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マスター:嶋本圭太郎
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:25人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2013/02/27


みんなの思い出



オープニング

 早朝五時五十分。今の時期、まだ外は暗い。
 そんな中コンビニ店内は煌々と明かりが灯り、来客を迎えている。
 迎える客がいないからといって、電源を落としたりはしない。その方が経費節減になるよなあ、なんてつい思ってしまうことはあっても、本当に実行したりはしない。

 店内に流れる音楽を心の友として、店長は一人、熱心にカウンターを磨いていた。
 もちろん来客がくれば中断しなければならないが、幸か不幸か店長が作業を始めてから三十分あまり、店内どころか店前を通る人さえいなかった。

 ここはハッピーストア久遠ヶ原支店。深夜に人が少ないのはどの店も似たようなものであって、決してここが場末だからという訳ではない、と店長は心の中で呟く。

 ピンポーン、来店を知らせるチャイムが鳴った。
「おはようございます」
「やあおはよう、モブ子(愛称)」
 やってきたのは来客ではなく、これから勤務に入る女の子だった。
「今日は昼までだったね」
「はい。このあと学園に顔を出さないといけないので」
 珍しく学園の制服姿のモブ子はそう答えてバックルームへと姿を消した。



「そう言えば、今日最終日でしたね」
 レジに入ったモブ子は、入り口の一番目立つ一角に設置された売場を見た。『Lovely Choclate』と銘打たれたカラフルなPOPを目印に、バレンタインコーナーが展開されている。
 まだチョコは、結構残っていた。
「まあ‥‥このくらいは、想定のうちだから」
 店長が笑顔をひきつらせてそう言った。こちらはまだ何も言ってない。
「実際、モブ子の調査のおかげで少ないロスで済みそうだよ」
「そういえば、そんなこともしましたね」
 バレンタインに向けた久遠ヶ原の恋愛事情調査‥‥という名のアンケートをとったのは、昨年の秋頃だっただろうか。
「四ヶ月も立てばまた様変わりしてそう──とは言われましたけど、そうですね」
 近頃は天使や悪魔の姿もよく見かけるようになったし、以前とはまた変わっている部分も多そうだ。
「今は、どんな感じなのでしょう」
 今日一日、ちょっと注意してみてみようかな──モブ子はなんとなく、そう思った。

 ピンポーン。
「いらっしゃいませ」
 さて、今日の久遠ヶ原はどんな一日だろうか。


リプレイ本文

「いらっしゃいませ」
 モブ子は軽く一礼してレジを打つ。美具 フランカー 29世(jb3882)が手作りチョコ作成キットを購入した。
 彼女がこの品を買うのは今日が始めてではない。先日もモブ子がレジを打ったから覚えている。
 美具の方は会計をすませると、顔を背けて、取り繕うように。
「爆発、したのじゃ‥‥」
 そう言い残して、店を出ていった。
(‥‥爆発?)
 ありがとうございましたと声かけしながら、モブ子は内心で首を傾げた。


 【LC】コーナー前で二人の女性がチョコを選んでいる。
「けいと姉さま、こういうイベント事ボク今まで経験なくて‥‥どういうのをあげたら喜ぶのでしょうか」
 並べられたチョコをひとつ取っては戻し、取っては戻しを繰り返すシャルロット(ja1912)。
「僕もこういうのは慣れてないので役に立てるかどうか‥‥」
 一緒に選んでいる佐倉井 けいと(ja0540)も自信なさげにうーんと唸った。
 が、頼られているのを無下にはできず、コホンとひとつ咳払い。
「とりあえず、ハート型は避ける方がいいかもしれない。特に義理は。本命は、少し高めのチョコとかだろうか‥‥購入後にラッピングし直して、可愛く仕上げるのもありかもな」
「なるほど、さすがは姉さまです」
 心底感心した体で、シャルロットは首を上下に動かした。
「ところで‥‥今日は部活の男性陣に配るチョコを買いに来たのですよね? ボクたち」
「えっ? あ、ああ。もちろんそうだぞ」
 唐突に確認されて、けいとの返事はちょっと裏返る。シャルロットもそうですよね、といいつつ、真剣な目つきでチョコを選ぶ──。

 二人それぞれに人数分のチョコをかごに入れ、レジへ向かう。まずはけいと。モブ子が澱みない手つきで商品登録していく。
「あれ、姉さま今の‥‥」
 ひとつだけ値段の桁が違うチョコが混じっていた。シャルロットが思わず指摘すると、けいとはあからさまに動揺する。
「‥‥こ、これは、その‥‥日頃のお礼というか、その‥‥!」
 かと思えば、シャルロットのかごの中にもやっぱりひとつ、明らかに他とは別物なチョコが入っていて。
「あの‥‥いえ‥‥これはなんというか‥‥その‥‥」
 恥ずかしそうに目を逸らして、口の中でもごもごと言い訳をするシャルロット。
 二人はしばらくそうやって互いに恥ずかしがっていたが。
「さ、さて、部室に配りにいこうか、シャル君」
「そ、そうですね、けいと姉さま」
 二人にっこり頷きあう。どうやら、お互い触れないことにしようという協定が無言のうちに結ばれたらしかった。


「こちら発送をお願いできますか?」
 勤務時間もそろそろ終わりが近づいてきたころ、楊 玲花(ja0249)と周 愛奈(ja9363)が来店した。
 二人がモブ子に見せたのは、きれいにラッピングされた──。
「チョコレート、ですか?」
「ええ。実家の父や兄弟に送りたいので」

 玲花に伝票を書いてもらう間、愛奈とモブ子でチョコを梱包していく。
「‥‥玲花姉様、ありがとうなの。美味しそうなチョコが出来たの」
 箱の中に大事そうにチョコを収めながら、愛奈。
「‥‥父様達も楽しみにしているだろうから、きちんと送らないとね」
 伝票にペンを走らせて、玲花は慈しむような微笑みを浮かべる。
「お二人は、ご姉妹ですか?」
「従兄弟なの。‥‥どうかな、これでいい?」
 愛奈が答え、ガムテープでしっかり梱包した箱をモブ子に手渡した。
「‥‥父様の方がお菓子作りは得意なの。愛ちゃんが作ったのを父様、喜んでくれるかな?」
「‥‥とっても上手なのが出来たから、きっと叔父様も喜んでくれると思うわよ、愛ちゃん」
(何も、恋人同士だけの日というわけではないのですよね)
 二人の様子を見ながら、モブ子はそんな当たり前の事を思っていた。


 玲花たちと入れ替わりに、一組の男女が店内へと入ってくる。
「今日は彼女にチョコ貰っちゃいまして‥‥その後デートしたらもうキスをせがまれて大変でしたよ‥‥」
 『彼女』と口に出したのは女性のほう。アーレイ・バーグ(ja0276)は周りをはばからぬ声で田中 裕介(ja0917)に向かってしゃべる。
「10回超えた辺りから覚えてませんけど‥‥あんなにキスをして顎が疲れないかってぐらいせがまれましたねー」
 何ともあけすけな物言いに、モブ子ばかりでなく店内の他の客まで耳をそばだてる気配が伝わってきた。
「私も昨日は一日早いバレンタインでした。随分甘えられましたね。夜も激しかったですよ」
 柔らかい物腰の裕介も、さらりと際どいことを口にする。このまま放っておいたら、まさか午前中のコンビニで蔵倫が仕事をすることになるのだろうか! ‥‥いやそうじゃなく。
 だが、アーレイは話に乗ってきた裕介の顔をじと目で見ると、肩をすくめた。
「私がバレンタイン一週間前なんて微妙な時期に別れたの知ってるでしょうに。‥‥冗談ですよ。某国民的彼女なゲームを立ち上げただけの話です」
「いやあ、話を合わせた方がいいのかと思いまして」
 穏やかな笑みのまま、裕介が答える。どうやら二人とも現実の話をしていたわけではないらしい。そのことが分かると、周りの緊張した空気が霧散していった。
「まったくもう‥‥」
 ぼやきながらアーレイは【LC】コーナーの前に立つと、さっと目を通しただけで小さな小箱を手にとって、レジに向かった。
「五百久遠です」
「あ、袋は結構ですので」
 会計をすませると、シンプルなラッピングがほどこされたそれをそのまま裕介に差し出す。
「はい、義理チョコです。お返しはぺぷち1.5Lの箱でお願いします‥‥千久遠くらいで買えますから、三倍返しよりは手加減してるんですよ?」
「仕方ないですね‥‥考えておきましょう」
 裕介は苦笑しながら受け取り、二人は店を出ていった。


「そろそろ時間だね。モブ子、上がる前に店前軽く掃いてきてくれるかい?」
「わかりました」

 箒とちりとりを携えて店前にでると、玲花と愛奈の姿に、もう一人。
 愛奈と同年代の、小学生らしき男の子が二人と一緒だった。

「バレンタインは好きな人にチョコを渡す日なの。玲花姉様も礼くんも愛ちゃん、大好きなの。だから、プレゼントなの」
 愛奈は実家に送ったものと同じ手作りチョコを玲花に、そして楊 礼信(jb3855)にそれぞれ手渡した。
「ありがとう、愛ちゃん」
「じゃあ、私からも。‥‥これは礼の分ね」
 玲花も同じように小分けしたチョコを取り出すと、まず弟の礼信に。
「はい、これは愛ちゃんの分ね」
「玲花姉様、ありがとうなの!」
 満面の笑みで受け取った後、愛奈は覗き見るような上目遣いで礼信を見た。
「‥‥礼くんは愛ちゃんのこと、好きじゃないのかな?」
「‥‥叔父さんは叔母さんへバレンタインのチョコを送っていたというし、やっぱり、僕も用意しておいてよかったな」
 焦るでもなく頷く礼信。包みを二つ、取り出した。
「‥‥僕からのバレンタインのプレゼントだよ」
 ひとつは愛奈に。
「‥‥姉さんから貰えるのは分かっていたからね。これは純粋にお返しだね」
 ひとつは玲花に、それぞれ手渡した。愛奈は玲花の時と同じように笑顔で受け取る。玲花はちょっと驚いた様子。
「まさか礼から貰えるとは思わなかったわ。まあ、愛ちゃんへのプレゼントのお裾分けなんだろうけどね」
 そうはいいつつ、受け取って。
「それにしても叔父様に変なところが似てきたわね」
「まだ全然かなわないけどね」
 礼信はまんざらでもなさそうに姉にそう答えたのだった。



「へえ‥‥日本のValentinstagは、随分と華やかなもんだな」
 町の様子を眺めて、ヴィルヘルム・アードラー(jb4195)は呟く。傍らのフィン・スターニス(ja9308)も、同じように視線を巡らせる。
「ええ、皆楽しそうね。でもなんとなく‥‥そわそわしてるみたい。どうしてかしら?」
「ドイツとは違って、日本ではカップル以外でも贈り物をしたりするらしいからな。せっかくだ。俺たちも今日は買い物にでも行くか、フィー?」
「そうねヴィリー‥‥いろいろと見ていきましょうか」

「‥‥俺がいねぇ間に、もうこんなにでっかくなっちまってなあ‥‥」
「そうよ。あたし、これでもずっと大人になったんだから。子供扱いはもう卒業」
 感慨深げに呟くヴィルヘルムにフィンは言い、少し自慢げに胸を張る。
「そういう態度はまだまだ子供だけどな」
 すぐにヴィルヘルムに指摘されて、頬を膨らませた。
 そんなフィンを見ながら、ヴィルヘルムは懐かしく昔を思い出す。

 隣に並ぶこの少女が今よりもずっと小さかった頃、彼は彼女を守護する立場だった。
 何よりも大切な、小さな義妹。それがこのフィンという少女。
 今こうして成長した姿に驚きはしても、その事実は揺らぐことはない。

 一方のフィンも、ヴィルヘルムの背中を見ながら不思議な感慨を抱いていた。
 もうあのころの無力な自分ではない。一緒に歩いてくれる大切な人も出来た。人間としても、ちゃんと成長できている、その自覚はある。
 それでも、こうして一緒に歩き、言葉を交わしていると──彼に守られているだけだった女の子に戻ってしまうような気がするのだ。
 背中を見ているだけで、無条件に安心してしまう自分が確かにいて、それが悔しい。
「フィー?」
 きゅ、と服の裾を掴まれて、ヴィルヘルムは振り返る。
「何でもない」
 いいつつ、フィンは手を放さなかった。少し拗ねたような顔をして。
「‥‥帰ったら、二人でゆっくり料理をして、食べて話をするのもいいな」
 沢山の話をしよう。
 共にいることが出来なかった数年を、優しい話で埋めていこう。
 これからは、その時間があるのだから。

 並んで歩く二人と、バイトを終えて学園に向かうモブ子がすれ違った。
「‥‥いかにも美男美女のカップルでしたね」
 事情を知らないモブ子には、二人の姿はそれ以外には映らないのだった。



 モブ子が学園に着くと、朝方手作りキットを買っていった美具がきょろきょろしていた。
「どうしましたか」
 声を掛けると美具はよほど困っていたのか、すぐに事情を語り出す。
「先ほど何とかチョコを作り終えたのじゃが。その‥‥こうしたものはどう渡したらいいのじゃろうか」
 それを聞いて、モブ子はははあと得心する。
「片思いのお相手ですか」
「そ、そういうのではない。大切な友人なのじゃ」
 あわてて否定する美具を見て、モブ子はそれ以上突っ込まないことにする。
「迂闊なことをして、相手に恥をかかせるのは本意ではないからの」
「そうですね‥‥古典的かつ定番な手段としては、下駄箱の中とか机の下とかありますが。確実に渡すのであれば、やはり直接手渡しするのが一番かと」
「むう。そうか」
「その方が、気持ちも正しく伝わりますし。人の少ないところで渡せば、恥をかかせるなんて事もないでしょう」
「よし、分かった。感謝する」
「頑張ってくださいね」
 美具は決心したように頷くと、モブ子に礼を言って去っていく。
 抱えていた包みのラッピングは、少し崩れ気味。中身は作り直しの手作りチョコ。
 精一杯の好意が、どうか届きますように。


 校舎の入り口辺りが騒がしい。何だろうと思って近づいてみると‥‥。
 ばっしゃん!
 少し離れた足下で何かが破裂し、水が飛び散った。直後、一組のカップルがわあきゃあと騒ぎながら脇を通り過ぎていく。
「おっとこれは失敬。濡れなかったか?」
「あ、いえ平気‥‥」
 答えようとして言葉を失う。
 なぜならそこにいたのは、「リア充滅殺」と書かれた紙袋をかぶり、大量の水風船を抱えた変し‥‥ラグナ・グラウシード(ja3538)だったからだ。
「しばらくここへは近づかない方がいい。今日ここは狩り場‥‥群れなすリア充どもを粛正する戦場だからな!」
「そうします」
 即答。
「ラグナさん、あっちの方にまたカップルの姿がありますよ」
 物陰から現れた同胞(jb1801)がラグナに告げる。紙袋の中でラグナが笑ったのが分かった。
「さあ行くぞ同胞殿! この日をリア充どもから取り戻し、『ただの平日』に戻すのだッ!!」
 ラグナは猛々しく吼えた後で、物陰へと姿を消していった。同胞は苦笑しつつ後に続く。

 モブ子は見なかったことにして回れ右した。


 食堂で見覚えのある女性たちの姿を発見した。
「確か、あの時も食堂でお話を聞きましたね」
 興味を覚えたモブ子は、近くの席へ移動する。

「お昼になってしまった‥‥むむむ」
「千尋ちゃんどうかしましたかー?」
「ふえっ!? ううん、何でもないよ!!」
 隣の櫟 諏訪(ja1215)に声をかけられ、藤咲千尋(ja8564)はぶんぶんと首を振る。
 恋人のために、と張り切って手作りしたチョコレート。いざとなったらなかなか勇気が出なくて、ずっと鞄の中に入れたまま。もうお昼である。焦る。
「夜鈴、お弁当持ってきたよー」
 二人の向かいに柊 夜鈴(ja1014)が座っている。そこへ、柊 朔哉(ja2302)が重箱を抱えてやってきた。
「適当に突っついていいからね」
 人数分のお箸と小皿を、まずは夜鈴に。それから千尋と諏訪にも手渡した。
 カップル二組で、食事という名のダブルデート。

 歓談が進み、いつしか話題は互いのお相手のことに。
「夜鈴は優しいねー‥‥ていうかイケメン過ぎて最近王子様か何かに見えてきた」
 人前で持ち上げられて、夜鈴は口に入れたおかずを吹き出しそうになる。
「何だよ、急に」
「急じゃないよ。いつだってそう思ってるんだから」
 朔哉は夜鈴をうっとりと見つめる。
「優しくて、護ろうとしてくれて──。冷静で、いつも気遣ってくれて。こんな人が私の旦那様になってくれて、本当によかった」
 怒濤の惚気攻撃に、たじろぐ夜鈴。
「旦那の方からは何かないのですかー?」
 向かいの諏訪から追撃がきた。
「いや、それは‥‥」
 努めて平静を保とうとする夜鈴だが、状況は劣勢だ。
「俺たちの話いいから‥‥そちらさんはどうなの?」
 咳払いをひとつして、切り返す。柊夫妻の様子をにこにこ眺めていた諏訪は、しかし動じた様子もない。
「一生懸命な頑張り屋さんで、友達想いで、照れ屋な千尋ちゃんが大好きなのですよー?」
「ひぇー!! ひゃーーー!!」
 あっさり答えると、隣の千尋が真っ赤になってじたばたしだした。
「千尋は彼氏のどんなところが好きなの?」
「す、すわくんの好きなところ?」
 朔哉が聞くと、千尋は大あわてながらも考える。
「ええと、優しいところと頼れるところと、あと、笑顔が素敵‥‥」
「こうやって照れている顔とかすごい可愛いのですよー?」
「ぷひゃああああ」
 ぽふぽふと頭を撫でられて、さらに顔が赤くなった。じき爆発しそうだ。
 初々しいカップルの様子を微笑ましく眺めていた朔哉だったが、入り口に知り合いの姿を認めた。
「あ、エレン(ja3576)!」
「ぁ、レギスさんに千尋さん♪」
 エレンが明郷 玄哉(ja1261)を伴って四人のところへやってきた。
「みなさんでお昼ですか?」
「うん。‥‥あ」
 レギス、と旧名で呼ばれた朔哉は、隣の夜鈴を見やってつと頬を染める。
「旦那‥‥の、夜鈴だよ‥‥」
 惚気合戦から話がそれてそっと胸をなで下ろしていた夜鈴だったが、急に紹介されてまた戸惑う。
「えっ、紹介されるほどの人じゃないんだけど‥‥まぁ、よろしく‥‥」
「明郷だ、よろしく」
 二人が握手する。諏訪も加わって男三人が言葉を交わす隙に、エレンが朔哉と千尋を呼び寄せ、小声で。
「それで‥‥千尋さんたちはちゃんと渡せました?」
「‥‥チョコ、渡せたよ‥‥」
 朔哉は嬉しそうに目を細める。
「まだー無理ーどうしよー渡せないー」
 一方、千尋は両手を振ってあわあわ度をアピールした。
「私もこれからなんです‥‥大丈夫、きっとチャンスが来ますよっ」
 エレンは千尋の手を取り、ぐっと力を込める。
「う、うん!! 頑張るよ!!」
 何とか今日中に、と二人で決意を固めた。

「青春だねぇ」
 そんな彼氏彼女のやりとりを遠巻きに見ていた如月 敦志(ja0941)は呟くが、そこを千尋に見つかった。
「あーっ、あちゅしさんだ!! 毟らせて!!」
「何で!?」
 そんなこんなで和気藹々。
 見かけた友人に端から手を振ったりしつつ、彼女らの昼休みは過ぎていった。



「せっかくだし、誰かに話を聞いてみましょうか‥‥」
 四ヶ月前のアンケートを思い出して。

「え、コイバナ‥‥ですか?」
 雪成 藤花(ja0292)は、隣で笑顔を浮かべている星杜 焔(ja5378)をちらと見やった。
「わたし、多分大したのないですが」
「でも、そちらの方は?」
「あ‥‥焔さんは、許婚、です」
 また、視線を行き交わす。
「元々家族同士が知り合いで、七五三の頃に一度会っていて‥‥久遠ヶ原で再会したんです」
 お互い覚えていなかったけれど。藤花ははにかむように笑った。
「初恋の人でした。同じ人に‥‥もう一度恋をしました。運命の赤い糸みたいなもの、あるのかもしれないなって。‥‥そんなふうに思える人です」
 これが大した話じゃなければ何だというのだろう。謙遜しすぎだ。
 一方、焔はといえばずっと笑顔で藤花のことを見ていた。
「そちらからは何か‥‥」
 一言もしゃべらないので話を振ってみると。
「去年はバイトだったしぼっちだったし、一昨年は制作代理頼まれた女子に義理で自分が作ったチョコ貰って白い日に三倍返し要求されたりだったけど〜」
 急に抉られる話である。
 が、そこまで語ると焔は表情はそのままで、ぷるぷると震えだした。
「‥‥今年はまさかの
 彼女が‥‥
 彼女が‥‥
 これは夢だろうか?」
 笑顔が心なしかひきつっている。焔は震える手できれいにラッピングされた包みを取り出して見せた。
「彼女本人の‥‥
 手作り‥‥
 フォンダンショコラ‥‥
 これは夢だろうか?」
 どれだけ想定していない事態だったのか、汗がだらだら垂れる。
「‥‥今年はまさかの」
「焔さん」
 そのままループにはいるのかと思われたその時、藤花が優しく彼の手を取った。
「夢じゃありませんよ」
「‥‥うん」
 それでやっと落ち着いて、焔も普通にしゃべることが出来るようになったのだった。

「彼女に望むことはありますか?」
「‥‥散弾銃、かな」
 和やかな会話。だがそれを影から見るものあり。
「くくく‥‥りあじゅうぅ‥‥めっさつぅ‥‥!」
「この声は」
 ついさっきよりも危険度の増した声で、物陰からラグナ登場!
 ラグナの手から水風船が放たれようと、まさにその時。
 ぱん、と音がして、まだ手の中にあった水風船が破裂した。
「な、なんだ!?」
 紙袋がびしょ濡れになり、ラグナはもがきながら脱ぎ捨てる。
「く、何者だ!」
「その辺にしときなよ」
 別の影から音もなく現れたのは、蒼桐 遼布(jb2501)だった。手にはおもちゃのエアガンを持っている。
「いやさ、嫉妬することが悪いとは言わないけどさ。それを理由に他人の幸せの邪魔するのはよくないだろう」
 滔々と語って聞かせる遼布。だが当然それでラグナが納得するはずもなく。
「これは戦いだ‥‥断じて嫉妬などではないッ! 同胞殿、水風船を!」
 ‥‥。
 応答はなかった。
「あれ? 同胞殿?」
 振り返り、覗き込む。‥‥しかし、相棒の姿はすでに影も形もなかった。
「その行動力をもっと別の自分自身を磨くことに使った方が君らのためになると思うんだ‥‥一時的な感情で行動して、結局は自分の幸せの可能性を遠ざけてるようなもんなんだし惨めだろ?」
「うぐぐ‥‥お、覚えていろ!」
 劣勢を悟ったラグナは捨てぜりふを残し、回れ右。
「あ、おい!」
 追いかけようとする遼布だったが、そこへ焔が近づいてきた。
「これ俺が作ったんだ‥‥よかったらどうぞ〜」
 焔は小分けにされたチョコケーキを遼布に手渡した。
「ラグナさんにも配ろう。藤花ちゃんいこうか〜」
「はい、焔さん」
 二人はぺこりと頭を下げると、ラグナが消えた方へと歩いていった。



「おや、あれはさっきの‥‥」
 放課後。学園入口の端っこで、昼休みのカップルを発見。
「今日はありがと‥‥楽しかったの」
 エレンは玄哉に微笑みかける。紙袋をいくつか抱えているところを見ると、ショッピングにでも行っていたのだろうか。
「えぇと‥‥良かったらどうぞ。これからもよろしくね」
 お礼に、と手渡したのはお手製のラッピングがされたチョコレート。
 玄哉は受け取ると、ニィと笑って。
「さんきゅ。‥‥好きだぜ」
 エレンを抱きしめると、その頬にちゅっと口づけた。
 人目に付かぬよう、電光石火の早業。‥‥もっとも、モブ子は見てしまったが。
「っ〜〜‥‥ど、どういたしまして‥‥っ」
 真っ赤になってもごもごと照れるエレンを、玄哉は愛おしそうに眺めていたのだった。


 校舎裏に、女の子が一人。
「あんまり上手にならなかったなあ‥‥でもでも、形は歪でも、ちゃんと食べられるものが出来たもん。大丈夫!」
 一 晴(jb3195)は校舎の向こうをしきりに気にしている。
 やがて現れたのは、ニット帽にヘッドフォン装備の細身の男性だった。
「晴さん! ごめん、遅くなって」
 空木 楽人(jb1421)は晴の前まで走ってやって来ると、彼女の前で両手をあわせた。
「ううん、あたしも今来たところだから‥‥」
 そわそわの晴に対して、楽人は緊張気味だ。
「そ、それで‥‥用事って?」
 晴は鞄に手を突っ込んだ。
「こ、これ! 受け取って!! これからもよろしくお願いしますっ!!」
 楽人の胸にどんっと押しつけたのは、赤い包装紙に黄色のリボン。想いの詰まった手作りチョコレート。
 楽人は一瞬目をぱちくりさせて、それからようやく何かに思い至って顔を赤らめる。
「‥‥あ、ありがと‥‥すごく嬉しいよ、晴さん」
 二人の視線が優しく溶け合って、そろって照れ笑いを浮かべた。

「でもよかった。やっぱり付き合って初めての大きなイベントだもん、ちゃんと気持ちのこもったチョコを渡したいって思ってたんだ」
「僕は急に校舎裏なんて言われたから、何か怒らせるようなことをしたのかと‥‥」
 楽人が言うと、緊張が解けた晴はくつくつと笑った。
「そんなわけないでしょ。そうだ、チョコ手作りだけど、一個だけおまけが入ってるんだ」
「おまけ?」
「そう。きっとびっくりするよ」
「何だろう。それは最後のお楽しみにしておくよ‥‥」
 幸せそうに顔をほころばせる楽人。

 なおしばらくして、バレンタインにカレールーの固まりを食べた男子高校生の伝説が面白おかしく語られることになるのだが、それが楽人のことであったのかは定かではない。


 校舎裏を離れようとするモブ子のもとへ。
「す、すわくん!!」
 覚えのある声が聞こえてきた。

 千尋が諏訪に差し出した箱には、青い包装紙に緑のリボンがかかっていた。
 青は彼の瞳の色。緑は彼の髪の色。
 アホ毛とシンクロして、リボンがぴょこんと跳ねていた。
「すわくん、大好きだよ!!」
 まっすぐ笑顔な贈り物を、諏訪はもちろん笑顔で受け取って。
「ありがとうございますよー? 自分も、千尋ちゃんが大好きなのですよー!」
 腕が伸ばされて、千尋を撫でる。そのまま、諏訪は顔を近づけていく。
(あれ? あれ?)
 これは、えっと、つまり、そういうこと?
 顔はどんどん近くなる。千尋は思わず、目を閉じて──。

「おっと。ここまでですね」
 モブ子はくるりと背を向ける。
 後はどうぞ、ごゆるりと。心の中で呟いた。


 貰った熱を冷やそうと、モブ子は屋上へ避難したのだが。
 すでに先客の姿あり。

「こ、これ‥‥ユメノに食べてほしいな、と思いまして!」
 君田 夢野(ja0561)はフェリーナ・シーグラム(ja6845)からチョコを受け取った。
(一年前は、まさか自分がこういう立場に成れるとは思ってもいなかったなぁ)
「開けてみても?」
 包みを開けると、バリエーション豊かなチョコが収まっていた。ただし、どれも形はちょっと崩れ気味。
 早速ひとつ、口に放り込んでみる。思った以上に激甘だった。
「ありがとう‥‥フェル。この甘みを噛み締めているだけで、俺は幸せだよ」
 それは勿論お世辞ではなくて、心からの喜びの表現。
 出来映えはそもそも問題じゃない。愛しい人が自分のために心を込めて作ってくれた、その事実が最高に嬉しいのだ。

 続けてチョコを口に放り込む夢野を、フェリーナは思い詰めた様子で見つめていた。
「ん‥‥フェルどうした?」
 何気ない、いつもと変わらぬ問いかけにきゅっと心臓を鷲掴みにされて、ついに耐えられなくなって。フェリーナは夢野の腕にすがりつく。
「絶対に、絶対に帰ってきてくださいね!?」
 彼はじきに、危険な依頼へと出発する。自分は同行できない。
 共に戦えないことが悔しい。そして‥‥怖い。
 この日常が明日にはなくなるかもしれないと、一度そう思ったら止まらなかった。
 後から後から涙が出てきて、夢野の袖を濡らす。
「フェル」
 夢野はそっと彼女の顔を上向かせ、指先で涙を拭ってやる。
 それから、優しく額に口づけした。
「!?」
「ははっ、突然抱きついてきたのだから、お返しくらいはいいだろう?」
 いたずらっぽく笑って。
「大丈夫。何があっても、帰ってくるからさ‥‥フェルのところに」
 肩を抱き、引き寄せる。
「‥‥信じてますから。ユメノのこと、信じてますから」
 フェリーナは夢野の肩に顔を埋めた。


「なんか校内の空気がぴんくくないですか‥‥?」
 モブ子の耳に、心底同意したくなる台詞が聞こえてきた。

「カップル率高すぎ。私のところにももっとイケメンが群がるべき」
「まあまあ‥‥」
 七種 戒(ja1267)が不満げに口をとがらせるのを、鍔崎 美薙(ja0028)が宥めつつ歩く。
「それに、食堂で千尋たちに会ったときは姉上もにこやかに手を振っておったではないか」
「それはそれ。かわいこちゃんにはちゃんと挨拶しないとな」
 そんなやりとりをしつつ校舎の外へ出た二人。
「お、あれは──」
 知り合い発見。声をかけようとして、戒は思いとどまった。
「姉上? 一体どうしたと言うのじゃ」
 木陰に引っ張りこまれて美薙は戒を見るが、無言で指し示された先を見て口をつぐむ。
 栗原 ひなこ(ja3001)が広場のベンチに腰掛けていた。

「喜んでくれるといいけど‥‥敦志くん料理上手だからなぁ‥‥」
 前日頑張って作った手作りチョコ。味は何とかなったはずだけど、不格好な見た目はどうしようもない。
 人の気配がする度に、ぱっと顔を上げてそちらをみる。けれど待ち人はまだ来ない。時間はもう過ぎてるんだけどな。
 そわそわとドキドキで、心臓が破裂しそうになったとき、ようやく。
「おうひなこ、待たせちまったか? 悪いな」
 待ち望んだ声が聞こえた。

「ううん、全然待ってないよ」
 どれだけ待ったとしても、ここはこう言う。ひなこはベンチから腰を上げると、目一杯の笑顔を浮かべる。
「えっと、敦志くんハッピーバレンタイン!」
「はは、ちょっと照れくさいな」
 敦志は頭髪を照れ隠しにぽりぽり掻いて、チョコを受け取った。
「せっかくだし食べてもいいかい?」
 早速包みを開け、一口。
「うん、美味い!」
「本当?」
 ひなこがぱっと顔を輝かせる。
「ああ、本当に美味いよ」
 言いつつひなこの手元に目がいく。指先に、いくつか絆創膏が巻かれていた。
「頑張って作ってくれたんだな」
「これは、気にしちゃだめっ」
 ひなこが顔を赤くして手を引っ込めるのを見て敦志は苦笑する。あわてる彼女もかわいらしい。
「お礼といっちゃ何だが、明日デートでもしないか?」
「いいの? ‥‥じゃ、敦志くんのバイト先に行ってみたいな」
「バイト先か‥‥まあ‥‥」
 ちょっと考えて視線を動かす。
「‥‥あっ」
「って、お前等何時から見てた‥‥?」
 木陰に隠れた戒と美薙を発見。
「くっそう初々しい恋人オーラ全開でええのう‥‥!」
 戒はハンカチを噛んでぐぬぬしている。
「ふ、二人ともいたの?」
 ひなこもあわあわしながら鞄から新たにチョコを取り出した。「友チョコ、用意してるからね!」

「それにあたし、戒さんが実はチョコ沢山貰ってるの知ってるんだよ〜」
 放送部の情報網を舐めてもらっちゃ困るな、とひなこは得意げに語る。
「うむうむ、姉上の交友範囲は広いからのぅ」
 美薙も頷く。
「素敵な殿方が多すぎて、気づいておらんのじゃろう、モテぶりに」
「なに、戒だってすぐにいい人見つかるさ」
「あれ、なんだろうすごい敗北感‥‥?」
 敦志に肩ぽむされ、さらにぐぬぬする戒であった。


「さて、姉上」
 敦志、ひなこと別れて、帰り道。
「イケメンな殿方ではないが‥‥貰ってくれるかの?」
 美薙は戒に、可愛らしい小箱を手渡した。
「もしかしてこれ‥‥」
「無論、手作り※じゃ」
 ※フラグ。
 聞いただけで、戒の脳裏に去年の出来事が一斉にフラッシュバックする。走馬灯さん早いよ、まだ食べてないよ。
「‥‥ふ」
 だが戒は動じることはなかった。
「美薙からのらーぶを食べないなどという選択肢があろうか‥‥っ!!」
 ためらうことなく、小箱オープン。臭いがすでに違う。甘くない。
 それでも、決心は揺らがなかった。
 思い切って一口。あれ、ちゃんと甘い。
 ‥‥と思ったら、辛くなってきた。ん、いや、ちょっとしょっぱい‥‥あれ、苦い?
「姉上は不健康そうじゃからな、滋養のある物をみっちり入れておいたぞ」
 美薙の声がわんわん反響している。口の中は味覚が飽和状態。走馬灯さんが本気を出してきた。
 それでも、戒は最後の力を振り絞って、想いに応える。
「ありがとな、美味い、ぜ‥‥」
 笑顔でサムズアップ。そして、昏倒。



 夕暮れの久遠ヶ原。
 モブ子が学園入口に戻ってくると、同胞が一人、ベンチに腰掛けて空を見上げていた。
「‥‥今が楽しければリア充。それでいいじゃないか」

 その通りだと、モブ子も思う。

 久遠ヶ原の【LC】を満喫して彼女が心に留めたことは。
(しばらくチョコレートはお腹一杯です)

 地に沈む太陽が、同意するかのように揺らめいていた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:26人

命掬びし巫女・
鍔崎 美薙(ja0028)

大学部4年7組 女 アストラルヴァンガード
『九魔侵攻』参加撃退士・
楊 玲花(ja0249)

大学部6年110組 女 鬼道忍軍
己が魂を貫く者・
アーレイ・バーグ(ja0276)

大学部4年168組 女 ダアト
思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
Blue Sphere Ballad・
君田 夢野(ja0561)

卒業 男 ルインズブレイド
我はメイド服の伝道師・
田中 裕介(ja0917)

卒業 男 阿修羅
厨房の魔術師・
如月 敦志(ja0941)

大学部7年133組 男 アカシックレコーダー:タイプB
幻の星と花に舞う・
柊 夜鈴(ja1014)

大学部5年270組 男 阿修羅
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
ダークナイト・
明郷 玄哉(ja1261)

大学部5年29組 男 ルインズブレイド
希みの橋を繋ぐ・
シャルロット(ja1912)

大学部3年132組 女 アストラルヴァンガード
茨の野を歩む者・
柊 朔哉(ja2302)

大学部5年228組 女 アストラルヴァンガード
懐かしい未来の夢を見た・
栗原 ひなこ(ja3001)

大学部5年255組 女 アストラルヴァンガード
KILL ALL RIAJU・
ラグナ・グラウシード(ja3538)

大学部5年54組 男 ディバインナイト
撃退士・
エレン(ja3576)

大学部4年193組 女 鬼道忍軍
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

卒業 男 ディバインナイト
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
マイネ・リーベ・
フィン・スターニス(ja9308)

大学部5年216組 女 ダアト
ウェンランと一緒(夢)・
周 愛奈(ja9363)

中等部1年6組 女 ダアト
撃退士・
数多 雄星(jb1801)

大学部4年234組 男 ディバインナイト
闇を斬り裂く龍牙・
蒼桐 遼布(jb2501)

大学部5年230組 男 阿修羅
仲良し撃退士・
一 晴(jb3195)

大学部4年286組 女 阿修羅
闇を解き放つ者・
楊 礼信(jb3855)

中等部3年4組 男 アストラルヴァンガード
怪傑クマー天狗・
美具 フランカー 29世(jb3882)

大学部5年244組 女 バハムートテイマー
撃退士・
ヴィルヘルム・アードラー(jb4195)

大学部3年56組 男 ルインズブレイド