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マスター:嶋本圭太郎
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/21


みんなの思い出



オープニング

 春苑 佳澄(jz0098)は、一日の授業を終え、島のはずれにある公園を散歩していた。
「やっと暖かくなってきたなぁ‥‥」
 名字に春の字があるからか、佳澄は春が好きである。夏も秋も冬だって好きなところはあるけれど、外を歩いているだけで無条件に嬉しくなる、そんな気分になるのは春だけだ。
 予報ではこれからしばらく暖かいというが、まだまだ寒い日も来るのだろう。でもそうやって気温が安定しないのもこの時期特有のことなので、こうやって春が近づいてくるんだと思えばなんだか楽しい。

 公園には、沢山の桜が植えられている。今はまだ堅いつぼみがついているだけだが、じきにそのどれもが花を咲きほころばせて、本格的な春の到来を告げるだろう。
 それと同時に、今は人の少ないこの公園も花見の客で大賑わいになるはずだ。
 佳澄は少し先の確かな未来を想像し、桜の様子を一本一本確かめながら歩いていた。
「あれ‥‥?」
 と。目の前に、枝きれが落ちている。
 そこそこ太い、しっかりした枝だ。枯れて落ちたという感じではない。周りを見ると、近くの桜の木に、枝が折れた跡がはっきりと残っていた。
「誰だろう、こんなことするの」
 花見の席でいい気分になったあげくに枝を折る酔客の話は聞いたことがあるが、花も咲かないうちからというのはあまり聞かない。枝を拾い上げると、つぼみがついていたであろう枝先はぼろぼろ。見る影もなくなっていた。
 何でこんな事、と思いつつ、拾いはしたけどこれどうしようと考えていると──。
 メキッ、ベキッ、と音が聞こえてくる。
 誰かが、枝を折っている?
 そんなこと、やめさせなくちゃ!

 まだまだ寂しい色合いの桜並木を駆け抜ける。太く立派なソメイヨシノの裏っ側。枝にとりついている黒い影。
「こらーっ!」
 相手が誰だとかは関係ない。悪いことをしてる人は、注意しなくちゃ。
 佳澄の声が届いたのか。影は身じろぎして、枝から離れた。
 そして、その姿を露わにした。
「ひえっ」
 思わず、声がでる。木にとりついていたのは人ではなかった。
 ずんぐりと丸い。そして長い。
 佳澄の顔ほどもある巨大な目玉をぐるりと向けてそこにいたのは、あまりにも巨大な──虫?
 やけに鮮やかな緑の体表。お団子をつぶしてくっつけたみたいなうねうねした体躯は。
 芋虫だった。どう見ても。
 さらに、木の上からもう一匹。ぼとり、と落ちてきた。同じような緑の体表に、全身剛毛が生えている。毛虫だ。
「な、何なの!?」
 さらにさらに、別の木の影からもう一匹。こちらも毛虫だ。体表が赤黒い。いかにも「触れるな危険」と言いたくなる外見だった。
 全部で三体。一体一体が佳澄より大きい。どうみたって、これは。
 天魔だ。
 見ると、連中がとりついていた桜の木は枝が折られているばかりか、外皮がはがされて無惨な姿になっている。
 このままじゃ、桜の木が食べられちゃう!?

 佳澄はあわてて携帯を取り出すと、斡旋所へと電話を掛ける。
 芋虫毛虫は佳澄を一度は見たものの、何もしてこないと知るとまた桜の木へと張り付き始めていた。


リプレイ本文

「このままではお花見が虫食いでマッハですっ! 一刻も早く駆除しなくちゃですよっ!」
 現地からの連絡を受けて集まった面々。中でも黒瓜 ソラ(ja4311)は今にも飛び出しそうな勢いで足踏みしている。
「カスミはとてもせっかちさんだと聞いたのでぃす。可能な限りバビューンと早く行きたいのでぃす」
 通報者である春苑 佳澄(jz0098)を心配するNoA(jb4570)。
「でも人払いはお願いしておきたいのでぃす。危ないのでぃす」
「そうだね‥‥春苑君には私から連絡しておこう。ノア君は人払いの手配を頼む」
「了解なのでぃす」
 天風 静流(ja0373)が携帯を取り出す。NoAも頷いてそれに倣う。
「じゃあボクは、桜の修復を頼めるように今のうちに依頼しておこうかな☆」
 ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)が言うに至って、ソラは待ちきれないと言ったばかりにむふー! と鼻息を荒くした。
「そちらはおまかせしますので! ボクは現地に急ぎますっ」
「ギアも行こう」
 蒸姫 ギア(jb4049)が同意する。
「本来なら準備も必要かもしれないけど、百聞は一見にしかずというし」
 桜の木や連絡をくれた子も心配だし‥‥とは、口には出さないギアである。



 公園では芋虫毛虫が思い思いの木に群がってのんびり食事中。
 ‥‥のんびり、なのは傍目にそう見えるだけで、実際には結構な速度でもりもり食べているのだが。
「ああもう、先輩たちまだかな?」
 桜の木たちがみるみる丸裸にされていくのをみて、佳澄は焦れる。静流から連絡を受けて自重してはいるものの、目の前で護るべき桜が食べられていくのはなかなか堪えるものがある。
 と、そこへ。
「‥‥うぉぉぉ和の心をやらせはせんぞぉぉ!」
 なんだか魂の叫びっぽい声が向こうから近づいてきた。

「サクラダ! お仲間ですねっ! 助太刀しますよぅ!」
 斡旋所からまっすぐ駆けつけたソラは、佳澄を見つけるなり光纏し、戦闘準備。
「ファミリア! さぁこの虫野朗! かくごしやがれーですっ!」
 やたら語呂の良い口上を食事中の芋虫どもに投げつけると──いそいそと狙撃場所を探し始める。だって狙撃系インフィだから。
 ソラと一緒にやってきたギアも、おとなしく待っていた佳澄をみて安堵の表情になる。
「お待たせ、無事なようでよ‥‥」
 そこまで言って、あわてた様に表情を引き締める。
「いや、別にギア、心配なんかしてなかったんだからなっ」
「?」
 突然のツンに首を傾げる佳澄。ギアは取り繕うように桜の方を見て。
 そしてその惨状に顔をしかめた。
「酷い事を‥‥ギア、絶対に許さない!」
 雷帝霊符を顕現させたギアを見て、佳澄も戦闘開始とばかり三節棍をその手に出現させる。
 が、いよいよ飛び出そうとしたところで。
「相手がなにをしてくるかわからないしィ‥‥遠距離攻撃で攻めた方がいいわよォ?」
 いつの間にか黒百合(ja0422)がそこにいて、佳澄を諫める。
「綺麗な桜の下には死体が眠るって言うけどォ‥‥この程度の連中じゃ完全に役不足ねぇ‥‥」
 芋虫どもを不敵に見やる。
「せめて桜のための堆肥に成り果てなさいィ‥‥♪」
 そう言うと彼女も光纏し、雷霆の書の表紙をめくった。


 黒百合とギアの放った魔法の雷が赤毛虫の近くを穿つ。桜の木には被害を与えぬよう加減された攻撃だったが、食事を中断させる効果はあったようだ。
「狂戦士の魂の如くに! 実際ずっとボクのターン! ファイア!!」
 さらにソラの放った銃弾が赤毛虫を捉えるが、剛毛に阻まれたのか手応えが薄い。
「‥‥むむ?」
 それなら、と今度は別の木に張り付いている芋虫をねらう。柔らかい肉にアウルの弾丸がめり込んで、ブチュッと体液が吹き出すのが見えた。
 人によってはわりとグロ指定な光景だ。
 芋虫毛虫は三体それぞれに、食事を邪魔する撃退士たちを敵と認識したようだった。もぞもぞと蠢きながら、ゆっくりと桜の木から身を放す。
 その間に、後続の三名が追いついてきた。
「桜を食べるか、これから咲き乱れる花だというのに‥‥無粋だな」
「まったくでぃす。邪魔で醜い虫はバシッと退治なのでぃす」
 静流とNoAが口々に言えば。
「ふん、イモムシ毛虫‥‥見方によっては可愛い‥‥かも?」
 ジェラルドは独特の感想を述べる。確かに見ようによってはゆるキャラマスコットの亜種に見えなくも‥‥ないのだろうか。
「でも、桜を食べられたら‥‥お花見できないねぇ」
「そうなのですよ! お花見出来ないとご馳走ががが!」
 スナイパーライフルで毛虫を撃ちつつ、ソラが本音まみれの返事をよこした。

 いずれにせよ、味方の戦力は整った。後は公園を荒らす天魔を殲滅するばかり。
 ただ今回、皆準備は最低限に急いで駆けつけてきた。

 そんなときは、基本的なことを忘れることだって、ないわけではない。


「さァ、本格攻撃開始よォ‥‥♪」
 黒百合は召炎霊符に持ち替えると、赤毛虫に狙いを定めて少しだけ距離を詰めた。戦場は桜の木が文字通り林立しており、あまり長射程では射戦の確保が難しい。
 桜の木を護るのも今回の重要な目的の一つだ。こちらの攻撃で傷を付けるわけには行かない。
 黒百合が狙いを定めたのは赤毛虫。ほかの二体よりさらに巨大な目玉がぎょろぎょろと露出している。正面に立たないように注意して、彼女はそこを狙った。
 放たれた炎が狙い通りに赤毛虫の眼球を灼く。毛虫は目玉を動かして、黒百合を見た。
「‥‥?」
 一瞬、違和感を感じたがそれだけだ。
 続けざま、ソラがスコープ越しにその目玉を覗き込む。
「なーんか怖いです。あれですよね、妖気を感じます! ってやつで‥‥」
 赤毛虫が見つめ返してくる。カラス除けのバルーンみたいな、まん丸がぐりぐりとペイントされているだけのシンプルな目玉。
 見ていると吸い込まれそうになって、ソラは思わずスコープから一度目を離した。
「へ?」
 視界を暗闇が覆っている。そこかしこに浮かぶのはまん丸の目玉、目玉、目玉。
「と、とにかく撃ちます!」
 ソラはあわててライフルを構えなおすと、直近の目玉めがけて撃ち放った。

「うわっ!?」
 狙われたのはギアだった。間一髪躱すが、さらにその向こうでは。
「痛っ! の、ノアちゃん?」
「‥‥毛虫だと思ったらカスミだったのでぃす」
 同じように赤毛虫の目玉を狙ったNoAが、何故か佳澄を攻撃していた。
「なるほど。それがお前の能力か」
 あの目玉は、相手を幻惑する力を持っているのだろう。
 そうとわかれば。ギアは目玉を覗き込まないようにして、雷帝霊符を眼前に構える。
「‥‥いけ、蒸気の式よ!」
 ギアの叫びに応えるようにして生み出された雷が赤毛虫を打った。
 赤毛虫はその剛毛を逆立てて、撃退士たちを威嚇する。だがそれで怯む彼らではない。要は目玉を覗き込まなければいいのだ。
「イモムシ毛虫‥‥蝶に成って増えたら困るねぇ☆」
 果たしてこの天魔に変態の能力はあるのかは不明だが、この場で倒してしまえば関係はない。ジェラルドは赤黒い闘気を陽炎のようにその身に纏わせて、アサルトライフルを連射する。
 さらにその奥から強烈なアウルが赤毛虫を襲い、剛毛を突き破って体液を噴出させた。黄泉の力を乗せた静流の、銃による一撃だ。
 さすがに図体がでかいだけあって生命力が高いらしく、赤毛虫はそれでも動きを止めない。半身を持ち上げると、ぱっくりと開かれた巨大な口が顕わになる。
 とはいえ大人しく喰われてやるものなどいるはずもない。皆距離をとり、遠目からの攻撃に徹している。
 最後は黒百合がまたしても敵の眼球を灼く。最初は目を合わせてしまった彼女だが、幻惑に抵抗した後は同じ轍は踏まなかった。
「はい、毛虫の丸焼きの完成ェ。次に料理されたいのは誰かしらァ‥‥♪」
 どうと横倒しになった赤毛虫を見下ろして、黒百合は満足げな笑みを浮かべる。まずは一体。

 味方が赤毛虫に集中している間、ほかの二体が攻撃を仕掛けてくる様子はなかった。
 桜の木の上に一体、枝にからみつくようにして巨大な毛虫がつぼみをもりもり食べている。
「ノア達を無視してるんじゃねーでぃす」
 まずは木から引きはがそうと、面々が遠距離武器で狙撃する。赤毛虫よりは小さな目玉が動いて彼らを見た。
 すると唐突に、毛虫の身体が落下する。重なり合った木の枝は、音を鳴らすどころか揺れることすらしなかった。
 阻霊符を発動しているものがいないのだ。
 食事から攻撃に切り替えた毛虫は、桜の木を邪魔な障害物として認識したらしい。
 枝を透過し、地面に落ちた毛虫は剛毛を逆立て、次にはその毛を一斉に撃ち出してきた。
「わっ!?」
 樹上の敵を攻撃しようと近づいていたところへの攻撃。佳澄は腕を前に出して顔を護るが、針のように固い毛は容赦なくその腕に突き刺さる。
 一方黒百合は舌打ちすると後方へと跳んだ。身代わりのジャケットが敢えなく穴だらけになる。
「危ないわねェ‥‥!」
 くるりと一回転して着地した彼女は、続けて横に動いて反撃を窺う。
 一方、幻惑から復帰したソラは毛虫を取り囲む仲間からさらに距離をとる。
「天魔殺すべし、慈悲はない! インガオホー!」
 別の桜の影に身を隠し、ライフルの照準を毛虫に合わせんと、そのとき。
 まさにその桜から、芋虫がぬっと姿を現した!
「アイエエエ!?」
 赤毛虫と同様に、腹に開いた巨大な口が目にはいる。次の瞬間、ソラは押し倒された。
「ソラちゃん!」
 佳澄がそれに気づき、援護に向かおうとするが‥‥。身体がしびれて動かない!
 毛虫の攻撃によって麻痺を受けた彼女に、今度はその毛虫がのしかかろうと向かってくる。
 だがそれは、死角からの一撃によって防がれた。毛虫ははじかれて転がり、距離をとって再び起きあがる。
「ありがとう、黒百合‥‥ちゃん?」
「どういたしましてェ♪」
 ちょっと呼び方に戸惑いつつ、援護の主に礼を言う。
 外見は佳澄とそう変わらない幼さを残す彼女だが──そして学年は下だが──実年齢はそんなこともないらしい。
 完全に芋虫の下敷きにされていたソラは身体をがじがじ齧りつかれながらもなんとか自力で脱出した。それを見て、メンバーは毛虫の方へと改めて攻撃を集中する。
 薙刀に持ち替えた静流が思い切って接近し、毛虫を薙ぎ払う。墨を塗ったかのような黒の軌跡が描かれて毛虫を打ち、その動きを止める。
 そこへ、ギアが精神を集中させ。
「蒸気も圧力を上げれば刃になる‥‥止めだっ蒸気の式よ!」
 生み出された風の刃が剥き出しになっていた腹を襲い、そのまま背中へと抜ける。毛虫はまっぷたつに切り裂かれ、体液を飛び散らしながらその場に倒れた。

 残るは一匹。動きの遅い芋虫である。
 芋虫は半身を起こして口を見せると、何かの液体を吐きだしてきた。
「おっと‥‥イモムシの定番だねぇ♪」
 だがそれは想定の範囲内。ジェラルドは落ち着いて躱し、反撃の弾丸を叩き込む。毛虫とは違って柔らかい体表は簡単にはじけ、体液を汚らしくまき散らす。
(ペチペチするのは正直、飽きたのでぃす‥‥)
 狙われないよう、立ち位置を変えながら武投扇で遠距離攻撃するNoA。本音を言えばさっさと飛び込んでバチンとぶん殴ってやりたいところだが、汚れるだけならまだしもあの体液には毒なり酸なりなにかしらありそうである。
 ほかのメンバーも彼女同様、距離をとって攻撃していた。木陰に陣取ったソラが今度こそライフルを撃ち放ち、そのたびに芋虫が新しく体液を飛び散らせる。
「さて‥‥そろそろ終わりにしよう」
 静流が再び薙刀を手に、距離を詰める。芋虫は触覚を蔓のようにのばして静かに気を練る静流を打ったが、それだけでは到底彼女を止めるには至らなかった。
 裂帛の気合いと共に、神速の突きが放たれる。
 輝く蒼の光が爆発的に広がって、芋虫はその光にはじかれるようにして吹き飛ばされた。



 戦いが終わり、七人は被害の様子を見て回る。公園に桜はたくさん植わっており、総数からすればそこまで深刻な被害ではなかったが、やはり結構な数の桜に被害の跡があった。
 特に、佳澄が芋虫どもを見つけた周辺の桜は手ひどくやられてボロボロだ。
「せっかく、つぼみがついてたのに‥‥」
 つぼみを食べ尽くされ、まるで枯れ木のようになってしまった桜を見上げて、佳澄は嘆息する。
 その肩をぽんと叩いたのはジェラルドだ。
「大丈夫。また来年‥‥花をつけるさ♪ 桜は、春に必ず花をつける‥‥。その生命力こそが‥‥ボクらを勇気づける花こそが、桜の愛されてる由縁。ボクはそう思うんだよねぇ♪」
「ジェラルド先輩‥‥」
 仰ぎ見た佳澄に向かって、にっこり微笑む。
「あ、もしよければ来年、ここで一緒にお花見しよっか♪」
「あらァ、来年まで待つことないんじゃないィ?」
 声をかけられ振り向くと、黒百合がコンビニの袋を捧げて立っていた。
「お、お団子ですね!」
 袋を覗き込んだソラが歓声を上げる。黒百合は笑顔で応えると、袋の中身を広げ始める。お団子のほかにも和菓子やお茶やジュースや‥‥。
「ほらほら、折角来たんだもの。想像上の桜を思ってちょっとばっかし楽しみましょうよォ‥‥♪」
 たとえ花が咲いていなくとも、その様を想像することは出来るのだ。

 戦いの労をねぎらって、紙コップをつきあわせて乾杯する。空はよく晴れ、暖かい。
 もうしばらくの時が経てば、無事だった桜は花を付け、この公園もたくさんの人で賑わうようになるだろう。
 それでも‥‥つぼみを食べられたこの木が今年花を付けることはない。
 ギアは近づき、桜の幹をそっと撫でる。
(桜の美しさと儚さ、ギア好きだ‥‥)
 ほんの一時の美しさ、それさえ奪われたこの木に、何かしてやれることはないだろうか。
(ギアの治癒膏で回復してあげられるかな?)
 桜の木に暖かな回復の力を注ぐ。アウルの光が優しく伝えられていく。
 術式を終えて振り返ると、ほかの全員がこちらを見ていた。ギアは焦る。
「‥‥いや、別にギア、お花とか好きなわけじゃ無いんだからなっ」
 照れたようにそっぽを向いて。
「わあ、見て!」
 だけど六人は視線をはなさず、桜を見ている。ギアも改めてそちらを見ると──。
 桜が、光っていた。
 ギアの送り込んだアウルの輝きが枝の先まで運ばれて、光を放っていたのだ。
 まるで、花を付けているかのように。
「この木も、またきっと花を付けるようになるのでぃす」
「ああ、そうだな」
 NoAの言葉に、静流をはじめ、皆頷く。

 本物の桜の花よりも遙かに短く儚い、光の花。
 それは七人の前にだけ現れて、ゆっくりと消えていったのだった。


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: ツンデレ刑事・蒸姫 ギア(jb4049)
重体: −
面白かった!:3人

撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
インガオホー!・
黒瓜 ソラ(ja4311)

大学部2年32組 女 インフィルトレイター
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
ツンデレ刑事・
蒸姫 ギア(jb4049)

大学部2年152組 男 陰陽師
撃退士・
NoA(jb4570)

高等部2年11組 女 阿修羅