●ススキ野原にウサギは跳ねる
「な、なにが起こったん!?」
黒バニーとなった水城 秋桜(
ja7979)が驚きを隠せず叫んだのは他の者達と同じだった。
そしてルールを聞き、彼女はゾッとした。
まさか……剥がされたというのか!? あの心の糧を! あのリアクティブアーマーを!! あの素晴らしき人生(と書いてPAD)を!!!
(あるっ! まだ、まだあった……っ!)
ああ神様ありがとう、うちの希望を奪わなくてありがとう!
秋桜は心から天に煌々と輝く月に祈りを捧げた。……が、すぐに冷静さを取り戻す。
(しかし……服が吹っ飛ぶとやばいかもしれんけぇ……こ、これは負けられんけぇ!)
心に誓い、テレビが吹っ飛び周囲の強制参加者達が叫んだ瞬間、彼女は逃げるようにススキの中へと入っていった。
「何処だよ此処。戦い合え? ……戦闘苦手なんだよな」
呟きながら神楽坂 紫苑(
ja0526)は杵と臼を探すために行動を開始した。
その際、黒手袋をはめようと……したが無かった。
「ああ、着ていた物も持ち物も全部持ってかれてたな」
溜息を吐くと彼は改めて行動を開始した。
(それにしても男の服脱げても、誰も喜ばねえよ)
ススキを掻き分けながら紫苑は移動する。
せっかちな人達が団子を投げあう中、匍匐前進しながら紫苑は移動を行う。
かなり屈んでいれば誰にも見つかる心配は無いだろう。
だけど見つかる場合は見つかるものだ。
「死ねや、オルァ!」
誰か分からないが叫び団子を投げるのが見え、転がりながら回避しそのまま団子を投げつけ逆に相手を吹き飛ばして移動を続けていた。
しかし、何度も続けば嫌気は刺す物で……ウンザリした気分と共に紫苑は団子を両手で掴む。
「やりゃ、いいんだろう? めんどうだな――ほい」
立ち上がり、周囲に居た者達の標的にされ一斉に団子を投げつけられた。
だが同時に彼は残る団子すべてを空に向けて投げつける行為を行っていた。
直後、半袖半ズボンのスーツは破れ、体を宙へと吹き飛ばした。
同じ様に吹き飛ぶ者達を逆さまの視界で見下ろしながら紫苑は――地面に突き刺さった。
(あ〜死屍累々の山だな……)
そうして、彼の意識は別の世界へと旅立っていった。
「諸君、私はびえるが好きだ……諸君、私はびえるが好きだ! 諸君、私はびえるが大好きだ!」
戦いが始まった途端、アーレイ・バーグ(
ja0276)が声を上げて叫んだ。
びえる……要するにBLですね、はい。
「少年同士の絡み合いが好きだ。イケメンと男の娘が絡むのも好きだ。ヘタレ系が好きだ。純愛が好きだ。無理矢理が好きだ。学校で。寮で。自宅で。ホテルで。路地裏で。体育館裏で。倉庫で。この地上で行われるありとあらゆるびえるが好きだ」
この演説は何というか妙なオーラが放たれているような気がした。こう、眼鏡で少佐っぽい人が乗り移ってそうだ。
「この戦いで男性陣が宙を舞う。そんな男達の肉体美を堪能したくは無いか? 絡みが無いのは残念だ。しかし、男達を先に戦線離脱すれば、残るのは女子だけだ。幾ら下着のようにスーツが脱げて地面に頭が突き刺さろうと、後に残るのは女子だけだ。どうだね諸君?」
男子排除をアーレイは提案した。その表情は何と言うか悪役っぽかった。
更に少佐っぽい人が離れて行った彼女はとんでもない事を続けて言った。
「下着と言いますが……ブラなんてしてなかったんですけど?(ぶるん) ショーツまで脱がされたんですかねー?(ぶるんぶるん!) あまり想像しないことにしましょう(ぶるるるんぶるん!!)」
首を右へ左へと傾けるアーレイの胸は物凄い勢いで震え、おっぱいビッグバンの始まりを告げていた。
貧乳ガールズの反乱指数が上昇した! 何か黒いタキシード姿の日谷 月彦(
ja5877)が叫び声を上げていた。
「キターーーー!」
何か目が異常なほどグルグル回っていた、何と言うか一言で言うと……キマってる。そんな感じだった。
そして、月彦はまるで隣に誰かがいるように話しかける。
「そこだ、いけ。キターー」
古来より満月は人の理性を外すと言うが、これもそういった現象だろう……多分。
変になった月彦は団子を当てずっぽうに投げつけながら、アーレイに突撃するとそのおっぱいビッグバンを鷲掴みした。
「きゃんっ」
「胸を揉もうとするな背後! マカセトケー!」
マシュマロを越えたマシュマロ、超マシュマロの感触が手のひらに伝わった。
そしてパンを捏ねるようにアーレイのおっぱいを月彦は揉む。
ちなみに後日、月彦は言う。「アレは僕の仕業じゃない。なにが起こってもあれは背後のせいなんだ……」と。
こうして彼は罪から逃れようとしているのだろう。
だって、彼の元には背後なんて存在はいないのだから……。
直後、へ――変態ーっ! と他の女性達が団子を投げる。
しかし後に目でもあるのか、アーレイから飛び退くと月彦はススキの中に飛び込み素早く立ち去って行った。
野生児、下手をすればエクソシストに出てくる様な状態で彼は走り去って行った。
……何か変なものにとりつかれてるのかな、あれ。
「え、あ――きゃーー!」
そして、投げられた団子はアーレイへと命中した。
同時にスーツは機能し、豊満な肉体を包む黒い下着の様に千切れると吹っ飛ぶように空へと打ち上がった。
「どうせなら本物のバニースーツがいいですー!」
その一言を最後に、アーレイは地面に突き刺さり気絶した。
「……馬鹿馬鹿しいにも程があるが、巻き込まれた以上やらなくちゃなるまい。悪いが、皆には犠牲になって貰おう」
榊 十朗太(
ja0984)が団子を掴むと状況を理解し切っていないであろう強制参加者へと団子を投げつけた。
直後、その参加者のスーツは弾け飛び、すぐに本体も宙に飛んだ。
クルリクルリと宙を回転し……地面へと突き刺さった。
その結果、周囲は十郎太を倒すべき敵と認識し、周囲から団子は放たれた。
「簡単にやられるわけにはいかないよな?」
言い残し、彼は転がる様にススキに飛び込むと逃げ出した。
また、楯清十郎(
ja2990)が地上の混乱を空から見下ろしていた。
バニー執事に翼が生えたといった感じの状態だった。
(混乱しているみたいですね……さて、臼の場所は……)
変態貴族が言っていた臼と杵は何処にあるのかを清十郎は空を見渡し探る。
しばらくすると……見つけた。
だがそこは地獄だった。
団数が尽きた者達が蟻の様に近づいていくと、ススキに隠れている者達が狙いを定め相手に向けて団子を撃ち出す。
そんな光景が見えた。
「よし、臼の場所は確認した……あとは」
こっそりと呟くと清十郎は誰かに打ち落とされた風を装い、地面へと落下した。
誰かがとどめを刺そうと近づいてくるだろう。そう考え、彼はスーツを破いた。
直後、ピーとわっぺんが警報を鳴らし始めた。
『スーツの損壊を確認。機密保持の為、1秒後自爆を開始します。――い』
瞬間、清十郎は何が起こったのか分からなかった。
ただ一つ分かる事、それは……自身を巻き込んだスーツの自爆は普通のムーンサルとではなく、5回転の上に錐揉みがつくという特別バージョンという事だけだ。
地面に突き刺さる瞬間、彼はそう理解した……。そして清十郎のスーツはすべて消え去った。
機密保持だもん。パンツのように残るわけ無いよね★
頭上を団子が打ち合う中、御手洗 紘人(
ja2549)は顔を覆い隠していた。
(何でこんな格好でこんなところにいるのです……)
嘆く彼の服装は……皆と同じうさ耳にまん丸ウサギの尻尾♪ ピコピコ動くよ!
胸にはおなまえわっぺん★ ひらがなで『ひろと』って書かれて幼稚園児みた〜い。
そして、紘人の体を包むスーツ。それは旧スク水と見間違えそうな男の娘専用スーツ。
まあ、所謂スク水バニーと言った名称のスーツだったりするんだけどね。
「何でこんな格好なの〜!?」
同じ様な格好をして、おなまえわっぺんに『らい』と書かれた滅炎 雷(
ja4615)も紘人と同じ様に嘆いていた。
だけど、このまま嘆いていても仕方ない!
そう気づいたのか雷は拳を握り、瞳に炎を宿す。
「ここから僕のターンだよ!」
叫ぶと雷は這い這い歩きでその場から立ち去って行った。
そしてその場で項垂れる紘人だったが、眼前で参加者が散り……地面に突き刺さったのを見た。
殆ど大事な場所だけ隠すような状態で地面に突き刺さっている姿を見た……。
「あ、あんな恥かしい姿になるわけにはいかないのです!!」
力を込めて立ち上がった。その瞬間、紘人に向けて団子は放たれた……が、彼の体を守るようにシールドが展開され、団子を防いだ。
どうやらアビリティの使用は可能らしい、紘人の行動によりそれは発覚し、戦いはより過酷さを増すだろう。
「僕だって本気を出せばなのです!」
叫び、脱がされた時に気づかれない場所に隠していた符を投げつけると、そこから無数の手が出現して周囲の団子を投げる者達を地面に拘束した。
しかしこれはすぐに効果を失ってしまうだろう。その間に……紘人は一目散にその場を逃げ出した。
「なんか妙な事態になっちゃったねえ……」
フィールドの端、箱庭ともいえる空間の境界を移動しながらソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)は中央の方から聞こえる喧騒に耳を傾ける。
そうする事で他の人との遭遇確率を減らそうとしているようだ。
しばらく移動するとソフィアの視界が拓け、飛び出さないように押し留まる。
(人が多い内は目立つのは自殺行為だよね)
そう思い杵を見つけ、いざ餅を突こうと近づく者へと団子を狙い撃ちを行う。
同じ様な考えをしている者が何人かいるらしく、何も知らずに餅を突こうと近づく者達は宙を舞っていった。
「やばいやばいやばいバニーガールやばい超萌える! って、バニーガールが見てえんだよ! ロリッ子もお姉さんも入り乱れた素晴らしき光景だよ! 想像してみ、やばいだろ!? もう何か宇宙だろ!?」
そんな中、男達は邪魔だと叫びバニーガールを血走った目で追いかける赤坂白秋(
ja7030)が臼の近くへと近づいてきていた。
と言うよりも、そんな台詞を聞いた女性が何もしないわけも無く。悲鳴を上げながら白秋に団子を投げつける。
しかし彼はその団子を回避したり、初めに吹き飛んだテレビを盾として行動していた。
時折、\イッケメーン!/と変な擬音が入るのが何と言うか周囲の者達を苛立たせるようだ。
そして決めポーズとしてか、ビシッと主に歌舞伎町のホストクラブのホストがやっていそうな決めポーズを取った。
瞬間、周囲の苛立ちのボルテージはマックスに行き着き……全周囲から避けきれないほどの団子が放たれた。
「そん……な、イケメンなのに……倒れるなん――てぇぇぇぇ!」
自称イケメンは月下に舞い、地面の置物と化した。
周囲が白秋に向いている中、1人のバニーガールが臼に向かって一直線に移動を開始していた。桐村 灯子(
ja8321)だ。
ススキに隠れたスナイパー達が灯子に狙いを定め、団子を撃つ。もちろんソフィアもその内の1人だ。
「あら、いいものが」
そんな中、灯子は地面に突き刺さった聖剣もといイケメン白秋シールドを見つけると引っこ抜きそれを盾とした。
しかし小柄な灯子にそれは大きい上に重く、扱いが難しかった。
「意外と使いにくいわね」
しかも使ってる本人はウザったらしいと思うだけだが、そのイケメンスマイル(ただし白目)を向けられている者達にとっては溜まったものではない。
そして使用者はしばらく使ってみたが、本来の動きが出しにくい事に気づいた。
「と言うわけで、捨てる事にするわ」
蹴り飛ばす口実は言っておかないとね。例え本人が気絶してても蹴り飛ばす口実は作っておかないとね!
てなわけで灯子は力いっぱい白秋シールドをイケメンスマイルが向く形で蹴り飛ばした。
灯子は気づいて居ないだろうが、蹴り飛ばした場所にはソフィアが隠れており……対処する前に嫌悪感が上がりそうなイケメンスマイルを向けられたイケメン白秋ミサイルの餌食となった。
団子が命中した訳ではないからソフィアは宙を飛ぶ事はなかった。
気絶していて彼女は良かっただろう、彼女の乳はイケメンミサイルの枕となっているのだから。
そしてイケメンは目覚めた後に起きる事にご愁傷様というべきだ……あ、すんごい嬉しそうな寝顔のイケメン笑顔だ。
そうして、灯子は避け続けたが……臼と杵に意識を向けすぎていたからか……数分後、宙を舞うのだった。
●月下でウサギは跳ねる
2回目の団子が二階堂 かざね(
ja0536)のバニースーツへと命中した。
「スーツが千切れるくらい気にしないぞ!」
恥より怒りが勝っているからか、かざねはあと1発で倒れて宙を舞うというのに団子を両手に周囲に攻撃を行っていた。
何より、彼女の戦闘方法は周囲から見れば……異質だった。
即効で敵の真ん中に突っ込むと勢いよく回転し空中から周囲に団子を撒き散らしていた。
「うさ団子こぷたー! あ〜んど、乱れ投げー!」
月下に輝く銀色のツインテールを振り乱しながら、投げられた団子は周囲に命中し残機が少なくなっていた者を宙へと吹き飛ばす。
要するに2発受けたのは、生き残った者が反撃したからだ。
地面に降り立つとすぐにその場から移動し、息を殺しかざねは隠れる。
(それにしても、このお団子本当美味しそうだなー。こんな美味しそうなの投げちゃうのかー)
食べたくなる衝動を必死に抑えながら団子を見る。
艶が照り、乳白色の美味しそうな団子だ。
(それにこのウサギスーツにおなまえわっぺん可愛いね。私気に入った!)
機会があったら今度自分で作ってみようと、かざねは思う。
そしてよく見るとおなまえわっぺんが残機を示す数字と共に色が薄くなっているのに気がついた。
「生き残りを考えるなら、隠密行動ですよ……ぬふふ」
その直後、かざねの眼前にススキを掻き分け森田良助(
ja9460)が現れた。
いきなり遭遇したからか、お互い一瞬固まってしまった。
どちらかが早く動けるようになった瞬間、戦いは決まる。
かざねが団子を投げた瞬間、良助は横に転がりそれを回避した。
そして地面に両手をつき、地面を掴むと一握りの土を掴むとかざねへと投げつけた。
「わぷっ!?」
「卑怯と言われても戦いだから仕方ないよね? ぬふふ」
黒い笑みを浮かべながら、良助は目が見えないかざねへと団子を投げつけた。
直後、ビリッとかざねのスーツは弾け宙を舞い……地面に突き刺さった。
「ふう、驚かせて……さて、僕も移動を……」
呟きながら良助は匍匐前進を開始し移動をしようとする……が、足が目の前にあった。
まあ、宙を舞う参加者がいるということはそこにもう一人いるってことだよね。
結果、居場所がばれた良助は周囲からの団子放射を受け、宙を舞うのだった。
それはそれは綺麗に弧を描いて、華々しく地面に突き刺さるのだった。
一方、秋桜とは違い心にゆとりがありリアクティブアーマーが剥ぎ取られた者が居た。
「えぐっ、ぐす……っ」
エルレーン・バルハザード(
ja0889)だ……というか、分厚すぎたから気づかれたんだよね。
え、秋桜の方? 多分、あまり盛られていなかったか気づかなかったか、又はエルレーンよりも盛られていたからだろう……。
そしてエルレーンはすっかすかになった洗濯板……いや、ダンボールをぺたぺたと触る。
肉っぽい感触は少しはある、しかし獄厚パッドのふにふにの感触はまったく無かった。
それが涙を流すエルレーンの感情をより惨めにさせる。
(こうなったら……私の秘密を見た奴、ミンナコロシテヤルッ!)
黒いオーラを纏わせ、目を光らせながら心の中で誓った。
一方、ススキを挟んだ隣側では金髪3姉妹がへたり込んでいた。
いや、ただ一人星風 来桜(
jb0007)だけは凄く嬉しそうにウキウキしていた。
「わぁ、バニーっ! ボク、バニーって初めて!」
赤いバニースーツ姿で来桜は楽しそうにしている。
その度にスーツに谷間を作るおっぱいはプルプルと震える。
隣ではクリスティーナ アップルトン(
ja9941)が軽く膝立ちになりながら、お尻の喰い込みを直す。
「ちょっとサイズが合ってませんわよ」
……へたり込んでいるのではなく、あまり動かない方がスーツのずれが無いからだったようだ。
と思っていたら、アンジェラ・アップルトン(
ja9940)は本格的に戦慄を抱き、落ち込んでいた。
「も、もうお嫁にいけない……」
乙女なアンジェラは知らぬ間に服装を変えられていた=生まれたままの姿を見られた。
という事に落ち込んでいた。
そんな妹の悲しみを知らずか、お腹が空いたクリスティーナは団子を見る。
「……このお団子、食べれるのかしら?」
そう言いながら口に入れてみた。
モッチリとした歯応えとほのかな甘みが口の中に広がる。いたって普通だが何だか懐かしい気分になるお団子だ。
だけど、それでもダメージは認識されてしまうらしく、おなまえわっぺんの残機が1減っていた。
「アンジェ、紅茶が欲しいですわ」
「姉様、道具はすべて持っていかれてます」
「そうでしたわ。残念ですわ」
と言って、まったり空間を展開していたが、問題があった。
「でもやっぱり胸が邪魔だなぁ……」
「そうですわね。お尻もだけど、胸もキツイですわ」
「胸が……なんですってぇ?」
来桜とクリスティーナの不満に、ススキを掻き分け鬼、じゃなかったエルレーンが血の涙を流しそうな勢いで顔を見せた。
それに来桜とアンジェラが怯えたが、クリスティーナがエルレーンの顔を見るとポンと手を打った。
「貴女様はもしや、バルハザード家のエルレーン様でしょうか?」
「え”……あ、あのですか?」
「むねがなんだってんですか、むねがなくたってじょせいはきれいなんですよ。えらいひとにはそれがわからないんです」
家名を聞いた瞬間、青ざめたアンジェラ、そんな言葉も耳に入らないのかエルレーンはぶつぶつ呟く。
そんな落ち込む人達を見ながら来桜は笑顔を向ける。
「アンジェラお姉様もエルレーンさんも似合ってますよ? そんなに悲しい顔をしないで」
「あなた……いいk――チッ!」
豊満な胸を見た瞬間、エルレーンは舌打ちした。こいつは敵だ!
そんなエルレーンにクリスティーナは提案する。
「協力して各個撃破していくというのはいかがかしら?」
結果、4人は仲良く戦いを開始した。
大丈夫、俺が守るから。とか彼女であろう女性に対して彼氏が言う。
「しぃぃねぇぇぇ!」
その瞬間、ススキから虎綱・ガーフィールド(
ja3547)が飛び出すと男性に向けて団子を投げた!
団子は男に命中し、宙に舞い上がる。
「女性だけならともかく男も参加とか……誰が得するんだ! ふはは」
彼女の悲鳴が聞こえる中、高笑いと共に虎綱はススキの中に逃げていく。
そんな虎綱の進路上に男が一人立っていた。
「やーれやれ、おっさんの半ズボンなんて何の需要がある事やら……」
愚痴りながら、綿貫 由太郎(
ja3564)が振り向く。
「悪いな、団子がもう3個しかないんだ。だから君のを倒して頂くよ」
「やれるものなら、やってみるでござる!」
虎綱は一気に駆け出すと共に団子を投げつけた。
しかし、団子は由太郎に当たる事無く地面に落ちた。団子をよく見ると……石が刺さっていた。
団子に狙いを定め、射撃したようだ。
「生き残る為に手段選んでる場合じゃなさそうだからねえ」
「そうでござるか、では団子を賭けて……勝負!」
叫び、虎綱と由太郎は逃げと攻めの勝負を開始した。
ちなみに彼氏を飛ばされた女性が病んだ瞳で2人を狙っていたりした。
「フジョシガアツマルゾ! うるせぇ……」
変な一人芝居を行いながら、月彦は吹っ飛びスーツが弾けとんだ。
そんな月彦を見ながら、クラリス・エリオット(
ja3471)がスーツで強調された小柄な体型で胸を張った。
「ふん、どんなもんじゃ! 私に掛かればジャパニーズヘンタイなど一網打尽じゃ!」
そう胸を張るクラリスだが、開始当初は英国で話に聞いたお月見とは違う事に困惑をしていたのは秘密だ。
胸を張るのを終了するとクラリスは身長の低さを生かした動きでススキの中へと潜り込んだ。
小さくカサカサとススキが鳴るが、風で揺れるようにしか思えない。
と、そんな時クラリスの視界に踏まれ道となった場所が見えた。
直後、その道を歩いていたであろう参加者……服装からして男の娘だろう。
というか、紘人だった。
「う、うわああぁぁぁぁぁぁ…………」
華麗に宙を舞う紘人の体は綺麗にムーンサルトをし、無意識なのか自身の体に光球を纏わせながらゴージャスに舞う。
そして、宙で一時停止した瞬間……ビリッとスク水が破けマイクロビキニっぽくなると共に紘人は地面へと落ちていった。
ちなみにスーツが破けたとき、一瞬薔薇が周囲に浮かんだように見えたのはきっと気のせいだろう。
「よーっし、また撃破だ。大漁大漁」
地面に突き刺さった紘人を無視し、草むらから姿を現したイクス・ガーデンクォーツ(
ja5287)は破けたスーツの残骸から団子を取り始めた。
ニット帽から無理矢理突き出たうさ耳が何と言うかシュールだった。
1個1個団子を補充しながらイクスが何かを呟いているのが聞こえた。
クラリスが耳を済ませてみると……。
「乳はただデカけりゃいいってもんじゃねぇだろ。小さすぎず大きすぎず、形の整った綺麗な乳。つまり美乳、美乳こそ正義!」
子供が聞いてはいけない呟きだった。
とりあえず、黙らせるしかない。それ以外に道は無い!
「サイズだけに拘った乳なんぞナンセンス。時代は……美乳だ! っと、あんな所にも」
美乳時代の幕開けを勝手に開きながら団子を取っていき、飛びすぎた最後の団子を拾い上げ、顔を上げた瞬間。
ロリ体型の白バニークラリスが立っていた。
「そんな時代が訪れる事は無いのじゃ!」
にっこり微笑んだ直後、叫びクラリスは団子を投げつけた。
こうして、美乳時代は訪れる事無く……イクスはニット帽ごと地面に突き刺さるのだった。
●勝利を我が手に
「悪は去ったのじゃ、今こそ私はバニークイーンとなるのじゃ!」
月を指差し、クラリスが気合を入れる。
しかしその瞬間、クラリスと反対のススキからソリテア(
ja4139)が転がり飛び出した。
「そこ、がら空きです!」
叫びと共に放たれた団子はクラリスと地面に突き刺さったイクスの体に命中する。
本当は閃光弾を使って広範囲で目くらましをと考えてたらしいが……持ち物すべて持っていかれているのを忘れていたのだろう。
「不意打ちとは卑怯じゃ! じゃが姿を現した時点でそちらの負けじゃ!」
喜々としながら、団子を構え投げつけた……が、命中する事はなかった。
2人を阻むようにソリテアの周囲を星屑の輝きが包み込んでいた。
「あら、どうしましたか? 攻撃してもいいんですよ……怒りますけど」
(う、うぅ……何故じゃ、蛇に睨まれたようじゃ……!)
本能が邪悪な笑みを浮かべるソリテアが危険と判断したのか、再び団子を投げようとしたクラリスが恐怖を感じた。
年上だと言う事と何と言うか……邪悪過ぎたのだろう。
結果、クラリスは本来の力を出せずに月下に舞うのだった。
「ふふ、相手が悪かったですね」
「これでも食らえ〜!」
笑うソリテアへと、飛び出した雷が持っている団子をすべて投げつけた。
……あれ、これ転んでない? 転んで団子袋落としちゃってるよねこれ。
「また脱がされるんですか……」
避けきれない団子を見ながら、纏う光が消えたソリテアは諦めた瞳で呟く。
直後、彼女の体は舞い地面へと突き刺さった。
黒い下着のようになったスーツと日本人の肌に団子の破片はこびり付き、へたり込んだ形となっていたならばきっとセクシーショットが取れたことだろう。
しかし、今ソリテアは地面に突き刺さっている聖剣状態だ。ぶっちゃけ笑いしか出ない。
そして最後は下着みたいになったスーツも破れてしまい、彼女から離れて行った。瞬間、それをガードするようにススキがざわめき、覆い隠すのだった。
「よし、倒した! それにしても見事な飛びっぷりだな〜」
そう呟いた瞬間、雷の頭に団子が落ちてきた。
自分が落とした団子だろう。そう思った瞬間、雷の体は浮き上がり宙を舞っていた。
(あ……そういえば、残機……)
思い出した瞬間、彼は地面へと頭を突っ込むのだった。
「うちが乙女になる為じゃけぇ! ごめんっ」
秋桜が必死な表情で足音がしない状態で移動を行い、アーレイの顔をしていた。
どうやら変化の術を使って顔をやられた人に化けているようだ。
胸が無いアーレイという何とも珍しい状態だった。(後日、秋桜は泣きながら、うちには無理じゃけぇ、あんな西瓜作れんのじゃけぇ……と答えていた)
そんな秋桜が目指す場所、それは杵と臼だった。
丁度そこには、エルレーンと金髪姉妹が陣取っている状態だった。
「数の前には、個人の力量など塵にも等しいですわ!」
黒い面を垣間見せながらクリスティーナ達が生き残ったは良いが団子が少なくなり、餅を手に入れようと近づく雑兵達を悉く倒していく。
ぷるん、ぶるん、ぶるるん、ぺたーーー……ん。
その度に揺れる胸の動きは擬音にするとこんな感じだった。やったね、秋桜ちゃん! 仲間が居たよ!
しかし、戦いは非情なものであり、秋桜は4人を倒すためにヤる気を込めて団子を投げつけた!
(散るんじゃ! 天然もの!!)
怒りの団子はクリスティーナを狙う……が、駄々漏れな気配はすぐに気づかれ、彼女はアンジェラを抱きかかえた。
「スキル、シールド発動! ですわ」
「え、ちょ!? 姉様はこの間依頼で産まれたままの姿に! 今更ではないのか――ぼっ!?」
豪速球は見事妹シールドに命中、結果妹シールドの残機は減った。
「持つべきものは献身的な妹ですわね」
「……ボインちゃんなんて、こうしてやる!」
アーレイ顔だけ見て巨乳と判断したのか秋桜に向けエルレーンは反撃した。
続いて、残り2発もクリスティーナと来桜から投げられ、秋桜は月下に散った。
同時に変化は解け、心の支えはススキ野原へと消え去って行った……。
(あぁ、うち……終わったけぇ……)
そうして秋桜は燃え尽きた。
静かになった周囲に一同は一息吐いた。
「と思ったか! お前達ボインちゃんも敵だぁぁ!」
怒りの叫び声と共にエルレーンは団子を3姉妹に投げつけた。
「やはり、こうなってしまう運命ですのね」
だがそれは予測できていた行為だったらしく……エルレーンの団子が姉妹に命中すると同時に、3姉妹の投げた団子も彼女へと命中した。
「勝ち負けなぞどうでも良い、狙うはただ一人っ!」
参加者が減って来た頃、字見 与一(
ja6541)はススキ野原を駆ける。
標的、黒百合(
ja0422)は何処にいる!? 過去の模擬戦のリベンジを今こそ晴らしてやる!
そんな意志の元、与一はススキを掻き分け駆ける。
その手には熱々かつねばねばの餅が握られていた。
漁夫の利で得た物だ。
「くすん、くすん」
そんな時、金髪の少女がしゃがみ込んで泣いているのに出くわした。
巻き込まれてからずっと泣いているのだろう。心配になった優しい与一は近づく。
近づく存在に気づいたのか少女の体はビクッとした。
「君、大丈夫?」
「……えぇ、大丈夫……だって、目的の人物がやってきたんだものォ♪」
顔を上げた少女は黒百合だった。変化をしていたのだ!
邪悪に笑う黒百合と対処出来ない与一、勝負は明白だろう。
しかし与一には一撃必殺の餅がある!
「う、うわああぁぁ!」
混乱しながら投げた餅は、黒百合には命中せず彼女は近づいてくる。
「あは、あははは……! 宇見君ってば、混乱してて命中しないわァ……♪ じゃあ、私も甚振ってあげるわァ」
団子の数を調整しながら、与一にわざと外したり当てたりしながら黒百合は近づき、与一は両手を前に突き出した。
事故でした、わざとじゃないんです。後に与一はそう弁護した。
要するに突き出した両手は発展途上の黒百合の胸にたっちしたのだった。
直後、いつもよりも狂気な笑みを黒百合は与一に向け、笑みを浮かべた。
「ふふ……与一君、よっぽど●●で●●なことをされたいみたいねェ」
与一の悲鳴がススキ野原に木霊した。
返り血を舐め笑みを浮かべる黒百合は勝利を確信した。
しかし、心に生まれた油断が甘かった。
「ウサギの皮を被った狼じゃぞ! ホレホレ、恐れぬかっ」
ススキに身を隠していた白バニーのザラーム・シャムス・カダル(
ja7518)が飛び出すと、団子をぶつけてきた。
先程までの行動も観察していたのだろう。
我慢できない様にザラームは黒百合へと襲い掛かると押し倒して口の中に団子を詰め込んできた。
「ニャハハ、随分と面白い趣向じゃのう」
笑うザラームを尻目に黒百合の体は宙に浮き、スーツが弾け地面へと突き刺さった。
直後、ススキ野原にファンファーレが鳴り響いた。
優勝者が決定したようだ。これによりススキ野原から出ても問題は無くなっただろう。
「おぬしら、起きよ。今から主催者を狩りに行くのぢゃ」
そう、最後の締めはまだ残っている。
あの変態(十中八九あの人)を〆るために彼らは地面から頭を抜くと、歩き出した。
さあ……主催者狩りの始まりだ!