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マスター:嶋本圭太郎
シナリオ形態:シリーズ
難易度:易しい
参加人数:9人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/07/07


みんなの思い出



オープニング

「はい、お疲れさま。今回の依頼では特にトラブルとかもなかったみたいねっ」
 報告書を受け取って、潮崎 紘乃(jz0117)はにっこり笑顔を向けた。
「えへへ、今回は上手く行きました!」
 春苑 佳澄(jz0098)も笑顔でそれに答える。
「‥‥って、それじゃいつもはトラブルばかりみたいじゃないですか!」
 一拍おいてから、びっくりした顔で言う。紘乃はそれを見て、くすくすと笑った。


「佳澄ちゃんも、そろそろ依頼を受けるのにも慣れてきたかしら?」
「そうですね‥‥。まだまだ一緒に行った人に助けてもらうことの方が多いですけど」
 この学園に来てから、気がつけば一年を過ぎていた。大活躍とはほど遠く、他の人よりだいぶゆっくりペースとはいえ、少しは撃退士らしくなってきた、だろうか。
「ま、報告書をみる限りじゃまだまだ『ひよっこ』だけどなあ」
 受付の奥から紘乃の上司の声が飛んできた。
「うぐぐ‥‥次こそ大活躍して見せますから! 紘乃さん、次の依頼、なんかこうばちーんと強い敵をやっつけられるような‥‥」
「はいはい落ち着いて。牧田さん、誉めてるところなんですから茶々入れないでください!」
 あっさりと挑発に乗る佳澄をなだめる。
「まあ大活躍には期待しておくとして‥‥一年間頑張ったご褒美に、ちょっといいものがあるのよ」
 そう言うと、紘乃は封筒を取り出して佳澄に手渡した。開いてみると、中にはコンサートのチケットのようなものが。取り出して、文面を口にしてみる。
「関東どこでもご宿泊チケット‥‥団体10名様までご利用可能」
「関東圏で提携しているところならそれでどこでも泊まれるんですって。一泊だけだけど‥‥よかったら、お友達を誘って行ってきたら?」
 佳澄はしばらくぽかんとチケットを眺めた後で、あわてた。
「えっ!? そんな、悪いですよ‥‥紘乃さんが使ってください」
「私じゃ一人旅になっちゃうもの。それに、佳澄ちゃんはじめ撃退士のみんなにはお世話になってるし‥‥。私に出来るお礼はこれくらいだからねっ」
 その後もしばらく押し問答が続いたが、結局佳澄はチケットを押しつけられる形で受け取ったのだった。


「旅行かあ‥‥依頼で遠出したりはするけど、純粋にそれだけっていうの、すごい久しぶりかも知れません」
 チケットを眺め、佳澄はうれしそうに言う。まだちょっと遠慮はあるが、行くとなったら楽しみたい。
「天魔の多い地域はそもそも提携してる旅館やホテルがないから無理だけど‥‥関東は結構平和な場所も多いから、選択肢も結構あるわね。海にしろ山にしろ、テーマパークで遊ぶにしろ‥‥」
 紘乃の言葉に佳澄は頷きながら、想像を膨らませていく。
「誰を誘おうかな? やっぱり部活のみんなとか‥‥あれ?」
 ふとチケットをひっくり返した佳澄は、ある一点に目を止めた。
「どうしたの?」
「これ‥‥日付今日までになってますけど」
「えっ? 確か七月の出発で大丈夫って聞いたわよ」
「でもこれ‥‥」
 紘乃は佳澄から示された注意書きに目を通す。
 そこには、「申し込みは六月XX日までにお願いいたします」と太字で書かれてあった。
「って‥‥今日じゃない!」
「ですよね!?」
 びっくりしてガタンと椅子から立ち上がる紘乃。
「えっと‥‥どうしよう」
「どうしましょう?」
 佳澄も首を傾げる。今から知人に聞いて回っても、さすがに急すぎて予定をまとめられないだろう。
 紘乃はしばらくチケットとにらめっこしていた後で、佳澄を見た。
「無駄にするのはもったいないし‥‥佳澄ちゃん、旅行行きたいわよね?」
「えっと‥‥はい」
「じゃあこうしましょう‥‥早いもの勝ち!」
 言うなり紘乃は慣れた手つきで依頼書の作成に取りかかった。


「宿泊費無料の一泊旅行、先着で参加者募集します」


リプレイ本文

 明石 暮太(jb6009)はうきうきと心を躍らせながら相談場所に指定された教室へ向かう。
(沖縄から出てきたばかりだから、関東旅行は楽しみだな。撃退士の先輩たちと旅行が出来るなんて貴重だし!)

「お、明石氏来たな!」
「これで全員でしょうか?」

 扉を開いた暮太に真っ先に気づいたのは七種 戒(ja1267)。藤白 あやめ(jb5948)が教室の中をぐるりと見回す。
「ちょうど十人だ、これで全員だね」
 天風 静流(ja0373)が指先を動かして人数を数え、頷いた。

「明石先輩、こちらへどうぞ!」
「佳澄さんはじめまして。今回は素敵なご依頼をありがとうございます。よろしくお願いしますね」
 空いた席を示した春苑 佳澄(jz0098)に礼を言って席に着いた。

 それにしても、今回はほぼ女子会仕様である。
 例外は暮太のほか、壁際に少し離れて立っているランベルセ(jb3553)だけだ。

(俺も女装した方がいいのかな‥‥?)
 自然とそんな考えが浮かぶ暮太。『今日は』女装していません。


「俺は我が蒼が行くというから行くだけだ、行き先に異論を言うつもりはない」
「我が蒼?」
 ランベルセの言葉に、佳澄が首を傾げた。
「おお、ランゼは何故か私のことをそう呼ぶのでな、気にしないよろし」
 戒の返事に、さらに首を傾げる。
「ランゼ?」
「こいつは、俺の名前を一向に覚えない‥‥気にするな」
 ランベルセがあきらめ口調で言った。


 机の上には、菊開 すみれ(ja6392)が集めてきた旅行パンフがたくさん並べられている。暮太はノートパソコンを開いてセッティングを始めた。
「まずは、行き先を決めないとね。海か、山か‥‥」
 神埼 晶(ja8085)がパンフをいくつか取り上げながら言った。
「‥‥最近暑いから、涼しい場所が好ましいの」
 橋場 アトリアーナ(ja1403)がふぅと息を吐いた。
「春苑さんはどこか行きたい所あるの!?」
「春苑さんも行きたい所ちゃんと言うの」
 晶、それに神埼 律(ja8118)の姉妹が佳澄にも話を振る。
「あたしは、体を動かせるのがいいかなあって」
「せっかくタダだし、美味しいものいっぱい食べたいです」
「山の幸、海の幸‥‥悩む所ね」
 あやめの言葉に、晶は唸った。

「私、肩こりが酷くてですね、温泉に行きたいのですよ!」
「温泉もいいなあ」
「宿泊可能な所には温泉旅館も結構ありますね」
 すみれの言葉に暮太が答えると、戒がぱっと手を挙げた。
「温泉旅館──枕投げがしたいです!」
「わ‥‥楽しそうです!」
「それなら、旅館の方がいいですよね。畳だと雰囲気でそう」
 佳澄が真っ先に賛成し、あやめも頷く。
「確かに、ホテルはやめておいた方が無難だろうね」
 と静流。
「ではとりあえず、宿泊先は温泉付き旅館ということでいいですか?」
「出来るだけ広い和室があるところがいいの。みんなで枕投げ出来るように」
 アトリアーナが付け加えた。

「ふっふっふ、当日は私の華麗なる枕投げテクニックをご覧に入れよう」
「受けてたつよ、戒姉!」
 戒と晶が早速火花を散らしている。
「撃退士の身体能力でやると洒落にならん気もするが‥‥流石に加減は心得ているか」
「‥‥どうかな」
 ふと芽生えた不安を脇にどけようとする静流に、ランベルセは戒のことをじっと見ながら言うのだった。


 参加者の意見は山が優勢のようだ。
(海は地元が売りだったし、俺も余り馴染みのない山が気になるな)
 暮太がネットで検索をかけている。
「あっ、ここなんかどうですか?」
 そう言って見せたPCの画面には、栃木県・那須高原が映し出されていた。
「高原なら、きっと涼しいの」
 アトリアーナが頷く。すみれが思い出すように顎に手を当てた。
「那須高原といったら、アルパカですね」
 あの辺りは原産地である南米高地と環境が近いらしく、アルパカのいる牧場がいくつかあるのだ。
「アルパカ、実物見てみたいです!」
 暮太は目を輝かせた。

「でも、水遊びもしたいですよね‥‥」
「海と山、どちらも行けるような場所を探して別れるという手もあるが‥‥」
「そんな場所、ありますか?」

 全員の希望を取り入れようとすると、なかなか相談はまとまらない。
「こう小さいものが集まってやかましくしていると何か思い出すな‥‥」
 ランベルセは少し離れた位置で相談の様子を眺めていた。

「‥‥ああ、あれだ。ツバメの巣」
「何が?」
 独り言に返事が返ってきた。晶はなにやらたくらみ顔で、ランベルセの隣に寄る。
「ランベルセ、『将を射んと欲すればまず馬を射よ』って言葉、知ってる!?」
「‥‥?」
「つまり、戒姉と仲良くなりたいのなら、まず私と律姉に親切にするのが良いってことよ」
「ふむ」
 晶はランベルセから視線をはずした。
「ああ、なんだかポテトチップスが食べたくなってきた‥‥」
 ちらりとみた。
「ポテトチップスとコーラが‥‥」
 またちらり。
「いいだろう。だが馬を射るわけではないぞ」
(年少のものには優しくしてやれと教えられたからな)
 ランベルセは立ち上がると、そのまま相談中の戒のもとに歩み寄って‥‥。
「七種、ポテトチップスとコーラ」
 華麗なスルーパスを決めた。いや決めちゃダメだろ。
「あ? 私をパシらせるなど百年早いわ!」
 真顔のランベルセにでこちょっぷがずびしと飛ぶ。
「‥‥晶、百年待てるか?」
「待てるわけないでしょ!?」
「さすがに冗談だが。‥‥いや、わからないんだ。それが何か。見たことはあるかもしれないが記憶にない」
 表情からすると本当のようだ。ランベルセは食事を摂るという習慣がまだ馴染まないらしい。
「もう」
「ところで百年後でも同じことを言いそうだな、我が蒼は」
 ランベルセはまた相談へと没頭している戒の横顔を眺めながら、どこか満足そうに呟いた。


 そんなやりとりの間に、相談もだいぶ進んだようだ。

「山の温泉地なら、きっとすぐ近くに渓流があるの」
「あ、じゃあ川で水遊び出来るんじゃないですか?」
「むむ、なら今回は海は外しちゃっても良いかも」
「ではこの辺りで、条件に合う旅館を探してみましょうか」
「ご飯の美味しそうなところがいいですね」
 暮太が提携の旅館を検索するのをあやめがパンフ片手に覗き込む。
「渓流行くなら釣りしようかな」
「魚を釣って、その場でバーベキューというのも良いかも知れないな」
 戒と静流はそんなことを言い合う。
「山は鍛錬にもいいと思う。プランを練りますの」
「鍛錬! あたしも一緒にしたいな」
 アトリアーナと佳澄は顔を並べて地図を見る。
「‥‥一度は、滝に打たれるということもしてみたかったのですの、ロマン的に?」
「新しい技を閃いたりしちゃうかも!」

「こことか、いいんじゃないでしょうか?」
「お、どれどれ?」
 暮太が再びPCの画面を全員に向けた。
 画面には、いかにもな純和風の温泉旅館。団体向けの広い和室があり、料理は地元の食材中心の地産地消。お風呂は源泉掛け流し。立地は高原の中では端の方だが、その分山に入るのも簡単そうだ。
「車があれば、牧場に行ったりもできますね」
「枕投げも──出来ちゃいそうですね!」
 みんな満足そうだ。
「では、ここに決定ということで」
「みんなのやりたいこと、まとめましょうか」
 佳澄がこれまでの相談ででた意見をまとめていくと──。


 ・牧場でアルパカ
 ・渓流で釣り
 ・川辺でバーベキュー
 ・水遊び
 ・山で鍛錬(滝修行?)
 ・旅館のお料理・温泉
 ・みんなで枕投げ!


「結構、盛りだくさんですね」
「二日目もあるし、何とかなるだろう」
 静流が佳澄の肩に手を置く。

(自然も多そうな所だし、純和風の旅館になって良かったの)
 律はパンフレットを眺めつつ。
「これは旅館の浴衣が楽しみなの‥‥。藤白さんとか、静流お姉さまとかは特に似合いそうなの」
「え、私ですか?」
「特別似合うということもないと思うが‥‥」
 ぎらりと目を光らせる律。さりげなく静流のことをお姉さまと呼んでいる。
「こういうところの山村とか、陰陽師の源流になりそうな習俗なんて残ってたりしそうなの」
 突っ込まれないようにとまたパンフレットを見て呟くと、後ろからランベルセが声をかけてきた。
「律も陰陽師を専攻していたか?」
 律は少々驚きながらも、首を振る。
「専攻は鬼道忍軍なの‥‥でも和のものが好きだから、そういうのも興味はあるの」
「そうか。よかったらいろいろ聞きたい」
 資料を漁るだけでは足らなくてな、とランベルセ。二人はそのあとしばらく陰陽師談義に花を咲かせた。

「さて、今日決められることはこんなところかな。‥‥あまりガチガチに計画を練るのも窮屈だしね」
「あーっと‥‥現地まではどうやって行くかね?」
 戒が大事なことを思い出す。
「避暑地は車があった方が何かと便利ですよねー」
「運転なら俺がやりますが‥‥」
「それなら、紘乃さんに相談してみますね」
「お? なら春苑氏、頼んだ!」
 交通手段は相談の結果次第ということになって、その日はお開きとなった。



 数日後。暮太の運転で、一行は島外のショッピングセンターまで買い出しに来ていた。
「車、貸してもらえて良かったですね」
 佳澄の伝手で、全員乗れるワゴンタイプの車が用意された。旅行本番も貸してもらえるとのことだ。
「明石氏、運転うまいんだな!」
「地元は車社会でしたから。撃退士になる前から免許は持ってましたよ」
 戒が言うと、暮太は柔らかな笑顔を浮かべた。
「帰りは運転代わってもいいな、アクセル全壊な華麗なるドライビングテクニックをですね」
「‥‥全開?」
「‥‥むしろ、全戒?」
 全員の目線が戒に集まった。
「七種は座っていろ」
「‥‥ハイ」



 日焼け止めやお泊まりセットといった必要な雑貨を購入した後は、水着の販売エリアへ。

「ぜったい似合うと思うの。せくしーなの」
 律がすみれに差し出したのは、胸元が大胆に開いたビキニ。スタイルに自信がなければおいそれとは手を出せない領域だ。
「うーん‥‥私はこの辺でいいです」
 だがすみれはあまり乗り気でないようで、手を伸ばしたのは赤字で『SALE!!』が大きくかかれた棚だった。
「でもそれ、サイズ合ってないの‥‥特に胸が」
「とりあえず着れれば特には問題ないかと? 下着もそうですし」
 さりげない発言に周囲がざわついた。
「‥‥ちょっとこっちなの」
 律がすみれを試着室へと連行した。

 ‥‥‥‥。

「驚愕の事実が判明したの」
 すみれがつけていたブラはCカップ。‥‥だが実測値はFカップあることが律によって確認された。
「だってワゴンに積んであるから‥‥」
 大きいサイズは安売りが少ないんです、とすみれは口をとがらせている。
「C‥‥F!?」
 戒がすみれをガン見している。
「戒姉‥‥」
「なんだね晶、言いたいことがあるならはっきりいえやっぱりいいです」

(あ‥‥そうか)
 暮太は漏れ聞こえてきたその会話で、戒に感じていた違和感の正体に気がついた。
(あれって女装させられてるときの俺の胸元‥‥つまりあれは)

「あ、あんまんありますしおすし!」
「多少は盛った方が、形がよく見えると聞いた気がします」
「でもちょっと盛りすぎじゃないです? さすがに違和感ありまくり‥‥」
 あやめのフォローもばっさり切り捨てられて、戒は涙目だ。

 暮太はそっと遠くから戒に同情した。



 水着を決めた戒は、釣り道具を買いに別エリアへ。
「我が蒼がするというなら俺もそうする」
 ランベルセがついてきた。

 二人並んで釣竿を選びながら、戒はランベルセにあることないこと吹き込んでいた。
「V兵器な釣竿ってのもあってな‥‥光纏して釣ると強制的にヌシとのイベントバトルが」
「それはここには売っていないだろうな。ところでヌシとは?」
「釣り上げると伝説があれでそれで以下略」
 あんまり深くは考えてなかった。ランベルセはふっと笑うと、戒の横顔に向けて言う。
「おまえの持つV兵器のどれでも、俺は釣れるがな」
「あー? ランゼが釣れても嬉しくないわ、食うとこないし」
「‥‥そうか」
 まあ今は、これもいいか。

 二人で、釣竿を選ぶ。



「ぜったい似合うと思うの。せくしーなの」
 一方水着売場では、律が今度はアトリアーナに水着を薦めていた。
 すみれのときと同じ文句で手にしたそれは──スクール水着であった。
「‥‥なんて、冗談なの」
 といいつつ、スク水をアトリアーナに手渡す。
「これは、佳澄が着るといいの」
「そういえば、春苑さん去年はスクール水着だったよね」
「あ、あのときはこっちへ来たばかりであれしかなかったの!」
 晶に去年の海でのことを思い出されて、佳澄は顔を赤くした。

「‥‥これがいいですの」
 律が示したいくつかの水着から、アトリアーナはひとつ選んだ。
「いいと思うな、かわいいし。アトリちゃん普段着もかわいいの、多いよね」
「‥‥ひらひらが多い方が、動くとき気にかけないといけないけど、好きですの。次は佳澄の水着、選んであげますの」
「あたしも、かわいいのがいいな‥‥晶ちゃんは?」
「私はあんまり派手じゃないのがいいかな‥‥スポーティなヤツがいい!」

「藤白さんも選んであげるの」
「かわいいのが多くて、迷っちゃいますね‥‥って、え!?」
 律に笑いかけたあやめは視界の端の光景にぎょっとなった。
 さっきまで男性用の売場にいたはずの暮太がいつの間にかこちらにいて、水着を手に取ってみていたからだ。
 一応、タンクトップとパンツのような、男性が着ても違和感の少ないものを見ているが‥‥それだって女性ものである。
「ええと‥‥お姉さんの分、とかでしょうか?」
 あやめの言葉に、律はしかしにやりと笑みを浮かべる。
 そのまま暮太のもとに歩み寄り、肩を軽く叩いた。
「あっ‥‥これは」
「大丈夫なの、私は“そっち”にも理解あるの」
 こっくりと頷いた。



「あやめちゃんは、サロペット付きのかわいいやつで‥‥はい、帰りも結局、明石先輩が運転してくださいました。‥‥当日も、お任せしちゃっていいのかな」
「一応、私たちもカリキュラムは受けているが‥‥公道での運転経験はそれほどないからね」
 その夜。佳澄は静流に電話をかけていた。
「それにしても、こうやって計画まで自分たちで立てての旅行というのは久々な気がするね」
「えへへ、なんだかわくわくしますね!」
 端末から聞こえてくる弾んだ声を聞きながら、静流は微笑む。
「楽しい旅行に出来るといいね」



「よし、完成!」
 自室で晶はぐんと伸びをした。
 机の上には、お手製の『旅のしおり』が人数分。製本はホチキス止めだが、自作のイラストも入った力作だ。
「情報はネットのコピペだけど‥‥戒姉希望の釣り情報もばっちり入れたし」
 明日、早速みんなに配ろう。喜んでもらえるといいな。

「ああ、早く当日にならないかな!」

 準備の日々も楽しいけれど。
 指折り数えて、待つは当日。

 関東はもう梅雨明けだ。旅行の日はきっと、すがすがしく晴れ渡っているに違いなかった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
あんまんマイスター・
七種 戒(ja1267)

大学部3年1組 女 インフィルトレイター
無傷のドラゴンスレイヤー・
橋場・R・アトリアーナ(ja1403)

大学部4年163組 女 阿修羅
リリカルヴァイオレット・
菊開 すみれ(ja6392)

大学部4年237組 女 インフィルトレイター
STRAIGHT BULLET・
神埼 晶(ja8085)

卒業 女 インフィルトレイター
京想う、紅葉舞う・
神埼 律(ja8118)

大学部4年284組 女 鬼道忍軍
撃退士・
ランベルセ(jb3553)

大学部5年163組 男 陰陽師
撃退士・
藤白 あやめ(jb5948)

大学部3年224組 女 ダアト
皆とはだかのおつきあい・
明石 暮太(jb6009)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプB