よく分からないが仲間がまた一人減ってしまった。だけどきっと彼女たちは上ってきてくれるはずだ。
 そう信じながら彼らは13階の扉を開けた。
 なお、余談ではあるが後日とあるイベント会場で伝説的なほもぉ同人誌を描いた女性が現れたのだった。

「あ、来たねー♪ 何して遊――」
「ん……2対2のプロレスで……勝負……」
 やって来た勇者たちに喜びながら分身はどんな遊びを聞こうとした。だがその前にスピカが前へと飛び出した。
 その後に続いて、オブリオがスピカの隣に並んだ。
「まおーウーネ、絶対に許さないのです!」
 ビシッとオブリオは分身を指差しながら、ちょっぴりプンプンに声を出す。
 ……ってあの、何か元々あるようには思えないのですが……いえ、なんでもないです。
「プロレスだねー★ おーい、誰か来てー♪」
「はーい!」
 ちょっとだけ大きな声で分身が叫ぶと、階層の天井が開きスモークと共に分身が降りてきた。……何故か大きなプロレスマットと共に。
 一体何処に用意されていたのかとか、本格的な造りだなとか、塔にそんな機能があったなんてと言うツッコミは今は無視することにし、今まさに分身とスピカ&オブリオのタッグマッチが開かれようとしていた。
「ん……それじゃあ、行くよ……リオ」
「わかったです、スピカちゃん!」
 着ている服に手をかけながら、2人は飛び上がりマットへと飛び乗った。その際、脱いだ服は地面に落ち……マットの上には下着姿の少女が2人……居なかった。
 そこに居たのは、(際ど過ぎる)白と黒の水着を着たスピカとオブリオであった。
「「良し、俺たちはロリコンじゃないけど、撮影の準備は出来てるぜ!!」」
 ロリ体系2人とセクシー体型2人のプロレスを撮影すべくおっぱい兄弟はカメラ、ビデオカメラを何台もマットの周囲に並べる。
 って、ファンタジー世界だから、魔法と夢と希望が主体だからね!
 そして天のツッコミを代弁すべく、シャルロットが無慈悲にもおっぱい兄弟の撮影機材をぶち壊していった。
 叩き壊す音をゴングとし、プロレスは開始された。
「動き……鈍らせる……」
 始まるやスピカは持っていたベビーオイルの蓋を開くとマットの上にぶちまけた。
 するとどうでしょう、滑り難かった白いマットは物凄く滑り易い白いマットへと早変わりしたではありませんか。
「よーっし、プロレスの経験は無いけど……とりあえずガガーンって色々やっちゃえばいいのです?」
 やる気を出しながら、オブリオは両腕を天にかざしてやる気アピール。
 一方の分身2人はツルツル滑るマットを笑いながらその場でクルクルと回っていた。
「ぐるぐるぐるー♪」
「あはは、おもしろーい★」
 それをチャンスと見てオブリオはドロップキックを一発かますべく、マットの上を駆け出した。
 一方、スピカもスケートのように滑り出すと分身に攻撃を仕掛け始めた。
「わ、わわわっ!? わーーーっ!!」
 だが、予想以上にマットは滑り、助走をつけたオブリオが地面から離れようとした瞬間……マットの上で転んでしまった。
 結果として言うとドロップキックではなく、スライディングとなっておりスピカと分身を巻き込んでやっと止まることが出来た。
 そして、2人の(際ど過ぎる)水着が上やら下やらが捲くれ上がったりポロリした。
「「うおおおっ!!」」
「え、ちょっ!?」
 おっぱい兄弟が興奮の叫びを放ち、いきなりの展開にシャルロットが驚きの声を上げた。
 瞬間、マットを覆うようにカーテンが下り……更にムーディな明かりが灯り始めた。
「ん……リオ、可愛くて……柔らかい……」
「あわわ、スピカちゃんそんなとこを舐めちゃダメなのです!」
 紫色の明かりがカーテンに影を作りながら、スピカとオブリオの影を重ね合わせて行く。
 興奮しながらおっぱい兄弟は間近で見るべく近づいて行く。
 ちなみに洩れる声には所々ピーッという規制音が入り、一体何を言ってるのか判らないが……何だか色っぽい声が聞こえるので聞こえないほうが良いですね。
 そして、遂に耐え切れなくなったおっぱい兄弟はカーテンを潜り、中を覗くことを決意し……ガバッと捲り上げた。
 目くるめく桃源郷へと俺たちは向かう!! そんな想いの元、あだるとぞーんへと彼らは旅立つことは……叶わなかった。
「「なん……だと……」」
 何故なら、くんずほぐれつらぶらぶちゅっちゅなことをしているであろう2組を被うようにして、モザイクが纏わりついていたからだ。
 ようするに全体的に子供は見ちゃダメ、ざ・せくしーぞーんというやつであった。
 ……というよりも、この中の面子ではそんな世界は覗いたことが実は無いと思うので、基本的に想像だからあやふやなぼやけっぷりとなっているのだろう。
 それを悔しそうに見ながら、おっぱい兄弟たちはカーテンを静かに下ろした。
「やっ、スピカちゃん……そんな」
「ん……リオ本当に可愛い……」
 何というかこれ以上表現していたら色んな意味で危険なので、彼らは2人の世界をそのままにしておきながら……彼らは上を目指すのだった。

 しばらく階段を昇り続け、21階へと辿り着いた先に分身は……居た。
 このまま最上階まで居ないのかという不安もあったからか、久しぶりに見た分身に彼らは少しだけ安堵する中……シャルロットが前へと躍り出た。
「そろそろボクが行こうかな」
「何して遊ぶのー?」
 ワクワクとした表情の分身を見ながら彼女は勝負内容を告げた。
「3対3の尻尾取りで勝負だよ。相手に触れなければ何をしても大丈夫なルールのね」
 要するに揺れる尻を追い掛け回す勝負ということであった。
 解ったのか、分身が声を上げると上の階から2体の分身がやって来た。
 そしてこちらから参加してもらう後の2人は……。
「ふっ、どうやら」
「俺たちの出番のようだな」
 そう言っておっぱい兄弟が前へと歩み出た。
 何故かやる気満々の彼らを見ながら彼女は自分が言った言葉の意図にまったく気づいていなかった。
 そして、6人はお尻に用意した尻尾を付けるとゲームを開始した。
 まず初めに3人は互いに向き合うようにして、正面へと立った。
 互いが互いの隙を探り、その隙を見つけた瞬間に背後へと回り尻尾を取る。それがこの勝負の醍醐味である。
 そう……そのはずだった。
 分身Aの隙をシャルロットは探りながら、グルグルと回りつつ攻防を繰り広げる。そんな彼女の視界におっぱい兄弟が入った。
 軽く屈んだ状態で何時でも飛び出せるような体勢をしつつ、両者はじりじりと動いていた。ただし兄弟の顔はものっそい伸びていた。
 ……その瞬間、彼女は理解した。自分の考えたゲームの最大の欠点を。
「……あぁ、そういう……」
 それを理解した直後、おっぱいに油断した兄弟の片割れの尻尾は奪われた。
 当然、奪うことが出来た分身は嬉しそうにその場でピョンピョン跳びはね、それを間近で取られた方は見ていた。
「わーいわーい、取った取ったー★」
「く、くそぅ、取られたぜ! はぁはぁ……ゴクリ!」
 うん、物凄くブルンブルン揺れてる。おっぱいに飢えた男には堪らない光景だ。
 そして、それを見ているものだからシャルロットの見事な延髄蹴りに気づくことは無かった。直後、メキョリと素敵な音が聞こえ、兄が地に倒れた。
 更に蹴った衝撃を利用して空中を舞い、分身の背後に回ると共に尻尾を奪い取った。
 尻尾を握り締めながら弟に視線を移すと、彼女は笑顔を向けた。
「真面目にやってね?」
「イッ、イエッサー!!」
 背後から漂う獣の様な殺気に弟は敬礼すると、揺れるおっぱいから視線を逸らすと死にたくない一心で2体の分身へと駆け出した。
 馬鹿みたいに一直線に走り、弟は何が何でも尻尾を掴む為に手を伸ばそうとした。
 しかし、スピードが早すぎたのか……分身の間を通り抜けてしまった。だが、弟の不幸はまだ終わらない。
 背後から誰かが迫る気配を感じた瞬間、彼は強い衝撃と共に吹き飛ばされてしまった。
「「ぐぼふぁっ!?」」
 投げつけられた物体からも声がし、弟(ジャック)はそれが兄(ロバート)だということに気づいた。やっぱり鬼だねこの貧乳シスター!
 綺麗に転げた者を面白そうに分身たちが見ている隙に、シャルロットはそのまま2体の尻の尻尾を抜き取った。
 こうして、あっけなくも簡単に尻尾とりは終了した。
 だが、おっぱい兄弟の怒りは収まるわけが無かった。
「くそっ! 俺が何で延髄蹴りを受けなくちゃならないんだ!!」
「いやらしい顔で、アレを見てたからだよ」
 あっさりとシャルロットは答える。
「お前も男が揺れてたら見るだろ!」
 一体どこかは判らないが、自信満々に兄が叫ぶ。
 それに賛同しながら弟が静かに頷く。
 彼らを見ながら、仮面の様な笑顔を張り付かせ……シャルロットは武器を取り出した。
 その際、彼女は声にならない叫びを上げ、彼らを壁ごと塔から叩き落した。
 断末魔の叫びが下から木霊して行く中、怒りの笑顔を浮かべるシャルロット以外は仲間が2人居なくなった事を確信するのだった。

●魔王の実力
「このまま残りの階層に分身が居ないと良いね」
 階段を昇りながら宮子は呟く。22階に上がっても分身は居らず、かれこれ10階層ほど上がったが分身と遭遇することは無かった。
 このまま魔王の居る最上階までいければこしたことは無い、だけど分身は居るものであった……。
「お待ちしておりました、皆さん」
「え、あ……あなたはっ!?」
 遂に次の階層を抜ければ最上階。そんな49階の扉を開けるとそこには……入口を創るために魔力を使い果たしたと思われたミリアが立っていた。
 全員が驚いた顔をし、それに対してミリアは微笑んだ。
「初めから怪しいと思ってたのにゃ……正体を現すのにゃ!!」
 宮子が指差した途端、ミリアは微笑みを笑みに変えて静かに笑い出した。
「ふふっ、お見通しでしたか……はい、私は魔王の分身の1体。ですが他の分身よりも遥かに知能が上です」
 要するに分身の上位存在という事だろう。
 通りで他の分身と違って白かったり、知的に見えたわけだ。
 そう思っていると、ミリアは杖を前に向けた。
「分身だと判ったのですから勝負致しましょう。どなたが戦うのですか?」
「この階はボクが対戦するにゃ♪ 悪い分身にはしっかりお仕置きにゃ♪」
 といって、宮子が前に進み出ると同時に勝負内容を記した紙を前に突き出した。
 『魔法少女ポーズ対決』と描かれた紙を……。
 直後、2人は杖を取り出すと高らかに声を上げた。
「ハッピーハッピー! クルクルニャーニャーマジカルチャーム♪」
「バッドウーネミラクルカタストロフィーマジカール★」
 すると2人の体が光り出したり、周囲に暗黒のオーラが広がったりし始めた。変身バンクの始まりだ。
 ちなみに変身中は中が見えないが、背後に大画面が下りてきて様子が分かるようになっていた。
 まずは宮子の変身バンクが始まった。
 光り輝く体の周囲に、先程唱えた魔法の呪文が浮かび上がりそれが回り始めると同時に彼女の服が消えると同時に光の粒が纏わり、ポンッと音がすると光が上着へと変化し、それを皮切りに音と共にスカート、猫手袋、猫ブーツが現れて行く。
 そして最後の仕上げに光の帯が腰リボンへと変化すると、猫の合唱が始まった。
 ニャー、鳴き声と共に頭に猫耳が現れた。
 ニャーニャー、スカートの尻尾穴からにょろんと猫尻尾が現れ、鈴つきリボンが結ばれた。
 ニャーニャーニャー、鳴き声に合わせながら猫みたいにホップステップジャーンプ!
 跳び上がりクルクルすたんと床に降り立つと、宮子は杖を構えた。
「愛と勇気の魔法少女、マジカル♪みゃーこ参上にゃ!」
 そう言うと共にぴかーんと光は弾け、魔法少女となった宮子が姿を現した。
 そして間髪居れずにミリアの変身が映し出された。
 暗闇の中、両手を広げると服が弾け飛び、体の下から上へと肌が変化すると共に黒色のレオタードが体を包み始めた。
 その際、胸が包まれた時にぶるんと揺れたのはきっと仕様だろう。
 更に腰周りへと前を広げた形でのスカートが現れ、胸元に胸を強調するようなデザインの胸当てが現れた。
 そして扇情的に体を反らせながら、手が漆黒の長手袋に包まれ、足を膝上までの黒いブーツがはめ込まれた。
 最後に「んっ」と感じる仕草を行うと、背中から悪魔の翼と尻尾が生え……杖を胸に挟むようにしてポーズを決めた。
「うふふ、カタストロフィー★ミリア爆誕。と言っておきます」
 ……どう見てもエロ方面にあざとかった。
 まあ兎に角、双方の変身が完了し、判定が行われることとなった……が、問題が一つあった。
 判定を行う人数が少ないのだ。
「それでは、他の方たちに判定をお願いしましょうか」
 ミリアがそう言うと変身が映されていた画面が移り代わりよく分らない空間に漂う40人の勇者がいた。
 異空間に閉じ込められては居るが無事だったことに安堵し、判定は公平に行われると信じていた。だが……。
『きょーにゅーう! きょーにゅーう!!』
 巨乳コールが始まった。あ、何かよく見ると全員眼がギラギラしてる。どうやら洗脳っぽいものを受けているようだ。
 その言葉に打ちひしがれながら宮子は膝を落とし、心が折れかける。
「満場一致で私の勝ちみたいですね。うふふ」
(みゃ、みゃーこじゃ……みゃーこじゃ勝てないの……?)
 72フラット近くまで平らにされた胸に手を当てながら、宮子は負けを認めそうになり始める。
 そんな彼女に、塔を上る時に散っていった仲間の声が聞こえたような気がした。
「そうにゃ、みゃーこは……ボクは負けられないにゃー!」
 叫びながら勇気を振り絞り彼女は立ち上がった。すると胸の奥から輝きが放ち、宮子はその光を受け入れた。
 直後、再び変身バンクが始まり、衣装が白猫の様に白く染まって行き……最後に肩から背中に広がるようにマント、頭に小さなクラウンが現れた。
 その姿はまるで白猫のお姫様といった神聖さが感じられる。
「にゃー、にゃー、にゃーー!」
 最後に自身の光を放出させながら、宮子は全身を広げるとポーズを決めた。
「魔法少女ミラクルキャット☆みゃーこ、光の力でパワーアップにゃ♪」
 その眩しい光はこの49階を浄化し、異空間の勇者をも浄化した。
 洗脳が解けた彼らから、みゃーこ連呼が響き渡り宮子は勝利を確信したのだった。
「……貴方たちなら、やってくれるかも知れません……」
 倒れたミリアからそんな言葉が洩れる。一斉に彼らは彼女を見ると胸中が語られた。
「私の本体は自分が巨乳になって他は小さくってもいいと考えています。ですが、大きさは人それぞれ……大きいのも小さいのもあるから嬉しいんです」
 足から徐々に消え去って行く中で、彼女は話を続ける。
 全員が貧乳の世界は間違っていること、本体を止めて欲しいこと、そして……。
「だから、貴方たちは負けないで下さい……」
「ミリアさん……わかったにゃ」
 その言葉を聞き、最後にミリアは微笑みながら光となって消え去っていった。
 それと同時に最上階へと続く扉が重い音を立てながら開いた。
 さあ、これでこの戦いは最終決戦だ。

「えへへ、待ってたよー★」
 最上階に上がると、今までの分身と同じ姿をした魔王が玉座から立ち上がり、喜びを現すように両手を挙げた。
 その瞳は今まで分身たちが楽しんできたことを見ていたと言わんばかりの瞳であり、今すぐにでも遊びたいといった雰囲気であった。
 そんな魔王に対して前へと出たのは……。
「出たわね魔王! この勇者であるあたいが相手だ!!」
 チルルだった。そして彼女が出した勝負内容は……。
「じゃんけんで勝負だ!」
 玉座から立った魔王と向かい合うようにしてチルルは立ち、拳を握り締める。
 ……今まさに最後の戦いが始まろうとしていた。
「行くよ! 最初はー!!」
 その瞬間、彼女は見た……拳を後ろに構える魔王から漂うどす黒いオーラを。それを知っていながら、彼女は拳を前へと突き出した。
「「ぐー!!」」
 瞬間、チルルは背中に強烈な衝撃を感じた。一体何が起きたのか分らずに明暗する視界を凝らしながら彼女は前を見た。
 じゃんけん前のグーを出したのだ。ただそれだけで、彼女は壁へと押し飛ばされてしまったのだ!?
 じゃん気、きっとそれは摩耶が塔に入ってから初めに戦った時と同じものなのだろう……だが、この威力は何だ。じゃんけんも始まっていないのに、壁に叩きつける程の威力は。
「じゃーんけーん♪」
 そして、魔王はワクワクしながら拳を前に出そうする。仲間たちが何かを叫んでいるが朦朧としたチルルの耳には魔王の声だけが聞こえ……フラフラと拳を前へと突き出した。
 チルルがチョキを出した瞬間、彼女へと暗黒の球体が放たれた。
 ……それが魔王のグーであると知った瞬間、チルルの体は壁から離れ、地面に叩き落された。
 地面に落ちた時、チルルの体はボロ雑巾の様にボロボロになっており、それを見ながら魔王は首をかしげた。
「あれー? どうしたのー? まだ遊ぼうよー★」
 無理だ。もう立てる訳が無い……たったの二撃で彼女はこれなのだ。
 誰もがそう思っている中、指先がピクリと動き……彼女はフラフラと立ち上がった。
「まだ、まだ勝負は……終わってないわ! もう一度……ッ!」
「うん♪ それじゃあ、いくよー★」
 最初はグーと魔王は楽しそうに言い、チルルは絶え絶えに言いながら拳を前に突き出す。
 直後、先程と同じように体は吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。
 しかし、じゃーんけーん♪ という言葉と共に無意識なのだろうか彼女は地面に落ちながら前にグーを突き出した。
 けれど……魔王が出してきた手は開いていた。パーだ!
「が――っはぁ!!」
 暗黒のパーは倒れたチルルの体を更に潰すようにして圧し掛かった。
 意識が殆ど途絶えかけた彼女の心へと、何処からか声が聞こえた。
『もういい、ちっぱいしか居ない世界でもいいから倒れていてくれ!』
『もう見てられない、大きな胸が無くても良いから!』
『君は頑張った、頑張ったから起きないでくれ!!』
 それはチルルを心配しての声だった。きっと異世界の仲間の声なのだろう……。
 その声を聞きながら、彼女の心は折れる……ことは無かった。
「胸なんて関係……ないね。あたいは、あたいは……」
 フラフラとしながら、それでいて力強くチルルは立ち上がる。
「魔王を倒して世界を救いたいんだ――!」
 要するに自己満足だったりするのだが、それは言ってはいけないお約束。
 同時に立ち上がったチルルから噴出すほどの巨大なじゃん気が立ち昇った。
「今度こそ! さあかかってこい!!」
「うん、行くよー♪」
 楽しそうにはしゃぐ魔王をじっと見ながら拳を構える。
「「最初はグー!」」
 双方が叫び、グーを出すと共に魔王からは暗黒の拳が放たれ、再びチルルを吹き飛ばそうとした。だが、彼女の方からも拳が放たれ、暗黒の拳を相殺した。
 瞬間、周囲から驚きの声が洩れる。
「「じゃーんけーん……!」」
 立ち込める暗黒を感じながら、チルルは自身の中に湧き上がる力を手から放つべく前へと突き出した。
「「ポンッ!!!」」
 直後、最上階を闇と光に満たされた。だがそれは直ぐに収まった……何故なら。
 光のグーが暗黒のチョキを消し飛ばし、魔王を壁に押し付けた!
「負けちゃったー★ それじゃあ、次のしょうぶー……って、あれー!?」
 更に光のグーは40の光を受け徐々に膨れ上がり、魔王を壁により押し込ませ……最終的に壁が耐え切れなくなり穴が空くと魔王を空の彼方まで吹き飛ばしていった。
 そして、空中で光は爆発して大きな音を立てるのだった。
「勝……った」
 拳を上げて勝利を叫びながら、気力を使い果たしたチルルは倒れるのだった。

●って言う夢だったのさ……?
 直後、塔が揺れ始め……天井を見ると繋ぎ合った煉瓦がぐらぐらとし始めた。
 どうやらこのまおー塔は魔王の力で維持されていたようだ。
 冷静に解説を行われるが、彼らは急いで駆け出して塔を下り始めた。
 その途中に未だ激しいバトル(数回戦目かはわからない)を繰り広げるスピカとオブリオを拾い上げ、何時の間にか腐りきった階層の中心でより腐らせ始めているエルレーンの足を掴むと更に塔を降りて行った。
 そして、1階に降りた頃には上の方から煉瓦の雪崩が起きており、外の扉を開けた牛図が早く来るように叫んでいた。
 7人が外へ飛び出すと同時に、塔は完全に崩れ去った。
 安堵の息を吐く8人の下へと、異次元に消えた40人の仲間が何処からともなく現れ、手を振りながら駆け寄ってきた。
 更にこの世界の住人すべてが手を振って彼らの後ろから駆け寄ってきた……?!
 そんな彼らに称えられながら、全員が降り注ぐ光を浴びた。きっと奪われたおっぱいとかが戻る光だろう。
 そして予感は的中した。
「わ、わわっ!?」
 驚く宮子のおっぱいが徐々に膨らみ始め……。
「ちょ……何これ!? でかくなって――」
 異常に大きくなり始めて行く中、チルルは叫び。
「私のボインが帰ってきたー!!」
 いや、それは嘘でしょ。エルレーンは両手を挙げながら跳ねて自身のボインの揺れる様に喜びの声を上げる。
「でかいリオも……好き」
「お、おぉ……これが巨乳の重み!?」
 ロリ巨乳となったスピカとオブリオは互いの胸を鷲掴みながら、声を上げる。
「ああ、これって……アレだよね」
 現実ではありえない状況にシャルロットは少しにやけながら理解する。
 気にしないというか、どうでも良いと言っていたが少しは本能が嬉しがっているようだ。
「こ、これが魔王級の……す、凄えよ!!」
 ない者の気持ちが分ってる摩耶だからからこそ、この弾力は天上の果実とも言わんばかりだった。
 そして、光は女だけでは飽き足らず……。
「こ――これはっ!? いくら何でもこれはーー!!」
 何と男までも胸が膨れ始めたのだった!?
 驚愕と共に段々と膨れ上がって行く胸に恐怖を感じる牛図だったが、それはまだ終わりではなかった。
 膨らみ始めたおっぱいは収まることを知らず、メロンからスイカといった感じになり、大玉サイズを越え……最終的に●京ドームレベルのサイズを越えた瞬間、全員のおっぱいが弾けた!
 爆発に巻き込まれながら、全員の視界は白に染まった。
「「う、うわーーーっ!!?」」

 叫び声を上げながら布団から起きると、周囲は暗く……宮子はパジャマを着ていた。
 恐る恐る自分の胸に手のひらを当てると……普通サイズの自分のおっぱいがあった。
 ホッと息をついた。何だかとっても凄い夢を見たと思いながら、彼女は思う……。
(やっぱり格差があるから、無いままでよかったかな……)
 そんなことを考えながら、宮子は再び夢の中へと沈んでいった。

 一方、チルルはチルルで……眠りこけていた。
 どうやら先程の叫び声は寝言だったようだ。
「むにゃ……、あたいはゆうしゃら〜! ……ぐうぐう」
 豪快に手を挙げながら、叫ぶと再びパサッと腕を下ろす。
 ちなみに夢の中で暴れ千切っているのか、布団を肌蹴させながらチルルは気持ち良さそうに寝ているのだった。

 何だか妙な夢を見たからか、薄っすらとスピカの目が開く。
 うとうとしながら、隣で眠るオブリオの胸を枕にして目を閉じる。
(ん……リオの胸は、これくらいが一番……リオ……大好き)
 そんなことを考えながら、スピカは再び夢に沈んでいった。
 しばらくして胸の圧迫感に目を覚ましたオブリオは夢の通りに巨乳に! と幻想を抱きながら、ゆっくりと目を開いた。
 しかしスピカがおっぱい枕にしているだけであった。
「うぅ……現実はやっぱり残酷なのです」
 ぐすんと涙を流しながら、オブリオは普通に巨乳になった自分の夢を見ることにするのだった。

「あー……なんだろう、この敗北感。いったい何の夢を見てたのよ」
 髪を掻き揚げながら、摩耶は呟きながらとても敗北感を感じると同時に最上の至福を感じた夢に疑問を抱く。
 体を起こしてしばらくそのままでいたが……明日に支障が来ると判断しながら、再び眠りにつき始めた。
 きっと今の彼女は、巨乳の天魔が現れたりしたら一撃で地に伏させることが出来るかも知れないのであった。

「ふぉっふぁあ!?」
 よく分からない奇声を上げつつ、エルレーンはベッドから起き上がる。
 途端、周囲に積んだBL同人誌がバサバサッと崩れたが今は気にしない。
「か、返して……私のちょうぜつでいんじゃらすみらくるぱーふぇくつぼいんかえしてよぉ!」
 直後に隣の部屋とかから壁ドンとか煩いと言う声が聞こえたが、そんな物は気にしない。
 そしてしばらくその体勢のまま固まっていたが……首をかしげた。
「……あれ、何の夢を見てたんだっけ? 何だか超絶凄いBLのカップリングが思い浮かんでたような……こう、Gタンク×Gキャノンとかな感じの……」
 なんだか良く分らないがどういえば良いのか分らないカップリングを彼女は呟く。
 そのまま呆然としていたが、でかい欠伸をすると状況が一変した。
「うん、寝よう。寝てなんか新しいネタが浮かぶはず。だから寝ようね……ぐがぁ」
 数分後、げへっ、げへぐへ……という腐りすぎた寝言が聞こえ始めた……。

 こうして、魔法世界の魔王は退治され、夢の出来事だったのか異世界の物語だったのかは誰も知らないままに夜は更けていくのだった……。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:5人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
┌(┌ ^o^)┐<背徳王・
エルレーン・バルハザード(ja0889)

大学部5年242組 女 鬼道忍軍
さよなら、またいつか・
Spica=Virgia=Azlight(ja8786)

大学部3年5組 女 阿修羅
いざ愛死合おう・
シャルロット・ムスペルヘイム(jb0623)

大学部2年236組 女 アストラルヴァンガード
でっかいひと・
牛図(jb3275)

高等部3年4組 男 陰陽師
撃退士・
天王寺 摩耶(jb6746)

大学部4年247組 女 アカシックレコーダー:タイプA
アツアツピッツァで笑顔を・
オブリオ・M・ファンタズマ(jb7188)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプB